特許第5672284号(P5672284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5672284
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】空気調和装置の室外機
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/00 20060101AFI20150129BHJP
   F24F 3/14 20060101ALI20150129BHJP
   F24F 1/46 20110101ALI20150129BHJP
【FI】
   F24F6/00 331
   F24F3/14
   F24F1/46
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-217549(P2012-217549)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-70816(P2014-70816A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2014年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】白井 晶子
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−190828(JP,A)
【文献】 特開2009−030884(JP,A)
【文献】 特開2010−043802(JP,A)
【文献】 特開2004−226024(JP,A)
【文献】 特開2010−175090(JP,A)
【文献】 特開2010−261711(JP,A)
【文献】 特開2005−321116(JP,A)
【文献】 特開2004−077082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/00
F24F 1/46
F24F 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を形成する本体ケーシング(40)の内部が、仕切部材(43)によって送風機が配置される送風機室(41)と圧縮機が配置される機械室(42)とに仕切られている、空気調和装置の室外機であって、
前記送風機室(41)と前記機械室(42)とに跨って配置される加湿機構(60)と、
を備え、
前記加湿機構(60)は、
加湿空気を送り出す加湿用ファン(75a)と、
前記加湿用ファン(75a)を駆動するファンモータ(75b)と、
前記ファンモータ(75b)を覆う樹脂製のモータカバー(82)と、
を有し、
前記仕切部材(43)は、
前記加湿機構(60)の上側に配置される上部仕切板(43a)と、
前記加湿機構(60)の下側に配置される下部仕切板(43b)と、
を含み、
前記上部仕切板(43a)が、樹脂製であり、前記モータカバー(82)と一体成形されている、
空気調和装置の室外機(30)。
【請求項2】
前記下部仕切板(43b)が、板金製である、
請求項1に記載の空気調和装置の室外機(30)。
【請求項3】
前記加湿機構(60)は、前記送風機室(41)と前記機械室(42)とに跨る樹脂製フレーム(610)を有し、
前記樹脂製フレーム(610)は前記下部仕切板(43b)に載り、
前記上部仕切板(43a)が前記樹脂製フレーム(610)に載る、
請求項2に記載の空気調和装置の室外機(30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加湿ユニットを有する空気調和装置の室外機に関する。
【背景技術】
【0002】
加湿機能を有する従来の空気調和装置の中には、空気調和装置の室外機と加湿ユニットとが一体化されたタイプのものがある。例えば、特許文献1(特開2008−241212号公報)に開示されている空気調和装置では、室外機が上下仕切板によって上下に仕切られており、加湿ユニットは上下仕切板の上方に設置され、熱交換器や熱交換器に送風するファンは上下仕切板の下方に配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような加湿機能を有する室外機は、加湿機能を有しないタイプに比べて大型化するので、その大型化を抑制する必要がある。そのため、加湿ユニットを室外機内で室外熱交換器の空気流れの下流側に配置することも検討されている。
【0004】
しかしながら、一般に空気調和装置の室外機の内部は、左右仕切板によって送風機室と機械室とに仕切られており、加湿ユニットが送風機室と機械室とを跨ぐように収納された場合、仕切板が高さ方向に2分され、それがコスト増大の要因となる。
【0005】
本発明の課題は、仕切部材が加湿ユニットによって2分されてもコスト増大を抑制することができる、空気調和装置の室外機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る空気調和装置の室外機は、外郭を形成する本体ケーシングの内部が、仕切部材によって送風機が配置される送風機室と圧縮機が配置される機械室とに仕切られている、空気調和装置の室外機であって、加湿機構を備えている。この加湿機構は、送風機室と機械室とに跨って配置される。また、加湿機構は、加湿空気を送り出す加湿用ファンと、加湿用ファンを駆動するファンモータと、ファンモータを覆う樹脂製のモータカバーとを有している。仕切部材は、上部仕切板と下部仕切板とを含んでいる。上部仕切板は加湿機構の上側に配置され、下部仕切板は加湿機構の下側に配置される。また、上部仕切板は、樹脂製であり、モータカバーと一体成形されている。
【0007】
仕切部材が上下に分割されたことにより、加湿機構の周辺部材の配置、形状に適した仕切部材が必要になる。加湿機構は、本体ケーシング上部から組み入れられるのが合理的であり、周辺部材の輪郭に合わせて加湿機構の輪郭が決定され、特に加湿機構の上側は形状的制約を受け易く、それに従って上部仕切板も形状的制約を受ける。しかしながら、この室外機では、上部仕切板が樹脂製であることによって、形状的制約に柔軟に対応することができ、コスト増を抑制することができる。また、上部仕切板とモータカバーとが一体成形されることによって、部品点数、および組立工数が削減される。
【0008】
本発明の第2観点に係る空気調和装置の室外機は、第1観点に係る空気調和装置の室外機であって、下部仕切板が板金製である。
【0009】
この室外機では、下部仕切板が、高さ方向の制約を除いては従来の形状を維持することができるので、加湿機構に関係なく形状を統一でき、多機種になっても兼用が可能であり、低コスト化を図ることができる。
【0010】
本発明の第3観点に係る空気調和装置の室外機は、第2観点に係る空気調和装置の室外機であって、加湿機構が、送風機室と機械室とに跨る樹脂製フレームを有している。樹脂製フレームは下部仕切板に載っている。また、上部仕切板は、樹脂製フレームに載っている。
【0011】
この室外機では、下部仕切板が樹脂製フレームを下から支えるので、加湿機構の位置決めとして利用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1観点に係る空気調和装置の室外機では、上部仕切板が樹脂製であることによって、形状的制約に柔軟に対応することができ、コスト増を抑制することができる。また、上部仕切板とモータカバーとが一体成形されることによって、部品点数、および組立工数が削減される。
【0013】
本発明の第2観点に係る空気調和装置の室外機では、下部仕切板が、高さ方向の制約を除いては従来の形状を維持することができるので、加湿機構に関係なく形状を統一でき、多機種になっても兼用が可能であり、低コスト化を図ることができる。
【0014】
本発明の第3観点に係る空気調和装置の室外機では、下部仕切板が樹脂製フレームを下から支えるので、加湿機構の位置決めとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る室外機を備えた空気調和装置の構成図。
図2】室外機の縦断面図。
図3】天板が取り外された状態の当該室外機の斜視図。
図4図3の室外機から防護グリルが取り外された状態の当該室外機の斜視図。
図5図4の室外機から前板、右側板及び電装品ユニットを取り外した状態の当該室外機の斜視図。
図6】加湿ユニットおよび電装品ユニットの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0017】
(1)空気調和装置の構成の概要
図1は、本発明の一実施形態に係る室外機30を備えた空気調和装置10の構成図である。図1において、室内機20と室外機30とは冷媒配管14,16によって接続されている。空気調和装置10は、冷房運転、暖房運転、除湿運転、加湿運転、及び給気運転などの複数の運転モードを持っており、これらの運転モードを適宜組み合わせることもできる。
【0018】
室内機20には室内熱交換器21が設けられ、室外機30には圧縮機31、四路切換弁32、室外熱交換器33、電動弁34、アキュムレータ36、液閉鎖弁37及びガス閉鎖弁38が設けられている。
【0019】
また、加湿運転、及び給気運転では、室内に外気を供給するため、給気ホース18を通して室内機20と室外機30との間で空気の移動がある。特に、加湿運転では、水分を多く含んだ湿度の高い空気を室外機30から室内機20に供給するため室外機30において外気から水分を取り込む。そのために、室外機30には、外気から水分を取り込む機能を持つ加湿ユニット60が設けられている。
【0020】
(1−1)冷媒の流れ
次に、冷媒の流れについて、図1を参照しながら説明する。冷房時、四路切換弁32内の流路は図1の実線で描かれた接続になっている。圧縮機31で圧縮され吐出された冷媒は、四路切換弁32を介して室外熱交換器33に送られる。室外熱交換器33において外気との熱交換によって熱を奪われた冷媒は、凝縮して高圧の液冷媒となって電動弁34に送られる。
【0021】
高圧液冷媒は、電動弁34を通過するときに絞られて圧力が低下し、膨張して温度が低下する。このとき、冷媒は低圧の湿り蒸気に変化する。低圧の冷媒は、液閉鎖弁37及び液冷媒配管14を通って室内熱交換器21に入る。
【0022】
室内熱交換器21では、冷媒は室内空気との熱交換によって蒸発しガス冷媒となる。ガス冷媒は、ガス冷媒配管16を通り、ガス閉鎖弁38を経由して四路切換弁32に送られる。ガス冷媒の進路は、四路切換弁32によって圧縮機31の吸込方向に向けられ、アキュムレータ36を経由して圧縮機31に吸い込まれる。
【0023】
暖房時、四路切換弁32内の流路は点線で描かれた接続になっている。圧縮機31で圧縮され吐出された冷媒は、四路切換弁32を介して室内熱交換器21に送られる。そして、冷房時とは逆の経路をたどって、室外熱交換器33を出た冷媒は圧縮機31に戻ってくる。つまり、圧縮機31、四路切換弁32、ガス冷媒配管16、室内熱交換器21、液冷媒配管14、電動弁34、室外熱交換器33、四路切換弁32、アキュムレータ36及び圧縮機31の順に冷媒が循環する。
【0024】
(2)室内機20の構成
室内機20には、図1に示すようにモータで駆動される室内ファン22が室内熱交換器21の下流側に設けられている。室内ファン22は、クロスフローファンである。室内ファン22が駆動されると、室内機20上部の吸込口23から吸い込まれた室内空気は、室内熱交換器21を通過して室内機20下部の吹出口24から吹き出される。
【0025】
また、室内機20には、給気ホース18の給気口25が、室内熱交換器21の上流側空間に設けられている。給気ホース18は加湿ユニット60に接続されており、加湿ユニット60から送られてくる湿度の高い空気が給気口25から室内熱交換器21の上流側空間に供給される。このような湿度の高い空気が給気口25から供給されている状態で室内ファン22を駆動することにより、室内機20の吹出口24から吹き出される調和空気の湿度を高くすることができる。例えば、このとき同時に室内熱交換器21を蒸発器として用いて、室内機20に、加湿運転と冷房運転を同時に行わせることができる。
【0026】
(3)室外機30の構成
(3−1)全体構成
図2は、室外機30の縦断面図である。また、図3は、天板48が取り外された状態の室外機30の斜視図である。また、図4は、図3の室外機30から防護グリル56が取り外された状態の当該室外機30の斜視図である。図1図4において、室外機30は、ケーシング40と仕切板43とを備えている。ケーシング40の内部空間は、仕切板43によって送風機室41と機械室42とに分けられている。
【0027】
室外機30には、室外熱交換器33、加湿ユニット60の他に、室外ファン39が備えている。室外ファン39が駆動されると、外気が室外熱交換器33の後面側から吸い込まれ、室外熱交換器33を通過し、吹出口46a(図4参照)から吹き出される。吹出口46aの前面は、防護グリル56で覆われており、外部からプロペラ39bに触れられないようになっている。
【0028】
前述の加湿ユニット60の少なくとも一部は室外機30の送風機室41に配置され、具体的には、室外熱交換器33を通過する空気の下流側に位置する。
【0029】
(3−2)詳細構成
(3−2−1)ケーシング40
ケーシング40は、前板46、右側板47、天板48(図2参照)、底板49、背面部50(図2参照)、及び図示しない左側板からなる筐体であり、内部を仕切板43によって送風機室41と機械室42とに分けられている。送風機室41には、室外熱交換器33及び室外ファン39が配置されている。機械室42には、圧縮機31及び電装品ユニット55が配置されている。
【0030】
仕切板43は、天板48側から底板49側に向って右側板47と略並行に延びている。また、仕切板43の幅方向は、室外熱交換器33の右端から前方に向かって円弧状に延びている。その結果、仕切板43は送風機室41から機械室42に風が回り込まないように遮蔽する機能を有している。
【0031】
また、図4に示すように、前板46には、円形の吹出口46aが形成されている。吹出口46aには、その周縁に沿うようにリング状のベルマウス52が取り付けられている。
【0032】
(3−2−2)圧縮機31
圧縮機31は、機械室42側に位置しており、底板49に固定されている。運転時、圧縮機31は高温になるので、機械室42は送風機室41に比較して温度が高くなっている。
【0033】
(3−2−3)電装品ユニット55
電装品ユニット55は、機械室42に位置しており、圧縮機31および室外ファン39などを駆動するための電子部品を集約した制御基板を搭載している。なお、電装品ユニット55のうち所定の電子部品を冷却するためのヒートシンクだけは、送風機室41側に配置されている。
【0034】
(3−2−4)室外熱交換器33
室外熱交換器33は、ケーシング40の背面部と左側板とに対峙できるように、L字状に成形されている。また、室外熱交換器33の高さは、天板48と底板49との距離にほぼ等しい寸法を有している。
【0035】
(3−2−5)室外ファン39
室外ファン39は、ファンモータ39aによって駆動されるプロペラ39bを有しており、室外熱交換器33の下流側に設けられている。プロペラ39bの一部は、このベルマウス52で囲まれた空間内に入るように配置されている。
【0036】
(3−2−6)防護グリル56
防護グリル56は、ケーシング40の前板46に取り付けられ、吹出口46aを覆っている。防護グリル56には、外気を吹き出すため、開口部56aが多数形成されている。
【0037】
(3−2−7)加湿ユニット60
図5は、図4の室外機30から前板46、右側板47及び電装品ユニット55を取り外した状態の当該室外機30の斜視図である。図5において、加湿ユニット60は、室外熱交換器33と前板46との間で、室外ファン39の上方に配置されている。また、加湿ユニット60は、送風機室41と機械室42とに跨って配置されており、その上面の高さは、室外熱交換器33の上端の高さと一致する。加湿ユニット60は、図1に示すように、外気から水分を吸着するための吸着部61と、吸着部61で取り込んだ水分を放出するための放出部62とを有している。
【0038】
(4)加湿ユニット60の詳細構成
(4−1)加湿ロータ63
吸着部61と放出部62とは、1枚の円盤状の加湿ロータ63によって構成されており、回転によって先に吸着部61であった部分が放出部62になり、先に放出部62であった部分が吸着部61になる。加湿ロータ63は、円盤の中心を回転軸として回転するように取り付けられ、加湿ロータ63の周囲に設けられているギア63a(図6参照)に伝達されるロータ駆動用モータ64(図6参照)の動力によって回転駆動される。
【0039】
加湿ロータ63は、ゼオライト等の焼成によって形成されたハニカム構造のゼオライトロータである。ゼオライト等の吸着剤は、常温で空気から水分を吸着し、ヒータなどの熱源で高温に加熱された空気に曝されて温度上昇したときに水分を放出する。つまり、加湿ロータ63のうちの高温の空気にさらされていない側が吸着部61になり、高温の空気にさらされている側が放出部62になる。また、加湿ユニット60は、加湿ロータ63の放出部62を通過させる空気を加熱するため、放出部62の上方にヒータ71(図1参照)を有している。なお、加湿ロータ63の外周の全周囲は、包囲壁によって包囲されている。
【0040】
(4−2)吸着用ダクト68
図1において、吸着部61には、吸着部61に外気を導くための吸着用ダクト68が設けられている。また、吸着用ダクト68は、正面部前方に向かって開口していて外気を吸い込む吸着用吸入口272を形成している。
【0041】
水分を含む空気は、吸着用吸入口272から吸い込まれた後、吸着用ダクト68内を流れて加湿ロータ63に到達し、加湿ロータ63を透過する際に水分が吸着され、排気口273から排出される。排気口273は、室外ファン39が回転するときに負圧になる空間に対向しており、排気口273側の気圧が吸着用吸入口272側より低くなる原理によって、空気が吸着用吸入口272から吸い込まれる。
【0042】
図4及び図5に示すように吸着用吸入口272は、前板46の吹出口46aの上側に設けられており、吹出口46aと同様に前板46の前方に向かって開口している。吸着用吸入口272は前板46の上部前方の空気を吸い込むが、吹出口46aから吹き出された空気を吸い込むことはない。なぜなら、室外ファン39によって前方へ押し出された空気は、ベルマウス52に沿って進み、吹出口46aから勢いよく吹き出されるからである。
【0043】
上記のような構成を採る目的は、より水分を含んだ空気を取り込むためである。通常、加湿運転は、暖房運転時に行われるので、室外熱交換器33を通過した空気は低温低湿になっている。このため、低温空気が吸着用吸入口272から吸い込まれた場合、加湿ロータ63が吸着することができる水分量が低下する。
【0044】
しかしながら、吸着用吸入口272が吹出空気を吸い込まない構成にしておけば、より水分を含んだ外気を取り込むことができるので、加湿ロータ63が吸着する水分量が低下することを防止することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、静圧を利用して吸着用吸入口272へ空気を流入させているが、静圧式に限定されるものではなく、吸着用吸入口272へ空気を押し込む動圧式であってもよい。その場合、室外熱交換器33を通過していない空気を吸着用吸入口272へ押し込む動圧式がより好ましい。
【0046】
(4−3)ヒータ71
ヒータ71は、放出部62から水分を放出させるために、加湿ロータ63の放出部62の上方に設けられている。ヒータ71は、加湿用吸入口72から吸入されて加湿ロータ63に送られる空気を加熱する。加熱された空気は、加湿ロータ63を透過するときに加湿ロータ63から水分を放出させて、高湿の空気となって加湿用第1ダクト73に入る。
【0047】
(4−4)加湿用第1ダクト73
図1において、加湿用第1ダクト73は、加湿用吸入口72から吸い込まれた空気をヒータ71経由で放出部62まで導き、さらに加湿ロータ63を透過した空気をファン75まで導く。加湿用吸入口72から吸い込まれる空気の流れは、ファン75によって発生する。
【0048】
加湿用吸入口72から吸い込まれた空気は、ヒータ71に加熱されて高温空気になり、さらに、加湿ロータ63を透過する際に加湿ロータ63から水分を放出させ高温高湿空気となってファン75に向う。
【0049】
図4及び図5に示すように加湿用吸入口72は、前板46の吹出口46aの上側に設けられており、吹出口46aと同様に前板46の前方に向かって開口している。加湿用吸入口72は前板46の上部前方の空気を吸い込むが、吹出口46aから吹き出された空気を吸い込むことはない。なぜなら、室外ファン39によって前方へ押し出された空気は、ベルマウス52に沿って進み、吹出口46aから勢いよく吹き出されるからである。
【0050】
さらに、図2に示すように、遮蔽板79が、防護グリル56と前板46との間に配置され、吹出口46aから吹き出される空気が進行する流路と加湿用吸入口72とを仕切っているので、吹出口46aの縁から壁伝いに加湿用吸入口72に空気が侵入することも防止されている。
【0051】
上記のような構成を採る目的は、ヒータ消費電力の増加を防止するためである。通常、加湿運転は、暖房運転時に行われるので、室外熱交換器33を通過した空気は低温になっている。このため、低温空気が加湿用吸入口72から吸い込まれた場合、ヒータ71の発熱量を増やす必要がある。
【0052】
しかしながら、加湿用吸入口72が吹出空気を吸い込まない構成にしておけば、ヒータ71の発熱量を増やす必要もなく、ヒータ消費電力の増加を防止することができる。
【0053】
(4−5)ファン75
ファン75は、加湿空気を所定の方向へ送り出す羽根車75aと、その羽根車75aを駆動するファンモータ75bとを有している。ファン75は、羽根車75aの回転軸が鉛直方向となる姿勢で配置され、その上方にファンモータ75bが位置し、羽根車75aの回転軸にファンモータ75bの回転軸が直結されている。また、ファン75は送風機室41に配置され、室外熱交換器33の空気流れの下流側に位置している。
【0054】
通常、加湿ユニット60の稼動は暖房運転時に行われるので、室外熱交換器33が蒸発器として機能しており、送風機室41は機械室42に比べて低温である。この低温の空気がファンモータ75bを冷却するので、ファンモータ75bの温度上昇は抑制される。
【0055】
また、図1に示すように、羽根車75aはファンケーシング81に囲まれており、このファンケーシング81と水平ダクト部181の入口とが繋がっている。ファンモータ75bは、外側をモータカバー82で覆われている。モータカバー82は、径の異なる円筒を上下2段に重ねた形状をなしており、大径部82aの上に小径部82bが載っている。小径部82bは、完全な円筒形状ではなく、一部に切り欠き82cが形成されている。この小径部82bがファンモータ75bを覆い、そのとき、切り欠き82cは前板46側を向いている。
【0056】
ファンモータ75bは冷却されるために送風機室41側に置かれるので、モータカバー82が完全にファンモータ75bを覆うよりも切り欠き82cを設けて、切り欠き82cから冷風が入り込むようにしている方が好ましい。
【0057】
さらに、このモータカバー82は、大径部82aによってファンケーシング81をも覆っている。ファンケーシング81が送風機室41で低温に曝されると、内部の高温高湿空気の温度が低下して結露の要因になるが、モータカバー82がファンケーシング81の外側を覆うことによって、低温の空気はモータカバー82の外周面に沿って流れるので、ファンケーシング81が低温空気で直接冷却されることはなく、さらに、モータカバー82によるファンケーシング81の断熱効果も作用するので、ファンケーシング81内部の加湿空気の温度低下を抑制することができる。
【0058】
また、室外機30は室外に据え付けられるので、風雨時や室外機洗浄時には、背面部50側から送風機室41に水が進入する。しかし、ファンモータ75bはモータカバー82で覆われており、ファンモータ75bへの水かかりは回避される。なお、モータカバー82の切り欠き82cは前板46側を向いているので、水が切り欠き82cから進入することは防止されている。
【0059】
本実施形態では、ファン75は、羽根車75aの回転軸にファンモータ75bの回転軸を直結させているが、これに限定されるものではなく、ファンモータ75bの回転軸の回転をギアによって羽根車75aの回転軸に伝達する構成でもよい。この場合、少なくともファンモータ75bが送風機室41に配置され、室外熱交換器33の空気流れの下流側に位置していればよい。
【0060】
(4−6)加湿用第2ダクト180
加湿用第2ダクト180は、ファン75から押し出される高温高湿空気を給気ホース18の接続口183まで導くダクトである。加湿用第2ダクト180のほぼ全体が機械室42に位置しているが、給気ホース18との接続口183を含む所定部分だけは、右側板47を挟んで機械室42の反対側に位置する。
【0061】
加湿用第2ダクト180は、水平ダクト部181と傾斜ダクト部182とを有している。水平ダクト部181は高温高湿空気を水平に導くダクトであり、傾斜ダクト部182は水平ダクト部181に流入した高温高湿空気を斜め下方に導くダクトである。水平ダクト部181は、送風機室41と機械室42との境界から右側板47の後方端に向って延びている。したがって、水平ダクト部181の前方には台形状の空間が確保されており、そこに電装品ユニット55が配置されている。
【0062】
なお、水平ダクト部181の長手方向ほぼ中央に、傾斜ダクト部182との接続口が設けられている。傾斜ダクト部182は、水平ダクト部181との接続口から下方且つ右側板47方向に延び、右側板47を貫通した直後に鉛直下方に曲げられ、所定長さだけ鉛直下方に進んで終端となる。この終端が、給気ホース18との接続口183である。
【0063】
機械室42の下部には圧縮機31が設置されているので比較的温度が高く、傾斜ダクト部182については高温の圧縮機31に近づくことによる温度低下抑制効果が期待される。これに対し、水平ダクト部181は、機械室42の上部に位置しており、圧縮機31の放熱による温度低下抑制効果は傾斜ダクト部182に比べて減少する。
【0064】
しかし、水平ダクト部181の高さ位置は、電装品ユニット55の高さ方向の厚み範囲にかかるように配置されているので、その温度低下抑制効果の減少分は電装品ユニット55の放熱を利用することによって補うことができる。
【0065】
なお、「水平ダクト部181の高さ位置が電装品ユニット55の高さ方向の厚み範囲にかかる」とは、電装品ユニット55と水平ダクト部181とを前板46側から視たとき、水平ダクト部181の厚みと、電装品ユニット55の厚みとが重なるような位置関係にあることである。
【0066】
(4−7)フレーム610
図2及び図5において、フレーム610は、送風機室41と機械室42とに跨る樹脂製部材である。前述の加湿ロータ63、吸着用ダクト68、ヒータ71、加湿用第1ダクト73、ファン75、ファンケーシング81、モータカバー82、及び加湿用第2ダクト180は、フレーム610に組み込まれて加湿ユニット60を構成する。
【0067】
(4−7−1)フレーム610と仕切板43との位置関係
本実施形態では、仕切板43はフレーム610を境に上下に2分されており、以後、フレーム610より上側の仕切板を上部仕切板43a、下側を下部仕切板43bという。また、上部仕切板43aは樹脂製であり、下部仕切板43bは板金製である。
【0068】
本実施形態の構成では、加湿ユニット60は、ケーシング40の上部から組み入れられるのが合理的であり、フレーム610が下部仕切板43bに載り、上部仕切板43aがフレームに載る。それゆえ、下部仕切板43bがフレーム610を下から支える構成となり、加湿ユニット60の位置決めとして利用することができる。
【0069】
(4−7―2)上部仕切板43a
加湿ユニット60の輪郭は周辺部材の輪郭に合わせて決定されるが、特に、加湿ユニット60の上側は形状的制約を受け易く、それに従って上部仕切板43aも形状的制約を受ける。
【0070】
具体的には、図5に示すように、機械室42内で且つフレーム610の上側には加湿用第2ダクト180の水平ダクト部181が位置するので、上部仕切板43aは水平ダクト部181との干渉をさけながら、且つ送風機室41の空気が機械室42に侵入しないように阻止しなければない。
【0071】
図6は、加湿ユニット60及び電装品ユニット55の平面図である。図6において、上部仕切板43aは、水平ダクト部181のうち送風機室41と対峙する壁面を覆いつつ、従来の仕切板のように天板48まで鉛直上方に延び且つ室外熱交換器33の右端から前方に向かって円弧状に延びる必要があり、複雑な形状が要求される。しかしながら、上部仕切板43aは樹脂製であるので、上記のような形状的制約に柔軟に対応することができる。さらに、本実施形態では、モータカバー82と上部仕切板43aとを同一の樹脂材料で一体成形することによって、部品点数の削減を図っている。
【0072】
(4−7−3)下部仕切板43b
また、下部仕切板43bは、高さ方向の制約を除いては従来の形状を維持することができる。図5に示すように、下部仕切板43bは、フレーム610の下面から底板49側に向って右側板47(図4参照)と略並行に延びている。また、下部仕切板43bの幅方向は、室外熱交換器33の右端から前方に向かって円弧状に延びている。その結果、下部仕切板43bは送風機室41から機械室42に風が回り込まないように遮蔽することができる。
【0073】
(4−8)液閉鎖弁37,ガス閉鎖弁38と閉鎖弁カバー57
液閉鎖弁37及びガス閉鎖弁38は、図5に示すように、ケーシング40の右側面下部に固定されている。液閉鎖弁37及びガス閉鎖弁38は、室内機20からの冷媒配管14,16が接続される。液閉鎖弁37及びガス閉鎖弁38は、工場出荷時は閉じられているが、空気調和装置10の据付が完了した後は開かれて冷媒が流れる状態となる。
【0074】
閉鎖弁カバー57は、右側板47に装着される。閉鎖弁カバー57は、液閉鎖弁37及びガス閉鎖弁38と干渉しないように、予め下方部分が外側に凸となるように弁カバー部57aが成形されている。また、閉鎖弁カバー57の上方部分も、給気ホース18の接続口183と干渉しないよう外側に凸となるようにホースカバー部57bが成形されている。
【0075】
加湿用第2ダクト180の傾斜ダクト部182のうち右側板47を出てから給気ホース18の接続口183に至るまでの区間は、右側板47とホースカバー部57bとで囲まれた空間に位置する。右側板47を出てから接続口183に至るまでの区間は、外気に触れて冷却されやすい部分である。この区間が右側板47とホースカバー部57bとで囲まれた空間に位置することによって、この区間の冷却が抑制され、その内部を通過する高温高湿空気の温度低下、およびその内部での結露が抑制される。
【0076】
(5)特徴
(5−1)
この室外機30では、仕切板43が上部仕切板43aと下部仕切板43bとに分割されている。上部仕切板43aは樹脂製であるので、形状的制約に柔軟に対応することができ、コスト増を抑制することができる。
【0077】
(5−2)
また、下部仕切板43bが、高さ方向の制約を除いては従来の形状を維持することができる。したがって、下部仕切板43bを板金製にして、加湿ユニット60に関係なく形状を統一することができ、多機種になっても兼用が可能であり、低コスト化を図ることができる。
【0078】
(5−3)
また、下部仕切板43bがフレーム610を下から支えるので、加湿ユニットの位置決めとして利用することができる。
【0079】
(5−4)
また、上部仕切板43aとモータカバー82とが一体成形されることによって、部品点数、および組立工数が削減される。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本願発明によれば、加湿ユニットを備えた空調室外機の室外機に限らず、仕切板によって空間を2分割されたケーシング内にそれら2つの空間を跨ぐように他のユニットが配置される機器にも有用である。
【符号の説明】
【0081】
10 空気調和装置
30 室外機
40 ケーシング
41 送風機室
42 機械室
43 仕切部材
43a 上部仕切板
43b 下部仕切板
60 加湿ユニット(加湿機構)
75a 羽根車(加湿用ファン)
75b ファンモータ
82 モータカバー
610 樹脂製フレーム
【先行技術文献】
【特許文献】
【0082】
【特許文献2】特開2008−241212号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6