特許第5672461号(P5672461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5672461
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】車両用電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
   H01M2/10 S
   H01M2/10 E
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-28316(P2013-28316)
(22)【出願日】2013年2月15日
(65)【公開番号】特開2014-157746(P2014-157746A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2014年5月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100128532
【弁理士】
【氏名又は名称】村中 克年
(72)【発明者】
【氏名】永野 照佳
(72)【発明者】
【氏名】堀居 直幸
(72)【発明者】
【氏名】森田 博之
(72)【発明者】
【氏名】竹村 文平
(72)【発明者】
【氏名】加納 宏明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克宏
【審査官】 宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−164431(JP,A)
【文献】 特開2012−054054(JP,A)
【文献】 特開2012−169213(JP,A)
【文献】 特開2012−123917(JP,A)
【文献】 特開2014−107241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルで構成される電池モジュールと、
上面に前記電池モジュールが載置されるトレイと、前記電池モジュールを覆うカバーとを有するバッテリーケースと、
前記電池モジュールの壁面に沿った第1の面、及び、前記トレイの面に沿った第2の面からなり、前記第1の面が前記電池モジュールに固定されると共に、前記第2の面が前記トレイに固定されるブラケットと、
前記ブラケットの前記第1の面、及び、前記第2の面の境界部位を含む領域と前記電池モジュールとの間に配され、前記電池モジュールの壁面に沿った面部を有する当て板材とを備え
前記当て板材は、
前記ブラケットの前記第1の面に固定されるブラケット当て板材、及び、前記電池モジュールの前記壁面に固定されているモジュール当て板材からなり、
前記電池モジュールの前記壁面には凹部が形成され、
前記モジュール当て板材は、
前記電池モジュールの前記壁面の前記凹部に固定され、前記壁面の前記ブラケットとの対向面を面一状態に形成する
ことを特徴とする車両用電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用電池パックにおいて、
前記ブラケットは、
前記第1の面が前記第2の面に連続して形成されると共に、前記第1の面と前記第2の面とで前記境界部位となる屈曲部が形成され、
前記当て板材は、
前記ブラケットの前記屈曲部を含む領域と前記電池モジュールとの間に配される
ことを特徴とする車両用電池パック。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用電池パックにおいて、
前記当て板材の前記面部は、
前記ブラケットの前記屈曲部よりも下側に配されている
ことを特徴とする車両用電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールがケースに収容された車両用の電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
環境へ排出される排ガスを削減するため、電気自動車が種々開発されている。電気自動車は、モータの駆動により動力を得ているため、電源となる電池セルを搭載している。電気自動車では、限られたスペースに多くの電池セルを搭載する必要があるため、複数の電池セルを積層して電池モジュールを形成し、多数の電池モジュールをフロア下等のバッテリケースに収納している。
【0003】
電池モジュールをバッテリーケースに収納する場合、バッテリーケースに対しフランジ(ブラケット)を介して電池モジュールを固定することが従来から提案されている。バッテリーケースとしてのバッテリーカバーと電池モジュールにフランジを設け、フランジ同士を固定することでバッテリーカバーと電池モジュールを固定する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1の技術を適用することにより、バッテリーケースとして、トレイ状のケースが用いられた場合でも、トレイ状のケースに電池モジュールを固定することができる。即ち、ケースと電池モジュールとの間にブラケットを介在させ、ブラケットをケースと電池モジュールのそれぞれに固定することにより、ケースに電池モジュールを固定することができる。
【0005】
ブラケットを介してバッテリーケースと電池モジュールを固定することにより、バッテリーケースに電池モジュールを嵌めこんで固定するための枠部等を形成する必要がなく、バッテリーケースの形状の制約が少なくなる。このため、バッテリーケースの配置の自由度が向上し、種々の車両に対して搭載が容易になる。
【0006】
ブラケットを介してバッテリーケースに電池モジュールを固定した場合、車両の状況によっては、バッテリーケースに対して電池モジュールが相対的に移動することが考えられる。電池モジュールが相対的に移動することにより、ブラケットが電池モジュール等に干渉する虞があるため、ブラケットによる影響を最小限に抑えることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3896607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、ブラケットを介して電池モジュールがバッテリーケースに固定された構造で、電池モジュールが相対的に移動した場合であっても、ブラケットによる電池モジュールへの干渉の影響を最小限に抑制することができる車両用電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の車両用電池パックは、複数の電池セルで構成される電池モジュールと、上面に前記電池モジュールが載置されるトレイと、前記電池モジュールを覆うカバーとを有するバッテリーケースと、前記電池モジュールの壁面に沿った第1の面、及び、前記トレイの面に沿った第2の面からなり、前記第1の面が前記電池モジュールに固定されると共に、前記第2の面が前記トレイに固定されるブラケットと、前記ブラケットの前記第1の面、及び、前記第2の面の境界部位を含む領域と前記電池モジュールとの間に配され、前記電池モジュールの壁面に沿った面部を有する当て板材とを備え、前記当て板材は、前記ブラケットの前記第1の面に固定されるブラケット当て板材、及び、前記電池モジュールの前記壁面に固定されているモジュール当て板材からなり、前記電池モジュールの前記壁面には凹部が形成され、前記モジュール当て板材は、前記電池モジュールの前記壁面の前記凹部に固定され、前記壁面の前記ブラケットとの対向面を面一状態に形成することを特徴とする。
【0010】
請求項1に係る本発明では、電池モジュールの壁面に沿った面部を有する当て板材を備えたことにより、電池モジュールが相対的に移動して、ブラケットの第1の面と第2の面との境界部位が電池モジュールの壁面に当接しても、当て板材により電池モジュールの壁面への接触面積が確保される。
また、当て板材がブラケットの第1の面に固定されているので、ブラケットの変形方向に拘わらず電池モジュールの壁面に対するブラケットの接触面積を確実に確保することができる。
また、当て板材が電池モジュールの壁面に固定されているので、電池モジュールの所望の位置に対するブラケットの干渉の影響を抑制することができる。
また、当て板材をモジュール当て板材、及び、ケース当て板材で構成したので、当て板材としてのトータルの板厚を十分に確保することができる。このため、モジュール当て板材、及び、ケース当て板材の取り付き性を悪化させることなく当て板材の厚板化を図ることができる。
また、モジュール当て板を壁面の凹部に固定するので、ブラケットとの対向面の壁面を面一状態にするので、壁面に凹部が形成されていても(段部が存在していても)、当て板材により接触面積を確保した状態が維持される。
【0011】
このため、ブラケットを介して電池モジュールがバッテリーケースに固定された構造で、電池モジュールが相対的に移動した場合であっても、ブラケットによる電池モジュールへの干渉の影響を最小限に抑制することができる。
【0012】
そして、請求項2に係る本発明の車両用電池パックは、請求項1に記載の車両用電池パックにおいて、前記ブラケットは、前記第1の面が前記第2の面に連続して形成されると共に、前記第1の面と前記第2の面とで前記境界部位となる屈曲部が形成され、前記当て板材は、前記ブラケットの前記屈曲部を含む領域と前記電池モジュールとの間に配されることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る本発明では、ブラケットの屈曲部が電池モジュールの壁面に当接しても、当て板材により電池モジュールの壁面への接触面積が確保される。
【0014】
また、請求項3に係る本発明の車両用電池パックは、請求項2に記載の車両用電池パックにおいて、前記当て板材の前記面部は、前記ブラケットの前記屈曲部よりも下側に配されていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る本発明では、ブラケットの屈曲部よりも下側に当て板材が配されているので、トレイ状のケースに載置された電池モジュールの壁面に対するブラケットの接触を確実に面で接触させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の車両用電池パックは、ブラケットを介して電池モジュールがバッテリーケースに固定された構造で、電池モジュールが相対的に移動した場合であっても、ブラケットによる電池モジュールへの干渉の影響を最小限に抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の参考例に係る車両用電池パックを備えた電気自動車の外観図である。
図2】本発明の参考例に係る車両用電池パックの分解斜視図である。
図3】ブラケットが取り付けられた部位の要部外観図である。
図4図3の断面図である。
図5】ブラケットが変形した場合の断面図である。
図6】他の参考例の断面図である。
図7本発明の一実施例に係る車両用電池パックの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1から図5に基づいて本発明の参考例に係る車両用電池パックを説明する。
【0027】
図1には本発明の参考例に係る車両用電池パックを備えた電気自動車の外観を表す分解斜視、図2には車両用電池パックの分解斜視、図3にはブラケットが取り付けられた部位を説明する要部外観、図4にはブラケットが取り付けられた部位の断面を示してある。また、図5には電池モジュールが移動してブラケットが変形した場合の断面を示してある。
【0028】
図1に示すように、電気自動車1のフレーム(図示省略)には車両用電池パック(電池パック)2が取り付けられている。電池パック2は、バッテリーケースとしてのトレイ3及びカバー10で構成され、トレイ3に複数の電池モジュールが固定され、電池モジュールがカバー10に覆われている。
【0029】
図2に示すように、トレイ3には複数の電池モジュール4がブラケット5を介して固定されている。電池モジュール4は複数の電池セル4aから構成されている。複数の電池セル4aが接続されることにより、走行駆動用等の動力源となる高電圧回路が形成される。
【0030】
図2から図4に示すように、トレイ3の車両の前側と複数の電池モジュール4との間には板金で作製されたブラケット5が設けられ、ブラケット5がトレイ3、及び、電池モジュール4に固定されることで、トレイ3に電池モジュール4が固定される。ブラケット5は、L字型のブラケット5であり、ブラケット5の屈曲部6を含む部位には板金で作製された当て板材7が溶接固定されている。
【0031】
L字型のブラケット5は、電池モジュール4の壁面に沿った、例えば、上下方向の面であるモジュール面(第1の面)11と、モジュール面11の下側に連続して形成される、例えば、水平方向の面であるトレイ面(第2の面)12とから構成されている。モジュール面11とトレイ面12の境界部位が屈曲部6とされてL字型のブラケット5が形成されている。
【0032】
L字型のブラケット5のモジュール面11が電池モジュール4の壁面に形成されたボス部8にねじ部材を介して固定され、ブラケット5のトレイ面12がトレイ3の底面に形成されたボス部9にねじ部材を介して固定されている。これにより、トレイ3に電池モジュール4がブラケット5を介して固定された状態になっている。
【0033】
当て板材7は、L字型のブラケット5の屈曲部6を含む領域と電池モジュール4との間に配され、ブラケット5のモジュール面11に溶接により固定されている。そして、当て板材7は、L字型のブラケット5の屈曲部6から下側に(下側に延びて)配されている。当て板材7は、ブラケット5の金属よりも硬い金属の板金で作製されている。尚、屈曲部6は角部であってもよいし、湾曲部であってもよい。
【0034】
電池モジュール4は重量物であると共に、振動や衝撃等を考慮して、トレイ3を含めて剛性が高い部材で構成されている。このため、衝突時等、大きな衝撃が加わった場合、電池モジュール4がトレイ3に対し相対的に前方に移動する可能性も否めない。
【0035】
図5に基づいて電池モジュール4が相対的に前方側に移動した場合の状況を説明する。
【0036】
図に示すように、重量物で剛性が高い電池モジュール4が相対的に前方側(図中左側)に移動すると、L字型のブラケット5が変形して屈曲部6が電池モジュール4の壁面に干渉する状態になる。ブラケット5のモジュール面11には、電池モジュール4の壁面に沿った面部を有する当て板材7が固定されているため、屈曲部6が壁面に直接当接せずに当て板材7が電池モジュール4の壁面に干渉する。
【0037】
これにより、当て板材7により電池モジュール4の壁面への接触面積が確保される。従って、屈曲部6を有するブラケット5を介して電池モジュール4がバッテリーケースであるトレイ3に固定された構造で、電池モジュール4が相対的に前方に移動した場合であっても、ブラケット5の屈曲部6による電池モジュール4の壁面への干渉の影響を最小限に抑制することができる。
【0038】
そして、L字型のブラケット5の屈曲部6から下側に当て板材7が配されてブラケット5に固定されているので、トレイ3に載置された電池モジュール4の壁面に対するL字型のブラケット5の屈曲部6の接触面積を確実に確保することができる。
【0039】
更に、ブラケット5のモジュール面11に当て板材7が固定されているので、ブラケット5の変形方向に拘わらず電池モジュール4の壁面に対するL字型のブラケット5の屈曲部6の接触面積を確実に確保することができる。
【0040】
上述した電池パック2は、ブラケット5の屈曲部6による電池モジュール4の壁面への干渉の影響を最小限に抑制することができるので、電池モジュール4が相対的に移動しても、電池モジュール4の壁面や電池セル4aが損傷する虞を飛躍的に少なくすることができる。
【0041】
また、当て板材7は、ブラケット5の金属よりも硬い金属の板金で作製されているので、ブラケット5の電池モジュール4の壁面に対する干渉の抑制をより効果的に図れる。
【0042】
図6図7に基づいて他の参考例、及び、本発明の一実施例を説明する。
【0043】
6には、他の参考例に係る電池パックにおいて、ブラケットが取り付けられた部位の断面を示してある。図7には、本発明の一実施例に係る電池パックにおいて、ブラケットが取り付けられた部位の断面を示してある。図4に示した部材と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0044】
図6に示した参考例は、ブラケット5の屈曲部6に対応する電池モジュール4の壁面に、当て板材15(モジュール当て板材)を溶接により固定した構造となっている。当て板材15が電池モジュール4の壁面に固定されているので、電池モジュール4の所望の位置に対するブラケット5の干渉の影響を抑制することができる。
【0045】
尚、ブラケット5のモジュール面11に当て板材7(ブラケット当て板材)を固定し、電池モジュール4の壁面に当て板材15を固定することも可能である。
【0046】
この場合、当て板材として必要な板厚を当て板材7と当て板材15で分担することができ、当て板材7、15の板厚を薄くして溶接による取り付き性能を向上させることができる。一方で、当て板材としてのトータルの板厚を厚くすることができ、面接触の状態を維持することができる。
【0047】
図7に示した本発明の一実施例は、電池モジュール4の壁面に凹部としての段差部21が形成された電池パックの例である。
【0048】
図に示すように、電池モジュール4の壁面に段差部21が形成され、段差部21の凹部側にはモジュール当て板材22が溶接により固定されている。また、ブラケット5のモジュール面11には当て板材7が固定されている。段差部21の凹部側にモジュール当て板材22が固定されていることにより、ブラケット5の屈曲部6に対向する電池モジュール4の壁面(及びその周辺)が面一状態に形成されている。
【0049】
このため、電池モジュール4の壁面に凹部が形成されていても(段差部21が存在していても)、ブラケット5の屈曲部6(当て板材7)が面一状態の壁面に当接し、当て板材7による接触面積を確保した状態が維持される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、電池モジュールがケースに収容された車両用の電池パックの産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 電気自動車
2 車両用電池パック(電池パック)
3 トレイ
4 電池モジュール
5 ブラケット
6 屈曲部
7、15 当て板材
8、9 ボス部
10 カバー
11 モジュール面(第1の面)
12 トレイ面(第2の面)
21 段差部
22 モジュール当て板材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7