【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
なお、実施例中、「(a−1)成分と(a−2)成分を合計した含有量=X」と「(a−3)成分の含有量=Y」、「重量平均分子量(Mw)260以下の成分の含有量」は、市販のゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置により検出された(a−1)成分、(a−2)成分および(a−3)成分、重量平均分子量(Mw)260以下の成分に該当するピークの面積により算出した。「(a−1)成分、(a−2)成分の各含有量」は、市販のガスクロマトグラフ質量分析装置により検出されたマレオピマル酸(無水物含む)のメチル化処理物(「分子量460の成分(重量%)」)およびジヒドロマレオピマル酸(無水物含む)のメチル化処理物(「分子量462の成分(重量%)」)に該当するピーク面積より算出した「分子量460の成分(重量%)」、「分子量462の成分(重量%)」を基に、以下の計算式(1)、(2)により算出した値を意味する。
計算式(1):
(a−1)成分(マレオピマル酸無水物量)(重量%)=分子量460の成分(重量%)×X/(X+Y)
計算式(2):
(a−2)成分(ジヒドロマレオピマル酸無水物量)(重量%)=分子量462の成分(重量%)×X/(X+Y)
【0031】
(「(a−1)成分と(a−2)成分を合計した含有量=X」と「(a−3)成分の含有量=Y」、「重量平均分子量(Mw)260以下の成分の含有量」の定量)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレンの検量線から求めた、ポリスチレン換算値として各成分に該当するピークの面積により算出した。
なお、GPC法は以下の条件で測定した。
分析装置:HLC−8220(東ソー(株)製)
カラム: TSKgel G1000H
XL、TSK−GEL G2000H
XL
展開溶媒:テトラヒドロフラン
注入試料濃度:3mg/ml
流量:0.5ml/分
注入量:80μl
カラム温度:40℃
検出器:RI
【0032】
(メチル化処理物のガスクロマトグラフ質量分析により測定された分子量460と分子量462の成分の含有量の定量)
試料10mgを量り取り、メタノール・ベンゼンを400μlずつ添加し、トリメチルシリルジアゾメタン200μlを加える。試薬滴下後10分間静置し、試薬の黄色が消えていないことを確認後、アセトン1mlを加えて希釈し(濃度0.5%)、分析に供した。
測定装置
GC:Agilent6890(Agilent technologies)
MS:Agilent5973N(Agilent technologies)
カラム:ウルトラアロイ−5(金属カラム:30m x 0.25mmfwai x 0.25maikurom film thickness)
カラム昇温条件:50℃(5min)→10℃/min→300℃(15min)
インレット温度:300℃
キャリアガス:He(1ml/minコンスタントフローモード)
インジェクションモード:スプリットモード(スプリット比:50/1)
イオン化法:EI(70eV)
インターフェース温度:300℃
【0033】
<(A)成分の合成>
実施例1
工程(1):ロジンの精製
未精製のガムロジン(酸価171mgKOH/g、軟化点74℃、ガードナー6、中国産)を減圧蒸留容器に仕込み、窒素シール下に0.4kPaの減圧下で蒸留し、精製ロジン(酸価177mgKOH/g、軟化点80℃、ガードナー3)を得た。ガードナー色調はJIS0071−2により測定した値である。
【0034】
工程(2):ディールス・アルダー反応
次いで、別の減圧蒸留容器に当該精製ロジン700gと無水マレイン酸154gを仕込み、窒素気流下に撹拌しながら220℃で4時間反応させた後、4kPaの減圧下に未反応物を除去することによってロジン誘導体(酸価335mgKOH/g、軟化点121℃、ガードナー8)を得た。
【0035】
工程(3):水素化反応
次いで、当該ロジン誘導体500gと5%パラジウムカーボン(含水率50%)6.0g(触媒量1.2%)を1リットル回転式オートクレーブに仕込み、系内の空気を水素に置換した後、水素にて10MPaに加圧し、220℃まで昇温し、同温度で5時間水素化反応させた。触媒をろ別し、酸価330mgKOH/g、軟化点120℃、ハーゼン色調150、マレオピマル酸無水物(a−1)の含有量が約54重量%、ジヒドロマレオピマル酸無水物(a−2)の含有量が約12重量%、重量平均分子量(Mw)260以下の成分が2.1重量%であるレジスト用アルカリ溶解性向上剤を得た。物性等を表1に示す。
【0036】
実施例2
実施例1の工程(3)において、触媒量を5%としたほかは同様にして、レジスト用アルカリ溶解性向上剤を得た。物性等を表1に示す。
【0037】
比較例1
実施例1の工程(2)で得られたロジン誘導体を、レジスト用アルカリ溶解性向上剤とした。物性等を表1に示す。
【0038】
比較例2
実施例1の工程(2)において精製ロジンの代わりに未精製ロジンを使用したほかは同様にして、工程(2)だけを用いた合成を行い、レジスト用アルカリ溶解性向上剤(酸価320mgKOH/g、軟化点115℃、ガードナー9)を得た。物性等を表1に示す。
【0039】
比較例3
実施例1の工程(2)において精製ロジンの代わりに未精製ロジン、無水マレイン酸154gの代わりにフマル酸185gを使用したほかは同様にして、工程(2)だけを用いた合成を行い、レジスト用アルカリ溶解性向上剤(酸価328mgKOH/g、軟化点150℃、ガードナー6)を得た。物性等を表1に示す。
【0040】
評価例1〜4、比較評価例1〜4
表1に示したレジスト用アルカリ溶解性向上剤を用いて下記方法によりそれぞれ評価を行った。
【0041】
(耐光性試験)
80m/s以下に粉砕したレジスト用アルカリ溶解性向上剤サンプル1.0gを軟膏缶に採取し、市販のUVテスター(製品名「アイ スーパーUVテスター SUV−F11」、岩崎電気社製)でUVランプを照射。照射前後の50%THF溶液のガードナー色調の変化を観察した。UV照射量:45W/m
2。結果を表2に示す。
【0042】
(電気絶縁性試験)
220mlマヨネーズ瓶にレジスト用アルカリ溶解性向上剤サンプル20g、エタノール80gを入れ、振とう攪拌により溶解させた。溶解させた20重量%エタノール溶液をCONDUCTIVITY METER((株)堀場製作所製)により電気伝導度を測定した。結果を表2に示す。
【0043】
(電気絶縁性)
電気絶縁性を上記電気伝導度から評価した。結果を表2に示す。
1:電気伝導度が0.5μS/cm以下
2:電気伝導度が0.5μS/cmを超えて1.0μS/cm以下
3:電気伝導度が1.0μS/cmを超える
【0044】
(溶解性試験)
220mlマヨネーズ瓶に所定の濃度のレジスト用アルカリ溶解性向上剤サンプル、溶媒(キシレン(XY)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(HeDG)、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル(EtOAc))を入れ、室温条件下、振とう攪拌により溶解させた。24時間析出が起こらない最大濃度を決定した。結果を表2に示す。
【0045】
(アルカリ洗浄試験)
レジスト用アルカリ溶解性向上剤サンプル0.25gを、キシレン0.75gへ溶解させワニス1.0gを作製した後、軟膏缶へ均一になるように塗布した。150℃の循風乾燥機に1時間静置して、キシレンを蒸発させることで試料が均一に軟膏缶へ塗工されるので、塗工された試料を所定のアルカリ溶液に10分浸し、アルカリ溶液を除去後、蒸留水にて洗浄した後、試料の残渣の状態を確認した。さらに、試験後の残渣の状態を以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
1:目視でも全く試料の残渣が確認されない。
2:若干であるが試料の残渣が確認できるが局所的である。
3:明らかに試料の残渣が確認できる。
4:大部分が溶け残っている。
【0046】
(アルカリ溶解性試験)
レジスト用アルカリ溶解性向上剤サンプルの酸価と等モルの水酸基価となるように調整された水酸化ナトリウム水溶液にレジスト用アルカリ溶解性向上剤サンプルを20%濃度となるように溶解させる。調製したアルカリ水溶液を塩酸もしくは水酸化ナトリウムを用いてpHを10、9、8になるように調製し、各pHでのロジンの溶解状態を確認した。結果を表3に示す。
【0047】
【表1】
表中、色調H150はハーゼン色調が150であること、G8はガードナー色調が8であることを示す。また、KR−85は超淡色ロジン:荒川化学工業(株)製を表す。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
表中、アルカリ洗浄性は、A:3%水酸化ナトリウム水溶液、B:3%アンモニア水、C:3%炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した結果を示す。