特許第5672642号(P5672642)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5672642シート状部材のファン取付部及びそのファン取付部の作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5672642
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】シート状部材のファン取付部及びそのファン取付部の作製方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/52 20060101AFI20150129BHJP
   A41D 13/002 20060101ALI20150129BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20150129BHJP
   F04D 29/60 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   F04D29/52 E
   A41D13/00 A
   A41D27/00 A
   F04D29/60 F
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-200304(P2013-200304)
(22)【出願日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年10月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592171005
【氏名又は名称】株式会社セフト研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100091269
【弁理士】
【氏名又は名称】半田 昌男
(72)【発明者】
【氏名】市ヶ谷 弘司
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/009108(WO,A1)
【文献】 特開平4−55142(JP,A)
【文献】 特開平6−344846(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0271939(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/52
A41D 13/002
A41D 27/00
F04D 29/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部と前記筒状部の上端から前記筒状部の側面と略垂直な方向に突出するフランジ部とを有するファン本体と、前記筒状部の外側に差し込むことにより前記フランジ部との間でシート状部材を挟み込んだ状態で前記ファン本体に装着されるリング状部材とを備えるファンを前記シート状部材に取り付けるためのファン取付部を作製するファン取付部の作製方法であって、
前記シート状部材における前記ファン取付部の形成位置に裏地をあてがい、前記シート状部材及び前記裏地を、前記筒状部の外縁の形状と同じかそれより僅かに大きな形状を有する第一の枠状線に沿って縫合する第一工程と、
前記第一工程において前記第一の枠状線に沿って縫合することによって形成された縫い目である縫合部の内部に、前記第一の枠状線の形状より小さな開口孔を形成する第二工程と、
前記開口孔と前記縫合部との間にある前記シート状部材及び前記裏地に、前記開口孔から前記縫合部に向かい且つ前記縫合部に達しないように複数の切り込みを入れる第三工程と、
前記筒状部の外縁の形状よりも僅かに大きい形状の内縁を有する伸縮性のないリング状の補強板を、前記シート状部材に接するように且つ前記開口孔を前記補強板の内縁で取り囲むように配置した後、前記裏地の全体を、前記開口孔を介して前記補強板が配置された側に引き出し、前記第三工程で切り込みが入れられた前記シート状部材の部分である第一切込部及び前記第三工程で切り込みが入れられた前記裏地の部分である第二切込部とともにひっくり返して前記縫合部の外側に折り返すことにより、前記筒状部を挿入する開口部を形成する第四工程と、
前記シート状部材及び前記裏地を前記第一の枠状線の形状よりも大きな形状の第二の枠状線に沿って前記開口部を取り囲むように縫合する第五工程と、
を具備することを特徴とするファン取付部の作製方法。
【請求項2】
前記補強板は縫合可能な素材で作製されており、前記第五工程での縫合作業の際に前記シート状部材及び前記裏地とともに縫合されることを特徴とする請求項1記載のファン取付部の作製方法。
【請求項3】
前記補強板はプラスチックで作製されていることを特徴とする請求項2記載のファン取付部の作製方法。
【請求項4】
前記補強板は、前記第五工程での縫合作業の際に縫合されないことを特徴とする請求項1記載のファン取付部の作製方法。
【請求項5】
前記第二の枠状線の形状は、前記フランジ部の外縁の形状よりも小さいことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のファン取付部の作製方法。
【請求項6】
前記第五工程では、前記筒状部の外縁の形状と略同じ形状の外縁を有する中空の本体部と、前記本体部の一方の端部に設けられた、前記本体部の外縁の形状よりも僅かに大きな形状を有する薄い台板部とからなる整形冶具を用い、前記台板部を下にして前記整形冶具を置き、上方から前記本体部に前記開口部を差し込んで前記シート状部材を前記整形冶具に取り付けた後、ミシンの押さえホルダーを前記本体部に押し当てた状態のまま前記本体部の外周に沿って案内することにより縫合作業を行うことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のファン取付部の作製方法。
【請求項7】
前記整形冶具の前記台板部が透明であることを特徴とする請求項6記載のファン取付部の作製方法。
【請求項8】
前記第五工程での縫合作業の際に、前記シート状部材及び前記裏地を前記第一切込部及び前記第二切込部とともに縫合することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のファン取付部の作製方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れかの作製方法により作製したことを特徴とするシート状部材のファン取付部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空気を流通させることにより人体から出た汗を蒸発させる空気流通式マットや空調服等に使用されるファンを布等のシート状部材に取り付けるためのファン取付部、及び、そのファン取付部を作製するファン取付部の作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、空気を流通させることにより人体から出た汗を蒸発させる空気流通式マットや空調服等が実用化されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。例えば、空調座布団のような空気流通式マットは、スペーサと、シート状部材と、ファン(送風手段)とを備えている。スペーサは空気流通式マットの内部に空間を確保するためのものである。シート状部材はスペーサを覆うものであり、このシート状部材としては例えば布等が用いられる。ファンはスペーサで確保された空間内に空気の流れを発生させるためのものであり、シート状部材に取り付けられる。
【0003】
ところで、空気流通式マットや空調服等に使用されるファンについては、空調効果を高めるため、ファンの取付け部から空気が漏れることがないようにファンをシート状部材にしっかりと取り付ける必要がある。一方、シート状部材を洗濯する場合等には、使用者がファンをシート状部材から簡単に取り外すことができるようにする必要がある。このため、空気流通式マットや空調服等に使用されるファンとしては、特許文献2における図12に示された構造のものを用いることが望ましい。かかるファンは、ファン本体とこのファン本体をシート状部材に取り付けるための取付けリングとを備える。このファン本体は、中空状の筒状部と、筒状部の上端から筒状部の側面と略垂直な方向に突出するフランジ部とを有する。筒状部の外側に取付けリングを差し込んで、フランジ部の裏面と取付けリングの一方の端面とによって、シート状部材に形成された開口部の周囲におけるシート状部材の縁部を挟み込むと共に、筒状部に設けられた第一係止手段と取付けリングに設けられた第二係止手段とを係合させることにより、ファンがシート状部材に取り付けられる。
【0004】
また、空気流通式マットや空調服等に用いられるシート状部材は伸びやすいので、ファンに強い力が働くと、ファンがシート状部材から容易に取り外れてしまうことがある。このため、特許文献2には、開口部の周囲におけるシート状部材の部位に、非伸縮性素材を設けることが提案されている。具体的に、このようなファン取付部は、次のようして作製される。すなわち、まず、シート状部材の所定箇所に孔を空けた後、その孔の周囲におけるシート状部材の部分を裏側に折り返す。次に、その折り返したことにより重なっているシート状部材の間に、リング状の非伸縮性素材を挿入する。その後、非伸縮性素材が挿入されたシート状部材の部分に裏側から布地をあてがい、当該部分においてシート状部材及び布地を糸で縫う。こうして、開口部が形成されると共にその周囲に非伸縮性素材が縫い込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4399765号公報
【特許文献2】再公表特許第WO2006/009108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したファン取付部の作製方法では、孔の周囲におけるシート状部材の部分を裏側に折り返し、その折り返したことにより重なっているシート状部材の間に非伸縮性素材を挿入する作業の際に、開口部を正確な円形状に整えるのが難しく、その作業に手間がかかっていた。また、非伸縮性素材が挿入されたシート状部材の部分に裏側から布地をあてがい、その部分においてシート状部材及び布地を糸で縫う作業の際には、開口部の形状を維持するように細心の注意を払う必要があり、その作業は手間がかかるだけでなく、熟練した者でなければ行うことができず、初心者にとっては難しい作業であった。
【0007】
本発明は上記事情に基づいてなされたものであり、シート状部材に容易に作製することができるファン取付部、及び、そのファン取付部の作製方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明に係るファン取付部の作製方法は、筒状部と筒状部の上端から筒状部の側面と略垂直な方向に突出するフランジ部とを有するファン本体と、筒状部の外側に差し込むことによりフランジ部との間でシート状部材を挟み込んだ状態でファン本体に装着されるリング状部材とを備えるファンをシート状部材に取り付けるためのファン取付部を作製するファン取付部の作製方法であって、シート状部材におけるファン取付部の形成位置に裏地をあてがい、シート状部材及び裏地を、筒状部の外縁の形状と同じかそれより僅かに大きな形状を有する第一の枠状線に沿って縫合する第一工程と、第一工程において第一の枠状線に沿って縫合することによって形成された縫い目である縫合部の内部に、第一の枠状線の形状より小さな開口孔を形成する第二工程と、開口孔と縫合部との間にあるシート状部材及び裏地に、開口孔から縫合部に向かい且つ縫合部に達しないように複数の切り込みを入れる第三工程と、筒状部の外縁の形状よりも僅かに大きい形状の内縁を有する伸縮性のないリング状の補強板を、シート状部材に接するように且つ開口孔を補強板の内縁で取り囲むように配置した後、裏地の全体を、開口孔を介して補強板が配置された側に引き出し、第三工程で切り込みが入れられたシート状部材の部分である第一切込部及び第三工程で切り込みが入れられた裏地の部分である第二切込部とともにひっくり返して縫合部の外側に折り返すことにより、筒状部を挿入する開口部を形成する第四工程と、シート状部材及び裏地を第一の枠状線の形状よりも大きな形状の第二の枠状線に沿って開口部を取り囲むように縫合する第五工程と、を具備することを特徴とするものである。
【0009】
本発明では、上記の第一工程から第五工程までの作業を行うことにより、ファン取付部をシート状部材に容易に作製することができる。しかも、筒状部を挿入する開口部を正確な形状に簡単に整えることができる。また、第五工程での縫合作業を行うことにより、開口部の周囲におけるシート状部材の縁部にリング状の補強板を確実に取り付けて、そのシート状部材の縁部が伸び縮みしないようにすることができる。このため、たとえシート状部材が引っ張られたとしても、ファンがシート状部材から容易に外れてしまうことがないので、本発明の方法により作製されたシート状部材のファン取付部にはファンを安定して取り付けることができる。
【0010】
また、本発明に係るファン取付部の作製方法において、補強板は縫合可能な素材で作製されており、第五工程での縫合作業の際にシート状部材及び裏地とともに縫合されるようにしてもよい。これにより、補強板を開口部の周囲におけるシート状部材の縁部にしっかりと固定することができる。ここで、補強板としては例えばプラスチックで作製されたものを用いることができる。これにより、安価な補強板を用いてファン取付部を作製することができる。
【0011】
また、本発明に係るファン取付部の作製方法において、補強板は、第五工程での縫合作業の際に縫合されないようにしてもよい。これにより、補強板の素材としては、プラスチック等の縫合可能な素材に限らず、例えば金属を用いることができる。
【0012】
更に、本発明に係るファン取付部の作製方法において、第二の枠状線の形状は、フランジ部の外縁の形状よりも小さいことが望ましい。これにより、ファンをシート状部材に取り付けたときに、第五工程において第二の枠状線に沿って縫合することによって形成された縫い目をファン本体のフランジ部で覆い隠すことができる。
【0013】
加えて、本発明に係るファン取付部の作製方法において、第五工程では、筒状部の外縁の形状と略同じ形状の外縁を有する中空の本体部と、本体部の一方の端部に設けられた、本体部の外縁の形状よりも僅かに大きな形状を有する薄い台板部とからなる整形冶具を用い、台板部を下にして整形冶具を置き、上方から本体部に開口部を差し込んでシート状部材を整形冶具に取り付けた後、ミシンの押さえホルダーを本体部に押し当てた状態のまま本体部の外周に沿って案内することにより縫合作業を行うことが望ましい。このように本体部に開口部を差し込んでシート状部材を整形冶具に取り付けることにより、開口部の周囲におけるシート状部材の端縁を正確な形状に容易に整えることができる。しかも、ミシンの押さえホルダーを本体部に押し当てた状態のまま本体部の外周に沿って案内して縫合作業を行うことにより、この縫合作業で形成される縫い目をきれいな形状に仕上げることができる。また、この場合、整形冶具の台板部が透明であることが望ましい。これにより、整形冶具の台板部の側からも開口部が正確な形状に整っているか否かを容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法を用いることにより、ファン取付部をシート状部材に容易に作製することができると共に、開口部を正確な形状に簡単に整えることができる。また、本発明の方法を用いて作製されたシート状部材のファン取付部では、開口部の周囲におけるシート状部材の縁部が伸び縮みしないので、たとえシート状部材が引っ張られたとしても、ファンがシート状部材から容易に外れてしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は空気流通式マットや空調服等の生地として用いられるシート状部材に本発明のファン取付部の作製方法を適用して形成されたファン取付部の概略平面図である。
図2図2(a)は空気流通式マットや空調服等に使用されるファンをファン取付部の開口部に差し込んだときの様子を示す概略側面図、図2(b)はそのファンの取付けリングの概略側面図、図2(c)はそのファンをファン取付部に取り付けたときの様子を示す概略側面図である。
図3図3(a)はファン取付部を形成する部位のシート状部材の概略平面図、図3(b)はファン取付部を形成する際に用いる裏地の概略平面図である。
図4図4は第一実施形態のファン取付部の作製方法における第一工程を説明するための図である。
図5図5は第一実施形態のファン取付部の作製方法における第二工程により開口孔が形成されたシート状部材及び裏地を示す図である。
図6図6は第一実施形態のファン取付部の作製方法における第三工程を説明するための図である。
図7図7は第一実施形態のファン取付部の作製方法で使用するリング状の補強板の概略平面図である。
図8図8は第一実施形態のファン取付部の作製方法における第四工程を説明するための図である。
図9図9図8(c)において裏地と補強板とを取り除いたときのシート状部材及び第二切込部の状態を示す図である。
図10図10(a)は第五工程で用いられる整形冶具の概略平面図、図10(b)はその整形冶具のA−A矢視方向概略断面図である。
図11図11は第一実施形態のファン取付部の作製方法における第五工程を説明するための図である。
図12図12は第一実施形態の第五工程における縫合作業後のシート状部材のB−B矢視方向概略断面図である。
図13図13は第一実施形態のファン取付部の作製方法における第六工程の作業後のシート状部材及び裏地を示す図である。
図14図14は第二実施形態のファン取付部の作製方法で使用するリング状の補強板の概略平面図である。
図15図15は第二実施形態のファン取付部の作製方法における第四工程においてシート状部材の上にリング状の補強板を載せたときの様子を示す図である。
図16図16は第二実施形態の第五工程における縫合作業後のシート状部材の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための形態について説明する。本発明のファン取付部の作製方法は、空気を流通させることにより人体から出た汗を蒸発させる空気流通式マットや空調服等に使用されるファンをシート状部材に取り付けるためのファン取付部を作製するものである。ここで、本発明のファン取付部の作製方法についての説明を行う前に、まず、空気流通式マットや空調服等に用いられるファン、及び、ファン取付部の構造について説明する。
【0017】
図1は空気流通式マットや空調服等の生地として用いられるシート状部材に本発明のファン取付部の作製方法を適用して形成されたファン取付部の概略平面図である。図2(a)は空気流通式マットや空調服等に使用されるファンをファン取付部の開口部に差し込んだときの様子を示す概略側面図、図2(b)はそのファンの取付けリングの概略側面図、図2(c)はそのファンをファン取付部に取り付けたときの様子を示す概略側面図である。
【0018】
空気流通式マットや空調服等に使用されるファン90は、図2に示すように、モータやプロペラが収納されるファン本体91と、リング状部材としての取付けリング92とを備える。ファン本体91は、筒状部911と、この筒状部911の上端から筒状部911の側面と略垂直な方向に突出するフランジ部912とを有する。筒状部911をその中心軸に垂直な平面で切ったときの断面の外形は円形である。筒状部911の外径Fは、図1に示すファン取付部の開口部20の直径Lと同じかそれより僅かに小さい。また、取付けリング92は、ファン本体91をシート状部材10に取り付けるための専用具である。
【0019】
ファン本体91の筒状部911には、二つの係止爪(第一係止手段)913が設けられている。一方、取付けリング92の内面には、各係止爪913と係合して、取付けリング92を筒状部911の外表面に固定するための突起部(第二係止手段)(不図示)が設けられている。
【0020】
ファン90をシート状部材10に取り付けるには、まず、ファン本体91をシート状部材10の開口部20に挿入して、図2(a)に示すように、フランジ部912の裏面が、開口部20の周囲におけるシート状部材10の縁部と接するようにする。次に、取付けリング92を筒状部911の外側に差し込むことにより、フランジ部912の裏面と取付けリング92の端面とによって開口部20の周囲におけるシート状部材10の縁部を挟み込むと共に、その挟み込んだ状態で筒状部911に設けられた係止爪913と取付けリング92に設けられた突起部とを係合させることにより、取付けリング92をファン本体91に装着する。こうして、図2(c)に示すように、ファン90がシート状部材10に取り付けられる。
【0021】
次に、ファン取付部の構造について説明する。図1に示すように、ファン取付部は、シート状部材10の一部と、その部分のシート状部材10にあてがわれた裏地30と、ファン90の筒状部911を挿入するための開口部20と、リング状の補強板(不図示)とを備える。シート状部材10は空気流通式マットや空調服等の生地として用いられるものである。このシート状部材10の素材としては、空気が漏れにくく且つ透湿性を有する素材、例えば一般の綿布等が用いられる。シート状部材10の当該部位には、図1に示すように、シート状の裏地30が設けられている。この裏地30に対し、シート状部材10は表地とも称することができる。裏地30の素材としては、ある程度の強度があり、ミシンで縫合することができる素材であれば何でもよいが、経済性、製造性の観点からは通常の服の裏地のような薄手の布を用いるのが好適である。シート状部材10と裏地30とは縫合されている。また、シート状部材10及び裏地30の略中央部には円形状の開口部20が形成されている。この開口部20の周囲であってシート状部材10と裏地30との間には、リング状の補強板(不図示)が設けられている。
【0022】
図3(a)はファン取付部を形成する部位のシート状部材10の概略平面図、図3(b)はファン取付部を形成する際に用いる裏地30の概略平面図である。以下では説明を簡単にするために、図3(a)に示すように、ファン取付部を形成する部位のシート状部材10として、その関連する部分だけを取り出して、当該シート状部材10を正方形で表現することにする。また、裏地30は開口部20の直径よりも十分大きな大きさを有するものであれば、どのような形状であってもよいが、以下では、図3(b)に示すように、裏地30として四角形状(正方形状)のものを用いる場合を説明する。
【0023】
[第一実施形態]
次に、本発明の第一実施形態であるファン取付部の作製方法について説明する。かかるファン取付部の作製方法は、大きく分けて、第一工程から第六工程までの六つの工程からなる。以下、これらの工程について詳しく説明する。
【0024】
第一工程は、シート状部材10におけるファン取付部の形成位置に裏地30をあてがい、シート状部材10及び裏地30を、筒状部911の外縁の形状と同じかそれより僅かに大きな形状を有する第一の枠状線に沿って縫合する工程である。図4は第一実施形態のファン取付部の作製方法における第一工程を説明するための図である。
【0025】
具体的に、この第一工程では、まず、図4(a)に示すように、第一の枠状線Cを裏地30に罫書く。ここでは、第一の枠状線Cの形状を、筒状部911の外径Fと同じかそれより僅かに大きな直径L1を有する円の形状としている。次に、図4(b)に示すように、その第一の枠状線Cが罫書かれた裏地30をシート状部材10の上に載せる。その後、図4(c)に示すように、第一の枠状線Cに沿ってシート状部材10と裏地30とを縫合する。この縫合作業は、通常の工業用ミシンを用いて行われる。図4(c)では、第一の枠状線Cに沿って縫合することによって形成された縫い目(第一縫合線(縫合部)41)を破線で示している。ここで、第一縫合線41は第一の枠状線Cと同じ形状・大きさのものである。
【0026】
第二工程は、第一縫合線41の内部に、第一の枠状線Cの形状より小さな開口孔を形成する工程である。図5は第一実施形態のファン取付部の作製方法における第二工程により開口孔が形成されたシート状部材10及び裏地30を示す図である。
【0027】
具体的に、第二工程では、図5に示すように、第一縫合線41の内部に、筒状部911の外径Fよりも小さな径を有する開口孔42を形成する。この開口孔42の径は、第一の枠状線C(第一縫合線41)の直径L1の10分の5から10分の9までの範囲内の径であることが望ましい。すなわち、開口孔42が第一縫合線41に達しないようにして、開口孔42と第一縫合線41との間にはある程度の幅のシート状部材10及び裏地30が存在するようにしておけばよい。尚、図1に示すように、ファン取付部の完成後には、開口孔42の形状・大きさや、開口孔42を形成したことにより生じるシート状部材10及び裏地30の端縁の状態は、外部から見えることはないので、第二工程における開口孔42の形成作業を高い精度で行う必要はない。
【0028】
第三工程は、開口孔42と第一縫合線41との間にあるシート状部材10及び裏地30に複数の切り込みを入れる工程である。図6は第一実施形態のファン取付部の作製方法における第三工程を説明するための図である。
【0029】
具体的に、この第三工程では、まず、図6(a)に示すように、図5に示すシート状部材10及び裏地30をひっくり返し、シート状部材10が上になるようにする。次に、図6(b)に示すように、開口孔42と第一縫合線41との間にあるシート状部材10及び裏地30に、開口孔42から第一縫合線41に向かうように複数の切り込み43を入れる。ここで、切り込み43を入れる間隔は適当でよい。また、各切り込み43は、第一縫合線41には達しないが、第一縫合線41になるべく近いところまで入れるようにする。尚、この第三工程で切り込み43が入れられたシート状部材10の部分を「第一切込部11」と称し、第三工程で切り込み43が入れられた裏地30の部分を「第二切込部31」と称することにする。
【0030】
第四工程は、筒状部911の外縁の形状よりも僅かに大きい形状の内縁を有するリング状の補強板を、シート状部材10に接するように且つ開口孔42をその補強板の内側の縁で取り囲むように配置した後、裏地30の全体を、開口孔42を介して補強板が配置された側に引き出し、第一切込部11及び第二切込部31とともにひっくり返して第一縫合線41の外側に折り返すことにより、開口部20を形成する工程である。図7はリング状の補強板の概略平面図である。図8は第一実施形態のファン取付部の作製方法における第四工程を説明するための図である。
【0031】
リング状の補強板50は、図7に示すように、円環状のものであり、筒状部911の外径Fよりも僅かに大きい内径L3を有する。この補強板50の素材としては、伸縮性があまりなく柔軟性があり、しかも、縫合可能な素材が用いられる。例えば、プラスチックを用いることができる。実際、第一実施形態では、厚さ0.2mmのポリプロピレンシートをドーナツ状に加工することにより、補強板50を作製している。ここで、図7では、補強板50の外径をL4としている。
【0032】
具体的に、第四工程では、まず、図8(a)に示すように、補強板50を、シート状部材10に接するように且つ開口孔42を補強板50の内縁で取り囲むように配置する。次に、図8(b)に示すように、裏地30の四つの角部35a,35b,35c,35dをそれぞれ、開口孔42に向かって折り返す。その後、裏地30の四つの角部35a,35b,35c,35dを引っ張って、開口孔42から表側に取り出す。そして、図8(c)に示すように、裏地30の全体を、開口孔42を介して補強板50が配置された側に引き出し、第一切込部11及び第二切込部31とともに第一縫合線41の外側に位置するように展開する。すなわち、裏地30は、第一切込部11及び第二切込部31とともに、第一縫合線41の付近で折り返され、これにより、シート状部材10及び裏地30には、筒状部911の外径Fと略同じ直径Lを有する開口部20が形成される。ここで、図9に、図8(c)において裏地30(第二切込部31を除く。)と補強板50とを取り除いたときのシート状部材10及び第二切込部31の状態を示す。第三工程において開口孔42と第一縫合線41との間にあるシート状部材10及び裏地30に複数の切り込み43を入れたことにより、この第四工程においては、図9に示すように、第一切込部11及び第二切込部31を無理なく折り返すことができる。
【0033】
第五工程は、シート状部材10及び裏地30を、第一切込部11及び第二切込部31とともに、開口部20を取り囲むように縫合する工程である。ここで、第五工程における縫合作業では、所定の整形冶具が用いられる。図10(a)は第五工程で用いられる整形冶具の概略平面図、図10(b)はその整形冶具のA−A矢視方向概略断面図である。図11は第一実施形態のファン取付部の作製方法における第五工程を説明するための図である。
【0034】
この第五工程で用いる整形冶具60は、開口部20の周囲におけるシート状部材10の端縁を正確な形状に整えるためのものであり、図10に示すように、筒状部911の外縁の形状と略同じ形状の外縁を有する中空の本体部61と、本体部61の外縁の形状よりも僅かに大きな形状を有する薄い台板部62とからなる。具体的に、本体部61は、筒状部911の外径Fと略同じ外径F1を有し、台板部62は、本体部61の外径F1よりも僅かに大きな直径を有する。台板部62は、本体部61の一方の端部に設けられ、本体部61から僅かに外側に突き出ている。台板部62を設けたのは、本体部61に開口部20を差し込んだときに本体部61からシート状部材10がすり抜けるのを防止するためである。この台板部62は透明であってもよい。
【0035】
具体的に、第五工程では、まず、図11(a)に示すように、台板部62を下にして整形冶具60を置き、上方から本体部61に開口部20を差し込んでシート状部材10を整形冶具60に取り付ける。ここで、シート状部材10を整形冶具60に取り付ける際には、裏地30を下側に向けている。これにより、開口部20の直径Lは本体部61の外径F1、すなわち、ファン90の筒状部91の直径Fと略等しくなり、したがって、開口部20の周囲におけるシート状部材10の端縁を正確な円形状に容易に整えることができる。尚、台板部62が透明である場合には、整形冶具60の台板部62の側からも開口部20が正確な円形状に整っているか否かを容易に確認することができる。
【0036】
次に、通常の工業用ミシンを用い、シート状部材10及び裏地30を、第一切込部11及び第二切込部31とともに、第一縫合線41の形状よりも大きな形状の第二の枠状線に沿って開口部20を取り囲むように縫合する。ここでは、第二の枠状線の形状を、第一縫合線41の直径L1よりも大きな直径L2を有する円の形状としている。また、第二の枠状線の形状はフランジ部912の外縁の形状よりも小さいこと、すなわち、第二の枠状線の直径L2はフランジ部912の外径よりも小さいことが望ましい。ファン90をシート状部材10に取り付けたときに、この第二の枠状線に沿って縫合することによって形成された縫い目(第二縫合線)をファン本体91のフランジ部912で覆い隠すことができるからである。また、この縫合作業は、図11(b)に示すように、ミシンの押さえホルダー70を整形冶具60の本体部61に押し当てた状態のまま本体部61の外周に沿って案内することにより行われる。これにより、この縫合作業で形成される第二縫合線をきれいな円形状に仕上げることができる。その後、シート状部材10を整形冶具60から取り外す。図11(c)に第五工程における縫合作業後のシート状部材10を示す。この図11(c)では、第二縫合線44を破線で示している。
【0037】
また、本実施形態では、第五工程での縫合作業の際に、補強板50を、シート状部材10及び裏地30とともに縫合している。このため、補強板50を開口部20の周囲におけるシート状部材10の縁部にしっかりと固定することができる。
【0038】
図12は第五工程における縫合作業後のシート状部材10のB−B矢視方向概略断面図である。図12に示すように、開口部20の周囲におけるシート状部材10の部分では、上から、シート状部材10、補強板50、第一切込部11、第二切込部31、裏地30が重なった状態になっている。すなわち、この部分には、シート状部材2枚、裏地2枚、補強板1枚の厚みが生じる。裏地30として薄いシート使用すると共に、補強板50として強度的に支障のない範囲内でなるべく薄いものを使用することにより、当該部分の厚みを小さく抑えることが可能である。
【0039】
尚、図12に示すように、第一縫合線41は開口部20の周囲におけるシート状部材10の縁より僅かに外側に位置し、第一切込部11及び第二切込部31の先端は更にその外側に位置している。このように、第一縫合線41、第一切込部11及び第二切込部31はいずれも、シート状部材10と裏地30とに覆われ、外部から見えないので、第一工程における縫合作業、第二工程における開口孔42の形成作業、そして、第三工程における切り込み作業はあまり丁寧に行う必要はない。
【0040】
第六工程は、裏地30のほつれを防止するため、裏地30の縁部とシート状部材10とを縫合する工程である。図13は第一実施形態のファン取付部の作製方法における第六工程の作業後のシート状部材10及び裏地30を示す図である。
【0041】
具体的に、第六工程では、裏地30の縁部をシート状部材10に接するように内側に折り返し、その折り返した部分の裏地30とシート状部材10とを通常の工業用ミシンで縫合する。図13(a)には第六工程における縫合作業後のシート状部材10及び裏地30を裏地30の側から見たときの概略平面図を示し、図13(b)には第六工程における縫合作業後のシート状部材10及び裏地30をシート状部材10の側から見たときの概略平面図を示す。ここで、図13では、第六工程における縫合作業によって形成された四角形状の縫い目(第三縫合線45)を破線で示している。
【0042】
この第六工程の目的は、第二縫合線44よりも外側にある裏地30のほつれ留め、及び、裏地30をシート状部材10に固定することである。このため、例えば、裏地30として、ほつれないシートを使用し、且つ、裏地30を第二縫合線44より少し外側で切断したり、或いは最初からファン本体91の大きさに対してあまり大きくない円形のシートを用いたりする場合には、第六工程を省略することが可能である。
【0043】
第六工程が終了すると、ファン取付部が完成する。この完成したファン取付部を、シート状部材10の側から見ると、図13(b)に示すように、開口部20の周囲におけるシート状部材10の縁部には、開口部20の直径Lよりも少し大きな直径L2を有する第二縫合線44が見え、そして、この第二縫合線44を覆うように四角形状の第三縫合線45が見える。
【0044】
いま、ファン90の筒状部911の外径F、開口部20の直径L、第一縫合線41の直径L1、第二縫合線44の直径L2、補強板50の内径L3、及び、補強板50の外径L4の間には、次のような関係がある。すなわち、
(1)開口部20の直径Lは筒状部911の外径Fと同じかそれよりも僅かに大きい。
(2)補強板50の内径L3は筒状部911の外径Fよりも僅かに大きい。
(3)第二縫合線44の直径L2は補強板50の内径L3よりも少し大きい。
(4)第一縫合線41の直径L1は補強板50の内径L3と同じかそれよりも僅かに小さい。
(5)補強板50の外径L4は第二縫合線44の直径L2よりも少し大きい。
【0045】
実際、筒状部911の外径Fが80mm、フランジ部912の外径F2が88mmであるファン90をシート状部材10に取り付けるためのファン取付部を作製する場合、本体部61の外径F1が80mmである整形冶具60を使用し、補強板50として内径81mm、外径100mm、厚さ0.2mmのポリプロピレンシートを採用する。この場合、第一縫合線41の直径L1は81mm程度、開口孔42の直径は50mm〜70mm程度、開口孔42と第一縫合線41との間にあるシート状部材10及び裏地30に入れる切り込みの数は10〜20程度、第二縫合線44の直径L2は85mm程度、第三縫合線45の縦幅及び横幅はともに140mm〜180mm程度である。
【0046】
また、このとき、開口部20の直径Lについて考察すると、シート状部材10の厚さが0.1mmの場合、補強板50の内径L3から単純にシート状部材10の厚さ分(0.1mm×2)を差し引くと、理論上の開口部20の直径Lは80.8mmとなり、一方、シート状部材10の厚さが0.4mmの場合には、同様に、補強板50の内径L3から単純にシート状部材10の厚さ分(0.4mm×2)を引くと、理論上の開口部20の直径Lは80.2mmとなる。しかし、実際に形成された開口部20の直径Lは、整形冶具60の本体部61の外径F1と同じ80mmとなる。この差分は、図12に示すように、補強板50の内縁と開口部20の縁を形成するシート状部材10の部分との間に生じる横方向の余裕空間80となる。このため、ファン90の筒状部911の外径Fに多少のばらつきがあったとしても、そのばらつきを余裕空間80で容易に吸収することができるので、ファン90を開口部20の周囲におけるシート状部材10の縁部にしっかりと取り付けることができる。
【0047】
第一実施形態のファン取付部の作製方法では、上記の第一工程から第五工程までの作業を行うことにより、ファン取付部をシート状部材に容易に作製することができる。しかも、ファンの筒状部を挿入する開口部を正確な円形状に簡単に整えることができる。また、第五工程での縫合作業を行うことにより、開口部の周囲におけるシート状部材の縁部にリング状の補強板を確実に取り付けて、そのシート状部材の縁部が伸び縮みしないようにすることができる。このため、たとえシート状部材が引っ張られたとしても、ファンがシート状部材から容易に外れてしまうことがないので、この方法により作製されたファン取付部にはファンを安定して取り付けることができる。
【0048】
また、第一実施形態のファン取付部の作製方法では、補強板が、縫合可能な素材で作製されており、第五工程での縫合作業の際にシート状部材及び裏地とともに縫合されることにより、補強板を開口部の周囲におけるシート状部材の縁部にしっかりと固定することができる。特に、補強板としてはプラスチックで作製されたものを用いることにより、安価な補強板を用いてファン取付部を作製することができる。
【0049】
更に、第一実施形態のファン取付部の作製方法では、第五工程において、本体部と台板部とからなる整形冶具を用い、本体部に開口部を差し込んでシート状部材を整形冶具に取り付けた後、ミシンの押さえホルダーを本体部に押し当てた状態のまま本体部の外周に沿って案内することにより縫合作業を行っている。このように本体部に開口部を差し込んでシート状部材を整形冶具に取り付けることにより、開口部の周囲におけるシート状部材の端縁を正確な円形状に容易に整えることができる。しかも、ミシンの押さえホルダーを本体部に押し当てた状態のまま本体部の外周に沿って案内して縫合作業を行うことにより、この縫合作業で形成される縫い目をきれいな円形状に仕上げることができる。
【0050】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態であるファン取付部の作製方法について説明する。尚、第二実施形態において、第一実施形態のものと同一の機能を有するものには、同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0051】
上記の第一実施形態では、通常の工業用ミシンを使用して縫合作業を行う場合について説明したが、この第二実施形態では、入力データに基づき針が大きく自在に動く特殊ミシンを使用して縫合作業を行う。この特殊ミシンを用いる場合には、予め、縫い合わせの形状に関する数値データや、針の移動を開始する位置に関する数値データ等を入力しておく。これにより、特殊ミシンを用いて縫合作業を行うと、針が縫合対象のシート上をデータの内容にしたがって移動し、データの内容に応じた形状で縫合対象のシートを縫い合わせることができる。
【0052】
また、第二実施形態では、リング状の補強板として、上記の第一実施形態で使用したものとは異なる特殊なリング状の補強板を用いることにする。図14は第二実施形態のファン取付部の作製方法で使用する補強板の概略平面図である。第一実施形態では、図7に示すように、内径L3が81mm、外径L4が100mm、厚さが0.2mmのポリプロピレン製の補強板50を使用したが、第二実施形態では、図14に示すように、内径L3が81mm、外径L4が84mm、厚さが0.3mmの金属製の補強板50aを使用する。すなわち、このリング状の補強板50aは、第一実施形態で用いたリング状の補強板50と比べると、幅がかなり狭く、また、厚さが若干厚くなっている。
【0053】
第二実施形態のファン取付部の作製方法は、第一実施形態のファン取付部の作製方法と同様に、第一工程から第六工程までの六つの工程からなる。このうち、第二工程及び第三工程は、第一実施形態と同様であるので、その説明を省略する。以下では、第一工程、第四工程、第五工程及び第六工程についての説明を行う。
【0054】
第一工程は、シート状部材10におけるファン取付部の形成位置に裏地30をあてがい、シート状部材10及び裏地30を所定の第一の枠状線Cに沿って縫合する工程である。第二実施形態における第一工程が第一実施形態における第一工程と異なるのは、特殊ミシンを用いて縫合作業を行う点である。
【0055】
具体的に、この第一工程では、まず、裏地30をシート状部材10の上に載せる。このとき、第一実施形態とは異なり、第一の枠状線Cを裏地30に罫書く必要はない。次に、特殊ミシンに、縫い合わせの形状として、ファン90の筒状部911の外径Fより僅かに大きな直径L1を有する第一の枠状線Cについてデータを入力する。そして、この特殊ミシンを用いて、シート状部材10と裏地30とを縫合する。第二実施形態では、特殊ミシンを用いたことにより、シート状部材10及び裏地30には、正確な円形状の第一縫合線(第一の枠状線Cに沿った縫い目)41が自動的に形成される。
【0056】
第四工程は、リング状の補強板50aを、シート状部材10に接するように且つ開口孔42を補強板50aの内側の縁で取り囲むように配置した後、裏地30の全体を、開口孔42を介して補強板50aが配置された側に引き出し、第一切込部11及び第二切込部31とともにひっくり返して第一縫合線41の外側に折り返すことにより、開口部20を形成する工程である。第二実施形態における第四工程が第一実施形態における第四工程と異なるのは、リング状の補強板として、図14に示す特殊なリング状の補強板50aを用いた点である。この補強板50aは金属製であり、しかも、その幅はとても狭くなっている。その他の点は上記第一実施形態における第四工程と同じである。ここで、図15に第二実施形態のファン取付部の作製方法における第四工程においてシート状部材10の上にリング状の補強板50aを載せたときの様子を示す。
【0057】
第五工程は、シート状部材10及び裏地30を、第一切込部11及び第二切込部31とともに、第一縫合線41の直径L1(開口部20の直径L)よりも大きな直径L2の第二の枠状線に沿って縫合する工程である。第二実施形態における第五工程が第一実施形態における第五工程と異なるのは、特殊ミシンを用いて縫合作業を行う点である。
【0058】
具体的に、第五工程では、まず、第一実施形態で用いた整形冶具60を用い、上方から本体部61に開口部20を差し込んでシート状部材10を整形冶具60に取り付ける。これにより、開口部20の直径Lは本体部61の外径F1、すなわち、ファン90の筒状部911の直径Fと略等しくなり、したがって、開口部20の周囲におけるシート状部材10の端縁を正確な円形状に容易に整えることができる。
【0059】
次に、特殊ミシンに、縫い合わせの形状として、第一縫合線41の直径L1よりも大きな直径L2を有する第二の枠状線についてのデータを入力する。具体的には、第二の枠状線の直径L2を86mmとする。そして、この特殊ミシンを用いて、シート状部材10及び裏地30を、第一切込部11及び第二切込部31とともに、上記第二の枠状線に沿って縫合する。このように特殊ミシンを用いたことにより、シート状部材10及び裏地30には、正確な円形状の第二縫合線(第二の枠状線に沿った縫い目)44が自動的に形成される。尚、第二実施形態では、特殊ミシンを用いて縫合作業を行うため、整形冶具60には、ミシンの押さえホルダーを本体部61の外周に沿って案内する役割はなく、整形冶具60は単に開口部20の周囲におけるシート状部材10の端縁を正確な円形状に整えるためだけに使用している。
【0060】
また、第二実施形態では、補強板50aは第五工程での縫合作業の際に縫合されない。補強板50aの外径L4が84mmであるのに対し、第二縫合線44の直径は86mmであるからである。図16は第五工程における縫合作業後のシート状部材10の概略断面図である。図16に示すように、補強板50aをシート状部材10によって覆うようにしてシート状部材10及び裏地30が第一切込部11及び第二切込部31とともに縫合されている。
【0061】
第六工程は、裏地30のほつれを防止するため、裏地30の縁部とシート状部材10とを縫合する工程である。第二実施形態における第六工程が第二実施形態における第六工程と異なるのは、特殊ミシンを用いて縫合作業を行う点である。
【0062】
具体的に、第六工程では、まず、裏地30の縁部をシート状部材10に接するように内側に折り返す。次に、特殊ミシンに、縫い合わせの形状として、所定の縦幅及び横幅を有する四角形についてのデータを入力する。そして、この特殊ミシンを用いて、その折り返した部分の裏地30とシート状部材10とを特殊ミシンで縫合する。第二実施形態では、特殊ミシンを用いたことにより、シート状部材10及び裏地30には、正確な四角形状の縫い目(第三縫合線)が自動的に形成される。
【0063】
第二実施形態のファン取付部の作製方法は、第一実施形態のファン取付部の作製方法と同様の作用・効果を奏する。また、第二実施形態では、特殊ミシンを用いて縫合作業を行うことにより、第一工程、第五工程及び第六工程における縫合の精度を上げることができる。更に、リング状の補強板が、第五工程での縫合作業の際に縫合されないようにしたことにより、補強板の素材については縫合性を考慮する必要がなく、強度や伸び性等を考慮すればよい。このため、補強板の素材としては、プラスチック等の縫合可能な素材に限らず、例えば金属を用いることができる。
【0064】
尚、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
【0065】
上記の第二実施形態では、特殊ミシンとして、数値データに基づいて針の動作を制御するものを用いた場合について説明したが、本発明で使用する特殊ミシンとしては、これ以外にも、例えば、ガイド溝に沿って針が移動する方式の特殊ミシンを用いることができる。
【0066】
また、上記の第一実施形態では、第五工程での縫合作業の際に通常の工業用ミシンを使用すると共に、リング状の補強板として幅広のものを用い、この補強板をシート状部材及び裏地とともに縫合する場合について説明した。そして、上記の第二実施形態では、第五工程での縫合作業の際に特殊ミシンを使用すると共に、リング状の補強板として幅の狭いものを用い、この補強板を縫合しない場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、第五工程での縫合作業の際には、例えば、通常の工業用ミシンを使用してシート状部材及び裏地を縫合し、補強板を縫合しないようにしてもよく、また、特殊ミシンを使用して、補強板をシート状部材及び裏地とともに縫合するようにしてもよい。更に、上記の各実施形態では、第五工程での縫合作業の際に、シート状部材及び裏地を第一切込部及び第二切込部とともに縫合する場合について説明したが、第五工程での縫合作業の際には、第一切込部及び第二切込部を縫合せずに、シート状部材及び裏地を縫合するようにしてもよい。但し、第五工程での縫合作業の際に、シート状部材及び裏地を第一切込部及び第二切込部とともに縫合すると、当該縫合箇所の強度を高めることができる。
【0067】
更に、上記の各実施形態では、第一工程での縫合作業の際に、裏地をシート状部材の上に載せてシート状部材と裏地とを縫合する場合について説明したが、第一工程での縫合作業の際には、シート状部材を裏地の上に載せてシート状部材と裏地とを縫合するようにしてもよい。また、上記の各実施形態では、第五工程において、裏地を下側に向けた状態で、シート状部材の側から縫合作業を行う場合について説明したが、第五工程においては、裏地を上側に向けた状態で、裏地の側から縫合作業を行うようにしてもよい。
【0068】
また、上記の各実施形態では、ファンの筒状部をその中心軸に垂直な平面で切ったときの断面の外形が円形である場合について説明したが、筒状部をその中心軸に垂直な平面で切ったときの断面の外形は例えば四角形であってもよい。この場合、開口部の形状が円形から筒状部の外形形状に対応する形状に変更になっただけであるので、補強板や整形冶具として筒状部の外形形状に対応する形状のものを用いて、第一実施形態又は第二実施形態で示したファン取付部の作製方法を適用することにより、ファン取付部を容易に作製することができる。
【0069】
また、上記の各実施形態では、裏地として四角形状のものを用いた場合について説明したが、裏地の形状は必ずしも四角形である必要はなく、例えば、裏地としては円形状のものを用いることができる。
【0070】
更に、上記の各実施形態では、整形冶具として図10に示す構造のものを用いた場合について説明したが、整形冶具としては、図10に示すものと同様な作用・効果を有するものであれば、どのようなものを用いてもよい。また、第五工程において、第一縫合線の外側に折り返された裏地を均等に引っ張ることにより、シート状部材が補強板にその上側から接するような状態にしてから、シート状部材及び裏地を縫合する等の方法を使用すれば、第五工程において必ずしも整形冶具を使用する必要はない。
【0071】
また、本発明は、上記の各実施形態の方法により作製されたシート状部材のファン取付部として捉えることができる。本発明に係るシート状部材のファン取付部は、上記各実施形態の方法における効果と同様に、容易に作製することができると共に、開口部を正確な円形状に簡単に整えることができるという効果を奏する。また、本発明に係るシート状部材のファン取付部では、開口部の周囲におけるシート状部材の縁部が伸び縮みしないので、たとえシート状部材が引っ張られたとしても、ファンがシート状部材から容易に外れてしまうことがない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明したように、本発明のファン取付部の作製方法を用いることにより、ファン取付部をシート状部材に容易に作製することができると共に、開口部を正確な形状に簡単に整えることができる。また、本発明の方法を用いて作製されたファン取付部では、開口部の周囲におけるシート状部材の縁部が伸び縮みしないので、たとえシート状部材が引っ張られたとしても、ファンがシート状部材から容易に外れてしまうことがない。したがって、本発明は、空気流通式マットや空調服等に使用されるファンをシート状部材に取り付けるためのファン取付部を作製する際に用いるのに好適である。
【符号の説明】
【0073】
10 シート状部材
11 第一切込部
20 開口部
30 シート状の裏地
31 第二切込部
35a,35b,35c,35d 裏地の角部
41 第一縫合線(縫合部)
42 開口孔
43 切り込み
44 第二縫合線
45 第三縫合線
50,50a リング状の補強板
60 整形冶具
61 本体部
62 台板部
70 ミシンの押さえホルダー
80 余裕空間
90 ファン
91 ファン本体
911 筒状部
912 フランジ部
913 係止爪
92 取付けリング(リング状部材)
C 第一の枠状線
F ファンの筒状部の外径
F1 整形冶具の本体部の外径
L 開口部の直径
L1 第一縫合線(第一の枠状線)の直径
L2 第二縫合線(第二の枠状線)の直径
L3 リング状の補強板の内径
L4 リング状の補強板の外径
【要約】
【課題】ファン取付部をシート状部材に容易に作製することができるファン取付部の作製方法を提供する。
【解決手段】本発明のファン取付部の作製方法は、シート状部材10に裏地30をあてがい、シート状部材10及び裏地30を、所定の第一の枠状線に沿って縫合する第一工程と、第一の枠状線の内部に開口孔を形成する第二工程と、開口孔と第一の枠状線との間にあるシート状部材10及び裏地30に複数の切り込みを入れる第三工程と、リング状の補強板を、シート状部材10に接するように且つ開口孔を取り囲むように配置した後、裏地30の全体を、開口孔を介して補強板の側に引き出して、第一の枠状線の外側に展開することにより、開口部20を形成する第四工程と、シート状部材10及び裏地30を、開口部20を取り囲むように縫合する第五工程とを具備する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16