特許第5673035号(P5673035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5673035
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】携帯用切断機又は電動工具
(51)【国際特許分類】
   B23D 47/00 20060101AFI20150129BHJP
   B23D 45/16 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   B23D47/00 C
   B23D45/16
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-267661(P2010-267661)
(22)【出願日】2010年11月30日
(65)【公開番号】特開2012-115945(P2012-115945A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】倉賀野 真治
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/115438(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0023761(US,A1)
【文献】 特開2010−201601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 47/00
B23D 45/16
B27B 9/00
B27B 17/00
B25F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材を切断する切断刃と、該切断刃を回転駆動するためのモータを収納するハウジングと、前記ハウジングに固定され前記切断刃を覆うソーカバーと、前記モータの回転駆動を制御するトリガを有したハンドルと、を有する本体部と、
前記ハウジングに接続され前記被加工材上を摺動し、前記切断刃が突出する開口部を有するベース部と、を備えた携帯用切断機において、
前記本体部に設けられ、前記モータの駆動を可能にする位置と、前記モータの駆動を不可能にする位置とで移動可能な移動規制部材と、
前記本体部に移動可能で、前記トリガと当接することによって前記トリガの操作を規制する規制部とを備え、
前記移動規制部材は、前記規制部が前記トリガとの当接を解除するように移動することを許容することで前記モータの駆動を可能にし、前記規制部と当接し前記規制部が前記トリガとの当接を解除するように移動することを規制することで前記モータの駆動を不可能にすることを特徴とする携帯用切断機。
【請求項2】
前記移動規制部材は、フック部材であることを特徴とする請求項1に記載の携帯用切断機。
【請求項3】
前記本体部はフック当接部を有し、前記フック部材が前記フック当接部と非当接状態のとき、前記モータの駆動を可能にし、前記フック部材が前記フック当接部と当接状態のとき、前記モータの駆動を不可能にすることを特徴とする請求項に記載の携帯用切断機。
【請求項4】
モータと、前記モータの回転駆動を制御するトリガを有したハンドルと、を有する本体部と、を備えた電動工具において、
略U字形状をし、フック端部、中間部、回動軸を有し、前記本体部に前記回動軸が回動可能に支持されたフック部材を設け、
前記本体部は、前記フック部材の回動が規制されているときに前記フック部材と当接可能で、前記モータを駆動させる回路をオン状態とするフック当接部を有し、前記フック当接部に前記フック部材が当接していないときに、前記トリガの操作にかかわらず前記モータの駆動を不可能にすることを特徴とする電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用切断機などの電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯用切断機となる携帯用丸のこ(以下、丸のこと称す)は、被加工材上を摺動するベース部と、ベースに連結された本体部から主に構成される。本体部は、被加工材を切断するためののこ刃と、のこ刃を駆動するモータと、作業者が把持するハンドルを有し、のこ刃のベース部底面からの突出量を調整可能に構成されている。
【0003】
一方、モータの駆動源としては、特許文献1に開示されるように商用電源から電力供給を受けるタイプ(コード付き丸のこ)と、特許文献2に開示されるように本体部に着脱可能に取り付けられる二次電池からなる電池パックから電力供給を受けるタイプ(コードレス丸のこ)の2タイプが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−036269号公報
【特許文献2】特開2008−229763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コード付き丸のこは、商用電源に接続していれば使用することができるが、電源環境の無い場所では使用することができない。一方、コードレス丸のこは、電源環境の無い場所でも使用することができ使い勝手が良い。
【0006】
しかしながら、コードレス丸のこは、電池パックの充電状態に応じて使用時間が制限されたり、電池パックが空になった場合には充電する必要がある。更に、コードレス丸のこは、電池パックを接続した状態で放置した場合、意図せずにモータが駆動して電池パックの電力を消費してしまうことが考えられる。電池パックがリチウム電池の場合であれば、過放電状態となり電池パックの寿命を短くしてしまう恐れもある。一方、コード付き丸のこでも、同様に、商用電源に接続した状態で放置した場合には意図せずモータが駆動してしまい余分な電力を消費してしまうことが考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、上記した従来の欠点をなくし、意図しない場合にモータへの電力供給を遮断し、商用電源あるいは電池パックの無駄な電力消費を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、被加工材を切断する切断刃と、該切断刃を回転駆動するためのモータを収納するハウジングと、前記ハウジングに固定され前記切断刃を覆うソーカバーと、前記モータの回転駆動を制御するトリガを有したハンドルと、を有する本体部と、前記ハウジングに接続され前記被加工材上を摺動し、前記切断刃が突出する開口部を有するベース部と、を備えた携帯用切断機において、前記本体部に設けられ、前記モータの駆動を可能にする位置と、前記モータの駆動を不可能にする位置とで移動可能な移動規制部材を備えた携帯用切断機を提供する
または、モータと、前記モータの回転駆動を制御するトリガを有したハンドルと、を有する本体部と、を備えた電動工具において、略U字形状をし、フック端部、中間部、回動軸を有し、前記本体部に前記回動軸が回動可能に支持されたフック部材を設け、前記フック部材の回動位置に応じて、前記トリガの操作にかかわらず前記モータの駆動を不可能にする電動工具を提供する。
【0009】
なお、前記移動規制部材は、フック部材であることが好ましい。
【0010】
なお、前記フック部材は、切断方向後方であって前記本体部の前記モータ側の側面にフック回動軸を有し、該フック回動軸を中心に回動可能で、且つ前記フック回動軸方向に摺動可能に支持されていることが好ましい。
【0011】
なお、前記本体部はフック当接部を有し、前記フック部材が前記フック当接部と非当接状態のとき、前記モータの駆動を可能にし、前記フック部材が前記フック当接部と当接状態のとき、前記モータの駆動を不可能にすることが好ましい。
【0012】
なお、前記本体部内には前記移動規制部材に接続され前記トリガの操作を規制する規制部を有し、前記移動規制部材の回動動作に伴って前記規制部は規制回動軸を中心に回動されることにより、前記トリガ操作が規制され、前記モータの駆動を不可能にすることが好ましい。

【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、意図しない場合にモータへの電力供給を遮断することができるため、商用電源あるいは電池パックの無駄な電力消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明となる携帯用切断機の実施の形態を示す上面図。
図2図1の携帯用切断機の使用状態を示す図。
図3】本発明となる携帯用切断機の別の実施の携帯を示す側面図。
図4図3のX方向から見た一部拡大図。
図5図3のA−A線断面図であってフック部材の第1状態を示す図。
図6図3のA−A線断面図であってフック部材の第2状態を示す図。
図7図5のB−B線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明となる携帯用丸のこの第一の実施の形態を図1及び図2を参照して説明する。まず、本発明となる丸のこの構成について説明する。
【0016】
丸のこは、被加工材上を摺動するベース部1と、ベース部1と連結された本体部2から主に構成されている。
ベース部1は、本体部2と連結された主ベース1aと、主ベース1aに着脱可能に取り付けられる補助ベース1bから構成される。補助ベース1bを主ベース1aに取り付ける場合、補助ベース1bの前後位置(図1の左右方向)に設けられたガイド部1cを主ベース1aの図示しない挿入孔に挿入してノブ1dによってガイド部1cを主ベース1aに押し付けることで行う。
【0017】
本体部2は、被加工材を切断するための切断刃3と、切断刃3を駆動するためのモータ4と、作業者が把持するハンドル5から主に構成されている。切断刃3はその外周をソーカバー6によって覆われている。モータ4はモータハウジング7内に収容されている。ハンドル5はソーカバー6とモータハウジング7の間(図1の上下方向)に位置しており作業者が把持する部分である。
【0018】
ハンドル5の端部には、モータ4の駆動源となる電池パック8を取り付けるための電池装着部9が設けられている。また、ハンドル5にはモータ4の駆動、停止を制御するためのトリガスイッチ10が設けられるとともに、トリガスッチ10の近傍にはトリガスイッチ10のオン操作を制限するためのオフロックスイッチ11が設けられている。
【0019】
ベース部1と本体部2は、連結部12によって連結されている。連結部12はベース部1から立設された支持部12aと、ソーカバー6の一端側(図1の右側)に設けられた被支持部6aと、支持部12aと被支持部6aのそれぞれに設けられた図示しない貫通孔に挿入されるボルト12bとから構成される。更に、連結部12とは反対側(図1の左側)には、ベース部1の底面からの切断刃3の突出量を調整するための切り込み深さ調整機構13が設けられており、この調整機構13によってもベース部1と本体部2は連結されている。
【0020】
調整機構13は、ベース部1から立設されたリンク部13aと、本体側に設けられリンク部13aに形成された図示しない長穴に挿入されるノブ13bから構成される。連結部12(ボルト12b)を支点として本体部2をベース部1に対して回動させてベース部1の底面からの切断刃3の突出量を所望の深さに調整した後、ノブ13bを締め付けることにより所望の切り込み深さで切断作業を行うことができる。
【0021】
また、ベース部1にはベース部1に対して本体部2を傾斜するための傾斜機構14を備えている。傾斜機構14は、ベース部1に設けられた傾斜支持部14aと、本体部2にねじ嵌合したノブ14bから構成されている。ノブ14bを緩めベース部1に対して本体部2を傾動支点14cを支点として傾斜させて所望の傾斜角度にした後、ノブ14bを締め付けて本体部2とノブ14bによって傾斜支持部14aを挟み込むことで傾斜切断を行うことができる。
【0022】
次に、本発明となる丸のこの特徴について説明する。丸のこは、作業者が意図したいときにモータ4が駆動しないよう構成されている。以下詳細に説明する。
【0023】
丸のこの本体部2には、作業場所の任意の箇所に丸のこを引っ掛けるためのフック部材であるフック15が設けられている。フック15は略U字形状で構成され、先端部のフック端部15a、中間部分のフック中間部15b、フック回動軸15cとにより形成されている。フック端部15aを、壁に設けられた金具や木材等の引っかけ部20に引っ掛けることで、切断作業を行わない際に丸のこ本体を収納することができる。さらに、フック15は本体部2の側面に設けられフック回動軸15c方向に設けられた支持部貫通孔23aを有する支持部23によって回動可能に支持されており、支持部貫通孔23aに挟まれるようにヒンジ22が間に挿入され、フック15とヒンジ22がねじ21で螺合されることで、フック15が本体部2から抜け落ちることを防止している(図4)。また、フック回動軸15cが本体部に設けられた支持部23を貫通し、フック回動軸15cの末端に設けられたヒンジ22によって抜け落ちることを防止する構成とすることにより、フック15がフック回動軸15c方向に移動するような構成でもよい(図2)。フックが設けられる位置は、本体部2の側面に限定されず、ハンドル5の側面や電池装着部9の側面など任意の位置に設けられてもよく、フック端部15aの延長軸上にベース部1や本体部2が重ならない位置にフック15を設置すると、これらの部材が邪魔にならずより好ましい(図2図3)。
【0024】
つぎに、モータ4の駆動を許可あるいは禁止するための機構について、以下説明する。
【0025】
図1に示すように、本体部2若しくはベース部1の表面又は内部には、フック収容部25が収容され、フック収容部25はフック当接部である板ばね24を有している。板ばね24は、モータ4を駆動させるための図示しない回路の一部と電気的に連通しており、フック15によって板ばね24が押圧されるとモータ4を駆動させるための回路がオンとなり、モータ4が駆動可能状態となる。具体的には、フック15がフック収容部25に挿入されると、図1の破線部のように板ばね24と図示しない回路部に設けられるスイッチ部24aとが、電気的に接続されモータ4の駆動が可能な状態となる。この状態でトリガ10を操作するとモータ4が駆動する。逆に、図1の実線部のようにフック15が、作業者によって抜かれると板ばね24の付勢力によってスイッチ部24aとの電気的な接続が解除され、モータ4を駆動させるための回路がオフとなり、モータ4の駆動ができない状態となる。この状態でトリガ10を操作してもモータ4は駆動しない。従って、本体部2と接続されたフック15が引っ掛け部20などに引っ掛けられた状態のときには、モータ4が駆動しない構成となっている。フック当接部は、板ばね24に限定されることはなく、スイッチや素子等の電子部品で構成されていてもよい。
【0026】
つぎに本発明の別の実施形態について説明する。
【0027】
図5乃至図7に示すように、本体部2のハンドル5の内部には規制部であるオフロックスイッチ11が設けられ、オフロックスイッチ11は規制回動軸11aを中心にハンドル5の内部で回動する構成となっており、オフロックスイッチ端部11bがトリガ10と当接することによって、トリガ10の操作が規制されモータの電源をONできない構成となっている。さらに、ハンドル5内にはオフロックスイッチ11の回動動作を規制するストッパ26が配設されておりストッパ26は、弾性体26aによってフック回動軸15c側に押し付けられている。フック15収納時はハンドル5前面の壁面にフック15を併設し、フック15使用時にはフック15を引き起こし切断刃3と平行となる位置まで回動させる。このとき、フック15にはヒンジ22がねじ21によって固定されており、フック15の回動に合わせてヒンジ11も回動する。フック15使用時にヒンジ22が回動することで、ハンドル5内に配設されたストッパ26がヒンジ22に押圧され、弾性体26aの付勢とは逆方向に摺動することで、オフロックスイッチ11の正面に位置していたストッパ26に設けられたストッパ溝26bがオフロックスイッチ11正面から移動しオフロックスイッチ11が回動不能となりトリガ10を操作不能とし、モータ4を駆動させることができなくなる。
【0028】
つぎに、本発明に係る効果について以下、説明する。
【0029】
請求項1に係る発明によれば、被加工材を切断する切断刃3と、切断刃3を回転駆動するためのモータ4を収納するハウジング7と、ハウジング7に固定され切断刃3を覆うソーカバー6と、モータ4の回転駆動を制御するトリガ10を有したハンドル5と、を有する本体部2と、ハウジング7に接続され被加工材上を摺動し、切断刃3が突出する開口部を有するベース部1と、を備えた携帯用切断機において、本体部2に設けられ、モータ4の駆動を可能にする位置と、モータの駆動を不可能にする位置とで移動可能な移動規制部材を備えた携帯用切断機を提供している。
【0030】
このような構成にすることによって、不意にモータが駆動することを防止でき、電池パックの余計な電力を消費することを抑制することができる。
【0031】
請求項2に係る発明によれば、移動規制部材は、フック部材15であることが好ましい。
【0032】
このような構成にすることによって、フック部材を使用する際は、切断作業を行わないときであるから、簡単な構成で効率の良い部材(移動規制部材)を提供できると共に、不意にモータが駆動することを防止でき、電池パックの余計な電力を消費することを抑制することができる。
【0033】
請求項3に係る発明によれば、フック部材15は、切断方向後方であって本体部2のモータ4側の側面にフック回動軸15cを有し、フック回動軸15cを中心に回動可能で、且つフック回動軸15c方向に摺動可能に支持されていることが好ましい。
【0034】
このような構成にすることによって、フック使用時に本体部が邪魔となり、作業者がフックを引っ掛けづらいといった不満を解消することができると共に、簡単な構成で不意にモータが駆動することを防止でき、電池パックの余計な電力を消費することを抑制し、作業性の良い携帯用切断機を提供することができる。
【0035】
請求項4に係る発明によれば、本体部2はフック当接部24を有し、フック部材15がフック当接部24と非当接状態のとき、モータ4の駆動を可能にし、フック部材15がフック当接部24と当接状態のとき、モータ4の駆動を不可能にすることが好ましい。
【0036】
このような構成にすることによって、簡単な構成でモータの駆動を制御することができ、安価な部材の携帯用切断機を提供することができる。
【0037】
請求項5に係る発明によれば、本体部2内には移動規制部材に接続されトリガ10の操作を規制する規制部11を有し、移動規制部材の回動動作に伴って規制部11は規制回動軸11aを中心に回動されることにより、トリガ10の操作が規制され、モータ4の駆動を不可能にすることが好ましい。
【0038】
このような構成にすることによって、簡単な構成でモータの駆動を制御することができ、安価な部材の携帯用切断機を提供することができる。
【符号の説明】
【0039】
ベース部1 本体部2 切断刃3 モータ4 ハンドル5 ソーカバー6 ハウジング7 トリガ10 規制部11 規制回動軸11a フック部材15 フック回動軸15c フック当接部24
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7