特許第5672485号(P5672485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5672485
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】標識板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 13/20 20060101AFI20150129BHJP
   E01F 9/06 20060101ALI20150129BHJP
   G09F 13/04 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   G09F13/20 D
   E01F9/06
   G09F13/04 J
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-232356(P2010-232356)
(22)【出願日】2010年10月15日
(65)【公開番号】特開2012-88361(P2012-88361A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2013年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107320
【弁理士】
【氏名又は名称】高塚 一郎
(72)【発明者】
【氏名】神池 隆志
(72)【発明者】
【氏名】相川 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勇人
【審査官】 槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−163022(JP,A)
【文献】 特開2003−295798(JP,A)
【文献】 特開2010−026763(JP,A)
【文献】 特開2007−138619(JP,A)
【文献】 特開2007−200036(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3121034(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3137389(JP,U)
【文献】 特開2002−366065(JP,A)
【文献】 特開2004−332369(JP,A)
【文献】 特開2005−007862(JP,A)
【文献】 特開平11−010773(JP,A)
【文献】 特開2009−157201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/00−27/00
E01F 9/00−11/00
F21S 2/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦面を備えた熱盤(9)上に、意匠(4)を施した面を上にして透明層(5)を配置する工程と、前記透明層(5)上に金型(7)を配置する工程と、前記金型(7)内に、蓄光剤がアルミン酸塩系蓄光剤であって、粒径が100μm以上のものを、1000〜5,000g/平方メートル練り込まれた熱硬化性樹脂材料(31)を流し込む工程と、前記蓄光剤が沈降して蓄光層(3)と接着層(6)とに分離した後、前記接着層(6)の厚み(t)を調整し、ついで、白色反射層(2)を一方の面(11)に形成した基板(1)を、前記白色反射層(2)が前記蓄光層(3)側に配置される様に、前記接着層(6)上に配置する工程と、前記熱硬化性樹脂材料(31)が硬化した後、前記金型(7)を取り外す工程と、前記熱盤(9)上から製品を取り出した後、不要な個所を裁断する仕上げ工程とを備えた標識板の製造方法。
【請求項2】
前記蓄光層(3)と前記接着層(6)とに分離した後、前記接着層(6)の厚み(t)を0.1〜1.0mmに整えた後、前記基板(1)を前記接着層(6)上に配置することを特徴とする請求項1に記載の標識板の製造方法。
【請求項3】
前記透明層(5)は、難燃性フィルム材であって、前記蓄光層(3)と接する面に易接着処理を施してなることを特徴とする請求項1または2記載の標識板の製造方法。
【請求項4】
前記透明層(5)の前記意匠(4)を施した、前記蓄光層(3)と接する面に、バインダー処理を施してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の標識板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難誘導、室内及び屋外の案内などの標識に用いられる標識板に関し、特に、屋外の光源の無い道路地点の標識として有用な標識板製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄光式誘導標識は、従来の内照式誘導標識と比較して下記のメリットがあり積極的に使用されるようになった。
1.メンテナンスフリーである。内照式誘導標識は、ランプ交換(蛍光灯であれば1〜2年位)、バッテリー交換(2〜3年位)が必要である。
2.取付け時に電気配線が不要である。
3.省エネ品であり低炭素化社会に合致している。
【0003】
この種蓄光式誘導標識としては、特許文献1及び2などに開示されているが、常用光源蛍光ランプD65で50Lx20分照射後、20分経過時点で130mcd/平方メートル以上、60分経過時点で40mcd/平方メートル以上の輝度を得ることができなかった。
この輝度を満足することは、工場、倉庫、地下通路等の比較的照明が暗い場所にも設置できるため大幅に設置拡大を図れると推定されるが、現時点この輝度を満足できる製品は存在しない。
【0004】
この種輝度を満足出来る蓄光式標識の条件としては、以下の条件を充足することが必要と考えられる。
1.アルミン酸塩系蓄光材で大粒径(100μm以上)の蓄光材を、蓄光材練込量1,000g/平方メートル以上であること。
2.蓄光層は母材として透明な樹脂からなり、充分光を透過(全光線透過率90%以上)すること。
尚、蓄光層は、厚み10mm以内で、蓄光材の含有率が30〜80WT%であること。(本発明の場合、蓄光材比重3.6、母材比重1.1であれば蓄光層比重1.50〜1.90の範囲となる。)
3.白色反射層が適正に機能すること。白色反射層が機能しない場合20〜30%の輝度が低下する。
4.また、各層間の接着強度を高める事により、各層間に水分が滲入することはなく、長期間に渡って夜間の視認性が良い蓄光標識機能を維持すること。
5.長期間に渡って夜間の視認性が良い蓄光標識機能を発揮する標識板を、特別な製造設備を必要とせず、安価に製造出来ること。
【0005】
更に、屋内で使用する蓄光式誘導標識には、屋内用の為、JIS Z 9107「安全標識板」に準拠する必要が有り、酸素指数で26以上の難燃性が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4130939号公報
【特許文献2】特開2006−293168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記したような事情に鑑みてなされたものであり、工場、倉庫、地下通路等の比較的照明が暗い場所にも設置でき、長期間に渡って夜間の視認性が良い蓄光標識機能を維持しながら、難燃性を備えると共に、特別な製造設備を必要としないため、安価に製造出来る標識板製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係る標識板の製造方法にあっては、平坦面を備えた熱盤(9)上に、意匠(4)を施した面を上にして透明層(5)を配置する工程と、前記透明層(5)上に金型(7)を配置する工程と、前記金型(7)内に、蓄光剤がアルミン酸塩系蓄光剤であって、粒径が100μm以上のものを、1000〜5,000g/平方メートル練り込まれた熱硬化性樹脂材料(31)を流し込む工程と、前記蓄光剤が沈降して蓄光層(3)と接着層(6)とに分離した後、前記接着層(6)の厚み(t)を調整し、ついで、白色反射層(2)を一方の面(11)に形成した基板(1)を、前記白色反射層(2)が前記蓄光層(3)側に配置される様に、前記接着層(6)上に配置する工程と、前記熱硬化性樹脂材料(31)が硬化した後、前記金型(7)を取り外す工程と、前記熱盤(9)上から製品を取り出した後、不要な個所を裁断する仕上げ工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下に記載される効果を奏する。
請求項1記載の発明の標識板の製造方法によれば、特別な製造設備を必要としないため、安価に製造出来る
請求項2記載の発明の標識板の製造方法によれば、容易に接着層の厚みを制御できる為、接着層による全光線透過率が高く、比較的照明が暗い場所に於いても使用可能な標識板を安価に製造出来る
【0011】
請求項3記載の発明の標識板の製造方法によれば、標識板全体の難燃性を更に高める事が出来ると共に、蓄光層と透明層との間に水が滲入する事が無い為、蓄光層の機能を長期間安定して維持出来る。
請求項4記載の発明の標識板の製造方法によれば、蓄光層と意匠との間に水が滲入する事が無い為、蓄光層の機能を長期間安定して維持出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る標識板の断面図。
図2】熱盤上に配置した透明フィルム上に配置した金型内に材料を注入した状態を示す断面図。
図3図2の材料が蓄光層と、接着剤層である熱硬化性樹脂層とに分離した状態を示す断面図。
図4】白色反射層を設けた基板が、接着剤層上に配置された状態を示す断面図。
図5図4の金型を取り外した状態の断面図。
図6図5の熱盤を取り除いた断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
まず、図1に基づき本発明の形態を説明する。
本発明に係る標識板は、基板1の一方の面11に設けた白色反射層2と、この白色反射層2側に設けた熱硬化性樹脂中に蓄光剤が存在する蓄光層3と、この蓄光層3の白色反射層2と反対側の面側に存在する意匠4と、この意匠4を含む蓄光層3表面を覆う透明層5とより構成されている。
【0016】
基板1は、熱伝導率の良い金属板であって、厚さYが0.5〜4.0mm、好ましくは1.0〜3.0mmの、アルミ板、ステンレス板、塗装鋼板等である。
そして、白色反射層2は、基板1の一方の面に、酸化チタンにポリエステル系樹脂等を混合した白色塗料を20〜60μm塗装したものである。
【0017】
また、この白色反射層2と蓄光層3との間には、蓄光層3を構成している熱硬化性樹脂の一部が接着層6として介在する。
この熱硬化性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等が使用可能であるが、ポリウレタン樹脂が好ましい。
本実施形態で使用するウレタン材は、注型ウレタン材であり、プレポリマーと言われる反応基(−NCO)を持つ主材と硬化剤(アミン系)とが反応してポリウレタンになるものである。この中でも、特に、透明無黄変熱硬化ウレタン材が好ましい。
【0018】
この接着層6は、蓄光剤が殆ど存在しない透明無黄変熱硬化ウレタン材であって、厚さtが0.1〜1.0mm、好ましくは0.2〜0.4mmである。
このことにより、接着層6における全光線透過率が高く、比較的照明が暗い場所に於いても使用可能である。
【0019】
また、蓄光層3は、熱硬化性樹脂材中に、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化希土類等を使用することができるが、好ましくはアルミン酸塩系蓄光剤であって、粒径が100μ以上のものを30〜80重量%含み、結果として1,000〜5,000g/平方メートル、好ましくは1,500〜3,000g/平方メートル練り込まれる形として、厚さXが1〜10mm、好ましくは1.5〜3.0mmに調整されている。
【0020】
そして、蓄光層3(蓄光剤+透明無黄変熱硬化ウレタン材)の比重は、1.50〜1.90、好ましくは1.60〜1.80に調整される。
アルミン酸塩系蓄光剤は、アルカリ土類―アルミン酸塩蓄光型蛍光体等であって、粒径100〜1000μm、好ましくは全体の90%以上が150〜450μmの範囲の粒径のものを使用する事が好ましい。
【0021】
この結果、工場、倉庫、地下通路等の比較的照明が暗い場所にも設置でき、長期間に渡って夜間の視認性が良い蓄光標識機能を維持出来る。
【0022】
また、透明層5は、難燃性フィルム材であって、蓄光層3と接する面に、プラズマ処理等による易接着処理が施されている。
このことにより、蓄光層3と透明層5との接着性が良好と成る為、蓄光層3と透明層5との間に水が滲入する事が無く、蓄光層3の機能を長期間安定して維持出来ると共に、透明層5への意匠の印刷も容易となる。
また、難燃性フィルム材としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、セルロース、ポリカーボネート等のフィルム材が適宜選択して用いられるが、PET(ポリエチレンテレフタレート)が特に好ましい。
【0023】
難燃性フィルム材の厚みは、150〜200μmとし、紫外線吸収剤を含まないPETフィルム材を使用することが難燃性を更に高める上で好ましい。
この事により、標識板全体の難燃性を更に高める事が出来る。
また、意匠4を施した、蓄光層3と接する面には、バインダー処理を施してある。
この事により、蓄光層3と意匠4との接着性が良好と成る為、蓄光層3と意匠4との間に水が滲入する事が無い為、蓄光層3の機能を長期間安定して維持出来る。
【0024】
以上の構成要件を備える標識板とすることにより、常用光源蛍光ランプD65 50Lx20分照射後、20分経過した時点で、130mcd/平方メートル、60分後経過した時点で、40mcd/平方メートル以上の残光輝度が期待できる。
【0025】
ついで、本発明の製造方法を図2乃至図6に基づき説明する。
図2に示す様に、80〜130℃に熱した熱盤9上に、易接着処理が施されたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの一方の面に意匠4を施し、この意匠4を施した面を上にして透明層5を配置する。
ついで、この透明層5上に金型7を配置する。
そして、この金型7内に、透明無黄変熱硬化ウレタンプレポリマー100部、アミン系硬化剤10部、アルミン酸塩系蓄光剤であって、粒径が150〜450μmの蓄光剤150部、反応促進剤0.02部を混合した熱硬化性樹脂材料31を流し込む。
【0026】
ついで、図3に示す様に、熱硬化性樹脂材料31を流し込んだ後、1〜2分で、蓄光剤が沈降して、蓄光剤と透明無黄変熱硬化ウレタン材からなる蓄光層3と、蓄光剤を殆ど含まない透明無黄変熱硬化ウレタン材からなる接着層6とに分離する。
この段階で、接着層6の一部を取除き、接着層6の厚さtが0.1〜1.0mm、好ましくは0.2〜0.4mmに調整される。
【0027】
ついで、図4に示す様に、白色反射層2を一方の面11に形成したアルミ材の基板1を、白色反射層2が蓄光層3側に配置される様に、接着層6上に配置する。
【0028】
ついで、図5に示す様に、30〜40分経過して、透明無黄変熱硬化ウレタン材である熱硬化性樹脂材料31が硬化した後、金型7を取り外す。
【0029】
ついで、図6に示す様に、熱盤9上から製品を取り出した後、80℃で12時間の熱処理を行った後、不要な個所を裁断する仕上げを施すことにより、図1に示す様な製品と出来る。
【産業上の利用可能性】
【0030】
上述の発明は、視線誘導標、案内板や看板等に利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 基板
2 白色反射層
3 蓄光層
4 意匠
5 透明層
6 接着層
7 金型
9 熱盤
11 一方の面
図1
図2
図3
図4
図5
図6