特許第5672617号(P5672617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5672617
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】身体乾燥機能付き介助装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 5/00 20060101AFI20150129BHJP
   A61H 35/00 20060101ALI20150129BHJP
   A61H 39/00 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   A61G5/00 502
   A61H35/00 W
   A61H35/00 F
   A61G5/00 508
   A61H39/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-130395(P2012-130395)
(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公開番号】特開2013-252336(P2013-252336A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2014年6月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501376958
【氏名又は名称】松宝産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝己
【審査官】 岩田 洋一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−024730(JP,A)
【文献】 特開2009−090071(JP,A)
【文献】 実開平01−170216(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00
A61H 35/00
A61H 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に両足を乗せる足台を備え、外周を円環状に形成した腰掛け用座面に開口部を有する座席と、当該座席の内側に身体が乾燥できる熱源付きの乾燥風起成部を配した介助装置において、該乾燥風起成部から送風される乾燥風を、座面側に設けられて陰部及びその周辺に乾燥風を当てる為の第一開口部と、足台側に設けられて該足台に載せた両足先の足指の間及びその周辺に乾燥風を当てる為の第二開口部と、に誘導するように構成すると共に、前記腰掛け用座面を、水平位置に伏して腰掛け姿勢を維持する水平状態位置と、座面を前低後高状に斜め起立させて起立姿勢を維持する斜め状態位置とに起伏移動固定自在に構成し、前記腰掛け用座面に起立姿勢を補助する手すり部材を設けると共に、
腰掛け用座面の前面に尻部が陥入できる凹みを設け、該座面を前低後高状に斜め起立させた時に、凹みに尻部を陥入させて起立姿勢を支えるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の身体乾燥機能付き介助装置。
【請求項2】
腰掛け用座面に、温熱効果のあるブラックシリやトルマリンの素材を使用したことを特徴とする請求項1に記載の身体乾燥機能付き介助装置。
【請求項3】
腰掛け用座面の開口部の下部に、陰部及びその周辺に向けて皮膚細胞に有効な波長域のLED光を照射するLED光照射装置を設置した事を特徴とする請求項1または2に記載の身体乾燥機能付装置。
【請求項4】
足台に足指の間を広げて開放する足指開放誘導部材を設けて、足指の間の乾燥を促進するように構成した事を特徴とする請求項1に記載の身体乾燥機能付き介助装置。
【請求項5】
足台の足裏が乗る部分に、足つぼに相当する箇所に孔を穿設し、該孔を介して足つぼに向かって乾燥風を吹き出すように構成した事を特徴とする請求項1またはに記載の身体乾燥機能付き介助装置。
【請求項6】
足つぼに相当する箇所の孔に、足つぼに向かってLED光を照射するLED光照射部を設けた事を特徴とする請求項に記載の身体乾燥機能付き介助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者のうち下肢の筋力が弱った要介護・要支援の高齢者が入浴後に、身体を乾燥させる動作と、下着やズボンに着替える時の動作を介助する介護支援機器として使用することのできる、立ち上がり機能付きで下腹部や臀部周辺、足指間の乾燥を行なうのに便利である椅子型の身体乾燥機能付き介助装置に関するものである。そして、浴室から脱衣室の椅子に腰かけて介助装置の温風により身体(特に局部と足の指先)の乾燥をさせることを目的としたものである。更に、介助装置内のヒーターからの温風を脱衣室内にも送風し、浴室と脱衣室の温度差を解消し、入浴時に入浴者の脳卒中等の身体発作を起こす事を予防することを目的とした介護支援機器の分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、入浴に用いる介助機器は浴室内での移動や移乗(手すり・バスグリップ)の介助を目的とするものや、入浴中の安定を図る入浴介助椅子(シャワーチェアー・シャワーキャリー)等があった。そして、従来施設での入浴介助は、浴室から上がる時には、脱衣室に椅子を置きバスタオルを引いて、流れ作業で身体を拭いていただけのものが一般的であり、乾燥しにくい下腹部や臀部周辺、足指間の乾燥はなおざりにされている傾向にあった。また、被介護者の中には自分の下腹部や臀部周辺を、介護者である他人に拭いてもらうというのには非常に抵抗を持つ人もいて乾燥が充分にできないという問題もあった。今回の入浴後に用いられる立ち上がり機能付きで下腹部や臀部周辺、足指間の乾燥をする椅子型の身体乾燥器機能付の介助装置は従来からの介助椅子には無かったもので、本発明者は入浴後の身体乾燥(特に局部・足先の指の隙間等)と更衣の時の立ち上がり動作をサポートする点に着目し、細かな配慮をした新しい介護ニーズに対応するべく創案された発明である。これに類似した文献としては例えば、特許文献1の「着席立脚幇助椅子」や特許文献2の「熱気浴利用者用腰掛台」が存在していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−224558号公報
【特許文献2】特開2005−616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に見られるものは、単に部屋の中での起上りの時に椅子が
上昇し、立ち上がりの動作を介助するだけのものであった。その為、入浴が終わって更衣する時には介護職員の首や上半身などの身体や福祉用具を支えとし、不安定な状態で体を拭いたり、不安定な状態でのズボンの脱ぎ着作業が行われていた。
次の特許文献2に見られるものは、使用者が椅子型の腰掛けに座って身体の各所に座席下からの送風を受けている点で本発明の形態に似ているものの、この特許文献2のものは温浴用としての全身サウナを目的とするもので、身体乾燥を目的とする本発明とは解決課題が異なるものである。
今回の立ち上がり機能付きで下腹部や臀部周辺、足指間の乾燥をさせる椅子型の身体乾燥機能付き介助装置は、従来では装備されていなかった利用者の身体の自動乾燥の機能が設けてあり、介護者が従来は介護しづらい下腹部や臀部周辺部分の乾燥(局部乾燥や足の指の隙間の乾燥)の介護支援を楽に行う事が出来る様になった。また、この椅子型の身体乾燥機能付き介助装置を使用すると、椅子に座りながら自動的に身体乾燥が出来、椅子から立ち上りする時にも、立ち上りのアシスト機能があり、介護者が更衣の介助をする時の精神的負担感(転倒事故発生のリスク)の軽減をはかることができる。
【0005】
また、介助装置に装備される身体の自動乾燥の機能を活用して暖房機能を強化し、浴室と脱衣室の温度差を解消して入浴者の脳血管の急速な伸縮を防止、入浴中の脳梗塞等の発作の防止を図る事に寄与できる。さらに、座椅子の下に身体の細胞に有効な波長のLED光等を直接照射させる仕組みを作り、身体乾燥を行う時に、身体に良い波長のLED光の照射を股間部分(特に粘膜)に10〜20分程度照射し、健康の増進を図る事も目的としている。
【0006】
身体に良い波長のLED光の照射としては、各種機関により多くの研究が進められているが、例えば、ウィスコンシン医科大学によるLED光による治癒効果の検証によると、「負傷兵に関する結果」として、米海軍の負傷兵に対するものとしては、訓練中の負傷兵にLEDを使った場合に、回復率が40%以上も向上、原子力潜水艦『ソルトレークシティー』では、ケガ人に携帯型のLED照射器を使ったところ、全快までの時間が半分に短縮とのこと、また、「筋肉細胞への影響」として、680・730・880ナノメートルの波長を持つLED光を一度照射しただけで、筋肉細胞におけるDNA合成が5倍になると言う実験データ、及び、「糖尿病による神経障害への影響」として、糖尿病における神経障害を持つ200人余りの患者にLED光を40分間を10回ほど続けたところ、患者の95%が足にいくらか感覚が戻ったと言い3分の2近くの神経障害が完全に正常に戻ったと言う実験データが紹介されてあり。(インターネット記事「毛髪培養新聞 毛髪再生医療の現在 LED光の効果に関する研究」より、抜粋掲載)これらより、LED光の照射効果が伺える。
【0007】
介助椅子のカバーは、交換可能なタイプとして、ブラックシリカルやトルマリン等の素材を使用するようにすると、人体に有効な温熱効果が発揮されて健康効果に寄与させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題解決の為に、請求項1の発明は、下部に両足を乗せる足台を備え、外周を円環状に形成した腰掛け用座面に開口部を有する座席と、当該座席の内側に身体が乾燥できる熱源付きの乾燥風起成部を配した介助装置において、該乾燥風起成部から送風される乾燥風を、座面側に設けられて局部及びその周辺に乾燥風を当てる為の第一開口部と、足台側に設けられて該足台に載せた両足先の足指の間及びその周辺に乾燥風を当てる為の第二開口部と、に誘導するように構成すると共に、前記腰掛け用座面を、水平位置に伏して腰掛け姿勢を維持する水平状態位置と、座面を前低後高状に斜め起立させて起立姿勢を維持する斜め状態位置とに起伏移動固定自在に構成し、前記腰掛け用座面に起立姿勢を補助する手すり部材を設け設けると共に、腰掛け用座面の前面に尻部が陥入できる凹みを設け、該座面を前低後高状に斜め起立させた時に、凹みに尻部を陥入させて起立姿勢を支えるようにしたことを特徴とする身体乾燥機能付き介助装置である。
【0009】
これにより、外周をO型の円環状に座席椅子に身体が乾燥できる乾燥風起成部としての熱源(ヒーター)を取り付け、利用者の尻の部分と足台の部分に温風が流通する様にファンを取り付けた。ファンを回転させる事により、局部の乾燥と足の指先などの効率的な乾燥を可能とした。また、温風を送風する事によって脱衣室の暖房効果を促進する事になる。これは温かい所(浴室)から寒い所(脱衣室)に移動した時の急激な血圧の変動を防ぐ事になり、入浴時の脳梗塞や心筋梗塞の発作の発生を防止できる。
さらに、座面を前低後高状に斜め起立させる起き上がり補助機能にて被介護者の起立姿勢を維持することが容易になるので、脱衣室で自力で起き上り出来ない人や、入浴後の一時的な体力低下で起き上りが困難な人の起き上り動作をサポートすることができ、椅子に起き上り専用の手すりを設けてあり、また、椅子にモーターを取り付けて、座面の起伏機構を用いる事により、脱衣室での立ち上がり動作をサポートするアシスト機能を設けた。
これらの相乗的な作用として、身体の拭き仕上げ作業や衣服の装着作業の介護支援が容易にできることになる。
【0010】
しかも、腰掛け用座面の前面に尻部が陥入できる凹みを設け、該座面を前低後高状に斜め起立させた時に、凹みに尻部を陥入させて起立姿勢を支えるようにしたことを特徴とするもので、座面を前低後高状に斜め起立させた時に、座位を支える機能が設けられていることになるので被介護者の起立姿勢を維持することが更に容易になる。したがって、身体の拭き仕上げ作業や衣服の装着作業の介護支援が更に容易にできることになる。
【0011】
請求項2の発明は、腰掛け用座面に、温熱効果のあるブラックシリやトルマリンの素材を使用したことを特徴とし、O型座席シートカバーのブラックシリやトルマリンの素材の持つ温熱効果により、身体の新陳代謝を促進する。
【0012】
請求項3の発明は、腰掛け用座面の開口部の下部に、陰部及びその周辺に向けて皮膚細胞に有効な波長域のLED光を照射するLED光照射装置を設置した事を特徴とし、これにより、腰掛け用座面を構成するO型シートの下部より、細胞に有効な波長を持つLED光を照射し、直接粘膜(膣・肛門等)に照射し筋肉細胞のDNA合成を活性化し健康の増進を図る。
【0013】
請求項4の発明は、足台に足指の間を広げて開放する足指開放誘導部材を設けて、足指の間の乾燥を促進するように構成してあるので、足指間の乾燥が促進される。第六に、足台の足裏が乗る部分に、足つぼに相当する箇所に孔を穿設し、該孔を介して足つぼに向かって乾燥風を吹き出すように構成すると、足つぼ部分に乾燥風が温風で供給されて足つぼを刺激して身体の癒しができる。
【0014】
請求項5の発明は、足台の足裏が乗る部分に、足つぼに相当する箇所に孔を穿設し、該孔を介して足つぼに向かって乾燥風を吹き出すように構成した事を特徴とするものである。
請求項6の発明は、足つぼに相当する箇所の孔に、足つぼに向かってLED光を照射するLED光照射部を設けた事を特徴とすると、足つぼに向かって温風と共に、LED光を照射し、糖尿病などで神経障害にかかっている方の下肢の末梢神経を刺激する事により神経障害の症状を改善と悪化防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
この様に本発明の特許請求の範囲の請求項1の構成により、
・脱衣室での身体乾燥をスムーズに行う事が出来る様になる。
・不安定な姿勢でのズボンの脱ぎ着を防止できる事と、無理なく立ち上り動作を行える為、入浴時脱衣所での転倒事故を防止する事が出来る。
・身体乾燥機能付き介助椅子に内蔵された温熱ヒーターにより、浴室と脱衣室の急激な温度変化を防ぎ、入浴中の脳梗塞名等の入浴時の発作事故が起こる事を防止する事が出来る。
【0016】
しかも請求項1の構成により、被介護者の座位を支える機能が設けられて被介護者の起立姿勢を維持することが更に容易になる。したがって、身体の拭き仕上げ作業や衣服の装着作業の介護支援が更に容易にできる。
請求項の構成により、O型座席シートカバーのブラックシリやトルマリンの素材の持つ温熱効果により、身体の新陳代謝を促進して乾燥が効率的にできるようにできる。
請求項の構成により、身体乾燥機能付き健康椅子の、O型座席下部に設置されたLED光照射装置により股間の粘膜部分にLED光を照射し体の筋肉を活性化させ、健康の増進を図る。
【0017】
請求項と請求項の構成により、足指間の乾燥を促進できて、足つぼ部分に乾燥風が温風で供給されて足つぼを刺激して身体の癒しができる。
請求項の構成により、LED光を照射する事により下肢の末梢神経を刺激し、糖尿病による下肢の神経障害の症状の改善や悪化を防止する事が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】身体乾燥機能付き介助装置の要部を透視して示す全体斜視図
図2】介助装置の要部を断面して示す全体側面図
図3】介助装置の要部を透視して示す全体平面図
図4】座面の立ち上り開始を示す作用側面図
図5】座面の立ち上り終了を示す作用側面図
図6】介助装置の温風の経路を説明する概略側面図
図7】介助装置の温風経路を示す要部の外観斜視図
図8】足台を示す要部平面図
図9】足台を示す要部側面の拡大断面図
図10】足台の指先載置部を示す要部の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施例に関する図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1に本発明に係る身体乾燥機能付き介助装置の全体斜視図を示す。この身体乾燥機能付き介助装置1は、下部に使用者の両足を乗せる左右一対の足台2,2を備え、外周を円環状のO型に形成した腰掛け用座面3aに開口部3bを有する座席3と、当該座席3の下方内側に使用者の濡れ身体が乾燥できる熱源付きの乾燥風起成部4を配した構成にされている。そして、前記乾燥風起成部4から送風される乾燥風5を、座面3a側に設けられて使用者の局部6及びその周辺に乾燥風5を当てる為の第一開口部7と、足台2側に設けられて該足台2に載せた使用者の両足F先の足指の間S及びその周辺に乾燥風5を当てる為の第二開口部8と、に誘導するように構成されている。
【0020】
前記の腰掛け用座席3は座面3aと共に、水平位置に伏して腰掛け姿勢を維持する水平状態位置Lと、座面3aを前低後高状に斜め起立させて起立姿勢を維持する斜め状態位置Kとに起伏移動固定自在に構成され、水平状態位置Lで利用者の肛門を開き、局部が乾燥出来るような構造になっている。そして、斜め状態位置Kに座面3aの前部が前傾した際、利用者の尻部が陥入してホールドできるように凹み3cを設け、この凹み3cに利用者の尻部を陥入させて起立姿勢を支えるようにできる。
この腰掛け用座席3の座面3aに着脱自在なカバーを設ける場合は、このカバーにブラックシリやトルマリン等の素材を使用し温熱効果があるものを使用しておくと、座面に座った利用者の尻部を保温し身体の新陳代謝を促進する利点がある。
【0021】
前記腰掛け用座席3に起立姿勢を補助する手すり部材3dが設けてある。該手すり部材3dは前方に向かって膨出して弓状に湾曲したハンドル形態にされて、座席3に付けられており、座席3の水平状態位置Lでの着座時にはハンドルの中央部分を握り、あるいは斜め状態位置Kでの立位時に、座席使用者がハンドルの先端部分を自由に握れるように、握った手の移動もスムーズにできるように丸いカーブした形状に構成されている。
前記腰掛け用座席3の水平状態位置Lと、斜め状態位置Kとに起伏移動固定自在にする構成は、座席の下部に左右一対の湾曲アーム9,9がフレーム10下部に固定された鞘状のアームケース11,11に出没可能に収容されており、該湾曲アーム9,9の前部に内歯歯車形態に湾曲したラック9a,9aが刻設されており、このラック9a,9aに外歯歯車状のピニオンギヤ12が噛み合い、該ピニオンギヤ12をチェンまたはベルトなどの伝導体13を介して駆動モーター14にて駆動するようにされている。
【0022】
ピニオンギヤ12はフレーム10に取り付けられた左右一対のブラケット10a,10aに回転自在に横架された回転軸12aの一端に取り付けられており、該回転軸12aの他端に円形ロール12bが取り付けられている。円形ロール12bが接する他方の湾曲アーム9にはラックが刻設されていなくても良く、他方の湾曲アーム9は円形ロール12bに接しながら、一方のラック付き湾曲アーム9の駆動に連れて上下する。これらの駆動モーター14とピニオンギヤ12とアームケース11はフレーム10側に固設されており、駆動モーターを載置するフレームステージ板10bの下部に電源・制御ボックスVSが置かれており、操作スイッチ(図示せず)の操作により駆動モーター14を正逆駆動させ、この駆動モーターの正逆駆動を受けて、座席3と左右の湾曲アーム9,9で正面視にて鳥居状に構成される湾曲アーム9,9が上下に出没して座席3を起伏移動固定自在にするものである。
【0023】
該座席3の下方内側に使用者の濡れた身体が乾燥できる熱源付きの乾燥風起成部4が配設されているが、該乾燥風起成部4は、肛門又は局部に温風を噴出し、濡れた尻部周辺を乾燥させるための送風ファン15と温風発生用ヒーター16、前記乾燥風起成部4から送風される乾燥風5を、座面3a側に設けられて使用者の陰部6及びその周辺に乾燥風5を当てる為の第一開口部7と、足台2側に設けられて該足台2に載せた使用者の両足F先の足指の間S及びその周辺に乾燥風5を当てる為の第二開口部8と、に誘導する送風を案内する送風ダクト7a,8a、送風途中で風力を高める加圧タンク17などで構成されている。該加圧タンク17は送風ファン15と温風発生用ヒーター16を経由して送られた温風(乾燥風)5を一定の圧力に整え、送風ダクト7a,8aに一定の安定した風量を与えるものである。
【0024】
そして、先ず送風ファン15から送られた風は加圧タンク17内に入り、ファンの起動と同時に加圧タンク17内のヒーター16で暖められ、膨張した空気が、加圧タンク17内よりダクト内に導入される。
送風ファン15から送風された乾燥風はダクト内に入り込みダクト内の壁に当たり上方向に第一開口部7に向かう。また、第一開口部7に分岐させて送風ファン15によって乾燥風5が送り込まれた場合、局部を専用に乾燥させるように乾燥風バルブ7bと局部用吹き出し口7cが設置してあり、乾燥風バルブ7bを開放させると局部用吹き出し口7cから温風が吹き出して局部の乾燥を促進する。
【0025】
さらに、座席3の下には、送風ダクト7aの上縁に設けた鍔状のフランジ部18に複数個のLEDランプ19が配置されていて、身体に有益な波長の光線(例えば、前記段落番号「0006」欄で説明される680・730・880ナノメートルの波長の光線)を肛門や局部に照射する事が出来る。
送風ダクト7aの内部には温風が通過可能な金網20が横張りされてあり、例えばこの金網20の上に、保湿用や肌面に有益なミストを上方に立ち昇らせることが可能なミスト発生装置21を着脱可能に載置することができる。ミスト発生装置21を載置した時には、陰部乾燥後に、タイマーの設定により保湿用や肌面に有益なミストがミスト発生装置21から局部に適量噴霧されて局部を湿潤させて患部を保全治癒する仕組みとなっている。
【0026】
図8図10に詳細が示されるように、前記熱源付きの乾燥風起成部4からの温風は、左右に分岐された送風ダクト8a,8aにより、足台(フットベース)2,2内部に導入され足乾燥器としても機能する。
すなわち、足台2,2の内部は乾燥風を受ける空洞2a,2aに形成されており、足台2,2の表面側に足型22が陥没加工されていて、各足指の間Sに相当する位置に足指開放誘導部材としての仕切り23が設けてある。したがって、足型加工部分に使用者の足Fを置くと、該仕切り23により、自然に各足指の間Sが開く形状になっている。また、各仕切り23の下部には各足指の間Sに乾燥風を流す噴出口24が穿孔されており、乾燥時には各足指の間から熱風が吹きだす構造である。また、足型22の表面全体に亘り、各箇所に孔25が開けてあり、乾燥風が孔25から噴出し、足裏全体を乾燥させることもできる。
【0027】
さらに、足台(フットベース)2,2のベース表面に足ツボを刺激する複数の突起26が設けてある。なお、足台(フットベース)2,2の足に接触する側(足型22部分)は透明なアクリル板製で構成されてあり、足台(フットベース)2,2の空洞2a,2a底面にはLED27が配置されていて、透明なアクリル板又は足型22の表面全体に亘り設けた各箇所の孔25を介して下肢の末梢神経に有効な波長の光(例えば、前記段落番号「0006」欄で説明される680・730・880ナノメートルの波長の光)を、足裏の足つぼ又は足つぼの周辺に照射する事が出来る。
【実施例】
【0028】
1)入浴介助時の使用実施例
・この椅子型の身体乾燥機能付き介助装置1は、家庭や介護施設などに好適な介護機器であり、介護者が被介護者(利用者)の入浴の身体乾燥・更衣介助(下着の着脱・ズボンの上げ降ろし)の場面・介助装置1からの立ち上がりの時の補助機能として使用する。
・介護者は、浴室から利用者の手を取り脱衣室まで誘導し、身体乾燥機能付き介助装置1の座面3aに腰かけさせるので、脱衣室での身体乾燥をスムーズに行う事が出来る様になる。
【0029】
・事前に身体乾燥機能付き介助装置1に内蔵された熱源付きの乾燥風起成部4の温風ヒーターがかかっており、介助装置1からの温風吹き出しにより、脱衣室は浴室と温度差が余り生じない状態となる。したがって、浴室と脱衣室の急激な温度変化を防ぎ、入浴中の脳梗塞名等の入浴時の発作事故が起こる事を防止する事が出来る。
・入浴が終わってから、足台2,2とO字型の椅子座面3aに座り、利用者の身体を乾燥させる。足台2,2の孔にはLED27からのLED光を照射させ、足つぼ又は足つぼ周辺にある下肢の末梢神経を刺激させる。
・O字型の椅子座面3aに腰かけ、肛門・局部の粘膜にLED19からのLED光を照射し、温風を送風する。
【0030】
・足台2,2にある足、股間部分が乾燥し体全体の水分の拭き取りが終わったら、介護者が利用者の下着の着脱・ズボンの上げ降ろしを行う。そのために介助装置1の椅子座面3aの立ち上がり機能を使用する。シャツは介助椅子に座っている時に着替える。座面の立ち上りは、身体乾燥終了後に、モーターを起動して湾曲アーム9を上昇させ座板を前傾させる。そして、湾曲アーム9のラック9aが上昇限界で停止した状態で、立位状態になる。この時に、尻が若干前側にすべり、座板前の凹み3cに落ち着く。
【0031】
・座椅子の手摺のグリップを握り、立ち上がる。
・中腰の姿勢でグリップを握ったまま、パンツとズボンをはく。
・不安定な姿勢でのズボンの脱ぎ着を防止できる事と、無理なく立ち上り動作を行える為、入浴時脱衣所での転倒事故を防止する事が出来る。
・下着と上着を着終わった段階で、職員の介助で歩行器若しくは老人車に移り
移動する。
・機構内部での電熱器(ヒーター)で加熱し、乾燥風は52度以上の温度とし、滅菌状態にします。ダクトから温風を送風する事により、股間の局部や足部を効率的に乾燥させることができる。
【0032】
このように、本発明の椅子型の身体乾燥機能付き介助装置によれば、外周をO型の円環状に座席椅子に身体が乾燥できる乾燥風起成部としての熱源(ヒーター)を取り付け、尻の部分と足台の部分に温風が流通する様に送風ファンが取り付けてあり、送風ファンを回転させる事により、局部の乾燥と足の指先などの効率的な乾燥を可能にできる。また、温風を送風する事によって脱衣室の暖房効果を促進する事になる。これは温かい所(浴室)から寒い所(脱衣室)に移動した時の急激な血圧の変動を防ぐ事になり、入浴時の脳梗塞や心筋梗塞の発作の発生を防止できる。
【0033】
さらに、座面を前低後高状に斜め起立させる起き上がり補助機能にて被介護者の起立姿勢を維持することが容易になるので、脱衣室で自力で起き上り出来ない人や、入浴後の一時的な体力低下で起き上りが困難な人の起き上り動作をサポートすることができ、椅子に起き上り専用の手すりを設けてあり、また、椅子にモーターを取り付けて、座面の起伏機構を用いる事により、脱衣室での立ち上がり動作をサポートするアシスト機能を設けた。これらの相乗的な作用として、介護者の労力負担を少なくして被介護者の身体の拭き仕上げ作業や衣服の装着作業の介護支援が容易にできることになる。
【0034】
腰掛け用座面の前面に尻部が陥入できる凹みを設け、該座面を前低後高状に斜め起立させた時に、凹みに尻部を陥入させて起立姿勢を支えるようにできるもので、座面を前低後高状に斜め起立させた時に、座位を支える機能が設けられていることになり、被介護者の起立姿勢を維持することが更に容易になる。
したがって、介護者の労力負担が更に軽減されて身体の拭き仕上げ作業や衣服の装着作業の介護支援が更に容易にできることになる。
【0035】
腰掛け用座面の開口部の下部に、陰部及びその周辺に向けて皮膚細胞に有効な波長域のLED光を照射するLED光照射装置が設置されており、これにより、腰掛け用座面を構成するO型シートの下部より、細胞に有効な波長を持つLED光を照射して、直接粘膜(膣・肛門等)に照射し筋肉細胞のDNA合成を活性化し健康の増進を図ることができる。
【0036】
足台に足指の間を広げて開放する足指開放誘導部材(仕切部材)を設けて、足指の間の乾燥を促進するように構成してあり、足指間の乾燥が促進される。そして、足台の足裏が乗る部分に、足つぼに相当する箇所に突起を設けてさらに孔を穿設すると、該突起で足つぼを刺激し、且つ孔を介して足つぼに向かって乾燥風を吹き出すようになり、足つぼ部分に乾燥風が温風で供給されて足つぼを刺激して身体の癒しができる。
【0037】
足つぼに相当する箇所の孔に、足つぼに向かってLED光を照射するLED光照射部を設けた事により、足つぼに向かって温風と共に、LED光を照射し、糖尿病などで神経障害にかかっている方の下肢の末梢神経を刺激する事により神経障害の症状や、糖尿病による下肢の神経障害の症状の改善や悪化を防止する事が期待できる。
【0038】
以上のように本発明によると、従来なかった利用者の身体の自動乾燥の機能があり、介護者が従来は介護しづらい部分下腹部や臀部周辺、足指間の乾燥(陰部乾燥や足の指の隙間の乾燥)の介護を楽に行う事が出来る。また、身体乾燥介助装置の立ち上がり機能を使用すると、椅子に座り、自動的に身体乾燥が出来、椅子から立ち上がりする時にも、立ち上りのアシスト機能があり、介護者が更衣の介助をする時の精神的負担感(転倒事故発生のリスク)の軽減を図ることができる。
【0039】
また、介助装置の暖房機能を強化し、浴室と脱衣室の温度差を解消して脳血管の急速な伸縮を防止、入浴中の脳梗塞等の発作の防止を図る事が出来る。さらに、身体乾燥を行う時に、身体に良い波長のLED光の照射を股間部分(特に粘膜)に10〜20分程度照射し、健康増進を図る事が出来る。介助椅子のカバーは、ブラックシリやトルマリン等の素材を使用し温熱効果があるものを使用し、座椅子の下に身体の細胞に有効な波長のLED光を直接照射させる仕組みを作り、健康の増進を図る事も目的とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
基本的には、利用対象は、社会福祉施設(デイサービスセンター・グループホーム・小規模多機能施設・軽費老人ホーム・有料老人ホーム)を想定しており、入浴時の介護機器として施設で使用される事を想定している。
また、在宅での普及を目指す多面的な戦略として、介護保険が適用される入浴補助具として福祉用具認定機関に認定してもらう事も想定している。介護保険の福祉用具の貸与(レンタル)の対象となった場合、貸与(レンタル)金額の1割負担で使用できるようになる為、広く在宅での利用が見込める。
また、入浴補助具として認定されれば、販売価格が10万円までの金額であれば、定価の1割負担で購入する事が可能になるので、介護保険の給付対象の福祉用具に認定して頂く事が、大きな利用拡大につながることになる。
また、本発明の椅子型の身体乾燥機能付き介助装置は、トイレやポータブルトイレとして活用しても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 身体乾燥機能付き介助装置
2,2 足台
3 腰掛け用座席
3a 腰掛け用座面
3b 開口部
3c 凹み
3d 手すり部材
4 熱源付きの乾燥風起成部
7 第一開口部
8 第二開口部
9 湾曲アーム
9a ラック
12 ピニオンギヤ
14 駆動モーター
15 送風ファン
16 温風発生用ヒーター
17 加圧タンク
19 LEDランプ
22 足型
23 仕切り
24 噴出口
25 孔
26 突起
27 LEDランプ
図1
図2
図3
図4
図5
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図10