特許第5673103号(P5673103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5673103豆乳を用いたコーヒーホワイトナーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5673103
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】豆乳を用いたコーヒーホワイトナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/19 20060101AFI20150129BHJP
   A23L 1/20 20060101ALI20150129BHJP
   A23C 11/00 20060101ALI20150129BHJP
   A23C 11/10 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   A23L1/19
   A23L1/20 Z
   A23C11/00
   A23C11/10
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-543830(P2010-543830)
(86)(22)【出願日】2009年12月21日
(86)【国際出願番号】JP2009007042
(87)【国際公開番号】WO2010073575
(87)【国際公開日】20100701
【審査請求日】2012年12月20日
(31)【優先権主張番号】特願2008-335408(P2008-335408)
(32)【優先日】2008年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236768
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 昌伸
(72)【発明者】
【氏名】西村 隆司
【審査官】 名和 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−153755(JP,A)
【文献】 特開平06−303901(JP,A)
【文献】 特開平10−295308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/20−1/201,1/211
A23C 11/00−11/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
BIOSIS/FSTA/Foodline/Foods Adlibra(Dialog)
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸漬温度が80℃以上である高温浸漬処理して製造された豆乳を使用し、かつ有機酸モノグリセリドとシュガーエステルを併用して乳化することを特徴とする、コーヒーホワイトナーの製造方法。
【請求項2】
使用する豆乳のn-ヘキサナール含量が0.1ppm以下である、請求項1に記載のコーヒーホワイトナーの製造方法。
【請求項3】
有機酸モノグリセリドとシュガーエステルとの平均HLBが9〜14であることを特徴とする、請求項1に記載のコーヒーホワイトナーの製造方法。
【請求項4】
HLBが7以上の有機酸モノグリセリドと、HLBが12以上のシュガーエステルが併用されてなることを特徴とする、請求項1に記載のコーヒーホワイトナーの製造方法。
【請求項5】
コーヒーホワイトナー中の大豆蛋白質含量が0.3〜3.0重量%である、請求項1記載のコーヒーホワイトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は豆乳を用いたコーヒーホワイトナー、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、コーヒーに添加してマイルド感を与えるコーヒーホワイトナーに関して、一般に、乳を原料とした動物性のコーヒーホワイトナーが使われてきた。しかし、近年において、動物性のコーヒーホワイトナーの原料となる乳の品不足が問題となっており、また上記のような動物性のコーヒーホワイトナーを用いた場合、コレステロールがたまる等の健康上の問題がある。
【0003】
そこで、上記課題を解決するために、豆乳を利用してコーヒーホワイトナーを製造することが試みられるようになり、例えば、特許文献1に示されるように、親油性乳化剤としてレシチンとグリセリン脂肪酸エステルと親水性乳化剤としてショ糖脂肪酸エステルを併用するコーヒーホワイトナーが開発された。また、豆乳の代わりに分離大豆蛋白質を利用してコーヒーホワイトナーを製造することが試みられるようになり、例えば、特許文献2に示されるように、有機酸モノグリセリドとシュガーエステルを併用するコーヒーホワイトナーが開発された。更に特許文献3には、HLB12以上でかつグリセリンの重合度が5〜12のポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するコーヒーホワイトナーが開示されている。
【0004】
しかし、上述した豆乳あるいは分離大豆蛋白質を使用したコーヒーホワイトナーにおいては、特に長期間保存した場合、乳化の安定性およびフェザーリングの抑制効果が、まだ十分ではない場合があり、更なる品質の向上が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平4‐9504号公報
【特許文献2】特開平6‐303901号公報
【特許文献3】特開2006‐158295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、長期間保存しても乳化状態が壊れることなく、コーヒーに添加してもフェザーリングを抑制し、かつコーヒーの風味を損なわない豆乳コーヒーホワイトナーを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行ったところ、磨砕工程の前に高温浸漬処理して製造された豆乳が乳化の安定効果を示し、更に親油性ではなく、その乳化剤の平均HLBがむしろ親水性に近い有機酸モノグリセリドとシュガーエステルを併用することにより、その安定効果が高められる知見を得た。また併せて該豆乳中のn-ヘキサナールが0.1ppm以下となり、風味も向上し、上記課題を解決するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)高温浸漬処理して製造された豆乳を使用し、かつ有機酸モノグリセリドとシュガーエステルを併用して乳化することを特徴とする、コーヒーホワイトナーの製造方法。
(2)使用する豆乳のn-ヘキサナール含量が0.1ppm以下である、(1)に記載のコーヒーホワイトナーの製造方法。
(3)有機酸モノグリセリドとシュガーエステルとの平均HLBが9〜14であることを特徴とする、(1)に記載のコーヒーホワイトナーの製造方法。
(4)HLBが7以上の有機酸モノグリセリドと、HLBが12以上のシュガーエステルが併用されてなることを特徴とする、(1)に記載のコーヒーホワイトナーの製造方法。
(5)コーヒーホワイトナー中の大豆蛋白質含量が0.3〜3.0重量%である、(1)に記載のコーヒーホワイトナーの製造方法。
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、長期安定性がよく、コーヒーに添加してもフェザーリングを抑制し、かつコーヒーの風味を損なわない豆乳コーヒーホワイトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0011】
(豆乳)
本発明のコーヒーホワイトナーに使用する豆乳は、磨砕工程の前に高温浸漬を行なうことによって、大豆蛋白質を変性させる工程にて生産された豆乳である。高温浸漬とは、水に大豆を浸した後に温度を上げるか、熱水に大豆を浸すことにより行なう。この際の温度は、60℃以上が好ましく、80℃以上が更に好ましい。また、浸漬時間に関しては、浸漬温度により変更されるが、例えば浸漬温度80℃の場合は、15分以上、好ましくは25分以上の浸漬が適当である。尚、予め低温浸漬した大豆を水切り後に、蒸気中に曝す工程も、上記の高温浸漬に含まれる。この際の蒸気の温度は100〜150℃が好ましく、また蒸気に曝す時間は10秒〜30分が好ましい。
【0012】
また、高温浸漬された豆乳は、大豆中に含まれるリポキシゲナーゼも失活しているため、大豆組織を破壊した際に、大豆中のリノール酸などの不飽和脂肪酸にリポキシゲナーゼが作用することで中間物質である過酸化脂質が生成され、これに更に他の酵素が働くことによってn‐ヘキサナールが発生する一連の反応が殆ど進行しない。このため、高温浸漬された豆乳は、豆乳中のn-ヘキサナール含量が0.1ppm以下となる。
【0013】
豆乳に使用する原材料としては、黄大豆,青大豆,黒大豆などを限定なく使用することができる。また大豆に含まれる成分の栄養機能を考慮して、育種,遺伝子操作や発芽処理等により、7Sグロブリン,11Sグロブリン,イソフラボン,サポニン,ニコチアナミン,レシチン,オリゴ糖,ビタミン類,ミネラル類などの大豆中の特定の成分が富化された大豆を使用することも可能である。また、上記大豆は、外皮及び胚軸部分を含むものでもよいが、これらを除去したものを使用する方が、風味の点で好ましい。
【0014】
豆乳の製造方法は、上述したように、磨砕工程の前に高温浸漬を含む工程が必須であり、上記大豆を高温浸漬した後、磨砕し、遠心分離等により不溶性画分(おから)と豆乳に分離し製造する方法が例示できる。
【0015】
コーヒーホワイトナー中の豆乳量は、大豆蛋白質含量として0.3〜3.0重量%が好ましい。コーヒーホワイトナー中の大豆蛋白質含量が0.3重量%より少ないと、コーヒーホワイトナーの乳化安定性が悪くなり、粘度が急激に上昇しボテ状態を生じることがある。一方、コーヒーホワイトナー中の大豆蛋白質含量が3.0重量%より多いと、コーヒーに添加した場合にこのコーヒーホワイトナーがコーヒー中にうまく分散されず、凝集物(フェザーリング)を形成することがある。また、豆乳の一部を分離大豆蛋白質に変更することも可能である。
【0016】
(油脂)
本発明のコーヒーホワイトナーは、油脂を添加することができる。添加する油脂は、食用油脂であればいかなる油脂でも良いが、例えば、コーン油,大豆油,ごま油,こめ糠油,ベニバナ油,綿実油,ひまわり油,菜種油,ヤシ油,パーム油,パーム核油,オリーブオイル,ピーナッツオイル,アーモンドオイル,アボガドオイル,へーゼルナッツオイル,ウォルナッツオイル,荏油等の植物性油脂、並びに乳脂,牛脂,豚脂,鯨油,魚油,鶏油等の動物性油脂が例示できるが、植物性油脂を使用すると、油脂の物性の制御がし易い上にコーヒーホワイトナーの全成分を植物性で調製できるため好ましい。また、上記油脂の単独、または混合油、あるいはそれらの硬化、分別、エステル交換等の施した加工油脂も使用できる。
【0017】
これらの油脂は、使用する豆乳に由来する油脂分と併せて、コーヒーホワイトナー中に油脂として10〜40重量%になる様に添加することが好ましい。この植物油脂の添加量が10重量%より少ないと、コーヒーに添加した場合にこのコーヒーホワイトナーがうまくコーヒーに分散しにくくなる一方、この植物油脂の添加量が40重量%より多いと、コーヒーホワイトナーの乳化安定性が悪くなることがある。
【0018】
(燐酸塩)
本発明のコーヒーホワイトナーに使用する燐酸および燐酸塩は、食品添加物として認められているものであれば良く、例えば、ヘキサメタ燐酸塩,燐酸水素二ナトリウム,燐酸水素二カリウム,燐酸二水素ナトリウム,燐酸二水素カリウム,燐酸三ナトリウム,燐酸三カリウム,ポリリン酸ナトリウム,フィチン酸塩等を使用することができる。
【0019】
また、この燐酸塩の添加量は、コーヒーホワイトナー中に0.2〜1.5重量%が好ましい。この燐酸塩の添加量が0.2重量%より少ないと、このコーヒーホワイトナーをコーヒーに添加した場合、フェザーリングが形成され易くなる一方、この燐酸塩の添加量が1.5重量%より多いと、このコーヒーホワイトナーをコーヒーに添加した場合、燐酸塩自身の独自の風味がコーヒーに付与され、コーヒーの風味が悪化することがあるためである。
【0020】
(乳化剤)
本発明のコーヒーホワイトナーに使用する乳化剤は、有機酸モノグリセリドとシュガーエステルを併用したものであればよいが、コーヒーホワイトナーがコーヒー中においてよりうまく分散されるためには、上記2種類の乳化剤の平均HLBが9〜14とするのが好ましく、11〜13になるようにすると更に好ましい。また、コーヒーホワイトナーの乳化安定性を向上させるため、HLB 12以上のシュガーエステルを使用すると好ましく、HLB 15以上のシュガーエステルを用いると更に好ましい。
【0021】
また有機酸モノグリセリドにおいて、HLB7以上の有機酸モノグリセリドを用いることが好ましく、例えば、クエン酸モノステアリン酸グリセリン,クエン酸モノオレイン酸グリセリン等のクエン酸エステル,ジアセチル酒石酸モノステアリン酸グリセリン等のジアセチル酒石酸エステル,コハク酸モノステアリン酸グリセリン等のコハク酸エステル,乳酸モノステアリン酸グリセリン等の乳酸エステルなどがあげられる。また、上記の平均HLBの範囲から外れない範囲で、有機酸モノグリセリドとシュガーエステル以外の乳化剤も添加することができる。尚、平均HLBとは、各乳化剤の個々のHLBと質量を加重平均したものである。
【0022】
また、コーヒーホワイトナー中の有機酸モノグリセリドおよびシュガーエステルの添加量は、合計して0.4〜1.5重量%が好ましい。この乳化剤の添加量が0.4重量%より少ないと、このコーヒーホワイトナーの乳化安定性が悪くなり、このコーヒーホワイトナーをコーヒーに添加した場合、コーヒーホワイトナーがうまく分散されずにフェザーリングが形成されやすくなるためである一方、この乳化剤の添加量が1.5重量%より多くしても、このコーヒーホワイトナー自身の機能に変化が認められにくい。
【0023】
(製造方法)
以下に、コーヒーホワイトナーの代表的な製造法について説明する。すなわち水を60〜70℃に加熱しながら燐酸塩を溶解させ、さらにこの溶液に豆乳と乳化剤を加えて攪拌し、溶解あるいは分散させた後、植物油脂を添加し、予備乳化を行う。予備乳化後、ホモゲナイザーにて均質化し、バッチ式殺菌法、または間接加熱方式あるいは直接加熱方式によるUHT滅菌処理法にて滅菌し、再びホモゲナイザーにて均質化し冷却する。
【0024】
(コーヒーホワイトナー)
本発明により製造されたコーヒーホワイトナーは、例えばこれを収納した容器と併せて流通することも出来る。組成物が加熱滅菌され、無菌充填することが出来るため、保存,輸送が容易であり、必要な時直ぐに利用できる利点がある。充填法としては、当該コーヒーホワイトナーをあらかじめ加熱滅菌した後に無菌的に容器に充填する方法(例えばUHT滅菌とアセプティック充填を併用する方法)、また、当該コーヒーホワイトナーを容器に充填した後、容器と共に加熱滅菌する方法(例えばレトルト殺菌)などが採用できる。なお、UHT滅菌法では、間接加熱方式及び直接加熱方式のどちらでも使用することが出来る。また、コーヒーホワイトナーを噴霧乾燥等の方法により乾燥し、乾燥粉体として調製,流通し、そのままコーヒーに添加したり、使用直前に水溶液として液体コーヒーホワイトナーにすることも可能である。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例を示す。尚、特に示さない限り、部,%等は重量基準による。
【0026】
○高温浸漬の有無による比較(実施例1,比較例1)
・高温浸漬した豆乳(実施例1)
脱皮脱胚軸した大豆1部に熱水(90℃)4部を加え、30分間浸漬を行い、十分に吸水した脱皮・脱胚軸大豆1部に対し、熱水(90℃)6部を加えたものを「コミトロール」プロセッサー(URSCHEL社製)を用いて湿式粉砕し、さらに、ホモゲナイザー(APV社製)に供給し、150kgf/cm2で均質化処理し、粒子径20〜30μmの大豆懸濁液を得た。得られた大豆懸濁液を連続遠心分離機に供給し、3000×g,3分で遠心分離を行い、豆乳とおからに分離した。
【0027】
・高温浸漬していない豆乳(比較例1)
脱皮脱胚軸した大豆1部に水4部を加え、30分間浸漬を行い、十分に吸水した脱皮・脱胚軸大豆1部に対し、冷水(5℃)6部を加えたものをコミトロールを用いて湿式粉砕し、さらに、ホモゲナイザー(APV社製)に供給し、150kgf/cm2で均質化処理し、粒子径20〜30μmの大豆懸濁液を得た。得られた大豆懸濁液を連続遠心分離機に供給し、3000×g,3分で遠心分離を行い、豆乳とおからに分離した。
【0028】
上記方法にて得られた豆乳をガスクロマトグラフ-質量分析法にてn-ヘキサナールの分析を行った。
【0029】
次に、水58重量部を60〜70℃に加熱しながら燐酸二カリウム0.4重量部を溶解させ、上記方法により得られた豆乳20.8重量部と、シュガーエステル(DXエステルF160、第一工業製薬)0.7部および有機酸モノグリセリドであるジアセチル酒石酸エステル(サンソフト641D、太陽化学)0.5部(平均HLB12.5)を加えて攪拌した。豆乳と乳化剤を溶解あるいは分散させた後、この溶液に精製やし油20重量部を添加し、予備乳化を行った。
予備乳化後、ホモゲナイザーを用いて30〜150kgf/cm2にて均質化させた後、スチームインジェクション方式の直接高温加熱装置(TANAKA FOOD MACHINERY社製)に供給し、144℃,4秒で殺菌した。殺菌後、ホモゲナイザーを用いて30〜150kgf/cm2にて均質化させた後、これらを冷却し、各実施例のコーヒーホワイトナーを得た。
【0030】
上記のようにして得られた各コーヒーホワイトナーを酸度の高いコーヒーの1つであるキリマンジャロコーヒー(pH5.07)に添加して、その分散状態(フェザーリング)を調べると共に風味確認を行い、これらの結果を下記の表1に示した。
なお、各コーヒーホワイトナーのフェザーリングについては、コーヒー中に凝集物が形成された場合を5、コーヒー中にフェザーリングが激しく認められた場合を4、コーヒー中にフェザーリングが認められた場合を3、コーヒー中にフェザーリングがやや認められた場合を2、コーヒー中にフェザーリングが認められず良好である場合を1として評価した。また各コーヒーホワイトナーの風味については、8名にて行い、コーヒーの風味を損ねていない場合を良好、コーヒーの風味を損ねた場合を不良と評価した。
【0031】
○(表1)高温浸漬の有無による比較
【0032】
どちらの豆乳を使用しても、製造直後においてコーヒーへの分散状態はフェザーリングが認められなかった。しかし、高温浸漬していない豆乳の場合、5℃にて、1週間保存した後において、コーヒーに添加した場合フェザーリングが確認された。また、風味においては、高温浸漬していない豆乳を使用したコーヒーホワイトナーは、コーヒーに添加した場合、コーヒーにおいて青臭味を感じ、コーヒーの風味を損ねていたという評価であった。一方、高温浸漬した豆乳を使用したコーヒーホワイトナーは、コーヒーに添加した場合、コーヒーの風味を損ねないという評価であった。
以上より、高温浸漬した豆乳は、コーヒーホワイトナーにしても、フェザーリングをおこさず、またコーヒーの風味を損ねないことが確認できた。
【0033】
○各種乳化剤による比較(実施例2〜4,比較例2〜6)
実施例1に従って、高温浸漬した豆乳を用いてコーヒーホワイトナーを調製した。ただし、乳化剤を表2のように変更した。尚、クエン酸エステルはサンソフト621B、乳酸エステルはサンソフト661AS(以上、太陽化学製)、ポリグリセリン脂肪酸エステルはMS310(坂本薬品工業製)、ソルビタン脂肪酸エステルはエマゾールL10F(花王製)、シュガーエステルはDXエステルF90(第一工業製薬製)をそれぞれ用いた。
【0034】
○(表2)各種乳化剤による比較
【0035】
次に、上記のようにして得られた実施例2〜4及び比較例2〜6の各コーヒーホワイトナーを、前述のキリマンジャロコーヒーに添加して、その分散状態を実施例1に従って評価した。また、乳化安定性については、上記の各コーヒーホワイトナーを40℃で2時間保存した後、4℃で22時間保存させた場合における各コーヒーホワイトナーの粘度状態の変化から、ボテ状態となっていない場合を1、若干ボテ状態となった場合を2、ボテ状態となった場合を3と評価した。
また、最終評価として、分散状態(フェザーリング)において1または2でかつ乳化安定性が1のものを良(○)と、同じく乳化安定性が2または3のものを可(△)、他を不良(×)と判断した。
【0036】
コーヒー中におけるコーヒーホワイトナーの分散状態(フェザーリング)において、乳化剤として、有機酸モノグリセリドとシュガーエステルを併用した実施例2〜4において、フェザーリングは殆ど確認されなかった。しかし、乳化安定性において、HLB3の有機酸モノグリセリドを使用した実施例4においては、実施例2と3とは異なり乳化安定性がやや不安定であった。有機酸モノグリセリドを用いない比較例2〜6は、いずれも分散性が悪く安定性にも欠けるものだった。以上より、HLBの高いシュガーエステルと有機酸モノグリセリド、好ましくはHLBの高い有機酸モノグリセリドを併用することにより、分散状態(フェザーリング)と乳化安定性の良好なコーヒーホワイトナーができることが判った。
【0037】
○乳化剤の混合比による比較(実施例5,6,比較例7)
実施例2において使用したものと同じ乳化剤を使用し、表3のように添加量を変更し、それ以外は上記実施例2の場合と同様にして各コーヒーホワイトナーを得、同様の評価を行なった。
【0038】
乳化剤としてHLB15のシュガーエステルとHLB9のジアセチル酒石酸エステルを併用させた実施例2,5,6,比較例7の各コーヒーホワイトナーを比較した場合、この2種類の乳化剤の平均HLBが12.5と11.5である実施例2と6の各コーヒーホワイトナーは分散状態(フェザーリング),乳化安定性共に良好であった。しかし、平均HLBが14.5の比較例7においては、分散性と乳化安定性が悪くなった。HLBの高いシュガーエステルとHLBの高い有機酸モノグリセリドを併用させた場合において、2種類の乳化剤の平均HLBが9〜14とすることにより、分散状態(フェザーリング)と乳化安定性の良好なコーヒーホワイトナーとなることが、また平均HLBが10.0の実施例5は、フェザーリングがやや認められたことより、平均HLBが11〜13とすることにより、更に好ましいことが判った。
【0039】
○(表3)乳化剤の混合比による比較