(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
無線デバイスと、該無線デバイスを管理する現用系の第1管理装置及び待機系の第2管理装置と、前記無線デバイスと前記第1,第2管理装置とを接続するルータ装置とを備える通信システムであって、
前記無線デバイスは少なくとも1台で前記通信システムを構成し、
前記ルータ装置は、前記1台の無線デバイスから受信した通信情報を前記第1,第2管理装置の双方に宛てて送信し、前記第1,第2管理装置のうちの何れか一方から前記通信情報を受信した旨を示す応答を受けることにより、前記通信情報の送信処理を完了するものであり、
前記第1,第2管理装置は、前記第1,第2管理装置の間で前記ルータ装置に対する応答状況を示す情報の授受を行って前記ルータ装置から送信された前記通信情報をそれぞれ記憶し、
前記第2管理装置は、前記第1管理装置が前記ルータ装置に対する応答を行った場合には、前記ルータ装置に対する応答を行わず、前記第1管理装置が前記ルータ装置に対する応答を行わなかった場合には、前記ルータ装置に対する応答を行う
ことを特徴とする通信システム。
前記ルータ装置は、前記第1,第2管理装置の宛先を示すアドレス情報を格納するテーブルを備えており、当該テーブルを参照して前記無線デバイスからの通信情報を前記第1,第2管理装置の双方に宛てて送信することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の冗長構成において、現用系のシステムマネージャと待機系のシステムマネージャとの間の管理情報の共有は、現用系のシステムマネージャが管理する管理情報が待機系のシステムマネージャに転送されることによって実現される。現用系のシステムマネージャから管理情報の転送が開始されてから待機系のシステムマネージャで管理情報が共有されるまでには、管理情報の転送に要する時間だけ遅延が生ずる。このため、現用系のシステムマネージャに障害が生じて待機系のシステムマネージャに切り替わるときに、共有すべき管理情報の一部が欠損する虞があるという問題があった。
【0007】
また、現用系のシステムマネージャから待機系のシステムマネージャへの切り替え方法としては、バックボーンルータの通信先を現用系のシステムマネージャから待機系のシステムマネージャに変更する方法と、待機系のシステムマネージャのアドレスそのものを現用系のシステムマネージャのアドレスに変更する方法とが挙げられる。これらの方法の何れもアドレスの変更という処理を行う必要があり、現用系のシステムマネージャから待機系のシステムマネージャへの切り替えに時間を要することから、上述した管理情報の欠損の問題が考えられる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、現用系と待機系との切り替えを短時間で行うことができ、これにより管理情報の欠損を防止することができる通信システム、通信方法、及び管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の通信システムは、無線デバイス(10a〜10e)と、該無線デバイスを管理する第1,第2管理装置(30a、30b)と、前記無線デバイスと前記第1,第2管理装置とを接続するルータ装置(20、20a、20b)とを備える通信システム(1〜3)であって、前記ルータ装置は、前記無線デバイスからの通信情報を前記第1,第2管理装置の双方に宛てて送信し、前記第1,第2管理装置のうちの何れか一方からの応答を受けることにより、前記通信情報の送信処理を完了するものであり、前記第2管理装置は、前記第1管理装置の前記ルータ装置に対する応答状況に応じて前記ルータ装置に対する応答を行うものであることを特徴としている。
この発明によると、無線デバイスからの通信情報がルータ装置によって第1,第2管理装置の双方に宛てて送信され、第1,第2管理装置の何れか一方から送信された応答がルータ装置に受信された場合に通信情報の送信処理が完了される。
また、本発明の通信システムにおいて、前記第1,第2管理装置は、前記ルータ装置から送信された前記通信情報をそれぞれ記憶し、前記第2管理装置は、前記第1管理装置が前記ルータ装置に対して応答を行った場合には、前記ルータ装置に対する応答を行うことなく記憶した前記通信情報を消去することを特徴としている。
また、本発明の通信システムは、前記第1,第2管理装置の各々から参照可能であり、前記第1,第2管理装置で用いられる管理情報を記憶する記憶装置(40)を備えることを特徴としている。
また、本発明の通信システムにおいて、前記ルータ装置が、前記第1,第2管理装置の宛先を示すアドレス情報を格納するテーブル(T)を備えており、当該テーブルを参照して前記無線デバイスからの通信情報を前記第1,第2管理装置の双方に宛てて送信することを特徴としている。
本発明の通信方法は、ルータ装置(20、20a、20b)を介して無線デバイス(10a〜10e)と該無線デバイスを管理する第1,第2管理装置(30a、30b)との間で通信を行う通信方法であって、前記無線デバイスからの通信情報を前記ルータ装置から前記第1,第2管理装置の双方に宛てて送信する第1ステップと、前記第1,第2管理装置の間で前記ルータ装置に対する応答状況を示す情報の授受を行い、前記第1,第2管理装置の何れか一方が前記ルータ装置に対する応答を行う第2ステップと、前記第1,第2管理装置のうちの何れか一方からの応答を受けることにより、前記ルータ装置が前記通信情報の送信処理を完了させる第3ステップとを含むことを特徴としている。
本発明の管理装置は、無線デバイス(10a〜10e)との間で行われるルータ装置(20、20a、20b)を介した通信を管理する管理装置(30a、30b)であって、前記ルータ装置から送信された前記無線デバイスからの通信情報を受信した場合に、他の管理装置との間で前記ルータ装置に対する応答状況を示す情報の授受を行い、該情報に応じて前記ルータ装置に対する応答を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無線デバイスからの通信情報をルータ装置によって現用系の第1管理装置と待機系の第2管理装置との双方に宛てて送信し、第1,第2管理装置の何れか一方がルータ装置に対する応答を送信し、この応答を受信した場合にルータ装置が通信情報の送信処理を完了するようにしている。このため、現用系と待機系との切り替えを短時間で行うことができ、これにより管理情報の欠損を防止することができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による通信システム、通信方法、及び管理装置について詳細に説明する。
【0013】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による通信システムの全体構成を示すブロック図である。
図1に示す通り、本実施形態の通信システム1は、無線デバイス10a〜10c、バックボーンルータ20(ルータ装置)、システムマネージャ30a(第1管理装置)、システムマネージャ30b(第2管理装置)、及び記憶装置40を備えており、バックボーンルータ20を介した無線デバイス10a〜10cとシステムマネージャ30a,30bとの間の通信が可能である。
【0014】
無線デバイス10a〜10cは、例えば流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、その他のプラントや工場に設置される無線フィールド機器であり、インダストリアル・オートメーション用無線通信規格であるISA100.11aに準拠した無線通信を行う。これら無線デバイス10a〜10cの動作は、システムマネージャ30a(又は、システムマネージャ30b)からバックボーンルータ20を介して送信されてくる制御データに基づいて制御される。また、無線デバイス10a〜10cで得られた測定データはバックボーンルータ20を介してシステムマネージャ30a(又は、システムマネージャ30b)に収集されて記憶装置40に記憶される。
【0015】
バックボーンルータ20は、システムマネージャ30a,30b及び記憶装置40が接続されるバス型の有線ネットワークであるバックボーンネットワークNと、無線デバイス10a〜10cが接続される無線ネットワークとを接続し、無線デバイス10a〜10cとシステムマネージャ30a,30bとの間で送受信される各種データの中継を行う装置である。尚、バックボーンルータ20も上記の無線通信規格ISA100.11aに準拠した無線通信を行う。
【0016】
このバックボーンルータ20は、無線デバイス10a〜10cからシステムマネージャ30aに向けて送信されてきた通信データ(通信情報)をシステムマネージャ30a,30bの双方に送信し、この通信データを受信した旨を示す応答をシステムマネージャ30a,30bの何れか一方から受けることにより、上記通信データの送信処理を完了する。バックボーンルータ20がこのような処理を行うのは、システムマネージャ30aに障害が生じた場合に、システムマネージャ30aからシステムマネージャ30bへの切り替えを短時間で行うためである。
【0017】
また、バックボーンルータ20は、システムマネージャ30a,30bの宛先を示すアドレス情報が格納されたテーブルTを記憶するメモリ20aを備えており、このテーブルTに格納されたアドレス情報を参照して、無線デバイス10a〜10cからの通信データをシステムマネージャ30a,30bの双方に送信する。このようなテーブルTを備えることにより、通信システム1に設けられるシステムマネージャ30a,30bが変更されても宛先を容易に変更することができる。
【0018】
システムマネージャ30a,30bは、バックボーンネットワークNにそれぞれ接続されており、バックボーンルータ20によって形成される無線ネットワークを介して無線デバイス10a〜10cとの間で通信を行いながら無線ネットワークに接続される無線デバイス10a〜10cの管理を行う。具体的には、無線ネットワークに接続されている無線デバイス10a〜10cに制御データを送信してその動作を制御するとともに、これら無線デバイス10a〜10cで測定される測定データの収集を行う。
【0019】
ここで、システムマネージャ30aは現用系のシステムマネージャであって、システムマネージャ30bは待機系のシステムマネージャである。このように、システムマネージャを冗長構成にすることによって通信システム1の信頼性を高めている。これらシステムマネージャ30a,30bは、バックボーンルータ20からの通信データを受信した場合には、バックボーンルータ20に対する応答状況を示す情報の授受を行って、これらシステムマネージャ30a,30bのうちの何れか一方がバックボーンルータ20に対する応答を行う。
【0020】
具体的に、現用系のシステムマネージャ30aは、バックボーンルータ20から送信されてくる通信データを受信した場合には、通信データを受信した旨を示す応答をバックボーンルータ20に対して送信するとともに、バックボーンルータ20に対する応答状況を示す状況データ(バックボーンルータ20に対して応答を行った旨を示す情報)をシステムマネージャ30bに送信する。尚、システムマネージャ30aは、受信したバックボーンルータ20からの通信データを一時的に記憶し、この通信データを必要に応じて記憶装置40に記憶させる。
【0021】
これに対し、待機系のシステムマネージャ30bは、バックボーンルータ20から送信されてくる通信データを受信した場合には、一定時間(例えば、数ミリ秒程度)内にシステムマネージャ30aからの状況データが得られたか否かを判断する。システムマネージャ30bは、一定時間内に状況データが得られた場合にはバックボーンルータ20に対する応答を行わず、一定時間内に状況データが得られなかった場合にはバックボーンルータ20に対する応答を行う。
【0022】
つまり、待機系のシステムマネージ30bは、現用系のシステムマネージャ30aからの状況データが得られる通常時には、バックボーンルータ20に対する応答は行わない。これに対し、現用系のシステムマネージャ30aの故障により、或いは、現用系のシステムマネージャ30aとバックボーンルータ20との間の通信経路の障害によって、システムマネージャ30aからの状況データが得られない障害時には、待機系のシステムマネージ30bは、現用系のシステムマネージャ30aに代わってバックボーンルータ20に対する応答を行う。
【0023】
尚、システムマネージャ30bは、システムマネージャ30aと同様に、受信したバックボーンルータ20からの通信データを一時的に記憶する。但し、システムマネージャ30bは、システムマネージャ30aからの状況データが得られた場合(バックボーンルータ20に応答を行わない場合)には、一時的に記憶した通信データを消去する。これに対し、システムマネージャ30aからの状況データが得られなかった場合(バックボーンルータ20に応答を行う場合)には、必要に応じて記憶装置40に記憶させる。
【0024】
記憶装置40は、バックボーンネットワークNを介してシステムマネージャ30a,30bの各々から参照可能であり、システムマネージャ30a,30bで用いられる各種管理情報を記憶する。この記憶装置40としては、例えば数テラバイトの大容量のハードディスクを備えるNAS(Network Attached Storage:ネットワーク接続ストレージ)等を用いることができる。
【0025】
図2は、本発明の第1実施形態による通信システムにおける各装置間に確立される論理的な通信経路を示す図である。
図2に示す通り、無線デバイス10a〜10cとバックボーンルータ20との間には、通信経路R1〜R3が確立される。これら通信経路R1〜R3を介して無線デバイス10a〜10cからの通信データがバックボーンルータ20にそれぞれ送信される。
【0026】
バックボーンルータ20とシステムマネージャ30aとの間には通信経路R11が確立され、バックボーンルータ20とシステムマネージャ30bとの間には通信経路R12が確立される。バックボーンルータ20からの通信データは、通信経路R11,R12を介してシステムマネージャ30a,30bにそれぞれ送信され、システムマネージャ30aからの応答は通信経路R11を介してバックボーンルータ20に送信される。
【0027】
尚、バックボーンルータ20に対する応答は、主としてシステムマネージャ30aによって行われ、障害時にのみシステムマネージャ30bによって行われる。このため、
図2においては、通信経路R11を双方向の矢印で示する一方で、通信経路R12についてはバックボーンルータ20に対する応答の送信方向を示す矢印であるシステムマネージャ30bからバックボーンルータ20に向かう矢印を省略して片方向の矢印で図示している。
【0028】
システムマネージャ30a,30bの間には通信経路R20が確立され、システムマネージャ30aからバックボーンルータ20に対して応答を行った旨を示す状況データ等の情報が授受される。システムマネージャ30aと記憶装置40との間には通信経路R31が確立され、システムマネージャ30bと記憶装置40との間には通信経路R32が確立される。これら通信経路R31,R32を介して記憶装置40がシステムマネージャ30a,30bからそれぞれ参照される。
【0029】
次に、上記構成における通信システム1の動作について説明する。尚、以下の説明では、無線デバイス10aからシステムマネージャ30aに向けて通信データが送信される場合を例に挙げて説明する。システムマネージャ30a宛の通信データが無線デバイス10aから送信されると、この通信データは、まず
図2に示す通信経路R1を介してバックボーンルータ20に受信される。
【0030】
無線デバイス10aからの通信データを受信すると、バックボーンルータ20はメモリ20aに記憶されたテーブルTの内容を参照して、受信した通信データをシステムマネージャ30a,30bの双方に送信する(第1ステップ)。バックボーンルータ20から送信された無線データは、
図2に示す通信経路R11を介してシステムマネージャ30aに送信されるとともに、
図2に示す通信経路R12を介してシステムマネージャ30bに送信される。
【0031】
バックボーンルータ20からの通信データを受信すると、システムマネージャ30aはその通信データを一時的に記憶する。そして、通信データを受信した旨を示す応答を通信経路R11を介してバックボーンルータ20に送信するとともに、バックボーンルータ20に対して応答を行った旨を示す状況データを通信経路R20を介してシステムマネージャ30bに送信する(第2ステップ)。
【0032】
また、バックボーンルータ20からの通信データを受信すると、システムマネージャ30bはその通信データを一時的に記憶し、一定時間内にシステムマネージャ30aからの状況データが得られたか否かを判断する。システムマネージャ30aからの状況データが一定時間内に得られた場合には、システムマネージャ30bは、バックボーンルータ20に対する応答を行わず、一時的に記憶した通信データを消去する。
【0033】
以上の処理がシステムマネージャ30a,30bでそれぞれ行われることにより、システムマネージャ30aからバックボーンルータ20に対して応答が送信される。システムマネージャ30aからの応答がバックボーンルータ20で受信されると、バックボーンルータ20は、システムマネージャ30a,30bに対して先に送信した通信データの送信処理を完了させる(第3ステップ)。尚、バックボーンルータ20からシステムマネージャ30a,30bに送信された通信データは、システムマネージャ30aで消去されずに記憶されている。このため、システムマネージャ30aは、この通信データを必要に応じて通信経路R31を介して記憶装置40に格納する。
【0034】
ここで、システムマネージャ30aの故障、若しくは、システムマネージャ30aとバックボーンルータ20との間の通信経路R11の障害が生じた場合について考える。
図3は、本発明の第1実施形態による通信システムの障害が生じた様子を模式的に示す図であり、(a)はシステムマネージャ30aの故障が生じた様子を示す図であり、(b)はシステムマネージャ30aとバックボーンルータ20との間の通信経路R11の障害が生じた様子を示す図である。
【0035】
図3(a)に示す通り、システムマネージャ30aの故障が生じた場合には、システムマネージャ30aは他の装置(バックボーンルータ20、システムマネージャ30b、記憶装置40)との通信が不可能、或いは不安定になることが考えられる。このような場合には、バックボーンルータ20からの通信データがシステムマネージャ30aで受信されずに、システムマネージャ30aのバックボーンルータ20に対する応答及びシステムマネージャ30bに対する状況データの送信が行われないことがある。
【0036】
また、
図3(b)に示す通り、システムマネージャ30aとバックボーンルータ20との間の通信経路R11の障害が生じた場合には、バックボーンルータ20からの通信データがシステムマネージャ30aで受信されない。このため、システムマネージャ30aのバックボーンルータ20に対する応答及びシステムマネージャ30bに対する状況データの送信が行われない。
【0037】
上記の故障や障害が生じた場合には、システムマネージャ30bは、バックボーンルータ20からの通信データを受信しても、システムマネージャ30aからの状況データは得られない。このため、システムマネージャ30bは、上述した一定時間経過後にシステムマネージャ30aに代わって、通信経路R12を介したバックボーンルータ20に対する応答を行う(第2ステップ)。システムマネージャ30bからの応答がバックボーンルータ20で受信されると、バックボーンルータ20は、システムマネージャ30a,30bに対して先に送信した通信データの送信処理を完了させる(第3ステップ)。
【0038】
ここで、システムマネージャ30aに送信された通信データは、システムマネージャ30bにも送信されており、システムマネージャ30bがバックボーンルータ20に対する応答を行った場合には消去されない。このため、システムマネージャ30aがシステムマネージャ30bに切り替わっても、無線デバイス10aからの無線データが失われたり、無線デバイス10aとの間の通信が切断されることはない。尚、システムマネージャ30bは、システムマネージャ30aと同様に、記憶している通信データを必要に応じて通信経路R32を介して記憶装置40に格納する。
【0039】
以上の通り、本実施形態では、無線デバイス10aからシステムマネージャ30aに向けて送信された通信データを、バックボーンルータ20がシステムマネージャ30a,30bの双方に送信している。そして、これらシステムマネージャ30a,30bの間でバックボーンルータ20に対する応答状況を示す情報の授受を行って、システムマネージャ30a,30bの何れか一方がバックボーンルータ20に対する応答を行い、この応答を受けることによりバックボーンルータ20が先に送信した通信データの送信処理を完了させている。
【0040】
よって、現用系のシステムマネージャ30aを待機系のシステムマネージ30bに切り替える際に、従来のような管理情報の転送やアドレス変更が不要であるため、現用系のシステムマネージャ30aから待機系のシステムマネージ30bへの切り替えを短時間で行うことができる。これにより、切り替えに時間を要することによって生ずる管理情報の欠損を防止することができる。また、システムマネージャ30a,30bの各々によって参照される記憶装置40を備えているため、無線デバイス10aから送信された通信データが失われるのを防止することができる。
【0041】
図4は、本発明の第1実施形態による通信システムの変形例を示す図である。
図1に示した通信システム1は、バックボーンルータ20、システムマネージャ30a,30b、及び記憶装置40がバス型のバックボーンネットワークNに接続されていた。しかしながら、これらバックボーンルータ20、システムマネージャ30a,30b、及び記憶装置40を、
図4(a)〜(c)に示す通りに接続することも可能である。
【0042】
図4(a)に示す例では、記憶装置40がバックボーンネットワークNに接続されずに、ネットワークN1を介してシステムマネージャ30a,30bに接続されている。かかる接続にすることで、状況データや記憶装置40に格納すべきデータを、バックボーンネットワークNを介さずにシステムマネージャ30a,30b及び記憶装置40の間で送受できるため、バックボーンネットワークNのトラフィックを低減することができる。
【0043】
また、
図4(b)に示す例では、バックボーンネットワークNによってバックボーンルータ20とシステムマネージャ30a,30bとを接続するのではなく、ケーブルC1,C2を用いてバックボーンルータ20とシステムマネージャ30a,30bとが1対1で接続されている。また、
図4(c)に示す例では、バックボーンルータ20とシステムマネージャ30a,30bとの間が無線接続によって接続されている。
【0044】
〔第2実施形態〕
図5は、本発明の第2実施形態による通信システムを説明するための図である。
図5に示す通り、本実施形態の通信システム2,3は、2つのバックボーンルータ20a,20b(ルータ装置)を備えており、システムマネージャに加えてバックボーンルータも冗長構成である点において第1実施形態の通信システム1と相違する。尚、バックボーンルータ20a,20bは、
図1に示すバックボーンルータ20と同様の機能を有するものである。
【0045】
図5(a)に示す通信システム2は、バックボーンルータ20a,20bの双方に対して、システムマネージャ30aが現用系にされ、システムマネージャ30bが待機系にされている。これに対し、
図5(b)に示す通信システム3は、バックボーンルータ20aに対しては、システムマネージャ30aが現用系にされてシステムマネージャ30bが待機系にされており、バックボーンルータ20bに対しては、システムマネージャ30bが現用系にされてシステムマネージャ30aが待機系にされている。
【0046】
具体的に、
図5(a)に示す通信システム2では、バックボーンルータ20aからの通信データが、通信経路R41,R42を介してシステムマネージャ30a,30bにそれぞれ送信され、バックボーンルータ20bからの通信データが、通信経路R43,R44を介してシステムマネージャ30a,30bにそれぞれ送信される。そして、障害が生じていない場合には、バックボーンルータ20a,20bに対するシステムマネージャ30aからの応答が通信経路R41,R43を介してそれぞれ送信され、障害が生じた場合には、バックボーンルータ20a,20bに対するシステムマネージャ30bからの応答が通信経路R42,R44を介してそれぞれ送信される。
【0047】
図5(b)に示す通信システム3において、バックボーンルータ20a,20bからの通信データは、
図5(a)に示す通信システム2と同じ経路を経て、システムマネージャ30a,30bにそれぞれ送信される。しかしながら、
図5(b)に示す通信システム3では、障害が生じていない場合には、バックボーンルータ20aに対するシステムマネージャ30aからの応答が通信経路R41を介して送信されるとともに、バックボーンルータ20bに対するシステムマネージャ30bからの応答が通信経路R44を介して送信される。そして、障害が生じた場合には、バックボーンルータ20aに対するシステムマネージャ30bからの応答が通信経路R42を介して送信されるとともに、バックボーンルータ20bに対するシステムマネージャ30aからの応答が通信経路R43を介して送信される。
【0048】
以上の通り、本実施形態においては、バックボーンルータ20a,20bの数が相違するものの、第1実施形態と同様に、バックボーンルータ20a,20bがそれぞれシステムマネージャ30a,30bの双方に通信データを送信している。そして、第1実施形態と同様に、システムマネージャ30a,30bの間でバックボーンルータ20a,20bに対する応答状況を示す情報の授受を行って、システムマネージャ30a,30bの何れか一方がバックボーンルータ20a,20bに対する応答を行い、この応答を受けることによりバックボーンルータ20a,20bが先に送信した通信データの送信処理を完了させている。よって、本実施形態においても、現用系から待機系への切り替えを短時間で行うことができ、管理情報や通信データの欠損を防止することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態による通信システム、通信方法、及び管理装置について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、バックボーンルータ20がテーブルTを参照してシステムマネージャ30a,30bの双方に通信データを送信する例について説明した。しかしながら、ネットワークに接続された複数のノードに対して同時にデータの送信を行う機能であるマルチキャストを利用してシステムマネージャ30a,30bの双方に通信データを送信しても良い。
【0050】
また、上記実施形態では、現用系のシステムマネージャ30aがバックボーンルータ20からの通信データを受信してバックボーンルータ20に対する応答を行ったときに、その旨を示す状況データを待機系のシステムマネージャ30bに送信する例について説明した。しかしながら、待機系のシステムマネージャ30bがバックボーンルータ20からの通信データを受信したときに、現用系のシステムマネージャ30aに対してバックボーンルータ20に対する応答を行ったか否かを問い合わせるようにしても良い。
【0051】
また、上記実施形態では、システムマネージャ30a,30bの双方から参照可能な記憶装置40を備える例について説明したが、このような記憶装置40は必ずしも必要はない。例えば、システムマネージャ30a,30bを高速通信が可能なケーブルで接続すれば、システムマネージャ30a,30bで用いられる各種管理情報の転送に要する時間を短縮することができるため、システムマネージャ30a,30b間で管理情報を共有しても管理情報の欠損が抑えられる。