(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の自動倉庫のラック装置には、滑り防止面を荷受棚部に設けることによって、物品の落下防止措置が施されていた。しかしながら、地震力が大きくなって、滑り防止面の摩擦力を上回る力が、物品に作用した場合、物品が荷受棚部から落下してしまうおそれがある。また、様々に変化する地震力に対応できるように、滑り防止面の摩擦係数を一意に決定することも難しい。
また、他の自動倉庫のラック装置には、物品の荷重を、粘弾性体で支持しながら腕木へと伝達することによって、物品の落下防止措置が施されたものもある。しかしながら、この形態のラック装置では、粘弾性体の上部に物品が載置されるので、物品の重量によって粘弾性体が変形しづらくなるおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、物品の落下を効果的に防止可能な物品落下防止機構を、ラック装置に設置することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0007】
本発明の一見地に係る自動倉庫のラック装置は、スタッカークレーンの経路と平行に配置される装置である。自動倉庫のラック装置は、支柱と、固定部と、移動式荷受部材と、粘弾性体とを、備えている。支柱は、上下方向に延びる部材である。固定部は、支柱に固定される部分である。固定部は、経路から離れる方向に延びる水平部材を、有している。移動式荷受部材は、下方が開放するように上部と両側部とから構成された断面を、有している。移動式荷受部材の上部が水平部材の上面に対向するように、移動式荷受部材は水平部材に載置される。粘弾性体は、水平部材の一側面と移動式荷受部材の側部の内側面との間に配置され、固定部と移動式荷受部材とを接続する。
【0008】
この場合、例えば、物品が移動式荷受部材の上部に載置された状態で、ラック装置に地震力が入力されると、移動式荷受部材(又は水平部材)が、水平部材(又は移動式荷受部材)に対して、相対移動する。すると、粘弾性体が移動式荷受部材と水平部材との間で変形する。このように、物品落下防止機構は機能する。すなわち、移動式荷受部材が水平部材に対して相対移動を繰り返すことによって、物品に入力される地震エネルギーが、粘弾性体によって運動エネルギーから熱エネルギーに変換される。これにより、物品の落下を防止することができる。
【0009】
上記のような構成を有するラック装置では、粘弾性体が、水平部材の一側面と移動式荷受部材の一方の側部の内側面との間に配置されているので、物品の垂直荷重は水平部材で直接的に支持し、物品の水平荷重は粘弾性体に直接的に伝達することができる。すなわち、物品の荷重が重くなっても、粘弾性体を効果的に動作させることができる。これにより、物品を支持しながら、物品の落下防止を確実に実現することができる。
また、本ラック装置では、水平部材が、下方が開放したコ字状断面を有する荷受部材の内側に配置されるので、スタッカークレーンの経路方向への移動式荷受部材の移動を、規制することができる。また、移動式荷受部材を、水平部材上において、スムーズに移動させることができる。これにより、粘弾性体を確実に変形させることができるので、ラック装置からの物品の脱落等を確実に防止することができる。
【0010】
さらに、本ラック装置では、荷受部材と水平部材との間に粘弾性体を配置するだけで、様々に変化する地震力に対して、物品の落下を効果的に防止することができる。すなわち、物品落下防止機構を容易且つ低コストでラック装置に設置することができる。また、固定部と荷受部材とを有する荷受棚部は、必ずしもラック装置の全ての荷受棚部に設置する必要はない。すなわち、この荷受棚部を、必要に応じて、ラック装置に部分的に設置することによって、さらに低コスト化を図ることができる。
【0011】
なお、一般的には、ラック装置では、経路から離れる方向の一側面は、物品を出し入れするために、開口が設けられている。また、経路から離れる方向の長さは、経路方向の長さと比較して、短くなっている(アスペクト比が小さくなっている)。このため、ラック装置に載置された物品は、地震時等に、上記の一側面の開口から脱落してしまうおそれがある。しかしながら、本ラック装置では、経路から離れる方向に、上記のような機構を設けることによって、ラック装置からの物品の脱落等を確実に防止することができる。
【0012】
ラック装置では、支柱が、第1の支柱と、第2の支柱とを、有していてもよい。また、固定部は、第1の固定部と、第2の固定部とを、有していてもよい。第1の支柱は、スタッカークレーンに近い側に配置される支柱である。第2の支柱は、スタッカークレーンから離れた側に配置される支柱である。第1の支柱には第1の固定部が固定され、第2の支柱には第2の固定部が固定されている。移動式荷受部材は、第1の固定部と第2の固定部とによって、支持される。
この場合、移動式荷受部材が、第1の固定部と第2の固定部とによって、支持されるので、移動式荷受部材を安定的に固定部に対して移動させることができる。これにより、粘弾性体を確実に変形させることができるので、ラック装置からの物品の脱落等を確実に防止することができる。また、固定部を、経路から離れる方向に分割した構造にすることによって、さらに低コスト化を図ることができる。
【0013】
ラック装置は、低摩擦部材をさらに備えていてもよい。低摩擦部材は、水平部材の上面に取り付けられる。低摩擦部材は、移動式荷受部材の上部の内側面に当接する。低摩擦部材は、物品落下防止機構に含まれる。
この場合、低摩擦部材が、水平部材の上面と移動式荷受部材の内側上面との間に、配置されているので、移動式荷受部材を、水平部材上において、よりスムーズに移動させることができる。これにより、粘弾性体をより確実に変形させることができるので、ラック装置からの物品の脱落等を確実に防止することができる。
【0014】
ラック装置では、固定部が支持部材をさらに有していてもよい。支持部材は、支柱と水平部材とを連結して、水平部材を支持する。移動式荷受部材は、移動量に対応する切欠部を、有している。切欠部には、支持部材が嵌合される。
この場合、移動式荷受部材が水平部材の上部に載置されると、移動式荷受部材の切欠部が、支持部材に嵌合される。この場合、支持部材が切欠部の内側に配置された状態で、移動式荷受部材は移動する。そして、移動式荷受部材の移動量が大きくなると、移動式荷受部材の切欠部の縁部が、支持部材に当接する。このように、移動式荷受部材に切欠部を設け、この切欠部の内側に支持部材を配置することによって、移動式荷受部材の移動方向への抜け出しを、規制することができる。
【0015】
ラック装置では、固定部と、移動式荷受部材と、粘弾性体とによって、移動式荷受棚部が構成されていてもよい。また、固定部と、固定式荷受部材とによって、固定式荷受棚部が構成されていてもよい。固定式荷受部材は、固定部に固定される。移動式荷受棚部は、ラック装置本体の上段側に設けられ、固定式荷受棚部はラック装置本体の下段側に設けられる。
この場合、移動式荷受棚部が、ラック装置の上段側にのみ設けられている。すなわち、地震時等に振幅が大きくなるラック装置の上段側にのみ、移動式荷受棚部が設けられている。このように、必要な部分にのみ、移動式荷受棚部を設けることによって、ラック装置の全段に移動式荷受棚部を設ける場合と比較して、低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る自動倉庫のラック装置は、ラック装置に物品落下防止機構を設置することによって、物品の落下を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)自動倉庫のラック装置の全体概要及び各構成の説明
図1は、自動倉庫を、スタッカークレーン100の経路方向に見た図である。
図2は、自動倉庫を、上方から見た図である。
図3は、ラック装置1の下端部の拡大図である。
なお、スタッカークレーン100の経路方向(走行方向)は、
図2の上下方向に対応している。また、スタッカークレーン100の経路から離れる方向(前後方向、奥行き方向)は、
図1の左右方向に対応している。なお、以下では、経路という文言が、スタッカークレーン100の経路という意味で用いられる。
【0019】
自動倉庫は、主に、スタッカークレーン100と、ラック装置1とを、備えている。スタッカークレーン100は、自動倉庫内を走行する。スタッカークレーン100は、物品を搬送し、ラック装置1の荷受棚部50に物品を載置する。スタッカークレーン100の両側には、ラック装置1が配置されている。
【0020】
ラック装置1は、物品を収納するためのものである。ラック装置1は、ラック装置本体2を、備えている。ラック装置本体2は、支柱21と、ブレース23と、移動式荷受棚部50とを、備えている。
【0021】
複数の支柱21は、床面FL上に配置されている。ここでは、スタッカークレーン100に近い側に配置された支柱21を、第1の支柱21aと呼ぶ。また、スタッカークレーン100から離れた側に配置された支柱21を、第2の支柱21bと呼ぶ。第1の支柱21aは、経路方向に並べて配置されている。また、第2の支柱21bは、経路方向に並べて配置されている。さらに、第1の支柱21a及び第2の支柱21bは、経路に直交する方向に一対一で対応するように並べて配置されている。
【0022】
ブレース23は、背面ブレース23aと、側面ブレース23bとを、備えている。背面ブレース23aは、隣接する第2の支柱21bの間に配置されるブレースである。側面ブレース23bは、第1の支柱21aと第2の支柱21bとの間に配置されるブレースである。
【0023】
移動式荷受棚部50は、物品落下防止機構5を有している。物品落下防止機構5は、ラック装置1からの物品の落下を防止するための機構である。物品落下防止機構5は、経路に直交する方向に物品が移動可能なように支持し、物品の移動時にエネルギーを吸収する。移動式荷受棚部50(物品落下防止機構)の詳細については、以下に説明する。
【0024】
(2)移動式荷受棚部(物品落下防止機構)の説明
図3は、移動式荷受棚部50の拡大図である。
図4は、本実施形態に係る移動式荷受棚部50(荷受部材70及び水平部材63を含む)の断面図である。
移動式荷受棚部50は、物品が載置される部分である。荷受棚部50は、第1の支柱21aと第2の支柱21bとの間に設けられる。ここでは、複数の荷受棚部50が、高さ方向に間隔を隔てて、第1の支柱21aと第2の支柱21bとに装着されている。
【0025】
荷受棚部50は、固定部60と、移動式荷受部材70と、粘弾性体80と、低摩擦部材90とを、有している。固定部60と、移動式荷受部材70と、粘弾性体80と、低摩擦部材90とによって、物品落下防止機構5が構成される。
【0026】
固定部60は、支柱21に固定されている。固定部60は、第1の固定部61と、第2の固定部62とを、有している。第1の固定部61は、第1の支柱21aに固定される。第2の固定部62は、第2の支柱21bに固定される。第1の固定部61及び第2の固定部62それぞれは、水平部材63と、支持部材64とを、有している。以下では、第1の固定部61に含まれる水平部材及び支持部材を、第1の水平部材63a及び第1の支持部材64aと呼ぶ。また、第2の固定部62に含まれる水平部材及び支持部材を、第2の水平部材63b及び第2の支持部材64bと呼ぶ。
【0027】
一対の水平部材63a,63b(第1の水平部材及び第2の水平部材)は、移動式荷受部材70を受ける部材である。第1の水平部材63a及び第2の水平部材63bのそれぞれは、一方向に長い部材である。第1の水平部材63a及び第2の水平部材63bのそれぞれは、矩形断面を有している。第1の水平部材63aは、経路に直交する方向に延びるように、第1の支持部材64aの先端部に、固定される。同様に、第2の水平部材63bは、経路に直交する方向に延びるように、第2の支持部材64bの先端部に、固定される。第1の水平部材63aと第2の水平部材63bとは、同軸上に設けられる。第1の水平部材63a及び第2の水平部材63bは、移動式荷受部材70の下部に配置される。
【0028】
一対の支持部材64a,64b(第1の支持部材及び第2の支持部材)は、荷受部材70を支持する部材である。第1の支持部材64a及び第2の支持部材64bのそれぞれは、一方向に長い部材である。第1の支持部材64aは、経路と平行となるように、第1の支柱21aに固定されている。第1の支持部材64aは、第1の支柱21aと第1の水平部材63aとを連結する。第1の支持部材64aの先端部には、第1の水平部材63aが固定されている。第1の支持部材64aと第1の水平部材63aとは、直交している。同様に、第2の支持部材64bは、経路と平行となるように、第2の支柱21bに固定されている。第2の支持部材64bは、第2の支柱21bと第2の水平部材63bとを連結する。第2の支持部材64bの先端部には、第2の水平部材63bが固定されている。第2の支持部材64bと第2の水平部材63bとは、直交している。
すなわち、第1の支持部材64a及び第2の支持部材64bのそれぞれは、互いに平行になるように配置され、第1の支柱21a及び第2の支柱21bに固定されている。第1の支持部材64a及び第2の支持部材64bは、第1の水平部材63a及び第2の水平部材63bを介して、移動式荷受部材70を支持している。
【0029】
移動式荷受部材70は、物品を受ける部材である。移動式荷受部材70は、一対の固定部61,62(第1の固定部及び第2の固定部)の上部において、経路から離れる方向及び経路に近づく方向の少なくともいずれか一方の方向に、移動可能なように、載置される。具体的には、荷受部材70は、一対の水平部材63a,63b(第1の水平部材及び第2の水平部材)の上部に、移動可能に配置される。言い換えると、荷受部材70は、一対の水平部材63a,63bの間に架け渡され、一対の水平部材63a,63bに対して移動可能である。荷受部材70は、一対の水平部材63a,63bを介して、一対の支持部材64a,64bによって支持される。
【0030】
移動式荷受部材70は、下方が開放したコ字状断面を、有している。具体的には、荷受部材70は、互いに対向する一対の壁部71(側部の一例)と、一対の壁部71を連結する連結部72(上部の一例)と、一方の壁部71の端部に一体に形成された抜止部73とを、有している。ここでは、連結部72の内面である下面が水平部材63a,63bの上面に対向し、一対の壁部71の内面が水平部材63a,63bの側面に対向し、抜止部73が水平部材63a,63bの下方に位置するように、荷受部材70は一対の水平部材63a,63bの上部に移動可能に載置される。
【0031】
また、荷受部材70には、切欠部75が設けられている。切欠部75は、一対の壁部71のいずれか一方に矩形状に形成されている。切欠部75は、支持部材64a,64bに嵌合される。切欠部75における切欠範囲(軸方向の切欠幅)は、荷受部材70の許容移動量に対応している。このため、支持部材64a,64bが荷受部材70の切欠部75の内部に位置している場合、荷受部材70は一対の水平部材63a,63b上で移動する。一方で、支持部材64a,64bが荷受部材70の切欠部75の内縁部に当接した場合、荷受部材70は停止する。このように、切欠部75はストッパとして機能する。
【0032】
粘弾性体80は、運動エネルギーを熱エネルギーに変換する。粘弾性体80は、固定部60と移動式荷受部材70との間に配置され、固定部60と移動式荷受部材70とを接続する。粘弾性体80は、水平部材63a,63bと移動式荷受部材70との間に配置される。具体的には、粘弾性体80は、矩形板状に形成されている。粘弾性体80は、水平部材63a,63bの一側面と、水平部材63a,63bの一側面に対向した荷受部材70の内側壁面とに、取り付けられる。この状態で、荷受部材70が水平部材63a,63b上で移動した場合、粘弾性体80は剪断変形し、エネルギーを吸収する。なお、粘弾性体80は、水平部材63a,63b上で移動した荷受部材70を、弾性力によって、ラック装置1の移動前の位置(初期位置)に引き戻す手段でもある。ラック装置1が初期位置に位置する場合、粘弾性体80は、粘弾性体80に歪みが生じていない状態にある。
【0033】
低摩擦部材90は、矩形板状に形成されている。低摩擦部材90は、水平部材63a,63bの上面に取り付けられる。この状態で荷受部材70が水平部材63a,63bの上部に載置されると、低摩擦部材90は、荷受部材70の内側上面に当接する。すなわち、この状態では、低摩擦部材90は、荷受部材70の内側上面と水平部材63a,63bの上面との間に、配置される。
【0034】
低摩擦部材90は、摺動抵抗が低い材質によって形成されている。低摩擦部材90は、例えば、超高分子量ポリエチレンから構成されている。上記のような低摩擦部材90を、移動式荷受部材70の内側上面に当接させることによって、移動式荷受部材70が水平部材63a,63bの上部において摺動しやすくしている。
【0035】
(3)実施形態の作用効果
(A)自動倉庫のラック装置1は、スタッカークレーン100の経路と平行に配置される装置である。自動倉庫のラック装置1は、支柱21と、固定部60と、移動式荷受部材70と、粘弾性体80とを、備えている。支柱21は、上下方向に延びる部材である。固定部60は、支柱21に固定される部分である。固定部60は、経路から離れる方向に延びる水平部材63を、有している。移動式荷受部材70は、下方が開放するように連結部72と一対の壁部71とから構成された断面を、有している。移動式荷受部材70の連結部72が水平部材63の上面に対向するように、移動式荷受部材70は水平部材63に載置される。粘弾性体80は、水平部材63の一側面と移動式荷受部材70の一方の壁部71の内側面との間に配置され、固定部60と移動式荷受部材70とを接続する。
【0036】
この場合、例えば、物品が移動式荷受部材70の上部に載置された状態で、ラック装置1に地震力が入力されると、移動式荷受部材70(又は水平部材63)が、水平部材63(又は移動式荷受部材70)に対して、相対移動する。すると、粘弾性体80が移動式荷受部材70と水平部材63との間で変形する。このように、物品落下防止機構5は機能する。すなわち、移動式荷受部材70が水平部材63に対して相対移動を繰り返すことによって、物品に入力される地震エネルギーが、粘弾性体80によって運動エネルギーから熱エネルギーに変換される。これにより、物品の落下を防止することができる。
【0037】
上記のような構成を有するラック装置1では、粘弾性体80が、水平部材63の一側面と移動式荷受部材70の一方の壁部71の内側面との間に配置されているので、物品の垂直荷重は水平部材63で直接的に支持し、物品の水平荷重は粘弾性体80に直接的に伝達することができる。すなわち、物品の荷重が重くなっても、粘弾性体80を効果的に動作させることができる。これにより、物品を支持しながら、物品の落下防止を確実に実現することができる。
また、本ラック装置1では、水平部材63が、下方が開放したコ字状断面を有する荷受部材70の内側に配置されるので、スタッカークレーン100の経路方向への移動式荷受部材70の移動を、規制することができる。また、移動式荷受部材70を、水平部材63上において、スムーズに移動させることができる。これにより、粘弾性体80を確実に変形させることができるので、ラック装置1からの物品の脱落等を確実に防止することができる。
【0038】
さらに、本ラック装置1では、荷受部材70と水平部材63との間に粘弾性体80を配置するだけで、様々に変化する地震力に対して、物品の落下を効果的に防止することができる。すなわち、物品落下防止機構5を容易且つ低コストでラック装置1に設置することができる。また、固定部60と荷受部材70とを有する荷受棚部50は、必ずしもラック装置1の全ての荷受棚部に設置する必要はない。すなわち、この荷受棚部50を、必要に応じて、ラック装置1に部分的に設置することによって、さらに低コスト化を図ることができる。
【0039】
なお、一般的には、ラック装置1では、経路から離れる方向の一側面は、物品を出し入れするために、開口が設けられている。また、経路から離れる方向の長さは、経路方向の長さと比較して、短くなっている(アスペクト比が小さくなっている)。このため、ラック装置1に載置された物品は、地震時等に、上記の一側面の開口から脱落してしまうおそれがある。しかしながら、本ラック装置1では、経路から離れる方向に、上記のような機構を設けることによって、ラック装置1からの物品の脱落等を確実に防止することができる。
【0040】
(B)自動倉庫のラック装置1では、支柱21が、第1の支柱21aと、第2の支柱21bとを、有していてもよい。また、固定部60は、第1の固定部61と、第2の固定部62とを、有していてもよい。第1の支柱21aは、スタッカークレーン100に近い側に配置される支柱21である。第2の支柱21bは、スタッカークレーン100から離れた側に配置される支柱21である。第1の支柱21aには第1の固定部61が固定され、第2の支柱21bには第2の固定部62が固定されている。移動式荷受部材70は、第1の固定部61と第2の固定部62とによって、支持される。
【0041】
この場合、移動式荷受部材70が、第1の固定部61と第2の固定部62とによって、支持されるので、移動式荷受部材70を安定的に固定部60に対して移動させることができる。これにより、粘弾性体80を確実に変形させることができるので、ラック装置1からの物品の脱落等を確実に防止することができる。また、固定部60を、経路から離れる方向に分割した構造にすることによって、さらに低コスト化を図ることができる。
【0042】
(C)自動倉庫のラック装置1では、低摩擦部材90をさらに備えている。低摩擦部材90は、水平部材63の上面に取り付けられる。低摩擦部材90は、移動式荷受部材70の連結部72の内側面に当接する。低摩擦部材90は、物品落下防止機構5に含まれる。
【0043】
この場合、低摩擦部材90が、水平部材63の上面と移動式荷受部材70の内側上面との間に、配置されているので、移動式荷受部材70を、水平部材63上において、よりスムーズに移動させることができる。これにより、粘弾性体80をより確実に変形させることができるので、ラック装置1からの物品の脱落等を確実に防止することができる。
【0044】
(D)自動倉庫のラック装置1では、固定部60が支持部材64をさらに有していてもよい。支持部材64は、支柱21と水平部材63とを連結して、水平部材63を支持する。移動式荷受部材70は、移動量に対応する切欠部75を、有している。切欠部75には、支持部材64が嵌合される。
この場合、移動式荷受部材70が水平部材63の上部に載置されると、移動式荷受部材70の切欠部75が、支持部材64に嵌合される。この場合、支持部材64が切欠部75の内側に配置された状態で、移動式荷受部材70は移動する。そして、移動式荷受部材70の移動量が大きくなると、移動式荷受部材70の切欠部75の縁部が、支持部材64に当接する。このように、移動式荷受部材70に切欠部75を設け、この切欠部75の内側に支持部材64を配置することによって、移動式荷受部材70の移動方向への抜け出しを、規制することができる。
【0045】
(4)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0046】
(a)前記実施形態では、全ての荷受棚部50が、移動式荷受棚部50である場合の例を示したが、ラック装置本体2の下段側には固定式荷受棚部(図示しない)を設け、ラック装置本体2の上段側にのみ移動式荷受棚部50を設けるようにしてもよい。
【0047】
この場合、固定式荷受棚部は、一対の支持部材(固定部)と、一対の支持部材に架け渡された固定式荷受部材とから、構成される。固定式荷受棚部では、固定式荷受部材は、一対の支持部材に対して移動不能である。
このように、地震時等に振幅が大きくなるラック装置1の上段側にのみ、移動式荷受棚部50を設けることによって、ラック装置1の全段に移動式荷受棚部50を設ける場合と比較して、低コスト化を図ることができる。また、この場合も、上記と同様の効果を得ることができる。
【0048】
(b)前記実施形態では、水平部材63(第1の水平部材63a、第2の水平部材63b)が、対応する支持部材64(第1の支持部材64a、第2の支持部材64b)に、個別に設けられる場合の例を示したが、水平部材63は、第1の支持部材64aの先端部と第2の支持部材642の先端部とに架け渡すように固定してもよい。この場合は、水平部材63は一部材によって構成される。また、この場合も、上記と同様の効果を得ることができる。
【0049】
(c)前記実施形態では、荷受棚部50が片持ち構造である場合の例を示したが、荷受棚部50は両持ち構造であってもよい。例えば、
図5に示すように、第1の支持部材164aを、隣接する第1の支柱121aの間に架け渡し、第2の支持部材164bを、隣接する第2の支柱121bの間に架け渡す。また、第1の支持部材164aと第2の支持部材164bとの間に、互いに平行な一対の荷受部材170を架け渡す。
ここで、一対の支持部材164a,164b(第1の支持部材及び第2の支持部材)それぞれ、及び一対の荷受部材170それぞれは、物品落下防止機構5を有している。例えば、一対の支持部材164a,164b(第1の支持部材及び第2の支持部材)それぞれは、
図4に示した構造を、有している。また、一対の荷受部材170それぞれは、
図6に示すように、支持部材164a,164bの上面に固定されている。一対の荷受部材170それぞれの構成は、
図6に示すように、抜止部73を除いて、
図4に示した構造と同じである。このため、
図4と同じ部材については、同じ符号を付している。
【0050】
さらに、
図5に示すように、第1の支持部材164a及び第2の支持部材164bには、支柱121a,121bの近傍に、ストッパ180が設けられている。また、一対の荷受部材170には、両端部にストッパ181が設けられている。ストッパ180,181によって、各部材の物品落下防止機構5の移動が規制される。
このように、物品落下防止機構5を構成することによって、経路方向、及び経路に直交する方向への物品の落下を、防止することができる。また、この場合も、上記と同様の効果を得ることができる。