特許第5672274号(P5672274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5672274
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】除染方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/28 20060101AFI20150129BHJP
   G21F 9/02 20060101ALI20150129BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   G21F9/28 Z
   G21F9/28 521A
   G21F9/02 511T
   G21F9/36 541A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-171692(P2012-171692)
(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公開番号】特開2014-32060(P2014-32060A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2013年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】502145988
【氏名又は名称】日中東北物産有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】近藤 賢市
【審査官】 村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−311197(JP,A)
【文献】 特開昭63−006498(JP,A)
【文献】 平成23年度「除染技術実証試験事業」ドライアイスを利用したがれきの除染,日本原子力研究開発機構ホームページ,インターネット[検索日:平成26年3月18日]<URL:http://www.jaea.go.jp/fukushima/decon04/ps16.pdf>
【文献】 Q1.ゼオライトとは?,ゼオライト学会ホームページ,インターネット[検索日:平成26年3月18日]<URL:http://www.jaz-online.org/introduction/qanda.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/00 − 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面、床面及び天井面の少なくとも一部に、放射性物質を吸着する砕石した放射性物質吸着材(3)を設けた空洞体(1)を構成し、前記放射性物質吸着材(3)は、前記空洞体(1)の内壁面にこの内壁面と所定間隔を確保しつつ設けられた金網(2)と前記内壁面との間に設けられており、前記放射性物質吸着材(3)同士の間の隙間、及び空洞体(1)の内外壁間に通気性を確保するとともに、この空洞体(1)内を正圧状態に加圧し、この空洞体(1)内に放射性物質によって汚染された被汚染物(M)を通して、空気によって被汚染物(M)に付着した放射性物質を浮き上がらせるとともに、空気が前記隙間及び空洞体(1)壁面を通って空洞体(1)外に放出されるようにし、空気によって搬送された放射性物質が、前記隙間を通る際に前記砕石した放射性物質吸着材(3)に吸着されるようして、この被汚染物(M)の除染処理を行う除染方法。
【請求項2】
前記空洞体(1)内に被汚染物(M)を通した後に、水槽(5)に貯めた水(6)の中に前記被汚染物(M)を浸漬して除染処理を行う請求項1に記載の除染方法。
【請求項3】
前記除染処理の後に、前記放射性物質吸着材(3)を収納した収納体(8)で前記被汚染物(M)を取り囲んで、この被汚染物(M)の残留放射線量が所定値以下に低下するまで貯蔵するようにした請求項1又は2に記載の除染方法。
【請求項4】
前記放射性物質吸着材(3)が、ゼオライト、イライト、又は、麦飯石である請求項1から3のいずれか一つに記載の除染方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射性物質によって汚染された被汚染物の除染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所で重大事故が発生すると、その周辺にセシウム等の放射性物質が大量に拡散し、瓦礫や土壌、その土壌で生産した農作物、伐採した木材、近隣海域で水揚げした水産物等が広範囲に亘って汚染される。その復旧作業の第一段階として、放射性物質によって汚染された瓦礫等の除染作業が必要となる。この除染作業として、瓦礫等に水を噴射して放射性物質を洗い流す方法が主流であり、例えば特許文献1には、作業員の防護服に付着した放射性物質をシャワーで洗い落とす除染システムの構成が記載されている。
【0003】
この種の除染システムを用いて、瓦礫や土壌の残留放射線量を下げることにより、それらの廃棄処分をスムーズに行い得るようになるとともに、農作物、木材、水産物等の残留放射線量を人体の許容範囲以下に下げることにより、この農林水産物等の全てを廃棄することなく、その一部を出荷し得るようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−305284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る除染システムは、除染に用いた大量の放射性排水を処理する装置を併設しなければならず、その構成が大掛かりなものとなりやすい。このため、設備コストがかかり、容易にこの除染システムを導入できないことがある。このため、復旧作業の第一段階である瓦礫の処理や、農林水産物等の出荷再開が遅々として進まず、被災地の復興が大幅に遅れるという問題が生じ得る。
【0006】
そこで、この発明は、放射性物質によって汚染された被汚染物を、大量の水を使用することなく除染することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、この発明は、壁面、床面及び天井面の少なくとも一部に、放射性物質を吸着する放射性物質吸着材を設けた空洞体を構成し、この空洞体内に放射性物質によって汚染された被汚染物を通して、この被汚染物を除染する除染方法を構成した。
【0008】
被汚染物に付着していた放射性物質は、前記空洞体内の気相中を浮遊して、前記壁面等に設けた放射性物質吸着材に吸着される。この際、必ずしも水を使用しなくてもよいため、放射性排水の処理問題は発生しない。また、この放射性物質吸着材は放射性排水と異なり、セメントと混ぜて埋め立てる等の安全な処分方法が確立しているため、その使用後の処分をスムーズに進めることができる。
【0009】
前記構成においては、前記空洞体内に被汚染物を通した後に、水槽に貯めた水の中に前記被汚染物を浸漬して除染処理を行うようにすることができる。
【0010】
このように水に浸漬することによって、前記空洞体を通しただけでは除去できなかった放射性物質をさらに除去することができるため、この被汚染物の残留放射線量を一層低減することが期待できる。
【0011】
また、前記各構成においては、前記除染処理の後に、前記放射性物質吸着材を収納した収納体で前記被汚染物を取り囲んで、この被汚染物の残留放射線量が所定値以下に低下するまで貯蔵するようにすることもできる。
【0012】
前記収納体で被汚染物を取り囲むことにより、被汚染物に付着した放射性物質が周囲に拡散して、二次的な汚染が広がるのを極力防止することができる。この収納体に使用する袋体として、放射性物質を自在に通過し得る素材で構成されたものを使用し得る。
【0013】
さらに、前記各構成においては、前記放射性物質吸着材を、ゼオライト、イライト、又は、麦飯石とすることができる。
【0014】
このゼオライト等は、セシウム等の放射性物質を吸着して、残留放射線量を低減することが実験的に確認されている。これらの中でも、イライトは、放射性物質を強く吸着する性質を有することが確認されており、一旦吸着した放射性物質を再び放出しにくいため、放射性物質吸着材として特に優れている。放射性物質を吸着する能力を有するのであれば、当然ながら上記に例示したもの以外も、放射性物質吸着材として採用することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る構成においては、放射性物質によって汚染された被汚染物を放射性物質吸着材によって吸着するようにした。このように放射性物質を吸着して除去(除染)すれば、被汚染物の残留放射線量の低減、及び、放射性物質を吸着した放射性物質吸着材の処分を速やかに行うことができる。これにより、瓦礫を安全に処分できるとともに、農林水産物等をすべて廃棄処分することなく、除染によって安全性が確認されたものについては、市場に流通させることができ、無駄を極力なくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本願発明に係る除染方法に用いる空洞体(トンネル)の一実施形態を示す斜視図
図2】本願発明に係る除染方法に用いる水槽の使用態様を示す斜視図
図3】本願発明に係る除染方法に用いる収納体を積み重ねて壁を構成し、その中央に被汚染物を設けた状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願発明に係る除染方法に用いる空洞体1の一実施形態を図1に示す。この空洞体1はトンネル状をしており(以下、この空洞体1をトンネルという。)、このトンネル1の内壁面及び天井面の全体には、この内壁面等との間に所定間隔を確保しつつ金網2が設けられている。そして、内壁面等と金網2との間の隙間に、放射性物質吸着材3として、金網2の網目から脱落しない程度の大きさに砕石したゼオライト及びイライトが設けられている。
【0018】
このトンネル1内にはベルトコンベア4が設けられ、このベルトコンベア4で被汚染物M(瓦礫や農林水産物等)が搬送される。この搬送速度は、被汚染物Mの汚染度によって適宜変更され、汚染度が高い場合には、搬送速度を小さくして、被汚染物が長時間トンネル1内に滞在するようにする。あるいは、被汚染物Mがトンネル1内に搬送されたら、所定時間だけベルトコンベア4を停止したり、トンネル1内を数回往復させたりして、被汚染物Mを長時間トンネル1内に滞在させることもできる。放射性物質吸着材3による高い吸着効果を得るために、トンネル1の天井が被汚染物Mに接触しないようにしつつ、できるだけ低くし、被汚染物Mと放射性物質吸着材3とが極力接近し得るようにするのが好ましい。この構成によると、被汚染物Mの表面を離れてトンネル1内に浮遊した放射性物質が、放射性物質吸着材3によって吸着されることによって、この被汚染物Mの除染がなされる。
【0019】
このトンネル1の外壁材としては、アルミニウム、薄板状のステンレス、強化プラスチック、ベニア板、発泡スチロール樹脂等のように軽量素材を用いるのが好ましい。このような軽量素材を用いれば、その組み立てを速やかに行うことができ、作業現場(例えば、低温貯蔵庫の中)で速やかに除染作業を開始することができるためである。
【0020】
被汚染物Mの搬送手段はベルトコンベア4に限定されず、床面に敷設したレール上を走行する台車等の公知の搬送手段も適宜採用することができる。
【0021】
この実施形態では内壁面等に金網を設けて、この内壁面等と金網2との間の隙間にゼオライト等の放射性物質吸着材3を設ける構成としたが、この放射性物質吸着材3を接着剤、セメント等で内壁面等に固定する構成とすることもできる。
【0022】
放射性物質吸着材3を所定期間使用して、放射性物質の吸着量が飽和状態に達したら、この放射性物質吸着材3を交換する。この使用済みの放射性物質吸着材3は、例えばセメント等と混合して、堤防等の建設資材として再利用することができる。
【0023】
図1に示す構成においては、放射性物質吸着材3同士の間の隙間、及び、トンネル1の内外壁間に通気性を確保するとともに、このトンネル1内を正圧状態(トンネル1外よりも気圧が高い状態)に加圧し、被汚染物Mに接触した空気が、前記隙間及びトンネル1壁面を通ってトンネル1外に放出されるようにすることもできる。このようにすれば、空気が被汚染物Mに付着した放射性物質を浮き上がらせるとともに、空気によって搬送された放射性物質が、前記隙間を通る際に放射性物質吸着材3に吸着される。このため、一層効率的に被汚染物Mの除染を行うことができる。このとき、トンネル1内の空気を撹拌する空気撹拌装置を併用すると、被汚染物Mから放射性物質を浮き上がらせる作用が向上し、除染の効率が一段と向上する。
【0024】
また、図1に示す構成においては、トンネル1を管状とし、被汚染物Mを通過させる際に、このトンネル1内に水のシャワーを吹き付ける構成とすることもできる。水による除染は空気による除染よりも効率が高く、しかも、除染に用いた水はトンネル1の内壁、床面等に設けられた放射性物質吸着材3によって吸着されるため、トンネル1外に放射性物質を含んだ水が流出する恐れは低い。
【0025】
図1には、空洞体1をトンネル状としたものを例示したが、この空洞体は当然ながらトンネル状のものに限られず、その内部に被汚染物Mを通すことができるのであれば、角箱形状等のように種々の形状のものを採用することができる。
【0026】
上記のように、図1に示すトンネル1に被汚染物Mを通した後に、残留放射線量を計測機で計測する。そして、残留放射線量が規定値以下に下がっていることが確認できた場合は、瓦礫の埋め立て処理、農林水産物の出荷等の手続を進めることができる。
【0027】
前記計測において残留放射線量が規定値以下となっていないことが確認された場合は、図2に示す水槽において、さらに除染処理を行うのが好ましい。この水洗処理においては、水槽5に水6を貯めて、この水6の中に、例えば籠7に入れた被汚染物Mを直接浸漬する。このようにすれば、被汚染物Mと水6との接触を十分確保できるとともに、この除染処理後に速やかに水切り作業を行うことができる。この浸漬条件(浸漬時間、水温、水の撹拌あるいは被汚染物Mの揺動の有無等)は、被汚染物Mの汚染度を考慮した上で適宜決定される。
【0028】
この水槽5中にゼオライト、イライト、麦飯石等の放射性物質吸着材3を沈めておけば、この放射性物質吸着材3が被汚染物Mから流れ落ちた放射性物質を吸着するため、その除染処理を効率的に行うことができる。さらに、被汚染物Mを入れた籠7を水中で揺動させたり、水槽5中に撹拌手段を設けたりすることによって水6を撹拌すれば、除染効果を一層高めることができる。
【0029】
上記のように、図2に示す水槽5で除染処理を行った後に、残留放射線量を再び計測機で計測する。そして、残留放射線量が規定値以下に下がっていることが確認できた場合は、瓦礫の埋め立て処理、農林水産物の出荷等の手続を進めることができる。
【0030】
この水槽5を用いた除染処理後も残留放射線量が規定値以下となっていないことが確認された場合、あるいは、規定値以下となっていた場合でも、瓦礫の処理又は農林水産物等の出荷までにしばらく時間があるときは、例えば倉庫内に、図3に示すようにゼオライト等の放射性物質吸着材3を収納した収納体8を積み重ねて壁を形成し、この壁で除染済みの被汚染物Mを取り囲むようにしてしばらく保管しておくのが好ましい。
【0031】
このように、収納体8で囲うようにして除染済みの被汚染物Mを保管すると、主に周囲の空気の自然対流によって、除染済みの被汚染物Mに僅かに残留付着している放射性物質が収納体8内の放射性物質吸着材3に吸着され、残留放射線量の一段の低減を図ることができる。図3に示す構成では、収納体8を被汚染物Mの周囲に壁のように設けているが、例えば、四方の壁の上端に跨る支持用金網等を設け、この支持用金網上に収納体8を載置して、収納体8で構成される天井部を設けた構成とすることもできる。
【0032】
さらに、図1において説明したように、被汚染物M周囲の空気を撹拌する空気撹拌装置を併用すると、放射性物質の吸着が一層速やかになされ、残留放射線量の低減効果が一段と向上する。図3に示す構成で用いた収納体8に収納された放射性物質吸着材3は、図1に示したトンネル1の内壁等に再利用することができる。この図3に示す構成においては、放射性物質吸着材3に吸着される放射性物質は通常少なく、放射性物質の吸着能が十分残っているためである。
【0033】
上記の実施形態においては、被汚染物Mを図1から図3に示す設備で順次処理する態様について説明したが、例えば、図1に示すトンネル1に被汚染物Mを通した後に、図2に示す水槽5を介さず、図3に示す収納体8で囲んで保管するようにしてもよい。
【0034】
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本願発明の課題を解決し得るのであれば、空洞体等の構成を適宜変更することは当然に許容される。
【符号の説明】
【0035】
1 空洞体(トンネル)
2 金網
3 放射性物質吸着材
4 ベルトコンベア
5 水槽
6 水
7 籠
8 収納体
M 被汚染物
図1
図2
図3