特許第5672291号(P5672291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5672291
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】多彩模様塗料および多彩模様塗膜
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20150129BHJP
   C09D 5/29 20060101ALI20150129BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20150129BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20150129BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20150129BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D5/29
   C09D5/02
   C09D7/12
   B05D5/06 101Z
   B05D7/24 301F
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-257108(P2012-257108)
(22)【出願日】2012年11月26日
(65)【公開番号】特開2014-105228(P2014-105228A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2012年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000224123
【氏名又は名称】藤倉化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 康輝
(72)【発明者】
【氏名】藤原 誠
(72)【発明者】
【氏名】本部 貴洋
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−075926(JP,A)
【文献】 特開2010−132747(JP,A)
【文献】 特開2006−213741(JP,A)
【文献】 特開2003−041196(JP,A)
【文献】 特開2008−202037(JP,A)
【文献】 特開2007−321045(JP,A)
【文献】 特開2005−186062(JP,A)
【文献】 特開2000−072990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00〜201/10
B05D 5/00〜 5/12
B05D 7/00〜 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃色系顔料、樹脂エマルジョン、親水性コロイド形成物質および分散剤を含む濃色系エマルジョン塗料をゲル化膜でカプセル化してなり、マンセル値による明度が4以下である濃色系ゲル状粒子と、
非濃色系顔料、樹脂エマルジョン、親水性コロイド形成物質および分散剤を含む非濃色系エマルジョン塗料をゲル化膜でカプセル化してなり、マンセル値による明度が4より大きく9以下である非濃色系ゲル状粒子と、
前記濃色系ゲル状粒子及び前記非濃色系ゲル状粒子を分散させる分散媒とを含み、
前記濃色系エマルジョン塗料を板状体の表面に塗布し乾燥してなる濃色系塗膜に、100Wの人工太陽照明灯の光を20cmの距離から30分間照射した際の前記濃色系塗膜の表面温度Tと、前記非濃色系塗料を板状体の表面に塗布し乾燥してなる非濃色系塗膜に、前記100Wの人工太陽照明灯の光を20cmの距離から30分間照射した際の前記非濃色系塗膜の表面温度Tとの差ΔT=T−Tの値が7℃以上16℃以下であり、
前記濃色系エマルジョン塗料中の前記樹脂エマルジョン、親水性コロイド形成物質および分散剤がそれぞれ、前記非濃色系エマルジョン塗料中の前記樹脂エマルジョン、親水性コロイド形成物質および分散剤のそれぞれと同一であり、
前記濃色系顔料が遮熱顔料を含有し、前記濃色系顔料中の前記遮熱顔料の含有率が33質量%以上であり、
前記遮熱顔料が、鉄−クロム複合酸化物又は鉄−コバルト−クロム複合酸化物で構成される、多彩模様塗料。
【請求項2】
請求項1に記載の多彩模様塗料から前記分散媒を除去することよって得られる多彩模様塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多彩模様塗料および多彩模様塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の壁面などを塗装する塗料として、複数の色がついた塗膜を形成することができる多彩模様塗料が注目されている。例えば下記特許文献1には、水系の分散媒中に2色以上の塗料を分散させてなるゲル状着色粒子を含む多彩模様塗料および多彩模様塗膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−221613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の多彩模様塗料を塗布してなる多彩模様塗膜は、以下に示す課題を有していた。
【0005】
すなわち、上記多彩模様塗膜が、黒色ゲル状粒子などの濃色系ゲル状粒子と、白色ゲル状粒子などの非濃色系ゲル状粒子とを含む場合に、多彩模様塗膜に光を長時間照射していると、多彩模様塗膜中にひび割れや白ボケ(艶消し)が見られることがある。このとき、上記多彩模様塗膜では、ひび割れや白ボケ(艶消し)の程度が濃色系ゲル状粒子周辺と非濃色系ゲル状粒子周辺とで大きく異なる場合があった。すなわち、上記多彩模様塗膜は、不均一な劣化を生じさせる場合があった。この場合、塗膜全体として見た場合に違和感が生じる。具体的には、濃色系ゲル状粒子の周辺のみクラックや白ボケ等が進み、その劣化としては中程度の劣化であるにもかかわらず、塗膜全体としては非常に劣化が進んだように感じられる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、濃色系ゲル状粒子と非濃色系ゲル状粒子とを含む多彩模様塗膜における不均一な劣化を十分に抑制できる多彩模様塗料および多彩模様塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、多彩模様塗膜中の濃色系ゲル状粒子は、多彩模様塗膜に含まれる非濃色系ゲル状粒子と比べて、光吸収性がより高いため、多彩模様塗膜に光を当てた際に、特に大きく温度が上昇しやすく、濃色系ゲル状粒子の温度上昇により濃色系ゲル状粒子に熱膨張が生じやすい。その結果、濃色系ゲル状粒子を起点として多彩模様塗膜に生じるひび割れや白ボケ(艶消し)の程度が、非濃色系ゲル状粒子を起点として多彩模様塗膜に生じるひび割れや白ボケ(艶消し)の程度に比べて大きくなりやすいのではないかと考えた。
【0008】
そこで、本発明者らは、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、濃色系顔料、樹脂エマルジョン、親水性コロイド形成物質および分散剤を含む濃色系エマルジョン塗料をゲル化膜でカプセル化してなり、マンセル値による明度が4以下である濃色系ゲル状粒子と、非濃色系顔料、樹脂エマルジョン、親水性コロイド形成物質および分散剤を含む非濃色系エマルジョン塗料をゲル化膜でカプセル化してなり、マンセル値による明度が4より大きく9以下である非濃色系ゲル状粒子と、前記濃色系ゲル状粒子及び前記非濃色系ゲル状粒子を分散させる分散媒とを含み、前記濃色系エマルジョン塗料を板状体の表面に塗布し乾燥してなる濃色系塗膜に、100Wの人工太陽照明灯の光を20cmの距離から30分間照射した際の前記濃色系塗膜の表面温度(以下、「濃色系ゲル状粒子の表面温度」と呼ぶ)Tと、前記非濃色系エマルジョン塗料を板状体の表面に塗布し乾燥してなる非濃色系塗膜に、前記100Wの人工太陽照明灯の光を20cmの距離から30分間照射した際の前記非濃色系塗膜の表面温度(以下、「非濃色系ゲル状粒子の表面温度」と呼ぶ)Tとの差ΔT=T−Tの値が7℃以上16℃以下であり、前記濃色系エマルジョン塗料中の前記樹脂エマルジョン、親水性コロイド形成物質および分散剤がそれぞれ、前記非濃色系エマルジョン塗料中の前記樹脂エマルジョン、親水性コロイド形成物質および分散剤のそれぞれと同一であり、前記濃色系顔料が遮熱顔料を含有し、前記濃色系顔料中の前記遮熱顔料の含有率が33質量%以上であり、前記遮熱顔料が、鉄−クロム複合酸化物又は鉄−コバルト−クロム複合酸化物で構成される、多彩模様塗料である。ここで、人工太陽照明灯とは、JIS C8912に定められるスペクトル合致度で等級Aのものを指す。
【0010】
本発明の多彩模様塗料によれば、光を照射した際の濃色系ゲル状粒子の表面温度と非濃色系ゲル状粒子の表面温度との差を十分に小さくすることで、濃色系ゲル状粒子と非濃色系ゲル状粒子とで熱膨張の程度の差を十分に小さくすることが可能となる。その結果、濃色系ゲル状粒子を起点として多彩模様塗膜に生じるひび割れや白ボケ(艶消し)の程度と、非濃色系ゲル状粒子を起点として多彩模様塗膜に生じるひび割れや白ボケ(艶消し)の程度との差を十分に小さくすることができる。従って、本発明の多彩模様塗料によれば、濃色系ゲル状粒子と非濃色系ゲル状粒子とを含む多彩模様塗膜における不均一な劣化を十分に抑制できる。また光による濃色系ゲル状粒子の表面温度の上昇が特に十分に抑制されるため、多彩模様塗膜における不均一な劣化をより十分に抑制できる。
【0015】
また、本発明は、上述した多彩模様塗料から前記分散媒を除去することによって得られる多彩模様塗膜である。
【0016】
本発明の多彩模様塗膜によれば、上記の多彩模様塗料から前記分散媒を除去することによって得られるため、不均一な劣化を十分に抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、濃色系ゲル状粒子と非濃色系ゲル状粒子とを含む多彩模様塗膜における不均一な劣化を十分に抑制できる多彩模様塗料および多彩模様塗膜が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の多彩模様塗料及び多彩模様塗膜について詳細に説明する。
【0019】
<多彩模様塗料>
本発明の多彩模様塗料は、濃色系エマルジョン塗料をゲル化膜でカプセル化してなる濃色系ゲル状粒子と、非濃色系エマルジョン塗料をゲル化膜でカプセル化してなる非濃色系ゲル状粒子と、濃色系ゲル状粒子及び非濃色系ゲル状粒子を分散させる分散媒とを含む。
【0020】
この多彩模様塗料においては、濃色系ゲル状粒子の表面温度Tと、非濃色系ゲル状粒子の表面温度Tとの差ΔT=T−Tの値が20℃以下である。
【0021】
本発明の多彩模様塗料によれば、光照射による濃色系ゲル状粒子の表面温度と非濃色系ゲル状粒子の表面温度との差を十分に小さくすることで、濃色系ゲル状粒子と非濃色系ゲル状粒子とで熱膨張の程度の差を十分に小さくすることが可能となる。その結果、濃色系ゲル状粒子を起点として多彩模様塗膜に生じるひび割れや白ボケ(艶消し)の程度と、非濃色系ゲル状粒子を起点として多彩模様塗膜に生じるひび割れや白ボケ(艶消し)の程度との差を十分に小さくすることができる。従って、本発明の多彩模様塗料によれば、濃色系ゲル状粒子と非濃色系ゲル状粒子とを含む多彩模様塗膜における不均一な劣化を十分に抑制できる。
【0022】
次に、本発明の多彩模様塗料を構成する成分について詳細に説明する。
【0023】
1.濃色系ゲル状粒子
濃色系ゲル状粒子は、濃色系エマルジョン塗料をゲル化膜によってカプセル化してなるものであり、マンセル値による明度が4以下であるゲル状粒子を言う。
【0024】
(1−1)濃色系エマルジョン塗料
濃色系エマルジョン塗料は、濃色系顔料と、樹脂エマルジョンと、親水性コロイド形成物質とを含む。
【0025】
(A)濃色系顔料
濃色系顔料は、樹脂エマルジョン、親水性コロイド形成物質とともに、濃色系ゲル状粒子のマンセル値を4以下にすることができるものであればよい。このような濃色系顔料としては、例えばカーボンブラックなどの非遮熱顔料、および、遮熱顔料が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。ここで、遮熱顔料とは、近赤外波長域(波長:780nm〜2500nm)の光を吸収しない、または近赤外波長域(波長:780nm〜2500nm)の光の吸収率が小さい顔料を指す。
【0026】
上記遮熱顔料は、無機系遮熱顔料及び有機系遮熱顔料を含む。無機系遮熱顔料としては、例えば酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、チタン酸ナトリウム、酸化ケイ素、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化クロム、酸化鉄、酸化銅、酸化セリウム、酸化アルミニウムなどの金属酸化物系顔料;酸化鉄−酸化マンガン、酸化鉄−酸化クロム(例えば大日精化株式会社製の「ダイピロキサイドカラーブラック#9595」、アサヒ化成工業株式会社製の「Black6350」)、酸化鉄−酸化コバルト−酸化クロム(例えば大日精化株式会社製の「ダイピロキサイドカラーブラウン#9290」、「ダイピロキサイドカラーブラック#9590」)、酸化銅−酸化マグネシウム(例えば大日精化株式会社製の「ダイピロキサイドカラーブラック#9598」)、酸化マンガン−酸化ビスマス(例えばアサヒ化成工業株式会社製の「Black6301」)、酸化マンガン−酸化イットリウム(例えばアサヒ化成工業株式会社製の「Black6303」)などの複合酸化物顔料;シリコン、アルミニウム、鉄、マグネシウム、マンガン、ニッケル、チタン、クロム、カルシウムなどの金属系顔料;さらに鉄−クロム、ビスマス−マンガン、鉄−マンガン、マンガン−イットリウムなどの合金系顔料が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0027】
有機系遮熱顔料としては、例えばアゾ系顔料、アゾメチン系顔料、レーキ系顔料、チオインジゴ系顔料、アントラキノン系顔料(アントアンスロン顔料、ジアミノアンスラキノニル顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、アントラピリミジン顔料など)、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、キニフタロン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。
【0028】
また濃色系エマルジョン塗料は、濃色系ゲル状粒子のマンセル値が4以下になるのであれば、酸化チタン、フタロシアニン銅などの非濃色系顔料を含有してもよい。
【0029】
ここで、濃色系顔料中の遮熱顔料の含有率は特に限定されるものではないが、33質量%以上であることが好ましい。
【0030】
この場合、光による濃色系ゲル状粒子の表面温度の上昇が特に十分に抑制されるため、多彩模様塗料は、多彩模様塗膜における不均一な劣化を特に十分に抑制できる。
【0031】
濃色系顔料中の遮熱顔料の含有率は、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、100質量%であることが最も好ましい。
【0032】
濃色系エマルジョン塗料中の濃色系顔料の含有量は特に限定されるものではないが、通常は樹脂成分100質量部に対して10〜200質量部であり、好ましくは50〜150質量部である。ここで、樹脂成分とは、樹脂エマルジョン中の樹脂固形分のことを指す。
【0033】
(B)樹脂エマルジョン
樹脂エマルジョンとしては、例えばポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル、べオパ(分岐脂肪酸ビニルエステル)、天然ゴム、合成ゴムのエマルジョン及びこれらの樹脂の共重合体のエマルジョンなどが挙げられる。これらは1種類単独で、又は2種類以上を組み合せて用いてもよい。上記樹脂エマルジョンの中ではアクリル樹脂のエマルジョンが特に好ましい。
【0034】
濃色系エマルジョン塗料中の樹脂エマルジョンの含有率は特に限定されるものではないが、通常は20〜70質量%であり、好ましくは30〜50質量%である。
【0035】
(C)親水性コロイド形成物質
親水性コロイド形成物質としては、例えばセルロース誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、カゼイン、デンプン、ガラクトマンノン、グアルゴム、ローカストビーンゴムなどの天然高分子などを含有する水溶液が挙げられる。これらは1種類単独で又は2種類以上を組み合せて用いてもよい。上記水溶液の中ではグアルゴムの水溶液が特に好ましい。水溶液の濃度は特に限定されるものではなく、例えば0.5〜5.0質量%であればよい。
【0036】
濃色系エマルジョン塗料中の親水性コロイド形成物質の含有量は特に限定されるものではないが、通常は樹脂エマルジョン100質量部に対して0.05〜5.0質量部であり、好ましくは0.1〜3.0質量部である。
【0037】
(D)その他の成分
上記濃色系エマルジョン塗料は、必要に応じて、含水ケイ酸マグネシウムなどの体質顔料、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤及びレベリング剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0038】
(1−2)ゲル化膜
ゲル化膜は、上記濃色系エマルジョン塗料をカプセル化するものであり、上記濃色系エマルジョン塗料を閉じ込めるものである。ゲル化膜は、親水性コロイド形成物質を含む濃色系エマルジョン塗料と、ゲル化剤を含む分散媒とを混合し、ディソルバなどの分散機で撹拌しながら塗料を分散させて上記分散媒中のゲル化剤と上記親水性コロイド形成物質とを反応させることにより得られる。
【0039】
上記濃色系エマルジョン塗料は、例えば上記樹脂エマルジョンに上記親水性コロイド形成物質を加えて撹拌混合することによって得られた混合物に、濃色系顔料と水の混合溶液を加え、さらに撹拌混合することにより単色エマルジョン塗料を製造し、少なくとも1種類の単色エマルジョン塗料を適宜配合し、撹拌混合することにより得ることができる。
【0040】
2.非濃色系ゲル状粒子
非濃色系ゲル状粒子は、非濃色系エマルジョン塗料をゲル化膜でカプセル化してなるものであり、マンセル値による明度が4より大きいゲル状粒子を言う。
【0041】
(2−1)非濃色系エマルジョン塗料
非濃色系エマルジョン塗料は、非濃色系顔料と、樹脂エマルジョンと、親水性コロイド形成物質とを含む。
【0042】
(A)非濃色系顔料
非濃色系顔料は、樹脂エマルジョン及び親水性コロイド形成物質とともに、非濃色系ゲル状粒子のマンセル値を4より大きくするものであればよい。このような非濃色系顔料としては、酸化チタンなどの白色顔料、フタロシアニン銅などのブルー顔料が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合せて用いることができる。非濃色系エマルジョン塗料中の非濃色系顔料の含有量は特に限定されるものではないが、通常は樹脂成分100質量部に対して10〜200質量部であり、好ましくは50〜150質量部である。ここで、樹脂成分とは、樹脂エマルジョン中の樹脂固形分のことを指す。
【0043】
(B)樹脂エマルジョン
樹脂エマルジョンとしては、濃色系エマルジョン塗料中に含まれる樹脂エマルジョンと同様のものを用いることができる。非濃色系エマルジョン塗料中の樹脂エマルジョンの含有率は特に限定されるものではないが、通常は20〜70質量%であり、好ましくは30〜50質量%である。
【0044】
(C)親水性コロイド形成物質
親水性コロイド形成物質としては、濃色系エマルジョン塗料中に含まれる親水性コロイド形成物質と同様のものを用いることができる。非濃色系エマルジョン塗料中の親水性コロイド形成物質の含有率は特に限定されるものではないが、例えば0.5〜5.0質量%であればよい。
【0045】
(D)その他の成分
上記非濃色系エマルジョン塗料は、必要に応じて、含水ケイ酸マグネシウムなどの体質顔料、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤及びレベリング剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0046】
(2−2)ゲル化膜
ゲル化膜は、上記非濃色系エマルジョン塗料をカプセル化するものであり、上記非濃色系エマルジョン塗料を閉じ込めるものである。ゲル化膜は、親水性コロイド形成物質を含む非濃色系エマルジョン塗料と、ゲル化剤を含む分散媒とを混合し、ディソルバなどの分散機で撹拌しながら塗料を分散させて上記分散媒中のゲル化剤と上記親水性コロイド形成物質とを反応させることにより得られる。
【0047】
上記非濃色系エマルジョン塗料は、例えば上記樹脂エマルジョンに上記親水性コロイド形成物質を加えて撹拌混合することによって得られた混合物に、非濃色系顔料と水の混合溶液を加え、さらに撹拌混合することにより単色エマルジョン塗料を製造し、少なくとも1種類の単色エマルジョン塗料を適宜配合し、撹拌混合することにより得ることができる。
【0048】
また、上述したように、本発明の多彩模様塗料においては、上記濃色系ゲル状粒子の表面温度Tと、上記非濃色系ゲル状粒子の表面温度Tとの差ΔT=T−Tの値が20℃以下であることが必要である。ここで、本発明の多彩模様塗料が複数種類の濃色系ゲル状粒子を含有している場合には、表面温度Tとは、濃色系ゲル状粒子のうち最も高い表面温度を示す濃色系ゲル状粒子の表面温度を言うものとする。ここで、複数種類の濃色系ゲル状粒子の濃色系塗膜の表面温度が同一である場合には、マンセル値の最も小さい濃色系ゲル状粒子の表面温度を、濃色系ゲル状粒子の表面温度Tとする。また、本発明の多彩模様塗料が複数種類の非濃色系ゲル状粒子を含有している場合には、表面温度Tとは、非濃色系ゲル状粒子のうち最も低い表面温度を示す非濃色系ゲル状粒子の表面温度を言うものとする。ここで、複数種類の非濃色系ゲル状粒子の表面温度が同一である場合には、マンセル値の最も大きい非濃色系ゲル状粒子の表面温度を、非濃色系ゲル状粒子の表面温度Tとする。
【0049】
ΔTの値が20℃より大きい場合、多彩模様塗料は、多彩模様塗膜における不均一な劣化を十分に抑制できなくなる。
【0050】
ΔTの値は16℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがさらに好ましい。
【0051】
ΔTの値が16℃以下である場合、多彩模様塗料は多彩模様塗膜における不均一な劣化をより十分に抑制できる。
【0052】
3.分散媒
分散媒は、濃色系ゲル状粒子及び非濃色系ゲル状粒子を分散させることができるものであればよい。このような分散媒としては、ゲル化剤を含む水性の分散媒が用いられる。ゲル化剤としては、例えば、マグネシウムモンモリロナイト粘土、ナトリウムペンタクロロフェノール、重ホウ酸アンモニウムなどのホウ酸塩、タンニン酸、乳酸チタン、塩化カルシウムなどを含有する水溶液が挙げられる。
【0053】
分散媒は1種類のゲル化剤のみを含むものであっても、2種類以上のゲル化剤を含むものであってもよい。これらの中では重ホウ酸アンモニウムなどのホウ酸塩が特に好ましい。分散媒には必要に応じて、さらに含水ケイ酸マグネシウムなどの体質顔料、ナトリウムカルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物が含まれてもよい。分散媒は、ゲル化剤並びに必要に応じて体質顔料の水溶液および水溶性高分子化合物の水溶液を撹拌混合した後に、水を加えて希釈することにより得ることができる。分散媒中のゲル化剤の含有率は特に限定されるものではなく、例えば分散媒100質量%中0.05〜5.0質量%である。
【0054】
また本発明の多彩模様塗料は、必要に応じて、樹脂エマルジョン、並びに、増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤及びレベリング剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0055】
多彩模様塗料は、上記濃色系ゲル状粒子と、上記非濃色系ゲル状粒子と、上記分散媒と、必要に応じて樹脂エマルジョン及び上記添加剤とをディソルバなどの分散機で撹拌することにより得ることができる。
【0056】
多彩模様塗料中の濃色系ゲル状粒子及び非濃色系ゲル状粒子の含有率はそれぞれ、用途や好みに応じて適宜決定される。
【0057】
<多彩模様塗膜>
本発明の多彩模様塗膜は、上記の多彩模様塗料から上記分散媒を除去することによって得られるものである。
【0058】
本発明の多彩模様塗膜は、上記の多彩模様塗料から分散媒を除去することによって得られるため、不均一な劣化を十分に抑制できる。
【0059】
多彩模様塗料の塗布方法としては、例えば刷毛、こて、ローラー、スプレーなどを用いた公知の塗布方法を用いることができる。
【0060】
本発明の多彩模様塗膜は、例えば建築物の壁面、自動車の内装部品、建築物の内装などに適用することが可能である。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
(エマルジョン塗料の調製)
下記に示す樹脂エマルジョン、及び、下記に示す親水性コロイド形成物質を表1に示す配合割合で配合し、撹拌混合することにより混合溶液(a)を得た。一方、下記(A−1)〜(A−7)の着色顔料、下記に示す分散剤及び水を表1に示す配合割合で配合し、撹拌混合することにより混合溶液(b)を得た。そして混合溶液(a)に混合溶液(b)を加えて撹拌混合することにより、表1に示すように、単色エマルジョン塗料(B−1)〜(B−7)を得た。表1において、各成分の配合割合の単位は質量部である。
<樹脂エマルジョン>
アニオン性高分子アクリル樹脂エマルジョン(「プライマルAC−38」、日本アクリル化学社製)
<親水性コロイド形成物質>
非イオン性グアルゴム誘導体の1.5%水溶液
<着色顔料>
(A−1)遮熱顔料ブラック(「ダイピロキサイドカラーブラック9595」、大日精化社製、鉄−クロム複合酸化物)
(A−2)遮熱顔料ブラウン(「ダイピロキサイドカラーブラウン9290」、大日精化社製、鉄−コバルト−クロム複合酸化物)
(A−3)ブラック(「三菱カーボンブラックMA−100」、三菱化学社製、カーボンブラック)
(A−4)ブラウン(「T−10」、チタン工業社製、鉄−亜鉛複合酸化物)
(A−5)ブルー(「シアニンブルー5187」、大日精化社製、フタロシアニン銅)
(A−6)イエロー(「LLXLO」、チタン工業社製、酸化鉄)
(A−7)ホワイト(「R−930」、石原産業社製、酸化チタン)
<分散剤>
アニオン性高分子分散剤(「オロタン731」、日本アクリル化学社製)
【表1】
【0063】
得られた単色エマルジョン塗料(B−1)〜(B−7)を、表2及び表3に示す配合割合で配合し、撹拌混合することにより、表2及び表3に示すように、エマルジョン塗料(C−1)〜(C−19)を得た。表2及び表3において、単色エマルジョン塗料の配合割合の単位は質量部である。
【0064】
(表面温度の測定)
上記のようにして得られた濃色系のエマルジョン塗料(C−1)〜(C−16)を、ドクターブレードにて塗膜の厚さが50μmになるように、厚さ5mmの透明なポリ塩化ビニルの板上に塗布し、乾燥させることにより試験体を作製した。そして、この試験体を、100Wの人工太陽照明灯(「XC−100A」、セリック株式会社製)から20cmの距離に配置し、この状態で光を30分間照射した。そして、試験体における表面の温度をサーモメータ―(「IT−540」、株式会社堀場製作所製)により測定し、T(℃)とした。一方、エマルジョン塗料として、非濃色系のエマルジョン塗料である(C−16)〜(C−19)を用いて上記と同様の方法で作製した試験体についても、上記と同様にして表面温度を測定し、この値をT(℃)とした。結果を表2及び表3に示す。
【表2】
【表3】
【0065】
(ゲル状粒子の作製)
含水ケイ酸マグネシウムの4質量%水中分散液からなる体質顔料25質量部に、重ホウ酸アンモニウムの5質量%水溶液からなるゲル化剤5質量部と、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの1質量%水溶液からなる水溶性高分子化合物25質量部を加えて撹拌混合した後、水45質量部を加えて希釈し、分散媒を得た。次に、この分散媒40質量部に、上記エマルジョン塗料(C−1)〜(C−19)60質量部を加え、ディソルバで撹拌し、粒径が10mmになるまでエマルジョン塗料を分散させてゲル状粒子(D−1)〜(D−19)を得た。ここで、(D−X)は、エマルジョン塗料として(C−X)を用いたゲル状粒子(X=1〜19)である。またゲル状粒子(D−1)〜(D−19)の明度(マンセル値)は表2及び表3に示す通りであった。なお、表2及び表3において、ゲル状粒子(D−1)〜(D−19)の明度(マンセル値)はそれぞれ、エマルジョン塗料(C−1)〜(C−19)の欄に記載してある。
【0066】
(多彩模様塗料の調製)
アクリル樹脂エマルジョン(「プライマルAC−33」日本アクリル化学社製)からなる樹脂エマルジョン25質量部、表4及び表5に示す配合割合で上記濃色系ゲル状粒子(D−1)〜(D−16)および非濃色系ゲル状粒子(D−17)〜(D−19)を配合してなるゲル状粒子70質量部、アルカリ増粘剤(「SNシックナー636」サンノプコ社製)からなる増粘剤1質量部、25質量%アンモニア水0.1質量部および水3.9質量部をディソルバで撹拌することにより、実施例1〜13及び比較例1〜3の多彩模様塗料を得た。また多彩模様塗料について、表2及び表3の表面温度T(℃)及びT(℃)から、下記式:
ΔT=T−T
に基づいて表面温度の差ΔTを算出した。結果を表4及び表5に示す。表4及び表5において、ゲル状粒子の配合割合の単位は質量部である。
【0067】
[評価]
実施例1〜13及び比較例1〜3の多彩模様塗料について、不均一な劣化の抑制効果の評価を行った。まず実施例1〜13及び比較例1〜3の多彩模様塗料をスプレーにてスレート板に塗装し、評価用試験体を作製した。この試験体を紫外線照射機(「アイスーパーUVテスターW−151」岩崎電気社製)の試験槽内に設置し、ブラックパネル温度が63℃、湿度が50%RH、塗面の照射強度が1000mW/cmとなるように紫外線を4時間照射した。その後、試験槽の温度を約30℃、湿度を98%RH以上に設定して、試験槽内を結露させ4時間保持した。この照射と結露を1サイクルとし、1000時間後、すなわち125サイクル終了後に試験体を取り出し、評価用試験体の表面を目視で観察し、評価用試験体において不均一な劣化が抑制されているかどうかを評価した。結果を表4及び表5に示す。評価基準は次の通りとした。

◎・・・濃色系ゲル状粒子周辺でクラックが全く見られず且つ艶が消えていない
○・・・濃色系ゲル状粒子周辺でクラックが全く見られないが、艶がやや消えている
△・・・濃色系ゲル状粒子周辺でごく細かいクラックが見られる
×・・・大きいクラックが濃色系ゲル状粒子に沿って散見される

上記評価基準のうち、◎、○、△のものを合格とし、×のものを不合格とした。
【表4】
【表5】
【0068】
表4及び5に示す結果より、実施例1〜13の多彩模様塗料を用いて形成された多彩模様塗膜はいずれも、合格基準に達していた。これに対し、比較例1〜3の多彩模様塗料を用いて形成された多彩模様塗膜は、合格基準に達していなかった。
【0069】
以上の結果から、本発明の多彩模様塗料によれば、濃色系ゲル状粒子と非濃色系ゲル状粒子とを含む多彩模様塗膜における不均一な劣化を十分に抑制できることが確認された。