特許第5672601号(P5672601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5672601
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】キャスター
(51)【国際特許分類】
   B60B 33/00 20060101AFI20150129BHJP
   B62B 5/04 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   B60B33/00 J
   B62B5/04 A
   B62B5/04 D
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-283056(P2010-283056)
(22)【出願日】2010年12月20日
(65)【公開番号】特開2012-131259(P2012-131259A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2012年5月7日
【審判番号】不服2013-21801(P2013-21801/J1)
【審判請求日】2013年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111731
【氏名又は名称】ハンマーキャスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072213
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 一義
(72)【発明者】
【氏名】浅井 清春
【合議体】
【審判長】 丸山 英行
【審判官】 出口 昌哉
【審判官】 鳥居 稔
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−7943(JP,A)
【文献】 実公昭32−4739(JP,Y1)
【文献】 特開昭53−30554(JP,A)
【文献】 実公昭48−20222(JP,Y1)
【文献】 実開昭61−21602(JP,U)
【文献】 特公昭50−7336(JP,B1)
【文献】 実開昭49−133949(JP,U)
【文献】 特開平3−114902(JP,A)
【文献】 特開2005−170226(JP,A)
【文献】 特開2003−54209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 33/00
B62B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付プレート(1)の下方に円筒状としたロックシューガイド(2)を固定し、このロックシューガイド(2)の外周に設けたネジ溝(2a)に、円筒状としたロックシュー(3)の内周に設けたネジ溝(3a)を螺合させ、このロックシュー(3)を回動操作することによって昇降動するようにし、前記取付プレート(1)の下方に本体フレーム(5)を旋回自在に取り付け、前記本体フレーム(5)に車輪(6)を回転自在に取り付けたものとし、前記ロックシュー(3)の昇降動により、このロックシュー(3)の下周端(3b)が、前記車輪(6)の接地面(6a)から離れた状態になったり、この車輪(6)の接地面(6a)に摩擦力を以て接触した状態になるようにし、前記ロックシューガイド(2)内に本体フレーム(5)の頭部(5a)が入り込むようにし、さらに前記ロックシュー(3)の外周部に操作杆(4)の連結部(15)を設け、この連結部(15)に操作杆(4)の先端部(4a)が軸支されており、前記操作杆(4)によって前記ロックシュー(3)を回動操作するようにしたキャスターであって、
台車の底部の四隅にそれぞれ取り付けられ、その底部の両側においてそれぞれ前後のキャスターのロックシュー(3)の連結部(15)どうしを操作杆(4)で連結したものとし、
前記両側の操作杆(4)の間に連絡杆(21)を掛け渡し、この連絡杆(21)を、その中央(21a)を軸支して揺動させ、前記操作杆(4)を前後動させるようにした引き線(23)を連絡杆(21)の一端寄りに取り付けたものとし、この連絡杆(21)の他端寄りに前記連絡杆(21)の復帰バネ(24)を取り付けたものとしていることを特徴とするキャスター。
【請求項2】
前記ロックシュー(3)を30〜90°の回動角で回動操作するようにしたことを特徴とする請求項1記載のキャスター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどで使用される台車や、病院、事務所、家庭などで使用されるキャビネット等に用いられるのに適したキャスターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のキャスターとしては、例えば図12に示したように、台車Tの底部に取り付けられ、台車Tのハンドル部Hに設けた操作レバーLの操作により、車輪31の旋回を規制したり解除することができるようにしたものが存在する。このキャスターは、図13、14に示したように、支軸32の軸心に貫通させた操作ワイヤー33の上端を、台車Tのハンドル部Hに設けた操作レバーLに連結し、前記操作ワイヤー33の下端を、支軸32に旋回自在に取り付けた車輪用フレーム34に揺動自在に取り付けた係止部材35の一端35aに連結し、この係止部材35の他端35bをねじりコイルバネ36の付勢力を得て、前記支軸32下部の固定板37に設けた係止溝37aに係止させた状態にしたものとしている(特許文献1)。
【0003】
このように構成した従来のキャスターでは、前記操作レバーLを操作しない状態(図12の実線の状態)では、図13に示したように、車輪用フレーム34に取り付けた係止部材35の他端35bが、ねじりコイルバネ36の付勢力を得て、支軸32下部の固定板37に設けた係止溝37aに係止した状態となっているので、車輪用フレーム34と固定板37は係着した状態となり、車輪用フレーム34が旋回しなくなり、その結果、車輪用フレーム34に取り付けられた車輪31も旋回が規制されたロック状態となるようにしている。
【0004】
さらに、従来のキャスターでは、前記操作レバーLを操作(図12の仮想線の状態)すると、図14に示したように、操作ワイヤー33が上に引かれ、係止部材35の一端35aがねじりコイルバネ36の付勢力に反して引き上げられるので、係止部材35の他端35bが引き下げられる。その結果、この係止部材35の他端35bと、支軸32下部の固定板37に設けた係止溝37aとの係止状態が解除され、車輪用フレーム34と固定板37は自由な状態となり、車輪用フレーム34が旋回自在となり、その結果、車輪用フレーム34に取り付けられた車輪31も旋回規制が解除されたアンロック状態となるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−54209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のキャスターでは、車輪31の旋回を規制したり、その旋回規制を解除することができるが、この動作と同時に、車輪31の回転を規制したり、その回転規制を解除することができず、機能性に劣るという問題点を有していた。
【0007】
さらに、上記従来のキャスターでは、車輪用フレーム34内にねじりコイルバネ36を組み込まなければならないため、この組み込み作業に手間がかかると共に構造も複雑になり、製造コストが高くなるという問題点を有していた。
【0008】
また、上記従来のキャスターでは、車輪用フレーム34内にねじりコイルバネ36を組み込むと、キャスターの全高が高くなるので、台車やキャビネットなどの底部に取り付けると、台車やキャビネットの全高も高くなり、その台車やキャビネットが不安定になるという問題点を有していた。
【0009】
さらに、上記従来のキャスターでは、台車やキャビネットなどの底部には通常、その前後に二個所ずつの合計四個所に取り付けるようにしているが、そのうちの一個所に取り付けた車輪31の旋回を規制するようにしているため、前二個所に取り付けた二個のキャスターの車輪31を同時に、後二個所に取り付けた二個のキャスターの車輪31を同時に、または前後二個所ずつに取り付けた四個のキャスターの車輪31を同時に、それらの旋回を規制するというトータルロック機構を採用し難く、汎用性に乏しいという問題点を有していた。
【0010】
そこで、この発明は、上記従来の問題点を解決することをその課題としており、簡単な操作で、車輪の旋回と回転を同時に規制したり、その旋回と回転の規制を同時に解除することができ、組み立て作業も簡単で、台車やキャビネットなどの底部に取り付けても、その台車やキャビネットの全高が高くならず、しかもトータルロック機構を採用し易くしたキャスターを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、取付プレート1の下方に円筒状としたロックシューガイド2を固定し、このロックシューガイド2の外周に設けたネジ溝2aに、円筒状としたロックシュー3の内周に設けたネジ溝3aを螺合させ、このロックシュー3を回動操作することによって昇降動するようにし、前記取付プレート1の下方に本体フレーム5を旋回自在に取り付け、前記本体フレーム5に車輪6を回転自在に取り付けたものとし、前記ロックシュー3の昇降動により、このロックシュー3の下周端3bが、前記車輪6の接地面6aから離れた状態になったり、この車輪6の接地面6aに摩擦力を以て接触した状態になるようにし、前記ロックシューガイド2内に本体フレーム5の頭部5aが入り込むようにし、さらに前記ロックシュー3の外周部に操作杆4の連結部15を設け、この連結部15に操作杆4の先端部4aが軸支されており、前記操作杆4によって前記ロックシュー3を回動操作するようにしたキャスターであって、台車の底部の四隅にそれぞれ取り付けられ、その底部の両側においてそれぞれ前後のキャスターのロックシュー3の連結部15どうしを操作杆4で連結したものとし、前記両側の操作杆4の間に連絡杆21を掛け渡し、この連絡杆21を、その中央21aを軸支して揺動させ、前記操作杆4を前後動させるようにした引き線23を連絡杆21の一端寄りに取り付けたものとし、この連絡杆21の他端寄りに前記連絡杆21の復帰バネ24を取り付けたものとしている。
【発明の効果】
【0015】
この発明のキャスターは、以上に述べたように構成されているので、簡単な操作で、車輪の旋回と回転を同時に規制したり、その旋回と回転の規制を同時に解除することができるものとなり、操作性や機能性に優れたものとなる。
【0016】
さらに、この発明のキャスターは、部品点数が少なく、組み立て作業も簡単なものとなり、製造コストが安価なものとなる。
【0017】
また、この発明のキャスターは、台車やキャビネットなどの底部に取り付けても、台車やキャビネットの全高が高くならず、その台車やキャビネットが安定したものとなる。
【0018】
さらにまた、この発明のキャスターは、トータルロック機構を採用し易くなり、汎用性に富んだものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明のキャスターの側面図である。
図2】この発明のキャスターの分解斜視図である。
図3】この発明のキャスターのアンロック状態を示す半断面図である。
図4】この発明のキャスターのアンロック状態を示す底面図である。
図5】この発明のキャスターのロック状態を示す半断面図である。
図6】この発明のキャスターのロック状態を示す底面図である。
図7】この発明のキャスターのロックシューガイドの側面図である。
図8】この発明のキャスターをキャビネットの底部に取り付けた状態の一例を示す説明図である。
図9】この発明のキャスターをキャビネットの底部に取り付けた状態の他の例を示す説明図である。
図10】この発明のキャスターをキャビネットの底部に取り付けた状態のさらに他の例を示す説明図である。
図11図10中の楕円で囲んだ部分の側面図である。
図12】従来のキャスターを台車の底部に取り付けた状態を示す側面図である。
図13】従来のキャスターのロック状態を示す断面図である。
図14】従来のキャスターのアンロック状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明のキャスターの実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
この発明のキャスターは、台車やキャビネットなどの底部にネジ止めされる取付プレート1の下方に円筒状としたロックシューガイド2を固定し、このロックシューガイド2の外周に設けたネジ溝2aに、円筒状としたロックシュー3の内周に設けたネジ溝3aを螺合させたものとしている。
【0022】
さらに、この発明のキャスターは、前記ロックシュー3を、このロックシュー3の外周部に連結した操作杆4によって、回動操作することによって昇降動するようにしている。
【0023】
また、この発明のキャスターは、前記取付プレート1の下方に、前記ロックシューガイド2内に本体フレーム5の頭部5aが入り込むようにして、この本体フレーム5を旋回自在に取り付けたものとし、前記本体フレーム5の足部5bに車輪6を回転自在に取り付けたものとしている。
【0024】
そして、この発明のキャスターは、前記ロックシュー3の昇降動により、このロックシュー3の下周端3bが、前記車輪6の接地面6aから離れた状態になったり、この車輪6の接地面6aに摩擦力を以て接触した状態になるようにしたものとしている。
【0025】
前記取付プレート1は、角を落した略三角状としており、その三頂点付近にそれぞれネジ孔11を、三辺付近にそれぞれ止孔12を設け、前記ネジ孔11にはそれぞれネジ13を差し込んで、台車やキャビネットなどの底部にネジ止めされている。
【0026】
前記ロックシューガイド2は、アルミ合金などの軽金属や硬質の合成樹脂などからなり、平坦な円筒状としており、上面の三個所に凸部14を設け、これら凸部14を前記取付プレート1の止孔12にそれぞれ嵌合することにより、この取付プレート1に固定したものとしている。
【0027】
前記ロックシュー3は、アルミ合金などの軽金属や硬質の合成樹脂などからなり、平坦な円筒状としており、外周部には前記操作杆4の連結部15が設けられており、この連結部15にはその操作杆4の先端部4aが軸支されている。さらに、前記ロックシュー3の下周端3bは、前記車輪6の接地面6aに摩擦力を以て接触し易いように、凹凸形状にしたり、軟質の合成樹脂やゴムなどを一体または別体として設けたものとすることができる。
【0028】
前記操作杆4は、長尺の金属板や金属棒などからなるものとしており、後に述べるように操作するものとしており、前記ロックシュー3を30〜90°の回動角で回動操作することによって、このロックシュー3を昇降動させるようにしている。
【0029】
前記本体フレーム5は、ボールベアリング16を介して前記取付プレート1の下方に旋回自在に取り付けられており、足部5bの下端には支軸孔17が設けられ、この支軸孔17に貫通した車軸18に前記車輪6を軸支している。そして、この本体フレーム5を一方向に傾斜させたものにすることにより、車輪6が一方向のみ回転する構造(ワンウエイクラッチ)としている。
【0030】
以上のように構成したこの発明のキャスターは、操作杆4を操作しない状態、または操作杆4を操作した状態では、図3、4に示したように、ロックシュー3の下周端3bが、車輪6の接地面6aから離れた状態になっており、車輪6は旋回および回転が規制されていないアンロック状態になっている。
【0031】
そこで、図3、4に示した状態から、操作杆4を操作した状態、または操作杆4を操作しない状態にして、その操作杆4を図中の左方向へ移動させると、ロックシュー3が回動し、下降して、図5、6に示した状態となり、ロックシュー3の下周端3bが、車輪6の接地面6aに摩擦力を以て接触した状態になり、車輪6は旋回および回転が規制されたロック状態となる。
【0032】
さらに、図5、6に示した状態から、操作杆4を操作しない状態、または操作杆4を操作した状態にして、その操作杆4を図中の右方向へ移動させると、ロックシュー3が回動し、上昇して、再び図3、4に示した状態となり、ロックシュー3の下周端3bが、車輪6の接地面6aから離れた状態になり、車輪6は旋回および回転が規制されていないアンロック状態となる。
【0033】
また、以上のように構成したこの発明のキャスターは、図8〜10に示したように、台車やキャビネットなどの底部の四隅にそれぞれ取り付けられ、その底部の両側においてそれぞれ前後のキャスターのロックシュー3の連結部15どうしを操作杆4で連結したものとしている。
【0034】
そして、図8に示したものでは、前記両側の操作杆4の間に連絡杆21を掛け渡し、この連絡杆21を、その中央21aを軸支して揺動させ、前記操作杆4を前後動(図中では上下動)させるようにした作動杆22を、前記連絡杆21の中央21aに取り付けたものとしている。
【0035】
さらに、図9に示したものでは、前記両側の操作杆4の間に連絡杆21を掛け渡し、この連絡杆21を、その中央21aを軸支して揺動させ、前記操作杆4を前後動(図中では上下動)させるようにした引き線23を連絡杆21の一端寄りに取り付けたものとし、この連絡杆21の他端寄りに前記連絡杆21の復帰バネ24を取り付けたものとしている。
【0036】
また、図10に示したものでは、前記両側の操作杆4のそれぞれに作動体25を突設し、この作動体25を前後動(図中では上下動)させ、前記操作杆4を前後動させるようにした引き線23を作動体25の前側面または後側面に取り付けたものとし、前記引き線23を取り付けた側面に対向する側面に前記作動体25の復帰バネ24を取り付けたものとしている。なお、前記引き線23は、図9、10に示したもの共々、保護管26内に摺動自在として挿通したものとしている。
【0037】
以上に述べたように、この発明のキャスターは、簡単な操作で、車輪6をロック状態やアンロック状態にすることができ、操作性や機能性に優れたものとなる。
【0038】
さらに、この発明のキャスターは、部品点数が少なく、組み立て作業も簡単なものとなり、製造コストが安価なものとなる。
【0039】
また、この発明のキャスターは、ロックシューガイド2内に本体フレーム5の頭部5aが入り込むようにしており、しかも本体フレーム5内に復帰バネ24を収容していないので、キャスターの全高が低くなり、台車やキャビネットなどの底部に取り付けても、台車やキャビネットの全高が高くならず、その台車やキャビネットが安定したものとなる。
【0040】
さらにまた、この発明のキャスターは、台車やキャビネットなどの底部の四隅にそれぞれ取り付けられた場合、図8〜10に示したような簡単な構造で、作動杆22や引き線23によって、四個のキャスターの車輪6の旋回や回転を同時に規制することができるものとなるので、トータルロック機構を採用し易いものとなり、汎用性に富んだものとなる。
【符号の説明】
【0041】
1 取付プレート
2 ロックシューガイド
2a ネジ溝
3 ロックシュー
3a ネジ溝
3b 下周端
4 操作杆
5 本体フレーム
5a 頭部
6 車輪
6a 接地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14