(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5672448
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】フィルタ
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
A61M16/00 380
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-544273(P2010-544273)
(86)(22)【出願日】2009年1月26日
(65)【公表番号】特表2011-509796(P2011-509796A)
(43)【公表日】2011年3月31日
(86)【国際出願番号】SE2009050076
(87)【国際公開番号】WO2009093977
(87)【国際公開日】20090730
【審査請求日】2011年12月6日
(31)【優先権主張番号】08150680.0
(32)【優先日】2008年1月25日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】08155349.7
(32)【優先日】2008年4月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510190990
【氏名又は名称】フロディンズ フィルター アクティエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ストジェルンフェルト,クラエス
(72)【発明者】
【氏名】グルンデン,インゲル
(72)【発明者】
【氏名】ウィーゼルブラッド,アンデルス
【審査官】
安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06123076(US,A)
【文献】
米国特許第06105576(US,A)
【文献】
特開昭63−122465(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00265163(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工呼吸器の呼気管に使用されるフィルタであって、
流入路および流出路が配置された筐体と、
主フィルタ要素と、
前置フィルタ要素と、
前記筐体内に、2つの区画を形成する分割要素と、を備え、
前記前置フィルタ要素は、流れ方向から見て前記主フィルタ要素の前に配置され、前記主フィルタ要素を通る空気流内の薬剤液滴を収集可能な透気性材料であって、かつ、粗いメッシュ状の構造の部材で構成され、
前記分割要素で形成された2つの区画のうち、一方の区画は前記流入路と連通し、他方の区画は前記流出路と連通し、前記分割要素には開口が配置され、前記開口内に前記開口の形状に対応する形状を有する前記前置フィルタ要素が配置され、前記開口の周りの前記分割要素の前記流出路側に前記開口を完全に覆って前記主フィルタ要素が取り付けられ、前記区画は、前記主フィルタ要素に接触せずに前記主フィルタ要素の両側で凝縮物を収集することができるように構成されることを特徴とする、フィルタ。
【請求項2】
前記分割要素は壁の形態であり、前記主フィルタ要素は、前記開口の縁に取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記前置フィルタ要素の材料は、可撓性発泡ポリエステル、ポリスチレン、またはポリウレタンであることを特徴とする、請求項1に記載のフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタに関し、特に、患者と人工呼吸器との間に配置され、呼気を清浄化可能なフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
病院および同様の処置施設での人工呼吸器の使用は、患者の呼吸を助けるため、または患者の通常の呼吸に取って代わるために非常に一般的である。したがって、患者の肺は、管を介して、肺への空気の強制的な流入および流出を行う人工呼吸器に接続される。一般に、人工呼吸器から2本の管があり、一方は呼気用であり、他方は吸気用である。これらは通常、患者近くのY字形接続で一緒になる。
【0003】
患者に快適さを提供するために、吸気を事前に暖める必要があり、単一加熱システムと呼ばれる。人工呼吸システムによっては、呼気管も加熱するものがあり、二重加熱システムと呼ばれる。
【0004】
さらに、人工呼吸器と併せて、薬剤を患者に投与するために、ネブライザを使用することがますます一般的になっている。ネブライザは、薬剤をエアロゾル化すること、すなわち、患者により吸入される非常に小さな液滴を作成することが可能であり、それにより、薬剤が肺に到達し、肺で、患者の人体中にさらに分配される。
【0005】
人工呼吸器が、患者が呼息するウィルスおよび/または細菌により汚染されることを回避するために、フィルタが呼気管内に配置される。多くの場合、フィルタは人工呼吸器近傍に配置され、機械側フィルタと呼ばれる。
【0006】
呼気はかなり多量の蒸気を含む。単一加熱システムでは、この蒸気は呼気管内で凝縮し、それにより、ウォータートラップが管内に配置されることが多い。しかし、いくらかの蒸気はフィルタに到達し、フィルタの患者側で凝縮される。この凝縮はフィルタ材料を湿らせ、フィルタの適宜機能性を低下させる。これにより、フィルタの抵抗が増大し、ひいては圧力が低下し、圧力の低下は患者にとってマイナスである。
【0007】
この状況に対処するために、本特許出願の出願人は、フィルタ要素下に凝縮物が集められる区画を有するフィルタであって、それにより、凝縮物がフィルタ要素に接触しない状態が保たれ、それにより、フィルタの寿命が長くなる、フィルタを開発した。
【0008】
汚染され、流れ抵抗を増大させる恐れがある呼気管内の凝縮物量を低減するために、二重加熱システムが開発された。しかし、これは単に凝縮物に伴う問題に対処するだけである。フィルタ要素は、非常に細かい液滴を含むガス状蒸気を通すことが可能であるが、蒸気がフィルタ要素を通過した場合、フィルタのこの側での呼気管は加熱されないため、蒸気は凝縮する。したがって、凝縮物はこの側からフィルタに入り、フィルタ要素を湿らせ、その結果として機能が低下する。
【0009】
さらなる問題は、患者に薬剤を投与するために、ネブライザを頻繁に使用することである。非常に小さな液滴は、患者の肺内に吸入されるはずであるが、特定量の液滴は適宜吸入されず、呼気管内の呼気を辿る。そして、最終的に、大量のこれら液滴がフィルタ要素内に留まり、詰まりによりフィルタの機能に非常に大きく影響する。
【0010】
近年、フィルタの流入口に面した壁または固定表面を有し、その表面が吸収材料で覆われる、特別な設計のフィルタが市場に出された。したがって、入ってくる空気は強制的に表面を逸れるが、より重い薬剤液滴は吸収材料に捕捉される。しかし、このフィルタの設計は、凝縮物がフィルタ要素に接触しないようにすることに関して最適ではない。
【0011】
上述したように、人工呼吸器用のフィルタに関する特定の具体的な問題に対処するために、少数の解決策が提案されてきたが、一フィルタ概念に伴うすべての種類の問題に対処することに関して改良の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、現行技術の上記欠点に対処することである。この目的は、独立特許請求項1の特徴を有するフィルタにより達成される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の主旨である。
【0014】
本発明の主要態様によれば、人工呼吸器の呼気管内に使用されるフィルタであって、流入路および流出路が配置される筐体と、主フィルタ要素と、流れ方向から見て主フィルタ要素の前に配置され、上記主フィルタ要素を通る空気中の薬剤液滴を収集可能な透気性材料を備える前置フィルタ部材とを備える、フィルタを特徴とする。
【0015】
本発明の別の態様によれば、フィルタは、上記筐体内に配置され、2つの区画を形成する分割要素を備え、一方の区画は流入路に連通し、他方の区画は流出路に連通し、上記分割要素には開口が配置され、開口内に主フィルタ要素が配置され、区画は、上記主フィルタに接触せずに上記主フィルタの両側で凝縮物を収集可能である。
【0016】
本発明のさらなる態様によれば、上記分割要素は壁の形態であり、上記主フィルタ要素は、上記開口の縁の周囲に取り付けられる。
【0017】
本発明によるフィルタに伴ういくつかの利点があり、1つの主な利点は、本発明を使用しない場合にはフィルタ要素を詰まらせがちな薬剤液滴にも対処可能なことである。したがって、前置フィルタ部材は、装置を通る空気流の主フィルタ要素の前に配置される。前置フィルタ部材は、空気を通すが、薬剤液滴を留める。前置フィルタ部材は、多量の薬剤を含んだ場合であっても、実質的ないかなる圧力低下も生じさせない構造のものである。これは、ポリエステル、ポリスチレン、およびポリウレタン可撓性発泡体であり得る材料のむしろ粗いメッシュのような構造による。
【0018】
さらに、主細菌/ウィルスフィルタ要素の各側に1つずつ、2つの区画を有する設計により、フィルタ要素が凝縮物により湿る恐れなしに、フィルタの両側で凝縮物を管理することができる。したがって、本発明によるフィルタは、単一加熱システムならびに二重加熱システムの両方に使用することが可能である。
【0019】
二重区画設計は、好ましくは、フィルタ筐体内に配置され、主フィルタ要素がとりつけられる開口を有するデバイダにより得られる。したがって、フィルタ要素の両側のガス状蒸気の凝縮物は、筐体と一緒に区画を形成するデバイダにより対処される。
【0020】
全体的に、本発明によるフィルタは、人工呼吸器に関連するフィルタリングに関するすべての種類のケースに対処する。したがって、特定の種類の人工呼吸機器用、かつ/または噴霧化された薬剤が人工呼吸器の呼気管および吸気管を介して投与される場合用に特に設計されたフィルタが必要ない。
【0021】
本発明に伴うこれらおよび他の態様および利点が、以下の詳細な説明および添付図面から明らかになる。
【0022】
本発明の以下の詳細な説明において、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】
図1に示す本発明の別の実施形態の断面図である。
【
図3】本発明によるフィルタのさらなる実施形態の斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図に示すフィルタは、好ましくは、半分に分けられてプラスチックで作られる筐体110を備える。筐体には、図示の実施形態では互いに対向して位置決めされる空気流入管接続112および空気流出管接続114が配置される。
【0025】
フィルタは、デバイダ116をさらに備える。デバイダは、好ましくは、筐体の2つの半分部分の間に取り付けられ、それにより、筐体の内部を2つの部分に分割する壁のような形状を有する。デバイダにはさらに、中央開口118が配置される。この開口内に、概して開口の形状に対応する形状を有する前置フィルタ部材120が配置される。
【0026】
前置フィルタ部材は、好適な透気材料で作られる。この前置フィルタ部材は、空気を通しながら、薬剤液滴のようなより大きないかなる液滴も捕捉する構造を有する。前置フィルタ部材は、多くの場合、大量の粒子を捕捉した場合であってもフィルタを通しての圧力低下が小さい、むしろ粗いメッシュ状の織物および/または不織布構造のものである。好ましくは、前置フィルタ部材は、大量の物質を捕捉し保持可能な特定の深さを有する。薬剤液滴の捕捉において良好な性質を示したそのような材料の少数の例は、ポリエステル、ポリスチレン、およびポリウレタン可撓性発泡体である。しかし、同じまたは同様の性質を示す使用可能ないくつかの他の材料がある。例えば、上記構造に形成されるステンレス鋼、アルミニウム、および異なる合金等のさまざまな金属。
【0027】
さらに、主ウィルス/細菌フィルタ要素122が、通路を完全に覆って、流出側の開口の周りのデバイダ、したがって前置フィルタ部材の後に取り付けられる。筐体は、主フィルタ要素に関連して、流出管接続のエリアにおいて筐体の壁と主フィルタ要素との間に空間があるように設計される。筐体は、2つの区画124、126に一緒にデバイダ/ホルダの壁が形成されるようにさらに設計される。
【0028】
本発明によるフィルタは、人工呼吸器の呼気管に接続される。上述したように、前置フィルタ部材120は、空気流により運ばれるいかなる薬剤液滴にも対処し、空気流は前置フィルタ部材を透過することができる。しかし、より大きく、より重い薬剤液滴は、フィルタ部材により捕捉される。前置フィルタ部材であっても、時間の経過に伴い、かなり大量の薬剤を含むことになるが、それでも前置フィルタの構造により空気はフィルタを透過することが可能である。
【0029】
次に、空気は主フィルタ要素122を透過し、主フィルタ要素122は、HEPAフィルタまたはULPAフィルタのように細菌およびウィルスを捕捉することが可能である。主フィルタ要素は、単なる数例を挙げれば、ガラス繊維またはPTFE等のこれらを収集可能な任意の材料で作ることができる。フィルタが単一加熱システムで使用される場合、凝縮物はフィルタの患者側の区画126内に捕捉され、したがって、主フィルタ要素に負の意味で決して影響し得ない。
フィルタが二重加熱システムで使用される場合、蒸気はフィルタの機械側で凝縮し、この状況では、凝縮物はフィルタの機械側の区画124内に捕捉される。フィルタは、好ましくは、機械側の区画が患者側の区画よりも大きいように設計され、これは、患者側の超過凝縮物が管内に流れ込むことによる。これは、フィルタの位置により機械側では不可能であり、フィルタの適切な動作寿命を有するために、機械側の区画はより大きく作られる。
【0030】
したがって、理解できるように、本発明によるフィルタは、人工呼吸器の使用と併せて、異なる種類の状況に対処することが可能である。
【0031】
図2は、本発明の別の実施形態を示す。フィルタ筐体130は、ここでは、より管状またはベル形を有する。筐体の各端には、流入接続132および流出接続134のそれぞれが配置される。筐体内部には、フィルタ136が配置される。フィルタは概して管の形状であり、「管」の壁は、前の実施形態の主フィルタ要素と同じ性質を示すようなひだに折られたフィルタ材料からなる。見て分かるように、フィルタの一端には壁138が配置される。さらに、フィルタの中央には、前置フィルタ部材140が設けられる。この前置フィルタ部材は、上述した実施形態と同じ材料のものであり、したがって、より大きな薬剤液滴を捕捉可能な粗いメッシュ状の構造のものである。したがって、入ってくる空気は、主フィルタ要素に入る前に、前置フィルタ部材を透過する必要があり、それにより、前置フィルタ部材は、薬剤液滴が主フィルタ要素に入るのを防ぐ。
【0032】
図3および
図4は、本発明のさらなる実施形態を示す。示されるフィルタは、好ましくは、半分に分けられてプラスチックで作られる筐体10を備える。筐体には、図示の実施形態では互いに対向して位置決めされる空気流入管接続12および空気流出管接続14が配置される。
【0033】
流入路の周囲に、固定部18がそれぞれ配置されたいくつかのスペーサ16、示される実施形態では、4つの皿のような部材が取り付けられる。これらスペーサ上に、円形を有するフィルタ部材20が配置される。スペーサ16の固定部18は、フィルタ部材20が適切な位置に保持されることを保証する。フィルタ部材は、吸収性であるが、それでも透気性を有する適した材料で作られる。このフィルタ部材は、空気を通しながら、薬剤液滴のようなより大きないかなる液滴も捕捉する構造を有する。当然ながら、特にフィルタ部材が、スペーサによるフィルタ部材の周囲に作られる通路により薬剤で飽和した場合、いくらかの空気はフィルタ部材を逸れる。
【0034】
フィルタは、デバイダ/ホルダ22をさらに備える。デバイダ/ホルダは、好ましくは、筐体の2の半分部分の間に取り付けられ、それにより、ホースの内部を2つの部分に分ける壁のような形状を有する。デバイダ/ホルダには、空気流の方向から見てフィルタ部材の背後に配置される中央開口24がさらに配置される。開口には、フィルタ部材の裏側に向かって突出し、フィルタ部材の裏側に接触し、それにより、フィルタ部材を適切な位置に保持する十字からなる保持構造26が配置される。
【0035】
主ウィルス/細菌フィルタ要素28は、通路を完全に覆って、デバイダの開口の上流側に取り付けられる。筐体は、主フィルタ要素に関連して、流出管接続のエリアにおいて筐体の壁と主フィルタ要素との間に空間があるように設計される。筐体は、2つの区画30、32に一緒にデバイダ/ホルダの壁が形成されるようにさらに設計される。
【0036】
本発明によるフィルタは、人工呼吸器の呼気管に接続される。上述したように、フィルタ部材20は、空気流により運ばれるいかなる薬剤液滴にも対処し、空気流はフィルタ部材を透過し、かつ/またはその周囲に逸れることができる。しかし、より大きくより重い薬剤液滴はフィルタ部材を逸れず、フィルタ部材により捕捉される。フィルタ部材は、時間の経過に伴い、かなり多量の薬剤を含むことになるが、スペースにより生み出される透過により、それでも空気はフィルタを透過することが可能である。
【0037】
次に、空気は主フィルタ要素28を通り、主フィルタ要素28は、HEPAフィルタまたはULPAフィルタのように細菌およびウィルスを捕捉することが可能である。主フィルタ要素は、単なる数例を挙げれば、ガラス繊維またはPTFE等のこれらを収集可能な任意の材料で作ることができる。
【0038】
フィルタが単一加熱システムで使用される場合、凝縮物はフィルタの患者側の区画32内に捕捉され、したがって、主フィルタ要素に負の意味で決して影響し得ない。
【0039】
フィルタが二重加熱システムで使用される場合、湿気はフィルタの機械側で凝縮し、この状況では、凝縮物はフィルタの機械側の区画30内に捕捉される。
【0040】
したがって、理解できるように、本発明によるフィルタは、人工呼吸器の使用と併せて、異なる種類の状況に対処することが可能である。
【0041】
上述され図面に示された実施形態が本発明の非限定的な例としてみなされるべきであること、および特許請求の範囲内で多くの方法で変更可能なことを理解されたい。