特許第5672470号(P5672470)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5672470
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】連結方法
(51)【国際特許分類】
   B60B 35/18 20060101AFI20150129BHJP
   B60B 35/14 20060101ALI20150129BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20150129BHJP
   F16D 3/20 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   B60B35/18 A
   B60B35/14 U
   F16C19/18
   F16D3/20 Z
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2009-178042(P2009-178042)
(22)【出願日】2009年7月30日
(65)【公開番号】特開2011-31685(P2011-31685A)
(43)【公開日】2011年2月17日
【審査請求日】2012年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137062
【弁理士】
【氏名又は名称】五郎丸 正巳
(72)【発明者】
【氏名】原田 勝之
(72)【発明者】
【氏名】安野 仁
【審査官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/142988(WO,A1)
【文献】 特開2009−078675(JP,A)
【文献】 特開昭57−178903(JP,A)
【文献】 特開昭63−184501(JP,A)
【文献】 特開2009−097628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 35/18
B60B 35/14
F16C 19/18
F16D 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部およびフランジを有する内輪、複数の転動体を介して前記内輪に連結された外輪、ならびに、前記筒状部の端部を径方向外方に向けてかしめひろげることにより形成されたかしめ部からなる当該筒状部の端面に軸方向と交差する方向に放射状に形成された複数の歯を有する駆動力受け部を含む車輪用軸受装置と、駆動軸とを連結する連結方法であって、
前記駆動軸には、連結端面が備えられ、
前記連結端面には、
軸方向と交差する方向に放射状に形成され、前記駆動受け部の前記複数の歯と歯合する複数の歯を有する駆動力伝達部と、
前記駆動力伝達部に一体形成された柱状突起であって、前記駆動力伝達部を前記駆動力受け部に結合する際に、放射状に形成された前記複数の歯同士の結合を案内するために前記駆動力伝達部の前記複数の歯の中心部から軸方向に突出し、前記内輪の前記筒状部内に進入可能な柱状突起とが設けられ、
前記駆動受け部の前記複数の歯は、それぞれ、周方向一方側の面と周方向他方側の面と周方向中央の面とを有する断面山型台形をなし、かつそれらの径方向端部が前記筒状部の前記端面の径方向端部まで形成されており、
前記駆動力伝達部の前記複数の歯は、それぞれ、周方向一方側の面と周方向他方側の面と周方向中央の面とを有する断面山型台形をなし、かつそれらの径方向端部が前記駆動力伝達部の径方向端部まで形成されており、
前記駆動伝達部を前記駆動受け部に対し連結するために、前記柱状突起を前記筒状部内に進入させることにより、前記筒状部の内周が前記柱状突起を案内して、前記車輪用軸受装置と前記駆動軸とを芯合わせすることを特徴とする、連結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車輪を回転可能に保持するための車輪用軸受装置と駆動軸との連結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、車輪を回転可能に保持するための車輪用軸受装置が用いられている。この種の車輪用軸受装置には、たとえば、内輪と、複数の転動体を介して内輪に連結された外輪とを備えるものがある。かかる車輪用軸受装置として、ドライブシャフトの先端側に取り付けられた等速ジョイントに連結されたものが知られている。この車輪用軸受装置と等速ジョイントとを連結させる構成として、筒状部の端面に形成されて、放射状に形成された複数の歯を有する駆動力受け部と、等速ジョイントの椀形外輪に形成されて、放射状に形成された複数の歯を有する駆動力伝達部とを嵌合させることにより、等速ジョイントの駆動力を車輪用軸受装置の筒状部に伝達するものが知られている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−184501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者らは、車輪用軸受装置と等速ジョイントの椀形外輪とを連結ボルトを用いて結合することを検討している。この場合、たとえば、筒状部内に連結ボルトを挿通し、連結ボルトの先端部を椀形外輪に設けられためねじ孔に螺合させることにより、車輪用軸受装置および椀形外輪の組み付けが達成される。この車輪用軸受装置および椀形外輪の組み付けは、手作業で行うことが一般的である。車輪用軸受装置の駆動力受け部と椀形外輪の駆動力伝達部を良好に結合させるために、車輪用軸受装置と椀形外輪との芯合わせを行った後に、連結ボルトのねじ止めを行う必要がある。
【0005】
しかしながら、車輪用軸受装置および等速ジョイントの椀形外輪がともに比較的重量の大きな部材であるために、車輪用軸受装置と椀形外輪との芯合わせ作業に手間取るおそれがある。このため、車輪用軸受装置と椀形外輪との組み付け性が比較的悪いと考えられる。これは、車輪用軸受装置を、等速ジョイントを介して駆動軸に接続する場合だけでなく、車輪用軸受装置を駆動軸に直接組み付ける場合にも共通する課題である。
【0006】
そこで、本発明は、組み付け性が良好な車輪用軸受装置および駆動軸の連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、筒状部(13)およびフランジ(11)を有する内輪(35)、複数の転動体(8)を介して前記内輪に連結された外輪(9)、ならびに、前記筒状部の端部を径方向外方に向けてかしめひろげることにより形成されたかしめ部からなる当該筒状部の端面(13a)軸方向と交差する方向に放射状に形成された複数の歯(21)を有する駆動力受け部(20)を含む車輪用軸受装置(1)と、駆動軸(22)とを連結する連結方法であって、前記駆動軸には、連結端面(22c)が備えられ、前記連結端面には、軸方向と交差する方向に放射状に形成され、前記駆動受け部の前記複数の歯と歯合する複数の歯(25)を有する駆動力伝達部(24)と、前記駆動力伝達部に一体形成された柱状突起(23)であって、前記駆動力伝達部を前記駆動力受け部に結合する際に、放射状に形成された前記複数の歯同士の結合を案内するために前記駆動力伝達部の前記複数の歯の中心部から軸方向に突出し、前記内輪の前記筒状部内に進入可能な柱状突起とが設けられ、前記駆動受け部の前記複数の歯は、それぞれ、周方向一方側の面と周方向他方側の面と周方向中央の面とを有する断面山型台形をなし、かつそれらの径方向端部が前記筒状部の前記端面の径方向端部まで形成されており、前記駆動力伝達部の前記複数の歯は、それぞれ、周方向一方側の面と周方向他方側の面と周方向中央の面とを有する断面山型台形をなし、かつそれらの径方向端部が前記駆動力伝達部の径方向端部まで形成されており、前記駆動伝達部を前記駆動受け部に対し連結するために、前記柱状突起を前記筒状部内に進入させることにより、前記筒状部の内周が前記柱状突起を案内して、前記車輪用軸受装置と前記駆動軸とを芯合わせすることを特徴とする、連結方法である。
【0008】
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
この発明の方法によれば、駆動力伝達部と駆動力受け部との結合の際には、車輪用軸受装置および椀形外輪を接近させて、柱状突起を筒状部内に進入させる。このとき、筒状部内に進入する柱状突起は、筒状部を案内して、車輪用軸受装置を、駆動力受け部および駆動力伝達部の複数の歯同士が歯合するように移動させる。すなわち、車輪用軸受装置と駆動軸とを接近させて、柱状突起を筒状部内に進入させることにより、車輪用軸受装置および駆動軸を、駆動力受け部および駆動力伝達部の歯同士が良好に歯合した状態に位置決めすることができる。そして、位置決め状態にある車輪用軸受装置および駆動軸を連結ボルトによって固定することにより、車輪用軸受装置および駆動軸の組み付けが達成される。車輪用軸受装置の駆動軸に対する位置決めを容易に行えるので、これにより、車輪用軸受装置および駆動軸の組み付け性を向上させることができる。
【0009】
前記柱状突起が前記筒状部内に進入した状態において、前記柱状突起の外周と前記筒状部の内周との間に1.0〜3.0mmのクリアランスが形成されていることが好ましい(請求項2)。柱状突起と筒状部との間にクリアランスが全くないと、駆動力伝達部と駆動力受け部とを結合させる作業が困難になり、却って車輪用軸受装置および駆動軸の組み付け性が悪くなるおそれがある
【0010】
前記柱状突起には、前記車輪用軸受装置の側から、前記筒状部内へ連結ボルト(26)が挿入されたときに、当該連結ボルトの先端が螺合するためのめねじ孔(29)が形成されていてもよい。
この構成によれば、柱状突起にめねじ孔が形成されている。車輪用軸受装置および駆動軸の位置決め後、筒状部内に連結ボルトを挿入し、当該連結ボルトの先端部を柱状突起のめねじ孔に螺合することにより、車輪用軸受装置と駆動軸との組み付けが達成される。すなわち、ねじ止め用の柱状突起を筒状部内に進入させることにより、車輪用軸受装置および駆動軸の位置決めが達成される。これにより、案内用の柱状突起を駆動軸に別途形成する場合と比較して、加工工程の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかる連方法が適用された車両の概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる連結方法が適用された車輪用軸受装置および等速ジョイントの図解的な断面図である。
図3図2に示す車輪用軸受装置を、ドライブシャフト側から見た側面図である。
図4図2に示す等速ジョイントを、車輪側から見た側面図である。
図5】車輪用軸受装置と椀形外輪との組み付け工程を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる連方法が適用された車両の概略構成を示す模式図である。
左右一対の車輪用軸受装置1,1は、それぞれ、ドライブシャフト2の先端側に等速ジョイント3を介して取り付けられている。左右の車輪4,4は、それぞれ対応する車輪用軸受装置1によって回転可能に保持されている。エンジン5からの駆動力はドライブシャフト2に与えられ、ドライブシャフト2から等速ジョイント3を介して車輪用軸受装置1に伝達される。そして車輪用軸受装置1に保持された車輪4が回転される。
【0013】
図2は、本発明の一実施形態にかかる連結方法が適用された車輪用軸受装置1および等速ジョイント3の図解的な断面図である。
車輪用軸受装置1は、内軸6と、内軸6の端部(図2に示す右端部)を所定量突出させた状態で内軸6に外嵌された内輪部材7と、複数のボール(転動体)8を介してこれら内軸6および内輪部材7に回転自在に連結された外輪9とを備えている。内軸6と内輪部材7とによって内輪35が構成されている。
【0014】
車輪用軸受装置1は、外輪9に形成された外輪フランジ10を介して図示しない懸架装置に固定されている。また、車輪4(図1参照)は、内軸6に形成された内輪フランジ(フランジ)11に固定されている。エンジン5(図1参照)からの駆動力は、内軸6に伝達される。エンジン5からの駆動力が内軸6に伝達されることで、内軸6とともに車輪4が一体回転する。
【0015】
また、車輪用軸受装置1は、例えば複列アンギュラ玉軸受として機能するように構成されている。複数のボール8は、それぞれ環状をなす2つの列を構成している。一方の列を構成する複数のボール8は、内軸6と外輪9との間で保持されている。また、他方の列を構成する複数のボール8は、内輪部材7と外輪9との間で保持されている。車輪用軸受装置1の内部すきまは例えば負すきまとされており、各ボール8には予圧が与えられている。
【0016】
内軸6は、当該内軸6の軸方向(図2に示す左右方向)に延びる筒状部13と、筒状部13の車輪4側の端部(図2に示す左端部)に形成された円環板状をなす内輪フランジ11と、円筒状のいんろう部14とを備えている。内輪フランジ11、筒状部13およびいんろう部14は、それぞれが同軸となるように一体形成されている。内輪フランジ11は、筒状部13の車輪4側端部(図2に示す左端部)の外周から径方向外方に延びて形成されている。また、いんろう部14は、筒状部13の車輪4側端部(図2に示す左端部)から車輪4側に突出して形成されている。
【0017】
車輪4は、円環状をなす板状のブレーキディスクロータ(図示せず)を内輪フランジ11との間に挟み込んだ状態で当該内輪フランジ11に固定される。内輪フランジ11の車輪4側の側面11aは平坦面に形成されており、この側面11aがディスクブレーキロータを取り付けるための取付面となっている。円筒状のいんろう部14にブレーキディスクロータを外嵌させつつ、ディスクロータを取付面に取り付ける。このとき、ブレーキディスクロータの内周にいんろう部14の外周があてがわれることで、ブレーキディスクロータが内輪フランジ11に対して位置決めされる。
【0018】
また、内輪フランジ11の外周部には、複数の固定ボルト15が取り付けられている(図2では、固定ボルト15を1つだけ図示)。複数の固定ボルト15は、内輪フランジ11の周方向に間隔を隔てて環状に配置されている。ブレーキディスクロータおよび車輪4は、複数の固定ボルト15とこれに対応する複数の固定ナット(図示せず)とによって一体的に内輪フランジ11に固定される。
【0019】
筒状部13は、内輪フランジ11よりもドライブシャフト2側に突出している。筒状部13の軸方向途中部の外周には、一方の列を構成する複数のボール8が配置された環状の第1軌道面16が形成されている。この第1軌道面16のドライブシャフト2側には、内輪部材7を嵌め入れるための環状溝17が隣接して形成されており、この環状溝17に内輪部材7が外嵌されている。筒状部13のドライブシャフト2側の端部(図2に示す右端部)には、当該筒状部13が径方向外方に向けてかしめられた(押し広げられた)かしめ部18が形成されている。このかしめ部18によって内輪部材7の抜け止めが達成されている。内輪部材7の外周は、かしめ部18の外周よりも径方向外方に突出している。この内輪部材7の外周には、第1軌道面16に連続し、他方の列を構成する複数のボール8が配置された環状の第2軌道面19が形成されている。
【0020】
かしめ部18の軸方向の端面(図2に示す右側端面)、すなわち、筒状部13のドライブシャフト2側の端面13aには駆動力受け部20が形成されている。駆動力受け部20は、軸方向と直交する方向に放射状に広がるように形成された複数の歯21(図3参照)を有している。複数の歯21は等角度間隔で配列されており、それぞれ山形をなしている。駆動力受け部20は、筒状部13のドライブシャフト2側の端部にかしめ部18が形成された後に、たとえば歯形成パンチを押し付けて塑性変形させることにより形成される。図3には、車輪用軸受装置1を、ドライブシャフト2側から見た側面図を示している。
【0021】
等速ジョイント3は、例えばボール型の等速ジョイントであり、ドライブシャフト2(図1参照)と一体回転可能に連結された内輪(図示せず)と、複数のボール(図示せず)を介して内輪に連結されたカップ状の椀形外輪(駆動軸)22とを備えている。この椀形外輪22が内軸6に連結されて、車輪用軸受装置1に結合されている。
椀形外輪22は、カップ状の基部27と、基部27の車輪4側の端部(図2に示す左端部)から、椀形外輪22の回転軸線C上を車輪4側に向けて突出する円柱状の柱状突起23と、基部27の車輪4側の軸方向端部から突出して、この柱状突起23を取り囲む円筒状に形成された円筒部28とを備えている。柱状突起23の先端面は、円筒部28の先端面よりも、車輪4側に位置している。円筒部28の先端面が、車輪用軸受装置1に連結するための連結面22cとされている。
【0022】
連結端面22cには、内軸6の駆動力受け部20と嵌合する駆動力伝達部24が形成されている。駆動力伝達部24は、軸方向と直交する方向に放射状に広がるように形成された複数の歯25(図4参照)を有している。複数の歯25は、等角度間隔で配列されており、それぞれ山形をなしている。この駆動力伝達部24の複数の歯25は、車輪用軸受装置1と椀形外輪22とが芯合わせされた状態で、駆動力受け部20の複数の歯21と歯合するように形成されている。図4には、等速ジョイント3を、車輪4側から見た側面図を示している。
【0023】
柱状突起23は、駆動力受け部20の複数の歯21の中心部から軸方向に突出している。柱状突起23の先端面と椀形外輪22の底面とを貫通し、内周にめねじが設けられためねじ孔29が形成されている。この柱状突起23は、車輪用軸受装置1と椀形外輪22との結合の際に、筒状部13内に進入し、この筒状部13を案内するためのものである。この柱状突起23の外径D1(図4参照)は、柱状突起23の筒状部13内への進入時に柱状突起23の外周と筒状部13の内周との間に所定量のクリアランス(たとえば1〜3mm程度)が形成されるように、筒状部13(かしめ部18)の内径D2(図3参照)よりも所定量(たとえば2〜6mm程度)だけ大径に設定されている。筒状部13のドライブシャフト2側の端部を構成するかしめ部18のかしめ量(押し広げ量)を調節することにより、第2軌道面19に配置された他方の列を構成する複数のボール8に予め定める予圧が付与されているので、筒状部13のドライブシャフト2側の端部の内径を調節することは難しい。したがって、この実施形態では、筒状部13のドライブシャフト2側の端部の内径D2を基準として柱状突起23の外径D1を調節することにより、筒状部13の内周と柱状突起23の外周との間に所定量のクリアランスが形成されている。
【0024】
車輪用軸受装置1と椀形外輪22とは、連結ボルト26を用いて結合されている。すなわち、車輪用軸受装置1から筒状部13内に連結ボルト26が挿入されるとともに、連結ボルト26の先端部に形成されたおねじ部30が、柱状突起23のめねじ孔29に螺合されている。
車輪用軸受装置1と椀形外輪22とが芯合わせされた状態で結合されていると、内軸6の駆動力受け部20の歯21と椀形外輪22の駆動力伝達部24の歯25とが良好に歯合する。これら駆動力受け部20および駆動力伝達部24の歯21,25同士の歯合により、エンジン5からの駆動力が等速ジョイント3を介して内軸6および内輪部材7に伝達される。これにより、内軸6および内輪部材7が外輪9に対して相対回転し、内軸6の回転に伴って車輪4が回転する。
【0025】
図5は、車輪用軸受装置1と椀形外輪22との組み付け工程を示す模式的な断面図である。
この車輪用軸受装置1と椀形外輪22との組み付け工程では、作業者が車輪用軸受装置1および椀形外輪22を左右それぞれの手に持ち、手作業で行う。
まず、作業者は、車輪用軸受装置1の駆動力受け部20と、椀形外輪22の駆動力伝達部24とを互いに対向させて(図5(a)参照)、車輪用軸受装置1および椀形外輪22を接近させる。
【0026】
次に、椀形外輪22の柱状突起23を、筒状部13のドライブシャフト2側の端部から車輪用軸受装置1の筒状部13内に進入させる(図5(b)参照)。このとき、筒状部13内に進入する柱状突起23は、筒状部13を案内して、車輪用軸受装置1と椀形外輪22とを芯合わせするように、車輪用軸受装置1を移動させる。そして、車輪用軸受装置1と椀形外輪22とが芯合わせされた状態(車輪用軸受装置1および椀形外輪22の回転軸線Cが一致した状態)では、駆動力受け部20および駆動力伝達部24の歯21,25(図3および図4参照)同士が良好に歯合している。この良好な歯合状態で、車輪用軸受装置1と椀形外輪22とが位置決めされる。
【0027】
車輪用軸受装置1と椀形外輪22との位置決め後は、筒状部13の車輪4側の端部(図5(c)における左端部)から、筒状部13内に連結ボルト26を挿入し(図5(c)参照)、その連結ボルト26の先端部に形成されたおねじ部30を、柱状突起23のめねじ孔29に螺合させる。これにより、車輪用軸受装置1と椀形外輪22とが結合されて、車輪用軸受装置1および椀形外輪22の組み付けが達成される。
【0028】
以上のようにこの実施形態によれば、駆動力伝達部24と駆動力受け部20との結合の際には、車輪用軸受装置1および椀形外輪22を接近させて、柱状突起23を筒状部13内に進入させる。このとき、筒状部13内に進入する柱状突起23は、筒状部13を案内して、車輪用軸受装置1を、駆動力受け部20および駆動力伝達部24の複数の歯21,25同士が歯合するように移動させる。すなわち、車輪用軸受装置1と椀形外輪22とを接近させて、柱状突起23を筒状部13内に進入させることにより、車輪用軸受装置1および椀形外輪22を、駆動力受け部20および駆動力伝達部24の歯21,25同士が良好に歯合した状態に位置決めすることができる。そして、位置決め状態にある車輪用軸受装置1および椀形外輪22を連結ボルト26によって結合することにより、車輪用軸受装置1および椀形外輪22の組み付けが達成される。車輪用軸受装置1の椀形外輪22に対する位置決めを容易に行えるので、これにより、車輪用軸受装置1および椀形外輪22の組み付け性を向上させることができる。
【0029】
また、ねじ止め用の柱状突起23を筒状部13内に進入させることにより、車輪用軸受装置1および椀形外輪22の位置決めが達成される。これにより、案内用の柱状突起23を椀形外輪22に別途形成する場合と比較して、加工工程の削減を図ることができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、他の形態で実施することもできる。
【0030】
たとえば、前述の実施形態では、内軸6の駆動力受け部20に、等速ジョイント3の椀形外輪22の駆動力伝達部24からの駆動力が伝達されるとして説明したが、駆動力受け部20にドライブシャフト2からの駆動力が直接伝達される構成であってもよい。かかる場合には、ドライブシャフト2の端面に、放射状に形成された複数の歯を有する駆動力伝達部が設けられている必要がある。
【0031】
さらに、たとえば、前述の実施形態では、転動体としてボール8が用いられ、車輪用軸受装置1が複列アンギュラ玉軸受として機能するように構成されている場合について説明したが、転動体としてはボールに限らずころであってもよいし、車輪用軸受装置1は、複列アンギュラ玉軸受以外の軸受として機能するように構成されていてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1…車輪用軸受装置、8…ボール(転動体)、9…外輪、11…内輪フランジ(フランジ)、13…筒状部、20…駆動力受け部、21…歯、22…椀形外輪(駆動軸)、22c…連結端面、23…柱状突起、24…駆動力伝達部、25…歯、26…連結ボルト、29…めねじ孔、35…内輪
図1
図2
図3
図4
図5