(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに対向する一対の主面と、前記一対の主面間を連結するように伸び且つ第1の変位方向で互いに対向する第1の側面対と、前記一対の主面間を連結すると共に前記第1の変位方向に対して直交する第2の変位方向で互いに対向する第2の側面対とを有する圧電体と、
前記圧電体の前記第1の側面対を覆う樹脂及び前記第2の側面対を覆う樹脂を有する樹脂と、
を備える圧電素子であって、
前記第1の側面対と比べて剛性が求められる前記第2の側面対を覆う樹脂は、前記第2の側面対と比べて伸縮性が求められる前記第1の側面対を覆う樹脂よりもヤング率が高い、圧電素子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した、圧電体の側面が樹脂でコーティングされた圧電素子を搭載したHDDヘッドサスペンションにおいては、側面にコーティングされた樹脂の影響により、圧電素子の変位(伸縮)が妨げられることがあった。
【0007】
すなわち、圧電素子の変位を正確に伝達するために、側面をコーティングする樹脂は、高い剛性を有するヤング率の高い樹脂が採用されていた。
【0008】
しかし、ヤング率の高い樹脂で側面全体をコーティングした場合には、サスペンションに伝達されるべき変位が妨げられる。以上より、パーティクルの発生を抑制するために圧電体側面に樹脂をコーティングした場合にも、圧電素子を効率的に変位させる技術が従来より求められていた。
【0009】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、効率的に変位することができる圧電素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る圧電素子は、互いに対向する一対の主面と、一対の主面間を連結するように伸び且つ第1の変位方向で互いに対向する第1の側面対と、一対の主面間を連結すると共に第1の変位方向に対して直交する第2の変位方向で互いに対向する第2の側面対とを有する圧電体と、圧電体の第1の側面対を覆う樹脂及び第2の側面対を覆う樹脂を有する樹脂と、を備える圧電素子であって、第1の側面対を覆う樹脂と、第2の側面対を覆う樹脂とは、ヤング率が異なる。
【0011】
この圧電素子においては、圧電体の第1の側面対を覆う樹脂のヤング率と、第2の側面対を覆う樹脂のヤング率とを、異ならせるように、それぞれの側面を樹脂で覆っている。このことによって、剛性が求められる圧電体の側面についてはヤング率が高い樹脂でコーティングし、伸縮性が求められる圧電体の側面についてはヤング率が低い樹脂でコーティングすることができる。すなわち、本発明に係る圧電素子は、パーティクルの発生を抑制するために圧電体の側面に樹脂をコーティングした場合にも、効率的に変位することができる。
【0012】
また、本発明に係る圧電素子において、一対の主面は長方形であり、第1の変位方向とは一対の主面における短手方向、第2の変位方向とは一対の主面における長手方向、であり、第2の側面対を覆う樹脂は、第1の側面対を覆う樹脂よりもヤング率が高いことが好ましい。
【0013】
主面を長方形とした場合に、サスペンションに接して圧電体の変位を伝達する長手方向で対向する側面の樹脂のヤング率は高くし、変位が大きい短手方向で対向する側面の樹脂のヤング率を低くすることができる。すなわち、本発明に係る圧電素子は、圧電体の側面を覆う樹脂のヤング率を、側面の役割に応じた適切なものとすることができ、効率的に変位することができる。
【0014】
本発明に係る圧電素子の製造方法は、圧電基板の表面における第1の方向に、並列する複数の第1の溝を設け、複数の第1の溝に第1の樹脂を充填し、硬化させる工程と、圧電基板の表面における第1の方向と交差する方向である第2の方向に、並列する複数の第2の溝を設け、複数の第2の溝に第2の樹脂を充填し、硬化させる工程と、第1の樹脂が充填された部分を第1の方向に沿って切断するとともに、第2の樹脂が充填された部分を第2の方向に沿って切断することで、第1の溝の内側面に相当する第1の側面対及び第2の溝の内側面に相当する第2の側面対を有する圧電体を得る工程と、を含み、第1の側面対を覆う第1の樹脂と、第2の側面対を覆う第2の樹脂とのヤング率が異なる。
【0015】
この圧電素子の製造方法において製造される圧電素子は、圧電体の第1の側面対を覆う樹脂のヤング率と、第2の側面対を覆う樹脂のヤング率とを、異ならせるように、それぞれの側面を樹脂で覆っている。このことによって、剛性が求められる圧電体の側面についてはヤング率が高い樹脂でコーティングし、伸縮性が求められる圧電体の側面についてはヤング率が低い樹脂でコーティングすることができる。すなわち、本発明に係る圧電素子の製造方法によれば、パーティクルの発生を抑制するために圧電体の側面に樹脂をコーティングした場合にも、効率的に変位することができる圧電素子を得ることができる。また、第1の溝を設けることによる第1の樹脂の硬化と、第2の溝を設けることによる第2の樹脂の硬化とを、異なる工程で行っているため、異なる側面対を覆う樹脂のヤング率を、自在に決定できる。
【0016】
また、本発明に係る圧電素子の製造方法において、第1の樹脂と第2の樹脂とが同じ成分であることが好ましい。同じ成分の樹脂を用いることで、複数の樹脂を用意する必要がなく、樹脂の充填作業を簡略化することができる。
【0017】
また、本発明に係る圧電素子の製造方法において、第1の樹脂と第2の樹脂とが異なる成分であることが好ましい。異なる成分の樹脂を用いることで、第1の樹脂の硬化と第2の樹脂の硬化を行う際の環境(温度等)を異ならせる必要がなく、樹脂の硬化作業を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、効率的に変位することができる圧電素子及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0021】
以下に本発明の実施形態に係るディスク装置用サスペンション10について、
図1〜5を参照して説明する。
【0022】
図1に示されたデュアル・アクチュエータ方式のサスペンション10は、ロードビーム11と、マイクロアクチュエータ部12と、ベースプレート13、ヒンジ部材14を備えている。
【0023】
ロードビーム11は、厚さが例えば100μm前後のばね性を有する金属板からなり、その先端部にロードビーム11にフレキシャ15が取付けられている。フレキシャ15はロードビーム11よりもさらに薄い金属製の薄板ばねからなる。フレキシャ15の前端部に、磁気ヘッドを構成するスライダ16が設けられている。
【0024】
図2に示すようにベースプレート13の基部20に円形のボス孔21が形成されている。ベースプレート13の基部20と前端部22との間に、後述する圧電素子40を収容可能な大きさの一対の開口部23が形成されている。一対の開口部23の間に、ベースプレート13の前後方向(サスペンション10の軸線方向)に延びる帯状の連結部24が設けられている。連結部24は、ベースプレート13の幅方向(
図1中に矢印Sで示すスウェイ方向)にある程度撓むことができる。
【0025】
ベースプレート13の基部20は、図示しないボイスコイルモータによって駆動されるアクチュエータアームの先端部に固定され、ボイスコイルモータによって旋回駆動されるようになっている。ベースプレート13は板厚が例えば200μm前後のステンレス鋼などの金属板からなる。本実施形態の場合、ベースプレート13とヒンジ部材14とによって、アクチュエータベース25が構成されている。
【0026】
図3に示すようにヒンジ部材14は、ベースプレート13の基部20に重ねて固定される基部30と、ベースプレート13の連結部24と対応した位置に形成された帯状のブリッジ部31と、ベースプレート13の前端部22と対応した位置に形成された中間部32と、板厚方向に弾性変形可能な可撓性を有する一対のヒンジ部33と、ロードビーム11に固定される先端部34などを有している。このヒンジ部材14は、板厚が例えば50μm前後のばね性を有する金属板からなる。
【0027】
マイクロアクチュエータ部12には、圧電アクチュエータとして、一対の圧電素子40が搭載されている。圧電素子40はいずれも長方形平板状であり、その長手方向がベースプレート13の前後方向(サスペンション10の軸線方向)に沿って互いにほぼ平行となるように、アクチュエータベース25の開口部23に収容されている。
【0028】
ここで、圧電素子40の構成について、
図4を参照しつつ説明する。なお、説明の便宜上、適宜、圧電素子40の長手方向をX方向、短手方向をY方向、厚さ方向をZ方向として説明する。
【0029】
圧電素子40は、素子本体41と、素子本体41をその厚さ方向(Z方向)から覆う一対の電極42A、42Bとで構成されている。
【0030】
素子本体41は、圧電体43と樹脂44とからなっている。
【0031】
圧電体43は、長方形平板状であり、たとえばPZT等の圧電材料で構成されている。すなわち、圧電体43は、Z方向において互いに対向する上面43aおよび下面43b(一対の主面)と、上面43aおよび下面43bを連結するようにZ方向に延びる4つの側面(端面)43c、43d、43e、43fとを有する。なお、4つの側面43c、43d、43e、43fは、Y方向で互いに対向する第1の側面対43c、43dと、X方向で互いに対向する第2の側面対43e、43fとに区別することができる。
【0032】
樹脂44は、圧電体43の4つの側面43c、43d、43e、43fを囲むようにして全体的に覆っている。樹脂44は、圧電体43の短手方向(Y方向)に直交する端面43c、43dを覆う樹脂45Aと、圧電体43の長手方向(X方向)に直交する端面43e、43fを覆う樹脂45Bとで構成されている。樹脂45Aと樹脂45Bとは、後述する製造方法において説明するとおり、異なるタイミングで形成される。樹脂45Aおよび樹脂45Bはたとえばエポキシ系樹脂で構成されており、樹脂45Aの材料と樹脂45Bの材料とは同一であってもよく異なっていてもよい。樹脂45Aまたは樹脂45Bをエポキシ系樹脂で構成する場合には、該エポキシ系樹脂として、例えば、ビスフェノールA型エポキシ系樹脂等を採用することができる。
【0033】
第1の側面対43c、43dを覆う樹脂45Aの樹脂と、第2の側面対43e、43fを覆う樹脂45Bの樹脂とは、ヤング率が異なるものを採用する。
【0034】
樹脂45Aと樹脂45Bのヤング率は、第1の側面対43c、43dと、第2の側面対43e、43fの役割に応じて決める。詳細は後述するが、
図5に示すように、圧電素子40の長手方向が、ベースプレート13の前後方向に沿うようにして、ベースプレート13の開口部23に収容される。この場合、第1の側面対43c、43dは、圧電素子40の変位を正確にサスペンション10に伝達する役割を担う。一方、第2の側面対43e、43fは、電圧印加時に大きく伸縮し、圧電素子40を変位される役割を担う。
【0035】
第1の側面対43c、43d、及び、第2の側面対43e、43fそれぞれの役割から、第1の側面対43c、43dを覆う樹脂45Aとして比較的ヤング率が低い樹脂を採用し、第2の側面対43e、43fを覆う樹脂45Bとして比較的ヤング率が高い樹脂を採用し、第2の側面対43e、43fを覆う樹脂45Bのヤング率を、第1の側面対43c、43dを覆う樹脂45Aのヤング率よりも高くする。
【0036】
なお、樹脂45Aと樹脂45Bのヤング率を異ならせるためには、樹脂45Aと樹脂45Bの成分(エポキシ系樹脂の種類、及び、硬化剤の種類)を異ならせればよい。また、樹脂45Aと樹脂45Bの成分は同様として、硬化時の温度を異ならせることで、樹脂45Aと樹脂45Bのヤング率を異ならせてもよい。例えば、脂肪族ポリアミン硬化剤によりビスフェノールAエポキシ樹脂を硬化する場合、硬化時の温度を80℃とすると硬化後の樹脂のヤング率は2GPaとでき、硬化時の温度を120℃とすると硬化後の樹脂のヤング率を4GPaとできる。
【0037】
比較的ヤング率が高い樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド、ポリイミドなどが挙げられる。また、ヤング率を高めるために、シリカなどの無機フィラーを加えてもよい。
【0038】
一対の電極42A、42Bは、金属等の導電材料からなる。各電極42A、42Bは、たとえば素子本体41の上下面(すなわち、圧電体43の上下面および樹脂44の上下面)を覆うように形成されている。電極材料としては、Au、Ag、Cu、Pt、Cr、Ni、Wなどの金属を使うことができる。
【0039】
このような圧電素子40によれば、一対の電極42A、42B間に電圧を印加することで、圧電体43が長手方向(X方向)および短手方向(Y方向)に伸縮し、それに伴い、圧電素子40全体が長手方向(X方向)および短手方向(Y方向)に伸縮する。
【0040】
続いて、圧電素子40のサスペンション10への搭載態様について、
図5を参照しつつ説明する。
【0041】
圧電素子40をサスペンション10に搭載するときには、圧電素子40の長手方向(X方向)が、ベースプレート13の前後方向(サスペンション10の軸線方向)に沿うようにして、ベースプレート13の開口部23に収容する。このとき、圧電素子40の前端部はヒンジ部材14の中間部32に支持されるようにして接着剤50で接着固定され、同様に、圧電素子40の後端部はヒンジ部材14の基部30に支持されるようにして接着剤50で固定される。
【0042】
なお、圧電素子40の電極42A、42B間に電圧を印加するために、電極42A、42Bにはそれぞれ図示しない電気配線が設けられる。なお、上述した接着剤50として導電性接着剤を用い、接着剤50を電気配線の一部として利用してもよい。
【0043】
一対の圧電素子40をサスペンション10に搭載したときに、一対の圧電素子40に印加する電圧を制御することにより、一方の圧電素子40を長手方向に所定長さだけ伸張させるとともに、他方の圧電素子40を長手方向に所定長さだけ収縮させることができる。このように、サスペンション10においては、一対の圧電素子40の各々の伸縮を制御することで、ロードビーム11側を幅方向(スウェイ方向S)に所望量だけ変位させることができる。
【0044】
次に、圧電素子40を作製する手順について、
図6〜10を参照しつつ説明する。
【0045】
圧電素子40を作製する際には、まず、板状またはテープ状の基体60上に圧電体43となるべき圧電基板62を保持した状態で、
図6に示すように、圧電基板62の上面に、同一間隔G1で並列する複数の第1の溝62aを形成する。複数の第1の溝62aの延在方向が、作製される圧電素子40の長手方向(X方向)に相当し、複数の第1の溝62aの間隔G1が圧電体43の短手方向長さ(Y方向長さ)に相当する。複数の第1の溝62aの形成には、一般に利用される切削工具(ダイシングソー等)を用いることができ、圧電基板62の下面に達しない深さまで切削される。
【0046】
次に、
図7に示すように、圧電基板62の上面を、印刷工法等により樹脂45Aとなるべき熱硬化性の第1の樹脂64で覆う。それにより、圧電基板62の上面に形成された複数の第1の溝62aそれぞれに第1の樹脂64が充填される。充填後、所定の熱硬化温度(たとえば、80℃)で加熱して、第1の樹脂64を硬化させる。
【0047】
続いて、
図8に示すように、第1の樹脂64で覆われた圧電基板62の上面に、複数の第1の溝62aの延在方向に対して直交する方向(Y方向)に沿って、同一間隔G2で並列する複数の第2の溝62bを形成する。複数の第2の溝62bの延在方向が、作製される圧電素子40の短手方向(Y方向)に相当し、複数の第2の溝62bの間隔G2が圧電体43の長手方向長さ(X方向長さ)に相当する。複数の第2の溝62bの形成も、複数の第1の溝62aの形成同様、一般に利用される切削工具を用いることができ、複数の第1の溝62aと略同じ深さまで切削される。その際、
図8に示すように、圧電基板62と樹脂64とが一体的に切削される。
【0048】
そして、
図9に示すように、第1の樹脂64で覆われた圧電基板62の上面を、印刷工法等により樹脂45Bとなるべき熱硬化性の第2の樹脂66で覆う。それにより、上述した複数の第2の溝62bそれぞれに第2の樹脂66が充填される。充填後、所定の熱硬化温度(たとえば、80℃)で加熱して、第2の樹脂66を硬化させる。
【0049】
上述したとおり、硬化後の第1の樹脂64(樹脂45A)と第2の樹脂66(樹脂45B)とは、ヤング率が異なる。第1の樹脂64と第2の樹脂66のヤング率を異ならせるためには、第1の樹脂64と第2の樹脂66の成分(エポキシ系樹脂の種類、及び、硬化剤の種類)を異ならせればよい。また、第1の樹脂64と第2の樹脂66の成分は同様にして、例えば硬化時の温度を異ならせることで、第1の樹脂64と第2の樹脂66のヤング率を異ならせても良い。
【0050】
さらに、圧電基板62を、たとえば研磨加工により、厚さ方向に直交する面(X−Y面)に沿って薄板化し、
図10に示す厚さDの薄板68を取り出す。このときに得られる薄板68の厚さDが、作製される圧電素子40の圧電体43の厚さに相当する。薄板68は、圧電基板62に形成された溝62aおよび溝62bよりも浅い位置において取り出されるため、薄板68では、圧電基板62が樹脂64および樹脂66によって格子状に区切られる。
【0051】
その後、薄膜68の上下面を、スパッタリングあるいはメッキ等により、電極42A、42Bとなるべき電極膜(図示せず)を形成するとともに、樹脂64の中間線L1および樹脂66の中間線L2に沿って格子状に切断してチップ化する。それにより、
図4に示した圧電素子40が得られる。電極を形成後は、分極する。電極形成はスパッタ、メッキ、焼付けなどの方法を適宜選択する。用途によっては、圧電素子アレイとすることもできる。
【0052】
以上、詳細に説明したとおり、本実施形態に係る圧電素子40は、互いに対向する一対の主面(上面43aおよび下面43b)と、一対の主面(上面43aおよび下面43b)間を連結するように伸び且つY方向(第1の変位方向)で互いに対向する第1の側面対43c、43dと、一対の主面(上面43aおよび下面43b)間を連結すると共に第1の変位方向に対して直交するX方向(第2の変位方向)で互いに対向する第2の側面対43e、43fとを有する圧電体43と、圧電体43の第1の側面対43c、43dを覆う樹脂45A及び第2の側面対43e、43fを覆う樹脂45Bを有する樹脂44と、を備える圧電素子40であって、第1の側面対を覆う樹脂45Aと、第2の側面対を覆う樹脂45Bとは、ヤング率が異なる。
【0053】
この圧電素子40においては、圧電体43の第1の側面対43c、43dを覆う樹脂45Aのヤング率と、第2の側面対43e、43fを覆う樹脂45Bのヤング率とを、異ならせるように、それぞれの側面を樹脂で覆っている。このことによって、剛性が求められる圧電体43の第1の側面対43c、43dについてはヤング率が高い樹脂でコーティングし、伸縮性が求められる第2の側面対43e、43fについてはヤング率が低い樹脂でコーティングすることができる。すなわち、本発明に係る圧電素子40は、パーティクルの発生を抑制するために圧電体43の側面に樹脂をコーティングした場合にも、効率的に変位することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る圧電素子40において、一対の主面(上面43aおよび下面43b)は長方形であり、第1の変位方向とは一対の主面における短手方向、第2の変位方向とは一対の主面における長手方向、であり、第2の側面対43e、43fを覆う樹脂45Bは、第1の側面対43c、43dを覆う樹脂45Aよりもヤング率が高いことが好ましい。
【0055】
主面(上面43aおよび下面43b)を長方形とした場合に、サスペンション10に接して圧電体43の変位を伝達する長手方向で対向する第2の側面対43e、43fの樹脂45Bのヤング率は高くし、変位が大きい短手方向で対向する第1の側面対43c、43dの樹脂のヤング率を低くすることができる。すなわち、本発明に係る圧電素子40は、圧電体43の側面を覆う樹脂のヤング率を、側面の役割に応じた適切なものとすることができ、効率的に変位することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る圧電素子40の製造方法は、圧電基板62の表面における第1の方向に、並列する複数の第1の溝62aを設け、複数の第1の溝62aに第1の樹脂64を充填し、硬化させる工程と、圧電基板62の表面における第1の方向と交差する方向である第2の方向に、並列する複数の第2の溝62bを設け、複数の第2の溝62bに第2の樹脂66を充填し、硬化させる工程と、第1の樹脂64が充填された部分を第1の方向に沿って切断するとともに、第2の樹脂66が充填された部分を第2の方向に沿って切断することで、第1の溝62aの内側面に相当する第1の側面対43c、43d及び第2の側面対43e、43fを有する圧電体43を得る工程と、を含み、第1の側面対43c、43dを覆う第1の樹脂64と、第2の側面対43e、43fを覆う第2の樹脂66とのヤング率が異なる。
【0057】
この圧電素子の製造方法において製造される圧電素子40は、圧電体43の第1の側面対43c、43dを覆う樹脂45Aのヤング率と、第2の側面対43e、43fを覆う樹脂45Bのヤング率とを、異ならせるように、それぞれの側面を樹脂で覆っている。このことによって、剛性が求められる圧電体43の第1の側面対43c、43dについてはヤング率が高い樹脂でコーティングし、伸縮性が求められる第2の側面対43e、43fについてはヤング率が低い樹脂でコーティングすることができる。すなわち、本発明に係る圧電素子40は、パーティクルの発生を抑制するために圧電体43の側面に樹脂をコーティングした場合にも、効率的に変位することができる。また、第1の溝62aを設けることによる第1の樹脂64の硬化と、第2の溝62bを設けることによる第2の樹脂66の硬化とを、異なる工程で行っているため、異なる側面対を覆う樹脂のヤング率を、自在に決定できる。
【0058】
一対の側面を高ヤング率の樹脂で、他の一対の側面を低ヤング率の樹脂で、それぞれコーティングされた圧電素子40を得るには、個品化された圧電素子40に対して、ディスペンサー等で各側面毎にコーティング、硬化を繰り返すことが考えられる。しかしながら、当該方法は圧電素子1個あたりにかかるコーティング時間が膨大で、コーティング状態も均一ではないという問題がある。一方で、本実施形態に係る製造方法では、個品化される前の圧電基板62に溝を設けることで、異なるヤング率の樹脂を、異なる対の側面にコーティングするものであり、コーティング時間、コーティングの均一性という点から、有意なものである。
【0059】
また、本実施形態に係る圧電素子40の製造方法において、第1の樹脂64と第2の樹脂66とが同じ成分であることで、複数の樹脂を用意する必要がなく、樹脂の充填作業を簡略化することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る圧電素子40の製造方法において、第1の樹脂64と第2の樹脂66とが異なる成分であることで、第1の樹脂64の硬化と第2の樹脂66の硬化を行う際の環境(温度等)を異ならせる必要がなく、樹脂の硬化作業を簡略化することができる。
【0061】
なお、本発明は上述した実施形態に限らず、様々な変形が可能である。
【0062】
例えば、樹脂45Aまたは樹脂45Bをエポキシ系樹脂とした場合には、該エポキシ系樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ系樹脂等を採用することができる、としたが、これに限定されるものでなく、1分子に2個以上のエポキシ基を有し硬化することができる他のエポキシ系樹脂、例えば、ビスフェノールF型エポキシ系樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ系樹脂、脂環式エポキシ系樹脂等を採用することもできる。
【0063】
樹脂45A及び樹脂45Bであるエポキシ系樹脂は、イミダゾール系硬化剤(例えば、2エチル4メチルイミダゾール、2メチルイミダゾール、等)により硬化されたものであってもよい。この場合には、パーティクルの発生が抑制される。
【0064】
以下、本発明の製造方法の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
[実施例1]
上下面にAu電極を形成し分極処理がされた、厚み0.1mm、50×50mmの圧電基板62(PZT基板)をダイシングテープに貼り付ける。1.05mmピッチで平行な第1の溝62aを形成するために、厚み0.1mmのブレードで圧電基板62を切断する。そして、第1の溝62aに、柔軟性の一液性エポキシ樹脂(味の素ファインテクノ製 AE−400)をディスペンサーで充填する。加熱硬化を行う。硬化した樹脂のヤング率は8MPaである。
【0066】
次に、第1の溝62aと直交する、1.55mmピッチ(間隔G1=1.55mm)で平行な第2の溝62bを形成するために、厚み0.1mmのブレードで圧電基板62を切断する。そして、第2の溝62bに、アミン硬化剤を混合したビスフェノールAエポキシ液状樹脂をディスペンサーで充填する。加熱硬化を行う。硬化した樹脂のヤング率は4GPaである。そして、充填された樹脂を厚み0.05mmのブレードでダイシングすることで、個品化された厚み0.1mm、1.0mm×1.5mmの、側面を異なるヤング率の樹脂でコーティングされた圧電素子が得られる。
【0067】
[実施例2]
厚み0.5mm、50×50mmの圧電基板62(PZT基板)をダイシングテープに貼り付ける。1.05mmピッチで平行な第1の溝62aを形成するために、厚み0.1mmのブレードで圧電基板62を切断する。この際、厚み方向に0.3mm残して溝を形成する。そして、第1の溝62aに、柔軟性の一液性エポキシ樹脂(味の素ファインテクノ製 AE−400)をディスペンサーで充填する。加熱硬化を行う。硬化した樹脂のヤング率は8MPaである。
【0068】
次に、第1の溝62aと直交する、1.55mmピッチ(間隔G2=1.55mm)で平行な第2の溝62bを形成するために、厚み0.1mmのブレードで圧電基板62を切断する。この際、厚み方向に0.2mm残して溝を形成する。そして、第2の溝62bに、アミン硬化剤を混合したビスフェノールAエポキシ液状樹脂をディスペンサーで充填する。加熱硬化を行う。そして、上面を0.1mm研磨、下面を0.3mm研磨し、PZT基板の残した部分を除去する。上下面にAuをスパッタし、電極を形成し、分極処理を行う。硬化した樹脂のヤング率は4GPaである。そして、充填された樹脂を厚み0.05mmのブレードでダイシングすることで、個品化された厚み0.1mm、1.0mm×1.5mmの、側面を異なるヤング率の樹脂でコーティングされた圧電素子が得られる。