特許第5672322号(P5672322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5672322
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】ロボット装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
   B25J13/08 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-51636(P2013-51636)
(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-176917(P2014-176917A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2013年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】塩田 晃大
(72)【発明者】
【氏名】大川 健
(72)【発明者】
【氏名】池田 敏章
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特公平07−046288(JP,B2)
【文献】 特開平01−174209(JP,A)
【文献】 特許第4650411(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状体の組み付け作業を行うロボット装置であって、
一端が固定された前記線状体を把持する把持部と、
前記把持部が前記線状体を把持した状態で、前記線状体の他端側に向けて前記把持部を前記線状体に対してスライドさせることによって、前記線状体の他端側を所定の案内領域内に案内するアーム本体と、
前記アーム本体に設けられ、前記線状体の他端側と前記把持部との当接を検出する力センサと、
前記力センサによって前記線状体の他端側と前記把持部との当接が検出されたときに、前記案内領域内を撮像するカメラと、
前記カメラによって撮像された画像に基づいて前記線状体の他端の姿勢を検出する画像処理部と、を備え、
前記画像処理部によって検出された前記線状体の他端の姿勢に応じて前記線状体の組み付け作業を行うロボット装置。
【請求項2】
前記アーム本体は、前記線状体の一端側よりも他端側において、前記把持部をスライドさせる速度を遅くする、請求項1に記載のロボット装置。
【請求項3】
前記画像処理部によって検出された前記線状体の他端の姿勢に基づいて前記線状体の他端を把持し、前記線状体の組み付け作業を行う作業アームを更に備える、請求項1又は2に記載のロボット装置。
【請求項4】
前記線状体の他端には、コネクタが設けられ、
前記力センサは、前記コネクタと前記把持部との当接を検出する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のロボット装置。
【請求項5】
前記アーム本体は、前記把持部を前記線状体の他端側に向けて所定の軌跡でスライドさせて、前記線状体の他端側を前記所定の案内領域内に案内する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、組み立て作業の様々な工程において、ロボット装置を用いる比率が高まってきている。例えば、特許文献1には、ケーブルの先端をコネクタに接続するロボット装置が開示されている。特許文献1に記載されたロボット装置は、カメラによって撮像された画像を処理することによってコネクタの位置を把握し、コネクタにケーブルを接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4650411号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、線状体の組み付け作業を行うロボット装置の分野においては、線状体の端部を素早く把握し、効率よく線状体の組み付け作業を行うことが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、効率よく線状体の組み付け作業を行うことができるロボット装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るロボット装置は、線状体の組み付け作業を行うロボット装置である。このロボット装置は、把持部、アーム本体、力センサ、カメラ、及び、画像処理部を備える。把持部は、一端が固定された線状体を把持する。アーム本体は、把持部が線状体を把持した状態で線状体の他端側を所定の案内領域内に案内する。力センサは、アーム本体に設けられ、線状体の他端側と把持部との当接を検出する。カメラは、力センサによって線状体の他端側と把持部との当接が検出されたときに、案内領域内を撮像する。画像処理部は、カメラによって撮像された画像に基づいて線状体の他端の姿勢を検出する。ロボット装置は、画像処理部によって検出された線状体の他端の姿勢に応じて、線状体の組み付け作業を行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、効率よく線状体の組み付け作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るロボット装置を上方から見た概略構成を示す図である。
図2図1の制御部の詳細を示す機能ブロック図である。
図3】案内領域とコネクタとの位置関係を示す図である。
図4】把持部とコネクタとが当接した状態を示す図である。
図5】コネクタの組み付け手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1に示すように、ロボット装置1は、装置110の組み立て作業を行うロボットである。本実施形態では、特に、一端が装置110の本体部に固定されたケーブル(線状体)100の他端を、ロボット装置1によって組み付ける構成について説明する。ロボット装置1は、誘導アーム10、作業アーム20、カメラ30、胴体部40、及び、制御部50を含んで構成される。
【0011】
誘導アーム10は、アーム本体11、把持部12、及び、力センサ13を含んで構成される。アーム本体11は、複数の関節を有するアームである。アーム本体11の基端部は、胴体部40に接続される。アーム本体11の先端部には、把持部12が取り付けられる。アーム本体11は、各関節を揺動させることで、先端部に取り付けられた把持部12を、3次元方向の任意の位置に移動させることができる。把持部12は、ケーブル100を把持する。
【0012】
力センサ13は、アーム本体11の先端部に設けられ、把持部12に加わる力を検出する。より詳細には、力センサ13は、把持部12に加わる力のうち、アーム本体11によって動かされる把持部12のスライド方向とは逆向きの力を検出する。
【0013】
カメラ30は、胴体部40に取り付けられ、所定の案内領域R(図3参照)内を撮像する。案内領域Rについて、詳しくは後述する。なお、カメラ30を胴体部40に取り付けるものとしたが、胴体部40以外にも、例えば、アーム本体11の先端部近傍に取り付ける等、適宜の場所に取り付けることができる。
【0014】
作業アーム20は、ケーブル100の他端に取り付けられたコネクタ101を把持し、例えば、装置110の所定の個所に接続する等、ケーブル100の他端の組み付け作業を行う。
【0015】
胴体部40は、誘導アーム10の基端部、及び、作業アーム20の基端部をそれぞれ揺動可能に支持する。
【0016】
制御部50は、誘導アーム10及び作業アーム20の駆動を制御する。具体的には、制御部50は、誘導アーム10及びカメラ30を用いて、ケーブル100の他端に取り付けられたコネクタ101を検出する。そして、制御部50は、作業アーム20を用いて、コネクタ101を装置110の所定の個所に接続する等の組み付け作業を行う。制御部50は、機能的には図2に示すように、誘導アーム制御部51、当接判断部52、画像処理部53、及び、作業アーム制御部54を含んで構成される。なお、制御部50は、物理的には、CPU及びメモリ等を備えるコンピュータシステムによって構成される。
【0017】
誘導アーム制御部51は、誘導アーム10の駆動を制御する。具体的には、誘導アーム制御部51は、ケーブル100の一端近傍の部位(装置110に接続された側の端部近傍の部位)を把持するようにアーム本体11及び把持部12を制御する。なお、把持部12によって把持するケーブル100の位置(アーム本体11を動かす位置)は、装置110に対するケーブル100の固定位置を予め把握しておくことにより、推定することができる。なお、ケーブル100の他端の位置は、ケーブル100に付いた癖等によってケーブル100毎に異なっており、正確に推定することは困難である。
【0018】
誘導アーム制御部51は、アーム本体11及び把持部12を制御し、把持部12によってケーブル100を把持した状態でケーブル100の他端側に向けて把持部12を所定の軌跡でスライドさせ、所定の案内領域R内にケーブル100の他端(コネクタ101)を案内する。ここで、案内領域Rについて説明する。ケーブル100の長さは、予め規格或は設計等で定められており、ケーブル100を把持した状態で把持部12を所定の軌跡でケーブル100の他端までスライドさせると、ケーブル100の他端は所定の領域内に位置する。本実施形態では、図3に示すように、把持部12を所定の軌跡でスライドさせた場合におけるケーブル100の他端の位置を含む領域を、案内領域Rとする。
【0019】
但し、ケーブル100の長さは、公差等によってばらつきが生じている場合がある。ケーブル100の長さにばらつきが生じている場合、把持部12を所定の軌跡でスライドさせたときのケーブル100の他端の位置にもばらつきが生じる。案内領域Rは、ケーブル100の長さにばらつきがある場合であっても、これらのケーブル100の他端の位置を含むように、予め設定される。
【0020】
また、誘導アーム制御部51は、把持部12を所定の軌跡でスライドさせる際に、コネクタ101が設けられたケーブル100の他端近傍では、把持部12をスライドさせる速度が遅くなるようにアーム本体11を制御する。例えば、誘導アーム制御部51は、ケーブル100の他端に把持部12が近づくに従って徐々にスライドの速度を落とす、或は、ある程度までケーブル100の他端に近づいたときに把持部12の速度を所定速度に落とす等、ケーブル100の一端側よりも他端側において、把持部12をスライドさせる速度が遅くなるようにアーム本体11を制御する。
【0021】
また、誘導アーム制御部51は、当接判断部52から、把持部12がケーブル100の他端までスライドされた旨の通知を受け取ると、把持部12のスライドを停止させる。
【0022】
当接判断部52は、力センサ13によって検出される把持部12に加わる力に基づいて、把持部12がケーブル100の他端までスライドされたか否かを判断する。ケーブル100の他端にはコネクタ101が設けられている。このため、図4に示すように、ケーブル100を把持した状態で把持部12をケーブル100の他端側に向けてスライドさせると、把持部12がコネクタ101に当接する。
【0023】
この当接により、把持部12に対し、把持部12のスライド方向とは逆向きの大きな力が加わる。当接判断部52は、把持部12に対してスライド方向とは逆向きの大きな力が加わったことが力センサ13によって検出されたきに、把持部12がコネクタ101に当接した、即ち、ケーブル100の他端まで把持部12がスライドされたものとして判断する。
【0024】
当接判断部52は、ケーブル100の他端まで把持部12がスライドされたものとして判断した場合、誘導アーム制御部51及び画像処理部53に対して、ケーブル100の端部まで把持部12がスライドされた旨の通知を行う。
【0025】
画像処理部53は、当接判断部52から、ケーブル100の他端まで把持部12がスライドされた旨の通知を受け取ると、カメラ30によって撮像された案内領域Rを含む画像に基づいて、コネクタ101の姿勢を検出する。このコネクタ101の姿勢の検出には、既存の画像処理技術を用いることができる。ここでは、コネクタ101の傾斜、コネクタ101の回転状態等を検出することができる。
【0026】
作業アーム制御部54は、作業アーム20の駆動を制御する。具体的には、作業アーム制御部54は、画像処理部53によって検出されたコネクタ101の姿勢に基づいて、コネクタ101を把持するように作業アーム20を制御する。そして、作業アーム制御部54は、コネクタ101を装置110の所定の個所に接続する等の組み付け作業を行うように作業アーム20を制御する。
【0027】
次に、ケーブル100の他端に設けられたコネクタ101の組み付け作業の手順について説明する。図5に示すように、まず、誘導アーム制御部51は、ケーブル100の一端近傍の部位が把持部12によって把持されるように誘導アーム10を制御する(ステップS101)。次に、誘導アーム制御部51は、アーム本体11を制御し、ケーブル100を把持した状態でケーブル100の他端側に向けて把持部12を所定の軌跡でスライドさせる(ステップS102)。これにより、案内領域R内にケーブル100の他端(コネクタ101)が案内される。
【0028】
次に、当接判断部52は、力センサ13の検出結果に基づいて、把持部12がコネクタ101に当接したか否かを判断する(ステップS103)。把持部12がコネクタ101に当接していないと判断された場合(ステップS103:NO)、誘導アーム制御部51は、上述のステップS102の処理を行う。一方、把持部12がコネクタ101に当接した、即ち、ケーブル100の端部まで把持部12がスライドされたと判断された場合(ステップS103:YES)、画像処理部53は、カメラ30によって撮像された画像に基づいて、コネクタ101の姿勢を検出する(ステップS104)。
【0029】
次に、作業アーム制御部54は、画像処理部53によって検出されたコネクタ101の姿勢に基づいて、コネクタ101を把持するように作業アーム20を制御し、ケーブル100の他端の組み付け作業を行う(ステップS105)。
【0030】
本実施形態は以上のように構成され、ロボット装置1は、把持部12によってケーブル100を把持した状態で把持部12をスライドさせることによってケーブル100のコネクタ101を案内領域R内に案内する。そして、ロボット装置1は、力センサ13によって把持部12とコネクタ101との当接が検出されたときに、カメラ30によって撮像された画像に基づいてコネクタ101の姿勢を検出する。ロボット装置1は、検出されたコネクタ101の姿勢に基づいて作業アーム20によってコネクタ101を把持し、ケーブル100の他端の組み付け作業を行う。このように、把持部12をスライドさせることで案内領域R内にケーブル100のコネクタ101を案内することができ、案内領域Rの画像に基づいてコネクタ101の姿勢を容易に検出することが可能となる。
【0031】
例えば、把持部12を用いてコネクタ101を案内領域Rに案内しない場合には、コネクタ101の位置が不明であるため、案内領域Rよりも広い領域を撮像し、広範囲の画像に基づいてコネクタ101を探すといった処理が必要となる。これに対し、本実施形態では、上述したように案内領域Rの画像に基づいてコネクタ101の姿勢を検出することができるため、画像処理を短時間で行うことができる。
【0032】
このように、本実施形態に係るロボット装置1では、効率よくケーブル100の組み付け作業を行うことができる。
【0033】
誘導アーム制御部51は、把持部12を所定の軌跡でスライドさせる際に、コネクタ101が設けられたケーブル100の他端近傍では、把持部12をスライドさせる速度が遅くなるようにアーム本体11を制御する。これにより、把持部12がコネクタ101に当接したときに、コネクタ101に加わる力が小さくなり、コネクタ101がケーブル100の他端から脱落したり、コネクタ101が破損したりするといった不具合の発生を抑制することができる。
【0034】
ロボット装置1は作業アーム20を備えているので、コネクタ101の姿勢が検出された後、作業アーム20によってコネクタ101を把持して素早くケーブル100の組み付け作業を行うことができる。また、誘導アーム10の把持部12によってケーブル100が把持された状態で、作業アーム20によってコネクタ101を把持することができるので、コネクタ101の位置ずれが生じることがなく、作業アーム20によって容易にコネクタ101を把持することができる。このように、コネクタ101の位置を検出するために用いられる誘導アーム10と、ケーブル100の組み付け作業を行う作業アーム20とを備えることで、ロボット装置1は、より一層効率よくケーブル100の組み付け作業を行うことができる。
【0035】
力センサ13の検出結果を用いて、ケーブル100の他端に設けられたコネクタ101に把持部12が当接したことを検出する。このように、把持部12がコネクタ101に当接したことを力センサ13によって検出することで、把持部12がケーブル100の他端までスライドされたことを容易に検出することができる。
【0036】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ケーブル100の他端に設けられたコネクタ101に把持部12が当接したことを検出するものとしたが、コネクタ101以外にも、ケーブル100の他端に凸部等を設けておき、この凸部等と把持部12とが当接したことを検出する等、適宜の凸部等を設けてケーブル100の他端まで把持部12がスライドされたことを検出してもよい。
【0037】
また、把持部12をスライドさせる速度を、ケーブル100の他端側では遅くするものとしたが、例えば遅い速度で把持部12をスライドさせる場合等、一定速度で把持部12をスライドさせてもよい。
【0038】
作業アーム20を用いてケーブル100の他端の組み付け作業を行うものとしたが、作業アーム20を設けなくてもよい。この場合、ケーブル100の他端を検出した後、誘導アーム10を移動させてケーブル100の他端の位置を所定位置に揃える作業、或は、ケーブル100を一旦、所定の位置に置き、誘導アーム10の把持部12でコネクタ101を把持し直して所定の位置にケーブル100の他端を設置する等、誘導アーム10によってケーブル100の組み付け等の作業を行うこともできる。
【0039】
把持部12によってケーブル100が把持されているか否かを検出するセンサを設けてもよい。この場合には、把持部12による把持の失敗時等に、素早く把持動作をやり直すことができる。
【0040】
ロボット装置1は、ケーブル100の組み付け作業を行う場合を例に説明したが、ケーブル100以外の線状体(例えば、ホース等)の組み付け作業を行うこともできる。
【符号の説明】
【0041】
1…ロボット装置、10…誘導アーム、11…アーム本体、12…把持部、13…力センサ、20…作業アーム、30…カメラ、53…画像処理部、100…ケーブル(線状体)、101…コネクタ。
図1
図2
図3
図4
図5