(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位相検出回路は、前記交流電力の電圧レベルが第1の基準値となるタイミングである第1の位相値と前記交流電力の電流レベルが第2の基準値となるタイミングである第2の位相値を比較することにより前記位相差を検出し、前記信号レベルに応じて前記第1および第2の基準値の双方または一方を変更することにより前記第1および第2の位相値の双方または一方を事後調整することを特徴とする請求項1に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0024】
図1は、ワイヤレス電力伝送システム100のシステム構成図である。ワイヤレス電力伝送システム100は、ワイヤレス給電装置116とワイヤレス受電装置118を含む。ワイヤレス給電装置116は、基本構成として、送電制御回路200、エキサイト回路110、給電コイル回路120、位相検出回路114および信号受信回路112を含む。ワイヤレス受電装置118は、受電コイル回路130、ロード回路140、制御信号発生回路170、基準信号発生回路172および信号送信回路122を含む。
【0025】
給電コイル回路120が有する給電コイルL2と、受電コイル回路130が有する受電コイルL3の間には0.2〜1.0m程度の距離(以下、「コイル間距離」とよぶ)がある。ワイヤレス電力伝送システム100の主目的は、給電コイルL2から受電コイルL3にワイヤレスにて交流電力を送ることである。本実施形態においては共振周波数fr=100kHzであるとして説明する。なお、本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システムは、たとえば、ISM(Industry-Science-Medical)周波数帯のような高周波数帯にて動作させることも可能である。低周波数帯には、スイッチングトランジスタ(後述)のコストおよびスイッチング損失を抑制しやすい、電波法の規制が緩いといったメリットがある。
【0026】
エキサイト回路110は、エキサイトコイルL1とトランスT2二次コイルLiが直列接続された回路である。トランスT2二次コイルLiは、トランスT2一次コイルLbと共に結合トランスT2を形成し、電磁誘導により送電制御回路200から交流電力を供給される。エキサイトコイルL1の巻き数は1回、導線直径は5mm、エキサイトコイルL1自体の形状は210mm×210mmの正方形である。
図1では、わかりやすさのため、エキサイトコイルL1を円形に描いている。他のコイルについても同様である。
図1に示す各コイルの材質はいずれも銅である。エキサイト回路110には交流電流I1が流れる。
【0027】
給電コイル回路120は、給電コイルL2とキャパシタC2が直列接続された回路である。エキサイトコイルL1と給電コイルL2は互いに向かい合っている。エキサイトコイルL1と給電コイルL2の距離は10mm以下と比較的近い。このため、エキサイトコイルL1と給電コイルL2は電磁気的に強く結合している。給電コイルL2の巻き数は7回、導体直径は5mm、給電コイルL2自体の形状は280mm×280mmの正方形である。エキサイトコイルL1に交流電流I1を流すと、電磁誘導の原理により給電コイルL2に起電力が発生し、給電コイル回路120には交流電流I2が流れる。交流電流I2は交流電流I1よりも格段に大きい。給電コイルL2とキャパシタC2それぞれの値は、給電コイル回路120の共振周波数frが100kHzとなるように設定される。
【0028】
受電コイル回路130は、受電コイルL3とキャパシタC3が直列接続された回路である。給電コイルL2と受電コイルL3は互いに向かい合っている。受電コイルL3の巻き数は7回、導体直径は5mm、受電コイルL3自体の形状は280mm×280mmの正方形である。受電コイル回路130の共振周波数frも100kHzとなるように、受電コイルL3とキャパシタC3それぞれの値が設定されている。給電コイルL2と受電コイルL3は同一形状である必要はない。給電コイルL2が共振周波数fr=100kHzにて磁界を発生させると、給電コイルL2と受電コイルL3は磁気的に共振し、受電コイル回路130にも大きな電流I3が流れる。
【0029】
ロード回路140は、ロードコイルL4が整流回路124と計測回路126を介して負荷LDと接続される回路である。受電コイルL3とロードコイルL4は互いに向かい合っている。受電コイルL3とロードコイルL4の距離は10mm以下と比較的近い。このため、受電コイルL3とロードコイルL4は電磁的に強く結合している。ロードコイルL4の巻き数は1回、導体直径は5mm、ロードコイルL4自体の形状は300mm×300mmである。受電コイルL3に電流I3が流れることにより、ロード回路140に起電力が発生し、ロード回路140に交流電流I4が流れる。交流電流I4は整流回路124により直流電流に整流される。一部は計測回路126を流れるが、大部分は直流電流I5として負荷LDを流れる。整流回路124は、ブリッジ回路128とキャパシタC5により構成される一般的な回路である。計測回路126については後述する。
【0030】
ワイヤレス給電装置116の給電コイルL2から送電された交流電力は、ワイヤレス受電装置118の受電コイルL3により受電され、負荷LDから直流電力として取り出される。負荷LDに印加される電圧を「負荷電圧V5」とよぶ。
【0031】
負荷LDを受電コイル回路130に直接接続すると、受電コイル回路130のQ値が悪くなる。このため、受電用の受電コイル回路130と電力取り出し用のロード回路140を分離している。電力伝送効率を高めるためには、給電コイルL2、受電コイルL3およびロードコイルL4の中心線を揃えることが好ましい。
【0032】
計測回路126は、抵抗R1、R2、制御電源Vsおよびコンパレータ132を含む。負荷電圧V5は、抵抗R1、R2により分圧される。抵抗R2の両端に印加される電圧を「出力電圧」とよぶ。抵抗R1と抵抗R2の接続点Fの電位は「計測電位」としてコンパレータ132の負極端子に入力される。コンパレータ132の正極端子には制御電源Vsが接続される。制御電源Vsによる正極端子の入力電位を「基準電位」とよぶ。
【0033】
コンパレータ132は、計測電位と基準電位の差分(以下、「補正電圧」とよぶ)を増幅し、その増幅後の値をT0信号として出力する。T0信号は直流電圧信号であり、補正電圧の大きさを示す。いいかえれば、T0信号は負荷電圧V5の変化量を示す信号である。詳しくは後述するが、ワイヤレス電力伝送システム100は、この補正電圧がゼロとなるように給電電力を制御することにより、出力電圧(負荷電圧V5)を安定させている。本実施形態においては基準電位を2.5(V)に設定する。また、負荷電圧V5が24(V)のとき、計測電位が2.5(V)、補正電圧が0(V)となるように抵抗R1、R2を設定する。なお、制御電源Vsは、可変直流電圧源であり任意に電圧調整可能である。
【0034】
制御信号発生回路170は、制御周波数fcの交流電圧信号をT1信号として発生させる回路である。本実施形態における制御周波数fcは1.0kHzである。制御信号発生回路170については、
図6に関連して後述する。コンパレータ174は、T0信号とT1信号を比較し、T1>T0となるときにハイレベルとなるT2信号(有効信号:交流電圧信号)を発生させる。詳しくは後述するが、補正電圧によりT2信号のデューティ比が変化する。T0〜T2信号の関係については
図7に関連して後述する。
【0035】
基準信号発生回路172は、基準周波数fsの交流電圧信号をT3信号として発生させる。本実施形態における基準周波数fsは38kHzである。信号送信回路122は、T2信号とT3信号に基づいて、交流光信号のT4信号を発生させる。T4信号は、受電側における出力の大きさを示す「出力信号」であり、ワイヤレス給電装置116の信号受信回路112により受光される。T4信号により、給電側は補正電圧の大きさ、いいかえれば負荷電圧V5の変動量を認識できる。信号送信回路122および基準信号発生回路172の回路構成および処理内容は、
図8、
図9に関連して後述する。
【0036】
次に、送電制御回路200の構成を説明する。まず、ゲート駆動用トランスT1の一次側にVCO(Voltage Controlled Oscillator)202が接続される。VCO202は、駆動周波数foの交流電圧Voを発生させる「オシレータ」として機能する。交流電圧Voの波形は正弦波でもよいが、ここでは矩形波(デジタル波形)であるとして説明する。交流電圧Voにより、トランスT1一次コイルLhには正負両方向に交互に電流が流れる。トランスT1一次コイルLhとトランスT1二次コイルLf、トランスT1二次コイルLgはゲート駆動用の結合トランスT1を形成する。電磁誘導により、トランスT1二次コイルLfとトランスT1二次コイルLgにも正負の両方向に交互に電流が流れる。
【0037】
本実施形態におけるVCO202は、モトローラ社:製品番号MC14046Bの内蔵ユニットを利用している。VCO202は、位相比較回路150から出力される位相差指示電圧SC(後述)に基づいて駆動周波数foを動的に変化させる機能も備える。
【0038】
駆動周波数foの最小値はfo1=90kHz、最大値はfo2=99kHzであるとして説明する。位相差指示電圧SCの適正範囲は、1.0〜4.0(V)である。位相差指示電圧SCと駆動周波数foは正比例する。すなわち、位相差指示電圧SC=1.0(V)のとき駆動周波数fo=fo1=90kHzであり、SC=4.0(V)のときfo=fo2=99kHzとなる。
【0039】
送電制御回路200の電源となるのは、直流電源Vddにより充電されるキャパシタCA、CBである。キャパシタCAは
図1に示す点Cと点Eの間、キャパシタCBは点Eと点Cの間に設けられる。キャパシタCAの電圧(CE間の電圧)をVA、キャパシタCBの電圧(ED間の電圧)をVBとすると、VA+VB(CD間の電圧)が入力電圧となる。キャパシタCAおよびCBは直流電圧源として機能する。
【0040】
トランスT1二次コイルLfの一端は、スイッチングトランジスタQ1のゲートと接続され、他端はスイッチングトランジスタQ1のソースと接続される。トランスT1二次コイルLgの一端は、別のスイッチングトランジスタQ2のゲートと接続され、他端はスイッチングトランジスタQ2のソースと接続される。VCO202が駆動周波数foにて交流電圧Voを発生させると、スイッチングトランジスタQ1とスイッチングトランジスタQ2の各ゲートには、電圧Vx(Vx>0)が駆動周波数foにて交互に印加される。このため、スイッチングトランジスタQ1とスイッチングトランジスタQ2は駆動周波数foにて交互にオン・オフする。スイッチングトランジスタQ1とスイッチングトランジスタQ2は同一特性のエンハンスメント型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であるが、バイポーラ・トランジスタなど他のトランジスタでもよい。トランジスタの代わりにリレースイッチ等、他のスイッチを用いてもよい。
【0041】
スイッチングトランジスタQ1のドレインは、キャパシタCAの正極に接続される。キャパシタCAの負極は、トランスT2一次コイルLbを介してスイッチングトランジスタQ1のソースに接続される。スイッチングトランジスタQ2のソースは、キャパシタCBの負極に接続される。キャパシタCBの正極は、トランスT2一次コイルLbを介して、スイッチングトランジスタQ2のドレインに接続される。
【0042】
スイッチングトランジスタQ1のソース・ドレイン間の電圧をソース・ドレイン電圧VDS1、スイッチングトランジスタQ2のソース・ドレイン間の電圧をソース・ドレイン電圧VDS2とよぶ。また、スイッチングトランジスタQ1のソース・ドレイン間を流れる電流をソース・ドレイン電流IDS1、スイッチングトランジスタQ2のソース・ドレイン間を流れる電流をソース・ドレイン電流IDS2とする。ソース・ドレイン電流IDS1、IDS2については、同図矢印に示す方向を正方向、反対方向を負方向とする。
【0043】
スイッチングトランジスタQ1が導通(オン)するとき、スイッチングトランジスタQ2は非導通(オフ)となる。このときのメインの電流経路(以下、「第1電流経路」とよぶ)は、キャパシタCAの正極から点C、スイッチングトランジスタQ1、トランスT2一次コイルLb、点Eを経由して負極に帰還する経路となる。スイッチングトランジスタQ1は、第1電流経路の導通・非導通を制御するスイッチとして機能する。
【0044】
スイッチングトランジスタQ2が導通(オン)するとき、スイッチングトランジスタQ1は非導通(オフ)となる。このときのメインの電流経路(以下、「第2電流経路」とよぶ)は、キャパシタCBの正極から点E、トランスT2一次コイルLb、スイッチングトランジスタQ2、点Dを経由して負極に帰還する経路となる。スイッチングトランジスタQ2は、第2電流経路の導通・非導通を制御するスイッチとして機能する。
【0045】
送電制御回路200においてトランスT2一次コイルLbを流れる電流を「電流Is」とよぶ。電流Isは交流電流であり、第1電流経路を流れるときを正方向、第2電流経路を流れるときを負方向とよぶ。
【0046】
VCO202が駆動周波数foにて交流電圧Voを供給すると、第1電流経路と第2電流経路が駆動周波数foにて交互に切り替わる。駆動周波数foの交流電流IsがトランスT2一次コイルLbを流れるため、エキサイト回路110にも駆動周波数foにて交流電流I1が流れ、更に、給電コイル回路120にも駆動周波数foの交流電流I2が流れる。駆動周波数foが共振周波数frに近いほど、電力伝送効率は高くなる。駆動周波数fo=共振周波数frであれば、給電コイル回路120の給電コイルL2とキャパシタC2は共振状態となる。受電コイル回路130も共振周波数frの共振回路であるから、給電コイルL2と受電コイルL3は磁気的に共振する。このとき、電力伝送効率は最大となる。
【0047】
ただし、本実施形態の場合、駆動周波数foの動作範囲には共振周波数frは含まれないため、電力伝送効率が最大となることはない。これは電力伝送効率を最大化するよりも、負荷電圧V5の安定を優先しているためである。負荷電圧V5の変化は補正電圧により検出できるため、ワイヤレス給電装置116は補正電圧がゼロとなるように駆動周波数foを自動調整する。詳細については後述する。
【0048】
共振周波数frは、給電コイル回路120や受電コイル回路130の使用状態や使用環境によって微妙に変化する。給電コイル回路120や受電コイル回路130を交換した場合にも共振周波数frは変化する。あるいは、キャパシタC2やキャパシタC3の静電容量を可変とすることにより共振周波数frを積極的に変化させたい場合もあるかもしれない。また、本発明者の実験により、給電コイルL2と受電コイルL3のコイル間距離をある程度近づけると共振周波数frが低下し始めることがわかっている。共振周波数frと駆動周波数foの差が変化すると電力伝送効率が変化する。電力伝送効率が変化すると、負荷電圧V5が変化する。したがって、負荷電圧V5を安定させるためには、共振周波数foが変化したときでも、共振周波数frと駆動周波数frの差を一定に保つ必要がある。
【0049】
給電コイル回路120には検出コイルLSSが設けられる。検出コイルLSSは、貫通孔を有するコア154(トロイダルコア)にNs回巻き付けられたコイルである。コア154の材質はフェライト、珪素鋼板、パーマロイ(permalloy)等の既知材料である。本実施形態における検出コイルLSSの巻き数Nsは100回である。
【0050】
給電コイル回路120の電流経路の一部もコア154の貫通孔を貫通している。これは、コア154に対する給電コイル回路120の巻き数Npが1回であることを意味する。このような構成により、検出コイルLSSと給電コイルL2は結合トランスを形成する。給電コイルL2の交流電流I2が発生させる交流磁界により、検出コイルLSSには同相の誘導電流ISSが流れる。等アンペア・ターンの法則により、誘導電流ISSの大きさは、I2・(Np/Ns)となる。
【0051】
検出コイルLSSの両端には抵抗R4が接続される。抵抗R4の一端Bは接地され、他端Aの電位VSSはコンパレータ142を介して電流位相検出回路144に接続される。
【0052】
電位VSSは、コンパレータ142によって2値化され、S0信号となる。コンパレータ142は電位VSSが所定の閾値、たとえば、0.1(V)より大きくなると飽和電圧3.0(V)を出力する。電位VSSは、コンパレータ142によってデジタル波形のS0信号に変換される。電流I2と誘導電流ISSは同相であり、誘導電流ISSと電位VSS(S0信号)は同相である。また、送電制御回路200を流れる交流電流Isは電流I2と同相である。したがって、S0信号の波形を観察することにより交流電流Isの電流位相を計測できる。
【0053】
共振周波数frと駆動周波数foが一致するときには電流位相と電圧位相も一致する。共振周波数frと駆動周波数foのずれは、電流位相と電圧位相の位相差から計測できる。本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100は、この位相差に基づいて、共振周波数frと駆動周波数foのずれを計測することにより、共振周波数frの変化に対して駆動周波数foを自動的に追随させる。
【0054】
位相検出回路114は、電流位相検出回路144、位相比較回路150およびローパスフィルタ152を含む。ローパスフィルタ152は、既知の回路であり、位相差指示電圧SCの高周波数成分をカットするために挿入される。本実施形態における位相比較回路150は、VCO202と同じくモトローラ社:製品番号MC14046Bの内蔵ユニット(Phase Comparator)を利用している。したがって、位相比較回路150とVCO202は、ワンチップにて実現可能である。
【0055】
電流位相検出回路144は、電流位相を示す信号として、S1信号を発生させる。S1信号は位相比較回路150に入力される。また、VCO202が発生させる交流電圧Voは、電圧位相を示すS2信号として位相比較回路150に入力される。位相比較回路150は、S1、S2信号から電流位相と電圧位相のずれ(位相差)を検出し、位相差の大きさを示す位相差指示電圧SCを生成する。位相差の検出により、共振周波数frと駆動周波数foのずれの大きさを検出する。位相差指示電圧SCにしたがって駆動周波数foを制御することにより、駆動周波数foと共振周波数frの位相差を一定に保つことができる。
【0056】
たとえば、駆動周波数foと共振周波数frが乖離すると位相差が大きくなるため、位相比較回路150はこの位相差を小さくするように位相差指示電圧SCを発生させればよい。したがって、共振周波数frが変化しても、電力伝送効率を一定に保ち、負荷電圧V5を安定させることができる。電流位相検出回路144および信号受信回路112の回路構成については
図10、S1信号とS2信号の関係については
図12に関連して後に詳述する。
【0057】
なお、トランスT1一次コイルLhの両端に抵抗を並列接続し、交流電圧Voを分圧してS2信号としてもよい。分圧により、VCO202の発生させる交流電圧Voが大きい場合でも、扱いやすい電圧に降圧できる。ソース・ドレイン電圧VDS1、VDS2や、ソース・ゲート電圧VGS1、VGS2などから電圧位相を計測してもよい。
【0058】
また、たとえ共振周波数frが一定であっても、負荷電圧V5が変化することがある。たとえば、負荷LDが可変抵抗器であるときや負荷LD自体を取り替えたときに負荷電圧V5は変化する。本実施形態では、負荷電圧V5の変化を補正電圧として検出し、補正電圧がゼロとなるように駆動周波数foを自動調整することにより、負荷電圧V5を安定させる。
【0059】
補正電圧は、T4信号(交流光信号)として、信号送信回路122から信号受信回路112に伝達される。信号受信回路112は、交流光信号であるT4信号を直流電圧信号であるT5信号に変換する。T5信号の電圧レベルは負荷電圧V5と正相関関係にある。
【0060】
電流位相検出回路144は、電流位相を示すS0信号(交流電圧信号)を補正電圧を示すT5信号(直流電圧信号)によって調整し、補正電流位相としてのS1信号(交流電圧信号)を出力する。負荷電圧V5が所望値である24(V)のときには、S0信号がそのままS1信号となる。位相比較回路150は、交流電力の電圧位相と電流位相の位相差をS1信号とS2信号に基づいて検出し、位相差指示電圧SCを出力する。VCO202は、位相差指示電圧SCに基づいて、駆動周波数foを調整する。より具体的には、VCO202は交流電圧Voのパルス幅を変化させることにより、駆動周波数foを変化させる。
【0061】
補正電圧がゼロでないとき、すなわち、T5信号による調整がなされるときにも、位相比較回路150は、交流電力の電圧位相と電流位相の位相差をS1信号とS2信号に基づいて検出し、位相差指示電圧SCを出力する。ただし、このときのS1信号は、S0信号をT5信号に応じて調整した信号であるため、実際の電流位相を示す信号ではない。補正電圧に基づく調整ロジックについては、
図12に関連して更に詳述する。
【0062】
図2は、負荷電流I5と負荷電圧V5の関係を示すグラフである。横軸は負荷LDを流れる負荷電流I5(直流)の大きさを示し、縦軸は負荷電圧V5を示す。非調整時特性134は、補正電圧に基づく調整をしない場合の電流・電圧特性を示す。非調整時特性134の場合、負荷LDが大きくなると負荷電流I5は減少し、負荷電圧V5は増加する。反対に負荷LDが小さくなると負荷電流I5は増加し、負荷電圧V5は減少する。このように、給電電力が一定であっても負荷LDを変更すると負荷電圧V5も変化する。
【0063】
本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100は、調整時特性136に示す電流・電圧特性を実現する。具体的には、補正電圧に基づいてS1信号を調整することにより、電力伝送効率を変化させ、負荷電圧V5を安定させる。
【0064】
図3は、コイル間距離dと負荷電圧V5の関係を示すグラフである。横軸は給電コイルL2と受電コイルL3のコイル間距離d、縦軸は負荷電圧V5を示す。非調整時特性146は、補正電圧に基づく調整をしない場合の電圧・距離特性を示す。先述したように、コイル間距離dによって共振周波数frが変化する。共振周波数frが変化し、駆動周波数foと共振周波数frの差が変化すると、電力伝送効率が変化する。共振周波数frに駆動周波数foを追随させても、負荷電圧V5はコイル間距離dによって多少変化する。
【0065】
本実施形態におけるワイヤレス電力伝送システム100は、調整時特性148に示す電圧・距離特性を実現する。補正電圧に基づいてS1信号を調整することにより、電力伝送効率を変化させ、負荷電圧V5を安定させる。
【0066】
図4は、給電コイル回路120のインピーダンスZと駆動周波数foの関係を示すグラフである。縦軸は、給電コイル回路120(キャパシタC2と給電コイルL2の直列回路)のインピーダンスZを示す。横軸は駆動周波数foを示す。インピーダンスZは、共振時において最低値Z
minとなる。共振時にZ
min=0となるのが理想であるが、給電コイル回路120には若干の抵抗成分が含まれるため、Z
minは通常ゼロとはならない。
【0067】
駆動周波数fo=共振周波数frとなるとき、インピーダンスZは最低となり、キャパシタC2と給電コイルL2は共振状態となる。駆動周波数foと共振周波数frがずれると、インピーダンスZにおける容量性リアクタンスまたは誘導性リアクタンスが優勢となるためインピーダンスZも大きくなる。
【0068】
駆動周波数foと共振周波数frが乖離するほどインピーダンスZは大きくなり、電力伝送効率は低下する。したがって、駆動周波数foと共振周波数frの差を変化させることにより、電力伝送効率を変化させることができる。
【0069】
図5は、出力電力効率と駆動周波数foの関係を示すグラフである。出力電力効率とは、給電コイルL2から実際に給電される電力の最大出力値に対する割合を示す。駆動周波数foが共振周波数frと一致するときには、電流位相と電圧位相の差がゼロとなり、電力伝送効率が最大となるので、出力電力効率=100(%)となる。本実施形態のワイヤレス電力伝送システム100においては、駆動周波数foは共振周波数frよりも低いfo1〜fo2の範囲で調整される。
【0070】
図6は、制御信号発生回路170の回路図である。制御信号発生回路170の出力であるT1信号(制御信号)はコンパレータ174の正極端子に入力される。コンパレータ174の負極端子には、計測回路126が出力するT0信号が入力される。T0信号は補正電圧を示す直流電圧信号である。
【0071】
制御信号発生回路170は、制御周波数=1.0kHzにてノコギリ波状に変化する交流電圧をT1信号として発生させる。制御信号発生回路170は、抵抗R5〜R7、キャパシタC6およびサイリスタ138を含む。サイリスタ138のゲートGには、電源VCCの電源電圧を抵抗R5、R6により分圧したゲート電圧VGが印加される。ゲート電圧VGは一定値である。サイリスタ138のアノードAは抵抗R7を介して電源VCCと接続され、キャパシタC6を介してグランドと接続される。電源電圧を抵抗R7により電圧降下させることにより、サイリスタ138にアノード電位VAが印加される。T1信号はこのアノード電位VAを示す。
【0072】
アノード電位VA≦ゲート電位VGのとき、サイリスタ138のアノード・カソード間はオフ(非導通)となり、この期間にはキャパシタC6が充電される。キャパシタC6が充電されるとアノード電位VA(T1信号)が高くなり、アノード電位VA>ゲート電位VGとなると、サイリスタ138のアノード・カソード間はオン(導通)となる。このとき、キャパシタC6の電荷がサイリスタ138を介して放電されるため、再び、アノード電位VA≦ゲート電位VGとなる。制御信号発生回路170は、以上のプロセスを1.0kHz(制御周波数fc)にて繰り返す。この結果、
図7にて後述するようにノコギリ波状のT1信号が発生する。制御周波数fcは、キャパシタC6と抵抗R7の時定数によって定まる。
【0073】
コンパレータ174は、T1信号>T0信号のとき、ハイレベルのT2信号(有効信号)を出力し、それ以外のときにはローレベルのT2信号を出力する。T1信号>T0信号の期間が有効期間となり、それ以外の期間が無効期間となる。補正電位が高いほどT0信号のレベルは高くなり、有効期間は短くなる。
【0074】
図7は、T0〜T2信号の関係を示すタイムチャートである。制御信号発生回路170において、時刻t0にキャパシタC6の充電が開始される。アノード電位VAが徐々に上昇するため、T1信号も徐々に上昇する。時刻t1にアノード電位VA>ゲート電位VGとなり、サイリスタ138のアノード・カソード間はオン(導通)となる。キャパシタC6が放電するため、アノード電位VA(S1信号)は急落する。この時刻t0〜時刻t1までの期間を「単位期間」とよぶ。時刻t1以降も同様である。制御周波数fc=1.0kHzであるから、単位期間の長さは1.0(msec)である。
【0075】
T0信号は、補正電圧に応じて電圧レベルが変化する直流電圧信号である。コンパレータ174は、T0信号とT1信号を比較し、T1>T0信号となるときハイレベル、T1≦T0信号のときローレベルのT2信号を発生させる。t0〜t1の単位期間のうち、t0〜t4においてT2信号はローレベル、t4〜t1においてT2信号はハイレベルとなる。すなわち、単位期間(t0〜t1)のうち、時刻t0〜時刻t4が無効期間、時刻t4〜時刻t1が有効期間となる。補正電圧によってT0信号のレベルが変化することにより、有効期間と無効期間のデューティ比が変化する。負荷電圧V5が高くなると補正電位は低下し、T2信号のデューティ比は大きくなる。反対に、負荷電圧V5が低くなると補正電位は上昇し、T2信号のデューティ比は小さくなる。なお、本実施形態においては、補正電位がゼロとなってもデューティ比が100%未満となるように設定されている。
【0076】
図8は、信号送信回路122の回路図である。信号送信回路122は、赤外線LED(Light Emitting Diode)158と、トランジスタQ3、信号制御回路156を含む。トランジスタQ3はエミッタ接地されるバイポーラ・トランジスタであり、ベースとエミッタは抵抗R9を介して接続される。赤外線LED158の一端は、抵抗R8を介して電源VCCと接続され、他端はトランジスタQ3のベースに接続される。トランジスタQ3のベースには信号制御回路156も接続される。
【0077】
信号制御回路156は、既知の回路であり、たとえば、テキサス・インツルメンツ社の製品番号UCC37321のIC(Integrated Circuit)を利用すればよい。信号制御回路156には、基準信号発生回路172とコンパレータ174が接続される。信号制御回路156は、T2信号とT3信号が入力され、T6信号を出力する。基準信号発生回路172は、所定の基準周波数fsにてT3信号(基準信号)を発生させるオシレータである。本実施形態において基準周波数fsは、制御周波数fcよりも十分に大きい38kHzであるとする。T3信号は正弦波でもよいが、ここでは矩形波(デジタル波形)であるとして説明する。
【0078】
信号制御回路156は、T2信号がハイレベルの期間、すなわち、有効期間に限り、T3信号(基準信号)をT6信号として出力する。無効期間においては、T6信号はローレベルに固定される。
【0079】
T6信号(交流電圧信号)は、赤外線LED158によりT4信号(交流光信号)に変化する。赤外線LED158は、T4信号(交流光信号)を信号受信回路112に送る。本実施形態におけるT4信号は、赤外線信号である。赤外線波長は940nm程度である。T4信号は数m程度の距離まで届くため、コイル間距離が大きくても十分に対応できる。赤外線は、給電コイルL2や受電コイルL3が発生させる磁界の影響をほとんど受けないため、T4信号と給電電力はお互いにほとんど影響しないというメリットもある。
【0080】
図9は、T2、T3、T6信号の関係を示すタイムチャートである。
図7に関連して説明したように、T2信号(有効信号)はt0〜t1、t1〜t2、・・・を単位期間とする制御周波数fc=1.0kHzの交流電圧信号である。T2信号がハイレベルの期間が有効期間、ローレベルの期間が無効期間である。T3信号は、基準周波数fs=38kHzの交流電圧信号である。信号制御回路156は、有効期間中に限り、T3信号をT6信号として出力する。すなわち、T2信号とT3信号の論理積がT6信号である。
【0081】
交流電圧信号であるT6信号は、交流光信号のT4信号に変換され、信号受信回路112に向けて照射される。赤外線LED158は、有効期間においては基準周波数fs=38kHzにて点滅し、無効期間においては消灯する。点滅期間と消灯期間は制御周波数fcにて繰り返される。点滅期間と消灯期間のデューティ比は、補正電圧によって変化する。補正電圧が高いほど点滅期間は短くなる。単位期間のうち点滅期間の占める割合を「T4信号(出力信号)のデューティ比」とよぶ。
【0082】
なお、T6信号ではなくT2信号により赤外線LED158を点灯させてもよい。この場合には、有効期間中は赤外線LED158は点灯し続けることになる。本実施形態のように有効期間中にT3信号にしたがって赤外線LED158を点滅させれば、赤外線LED158の消費電力を抑制する上で有効である。
【0083】
図10は、電流位相検出回路144と信号受信回路112の回路図である。電流位相検出回路144は、コンパレータ166と電流波形整形回路168を含む。まず、電位VSSはコンパレータ142によりデジタル波形のS0信号に整形され、電流波形整形回路168に入力される。電流波形整形回路168は、このデジタル波形(矩形波)のS0信号をノコギリ波状のS3信号に整形する。電流波形整形回路168においては、S0信号の経路に抵抗R10が間挿され、抵抗R10にはダイオードD1が並列接続される。また、S0信号の伝達経路は、キャパシタC7を介してグランド接地される。S3信号(交流電圧信号)はコンパレータ166の正極端子に入力される。S3信号は電流位相を示す信号である。
【0084】
信号受信回路112は、フォトダイオード160と電圧変換部164、ローパスフィルタ176を含む。電圧変換部164は、コンパレータ162と抵抗R12を含む。
【0085】
フォトダイオード160は、間欠的に点滅する光信号であるT4信号を受光する。T4信号(交流光信号)は、電圧変換部164によりT7信号(交流電圧信号)に変換される。電圧変換部164においては1(ルクス)あたり1(mV)が出力されるように抵抗R12を調整している。受光時のT4信号の明るさは0〜2000(ルクス)程度であるため、T7信号の電圧レベルは0〜2.0(V)程度である。T7信号のデューティ比は補正電圧を示す。T7信号(交流電圧信号)は、ローパスフィルタ176により一定値のT5信号(直流電圧信号)に変換される。ローパスフィルタ176は、抵抗R11とキャパシタC8を含む一般的な回路である。補正電圧が高いほどT5信号の電圧レベルは低く設定される。T5信号(直流電圧信号)はコンパレータ166の負極端子に入力される。T5信号は補正電圧を示す直流電圧信号である。
【0086】
S3>T5のとき、コンパレータ166はハイレベルのS1信号を出力し、それ以外のときにはローレベルのS1信号を出力する。
【0087】
図11は、S1、S3、T5信号の関係を示すタイムチャートである。S3信号は、駆動周波数foの交流電圧信号である。S3信号は電流位相を示す。S3信号は時刻t10から上昇し、時刻t11に急落する。この時刻t10〜t11までの期間がS3信号の単位期間である。駆動周波数foは90〜99kHzなので、単位期間の長さは0.01(msec)程度である。
【0088】
T5信号は、補正電圧に応じて電圧レベルが変化する直流電圧信号である。コンパレータ166は、S3信号とT5信号を比較し、S3>T5信号となるときハイレベル、S3≦T5信号のときローレベルのS1信号を発生させる。t10〜t11の単位期間のうち、t10〜t14においてS1信号はローレベル、t14〜t11においてS1信号はハイレベルとなる。補正電圧によってT5信号のレベルが変化することにより、S1信号のデューティ比が変化する。詳しくは後述するが、負荷電圧V5が高くなると補正電位は低下し、T5信号の信号レベルが高くなる。この結果、S1信号のデューティ比は小さくなるとともに、S1信号の立ち上がり時刻はS3信号の立ち上がり時刻よりも遅くなる。
【0089】
図12は、S1信号とS2信号の関係を示すタイムチャートである。時刻t20〜時刻t21の期間(以下、「第1期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQ1がオン、スイッチングトランジスタQ2がオフとなる期間である。時刻t21〜時刻t22の期間(以下、「第2期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQ1がオフ、スイッチングトランジスタQ2がオンとなる期間、時刻t22〜時刻t23の期間(以下、「第3期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQ1がオン、スイッチングトランジスタQ2がオフとなる期間、時刻t23〜時刻t24の期間(以下、「第4期間」とよぶ)は、スイッチングトランジスタQ1がオフ、スイッチングトランジスタQ2がオンとなる期間であるとする。
【0090】
時刻t20において交流電圧Vo(S2信号)は最低値から最大値に変化する。第1期間が終了する時刻t21に交流電圧Vo(S2信号)は最大値から最低値に変化する。以下、時刻t20のようにS2信号が立ち上がるタイミングを「電圧位相値」とよぶ。
【0091】
駆動周波数foが共振周波数frよりも小さい場合、給電コイル回路120(LC共振回路)のインピーダンスZに容量性リアクタンス成分が現れ、電流Isの電流位相は電圧位相に対して進む。電流位相を示すS0信号は時刻t20よりも早い時刻t10に立ち上がる。以下、時刻t10のようにS0信号が立ち上がるタイミングを「電流位相値」とよぶ。
図12の場合、t20−t10が位相差を示す。t20−t10>0なので電流位相が電圧位相に対して進んでいる。
【0092】
時刻t10にS0信号が立ち上がると、S3信号のレベルも上昇し始める。S0信号がローレベルになる時刻t11に、S3信号も急降下する。
【0093】
T5信号は補正電圧の大きさによってレベルが変化する直流電圧信号である。
図12では、補正電圧が検出され、負荷電圧V5が所望値からずれている状態を示している。
【0094】
S3信号とT5信号は、それぞれ、コンパレータ166の正極端子と負極端子に入力され、その出力がS1信号となる。S3>T5のときにはS1はハイレベル、S3≦T5のときにはS1はローレベルとなる。
図12では、時刻t10よりも後の時刻t14(以下、このようなタイミングを「補正後の電流位相値」ともよぶ)にS3>T5となっている。T5信号の電圧レベルが、補正後の電流位相値を決定する「基準値」となる。
【0095】
位相比較回路150は、S2信号の立ち上がり時刻t10とS1信号の立ち上がり時刻t14を比較して位相差tdとして検出する。実際の位相差はt20−t10(>0)であるが、位相比較回路150によって認識される位相差はt20−t14(<0)である。位相比較回路150はt20−t14に応じた位相差指示電圧SCを出力する。VCO202は、電流位相が電圧位相より遅れている、すなわち、駆動周波数foが共振周波数frよりも大きいと判断し、駆動周波数foを低下させて位相差を解消しようとする。この結果、電力伝送効率が低下し、負荷電圧V5が抑制され、補正電圧が解消されるようにフィードバック制御される。
【0096】
たとえば、負荷LDの抵抗値が高くなると負荷電流I5は減少し、負荷電圧V5は上昇する(
図2参照)。負荷電圧V5が上昇すると計測電位が上昇し、補正電圧は低下する。この結果、T0信号(直流電圧信号)の電圧レベルが低下する。
【0097】
T0信号の電圧レベルが低下すると、T2信号のデューティ比が大きくなる(
図7参照)。この結果、T4信号(出力信号)のデューティ比も大きくなる(
図9参照)。T4信号のデューティ比が大きくなると、T5信号(直流電圧信号)の電圧レベルが高くなる。この結果、S1信号のデューティ比は小さくなる。また、S1信号の立ち上がり時刻がS2信号の立ち上がり時刻よりも遅れるため、位相比較回路150は電流位相が電圧位相に遅れていると認識する。電流位相を進めるため、位相比較回路150は位相差指示電圧SCにより、VCO202に駆動周波数foの低下を指示する。共振周波数frと駆動周波数foの乖離がいっそう大きくなり、電力伝送効率が低下するため(
図4、
図5参照)、負荷電圧V5が低下する。このようなフィードバック制御により、負荷電圧V5を一定値に維持することができる。負荷電圧V5が低下したときにも同様のフィードバック制御がなされる。
【0098】
図13は、変形例におけるワイヤレス受電装置118の回路図である。
図1では、負荷LDに直流電流I5を供給していたが、変形例として負荷LDに交流電流I4をそのまま供給してもよい。この場合には、ロードコイルL4の一部に整流回路124と計測回路126を接続し、T0信号を出力してもよい。
【0099】
図14は、ワイヤレス電力伝送システム100のシステム構成図の変形例である。変形例においては、送電制御回路200がエキサイト回路110を介さずに、直接、給電コイル回路120を駆動する。
図1と同一の符号を付した構成は、
図1で説明した構成と同一または同様の機能を有する。
【0100】
変形例における給電コイル回路120は、給電コイルL2、キャパシタC2にトランスT2二次コイルLiが直列接続された回路である。トランスT2二次コイルLiは、トランスT2一次コイルLbと共に結合トランスT2を形成し、電磁誘導により送電制御回路200から交流電力を供給される。このように、エキサイト回路110を介さず、送電制御回路200から給電コイル回路120に直接交流電力を供給してもよい。
【0101】
以上、実施形態に基づいてワイヤレス電力伝送システム100を説明した。磁場共振型のワイヤレス給電の場合、共振周波数frと駆動周波数foの差により電力伝送効率を制御できる。共振周波数frが変化しても駆動周波数foを自動的に追随させることができるため、使用条件が変化しても、電力伝送効率を一定に維持しやすくなる。また、負荷LDやコイル間距離dが変化したときも、補正電圧に基づくフィードバック制御により負荷電圧V
5を一定に保つことができる。補正電圧に基づいてS1信号を変化させることにより、電力伝送効率を事後調整できる。本発明者の実験によれば、S1信号のレベル調整によって、有意な電力損失の発生は認められなかった。
【0102】
直流電圧信号であるT0信号は交流光信号であるT4信号に変換され、ワイヤレス受電装置118からワイヤレス給電装置116に照射される。光信号であるT4信号は給電コイルL2等が発生させる磁界の影響をほとんど受けないため、良好に信号伝送できるというメリットがある。
【0103】
また、受電側において基準電位を手動調整してもよい。計測電位が変化したときだけでなく基準電圧が変化したときにも補正電圧が検出され、結果として、電力伝送効率が調整される。たとえば、基準電位を低下させると、計測電位を低下させるようなフィードバック制御がなされ、負荷電圧V5も低下する。すなわち、受電側にて給電電力を制御できる。
【0104】
応用例として、ワイヤレス給電装置116をテーブルと一体化し、ワイヤレス受電装置118をテーブルに載置される卓上ランプに内蔵してもよい。従来の卓上ランプは電源コードが邪魔になるため、ダイニングテーブルでは吊り下げ型のランプを使うことが多い。上記応用例によれば、卓上ランプの電源コードを不要化できる。このため、卓上ランプの利用性が高まる。たとえば、卓上ランプで照明する方が、料理を美味しく見せることができる場合もある。吊り下げ型のランプだと照明箇所が固定されてしまうが、卓上ランプはレイアウト自由であるため、多様な照明が可能である。しかも、複数の卓上ランプがテーブルに載置されているときでも、1つの卓上ランプの基準電位を調整すれば、他の卓上ランプの明るさをまとめて制御できる。
【0105】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0106】
送電制御回路200はハーフブリッジ型の回路であるが、プッシュプル型の回路により形成されてもよい。電流波形整形回路168が発生させるS3信号や制御信号発生回路170が発生させるT1信号は、ノコギリ波に限らず、三角波や正弦波など、所定期間において電圧値が漸増減する交流信号であればよい。本実施形態においては、電流位相を調整するとして説明したが、電圧位相をT0信号により調整してもよい。また、出力電圧に限らず電流や電力等に基づいてフィードバック制御してもよい。
【0107】
T4信号は、赤外線などの光信号に限らず、無線信号であってもよい。いずれにしても、駆動周波数foや共振周波数frなどの周波数帯から十分に離れた周波数帯の信号であればよい。赤外線LED158やフォトダイオード160は比較的安価であるため、本実施形態では光信号を採用している。