特許第5672645号(P5672645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5672645
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】燃料電池用電極触媒インク
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/88 20060101AFI20150129BHJP
   H01M 8/10 20060101ALI20150129BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   H01M4/88 K
   H01M8/10
   H01M4/86 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2008-63916(P2008-63916)
(22)【出願日】2008年3月13日
(65)【公開番号】特開2009-224031(P2009-224031A)
(43)【公開日】2009年10月1日
【審査請求日】2011年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】羽場 靖洋
【審査官】 小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−216661(JP,A)
【文献】 特開2004−273434(JP,A)
【文献】 特開2006−073313(JP,A)
【文献】 特開2007−123253(JP,A)
【文献】 特開2006−302644(JP,A)
【文献】 特開2007−161914(JP,A)
【文献】 特開2007−048642(JP,A)
【文献】 特開2007−329062(JP,A)
【文献】 特開2007−027064(JP,A)
【文献】 特開2006−004895(JP,A)
【文献】 日本化学会編,化学便覧,日本,丸善株式会社,1984年 6月25日,改訂3版,第502頁〜第503頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/88
H01M 4/86
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子型燃料電池の電極触媒層の形成に用いる電極触媒インクであって、
該電極触媒インクが高分子電解質と触媒を担持した導電性粒子と溶媒とを含み、且つ、該溶媒が水、ヘキサンおよびアセトンからなるとともに、前記インクの25℃における粘度が50から1500mPa・sであることを特徴とする燃料電池用電極触媒インク。
【請求項2】
前記インクに含まれる、触媒を担持した導電性粒子と高分子電解質との合計の固形分は、5から45wt%であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用電極触媒インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば固体高分子型燃料電池の電極触媒層形成のためのインクと、これを用いた電極触媒層、膜電極接合体および固体高分子型燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型燃料電池は、二つの電極(酸化極と還元極)で固体高分子電解質膜を挟んで接合した膜電極接合体を、ガス拡散層で挟んだ構造をしている。酸化極と還元極に水素と酸素を流すことで電気化学反応を起こし、発電を起こすシステムである。燃料電池は従来の発電装置と異なり、発電状態において発生するのは水のみであり、近年問題となっている二酸化炭素等の環境負荷ガスを発生しないクリーンな発電装置として期待されている。
【0003】
膜電極接合体の作製方法としては、触媒を担持した導電性粒子と、プロトン導電性をもつ樹脂(イオノマー)とを有機溶媒に分散させた燃料電池用電極触媒インクを、ガス拡散層に塗布して電極触媒層を形成し、形成した電極触媒層と固体電解質膜とが接するように熱プレスする方法や、転写フィルムに上記塗布液を塗布し電極触媒層を形成し、形成した電極触媒層と固体高分子膜とが接するように熱プレスする方法が知られている。
【0004】
上記の燃料電池用電極触媒インクは、いずれも触媒を担持した導電性粒子及びプロトン伝導性電解質を有機溶媒に溶解ないし分散させたものである。また、触媒を担持した導電性粒子は、有機溶媒と直接触れる場合、有機溶媒の酸化反応による急激な発熱から発火する恐れがあるため、例えば、予め所定の水溶液に分散する方法が取られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−266901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明にあっては、触媒の分散性が良好であり、発電効率が高く、かつ、触媒の利用効率の高い電池性能を示す燃料電池用電極触媒インク、電極触媒層、膜電極接合体および固体高分子型燃料電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明者が鋭意検討を重ねた結果、膜電極接合体の性能が、固体高分子型燃料電池の電極触媒層の形成に用いる電極触媒インクに依存すると考えた。特にこのインクの有機溶媒の種類・組成が重要なファクターであると考えた。すなわち、本発明は、以下の手段を提供する。
【0007】
請求項1に記載の発明は、固体高分子型燃料電池の電極触媒層の形成に用いる電極触媒インクであって、
該電極触媒インクが高分子電解質と触媒を担持した導電性粒子と溶媒とを含み、且つ、該溶媒が水、ヘキサンおよびアセトンからなるとともに、前記インクの25℃における粘度が50から1500mPa・sであることを特徴とする燃料電池用電極触媒インクである。
請求項2に記載の発明は、前記インクに含まれる、触媒を担持した導電性粒子と高分子電解質との合計の固形分は、5から45wt%であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用電極触媒インクである
【発明の効果】
【0017】
本発明により、触媒の分散が良好な燃料電池用電極触媒インクを提供できる。また、このインクを使用して形成した電極触媒層を備えた膜電極接合体を用いれば、発電効率が高く、かつ、触媒の利用効率の高い電池性能を示す固体高分子型燃料電池を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に本発明の膜電極接合体の断面模式図を示した。本発明の膜電極接合体(MEA)12は固体高分子電解質膜1の両面に電極触媒層2、電極触媒層3が接合され、狭持された構造を備える。
【0019】
図2に本発明の固体高分子型燃料電池の分解模式図を示した。本発明の固体高分子型燃料電池にあっては、膜電極接合体12の電極触媒層2および電極触媒層3と対向して空気極側ガス拡散層4および燃料極側ガス拡散層5が配置される。これによりそれぞれ空気極6及び燃料極7が構成される。そしてガス流通用のガス流路8を備え、相対する主面に冷却水流通用の冷却水流路9を備えた導電性でかつ不透過性の材料よりなる1組のセパレータ10が配置される。燃料極7側のセパレータ10のガス流路8からは燃料ガスとして、例えば水素ガスが供給される。一方、空気極6側のセパレータ10のガス流路8からは、酸化剤ガスとして、例えば酸素を含むガスが供給される。
【0020】
図2に示した固体高分子型燃料電池は一組のセパレータに固体高分子電解質膜1、電極触媒層2、3、ガス拡散層4、5が狭持された、いわゆる単セル構造の固体高分子型燃料電池であるが、本発明にあっては、セパレータ10を介して複数のセルを積層して燃料電池とすることもできる。
【0021】
本発明の燃料電池用電極触媒インク(以下、単に触媒インクという)について説明する。本発明の触媒インクは、高分子電解質と触媒を担持した導電性粒子と溶媒とを含む。
【0022】
触媒を担持した導電性粒子は、導電性を持つ担体と、触媒能を持つ触媒金属から成り立つ。触媒金属には、カソードでは酸素の還元反応、アノードでは水素の酸化反応に触媒作用を有すれば特に限定するものではない。具体的は遷移金属単体、遷移金属群からなる合金、酸化物、複酸化物、炭化物、錯体があげられる。中でも特にPt、Pd、Ni、Ir、Rh、Co、Os、Ru、Fe、Au、Ag、Cu等が好ましく、この群からなる合金、酸化物、複酸化物、炭化物、錯体からなる。また、粒径としては、触媒金属の利用率と反応性を考慮し、1から10nm程度が好ましい。触媒を担持した導電性粒子は、触媒インク中、1〜35重量%の範囲で含まれるのが好ましい。
【0023】
導電性粒子としては、特に制限されず公知のものが使用できるが。代表的なものとしてはカーボン微粒子があり、具体的にはカーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、固体酸凝集体等の炭素微粒子等が挙げられ、この中から一つ以上選べばよい。粒径としては10から100nm程度が好ましい。
【0024】
触媒インクに含まれる高分子電解質は、プロトン伝導性を有するものであれば良いが、電極触媒層と電解質膜の密着性を考えると、固体高分子電解質膜と同じ材料を選択することが好ましい。高分子電解質は、触媒インク中、1〜35重量%の範囲で含まれるのが好ましい。
【0025】
触媒インクには、上記触媒を担持した導電性粒子以外にも、触媒を担持していない導電性粒子を混合させても良い。
【0026】
燃料電池用電極触媒インクに分散させるプロトン伝導性を持つ電解質(イオノマー)は、プロトン伝導性を有するものであれば良いが、電極触媒層と電解質膜の密着性を考えると、電解質膜と同等なものが好ましい。
【0027】
本発明における触媒インクには溶媒として水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノールなどのアルコール類、アセトン、フルフラール、エチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのアルデヒド・ケトン類やエーテル類等を用いることができる。
【0028】
本発明にあっては、触媒インクに含まれる溶媒が2種類以上であることを特徴とする。触媒インクに含まれる溶媒を2種類以上とすることにより、触媒を担時した導電性粒子と高分子電解質をそれぞれ分散させることができ、また、お互いに混合することができ、発電効率が高く、かつ、触媒の利用効率の高い電池性能を示す膜電極接合体及び燃料電池とすることができた。
【0029】
また、本発明にあっては、触媒インクに含まれる2種類以上の溶媒のうち、溶解度パラメータの最大値と最小値の差が3以上であることが好ましい。溶解度パラメータの差を3以上とすることにより、より高分子電解質と触媒のそれぞれ分散させることができ、また、お互いに混合することができる。溶解度パラメータの差が3未満の場合、高分子電解質と触媒のそれぞれを分散できなくなることがあり、また、お互いに混合することができなくなることがある。なお、溶解度パラメータが3以上はなれた溶媒は、触媒インクに含まれる全溶媒のうちそれぞれ10wt%以上含まれることが好ましい。なお、溶媒が3種類以上ある場合には、溶解度パラメータが3以上離れた溶媒または溶媒群が、触媒インクに含まれる全溶媒のうちそれぞれ10wt%以上含まれることが好ましい。
【0030】
また、本発明にあっては触媒インクに含まれる2種類以上の溶媒のうち、少なくとも1種類の溶媒の溶解度パラメータが10以上13以下の範囲内であることが好ましい。少なくとも1種類の溶媒の溶解度パラメータを上記範囲内とすることにより、触媒インクに含まれる触媒を担持した導電性粒子の分散性を向上させることができる。溶解度パラメータが10以上13以下の範囲内の溶媒が触媒インクに含まれない場合、導電性粒子の分散性が悪く、触媒の利用効率の高い電池性能を有する膜電極接合体、燃料電池とすることができなくなる場合がある。なお、溶解度パラメータが10以上13以下の溶媒は、電極触媒インクの全溶媒中に40wt%以上80wt%以下の割合で含まれていることが好ましい。
【0031】
また、本発明にあっては、触媒インクに含まれる溶媒のうち、沸点の最大値と最小値の差が60℃以内であることが好ましい。沸点の差を上記範囲内とすることにより、形成される電極触媒層において、触媒を担持した導電性粒子と高分子電解質のそれぞれの凝集を防ぐことができる。沸点の最大値と最小値の差が60℃を超える場合にあっては、電極触媒インクを塗布した後の溶媒除去工程、すなわち、乾燥工程において、各溶媒の除去スピードの差が大きくなり、導電性粒子と高分子電解質の少なくとも一方が凝集傾向を示す場合がある。
【0032】
また、本発明にあっては、触媒インクに含まれる溶媒のうち、少なくとも1種類の溶媒の比誘電率が15から35の範囲内であることが好ましい。少なくとも1種類の溶媒の比誘電率を15から35の範囲内とすることにより、より高分子電解質と触媒のそれぞれ分散させることができ、また、お互いに混合することができる。一方、上記範囲内の比誘電率を有する溶媒が触媒インクに含まれない場合には、高分子電解質と触媒のそれぞれ分散させることができなることがあり、また、お互いに混合することができなくなることがある。なお、比誘電率が15以上35以下の溶媒は、触媒インクの全溶媒中に5wt%以上の割合で含まれていることが好ましい。
【0033】
また、触媒を担持した導電性粒子と高分子電解質との合計の固形分は、全溶媒に対し、5から45wt%にするのがよい。この範囲外である場合、印刷性が悪化したり、ハンドリングが悪化したりする。
【0034】
また、触媒インクの25℃における粘度は50から1500mPa・sにするのがよい。固形分と粘度は印刷方法によって調整すればよく、この範囲であればよい。
【0035】
触媒インクには、適宜増粘材、分散剤を混ぜても構わない。カーボンの分散剤として好適なのは、スルホン酸基が導入された無定形炭素である、固体酸が代表的に挙げられる。
【0036】
本発明におけるインクの混合方法としては、攪拌脱泡機や遊星ボールミルをはじめとする公知の方法が挙げられ、特に限定しない。
【0037】
本発明における、触媒インク成分の混合させる順序は、特に限定しない。
【0038】
次に、電極触媒層の形成方法、膜電極接合体の製造方法について述べる。
【0039】
調整された触媒インクは、ドクターブレード法、ディッピング法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、スプレー法などの塗布法、噴霧法を用い固体高分子電解質膜もしくはガス拡散層上に塗布され、電極触媒層は形成される。また、転写基材を用い、転写基材上に触媒インクを塗布し、転写基材上に電極触媒層を一旦形成した後、転写法により固体高分子電解質膜上に電極触媒層を形成しても良い。
固体高分子電解質膜は、プロトン伝導性を有するものであり、フッ素系高分子電解質膜としては、デュポン社製Nafion(登録商標)、旭硝子(株)製Flemion(登録商標)、旭化成(株)製Aciplex(登録商標)、ゴア社製Gore Select(登録商標)などが挙げられる。炭化水素系高分子電解質膜としては、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等の電解質膜が挙げられるが、特に限定しない。膜厚は20〜100μm程度が好ましい。
【0040】
本発明において電極触媒層をガス拡散層に塗布する場合、電極触媒層をガス拡散層に塗布してからこれを固体高分子膜に熱圧着する。ガス拡散層の塗布面にはカーボン粒子などの目止め層が塗布されていることが好ましい。これは触媒インクの塗布時に触媒インクがガス拡散層に浸透することを防ぐためである。
【0041】
本発明において電極触媒層を転写材に塗布する場合、触媒層を転写材に塗布してからこれを固体高分子膜に熱圧着する。転写材としては特に限定しないが、電極触媒層が熱圧着により離型するものが良い。具体的にはPTFE、ETFE等のフッ素系樹脂、表面にシリコン樹脂等が塗布されている離型材、PETフィルム、ポリイミド、PEEKなどの高分子フィルム、SUS等の金属板などが挙げられるが、触媒層が良好に印刷されかつ転写されれば特に限定しない。
【0042】
本発明において電極触媒層を塗布後の乾燥条件であるが、急速に上記有機溶媒を飛ばさないほうが好ましい。最適な乾燥温度は、40℃から80℃である。乾燥時間は加える溶媒、塗布厚み、乾燥温度に依存するが、15分から2時間程度が良い。
【0043】
本発明におけるガス拡散層は導電性多孔質からなり、カーボンクロス、カーボンシートなどの炭素繊維フィルムが挙げられる。
【0044】
本発明における膜電極接合体は、ガス拡散層に触媒インクを塗布した場合、高分子電解質膜両面にこれを配置し、熱プレスを行う。転写材に塗布した場合、高分子電解質膜両面にこれを配置し、熱プレスを行った後、更にガス拡散層をその両面に配置し更に熱プレスを行う。
【0045】
本発明におけるプレス条件であるが、電極触媒層に含まれる高分子電解質と高分子電解質膜のガラス転移点程度で、かつ熱劣化する温度より低い必要がある。最適な条件としては100℃から140℃付近であるが、130℃以下が好ましい。
【0046】
さらに本発明に用いられるガス拡散層およびセパレータとしては通常の燃料電池に用いられているものを用いることができる。具体的にはガス拡散層としてはカーボンクロス、カーボンペーパー、不織布などのポーラスカーボン材が用いられる。セパレータとしては、カーボンタイプのもの金属タイプのもの等を用いることができる。また、燃料電池としては、ガス供給装置、冷却装置などその他付随する装置を組み立てることにより製造される。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。なお、実施例1〜3は参考例である。

【0048】
実施例1
田中貴金属工業(株)製白金担持カーボン(白金量47wt%、TEC10E50E)5gに対し、水(溶解度パラメータ23.4、沸点100℃)を6g加え、分散機にて混合させた。更に1−ブタノール(溶解度パラメータ11.3、沸点117.7℃、比誘電率17.1)、エタノール(溶解度パラメータ12.9、沸点78.2℃、比誘電率23.8)をそれぞれ11、11g加え、更に5wt%スルホン化ポリエーテルエーテルケトン分散溶液(溶媒は水及びエタノールを重量比で1:1)30g加え、分散機にて混合させ、燃料電池用電極触媒インクを調液した。インクの25℃での粘度は、150mPa・sであった。
得られたインクを用い、(株)旭硝子社製アフレックスに、乾燥後重量が1mg/cmになるように塗布した。60℃30分乾燥後、膜厚50μmのスルホン化ポリエーテルエーテルケトン膜に120℃で熱圧着させ電極触媒層を転写し、膜電極接合体を完成させた。
【0049】
実施例2
田中貴金属工業(株)製白金担持カーボン(白金量47wt%、TEC10E50E)6.5gに対し、水を16g加え、分散機にて混合させた。更にメタノール(溶解度パラメータ14.5、沸点64.5℃、比誘電率33.1)、エタノールをそれぞれ5、10g加え分散機にて混合させた。15wt%スルホン化ポリエーテルエーテルケトン分散溶液(溶媒は水及びエタノールを重量比で1:1)を40g加え、分散機にて混合させ、燃料電池用電極触媒インクを調液した。インクの25℃での粘度は、140mPa・sであった。
得られたインクを用い、(株)旭硝子社製アフレックスに、乾燥後重量が1mg/cmになるように塗布した。60℃30分乾燥後、膜厚50μmのスルホン化ポリエーテルエーテルケトン膜に120℃で熱圧着させ電極触媒層を転写し、膜電極接合体を完成させた。
【0050】
実施例3
田中貴金属工業(株)製白金担持カーボン(白金量47wt%、TEC10E50E)15gに対し、水を17g加え、更に固体酸を2g加え分散機にて混合させた。更に2−エトキシエタノール(溶解度パラメータ11.44、沸点135.6、比誘電率29.6)、1−ブタノールを14gずつ加え分散機にて混合させた。20wt%スルホン化ポリエーテルエーテルケトン分散溶液(溶媒は水及びエタノールを重量比で1:1)を40g加え、分散機にて混合させ、燃料電池用電極触媒インクを調液した。インクの25℃での粘度は、190mPa・sであった。
得られたインクを用い、(株)旭硝子社製アフレックスに、乾燥後重量が1mg/cmになるように塗布した。60℃30分乾燥後、膜厚50umのスルホン化ポリエーテルエーテルケトン膜に120℃で熱圧着させ触媒層を転写し、膜電極接合体を完成させた。
【0051】
実施例4
田中貴金属工業(株)製白金担持カーボン(白金量47wt%、TEC10E50E)5gに対し、水を6g加え、分散機にて混合させた。更にヘキサン(溶解度パラメータ7.24、沸点68.7、比誘電率1.89)、アセトン(溶解度パラメータ9.8、沸点56.12、比誘電率20.7)をそれぞれ7、7g加え分散機にて混合させた。20wt%スルホン化ポリエーテルエーテルケトン分散溶液(溶媒は水及びγ―ブチルラクトン(溶解度パラメータ12.8、沸点203℃、比誘電率39)を重量比で1:1)を30g加え、分散機にて混合させ、燃料電池用電極触媒インクを調液した。
得られたインクを用い、(株)旭硝子社製アフレックスに、乾燥後重量が1mg/cmになるように塗布した。60℃30分乾燥後、膜厚50μmのスルホン化ポリエーテルエーテルケトン膜に120℃で熱圧着させ電極触媒層を転写し、膜電極接合体を完成させた。
【0052】
比較例1
田中貴金属工業(株)製白金担持カーボン(白金量47wt%、TEC10E50E)8.5gに対し、水を16g加え、分散機にて混合させた。更にエチレングリコール(溶解度パラメータ16.1、沸点197℃、比誘電率38.7)を44g加え分散機にて混合させた。10wt%スルホン化ポリエーテルエーテルケトン分散溶液(溶媒は水及びエタノールを重量比で1:1)を35g加え、分散機にて混合させ、燃料電池用電極触媒インクを調液した。
得られたインクを用い、(株)旭硝子社製アフレックスに、乾燥後重量が1mg/cmになるように塗布した。60℃30分乾燥後、膜厚50μmのスルホン化ポリエーテルエーテルケトン膜に120℃で熱圧着させ電極触媒層を転写し、膜電極接合体を完成させた。
【0053】
以下、結果を示す。図3はそれぞれの発電データである。条件はアノード、カソードがそれぞれ水素、空気であり、湿潤条件は100%加湿状態で、温度は80℃である。これを見ると実施例1から4は、比較例1に対し良好な電池特性を示していることがわかる。また、実施例1から3は、実施例4と比較して良好な電池特性を示していることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明の膜電極接合体の断面模式図である。
図2】本発明の固体高分子型燃料電池の分解模式図である。
図3】(実施例1〜3)、(比較例1、2)での燃料電池の発電特性である。
【符号の説明】
【0055】
12 膜電極接合体
1 固体高分子電解質膜
2 電極触媒層
3 電極触媒層
4 空気極側ガス拡散層
5 燃料極側ガス拡散層
6 空気極
7 燃料極
8 ガス流路
9 冷却水流路
10 セパレータ
図1
図2
図3