(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ホイールモデルは、前記タイヤモデルの前記路面モデルとの接地面とは反対側の面を閉じられた空間とすることを特徴とする請求項1に記載のシミュレーションモデル作成方法。
前記タイヤ形状算出ステップは、前記パターンの一定角度幅よりも小さい角度で前記タイヤモデルを回転させることを特徴とする請求項1または2に記載のシミュレーションモデル作成方法。
前記第2モデル作成ステップは、前記メッシュを、前記タイヤの周囲に形成され、前記タイヤ形状の時間変化に応じてメッシュ構造が変化する第1メッシュ領域と、前記第1メッシュ領域の外周に形成され、メッシュ構造が変化しない第2メッシュ領域とを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のシミュレーションモデル作成方法。
前記第2モデル作成ステップは、前記タイヤモデル及び前記ホイールモデルに前記タイヤを装着する車両の少なくとも一部のモデルを組み合わせたモデルを含む領域をメッシュに分割したモデルを作成することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のシミュレーションモデル作成方法。
前記第2モデル作成部は、前記メッシュを、前記タイヤの周囲に形成され、前記タイヤ形状の時間変化に応じてメッシュ構造が変化する第1メッシュ領域と、前記第1メッシュ領域の外周に形成され、メッシュ構造が変化しない第2メッシュ領域とを含むことを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載のシミュレーションモデル作成装置。
前記第2モデル作成部は、前記タイヤモデル及び前記ホイールモデルに前記タイヤを装着する車両の少なくとも一部のモデルを組み合わせたモデルを含む領域をメッシュに分割したモデルを作成することを特徴とする請求項8から12のいずれか1項に記載のシミュレーションモデル作成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、タイヤの性能を評価するためには、シミュレーションモデルとして、条件に対応する各時間のタイヤの形状を算出する必要がある。例えば、特許文献1や特許文献2に記載のシミュレーション方法ではタイヤモデルを路面モデルに接地させた状態でタイヤを回転させる演算を行い、つまり変形計算を繰り返し行い、タイヤの形状を算出している。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載のシミュレーション方法のように、タイヤモデルと路面モデルとを相対的に回転させ、つまり転動状態のタイヤモデルの、各時間のタイヤの形状を算出することを繰り返すと、タイヤの形状の算出のために行う計算が多くなる。このように計算量が多くなると、解析に係る時間が長くなり、また、コンピュータへの負荷が多くなる。特に、ラグ溝等が形成されており周方向において形状が変化する空気入りタイヤの場合は、計算量が多くなる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、タイヤの解析に用いるシミュレーションモデルをより簡単に作成することができるシミュレーションモデル作成方法、シミュレーション方法、シミュレーションモデル作成装置、及びシミュレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、空気入りタイヤの周囲の領域のシミュレーションモデル作成方法であって、タイヤ周方向に不均一なタイヤモデル、路面モデル、ホイールモデルを作成し、境界条件を設定する第1モデル作成ステップと、前記第1モデル形成ステップで作成したタイヤモデルの接地解析を実施し、接地した状態のタイヤ形状を算出するタイヤ形状算出ステップと、前記タイヤ形状算出ステップで算出したタイヤ形状を変換して転動状態のタイヤ形状を時系列で作成するタイヤ転動形状作成ステップと、前記タイヤ転動形状作成ステップで得られた各時間のタイヤ形状に接する領域を含む領域をメッシュに分割したモデルを作成する第2モデル作成ステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
また、前記ホイールモデルは、前記タイヤモデルの前記路面モデルとの接地面とは反対側の面を閉じられた空間とすることが好ましい。
【0009】
また、前記タイヤ形状算出ステップは、さらに、前記第1モデル作成ステップで形成した条件から、前記タイヤモデルを回転させた条件の接地解析を実施し、接地した状態のタイヤ形状も算出し、前記タイヤ転動形状作成ステップは、それぞれ算出した、接地した状態のタイヤ形状を変換して転動状態のタイヤ形状を時系列で作成することが好ましい。
【0010】
また、前記タイヤモデルは、一定回転角幅のパターンが、繰り返し配置された形状であり、前記タイヤ形状算出ステップは、前記パターンの一定角度幅よりも小さい角度で前記タイヤモデルを回転させることが好ましい。
【0011】
また、前記タイヤモデルは、一定回転角幅のパターンが、繰り返し配置された形状であることが好ましい。
【0012】
また、前記タイヤ転動形状作成ステップは、前記タイヤの形状から、前記パターン内における位置が同一となる対応点の座標と周方向回転角との情報を前記パターン毎に抽出し、抽出した周方向回転角を時間に変換して、対応点の座標と時間との関係を対応点毎に検出し、検出した対応点の座標と時間との関係を時間毎に抽出し、転動状態のタイヤ形状を時系列で算出することが好ましい。
【0013】
また、前記タイヤ転動形状作成ステップは、前記タイヤの形状から、前記対応点同士を結んだ転動軌道上の任意の点を前記対応点として抽出することが好ましい。
【0014】
また、前記第2モデル作成ステップは、前記メッシュを、前記タイヤの周囲に形成され、前記タイヤ形状の時間変化に応じてメッシュ構造が変化する第1メッシュ領域と、前記第1メッシュ領域の外周に形成され、メッシュ構造が変化しない第2メッシュ領域とを含むことが好ましい。
【0015】
また、前記第2モデル作成ステップは、前記タイヤモデル及び前記ホイールモデルに前記タイヤを装着する車両の少なくとも一部のモデルを組み合わせたモデルを含む領域をメッシュに分割したモデルを作成することが好ましい。
【0016】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るシミュレーション方法は、上記のいずれかに記載のシミュレーションモデル作成方法により、前記タイヤ転動形状作成ステップで得られた各時間のタイヤ形状に接する領域を含む領域をメッシュに分割したモデルを作成し、作成したモデルを用いて、流体解析を行うことを特徴とする。
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、空気入りタイヤの周囲の領域のシミュレーションモデル作成装置であって、タイヤ周方向に不均一なタイヤモデル、路面モデル、ホイールモデルを作成し、境界条件を設定する第1モデル作成部と、前記第1モデル作成部で作成したタイヤモデルの接地解析を実施し、接地した状態のタイヤ形状を算出するタイヤ形状算出部と、前記タイヤ形状算出部で算出したタイヤ形状を変換して転動状態のタイヤ形状を時系列で作成するタイヤ転動形状作成部と、前記タイヤ転動形状作成部で得られた各時間のタイヤ形状に接する領域を含む領域をメッシュに分割したモデルを作成する第2モデル作成部と、を有することを特徴とする。
【0018】
また、前記ホイールモデルは、前記タイヤモデルの前記路面モデルとの接地面とは反対側の面を閉じられた空間とすることが好ましい。
【0019】
また、前記タイヤ形状算出部は、さらに、前記第1モデル作成部で形成した条件から、前記タイヤモデルを回転させた条件の接地解析を実施し、接地した状態のタイヤ形状も算出し、前記タイヤ転動形状作成部は、それぞれ算出した、接地した状態のタイヤ形状を変換して転動状態のタイヤ形状を時系列で作成することが好ましい。
【0020】
また、前記タイヤモデルは、一定回転角幅のパターンが、繰り返し配置された形状であり、前記タイヤ形状算出部は、前記パターンの一定角度幅よりも小さい角度で前記タイヤモデルを回転させることが好ましい。
【0021】
また、前記タイヤモデルは、一定回転角幅のパターンが、繰り返し配置された形状であることが好ましい。
【0022】
また、前記タイヤ転動形状作成部は、前記タイヤの形状から、前記パターン内における位置が同一となる対応点の座標と周方向回転角との情報を前記パターン毎に抽出し、抽出した周方向回転角を時間に変換して、対応点の座標と時間との関係を対応点毎に検出し、検出した対応点の座標と時間との関係を時間毎に抽出し、転動状態のタイヤ形状を時系列で算出することが好ましい。
【0023】
また、前記タイヤ転動形状作成部は、前記タイヤの形状から、前記対応点同士を結んだ転動軌道上の任意の点を前記対応点として抽出することが好ましい。
【0024】
また、前記第2モデル作成部は、前記メッシュを、前記タイヤの周囲に形成され、前記タイヤ形状の時間変化に応じてメッシュ構造が変化する第1メッシュ領域と、前記第1メッシュ領域の外周に形成され、メッシュ構造が変化しない第2メッシュ領域とを含むことが好ましい。
【0025】
また、前記第2モデル作成部は、前記タイヤモデル及び前記ホイールモデルに前記タイヤを装着する車両の少なくとも一部のモデルを組み合わせたモデルを含む領域をメッシュに分割したモデルを作成することが好ましい。
【0026】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るシミュレーション装置は、上記のいずれかに記載のシミュレーションモデル作成装置により、前記タイヤ転動形状作成ステップで得られた各時間のタイヤ形状に接する領域を含む領域をメッシュに分割したモデルを作成し、作成したモデルを用いて、流体解析を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明のシミュレーションモデル作成方法、シミュレーション方法、シミュレーションモデル作成装置、及びシミュレーション装置は、タイヤの解析に用いるシミュレーションモデルをより簡単に作成することができ、計算量を少なくし、評価をより短時間で行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の発明を実施するための形態(以下実施形態という)の内容によりこの発明が限定されるものではない。また、以下に説明する構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。
【0030】
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向を意味し、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう側、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から離れる側を意味する。タイヤ径方向とは、空気入りタイヤの回転軸と直交する方向を意味し、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とは、タイヤ径方向において回転軸から離れる側を意味する。タイヤ周方向とは、回転軸を中心軸とする周方向を意味する。タイヤ赤道面とは、空気入りタイヤの回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤのタイヤ幅の中心を通る平面を意味する。
【0031】
図1は、タイヤの斜視図であり、
図2は、
図1に示すタイヤの子午断面図であり、
図3は、
図1に示すタイヤのトレッド面の概略構成を示す正面図である。
図1に示すように、タイヤ1は、回転軸を中心として回転する環状構造体である。また、
図2に示すように、タイヤ1の子午断面には、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4、ビードコア5が現れている。なお、タイヤ1のタイヤ径方向外側(路面との接地面側)には、キャップトレッド6が配置されている。タイヤ1は、母材であるゴムを、補強材であるカーカス2、ベルト3、あるいはベルトカバー4等の補強コードによって補強した複合材料の構造体である。ここで、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4等の、金属繊維や有機繊維等のコード材料で構成される補強コードの層をコード層という。
【0032】
カーカス2は、タイヤ1に空気を充填した際に圧力容器としての役目を果たす強度メンバーであり、その内圧によって荷重を支え、走行中の動的荷重に耐えるようになっている。ベルト3は、キャップトレッド6とカーカス2との間に配置されたゴム引きコードを束ねた補強コードの層である。なお、バイアスタイヤの場合にはブレーカと呼ぶ。ラジアルタイヤにおいて、ベルト3は形状保持及び強度メンバーとして重要な役割を担っている。
【0033】
ベルト3の踏面G側には、ベルトカバー4が配置されている。ベルトカバー4は、例えば有機繊維材料を層状に配置したものであり、ベルト3の保護層としての役割や、ベルト3の補強層としての役割を持つ。ビードコア5は、内圧によってカーカス2に発生するコード張力を支えているスチールワイヤの束である。ビードコア5は、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4及びトレッドとともに、タイヤ1の強度部材となる。
【0034】
キャップトレッド6の踏面G側(トレッド面)には、
図2及び
図3に示すように、タイヤ周方向に延在する4本の溝7a、7b、7c、7dが形成される。これによって、雨天走行時の排水性を向上させる。また、4本の溝7a、7b、7c、7dが形成されることで、キャップトレッド6は、溝7aよりのタイヤ幅方向外側の陸部11aと、溝7aと溝7bとの間の陸部11bと、溝7bと溝7cとの間の陸部11cと、溝7cと溝7dとの間の陸部11dと、溝7dよりのタイヤ幅方向外側の陸部11eとが形成される。陸部11cが、タイヤ赤道面Cを通る位置に形成されている。また、陸部11cには、溝7a、7b、7c、7dよりも溝幅が狭く、溝深さが浅い飾り溝12が形成されている。さらに、陸部11bには、タイヤ幅方向に延びて、溝7aから溝7bまで延在するラグ溝14が、タイヤ周方向に一定間隔で複数形成されている。これにより、陸部11bは、主溝7aと主溝7bとラグ溝14とで囲われたブロック16が列上に複数配置された形状となる。また、陸部11dにも、タイヤ幅方向に延びて、溝7cから溝7dまで延在するラグ溝14が、タイヤ周方向に一定間隔で複数形成されている。これにより、陸部11dは、主溝7cと主溝7dとラグ溝14とで囲われたブロック16が列上に複数配置された形状となる。このように、タイヤ1は、陸部11b、11dに周方向に一定間隔で、ラグ溝14が形成されている。このため、タイヤ1は、周方向に不均一な形状、つまり、タイヤ周方向に凹凸が形成された形状となっている。また、タイヤ1は、タイヤ周方向に一定間隔でラグ溝14とブロック16とが交互に形成されている。以上より、タイヤ1は、タイヤ周方向において、ピッチP毎に同じ形状が繰り返す形状となっている。つまり、タイヤ1は、回転軸を中心として、ピッチPに対応する一定角度分の形状が繰り返し単位となり、ピッチPに対応する一定角度分の形状周方向に複数個並べた形状となる。
【0035】
また、タイヤ1の側部はサイドウォール8と呼ばれており、ビードコア5とキャップトレッド6との間を接続する。また、キャップトレッド6とサイドウォール8との間はショルダー部Shである。
【0036】
次に、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法を実行する装置について説明する。
図4は、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法を実行するシミュレーション装置を示す説明図である。本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法は、
図4に示すシミュレーション装置50によって実現できる。
図4に示すように、シミュレーション装置50は、処理部52と記憶部54とで構成される。また、このシミュレーション装置50には、入出力装置51が電気的に接続されており、ここに備えられた入力手段53でタイヤモデルを構成するゴムの物性値や補強コードの物性値、あるいは変形解析における境界条件等を処理部52や記憶部54へ入力する。また、シミュレーション装置50は、入出力装置51の表示手段55に算出結果、入力結果等、種々の情報を表示させる。
【0037】
ここで、入力手段53には、キーボード、マウス等の入力デバイスを使用することができる。記憶部54には、タイヤの変形解析や本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法を含むコンピュータプログラムが格納されている。ここで、記憶部54は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
【0038】
また、上記コンピュータプログラムは、コンピュータシステムにすでに記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、種々のタイヤのシミュレーション方法を実現できるものであってもよい。また、処理部52の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより構造物の変形解析や本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法を実行してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
【0039】
処理部52は、第1モデル作成部52aと、接地解析部52bと、解析結果変換部52cと、第2モデル作成52dと、流体解析部52eと、評価部52fとを含む。第1モデル作成部52aは、接地解析(変形解析)に供する解析モデルを作成して、記憶部54に格納する。なお、解析モデルとしては、タイヤモデル、路面モデル、ホイールモデルを作成する。また、境界条件の設定処理も行う。なお、これらのモデル、境界条件は、利用者が入力手段53から入力した数値等に基づいて作成、設定する。接地解析部52bは、第1モデル作成部52aで作成したモデルを記憶部54から読み出し、設定した条件で接地解析を実行する。解析結果変換部52cは、接地解析部52bで接地解析して取得したタイヤ形状から対応点を抽出し、対応点の位置、回転角の情報及び速度情報を用いて接地解析した結果を、転動状態のタイヤ形状の時系列データに変換する。第2モデル作成部52dは、解析結果変換部52cで変換した転動状態のタイヤ形状の時系列データを用いて、各時刻におけるタイヤ形状の周囲をモデル化する。本実施形態では、タイヤ形状の周囲に流体メッシュを作成したモデルを作成する。流体解析部52eは、第2モデル作成部52dで作成したモデルを、設定した条件で流体解析する。なお、流体解析部52eでの解析に用いる条件も、利用者が入力手段53から入力した数値等に基づいて作成、設定することができる。評価部52fは、流体解析部52eで解析した結果に基づいて、タイヤの性能を評価する。ここで、評価対象としては、タイヤ周囲の空気の流れ、タイヤの空気抵抗、タイヤの音響、タイヤのノイズ等がある。
【0040】
処理部52は、例えば、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されている。接地解析時、流体解析時においては、第1モデル作成部52aが作成した解析モデル、第2モデル作成部52dや入力データ等に基づいて、処理部52が前記プログラムを処理部52に組み込まれたメモリに読み込んで演算する。その際に処理部52は、記憶部54へ演算途中の数値を適宜格納し、また記憶部54へ格納した数値を取り出して演算を進める。なお、この処理部52は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアによって、その機能を実現するものであってもよい。
【0041】
ここで、表示手段55には、液晶表示装置やCRT(Cathode Ray Tube)等を使用することができる。また、シミュレーションの結果や、シミュレーションの条件等は、必要に応じて設けられた印刷機により、紙等の被記録媒体に出力することもできるので、表示手段55として印刷機を用いてもよい。ここで、記憶部54は、他の装置(例えばデータベースサーバ)内にあってもよい。例えば、シミュレーション装置50は、入出力装置51を備えた端末装置から通信により処理部52や記憶部54にアクセスするものであってもよい。
【0042】
次に、本実施形態に係るシミュレーションモデル作成方法及びタイヤのシミュレーション方法を説明する。なお、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法は、上述したシミュレーション装置により実現できる。
図5は、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。なお、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法は、本実施形態に係るシミュレーションモデルの作成方法によりシミュレーションモデルを作成する。
図6−1は、タイヤモデルの一例を示す断面図である。
図6−2は、
図6−1に示すタイヤモデルの一例を示す部分拡大図である。なお、
図6−1は、タイヤモデルをタイヤ周方向に平行な面で切断した断面を示している。また、
図7−1は、接地解析に基づいて対応点の位置を算出した一例を示すグラフであり、
図7−2は、対応点の位置を時間の関数に変換した一例を示すグラフである。さらに、
図8は、タイヤの周辺のモデルの概略構成を示す斜視図である。
【0043】
本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法を実行するにあたり、ステップS12で、
図4に示すシミュレーション装置50のモデル作成部52aは、タイヤ、路面、ホイールのモデルを作成する。具体的には、
図6−1に示すように、タイヤの解析モデル(以下タイヤモデルという)60と、タイヤモデル60に装着するホイールの解析モデル(以下ホイールモデルという)64と、タイヤモデル60が接地する路面の解析モデル(以下路面モデルという)66と、を作成する。なお、モデル作成部52aは、解析に用いる境界条件も設定する。ここで、解析モデルとは、コンピュータを用いて数値解析可能なモデルであり、数学的モデルや数学的離散化モデルを含む。また、本実施形態で用いるタイヤモデル60は、
図1から
図3に示すタイヤと同様の形状であり、タイヤ周方向に一定間隔でタイヤ幅方向に延在するラグ溝が形成された形状であり、複数のブロック62が、タイヤ周方向に列上に配置された形状となる。つまり、タイヤモデル60は、周方向に不均一な形状のモデルである。
【0044】
タイヤモデル60は、有限要素法や有限差分法等の数値解析手法を用いて接地解析を行うために用いるモデルである。例えば、本実施形態では、タイヤモデル60の接地解析に有限要素法(Finite Element Method:FEM)を使用するので、タイヤモデル60は、有限要素法に基づいて作成される。なお、本実施形態に係る接地解析に適用できる解析手法は有限要素法に限られず、有限差分法(Finite Difference Method:FDM)や境界要素法(Boundary Element Method:BEM)等も使用できる。また、境界条件等によって最も適当な解析手法を選択し、又は複数の解析手法を組み合わせて使用することもできる。なお、有限要素法は、構造解析に適した解析手法なので、特にタイヤのような構造体に対して好適に適用できる。
【0045】
モデル作成部52aは、ステップS12として、環状構造体であるタイヤを、複数かつ有限個の要素に分割して、
図6−1及び
図6−2に示すようなタイヤモデル60を作成する。複数の要素は、それぞれ複数の節点で構成される。本実施形態では、タイヤモデル60は3次元形状の解析モデルとなる。
【0046】
タイヤモデル60を構成する要素は、例えば、3次元体では四面体ソリッド要素、五面体ソリッド要素、六面体ソリッド要素等のソリッド要素や三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、面要素等、コンピュータで取り扱い得る要素とすることが望ましい。このようにして分割された要素は、解析の過程においては、3次元モデルでは3次元座標や円筒座標を用いて逐一特定される。
【0047】
処理部52は、ステップS12でタイヤモデル60を作成したらステップS14へ進む。シミュレーション装置50の処理部52が備える接地解析部52bは、ステップS14として、ステップS12で作成されたタイヤモデル60の接地解析を実行する。なお、接地解析は、設定されている解析条件に基づいて実行される。解析条件は、例えば、
図4に示す入出力装置51の入力手段53を介して入力されて、記憶部54に格納される。接地解析部52bは、解析条件が設定されたら、タイヤモデル60の接地解析を実行し、路面モデル66に接地した状態のタイヤモデル60の形状を算出する。
【0048】
処理部52は、ステップS14で接地解析を行ったらステップS16に進む。シミュレーション装置50の処理部52が備える解析結果変換部52cは、ステップS16として、タイヤの各対応点の位置を抽出する。具体的には、解析結果変換部52cは、接地時のタイヤ表面の各節点のタイヤ周方向角度と座標との関係を算出する。その後、解析結果変換部52cは、算出した各節点のタイヤ周方向角度と座標との関係から、隣接するピッチの同一点の情報を対応点の情報として抽出する。つまり、本実施形態では、ブロック62における一点の位置を対応点として特定し、各ブロック62で当該対応点を検出し、その対応点のタイヤ周方向角度と座標との関係を抽出する。なお、
図6−2では、ブロック62の特定の位置の情報を対応点70の情報として抽出している。ここで、
図6−2では、ブロック62と対応点70との関係を明確にするために、ブロック62の内部に対応点70を表示させているが、対応点70は、ブロック62の表面の点(節点)である。このように、周方向に延在している多数の対応点のタイヤ周方向角度と座標との関係を検出することで、
図7−1に示すような関係を算出することができる。ここで、
図7−1は、縦軸を径方向座標[mm]とし、横軸を角度[°]とした。なお、角度0°、360°の点が、路面モデル66から最も離れた点、
図6−1中時計の12時の方向の点であり、角度180°の点が、路面モデル66から最も近い点、
図6−1中時計の6時の方向の点である。また、径方向座標は、接地面に直交する方向の座標であり、タイヤモデル60の回転中心を基準(0mm)とした。
図7−1に示す関係より、タイヤのブロック62の一点がタイヤ周方向角度の各角度において、どの位置にあるかを算出することができる。なお、
図7−1では、径方向の座標と周方向角度との関係を示したが、路面モデル66に平行でタイヤ幅方向に直交する方向、
図6−1中左右方向における座標と周方向の角度との関係も同様に算出することができる。なお、解析結果変換部52cは、ステップS16として、タイヤモデル60の表面の各点において、対応点を抽出する。つまり、タイヤモデル60は、1つのピッチ内にある表面の点(節点)毎に、対応点を抽出する。
【0049】
処理部52は、ステップS16で各対応点の位置の抽出を行ったらステップS18に進む。シミュレーション装置50の処理部52が備える解析結果変換部52cは、ステップS18として、各対応点の周方向角度を時間に変換する。具体的には、解析結果変換部52cは、タイヤ転動速度の条件を用いて、タイヤ周方向角度を時間に変換する。つまり、タイヤ転動速度に基づいて、1つの対応点が一回転する時間を算出し、各時間にどの回転角度となるかを算出し、その回転角度に対応する位置にあるステップS16で抽出した対応点の位置情報を、その時間の対応点の位置とする。これにより、
図7−1に示す任意の対応点の角度と径方向座標の関係を、
図7−2に示す1つの対応点の時間と径方向座標との関係に変換できる。ここで、
図7−2は、縦軸を径方向座標[mm]とし、横軸を時間[s]とした。例えば、タイヤが一回転する時間が、1sの場合、時間0sのとき角度0°にある対応点は、時間0.5sのとき角度180°の位置に移動し、時間1sのとき角度360°の位置に移動する。これにより、接地解析した結果から、各対応点の各時間における位置を算出することができる。なお、解析結果変換部52cは、ステップS18として、タイヤモデル60の表面の各対応点について、座標と回転角度との関係を座標と時間との関係に変換する。これにより、タイヤモデル60は、任意の時間に各点がどの座標にあるかを算出することができる。なお、タイヤモデル60の各点の座標と時間との関係は、1つのピッチ内にある表面の点(節点)毎に、対応点を抽出し、それを初期位置(初期角度)の条件に基づいて、各ピッチにある対応点毎に、時間軸をずらすことで算出することができる。
【0050】
処理部52は、ステップS18で各対応点の周方向角度を時間に変換したらステップS20に進む。シミュレーション装置50の処理部52が備える解析結果変換部52cは、ステップS20として、表面形状の時系列データを作成する。具体的には、ステップS18で算出した各対応点の座標と時間との関係を用いて、各時間におけるタイヤモデルの表面形状を算出する。つまり、各対応点の座標と時間との関係から、同じ時間における各対応点の座標(位置情報)を抽出することで、1つの時間におけるタイヤの表面形状を作成することができる。これにより、1つの時間におけるタイヤの表面形状の作成を繰り返すことで、タイヤの表面形状の時系列データを取得することができる。なお、本実施形態では、タイヤを所定の回転速度で回転させる状態として、周方向角度を時間に変換しているため、タイヤの転動時の表面形状の時系列データとなる。
【0051】
処理部52は、ステップS20でタイヤ表面形状の時系列データを作成したら、ステップS22に進む。シミュレーション装置50の処理部52が備える第2モデル作成部52dは、ステップS22として、流体解析用モデルを作成する。具体的には、ステップS20で算出したタイヤ表面形状の時系列データを用いて、各時間におけるタイヤ形状の周囲に流体メッシュを作成する。これにより、
図8に示すように、タイヤモデル60の周囲に流体メッシュ80を形成することができる。また、流体解析用のモデルは、ホイールモデル64により、タイヤモデル60の内部の空間と、タイヤモデル60の外部の空間とが別けられている(分離されている)。また、タイヤモデル60は、路面モデル66に接地されている。
【0052】
処理部52は、ステップS22で流体解析用モデルを作成したら、ステップS24に進む。シミュレーション装置50の処理部52が備える流体解析部52eは、ステップS24として、流体解析を行う。具体的には、ステップS22で作成した流体解析用モデルと各種条件に基づいて、タイヤ周囲領域を流れる流体についての解析を行う。なお、流体解析としては、空気の流れの解析や、空気抵抗の解析や、音の反響の解析や、気柱共鳴音などの流体騒音の解析がある。
【0053】
処理部52は、ステップS24で流体解析が終了したら、ステップS26に進む。シミュレーション装置50の処理部52が備える評価部52fは、ステップS26として、ステップS24の解析結果の評価を行う。具体的には、評価部52fは、流体解析の結果が条件に一致しているか、許容値を満たしているかを判定し、タイヤの性能の評価を行う。評価部52fは、タイヤの評価結果を数値で算出したり、合格、不合格等の評価で算出したりすることができる。処理部52は、タイヤの評価を行ったら、本処理を終了する。
【0054】
このように、本実施形態のシミュレーションモデル作成方法、及び、シミュレーション方法では、接地状態と転動状態とで、タイヤの表面の形状は同じになると仮定し、接地状態で算出したタイヤ表面形状から転動状態のタイヤの表面形状に変換する。これにより、準静的な接地解析からタイヤの流体解析に用いるシミュレーションモデルを作成することができる。このように、接地解析を用いて、転動解析のタイヤ表面形状を予測し、作成することで、タイヤを転動解析してタイヤの表面形状を算出するよりも、計算量を少なくすることができる。このように、計算量を少なくできることで、解析時間を短縮することができる。なお、本実施形態のように、準静的な接地解析に基づいて、シュミレーションモデルを作成することでも、転動解析によりシミュレーションモデルを作成した場合と同等の結果を得ることができる。つまり、本実施形態によって、作成したシミュレーションモデルを用いた流体解析は、タイヤを転動解析して作成したシミュレーションモデルを用いた流体解析と同等の結果を得ることができる。つまり、シミュレーションの精度を維持しつつ、計算量を少なくすることができる。これにより、効率よく、シミュレーションを行うことができる。なお、本実施形態のようにタイヤ周りの流体解析を行う場合は、タイヤの表面形状を時系列データで取得すればよく、内部の応力分布等の情報は、算出しなくてよい。なお、タイヤの表面形状は、タイヤの表面の節点(対応点等)の座標の情報である。
【0055】
なお、ステップS22でタイヤの周囲に作成する流体メッシュは、実行する流体解析によって種々のメッシュとすることができる。具体的には、差分法に用いるメッシュを作成することも、有限要素法に用いるメッシュを作成することもできる。なお、本実施形態では、メッシュを作成したが、タイヤ周辺の流体解析に用いるモデルを作成することができれば、メッシュに限定されない。
【0056】
本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法は、ステップS14の接地解析において、タイヤに装着するホイールモデルを加味して、接地解析を行っても、ホイールモデルを加味しないで、つまり、タイヤモデルと路面モデルとを用いて、接地解析をおこなってよい。
【0057】
また、ホイールモデルは、ステップS24の流体解析時に、タイヤの内部の領域(流体領域)と、タイヤの外部の領域(流体領域)とを分離できるモデルであればよい。従って、ホイールモデルは、最も単純化した場合、タイヤの回転軸の中心側の端部を結んだ円筒形状とすることができる。なお、ホイールモデルは、必要に応じて、形状を設定すればよく、詳細な形状のモデルとすることもできる。
【0058】
ここで、上記実施形態では、タイヤの表面の形状を、対応点を用いて算出したが、さらに、対応点の位置関係に基づいて、近似して補間するようにしてもよい。これにより、任意の時間における対応点の位置情報を取得することができる。つまり、対応する時間(周方向角度)に対応点の情報がなくても、対応点の位置情報を取得することができる。例えば、
図9に示すように、丸の点の情報に基づいて、近似補間をすることで、三角の点の位置情報も取得することができる。なお、
図9は、対応点の位置を時間の関数に変換した他の例を示すグラフである。また、近似補間には、線形補間、2次補間、スプライン関数補間等を用いることができる。
【0059】
次に、
図10−1から
図10−3を用いて、タイヤの表面形状の時系列データの作成方法の他の例について説明する。ここで、
図10−1は、タイヤモデルの一例を示す部分拡大図であり、
図10−2は、
図10−1に示すタイヤモデルを回転させた状態を示す部分拡大図であり、
図10−3は、接地解析に基づいて対応点の位置を算出した一例を示すグラフである。
【0060】
図10−1から
図10−3に示すシミュレーション方法では、タイヤの接地解析を2回行い、2回の接地解析の結果に基づいて、タイヤの表面形状の時系列データを作成している。まず、処理部52は、
図10−1に示すタイヤモデル60を用いて、タイヤの接地解析を行う。その後、処理部52は、タイヤモデル60のブロック62aの対応点70aの座標と周方向回転角の情報と、ブロック62bの対応点70bの座標と周方向回転角との情報を抽出する。なお、処理部52は、さらに、タイヤモデル60の全てのブロックの対応点の座標と周方向回転角との情報を抽出する。なお、対応点は、上述したように、ブロックにおける位置が同一の点であり、タイヤモデルの表面の点(基本的に節点)である。
【0061】
その後、処理部52は、タイヤモデル60を、
図10−1に示す状態から回転軸を中心に角度α回転させ、
図10−2に示す状態とする。なお、角度αは、タイヤの周方向のパターンの1ピッチ分の周方向回転角よりも短い角度である。その後、処理部52は、
図10−2に示すタイヤモデル60を用いて、タイヤの接地解析を行う。その後、処理部52は、タイヤモデル60のブロック62aの対応点72aの座標と周方向回転角の情報と、ブロック62bの対応点72bの座標と周方向回転角との情報と、ブロック62cの対応点72cの座標と周方向回転角との情報とを抽出する。なお、処理部52は、さらに、タイヤモデル60の全てのブロックの対応点の座標と周方向回転角との情報を抽出する。ここで、タイヤモデル60を回転させた角度αは、パターンの1ピッチ分の回転角よりも狭いため、2回の接地解析の対応点は、異なる周方向回転角となる。なお、本実施形態では、
図10−1のタイヤモデル60と、
図10−2のタイヤモデル60とを重ねると、周方向において、対応点70aが、対応点72aと対応点70bとの間に挟まれ、対応点62bが、対応点72bと対応点72cとの間に挟まれた位置となる。
【0062】
処理部52は、
図10−1に示すタイヤモデル60で算出した対応点の座標と周方向回転角と、
図10−2に示すタイヤモデル60で算出した対応点の座標と周方向回転角との関係の両方をあわせることで、
図10−3に示す対応点の座標と周方向回転角との関係を抽出する。このように、2回の接地解析を用いて、対応点の座標と周方向回転角との関係を抽出することで、
図10−3に示すように、抽出する対応点の数を増加(倍)することができる。また、タイヤモデルの回転角をパターンの1ピッチ分の回転角よりも狭い角度としているため、1回の解析に基づいて算出した対応点と対応点との間に回転角における対応点の座標の情報を取得することができる。
【0063】
このように、タイヤモデルを回転方向にずらしつつ、複数回設置解析を行うことで、より高い精度で対応点の位置を算出することができる。また、対応点に対する近似を行う場合もより高い精度で近似することができる。なお、この場合も1つの対応点が1ピッチの領域内でずらすのみで、全周における位置を抽出できるため、少ない計算量で高い精度の位置情報を得ることができる。このように、対応点の座標と周方向回転角との関係をより高い精度で算出できることで、タイヤの表面形状の時系列データも高い精度で取得することができる。これにより、より高い精度の流体解析が可能なシミュレーションモデルを作成することができる。
【0064】
なお、上記実施形態では、タイヤモデルの回転角をパターンの1ピッチ分の回転角よりも狭い角度としたが、これに限定されず、1ピッチ分の回転角の整数倍以外の回転角とすることで対応点の周方向回転角を重ならないようにすることができ、算出した対応点の情報を有効に活用することができる。
【0065】
次に、
図11−1及び
図11−2を用いて、タイヤの表面形状の時系列データの作成方法の他の例について説明する。
図11−1は、タイヤモデルの一例を示す部分拡大図であり、
図11−2は、接地解析に基づいて対応点の位置を算出した一例を示すグラフである。
図11−1及び
図11−2に示すシミュレーション方法では、転動軌跡上の任意の点も対応点(追加対応点)として抽出することが好ましい。例えば、
図11−1に示すように、タイヤのパターンの対応点(隣接するピッチ上の同一点)を通過する転動軌道にある点90も対応点に含める。なお、転動軌道とは、タイヤパターンの対応点の転動時の軌道である。
【0066】
このように、パターン内に基本的に1点のみとなる対応点に加え、転動軌道上の点も対応点として抽出し、座標と周方向回転角の関係を作成することで、
図11−2に示すように、パターン内の同一点の対応点以外の追加対応点90も抽出することができる。これにより、対応点の座標と時間との関係に変換する際により多くの点を用いることができる。なお、追加対応点は、転動軌道上を通過する任意の点とすることができるが、タイヤの表面と接している点とすることが好ましい。なお、追加対応点は、節点である必要はない。
【0067】
また、流体解析用のモデルは、流体メッシュを、タイヤ(タイヤモデル)の周囲に形成され、タイヤ形状(タイヤ表面形状)の時間変化に応じてメッシュ構造が変化する第1流体メッシュ領域と、第1流体メッシュ領域の外周に形成され、メッシュ構造が変化しない第2メッシュ領域とを含むことが好ましい。ここで、
図12は、タイヤの周辺のモデルの他の例の概略構成を示す正面図である。また、
図13−1は、
図12に示すモデルの一部を拡大して示す拡大正面図であり、
図13−2は、
図12に示すモデルの一部を拡大して示す拡大正面図である。
図12に示す流体メッシュ101は、第1流体メッシュ領域(第1メッシュ領域)102と第2流体メッシュ領域(第2メッシュ領域)104とで構成されている。なお、流体メッシュ101は、タイヤモデル60の周囲に形成されている。また、本モデルは、ホイールモデル64と、路面モデル66も設けられている。
【0068】
第1流体メッシュ領域102は、タイヤモデル60の外周の全域に設けられている。また、第2流体メッシュ領域104は、第1流体メッシュ領域102の外側、つまり、第1流体メッシュ領域102よりもタイヤモデル60から離れた領域に設けられている。
【0069】
ここで、第1流体メッシュ領域102は、タイヤモデル60の形状に応じて、流体メッシュの形状が変化する。具体的には、
図13−1に示すタイヤモデル60が、1ピッチ分に対応する回転角よりも狭い角度分回転し、
図13−2に示すタイヤモデル60の位置となると、タイヤモデル60の形状の変換に応じて、第1流体メッシュ領域102から、第1流体メッシュ領域102aにメッシュの形状が変化する。つまり、
図13−2に示す第1流体メッシュ領域102aは、
図13−1に示す第1流体メッシュ領域102と異なる形状となる。
【0070】
これに対して、第2流体メッシュ領域104は、タイヤモデルの形状に取らず一定のメッシュとなる。つまり、
図13−2に示す第2メッシュ流体領域104は、
図13−1に示す第2メッシュ流体領域104と同じ形状となる。
【0071】
以上のように、流体メッシュを、タイヤの周囲に形成され、タイヤ形状の時間変化に応じてメッシュ構造が変化する第1流体メッシュ領域と、第1流体メッシュ領域の外周に形成され、メッシュ構造が変化しない第2流体メッシュ領域とに別けることで、タイヤの形状に応じて、メッシュを再形成する領域を少なくすることができる。これにより、流体解析用のモデル作成時に全体のメッシュを形成しなおす必要がなくなるため、メッシュを形成する負担を少なくすることができる。
【0072】
また、タイヤ形状に対するメッシュの形成位置を固定し、つまり、タイヤと共に第1流体メッシュ領域102を回転させることで、タイヤ形状とメッシュとの関係を一定にすることができる。また、第1流体メッシュ領域と第2流体メッシュ領域の境界を第1メッシュの回転に係らず一定とすることで、時系列毎にメッシュを作成することなく、モデルを作成することができる。
【0073】
なお、解析時には、第1流体メッシュ領域と第2流体メッシュ領域との間で物理量の受け渡しが行われる。また、本実施形態では、第1流体メッシュ領域の境界と、第2流体メッシュ領域の境界とを一致させたが、第1流体メッシュ領域の境界と第2流体メッシュ領域の境界とは、一致しなくてもよい。つまり、第1流体メッシュ領域と、第2流体メッシュ領域の境界とが一部重なるようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、タイヤモデルと、ホイールモデルと、路面モデルの周囲の空間の流体解析を行ったが、その周囲に他の物体のモデルを設けるようにしてもよい。例えば、タイヤを装着する車両、または車両の一部をモデル化し、その空間に流体メッシュを作成したシミュレーションモデルを作成してもよい。また、そのモデルを用いて流体解析を行ってもよい。
【0075】
図14は、タイヤの周辺のモデルの概略構成を示す斜視図である。本実施形態では、タイヤモデル60の周囲に存在する対象物(タイヤハウスやタイヤ試験器等)の対象物表面情報を用いて得られる対象物表面領域を用いて空間モデル210を作成する。すなわち、タイヤ境界領域、及び路面モデル66の表面情報から得られる接触表面領域に加えて、さらに1以上の境界を設ける。
【0076】
上述した半球領域220は、仮想的な境界であるが、実際にタイヤを転動させる際には、車体が有するホイールハウスやサスペンションアーム等の部材がタイヤの近傍に設けられている。また、タイヤを試験する場合、試験装置がタイヤの近傍に配置される。車体が有する部材や試験装置等は、タイヤが発生した放射音を反射したり吸収したりする。また、車体が有する部材や試験装置等は、タイヤの周辺における空気の流れに影響を及ぼしたりする。したがって、前記部材や試験装置等を空間モデル210が有する境界として追加することにより、より実際の事象に近い状態を再現できる。
【0077】
図14に示す空間モデル210は、タイヤ周辺空間222内に対象物としてタイヤハウスモデル224を設置し、このタイヤハウスモデル224の表面に、境界としての対象物表面領域を設けている。このように表面に境界条件が設定されたタイヤハウスモデル224が設けられた空間モデル210内に流体メッシュを形成することで、シミュレーションモデルを作成する。
【0078】
このように、タイヤ周辺空間222内に車体が有し、かつタイヤの近傍に存在する部材をモデル化して配置し、その表面に対象物表面領域を設定することで、タイヤ回りの空気の流れや音の解析をより実際の状態に近い条件で解析することができる。なお、他のモデルを、複数設けてもよい。例えば、タイヤハウスモデルに加えて車軸モデルやサスペンションアームモデル等を追加してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、いずれもシミュレーションモデルを作成した後、流体解析シミュレーションを行ったが、本発明はこれに限定されず、作成したシミュレーションモデルを他のシミュレーションに用いてもよい。また、流体解析シミュレーションは、他の装置で行うようにしてもよい。また、上記実施形態では、解析結果の評価を行ったが、評価部による評価は行わなくてもよい。