(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
負荷率を連続的に変更して燃焼可能な複数のボイラを備えるボイラ群と、要求負荷に応じて前記ボイラ群の燃焼状態を制御する制御部と、を備えるボイラシステムであって、
前記複数のボイラには、最も小さい燃焼状態における蒸気量である最小蒸気量が設定されており、
前記制御部は、既に燃焼しているボイラがある状態において、燃焼させるボイラの台数を増加させる場合、新たに燃焼を開始するボイラを最小蒸気量で燃焼させることに伴い、前記既に燃焼しているボイラの負荷率を低下させ、必要蒸気量が増加した場合、前記新たに燃焼を開始させたボイラから優先して負荷率を上昇させるボイラシステム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のボイラシステムの好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、本発明のボイラシステム1の全体構成につき、
図1を参照しながら説明する。
ボイラシステム1は、複数(5台)のボイラ20を含むボイラ群2と、これら複数のボイラ20において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダ6と、この蒸気ヘッダ6の内部の圧力を測定する蒸気圧センサ7と、ボイラ群2の燃焼状態(負荷率)を制御する制御部4を有する台数制御装置3と、を備える。
【0015】
ボイラ群2は、負荷機器としての蒸気使用設備18に供給する蒸気を生成する。
蒸気ヘッダ6は、蒸気管11を介してボイラ群2を構成する複数のボイラ20に接続されている。この蒸気ヘッダ6の下流側は、蒸気管12を介して蒸気使用設備18に接続されている。
蒸気ヘッダ6は、ボイラ群2で生成された蒸気を集合させて貯留することにより、複数のボイラ20の相互の圧力差及び圧力変動を調整し、圧力が調整された蒸気を蒸気使用設備18に供給する。
【0016】
蒸気圧センサ7は、信号線13を介して、台数制御装置3に電気的に接続されている。蒸気圧センサ7は、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧(ボイラ群2で発生した蒸気の圧力)を測定し、測定した蒸気圧に係る信号(蒸気圧信号)を、信号線13を介して台数制御装置3に送信する。
【0017】
台数制御装置3は、信号線16を介して、複数のボイラ20と電気的に接続されている。この台数制御装置3は、蒸気圧センサ7により測定される蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧に基づいて、各ボイラ20の燃焼状態を制御する。台数制御装置3の詳細については、後述する。
【0018】
以上のボイラシステム1は、ボイラ群2で発生させた蒸気を、蒸気ヘッダ6を介して、蒸気使用設備18に供給可能とされている。
ボイラシステム1において要求される負荷(要求負荷)は、蒸気使用設備18における蒸気消費量である。台数制御装置3は、この蒸気消費量の変動に対応して生じる蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧の変動を、蒸気圧センサ7が測定する蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧(物理量)に基づいて算出し、ボイラ群2を構成する各ボイラ20の燃焼量を制御する。
【0019】
具体的には、蒸気使用設備18の需要の増大により要求負荷(蒸気消費量)が増加し、蒸気ヘッダ6に供給される蒸気量(後述の出力蒸気量)が不足すれば、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が減少することになる。一方、蒸気使用設備18の需要の低下により要求負荷(蒸気消費量)が減少し、蒸気ヘッダ6に供給される蒸気量が過剰になれば、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が増加することになる。従って、ボイラシステム1は、蒸気圧センサ7により測定された蒸気圧の変動に基づいて、要求負荷の変動をモニターすることができる。そして、ボイラシステム1は、蒸気ヘッダ6の蒸気圧に基づいて、蒸気使用設備18の消費蒸気量(要求負荷)に応じて必要とされる蒸気量である必要蒸気量を算出する。
【0020】
ここで、本実施形態のボイラシステム1を構成する複数のボイラ20について説明する。
図2は、本実施形態に係るボイラ群2の概略を示す図である。
本実施形態のボイラ20は、燃焼量(負荷率)を連続的に変更して燃焼可能な比例制御ボイラからなる。
比例制御ボイラとは、少なくとも、最小燃焼状態S1(例えば、最大燃焼量の20%の燃焼量における燃焼状態)から最大燃焼状態S2の範囲で、燃焼量が連続的に制御可能とされているボイラである。比例制御ボイラは、例えば、燃料をバーナに供給するバルブや、燃焼用空気を供給するバルブの開度(燃焼比)を制御することにより、燃焼量を調整するようになっている。
【0021】
また、燃焼量を連続的に制御するとは、後述のローカル制御部22における演算や信号がデジタル方式とされて段階的に取り扱われる場合(例えば、ボイラ20の出力(燃焼量)が1%刻みで制御される場合)であっても、事実上連続的に出力を制御可能な場合を含む。
【0022】
本実施形態では、ボイラ20の燃焼停止状態S0と最小燃焼状態S1との間の燃焼状態の変更は、ボイラ20(バーナ)の燃焼をオン/オフすることで制御される。そして、最小燃焼状態S1から最大燃焼状態S2の範囲においては、燃焼量が連続的に制御可能となっている。
より具体的には、複数のボイラ20それぞれには、変動可能な蒸気量の単位である単位蒸気量Uが設定されている。これにより、ボイラ20は、最小燃焼状態S1から最大燃焼状態S2の範囲においては、単位蒸気量U単位で、蒸気量を変更可能となっている。なお、以下では、ボイラ20の最小燃焼状態S1における蒸気量を最小蒸気量と呼び、ボイラ20の最大燃焼状態S2における蒸気量を最大蒸気量と呼ぶ。
【0023】
単位蒸気量Uは、最大蒸気量に応じて適宜設定できるが、ボイラシステム1における出力蒸気量の必要蒸気量に対する追従性を向上させる観点から、ボイラ20の最大蒸気量の0.1%〜20%に設定されることが好ましく、1%〜10%に設定されることがより好ましい。
尚、出力蒸気量とは、ボイラ群2により出力される蒸気量を示し、この出力蒸気量は、複数のボイラ20それぞれから出力される蒸気量の合計値により表される。
【0024】
また、複数のボイラ20には、それぞれ優先順位が設定されている。優先順位は、燃焼指示や燃焼停止指示を行うボイラ20を選択するために用いられる。優先順位は、例えば整数値を用いて、数値が小さいほど優先順位が高くなるよう設定することができる。
図2に示すように、ボイラ20の1号機ボイラから5号機ボイラのそれぞれに「1」〜「5」の優先順位が割り当てられている場合、1号機ボイラの優先順位が最も高く、5号機ボイラの優先順位が最も低い。この優先順位は、通常の場合、後述の制御部4の制御により、所定の時間間隔(例えば、24時間間隔)で変更される。
【0025】
以上のボイラ群2には、燃焼するボイラ20の台数を増加する負荷率(燃焼量)を示す増缶ラインL1、及び燃焼するボイラ20の台数を減少する負荷率を示す減缶ラインL2が設定されている。必要蒸気量の変動に伴い燃焼しているボイラ20の負荷率が上昇して増缶ラインL1に規定する負荷率を超えると、新たなボイラ20(バーナ)の燃焼がオンにされ、燃焼するボイラ20の台数が増加する(増缶)。また、必要蒸気量の変動に伴い燃焼しているボイラ20の負荷率が低下して減缶ラインに規定する負荷率を下回ると、燃焼しているボイラ20のうちの1のボイラ20(バーナ)の燃焼がオフにされ、燃焼するボイラ20の台数が減少する(減缶)。
増缶ラインL1及び減缶ラインL2は適宜設定することができるが、燃焼するボイラ20の台数増減を抑制可能な値に設定することが好ましい。本実施形態では、80%の負荷率に増缶ラインL1を設定し、40%の負荷率に減缶ラインL2を設定している。増缶ラインL1及び減缶ラインL2を適切に設定することで、台数増減を抑制でき(燃焼台数増加過多抑制)、結果、パージ損失、放熱損失及び立上損失等を低減することができる。
また、増缶ラインL1及び減缶ラインL2は、ボイラ20の運転効率に応じて設定することとしてもよく、このような観点から設定することで、燃焼しているボイラ20の負荷率が上昇しボイラ群2の運転効率が低下すると(増缶ライン)、新たなボイラ20の運転を開始し、ボイラ群2全体における運転効率を維持することができ、同様に、燃焼しているボイラ20の負荷率が減少しボイラ群2の運転効率が低下すると(減缶ライン)、1のボイラ20の負荷率を最小燃焼状態S1に対応する負荷率まで低下した後に当該1のボイラ20の運転を停止することでボイラ群2全体における運転効率を維持することができる。
【0026】
次に、本実施形態のボイラシステム1による複数のボイラ20の燃焼状態の制御の詳細について説明する。
台数制御装置3は、蒸気圧センサ7からの蒸気圧信号に基づいて、要求負荷に応じたボイラ群2の必要燃焼量、及び必要燃焼量に対応する各ボイラ20の燃焼状態を算出し、各ボイラ20(後述のローカル制御部22)に台数制御信号を送信する。この台数制御装置3は、
図1に示すように、記憶部5と、制御部4と、を備える。
【0027】
記憶部5は、台数制御装置3(制御部4)の制御により各ボイラ20に対して行われた指示の内容や、各ボイラ20から受信した燃焼状態等の情報、複数のボイラ20の優先順位の設定の情報、優先順位の変更(ローテーション)に関する設定の情報等を記憶する。
【0028】
制御部4は、信号線16を介して各ボイラ20に各種の指示を行ったり、各ボイラ20から各種のデータを受信したりして、5台のボイラ20の燃焼状態や優先順位を制御する。各ボイラ20は、台数制御装置3から燃焼状態の変更指示の信号を受けると、その指示に従って当該ボイラ20を制御する。
【0029】
ボイラ20は、
図1に示すように、燃焼が行われるボイラ本体21と、ボイラ20の燃焼状態を制御するローカル制御部22と、を備える。
ローカル制御部22は、要求負荷に応じてボイラ20の燃焼状態を変更させる。具体的には、ローカル制御部22は、信号線16を介して台数制御装置3から送信される台数制御信号に基づいて、ボイラ20の燃焼量を制御し負荷率を変動させることで、燃焼状態を変更する。
また、ローカル制御部22は、台数制御装置3で用いられる信号を、信号線16を介して台数制御装置3に送信する。台数制御装置3で用いられる信号としては、ボイラ20の実際の燃焼状態、及びその他のデータが挙げられる。
【0030】
図3は、制御部4の構成を示す機能ブロック図である。制御部4は、必要蒸気量算出部41と、出力蒸気量算出部42と、偏差算出部43と、ボイラ選択部44と、判定部45と、出力制御部46と、を備える。
必要蒸気量算出部41は、蒸気ヘッダ6の蒸気圧に基づいて、要求負荷に応じた必要蒸気量を算出する。
出力蒸気量算出部42は、ローカル制御部22から送信される各ボイラ20の燃焼状態に基づいて、ボイラ群2により出力される蒸気量である出力蒸気量を算出する。
【0031】
偏差算出部43は、必要蒸気量と出力蒸気量との偏差量を算出する。
また、偏差算出部43は、後述の出力制御部46により、選択されたボイラ20の蒸気量が変更された場合には、必要蒸気量と、蒸気量変更後のボイラ群2の出力蒸気量と、の偏差量を算出する。
【0032】
ボイラ選択部44は、必要蒸気量に変動があった場合に蒸気量を変更させるボイラ20を選択する。
具体的には、ボイラ選択部44は、必要蒸気量が出力蒸気量よりも大きい場合、複数のボイラ20のうち負荷率の低いボイラ20を選択し、必要蒸気量が出力蒸気量よりも小さい場合、複数のボイラ20のうち負荷率の高いボイラ20を選択する。また、ボイラ選択部44は、複数のボイラ20の負荷率が等しい場合、必要蒸気量が出力蒸気量よりも大きいと最も優先順位の高いボイラ20を選択し、必要蒸気量が出力蒸気量よりも小さいと最も優先順位の低いボイラ20を選択する。
【0033】
判定部45は、偏差算出部43により算出された偏差量が単位蒸気量U以上であるかを判定する。
出力制御部46は、判定部45により偏差量が単位蒸気量U以上であると判定された場合に、ボイラ選択部44により選択されたボイラ20の蒸気量を変更させる。具体的には、出力制御部46は、必要蒸気量が出力蒸気量よりも大きい場合、ボイラ選択部44により選択されたボイラの蒸気量を単位蒸気量U分増加させる。また、出力制御部46は、必要蒸気量が出力蒸気量よりも小さい場合、ボイラ選択部44により選択されたボイラの蒸気量を単位蒸気量U分減少させる。
【0034】
また、詳細については後述するものの、ボイラ選択部44は、燃焼している複数のボイラ20の負荷率が増缶ラインL1に規定する負荷率以上に(又は同負荷率より高く)なると、停止しているボイラ20のうち最も優先順位の高いボイラ20を、新たに運転を介するボイラ(以下、「運転開始ボイラ」と呼ぶ)として選択する。そして、出力制御部46は、ボイラ選択部44により運転開始ボイラが選択されると、当該運転開始ボイラの運転を開始する。
このとき、出力制御部46は、運転開始ボイラを最小燃焼状態S1に対応する負荷率で燃焼させる。
【0035】
また、ボイラ選択部44は、燃焼している複数のボイラ20の負荷率が減缶ラインL2に規定する負荷率以下(又は同負荷率より低く)なると、燃焼しているボイラ20のうち最も優先順位の低いボイラ20を、運転を停止するボイラ(以下、「停止ボイラ」と呼ぶ)として選択する。そして、出力制御部46は、ボイラ選択部44により停止ボイラが選択されると、当該停止ボイラの負荷率を減缶ラインL2に規定する負荷率から最小燃焼状態S1に対応する負荷率まで低下させた後に、停止ボイラの運転を停止する。
【0036】
以上、本実施形態のボイラシステム1の構成について説明した。続いて、本実施形態のボイラシステム1によるボイラ20の台数増減方法の詳細について、
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は、ボイラ20を増加する(運転開始ボイラの運転を開始する)際の動作を示し、
図5は、ボイラ20を減少する(停止ボイラの運転を停止する)際の動作を示す。なお、
図4及び
図5では、説明の便宜上、ボイラ群2を3台のボイラ20で構成しているが、4台又は5台以上のボイラ20で構成した場合であっても同様の動作によりボイラ20の台数を増減することができる。
【0037】
初めに、
図4を参照して、ボイラ20を増加する際の動作について説明する。
図4(1)を参照して、1号機ボイラから3号機ボイラのうち、1号機ボイラのみが燃焼し、2号機ボイラ及び3号機ボイラが運転を停止している。このとき、蒸気使用設備18における蒸気使用により必要蒸気量が増加すると、台数制御装置3の制御部4は、1号機ボイラの負荷率を上昇させて、出力蒸気量を増加する。
【0038】
その結果、
図4(2)に示すように、1号機ボイラの負荷率が増缶ラインL1に規定する負荷率まで上昇すると、台数制御装置3の制御部4は、停止している2号機ボイラ及び3号機ボイラの中から優先順位の最も高いボイラ20を運転開始ボイラとして選択する。
図4では、2号機ボイラが運転開始ボイラとして選択されたものとする。そして、台数制御装置3の制御部4は、新たに2号機ボイラの運転を開始して出力蒸気量を必要蒸気量に追従させる。
このとき、運転開始に伴いこれまで蒸気量が0であった2号機ボイラから蒸気が生成されることになるため、必要蒸気量と出力蒸気量とを一致させるべく1号機ボイラの蒸気量を減少(負荷率を低下)させる必要がある。
【0039】
ここで、従来のボイラ増加方法では、
図10(B)に示すように、運転開始ボイラの運転開始に伴い、全てのボイラ20が均等な負荷率となるように負荷率を変動させることとしていた。そのため、運転開始ボイラの負荷率は、0から他のボイラ20と均等な負荷率まで急激に上昇し、また、他のボイラ20の負荷率は、急激に上昇した運転開始ボイラの負荷率分だけ低下してしまっていた。
この点、本実施形態のボイラシステム1では、
図4(3)に示すように、運転開始ボイラ(2号機ボイラ)を最小燃焼状態S1に対応する負荷率(本実施形態では20%)にとどめることとしている。そのため、運転開始ボイラの運転開始に伴い、1号機ボイラ1台のみの負荷率を20%低下させればよいことになり、燃焼しているボイラ20の負荷率の変動を抑えることができる。
【0040】
その後、更に必要蒸気量が増加した場合には、台数制御装置3の制御部4は、負荷率の低い2号機ボイラから優先して負荷率を上昇させ、
図4(4)に示すように1号機ボイラと2号機ボイラとの間で負荷率を平準化する。もちろん、1号機ボイラと2号機ボイラとの間で負荷率を平準化する前であっても1号機ボイラの負荷率を変更することとしてもよい。
更に必要蒸気量が増加し
図4(5)に示すように、1号機ボイラ及び2号機ボイラの負荷率が増缶ラインL1に規定する負荷率まで上昇すると、台数制御装置3の制御部4は、1号機ボイラ及び2号機ボイラの負荷率をこれ以上上昇させることなく、新たに3号機ボイラの運転を開始する。
【0041】
このとき、本実施形態のボイラシステム1では、
図4(6)に示すように、運転開始ボイラ(3号機ボイラ)の負荷率を他のボイラ20と均等な負荷率まで急激に上昇させることなく、最小燃焼状態S1に対応する負荷率(本実施形態では20%)にとどめることとしているため、1号機ボイラ及び2号機ボイラの負荷率をそれぞれ10%低下させればよいことになる。その結果、運転開始ボイラの運転開始に伴う燃焼しているボイラ20の負荷率の変動を抑えることができる。
【0042】
続いて、
図5を参照して、ボイラ20を減少する際の動作について説明する。
図5(1)では、1号機ボイラから3号機ボイラの全てが燃焼している。このとき、蒸気使用設備18における蒸気使用が減り必要蒸気量が減少すると、台数制御装置3の制御部4は、1号機ボイラの負荷率を低下させて、出力蒸気量を減少する。
【0043】
その結果、
図5(2)に示すように、1号機ボイラから3号機ボイラの負荷率が減缶ラインL2に規定する負荷率まで低下すると、台数制御装置3の制御部4は、1号機ボイラから3号機ボイラの中から優先順位の最も低いボイラ20を停止ボイラとして選択する。
図5では、3号機ボイラが停止ボイラとして選択されたものとする。そして、台数制御装置3の制御部4は、その後必要蒸気量が減少すると、3号機ボイラ(停止ボイラ)の負荷率を減缶ラインL2から低下させる。
【0044】
その後、
図5(3)に示すように、3号機ボイラの負荷率のみが減缶ラインL2から最小燃焼状態S1に対応する負荷率まで低下すると、3号機ボイラの負荷率を連続的に低下させることができなくなるため、台数制御装置3の制御部4は、3号機ボイラの運転を停止する。
このとき、運転停止に伴いこれまで単位蒸気量Uに基づき連続的に負荷率が変動(低下)していた3号機ボイラの負荷率が0になり、3号機ボイラから蒸気が生成されないことになるため、必要蒸気量と出力蒸気量とを一致させるべく1号機ボイラ及び2の蒸気量を増加(負荷率を上昇)させる必要がある。
【0045】
ここで、従来のボイラ減少方法では、
図10(E)に示すように、減缶ラインL2に規定する負荷率になると直ちに停止ボイラの運転を停止することとしていたため、停止ボイラの負荷率は、減缶ラインL2に規定する負荷率(40%)から0まで急激に低下していた。そのため、他のボイラ20は、停止ボイラの停止に伴い40%分負荷率を上昇させなければならず、
図10(E)では、2台のボイラ20の負荷率が同時に20%も上昇してしまっていた。
この点、本実施形態のボイラシステム1では、停止ボイラ(3号機ボイラ)を減缶ラインL2から最小燃焼状態S1に対応する負荷率まで低下させた後に、停止ボイラの運転を停止させることとしている。そのため、
図5(4)に示すように、3号機ボイラの運転停止に伴う1号機ボイラ及び2号機ボイラの負荷率の上昇は、最小燃焼状態S1に対応する負荷率分で足り、本実施形態では、1号機ボイラ及び2号機ボイラの負荷率をそれぞれ10%(=最小燃焼状態S1(20%)/2台)上昇させればよいことになり、燃焼しているボイラ20の負荷率の変動を抑えることができる。
【0046】
その後、更に必要蒸気量が減少した場合には、
図5(5)に示すように、台数制御装置3の制御部4は、1号機ボイラ及び2号機ボイラの負荷率を減缶ラインL2に規定する負荷率まで低下させる。その結果、1号機ボイラ及び2号機ボイラの負荷率が減缶ラインL2に規定する負荷率まで低下すると、台数制御装置3の制御部4は、1号機ボイラ及び2号機ボイラの中から優先順位の低いボイラ20(
図5では2号機ボイラ)を停止ボイラとして選択し、停止ボイラの負荷率を低下させる。
【0047】
その後、
図5(6)に示すように、2号機ボイラの負荷率のみが減缶ラインL2から最小燃焼状態S1に対応する負荷率まで低下すると、2号機ボイラの運転を停止する。
このとき、2号機ボイラの運転停止に伴い1号機ボイラの負荷率を上昇させる必要があるが、2号機ボイラを減缶ラインL2から最小燃焼状態S1に対応する負荷率まで低下させた後に停止しているため、
図5(7)に示すように、1号機ボイラの1台のみ負荷率を20%上昇させればよいことになる。その結果、停止ボイラの運転停止に伴う燃焼しているボイラ20の負荷率の変動を抑えることができる。
【0048】
続いて、本実施形態のボイラシステム1の動作を実現するための処理の流れについて、
図6及び
図7を参照して説明する。
図6及び
図7は、ボイラシステム1の処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
初めに、処理の前準備として各ボイラ20に対して単位蒸気量Uを設定し(ステップST1)、また、増缶ラインL1及び減缶ラインL2を設定(ステップST2)し、記憶部5の所定の領域に記憶する。
【0050】
続いて、ステップST3において、制御部4は、必要蒸気量及び偏差量を算出する。即ち、必要蒸気量算出部41が蒸気ヘッダ6の蒸気圧に基づいて要求負荷に応じた必要蒸気量を算出し、出力蒸気量算出部42が各ボイラ20の燃焼状態に基づいて出力蒸気量を算出すると、偏差算出部43は、必要蒸気量と出力蒸気量との偏差量を算出する。
【0051】
続いて、ステップST4において、制御部4は、蒸気量の変動が必要であるか否かを判定する。本実施形態では、制御部4は、偏差量が0である場合に蒸気量の変動が必要でないと判定し、偏差量が0でない場合に蒸気量の変動が必要であると判定する。蒸気量の変動が必要でない場合には、ステップST3の処理に戻り、蒸気量の変動が必要な場合には、続いてステップST5の処理に移る。
【0052】
ステップST5において、制御部4は、蒸気量を変動するボイラ20を選択する変動ボイラ選択処理を行う。なお、変動ボイラ選択処理の詳細については、
図7で後述する。
続いて、ステップST6において、制御部4は、各ボイラ20へ燃焼指示を出力し、各ボイラ20から出力される蒸気量を制御する。即ち、判定部45が、ステップST5において選択されたボイラ20に対する蒸気量の変動が偏差量を超えないと判定すると、出力制御部48は、このボイラ20の蒸気量を単位蒸気量U等に基づき増加又は減少させる。
ステップST6の処理が終わると、制御部4は、ステップST3の処理に戻り、ステップST3〜ステップST6の処理を繰り返す。
【0053】
次に、ステップST5における変動ボイラ選択処理の詳細について、
図7を参照して説明する。
初めに、ステップST11において、制御部4は、蒸気量を増加する必要があるか、蒸気量を減少する必要があるかを判定する。この判定は、偏差算出部43が算出した偏差量に基づいて行われ、制御部4は、必要蒸気量の方が大きい場合に蒸気量を増加する必要があると判定し、処理をステップST12に移す。一方、制御部4は、出力蒸気量の方が大きい場合に蒸気量を減少する必要があると判定し、処理をステップST20に移す。
【0054】
蒸気量を増加する必要がある場合、ステップST12において、制御部4は、増缶する必要があるか否かを判定する。即ち、制御部4のボイラ選択部44は、運転しているボイラ20の負荷率が増缶ラインL1を超えたか否かを判定する。この判定がYESのときは、制御部4は、処理をステップST13に移し、NOのときは、処理をST15に移す。
【0055】
増缶する必要がある場合、ステップST13において、制御部4(ボイラ選択部44)は、運転を停止しているボイラ20の中から優先順位の最も高いボイラ20を運転開始ボイラとして選択し、この運転開始ボイラに対して最小燃焼状態S1を設定する。続いて、制御部4(ボイラ選択部44)は、運転開始ボイラが給蒸可能な状態に到達したタイミングとなるまで待機し(ステップST14)、運転開始ボイラが給蒸可能な状態に到達すると燃焼している他のボイラ20の負荷率を低下、即ち運転開始ボイラの負荷率が0から最小燃焼状態S1に上昇したことに伴い、既に燃焼している他のボイラ20の負荷率を低下させる(ステップST15)。この処理が終了すると、制御部4は、変動ボイラ選択処理を終了し、
図6のステップST6に処理を移す。
【0056】
他方、増缶する必要がない場合、ステップST16において、制御部4(ボイラ選択部44)は、運転開始ボイラが存在するか否かを判定する。本実施形態では、運転開始ボイラの運転を、最小燃焼状態S1に対応する負荷率で開始するため、運転開始時には、運転開始ボイラと他のボイラ20との間で負荷率が異なっている。そこで、異なる負荷率を平準化させるべく、最小燃焼状態S1に対応する負荷率で運転を開始した後は、運転開始ボイラの負荷率を優先して上昇させる。そのため、ステップST16における運転開始ボイラが存在するか否かの判定は、運転開始ボイラとその他のボイラ20との間で負荷率の平準化がはかられたか否かの判定であるといえる。
【0057】
運転開始ボイラが存在する場合、ステップST17において、制御部4(ボイラ選択部44)は、運転開始ボイラの負荷率を優先して上昇させる。なお、優先した負荷率の上昇は、任意の方法により行うことができ、最も簡易には運転開始ボイラのみ連続して負荷率を上昇させ、他のボイラ20の負荷率を変動させない方法が考えられる。もちろん、優先した負荷率の上昇は、この方法に限られず、同じボイラのみ複数回連続して負荷率を上昇させることが好ましくない場合には、運転開始ボイラの負荷率を上昇させる頻度を他のボイラ20の負荷率を上昇させる頻度よりも高くすることで、運転開始ボイラと他のボイラ20との間の負荷率の平準化をはかることとしてもよい。
【0058】
続いて、ステップST18において、制御部4(ボイラ選択部44)は、運転開始ボイラの負荷率が所定負荷率に到達したか否か、即ち運転開始ボイラと他のボイラ20との間で負荷率の平準化がはかられたか否かを判定する。この判定がYESのときは、制御部4(ボイラ選択部44)は、運転開始ボイラの設定をクリアする(ステップST19)。これにより、以降ステップST16においてNOと判定されることになり、優先した負荷率の上昇が行われなくなる。この処理が終了すると、制御部4は、変動ボイラ選択処理を終了し、
図6のステップST6に処理を移す。
【0059】
ステップST16においてNOと判定されると、制御部4(ボイラ選択部44)は、運転しているボイラ20が均一な負荷率になるように負荷率を上昇させるボイラ20を選択する(ステップST20)。この処理が終了すると、制御部4は、変動ボイラ選択処理を終了し、
図6のステップST6に処理を移す。
【0060】
ステップST11において、蒸気量を減少する必要があると判定された場合、ステップST21において、制御部4(ボイラ選択部44)は、運転しているボイラ20の負荷率が減缶ラインL2を超えたか否かを判定する。この判定がYESのときは、制御部4は、処理をステップST22に移し、NOのときは、処理をステップST25に移す。
【0061】
減缶する必要がある場合、ステップST22において、制御部4(ボイラ選択部44)は、運転しているボイラ20の中から優先順位の最も低いボイラ20を停止ボイラとして選択し、この停止ボイラの負荷率を低下する。
【0062】
続いて、制御部4(ボイラ選択部44)は、停止ボイラの負荷率が最小燃焼状態S1に対応する負荷率に到達したか否かを判定し(ステップST23)、停止ボイラの負荷率が最小燃焼状態S1に到達するまで待機する。その後、停止ボイラの負荷率が最小燃焼状態S1に対応する負荷率に到達すると、制御部4(ボイラ選択部44)は、停止ボイラに対して運転停止を設定し、この運転停止に伴い他のボイラ20の負荷率を上昇させる(ステップST24)。この処理が終了すると、制御部4は、変動ボイラ選択処理を終了し、
図6のステップST6に処理を移す。
また、ステップST21においてNOと判定されると、制御部4(ボイラ選択部44)は、運転しているボイラ20が均一な負荷率になるように負荷率を低下させるボイラ20を選択する(ステップST25)。この処理が終了すると、制御部4は、変動ボイラ選択処理を終了し、
図6のステップST6に処理を移す。
【0063】
以上、本発明のボイラシステム1の好ましい一実施形態について説明した。ところで、上記実施形態のボイラシステム1では、ボイラ20の負荷率が増缶ラインL1に対応する負荷率に達すると他のボイラ20の運転を開始することとしている。この点、他のボイラ20の運転を開始する基準については、増缶ラインL1に限られず、他の基準を採用することとしてもよい。
【0064】
ボイラシステム1では、急激な負荷変動(特に、負荷増加)に対応するため、ボイラ20に対して一定の余力を持たせた状態で燃焼させることが好ましい。そこで、ボイラ群2に、このような急激な負荷変動に対する余力としての急負荷変動蒸気量(増加基準蒸気量)を設定しておき、この急負荷変動蒸気量に基づいて、他のボイラ20の運転を開始することとしてもよい。
ここで、
図8を参照して、燃焼中のボイラ20の最大蒸気量と現在生成している蒸気量との差を「増加余力蒸気量」と呼び、燃焼中の複数のボイラ20における増加余力蒸気量の和を「合計増加余力蒸気量」と呼ぶ。なお、運転を停止しているボイラ20では、最大蒸気量分の余力を有することになるが、停止している状態であり急激な負荷変動に対して早急な追従ができないため、増加余力蒸気量は0となる。
ボイラシステム1では、このような合計増加余力蒸気量と急負荷変動蒸気量とに基づいて、停止しているボイラ20の運転を開始することとしてもよい。即ち、合計増加余力蒸気量が急負荷変動蒸気量よりも小さくなることを条件に、新たなボイラ20の運転を開始し、余力を確保することとしてもよい。
【0065】
このような合計増加余力蒸気量及び急負荷変動蒸気量を用いたボイラ20の増加について
図9を参照して説明する。
図9(1)を参照して、1号機ボイラから3号機ボイラのうち、1号機ボイラ及び2号機ボイラが燃焼し、3号機ボイラが運転を停止している。このとき、蒸気使用設備18における蒸気使用により必要蒸気量が増加すると、台数制御装置3の制御部4は、1号機ボイラ及び2号機ボイラの負荷率を上昇させて、出力蒸気量を増加する。
【0066】
1号機ボイラ及び2号機ボイラの負荷率が上昇すると、1号機ボイラ及び2号機ボイラの余力が小さくなる。そこで、台数制御装置3の制御部4(余力算出部)は、1号機ボイラ及び2号機ボイラのそれぞれの増加余力蒸気量を算出すると共に、算出した1号機ボイラ及び2号機ボイラの増加余力蒸気量の和である合計増加余力蒸気量を算出する。その結果、
図9(2)に示すように、合計増加余力蒸気量が急負荷変動蒸気量よりも小さくなると、台数制御装置3の制御部4(ボイラ選択部44)は、新たに3号機ボイラの運転を開始してボイラ群2における余力(合計増加余力蒸気量)を確保する。
【0067】
このとき、運転を開始した3号機ボイラの負荷率を最小燃焼状態S1に対応する負荷率に抑えることで、
図9(3)に示すように、1号機ボイラ及び2号機ボイラの負荷率の低下を抑えることができ、3号機ボイラの運転開始に伴う燃焼しているボイラ20の負荷率の変動を抑えることができる。
【0068】
以上説明したボイラシステム1によれば、以下のような効果を奏する。
【0069】
(1)複数のボイラ20にそれぞれ最小燃焼状態S1を設定した。そして、制御部4は、燃焼させるボイラ20の台数を増加させる場合に、新たに燃焼を開始するボイラ20を最小燃焼状態S1で燃焼させる構成とした。これにより、新たなボイラ20の増加に伴う他のボイラ20の蒸気量(負荷率)の変動を、最小燃焼状態S1の範囲に限定することができ、燃焼しているボイラ20の台数を増加した場合の圧力変動を抑えることができる。
【0070】
(2)ボイラ群2に燃焼させるボイラの台数を増加させる基準となる負荷率を示す増缶ラインL1を設定した。そして、制御部4を、複数のボイラ20のうち燃焼状態にあるボイラの負荷率が、増缶ラインL1が規定する負荷率に到達すると、燃焼させるボイラの台数を増加させるボイラ選択部44を含んで構成した。このような増缶ラインL1を適切に設定することで、ボイラ20の台数増加やその後の要求負荷低下に伴うボイラ20の台数減少を抑制することができ(燃焼台数増減過多抑制)、結果、ボイラ20の台数増減に伴うパージ損失、放熱損失及び立上損失等を低減することができる。この場合においても、増加するボイラ20を最小燃焼状態S1で燃焼させることで、燃焼しているボイラ20の台数を増加した場合の圧力変動を抑えることができる。
【0071】
(3)ボイラ群2に燃焼させるボイラの台数を増加させる基準となる増加基準蒸気量を設定した。そして、制御部4を、複数のボイラ20のうち燃焼状態にあるボイラについて、該ボイラ20それぞれの最大蒸気量と出力蒸気量との差である増加余力蒸気量を算出すると共に、算出された増加余力蒸気量の和である合計増加余力蒸気量を算出する余力算出部と、算出された合計増加余力蒸気量が増加基準蒸気量を下回った場合に、燃焼させるボイラの台数を増加させるボイラ選択部44と、を含んで構成した。これにより、ボイラ群2における余力を確保した状態でボイラ20の台数を増加することができる。この場合においても、増加するボイラ20を最小燃焼状態S1で燃焼させることで、燃焼しているボイラ20の台数を増加した場合の圧力変動を抑えることができる。
【0072】
(4)ボイラ群2に燃焼させるボイラの台数を減少させる基準となる負荷率を示す減缶ラインL2を設定した。そして、制御部4を、複数のボイラ20のうち燃焼状態にあるボイラの負荷率が減缶ラインL2が規定する負荷率に到達すると、燃焼状態にあるボイラのうち1のボイラを停止ボイラとして選択するボイラ選択部44と、要求負荷に対して停止ボイラの負荷率を変更すると共に、停止ボイラの負荷率が最小燃焼状態S1に対応する負荷率まで低下すると、該停止ボイラの燃焼を停止する出力制御部46と、を含んで構成した。これにより、燃焼しているボイラ20の台数を減少させる場合には、停止するボイラ20(停止ボイラ)を最小燃焼状態S1に対応する負荷率まで低下させてから該ボイラ20の燃焼を停止することになる。そのため、ボイラ20の燃焼停止に伴う他のボイラ20の蒸気量(負荷率)の変動を、最小燃焼状態S1の範囲に限定することができ、燃焼しているボイラ20の台数を減少した場合の圧力変動を抑えることができる。
【0073】
以上、本発明のボイラシステム1の好ましい各実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、運転開始ボイラ及び停止ボイラ以外の他のボイラ20に対する詳細な説明を省略している。この点、運転開始ボイラ及び停止ボイラ以外の燃焼を継続するボイラ20の負荷率は、必要に応じて変更し、ボイラシステム1全体における圧力安定性を確保することとしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、本発明を、3台の又は5台のボイラ20からなるボイラ群2を備えるボイラシステムに適用したが、これに限らない。即ち、本発明を、6台以上のボイラからなるボイラ群を備えるボイラシステムに適用してもよく、また、2台のボイラからなるボイラ群を備えるボイラシステムに適用してもよい。
【0075】
また、本実施形態では、複数のボイラ20それぞれから出力される蒸気量の合計値をボイラ群2の出力蒸気量としたが、これに限らない。即ち、台数制御装置3(制御部4)から複数のボイラ20に送信される燃焼指示信号から算出される蒸気量である指示蒸気量の合計値をボイラ群2の出力蒸気量として扱ってもよい。