(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記振れ回り抑制制御部を複数並列に接続し、各々で算出された指令値の並進運動成分と回転運動成分をそれぞれ加算することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のモータ制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施形態1]
本実施形態1におけるモータ制御装置1bのブロック図を
図1,
図2に示す。本実施形態1におけるモータ制御装置1bは、
図1,
図2に示すように、2つのユニットを有し、軸を回転駆動させる駆動制御部10a,10bと、軸変位を検出して軸支持力を発生させる軸支持制御部20a,20bと、外乱およびジャイロ効果を抑制する軸変位指令値の並進運動成分と回転運動成分を出力する振れ回り抑制制御部30a,30bと、を有する。
【0023】
駆動制御部10a,10bは、ロータリーエンコーダ11によりベアリングレスモータ2a,2bの軸の回転角度θを検出し、この回転角度θに基づいて速度検出器12a,12bにより軸の回転角速度ωを検出する。次に、減算部13a,13bにより、前記検出した軸の回転角速度ωと角速度指令値ω
*とを比較して角速度偏差Δωを求め、この角速度偏差ΔωをPIアンプ14a,14bに入力し、q軸のトルク電流指令値i
mq1*,i
mq2*を算出する。また、d軸の励磁電流指令値i
md1*,i
md2*は零で固定されている。
【0024】
電流検出器CT1,CT3により検出されたインバータ出力電流検出値を、dq変換器15a,15bにおいてdq変換することにより、実際のq軸のトルク電流検出値i
mq1,i
mq2とd軸の励磁電流検出値i
md1,i
md2に変換する。この実際のトルク電流検出値i
mq1,i
mq2,励磁電流検出値i
md1,i
md2と前記トルク電流指令値i
mq1*,i
mq2*,励磁電流指令値i
md1*,i
md2*とを、減算器16a〜16dによりそれぞれ比較して電流偏差Δi
mq1,Δi
mq2,Δi
md1,Δi
md2を求め、この電流偏差Δi
mq1,Δi
mq2,Δi
md1,ΔI
md2から電流制御器ACRによりインバータ電圧指令値Vq
1*,Vd
1*,Vq
2*,Vd
2*を算出する。
【0025】
このインバータ電圧指令値Vq
1*,Vd
1*,Vq
2*,Vd
2*をdq逆変換器17a,17bにより固定座標上のインバータ電圧指令値に変換する。前記固定座標上のインバータ電圧指令値はPWM変調器18a,18bによりON/OFFのゲート信号に変換され、このゲート信号に基づいてインバータINV1a,INV1bからベアリングレスモータ(または、磁気軸受モータ)2a,2bに電圧を出力する。
【0026】
軸支持制御部20a,20bは、ギャップセンサ21a,21bによりベアリングレスモータ(または、磁気軸受モータ)2a,2bの軸変位α1,α2,β1,β2を検出する。軸変位指令値の並進運動成分αp
*,βp
*と回転運動成分αr
*,βr
*とを加算器22a,22bにより加算し、ユニット1のモータ軸変位指令値α
1*,β
1*を求める。また、軸変位指令値の並進運動成分αp
*,βp
*から回転運動成分αr
*,βr
*を減算器22c,22dにより減算し、ユニット2の軸変位指令値α2
*,β2
*を求める。
【0027】
軸変位検出値α1,β1,α2,β2と前記軸変位指令値α1
*,β1
*,α2
*,β2
*とを減算器23a〜23dによりそれぞれ比較して軸変位偏差Δα1,Δβ1,Δα2,Δβ2を求め、この軸変位偏差Δα1,Δβ1,Δα2,Δβ2からPIDアンプ24a〜24dにより軸支持力指令値F
α1*,F
β1*,F
α2*,F
β2*を演算する。この軸支持力指令値F
α1*,F
β1*,F
α2*,F
β2*は、トルク電流により発生する磁界との干渉を考慮し、軸支持変調器25a,25bにより軸支持電流指令値i
Sα1*,i
Sβ1*i
Sα2*,i
Sβ2*に変換される。
【0028】
電流検出器CT2,CT4により検出された軸支持側インバータINV2a,INV2bのインバータ出力電流検出値を、3相2相変換器26a,26bによりαβ座標上の軸支持電流検出値i
Sα1,i
Sβ1,i
Sα2,i
Sβ2に変換する。
【0029】
この軸支持電流検出値i
Sα1,i
Sβ1,i
Sα2,i
Sβ2と軸支持電流指令値i
Sα1*,i
Sβ1*,i
Sα2*,i
Sβ2*とを減算器27a〜27dによりそれぞれ比較して電流偏差Δi
Sα1,Δi
Sβ1,Δi
Sα1,Δi
Sβ2を求め、この電流偏差Δi
Sα1,Δi
Sβ1,Δi
Sα2,Δi
Sβ2から、電流制御器ACRによりインバータ電圧指令値V
Sα1*,V
Sβ1*,V
Sα2*,V
Sβ2*を求める。電流制御器ACRから出力されたαβ座標上のインバータ電圧指令値V
Sα1*,V
Sβ1*,V
Sα2*,V
Sβ2*は、2相3相変換器28a,28bにより、3相の電圧指令値V
U1*,V
v1*,V
w1*,V
u2*,V
v2*,V
w2*に変換され、この3相の電圧指令値V
U1*,V
v1*,V
w1*,V
u2*,V
v2*,V
w2*をPWM変調器29a,29bにおいてON/OFFのゲート信号に変換し、このゲート信号に基づいて軸支持側インバータINV2a,INV2bからベアリングレスモータ(または、磁気軸受モータ)2a,2bに電圧を出力する。
【0030】
図2に基づいて、本実施形態1における振れ回り抑制制御部(並進側)30a,(回転側)30bについて説明する。
【0031】
まず、ユニット1側の軸変位検出値α1,β1とユニット2側の軸変位検出値α2,β2とを加算器31a,31bによりそれぞれ加算し、軸変位検出値の並進運動成分αp,βpを求める。また、前記軸変位検出値α1,β1から軸変位検出値α2,β2を減算器31c,31dによりそれぞれ減算し、軸変位検出値の回転運動成分αr,βrを求める。この加算後の並進運動成分αp,βp、および減算後の回転運動成分αr,βrを、dq変換器32a,32bにおいてdq変換し、軸の回転に同期したdq座標上の軸変位(振れ回り)dp,qp,dr,qrに変換する。次に、ローパスフィルタLPF1において、軸変位dp,qp,dr,qrから軸の回転に同期した軸変位(振れ回り)を示す直流成分の信号のみを抽出する。
【0032】
その後、抽出した軸変位(振れ回り)信号を周期外乱オブザーバ50a,50bに入力することで、軸変位指令値の並進運動成分dp
*,qp
*,回転運動成分dr
*,qr
*を得る。
【0033】
最後に、dq逆変換器38a,38bにおいて、dq座標上の軸変位指令値dp
*,qp
*,dr
*,qr
*をdq逆変換し、固定座標上における軸変位指令値の並進運動成分αp
*,βp
*,回転運動成分dr
*,qr
*に変換する。この軸変位指令値の並進運動成分αp
*,βp
*と回転運動成分αr
*,βr
*を加算してユニット1の軸変位指令値α1
*,β1
*を求め、軸変位指令値の並進運動成分αp
*,βp
*から回転運動成分αr
*,βr
*を減算してユニット2の軸変位指令値α2
*,β2
*を求める。以上の動作により、軸変位指令値α1
*,β1
*,α2
*,β2
* を出力することで,軸変位(振れ回り)およびジャイロ効果を抑制する。
【0034】
次に、周期外乱オブザーバ50a,50bの動作について説明する。
【0035】
まず、積算器33a〜33hにおいて、ローパスフィルタLPF1から出力された信号と、係数Qap,Qbp,Qar,Qbrとの積を取り、減算器34a,34c,加算器34b,34dにおいて減算・加算し、実システムの伝達特性を打ち消した信号ddnp,qdnp,ddnr,qdnrを出力する。係数Qap,Qbp,Qar,Qbrは固定座標上の軸変位指令値αp
*,βp
*,αr
*,βr
*から実際の軸変位検出値αp,βp,αr,βrまでの伝達特性の逆関数であり、あらかじめ求めた値を用いる。本実施形態1では、テーブル35a〜35dに角速度指令値ω
*を入力し、角速度指令値ω
*に対応した軸変位指令値αp
*,βp
*,αr
*,βr
*から軸変位検出値αp,βp,αr,βrまでの伝達特性の逆関数となる係数Qap,Qbp,Qar,Qbrを出力する。この係数Qap,Qbp,Qar,Qbrにより、位相遅れなどの伝達特性を打ち消すことができる。
【0036】
次に、外乱の推定を行う。外乱は、減算器36a〜36dにより、次の2つの信号の偏差をとることで求める。
(1)dq座標上の軸変位指令値dp
*,qp
*,dr
*,qr
*が、軸支持制御部20a,20bやベアリングレスモータ(または、磁気軸受モータ)2a,2bを含む実システムを通り、係数Qap,Qbp,Qar,Qbrとの積により実システムの伝達特性を打ち消した信号ddnp,qdnp,ddnr,qdnr
(2)dq座標上の軸変位指令値dp
*,qp
*,dr
*,qr
*が実システムを通らず、検出用ローパスフィルタLPF2だけを適用した信号dLPFp,qLPFp,dLPFr,qLPFr
(1)は軸変位指令値dp
*,qp
*,dr
*,qr
*に実システム上の外乱が重畳した信号、(2)は軸変位指令値dp
*,qp
*,dr
*,qr
*に検出用LPF2を適用しただけであり外乱を含まない信号である。この2つの差分をとることで、外乱を求めることができる。
【0037】
前記検出用ローパスフィルタLPF2は、振れ回り抑制のためのdq座標上の軸変位指令値dp
*,qp
*,dr
*,qr
*を入力とし、軸の回転に同期した振動を抽出するために使用したローパスフィルタLPF1と同じ特性を持たせることで軸変位指令値dp
*,qp
*,dr
*,qr
*に検出遅延だけを付加する。
【0038】
本実施形態1では、積算器33a〜33hの積算結果を減算器34a,34c,加算器34b,34dにおいて減算・加算した信号ddnp,qdnp,ddnr,qdnrから検出用ローパスフィルタLPF2から出力された信号dLPFp,qLPFp,dLPFr,qLPFrを減算器36a〜36dにおいて、減算することで外乱を抽出する。
【0039】
次に、減算器37a〜37dにより、推定した外乱と外乱指令値Zとの外乱偏差を取る。基本的には、外乱指令値Zは零で固定である。この演算により抽出した外乱の符号を反転し,外乱を打ち消すようなdq座標上の軸変位指令値dq
*,qp
*,dr
*,qr
*を求める。また、dq座標上の軸変位指令値dp
*,qp
*dr
*,qr
*は検出用ローパスフィルタLPF2によりLPF処理を行い、dLPFp,qLPFp,dLPFr,qLPFrを求め,dq座標上の軸変位指令値dp
*,qp
*,dr
*,qr
*が実システムを通渦した信号ddnp,qdnp,ddnr,qdnrと比較し外乱の推定に使用する。
【0040】
本実施形態1における並進側,回転側の振れ回り抑制制御部30a,30bを動作させるためには、係数Qap,Qbp,Qar,Qbrをあらかじめ求める必要がある。係数Qap,Qbp,Qar,Qbrの測定方法は、ガウス性ノイズ信号を入力し入出力のパワースペクトル密度の比から求めるなど、様々な方法がある。ここでは最も単純なシステム同定による方 法を説明する。
【0041】
まず、d軸を実部、q軸を虚部と定義する。これにより伝達特性である振幅変化と位相変化を複素数で表現する。
【0042】
次に、
図3に示すように並進側,回転側の振れ回り抑制制御部30a,30bを開ループに変更する。d軸q軸変位指令値を零に設定しベアリングレスモータ(または、磁気軸受モータ)2a,2bを動作させ、そのとき測定したd軸q軸の軸変位検出値dp,qp,dr,qrをそれぞれd
out0p,q
out0p,d
out0r,q
out0rとする。d
out0p,q
out0p,d
out0r,q
out0rの測定後、スイッチS1,S2,S3をすべて上側に切り替え、d軸変位指令値をd1p
*,d1r
*に変更し、d軸q軸の軸変位検出値dp,qp,dr,qrを測定しd
out1p,q
out1p,d
out1r,q
out1rとする。以上の測定より、軸支持側インバータINV2a,INV2bの軸支持電流指令値i
Sα1*,i
Sβ1*,i
Sα2*,i
Sβ2*から軸支持電流検出値i
Sα1,i
Sβ1,i
Sα2,i
Sβ2までの伝達特性P
am+jP
bmは下記(1),(2)式で表すことができる。
【0044】
Pap,Parは入力指令値に対して同位相の出力を、Pbp,Pbrは入力指令値に対して90deg位相進みの出力を表している。逆特性Qap+jQbp,Qar+jQbrは、伝達特性Pap+jPbp,Par+jPbrの逆数になり、下記(3),(4)式で表すことができる。
【0046】
軸変位の検出値がd
outp,q
outp,d
outr,q
outrのとき、下記(5),(6)式(積算器33a〜33h,減算器34a,34c,加算器34b,34d)の演算により伝達特性を打ち消すことができる。
【0048】
本実施形態1により、以下の効果が得られる。
【0049】
ベアリングレスモータ(または、磁気軸受モータ)2a,2bの軸変位(振れ回り)を抑制し、軸の回転を幾何学的中心にあわせることができる。また、適切な軸位置指令値α1
*,β1
*,α2
*,β2
*を求めるのに大きな負担を必要としない。
【0050】
さらに、軸に共振点が多数ある場合やシミュレーションのモデル化が困難な場合でも、試運転による係数Qap,QbpおよびQar,Qbrの測定を行うことにより軸変位(振れ回り)抑制が可能となる。
【0051】
また、従来のベアリングレスモータ(または、磁気軸受モータ)2a,2bは回転数が増加すると制御遅延による位相遅れの影響も大きくなり制御が不安定になりやすい。しかし、本実施形態1では、制御遅延の補償が係数Qap,QbpおよびQar,Qbrに含まれるため、高速回転時でも安定したモータ軸変位(振れ回り)抑制が可能となる。
【0052】
さらに、この制御には、外乱オブザーバ補償部50a,50bがあるため、係数Qap,QbpおよびQar,Qbrは高い精度を必要としない。外乱オブザーバ補償部50a,50bにより、係数Qap,Qbp,Qar,Qbrの誤差を外乱として扱うことができ誤差による影響は外乱オブザーバ補償部50a,50b内の偏差として表れ、補償される。
【0053】
そのため、負荷条件に生じた変動が小さければ、係数Qap,QbpおよびQar,Qbrを変更する必要が無く、安定したモータ軸変位(振れ回り)抑制を持続することができる。
【0054】
また、負荷変更などで条件に大きな変動が生じた場合も、試運転をやり直し係数Qap,QbpおよびQar,Qbrを再測定するだけで対応可能となる。
【0055】
通常は制御フィードバックの位相遅れが180degに達するとポジティブフィードバックとなり、制御により軸振動を拡大させてしまう。しかし、本実施形態1における制御法は、前記(1)〜(6)式の演算により位相遅れを打ち消すことができるため、どのような条件であっても安定した軸変位(振れ回り)抑制が可能となる。
【0056】
また、本実施形態1では、係数Qap,Qbp,Qar,Qbrをモータ2a,2bの回転数に応じて変化させている。これには、特定の回転数における軸変位(振れ回り)による伝達特性の大きな変化に対応させるため、モータ2a,2bの回転数増加による制御遅延の影響の増加を打ち消すため、という2つの理由がある。
【0057】
このため、係数Qap,Qbp,Qar,Qbrは回転数ごとに測定する必要がある。しかし、前述の通り係数Qap,Qbp,Qar,Qbrは高い精度を必要としない。よって、例えば、1000min
-1毎など係数Qap,Qbp,Qar,Qbrを粗い間隔で測定し、間の回転数に対応した係数Qap,Qbp,Qar,Qbrは線形補間により求めても、軸変位(振れ回り)の抑制が可能である。
【0058】
また、
図2から並進運動成分と回転運動成分の軸変位αp,αrを以下の(7),(8)式で表すことができる。
【0059】
並進運動成分の軸変位αp=α1+α2・・・(7)
回転運動成分の軸変位αr=α1−α2・・・(8)
図2の振れ回り抑制制御部30a,30bの出力αp
*,αr
*は、並進運動成分と回転運動成分の軸変位指令値であるが、これらも同様に各ユニットの軸変位指令値α1
*,α2
*の加算・減算として下記(9),(10)式で表すことができる。
【0060】
並進運動成分の軸変位指令値αp
*=α1
*+α2
*・・・(9)
回転運動成分の軸変位指令値αr
*=α1
*−α2
*・・・(10)
そのため、並進運動成分αp
*や回転運動成分αr
*から各ユニットの変位指令値α1
*,α2
*は以下の(11),(12)式で求めることができる。
【0061】
ユニット1の軸変位指令値α1
*=(αp
*+αr
*)/2・・・(11)
ユニット2の軸変位指令値α2
*=(αp
*−αr
*)/2・・・(12)
このため、ユニット1,2の軸支持制御部20a,20bにおいて、並進側と回転側の軸変位指令値αp
*,βp
*,αr
*,βr
*を加算・減算することにより、各ユニットの軸変位指令値α1
*,β1
*,α2
*,β2
*を求め、それに従い制御することで振れ回りを抑制することができる。正しくは、上記(11),(12)式に示すように、2で除算する必要があるが、2で除算しなくとも係数Qap,Qbp,Qar,Qbrが半分の大きさで測定されるため、制御動作上は問題ない。
【0062】
そのため、モータ軸の変位検出値α1,β1,α2,β2を並進運動成分αp,βpと回転運動成分αr,βrに分離し、それぞれ異なる係数Qap,QbpおよびQar,Qbrを適用することにより、ジャイロ効果を係数Qar,Qbrに組み込むことができる。このように、本実施形態1では、ジャイロ効果の影響を受けない並進運動成分と、影響を受ける回転運動成分に分離するため、軸の傾きに依存しない係数を得られる。
【0063】
また、非特許文献1の方法では、並進運動と回転運動で異なるゲインを手動調整する必要がある。しかし、本実施形態1では簡単な試験によりジャイロ効果を係数Qar,Qbrとして評価でき、調整に必要な時間を短縮することが可能となる。
【0064】
[実施形態2]
本実施形態2におけるモータ制御装置1cのブロック図を
図4,
図5に示す。本実施形態2において、駆動制御部10a,10b,軸支持制御部20a,20bは実施形態1と同様に構成されている。一方、振れ回り抑制制御部30a,30bは実施形態1と比較して以下の点で相違する。
【0065】
振れ回り抑制制御部30a,30bの入力を軸変位検出値α1,β1,α2,β2から軸支持力指令値F
α1*,F
β1*,F
α2*,F
β2*に変更する。
【0066】
また、伝達特性の逆関数となる係数Qap,Qbp,Qar,Qbrも実施形態1とは異なる値にする必要がある。
【0067】
振れ回り抑制制御部30a,30bの変更箇所における作用について説明する。まず、並進側(30a)では軸支持力指令値F
α1*とF
α2*、F
β1*とF
β2*を加算し、軸支持力指令値の並進運動成分F
αP*,F
βP*を演算し、回転側(30b)では、軸支持力指令値F
α1*からF
α2*、F
β1*からF
β2*を減算し、軸支持力指令値の回転運動成分F
αR*,F
βR*を演算する。演算した軸支持力指令値の並進運動成分F
αP*,F
βP*と回転運動成分F
αR*,F
βR*をdq変換し、軸の回転に同期した軸変位指令値の並進運動成分dp,qpと回転運動成分dr,qrに変換する。次に、ローパスフィルタLPF1において、軸の回転に同期した直流成分の信号のみを抽出する。
【0068】
次に、周期外乱オブザーバ50a,50bでは,軸支持力指令値F
αp*,F
βp*,F
αr*,F
βr*のうち軸の回転に同期した成分(向心力)を零にするような軸変位指令値dp
*,qp
*,dr
*,qr
*が得られる。この軸変位指令値dp
*,qp
*,dr
*,qr
*に従い軸支持を行うことで,軸支持制御部20a,20bは遠心力が発生しなくなるように軸の振れ回りを促す。よって,軸の回転運動の中心を幾何学的中心から重心へと変化させることができる。
【0069】
実施形態2で使用する係数Qap,QbpおよびQar,Qbrは軸支持力指令値F
αp*,F
βp*およびF
αr*,F
βr*から軸変位指令値αp
*,βp
*およびαr
*,βr
*までの伝達特性の逆関数係数であるため,実施形態1のものとは異なる値になる。しかし,実施形態1と同様の方法で測定が可能になる。
【0070】
また、本実施形態2では実施形態1の効果に加えて以下の効果を奏する。
【0071】
実施形態1では、軸の回転を幾何学的中心に合わせていたが、本実施形態2では、軸の回転を重心に合わせることが可能となり、軸変位(振れ回り)を抑制する。
【0072】
あわせてモータフレームの振動や軸支持電流を低減することができる。
【0073】
また、トラッキングフィルタ(非特許文献1の
図3.26参照)を用いる方式とは異なり、低速回転時においても適用することができる。
【0074】
[実施形態3]
本実施形態3におけるモータ制御装置1dのブロック図を
図6,7に示す。本実施形態3において、駆動制御部10a,10bは実施形態2と同様に構成されている。一方、軸支持制御部20a,20b,振れ回り抑制制御部30a,30bは実施形態2と比較して以下の点で相違する。
【0075】
振れ回り抑制制御部30a,30bの出力を軸変位指令値αp
*,βp
*,αr
*,βr
*から軸支持力指令値の並進運動成分F
αOp
*,F
βOp
*と回転運動成分F
αor
*,F
βor
*に変更する。また、軸支持制御部20a,20bでは、軸変位指令値α1
*,β1
*,α2
*,β2
*から軸変位検出値α1,β1,α2,β2を減算器23a〜23dにおいて減算し、軸変位偏差Δα1,Δβ1,Δα2,Δβ2を算出する。この軸変位偏差Δα1,Δβ1,Δα2,Δβ2からPIDアンプ24a〜24dにより軸支持力指令値を演算する。加算器40a〜40dにおいて、この軸支持力指令値に並進運動成分の軸支持力指令値F
αOp
*,F
βOp
*をそれぞれ加算する。次に、加算器41a,41b,減算器41c,41dにおいて、回転運動成分の軸支持力指令値F
αOr
*,F
βOr
*を加算・減算して補正し、軸支持力指令値F
α1*,F
β1*,F
α2*,F
β2*を演算する。
【0076】
その結果、実施形態2と同様に軸の振れ回り運動の中心を幾何学的中心から重心へと変化させる効果が得られる。加えて実施形態2に比べ以下の効果を奏する。
【0077】
振れ回り抑制制御部30a,30bからの出力の加算点がPIDアンプ24a〜24dの後段になるため、PIDアンプ24a〜24dでの演算遅延がなくなり安定性の向上が期待できる。
【0078】
また、振れ回り抑制制御部30a,30bの入力が10
-6単位の軸変位検出値αp
*,βp
*,αr
*,βr
*ではないため、係数Qap,Qbp,Qar,Qbrは極端に大きな値にならず制御のデジタル化において桁あふれや桁落ちの心配がなくなる。
【0079】
さらに、PIDアンプ24a〜24d後段にある振れ回り抑制制御器30a,30bの入力と出力の順序を入れ替えることにより、実施形態1と同様に軸の回転を幾何学的中心にあわせる効果が得られる。ただし、構成を変化させると係数Qap,Qbp,Qar,Qbrの適切な値も変化する。
【0080】
[ 実施形態4]
本実施形態4におけるモータ制御装置1eの振れ回り抑制制御部30a,30bのブロック図を
図8に示す。本実施形態4において、駆動制御部10a,10b,軸支持制御部20a,20bは実施形態1と同様に構成されている。また、振れ回り抑制制御部30a,30bは複数並列に接続し、各々で算出された値を加算器39a〜39dにおいて加算し、軸変位指令値αp
*,βp
*,αr
*,βr
*を算出する。
【0081】
なお、振れ回り抑制制御部30a,30bに入力する位相信号θをn倍する。nは振れ回り抑制制御部30によって異なる値を用いる。
【0082】
本実施形態4により 、実施形態1に加え以下の効果が得られる。
【0083】
軸の振れ回りは、一般的に軸の幾何学的中心と重心にずれがあることに起因して発生し、軸の回転と同じ周波数の振動が最も大きくなる。しかし、負荷の共振やトルクリプルなどの外乱によって軸が振動することもあり、この場合は軸の振動周波数 が回転数の整数倍となる。本実施形態4では、このような軸振動も 抑制することが可能となる。
【0084】
また、加算器39a〜39dにおいて、振れ回り抑制制御部30a,30bの出力を足し合わせることにより、複数の周波数の軸振動を抑制することができる。
図8では2個並列であるが、並列数を増加させることも可能である。
【0085】
さらに、入力を軸支持力指令値F
α1*,F
α2*,F
β1*,F
β2*に変更することで実施形態2と組み合わせ、複数の周波数のモータフレーム振動を抑制することも可能となる。
【0086】
[ 実施形態5]
実施形態5におけるモータ制御装置1fのブロック図を
図9に示す。本実施形態5において、駆動制御部10a,10b,軸支持制御部20a,20bは実施形態1と同様に構成されている。実施形態1との相違点は、振れ回り抑制制御部30a,30bの入力をスイッチS4により軸変位検出値α1,β1と軸支持力指令値F
α1*,F
β1*とで切替可能にし、スイッチS5において、軸変位検出値α2,β2と軸支持力指令値F
α2*,F
β2*とで切替可能にしたことである。また、係数Qap,Qbp,Qar,QbrもスイッチS6,S7により入力に合わせて切り替え可能に変更する。
【0087】
本実施形態5は、実施形態1と実施形態2を組み合わせ、軸を幾何学的中心で回転させる制御と軸を重心で回転させる制御を切り替えられるようにした方式である。
【0088】
これにより、運転目的に合わせて制御を簡単に変更できる。
【0089】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0090】
例えば、実施形態1〜5では駆動制御部を有するモータ制御装置について説明したが、駆動制御部がなくモータを回転する機能を持たず、モータ軸の磁気浮上だけを行う装置にも本願発明は適用可能である。