特許第5672682号(P5672682)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5672682-有機EL素子及びその製造方法 図000002
  • 特許5672682-有機EL素子及びその製造方法 図000003
  • 特許5672682-有機EL素子及びその製造方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5672682
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】有機EL素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20150129BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150129BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20150129BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   H05B33/10
   H05B33/14 A
   H05B33/22 D
   H05B33/22 Z
   H05B33/12 B
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2009-221997(P2009-221997)
(22)【出願日】2009年9月28日
(65)【公開番号】特開2011-70990(P2011-70990A)
(43)【公開日】2011年4月7日
【審査請求日】2012年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】村田 広大
(72)【発明者】
【氏名】森川 徳子
(72)【発明者】
【氏名】北爪 栄一
【審査官】 素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−071872(JP,A)
【文献】 特開2008−243773(JP,A)
【文献】 特開2008−010251(JP,A)
【文献】 特開2005−276479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/10
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を準備し、
基板上に第一電極を形成し、
複数の前記第一電極の間に配置され、前記第一電極の端部を覆って突出する隔壁を形成し、
前記第一電極上及び前記突出する隔壁の近傍に有機発光層を含む複数の発光媒体層の内のインターレイヤをウェットコーティング法により形成し、
前記第一電極上の前記インターレイヤを硬化させ、前記突出する隔壁の近傍の前記インターレイヤの一部が未硬化な状態となるように、前記インターレイヤを形成した面とは反対側の面から加熱し、
前記インターレイヤの未硬化な箇所を除去し、
前記インターレイヤ上に第二電極を形成し、
前記突出する隔壁は0.5μm以上2μm以下の高さに形成し、前記インターレイヤは前記突出する隔壁を覆うように前記ウェットコーティング法により形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項2】
前記インターレイヤを焼成処理する際の温度が150℃以上250℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項3】
前記インターレイヤを焼成処理する際の時間が10分以上30分以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項4】
前記突出する隔壁の近傍に形成された前記インターレイヤの厚膜な箇所を無機溶剤、有機溶剤あるいはこれらの混合溶液により洗い流すことにより除去することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項5】
前記突出する隔壁の近傍に形成された前記インターレイヤの厚膜な箇所を無機溶剤、有機溶剤あるいはこれらの混合溶液の蒸気にさらすことにより除去することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法を用いて形成されたことを特徴とする有機EL素子。
【請求項7】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法を用いて形成された有機EL素子を有することを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子及びその製造方法に関し、特に、画素内の平坦性を良好にする有機EL素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、二つの対向する電極の間に正孔輸送材料からなる正孔輸送層及び有機発光材料からなる有機発光層が形成され、電流を流すことで有機発光層から放出される表示光を光透過性電極から取り出すものである。前述したように、有機EL素子は、簡便な構造であるにもかかわらず直流低電圧駆動による高輝度発光が可能な発光素子として開発が進められている。
【0003】
有機EL素子の種類は有機発光層に用いる有機発光材料により、低分子有機発光材料を用いた有機EL素子(以下、「低分子有機EL素子」という)と、高分子有機発光材料を用いた有機EL素子(以下、「高分子有機EL素子」という)とに大別される。
【0004】
低分子有機EL素子は、一般的に真空蒸着法などのドライコーティング法により薄膜形成を行う。有機EL表示装置として正孔輸送層や有機発光層のパターニングが必要な場合は、メタルマスクなどを用いてパターニングを行うが、この方法では基板が大型化すればするほどパターニング精度が出にくいという問題がある。また真空中で成膜するためにスループットが悪いという問題がある。また、下地の凹凸の影響を受け易く、それにより表示にムラが発生することがある。
【0005】
高分子有機EL素子は、有機発光材料を溶剤に溶かして塗工液にし、これをウェットコーティング法で薄膜形成する方法が試みられるようになってきている。薄膜形成するためのウェットコーティング法としては、スピンコート法、バーコート法、突出コート法、ディップコート法等があるが、高精細にパターニングしたりR(赤)、G(緑)及びB(青)の3色に塗り分けしたりするためには、これらのウェットコーティング法では難しく、塗り分け、パターニングを得意とする印刷法による薄膜形成が最も有効であると考えられる。
【0006】
各種印刷法のなかでも、有機EL素子や有機EL表示装置では、基板としてガラス基板を用いることが多いため、グラビア印刷法等のように金属製の印刷版等の硬い版を用いる方法は不向きであり、弾性を有するゴムブランケットを用いるオフセット印刷法や同じく弾性を有するゴム版や感光性樹脂版を用いる凸版印刷法が適正である。実際にこれらの印刷法による試みとして、特許文献1では、例えば、オフセット印刷による方法が開示され(特許文献1参照)、特許文献2では、例えば、凸版印刷による方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0007】
有機発光材料と同様に、正孔輸送材料も通常は低分子有機材料と高分子有機材料とが用いられている。低分子正孔輸送材料の代表例として、特許文献3では、例えば、TPD(トリフェニレンアミン系誘導体)を用いる技術が開示され(特許文献3参照)、高分子正孔輸送材料の代表例として、特許文献4では、例えば、PEDOT:PSS(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸の混合物)を用いる技術が開示されている(特許文献4参照)。正孔輸送材料の成膜法は、有機発光材料と同様にドライコーティング法またはウェットコーティング法である。
【0008】
また、電極の間には有機発光層及び正孔輸送層以外にもキャリア注入層(キャリア輸送層、とも呼ばれる)が形成される。キャリア注入層とは、電極から有機発光層へ電子を注入させる際に、電子の注入量を制御あるいは、もう一方の電極から有機発光層へ正孔が注入される際に、正孔の注入量を制御するのに用いられる層で、電極と有機発光層の間に挿入される層をいう。電子注入層としては、キノリノール誘導体の金属錯体などの電子輸送性の有機物や、Ca、Baなどの仕事関数の比較的小さい例えばアルカリ金属などが用いられ、あるいはこれらの機能を持つ層を複数積層する場合もある。有機材料の正孔注入層として、特許文献5では、例えば、TPD(トリフェニレンアミン系誘導体)を用いる技術が開示され(特許文献5参照)、特許文献6では、例えば、PEDOT:PSS(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸の混合物)を用いる技術が開示されている。あるいは、特許文献7では、例えば、無機材料の正孔輸送材料を用いる技術が開示されている(特許文献7参照)。
【0009】
また、有機発光層とキャリア注入層の間にインターレイヤを積層することで、有機発光層の溶解防止、電子ブロック作用、及びキャリア注入層からの物質移動阻止や有機発光層からのエネルギー移動の阻止といった効果から、有機EL素子の長寿命化と高効率化とが期待できる。インターレイヤとしては、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有する芳香族アミンを含むポリマーなどが挙げられる。ここで、電極の間に形成される有機発光層、正孔輸送層、キャリア注入層及びインターレイヤを含む層を発光媒体層という。
【0010】
理想的にはRGBのそれぞれに対して異なる発光媒体層を用いることで性能を引き出すことが可能であるが、量産プロセスにおいて工程が増えることと、高精細パターニングが困難であることから、発光媒体層はRGB共通の塗布膜が形成されることが一般的である。
【0011】
しかし、種々の発光媒体層はある一定以上の温度で焼成することで硬化する性質を持つ。従って、膜厚が厚すぎたり、焼成温度が低すぎたり、焼成時間が短すぎたりすると硬化が十分に進まず、種々の発光媒体層を塗布した際の膜減り及び界面での溶解反応の原因となってしまう。
【0012】
さらに、ウェットコーティング法を用いて画素に塗布していく場合、ウェット液により画素を隔てた隔壁近傍の膜厚が極端に厚くなり、画素の中心部分が強く光るような現象が起きてしまう。この場合、強く光る領域が狭くなってしまう為、有機EL表示装置の全体の輝度を得る為に、より多い電流を流すこととなり、画素の中心部分への負荷が大きくなり輝度寿命や発光効率が大幅に減少することとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−93668号公報
【特許文献2】特開2001155858号公報
【特許文献3】特許第2916098号公報
【特許文献4】特許第2851185号公報
【特許文献5】特許第2916098号公報
【特許文献6】特許第2851185号公報
【特許文献7】特開平9−63771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、画素内の平坦性を良好にして局所的な発光材料への負荷を減らすことで、画素内を均一に発光させることができる有機EL素子及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の請求項1に係る発明は、基板を準備し、基板上に複数の第一電極の間に配置され、前記第一電極の端部を覆って突出する隔壁を形成し、第一電極上及び突出する隔壁の近傍に有機発光層を含む複数の発光媒体層の内のインターレイヤをウェットコーティング法により形成し、前記第一電極上の前記インターレイヤを硬化させ、突出する隔壁の近傍のインターレイヤの一部が未硬化な状態となるように、前記インターレイヤを形成した面とは反対側の面から加熱し、インターレイヤの未硬化な箇所を除去し、前記インターレイヤ上に第二電極を形成し、前記突出する隔壁は0.5μm以上2μm以下の高さに形成し、前記インターレイヤは前記突出する隔壁を覆うように前記ウェットコーティング法により形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法としたものである。
【0018】
本発明の請求項に係る発明は、インターレイヤを焼成処理する際の温度が150℃以上250℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子の製造方法としたものである。
【0019】
本発明の請求項に係る発明は、インターレイヤを焼成処理する際の時間が10分以上30分以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機EL素子の製造方法としたものである。
【0020】
本発明の請求項に係る発明は、突出する隔壁の近傍に形成されたインターレイヤの厚膜な箇所を無機溶剤、有機溶剤あるいはこれらの混合溶液により洗い流すことにより除去することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法としたものである。
【0021】
本発明の請求項に係る発明は、突出する隔壁の近傍に形成されたインターレイヤの厚膜な箇所を無機溶剤、有機溶剤あるいはこれらの混合溶液の蒸気にさらすことにより除去することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法としたものである。
【0022】
本発明の請求項に係る発明は、請求項1乃至請求項のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法を用いて形成されたことを特徴とする有機EL素子としたものである。
【0023】
本発明の請求項に係る発明は、請求項1乃至請求項のいずれかに記載の有機EL素子の製造方法を用いて形成された有機EL素子を有することを特徴とする画像表示装置としたものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、画素内の平坦性を良好にして局所的な発光材料への負荷を減らすことで、画素内を均一に発光させることができる有機EL素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係る有機EL素子を示す概略断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る赤、緑、青3画素の有機EL素子を示す概略断面図である。
図3】従来の有機EL素子の隔壁近傍に形成されるインターレイヤの厚膜箇所を示す概略断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。実施の形態において、同一構成要素には同一符号を付けることにする。
【0027】
本発明の実施の形態に係る有機EL素子100においては、塗布により発光媒体層を形成し、焼成する工程を含む有機EL素子100の製造方法に適用することができる。以下、第一電極2と有機発光層5との間に形成されるインターレイヤに適用する場合について説明するが、本発明は、これに限定されるわけではない。
【0028】
図1は、本発明の実施の形態に係る有機EL素子100を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明の実施の形態に係る有機EL素子100は、基板1と、基板1上に形成された第一電極2と、第一電極2に対向するように形成された第二電極7と、第一電極2と第二電極7とに挟持された発光媒体層6とを備える。発光媒体層6には、少なくとも発光に寄与する有機発光層5と、電子あるいは正孔を注入するキャリア注入層として、第一キャリア注入層3とインターレイヤ4とを含んでいる。なお、インターレイヤ4としては、第二電極7と有機発光層5との間に電子注入層や正孔ブロック層(図示せず)、第一電極2と有機発光層5との間に正孔注入層や電子ブロック層等を必要に応じて積層することができる。また、上述した発光媒体層6は、大気中の水分や酸素によって容易に劣化してしまうため、外部と遮断する封止体9と、封止体9を接着する封止樹脂10とを用いて有機EL素子を密閉する。
【0029】
次に、図2に示す有機EL素子200において、基板1上の第一電極2を隔てて、発光媒体層6を区画する隔壁8について説明する。図2に示す有機EL素子200は、基板1上に第一電極2を形成して、第一電極2の端部に発光媒体層6を区画する隔壁8を有する。このような、有機EL素子200を画素(サブピクセル)として配列することにより、有機EL表示装置とすることができる。例えば図2に示すように、有機発光層5を赤色有機発光層5R、緑色有機発光層5G及び青色有機発光層5Bの3色に塗り分けることで、フルカラーの有機EL表示装置を作製することができる。
【0030】
また、図2に示す本発明の実施の形態に係る有機EL素子20において、第一キャリア注入層3は、第一電極2と有機発光層5との間に形成され、第一キャリア注入層3は少なくとも一部が隔壁8で挟持される。すなわち、基板1上かつ隣接する隔壁8の間に第一キャリア注入層3が形成される。さらに、インターレイヤ4は、基板1上の第一電極2の全面を覆うように形成され、第二電極7は、基板1上の隔壁8及び有機発光層5を含み、駆動方式に応じてストライプ状にあるいは全面を覆うように形成される。
ている。
【0031】
しかし、インターレイヤ4が第一電極2の全面を覆うように形成すると、図3に示すように、隔壁8上に厚膜な箇所が生じてしまう。このことにより、隔壁8近傍の膜厚が極端に厚くなり、画素の中心部分が強く光る現象が起きてしまう。つまり、画素の中心部分が強く光る現象の原因となる隔壁8近傍の膜厚な箇所を除去し、無機溶剤、有機溶剤あるいはこれらの混合溶液を用いて除去することによりインターレイヤ4の膜面を平坦にすることで、発光を均一に保つことができる。
【0032】
インターレイヤ4以外の発光媒体層6の場合でも、熱によって硬化し、未硬化部分を溶剤等で除去できるものであれば、適用することができる。熱硬化させる焼成工程では、第一電極2上に形成された発光媒体層6の領域は硬化させる必要がある。そして、隔壁8表面の厚膜形成部分を未露光状態とする。したがって、加熱方法としては、基板1側からホットプレート等で加熱し、発光媒体層6の膜面方向で熱勾配を持たせることが好ましい。このようにすれば、温度や加熱時間の制御により発光媒体層6の厚膜部分を第二電極7側から未硬化な状態に調整することができる。このときの発光媒体層6を焼成する際の温度としては、150℃以上250℃以下であることが好ましい。また、発光媒体層6を焼成する時間は、10分以上30分以下であることが好ましい。ここで、発光媒体層6を焼成する際の温度が250℃を超えると、発光媒体層6の膜減りが生じてしまい、150℃未満だと、積層された発光媒体層6の界面での溶解反応起きてしまう。また、発光媒体層6を焼成する時間が30分を超えると、厚膜形成部分を含め発光媒体層6が露光状態になってしまい、発光媒体層6を焼成する時間が10分未満だと、厚膜形成部分を未露光状態にできなくなってしまう。
【0033】
次に、無機溶剤、有機溶剤あるいはこれらの混合溶液を基板1上に塗布して未硬化部分を洗い流し、除去する。このときの溶剤は、例えば除去する発光媒体層6の塗布時のインキ溶剤を用いることができる。このあと加熱等による乾燥工程で溶剤を除去することで、未硬化部分が除去され、かつ隔壁8近傍の厚膜部分が平坦化することができる。このとき第一電極2上の表示領域中央の膜厚と等しくなるように未硬化部分を調整し、除去することが理想的である。
【0034】
以下、本発明の実施の形態の有機EL素子の構成について図1及び図2を参照して詳細に説明する。本発明の実施の形態の有機EL素子の説明をする例として、第一電極2を陽極、第二電極7を陰極とした有機EL素子について説明する。この場合には、第一電極2は、画素ごとに隔壁8で区画された画素電極として形成され、第二電極7は、基板1上の全面に形成した対向電極となる。また、第一キャリア注入層3及びインターレイヤ4は正孔輸送性の正孔注入層となる。本発明はこれに限られず、例えば各電極がそれぞれ直交するストライプ状とした有機EL素子であってもよい。また第一電極2側を陰極とした逆構造の有機EL素子としてもよい。この場合には第一キャリア注入層3及びインターレイヤ4は電子輸送性の電子注入層となる。
【0035】
<基板1>
有機EL素子の基板1としては、機械的強度、絶縁性を有し寸法安定性に優れた基板であれば如何なる材料も使用することができる。基板1として、例えば、ガラスや石英、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシート、または、これらプラスチックフィルムやシートに酸化珪素、酸化アルミニウム等の金属酸化物や、弗化アルミニウム、弗化マグネシウム等の金属弗化物、窒化珪素、窒化アルミニウムなどの金属窒化物、酸窒化珪素などの金属酸窒化物、アクリル樹脂やエポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂などの高分子樹脂膜を単層もしくは積層させた透光性基材や、アルミニウムやステンレスなどの金属箔、シート、板や、プラスチックフィルムやシートにアルミニウム、銅、ニッケル、ステンレスなどの金属膜を積層させた非透光性基材などを用いることができる。また、基板1には、あらかじめ薄膜トランジスタを形成したものを用いてもよい。有機EL素子100において、光取出しをどちらの面から行うかに応じて基板1の透光性を選択すればよい。上述した材料からなる基板1は、有機EL素子の表示装置内への水分の侵入を避けるために、無機膜を形成したり、フッ素樹脂を塗布したりして、防湿処理や疎水性処理を施してあることが好ましい。特に、発光媒体層6への水分の侵入を避けるために、基板1における含水率及びガス透過係数を小さくすることが好ましい。
【0036】
<画素電極>
基板1上に第一電極2を成膜し、必要に応じてパターニングを行う。本発明の実施の形態において、第一電極2は隔壁8によって区画され、各画素に対応した画素電極となる。第一電極2の材料としては、例えば、ITO(インジウムスズ複合酸化物)やインジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物や、金、白金などの金属材料や、これら金属酸化物や金属材料の微粒子をエポキシ樹脂やアクリル樹脂などに分散した微粒子分散膜を、単層もしくは積層したものをいずれも用いることができる。画素電極を第一電極2とする場合にはITOなど仕事関数の高い材料を選択することが好ましい。下方(基板1側)から光を取り出す、いわゆるボトムエミッション構造の場合は透光性のある材料を選択する必要がある。必要に応じて、画素電極の配線抵抗を低くするために、銅やアルミニウムなどの金属材料を補助電極として併設してもよい。画素電極の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などの乾式成膜法や、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの湿式成膜法などを用いることができる。画素電極のパターニング方法としては、材料や成膜方法に応じて、マスク蒸着法、フォトリソグラフィ法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法などの既存のパターニング法を用いることができる。
【0037】
<隔壁8>
第一電極2が形成された基板1上に感光性絶縁樹脂を塗布する。次に、感光性絶縁樹脂をパターン露光、現像して隔壁8のパターンを形成する。そして、隔壁8のパターンを焼成した後、光照射などを施して親水化させ、隔壁8を形成する。
【0038】
隔壁8の形成方法としては、従来と同様、第一電極2が形成された基板1上に無機膜を一様に形成し、レジストでマスキングした後、ドライエッチングを行う方法や、第一電極2が形成された基板1上に感光性樹脂を積層し、フォトリソグラフィ法により所定のパターンとする方法が挙げられる。必要に応じて撥水剤を添加したり、プラズマやUVを照射して形成した後にインクに対する撥液性を付与したりすることもできる。隔壁8の好ましい高さは0.1μm以上10μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上2μm以下である。隔壁8の高さが10μmより高すぎると、対向電極7の形成及び封止を妨げてしまい、隔壁8の高さが0.1μmより低すぎると、画素電極の端部を覆い切れない、あるいは発光媒体層6形成時に隣接する画素と混色してしまう。
【0039】
隔壁8を形成する感光性樹脂としては、ポジ型レジスト又はネガ型レジストのどちらであってもよく、絶縁性を有する感光性樹脂を用いることができる。隔壁8が十分な絶縁性を有さない場合に、ある画素に電圧を印加すると、隔壁8を挟んでその画素と隣り合う画素にも電流が流れてしまい表示不良が発生してしまう。隔壁8を形成する感光性樹脂の具体例としては、ポリイミド系、アクリル樹脂系、ノボラック樹脂系、フルオレン系といった樹脂が挙げられるがこれらに限定するものではない。また、有機EL素子の表示品位を上げる目的で、光遮光性の材料を感光性樹脂に含有させても良い。
【0040】
隔壁8を形成する感光性樹脂はスピンコート法、バーコート法、ロールコート法、ダイコート法、グラビアコート法などの塗布方法を用いて塗布される。塗布した感光性樹脂をパターン露光、現像して隔壁8のパターンを形成する工程では、露光、現像方法により隔壁8となる部分のパターンを形成できる。また隔壁8の焼成処理に関してはオーブン、ホットプレートなどでの方法により焼成を行うことができる。
【0041】
焼成した隔壁8のパターンに光照射を施して親水化させる工程では、隔壁8のパターンを形成した基板1の上面(基板1上の第一電極2が形成された面)から紫外線などを照射して隔壁8となる部分及び第一電極2の部分を親水化させる。照射する光としては、一般に親水化処理などの紫外線洗浄に用いられる紫外線が好ましく、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどによる紫外線照射処理が好ましい。なお、親水化処理の工程はキャリア注入層3を形成する直前に行われることが好ましい。
【0042】
<キャリア注入層3>
キャリア注入層3は、第一電極2を覆うようにパターンあるいは全面に成膜される。キャリア注入層3を形成する正孔輸送材料としてはポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVK)誘導体、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などが挙げられる。これらの材料は溶媒に溶解または分散させ、スピンコート法等を用いた各種塗布方法や凸版印刷方法を用いて形成される。
【0043】
また正孔輸送材料として無機材料を用いる場合、無機材料としては、CuO,Cr,Mn,FeOx(x〜0.1),NiO,CoO,Pr,AgO,MoO,Bi、ZnO,TiO,SnO,ThO,V,Nb,Ta,MoO,WO,MnO等の遷移金属酸化物及びこれらの窒化物、硫化物を一種以上含んだ無機化合物を用いることができる。ただし材料はこれらに限定されるものではない。無機材料は耐熱性及び電気化学的安定性に優れている材料が多いため好ましい。これらは単層もしくは複数の層の積層構造、又は混合層として形成することができる。正孔輸送層(キャリア注入層)3の好ましい膜厚は5nm以上であり、より好ましくは約15nm以上である。正孔輸送層3の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などのドライ成膜法や、スピンコート法、ゾル−ゲル法、などのウェットコーティング法など既存の成膜法を用いることができるが本発明ではこれらに限定されず、一般的な成膜法を用いることができる。
【0044】
<インターレイヤ4>
キャリア注入層3を形成後、隔壁8を覆うようにインターレイヤ4を形成する。インターレイヤ4に用いる材料として、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリアリーレン誘導体、アリールアミン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体などの、芳香族アミンを含むポリマーなどが挙げられる。これらの材料を水、有機溶媒あるいはこれらの混合溶剤に溶解または分散させ、インキとしてウェットコーティング法により形成する。
【0045】
有機溶剤としては、トルエン、キシレン、アニソール、メシチレン、テトラリン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが使用できる。またインキには、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤などを添加してもよい。インターレイヤ4の成膜方法としては、スピンコート法、ゾル−ゲル法、などのウェットコーティング法など既存の成膜法を用いることができるが本発明ではこれらに限定されず、一般的な成膜法を用いることができる。
【0046】
インターレイヤ4は焼成により架橋し硬化する。したがって、前述のように、焼成処理の際に第一電極2側(基板1側)から加熱することにより、隔壁8に乗り上げた厚膜領域の一部を未硬化とし、溶剤で未硬化部分を洗い流すことにより、平坦性の高いインターレイヤ4を形成することができる。
【0047】
<有機発光層5>
インターレイヤ4を形成後、有機発光層5を形成する。有機発光層5は電流を通すことにより発光する層であり、有機発光層5から放出される表示光が単色の場合、インターレイヤ4を被覆するように形成するが、多色の表示光を得るには必要に応じてパターニングを行うことにより好適に用いることができる。
【0048】
有機発光層5を形成する有機発光材料は、例えばクマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系などの発光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系やポリフルオレン系の高分子材料が挙げられるが本発明ではこれらに限定されるわけではない。
【0049】
これらの有機発光材料は溶媒に溶解または安定に分散させ有機発光インキとなる。有機発光材料を溶解または分散する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどの単独またはこれらの混合溶媒が上げられる。中でもトルエン、キシレン、アニソールといった芳香族有機溶媒が有機発光材料の溶解性の面から好適である。また、有機発光インキには必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等を添加してもよい。
【0050】
上述した高分子材料に加え、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス[8−(パラ−トシル)アミノキノリン]亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレンなどの低分子系発光材料が使用できる。
【0051】
有機発光層5の形成方法としては、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などのドライ成膜法や、インクジェット印刷法、凸版印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などのウェット成膜法など既存の成膜法を用いることができるが本発明ではこれらに限定されるわけではない。
【0052】
<電子注入層>
有機発光層5を形成した後、正孔ブロック層や電子注入層等を形成する。これらの機能層(発光媒体層6)は、有機EL表示装置の大きさ等から任意に選択することができる。正孔ブロック層及び電子注入層に用いる材料としては、一般に電子輸送材料として用いられているものであれば良く、トリアゾール系、オキサゾール系、オキサジアゾール系、シロール系、ボロン系等の低分子系材料、フッ化リチウムや酸化リチウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の塩や酸化物等を用いて真空蒸着法による成膜が可能である。また、これらの電子輸送性材料及びこれら電子輸送材料をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に溶解させトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独または混合溶媒に溶解または分散させて電子注入塗布液とし、印刷法により成膜できる。
【0053】
<第二電極7>
次に、第二電極7を形成する。第二電極7を陰極とする場合には、有機発光層5への電子注入効率の高い、仕事関数の低い物質を用いる。具体的にはMg,Al,Yb等の金属単体を用いたり、発光媒体層6と接する界面にLiや酸化Li,LiF等の化合物を1nm程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いたりしてもよい。または電子注入効率と安定性を両立させるため、仕事関数が低いLi,Mg,Ca,Sr,La,Ce,Er,Eu,Sc,Y,Yb等の金属1種以上と、安定なAg,Al,Cu等の金属元素との合金系を用いてもよい。具体的にはMgAg,AlLi,CuLi等の合金が使用できる。
【0054】
第二電極7の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を用いることができる。
【0055】
<封止体9>
有機EL素子100としては電極間に有機発光材料を挟み、電流を流すことで発光させることが可能であるが、有機発光材料は大気中の水分や酸素によって容易に劣化してしまうため通常は外部と遮断するための封止体9を設ける。封止体9は例えば封止材上に封止樹脂10を設けて作製することができる。
【0056】
封止材としては、水分や酸素の透過性が低い基材である必要がある。また、材料の一例として、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等のセラミックス、無アルカリガラス、アルカリガラス等のガラス、石英、耐湿性フィルムなどを挙げることができる。耐湿性フィルムの例として、プラスチック基材の両面にSiOxをCVD法で形成したフィルムや、透過性の小さいフィルムと吸水性のあるフィルムまたは吸水剤を塗布した重合体フィルムなどがあり、耐湿性フィルムの水蒸気透過率は、10−6g/m/day以下であることが好ましい。
【0057】
封止樹脂10の材料の一例として、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン樹脂などからなる光硬化型接着性樹脂、熱硬化型接着性樹脂、2液硬化型接着性樹脂や、エチレンエチルアクリレート(EEA)ポリマー等のアクリル系樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)等のビニル系樹脂、ポリアミド、合成ゴム等の熱可塑性樹脂や、ポリエチレンやポリプロピレンの酸変性物などの熱可塑性接着性樹脂を挙げることができる。樹脂層を封止材の上に形成する方法の一例として、溶剤溶液法、押出ラミ法、溶融・ホットメルト法、カレンダ法、ノズル塗布法、スクリーン印刷法、真空ラミネート法、熱ロールラミネート法などを挙げることができる。必要に応じて吸湿性や吸酸素性を有する材料を含有させることもできる。封止材上に形成する樹脂層の厚みは、封止する有機EL素子の大きさや形状により任意に決定されるが、5μm〜500μmが望ましい。なお、ここでは封止材上に封止樹脂10として形成したが直接有機EL素子側に形成することもできる。
【0058】
最後に、有機EL素子と封止体9との貼り合わせを封止室で行う。封止体9を、封止材と封止樹脂10の2層構造とし、封止樹脂10に熱可塑性樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着のみ行うことが好ましい。熱硬化型接着樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着した後、さらに硬化温度で加熱硬化を行うことが好ましい。光硬化性接着樹脂を使用した場合は、ロールで圧着した後、さらに光を照射することで硬化を行うことができる。
【0059】
本発明の実施の形態に係る有機EL素子において、発光媒体層6をウェットコーティング法により塗布する際に形成された隔壁8近傍の厚膜な箇所を発光媒体層6の焼成時間及び焼成条件を調整し、隔壁8近傍に形成された未硬化な厚膜箇所を除去することで、画素内の平坦性を良好にし、局所的な発光材料への負荷を減らすことで有機EL素子を均一に発光させることができる。
【実施例1】
【0060】
以下、本発明の有機EL素子の実施例を挙げるが、本発明は実施例に何ら制限されるものではない。
【0061】
まず、基板1として対角1.8インチサイズのガラス基板を準備した。次に、ガラス基板1上にスパッタリング法を用いてITO(インジウム−錫酸化物)薄膜を形成し、フォトリソグラフィ法により第一電極2のパターンを描き、酸溶液によるエッチングでITO膜をパターニングして、第一電極2を形成した。第一電極2のラインパターンは、線幅136μm、スペース30μmでラインが約32mm角の中に192ラインを形成するパターンとした。
【0062】
次に、隔壁8を形成した。隔壁8は、第一電極2を形成したガラス基板1上に、東レ社製、フォトニース、商品名「DL−1000」で表示されるポジ型感光性ポリイミドを全面スピンコートした。スピンコートの条件は、150rpmで5秒間回転させた後、500rpmで20秒間回転させ1回コーティングとした。感光性ポリイミドは、隔壁8の高さを1.5μmとするように約1.5μmの厚さで塗布した。次に、全面に塗布した感光性ポリイミドに対し、フォトリソグラフィ法により露光、現像を行い、第一電極2の間に配置される隔壁8となる部分のラインパターンを形成した。隔壁8のパターンは230℃、30分間オーブンにて焼成を行い、隔壁8を形成した。
【0063】
次に、第一キャリア注入層(正孔輸送層)3を印刷する前の基板(第一電極2及び隔壁8が形成された基板1)に、前処理としてオーク製作所製、UV/O洗浄装置にて3分間紫外線照射を行い親水化させた。親水化処理した基板に、正孔輸送層3を形成するインキとして、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸(以下PEDOT/PSS)の1wt%水分散液とを、印刷法を用いて表示領域となる部分が膜厚70nmになるように成膜し、200℃、15分間大気中で焼成を行った。
【0064】
次に、インターレイヤ4の材料であるポリビニルカルバゾール誘導体を濃度0.5%になるようにトルエンに溶解させたインキを用い、基板(第一電極2、正孔輸送層3及び隔壁8が形成された基板1)上にスピンコート法を用いて表示領域となる部分が膜厚30nmになるように成膜し、200℃、15分間大気中で発光媒体層の焼成を行った。
【0065】
その後、200℃、15分間の焼成では硬化しきらなかった、隔壁8の近傍に形成されたインターレイヤ4の厚膜な箇所をトルエンで洗い流した。洗浄後の発光媒体層6のパターニング状態を観察したところ、各画素内の発光媒体層6は均一な膜形状を保持し、隔壁8の近傍に成膜されたインターレイヤ4の隔壁8の近傍に形成された厚膜な箇所はきれいに除去されていることが確認できた。このときの発光媒体層6の膜厚は20nmであった。
【0066】
有機発光材料であるポリフェニレンビニレン誘導体を濃度1%になるようにトルエンに溶解させた有機発光インキを用い、隔壁8に挟まれた画素部位にある第一電極2の真上に、そのラインパターンにあわせて有機発光材料を凸版印刷法で印刷して有機発光層5を形成し、乾燥させた。印刷、乾燥後の有機発光層5の膜厚は100nmとなった。
【0067】
次に、有機発光層5上にCa、Alからなる第二電極7を第一電極2のラインパターンと直交するようなラインパターンで抵抗加熱蒸着法によりマスク蒸着して形成した。以上の手順で有機EL素子20を形成し、最後に、有機EL素子を外部の酸素や水分から保護するために封止体9としてのガラスキャップで覆い、封止樹脂10としての接着剤を用いてガラスキャップを接着して有機EL素子20を密閉封止し、有機EL素子を作製した。
【0068】
得られた有機EL素子の表示部の第一電極2と第二電極7を電源に接続して印加することにより、得られた有機EL素子の点灯表示確認を行った。
【0069】
画像表示装置にした際に最低限必要な輝度は1000cdであるが、得られた有機EL素子を駆動したところ、画素内で1000cdを均一に点灯できた面積は、発光画素の80%であった。
【実施例2】
【0070】
インターレイヤ4を形成後、トルエンの蒸気にさらすことでインターレイヤ4の厚膜な箇所の除去を行った。その他の条件は実施例1と同様である。
【0071】
得られた有機EL素子の表示部の第一電極2と第二電極7を電源に接続して印加することにより、得られた有機EL素子の点灯表示確認を行った。
【0072】
得られた有機EL素子を駆動したところ、画素内で1000cdを均一に点灯できた面積は、発光画素の80%であった。
【0073】
[比較例]
インターレイヤ4を成膜後、無機溶剤、有機溶剤あるいはこれらの混合溶液を用いて厚膜の箇所の除去を一切行わなかった。その他の条件は実施例1と同様である。
【0074】
得られた有機EL素子の表示部の第一電極2と第二電極7を電源に接続して印加することにより、得られた有機EL素子の点灯表示確認を行った。
【0075】
さらに、得られた有機EL素子を駆動したところ、画素内で1000cdを均一に点灯できた面積は、発光画素の50%であった。
【0076】
本発明の実施例1及び2に係る有機EL素子によれば、インターレイヤ4の隔壁8近傍に形成された厚膜な箇所を除去することにより画素を均一に発光させることができた。
【符号の説明】
【0077】
1…基板、2…第一電極、3…キャリア注入層、4…インターレイヤ、5…有機発光層、5R…発光媒体層(赤色有機発光層)、5G…発光媒体層(緑色有機発光層)
5B…発光媒体層(青色有機発光層)、7…第二電極、8…隔壁、9…封止体、10…封止樹脂、100…有機EL素子、200…3画素の有機EL素子
図1
図2
図3