【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の液体霧化装置は、2つの気体流同士を衝突させるための第1気体噴射部および第2気体噴射部と、
液体を流出させるための液体流出部と、
前記第1気体噴射部から噴射された気体流と前記第2気体噴射部から噴射された気体流と前記液体流出部から流出した液体とを衝突させて当該液体を霧化させるエリアである気液混合エリア部と、
前記気液混合エリア部が内部に形成された噴霧出口部と、
前記噴霧出口部の先端面に、前記霧が広角に噴霧する方向に沿って形成されたスリット部と、を備える。
【0007】
この構成の作用効果を
図1(霧化エリア部の断面模式図)を参照しながら説明する。第1、第2気体噴射部1、2から噴射した気体流同士11、21を衝突させて衝突部100を形成する。この衝突部100を含む部分を衝突壁101とする(
図1(a))。液体流出部6から流出された液体61は、この衝突部100または衝突壁101に衝突する(
図1(b))。衝突部100または衝突壁101に液体61が衝突することで、液体61が粉砕(霧化)され霧62となる。霧62が発生するエリアを気液混合エリア部120として破線で示す。霧62は、その周囲を囲む噴霧出口部3によって噴霧方向が規制される。
図1では、霧62の噴霧方向軸に沿って噴霧出口3が形成されている。さらに、
図1(c)および(d)に示すように、この噴霧出口部3の先端面に、霧62が広角に噴霧する方向に沿ってスリット部31が形成されている。また、スリット部31は、液体霧化装置を噴霧出口部3に向かって正面視して、第1気体噴射部1と第2気体噴射部2のそれぞれの気体噴射方向軸に対し直交する方向に形成されていることが好ましい。
【0008】
以上の構成によって、液体流出部から流出した液体流を、2つの気体噴射部から噴射した気体流同士で形成された衝突部または衝突壁に衝突させて霧を生成でき、さらに、噴霧出口部の先端(気液混合エリア120の出口側又は衝突部位置から噴霧出口部先端面まで)にスリット部を設けたことで、より微細化した霧を生成させることができる。噴霧出口部は、気体オリフィスを形成するための部材と一体に形成されていてもよく、別部材で形成していてもよい。
【0009】
本発明の液体霧化装置によれば、気体流同士の衝突部または衝突壁と、液体流とを衝突させて衝突粉砕することで、低圧力(低気体圧、低液体圧)、低流量(低気体流量、低液体流量)、低エネルギーで効率的に霧化することができる。また、従来の二流体ノズルに比べ、低気液体積比(または低気液比)で霧化することができる。また、従来の二流体ノズルに比べ、本発明の液体霧化装置は低騒音である。また、本発明の液体霧化装置の構造をシンプルにできる。
【0010】
気体噴射部から噴射される気体(気体流)の圧力、流量は、特に制限されないが、本発明の霧化原理によって、低気体圧力、低気体流量で、液体を好適に霧化できる。また、衝突部および衝突壁を構成することになる気体同士の圧力は、同じまたは略同じに設定することが好ましく、衝突部および衝突壁を構成することになる気体流同士の流量も、同じまたは略同じに設定することが好ましい。また、気体噴射部から噴射される気体流の断面形状は、特に制限されず、例えば、円状、楕円状、矩形状、多角形状が挙げられる。また、衝突部および衝突壁を構成する気体流同士の断面形状は、同一または略同一であることが好ましい。衝突部が変形、サイズ縮小等することを抑制することで、一定の形状、一定サイズの衝突部を維持して、安定した噴霧量で粒子径変動の少ない霧化体を生成するのに好ましい。
【0011】
液体流出部から流出される液体(液体流)の圧力、流量は、特に制限されないが、本発明の霧化原理によって、低圧力、低流量の液体を好適に霧化できる。また、液体流出部の圧力は、一般的は水道配管の水圧でもよく、液体流出部は、液体を自然落下させる装置であってもよい。本発明において、「液体流出部から流出した液体」には、自然落下速度で落下する液体も含まれる。
【0012】
流出された液体と、気体流同士の衝突部または衝突壁とを衝突させる場合に、衝突部または衝突壁より液体流の衝突断面積が小さいことが好ましい。気体流の衝突部または衝突壁よりも、液体流の衝突断面が大きいと、液体の一部が衝突部または衝突壁に衝突せずに霧化されないため好ましくない。なお、実施形態の一例として、液体の一部を霧化させたい場合には、液体の断面を気体の衝突部または衝突壁より大きくしてもよく、また、流出された液体の一部が衝突部または衝突壁に衝突するように液体流出部と気体噴射部の相対的配置を設定してもよい。
【0013】
気体噴射部のオリフィス径(断面円の直径d1)が、液体流出部のオリフィス径(断面円の直径d3)の1倍から1.5倍であることが好ましい。また、第1、第2気体噴射部の断面が矩形である場合、流体流と衝突する面側の第1気体噴射部の幅(d1)および第2気体噴射部の幅(d2)が、液体流出部の出口オリフィス直径(d3)の1倍〜1.5倍であることが好ましい。これによって、均等な粒子径と拡散分布が得られる。気体噴射部の幅d1が、液体流出部の出口オリフィス直径d3より過大であれば、噴霧パターン中央部の微粒化が低下し、粗粒子が発生しやすい。一方、気体噴射部の幅d1が、液体流出部の出口オリフィス直径d3より過小であれば、噴霧パターンの長径方向の両サイドに粗粒子が多く発生しやすい。
【0014】
液体流出部と気体噴射部の相対的配置例を
図3A〜
図3Fを参照して説明する。この相対的配置によって、気液衝突位置が規定される。
図3Aの配置は、第1、第2気体噴射部1、2が対向配置され、液体流出部6のノズル先端が第1、第2気体噴射部1,2の両ノズル先端外側面部分に接触している。
図3Bの配置は、第1、第2気体噴射部1、2が対向配置され、第1、第2気体噴射部1,2の両ノズル先端と液体流出部6のノズル先端部とが接触している。
図3Bの配置は
図3Aの配置よりも、流出される液体流量が多く、かつ逆流も小さい傾向となる。
図3Cの配置は、第1、第2気体噴射部1、2の両ノズル先端間に、液体流出部6のノズルが入り込んだ配置である。
図3Dの配置は、
図3Bの配置と比較して、第1、第2気体噴射部1,2の両ノズルの間隔が、
図3Bのそれよりも大きい配置である。
図3Eの配置は、
図3Bの配置と比較して、液体流出部6が衝突壁から遠ざかった配置である。また、液体流出部は1つを例示しているが、液体流出部は2つ以上であってもよく、
図3Fでは、液体流出部は2つ配置されている。なお、
図2、3は、噴霧出口部3を省略して示している。
【0015】
上記生成される霧は、気体流同士の衝突部から排出される排出気体流とともに噴霧される。この排出気体流によって噴霧パターンが形成される。噴霧パターンとして、例えば、2つの噴射された気体流同士の衝突で形成された衝突部と液体とが衝突した場合には、液体流出方向軸を中心にして幅広の扇状に形成され、その断面形状は楕円状または長円状(
図2A、
図2B参照)となる。
図2Aにおいて、霧62は、第1気体噴射部1と第2気体噴射部2とのそれぞれの気体噴射方向軸に対し直交する方向に扇状に広がる傾向にある。気体流同士が衝突した衝突面に平行に(衝突面が拡張する方向に)、衝突した(衝突後の)気体が拡散しており、この方向に霧62が扇状に広がって噴出されることになる。本発明において、霧62の広角噴霧角γは、例えば、100°〜150°の広角噴霧角も可能となる。
【0016】
上記発明の一実施形態として、前記第1気体噴射部の噴射方向軸と前記第2気体噴射部の噴射方向軸との交差角度が90°〜180°の範囲であることが好ましい。第1気体噴射部1および第2気体噴射部2のそれぞれの噴射方向軸が交差する角度範囲は、第1気体噴射部1から噴射された気体と第2気体噴射部2から噴射された気体の衝突角に相当する。例えば、「衝突角α」は、90°〜220°であり、好ましくは90°〜180°であり、より好ましくは110°〜180°である。
図4に衝突角αを示す。180°より小さい衝突角を形成している衝突部に対して液体を噴射させた場合に、この衝突角の角度が小さいほど、従来の二流体ノズルの原理(気体と液体とを同一噴射方向で噴射させて気液の随伴流によるせん断効果で液体を微細化する)に類似するため、本発明の上記微細化原理の効果が低くなる傾向になるが、一方で、衝突角の角度が小さいほど、噴射された液体の逆流が抑えられる傾向である。また、180°より大きい衝突角を形成している衝突部に対して液体を噴射させた場合に、衝突角の角度が大きいほど、噴射された気体および衝突して広がった気体が、噴射された液体を押し戻すように作用して液体を逆流させてしまう傾向である。なお、
図4において、液体流出部6のノズル先端が、第1、第2気体噴射部1,2の両ノズル先端と接触しているが、これに制限されず、液体流出部6のノズル先端位置が、第1、第2気体噴射部1,2の両ノズル間に配置させていてもよく、
図4の配置よりも第1、第2気体噴射部1,2から距離を置いて配置されていてもよい。
【0017】
上記発明の一実施形態として、第1気体噴射部の噴射方向と第2気体噴射部の噴射方向とが対向し、第1気体噴射部の噴射方向軸と第2気体噴射部の噴射方向軸とが一致している形態がある。これは、第1気体噴射部から噴射された気体と第2気体噴射部から噴射された気体の衝突角αが180°であって、噴射方向軸が一致していることを意味する。
【0018】
上記発明の一実施形態として、前記液体流出部は、前記衝突部に対して、前記液体の流出方向軸が直交するように液体を流出することが好ましい。
図1(b)は、衝突部100および衝突壁101に対して液体の噴射方向軸が直交する例を示している。他の実施形態例として、
図5に示すように、衝突部100の衝突面100aに対して液体の流出方向軸が傾いている例を示す。この傾き角βとしては、0°(直交位置)から±80°の範囲、好ましくは0°から±45°、より好ましくは0°から±30°、さらに好ましくは0°から±15°の範囲である。傾き角βが小さくなるほど、霧の生成効率(霧化効率)が高い傾向となる。
【0019】
上記発明の一実施形態として、前記噴霧出口部に、前記液体
の流出方向軸に対し90°以上傾斜しており、かつ前記霧が広角に噴霧する方向に沿って開放部が形成されていることが好ましい。
図1(e)で示すように、噴霧した霧62が扇状に広がる方向に、開放部32を設けることで、霧62を開放部32方向に逃がして、噴霧出口部3の壁面で衝突する程度を緩和させることができ、霧32が壁面に衝突することで発生するしずくを効果的に抑制することができる。開放部32を、液体オリフィスの出口近傍から形成すると、霧62が壁面に衝突することをさらに無くせるため好ましい。開放部32の幅寸法は、発生する霧62の断面幅(短い方の幅)に応じて設定(同幅または同幅より大きい幅に)することが好ましい。
【0020】
上記発明の一実施形態として、前記開放部に、前記スリット部が形成されていることが好ましい。
【0021】
上記発明の一実施形態として、前記液体流が連続流、間欠流またはインパルス流の液体であることが好ましい。連続流は、例えば、柱状の液体流である。間欠流は、例えば、所定間隔で噴射する液体流である。インパルス流は、例えば、所定のタイミングで瞬間的に噴射する液体流である。液体供給装置等で、液体の噴射方法を自在に制御することで、霧化タイミング、生成される霧の噴霧量を自在に制御することができる。
【0022】
上記発明の一実施形態として、前記液体が微細化された液体である。液体流出部から噴射される液体として、微細化された液微粒子を用いることができ、液微粒子としては、例えば、二流体ノズル装置、超音波装置、超高圧噴霧装置、蒸発式噴霧装置等で微細化された液微粒子が挙げられる。
【0023】
上記気体としては、特に制限されないが、例えば、空気、清浄空気(クリーンエア)、窒素、不活性ガス、燃料混合エア、酸素等が挙げられ、使用目的に応じて適宜設定可能である。
【0024】
上記液体としては、特に制限されないが、例えば、水、イオン化水、化粧水等の化粧薬液、医薬液、殺菌液、除菌液等の薬液、塗料、燃料油、コーティング剤、溶剤、樹脂等が挙げられる。