特許第5673174号(P5673174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5673174
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】ステッピングモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 37/14 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
   H02K37/14 535B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-27023(P2011-27023)
(22)【出願日】2011年2月10日
(65)【公開番号】特開2012-170175(P2012-170175A)
(43)【公開日】2012年9月6日
【審査請求日】2013年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】山本 茂樹
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−022532(JP,A)
【文献】 特開平10−075560(JP,A)
【文献】 特開2007−129824(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0055279(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 37/14
H02K 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに回動自在に軸支されロータマグネットを固着した回転軸と、前記ハウジングの内部に前記ロータマグネットの外周面と所定の隙間を介して配置され、上部ステータコアと下部ステータコアとを夫々備えた第一ステータ及び第二ステータと、同第一ステータと第二ステータの間に設けられた非磁性体のスペーサとからなるステッピングモータにおいて、
前記スペーサの上下面の少なくとも一方にステータ間調整突起を複数設け、前記第一ステータの下部ステータコア、あるいは、前記第二ステータの上部ステータコアに、前記ステータ間調整突起に対応する調整突起受部を設けるとともに、前記ステータ間調整突起に少なくとも一箇所の突部を設け、前記調整突起受部に前記突部が係合する複数の係合溝を設けて係合手段としたことを特徴とするステッピングモータ。
【請求項2】
前記ステータ間調整突起及び前記調整突起受部が相互に接する階段状に夫々形成されるか、あるいは、いずれか一方が階段状に形成され、これに接する他方が直方体状に形成されてなることを特徴とする請求項1に記載のステッピングモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータに関わり、より詳細には、ディテントトルクを抑制する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモータは、円筒形状に形成されたハウジングの内部に、第一ステータと第二ステータとを上下に配設する一方、永久磁石からなる円筒形状に形成されたロータの外周面を所定の隙間で第一ステータ及び第二ステータの内周面と離間させるよう回転軸に固着して構成されている。
【0003】
第一ステータ及び第二ステータは、複数の磁極歯を立設した円環状のステータコアと、同ステータコアの外周面に被着される、断面コ字状に形成されたボビンと、同ボビンに巻回されたコイルからなり、同コイルに駆動パルスが印加されると、第一ステータ及び第二ステータと、回転軸に固着されたロータとの間に磁気回路が形成され、ロータを固着した回転軸がパルス数に従って、正逆回転するようになっている。
【0004】
また、第一ステータ及び第二ステータとの間には円環状に形成された非磁性体からなるスペーサが設けられている。第一ステータ及び第二ステータの端部からは、同第一ステータ及び同第二ステータとロータの間とで発生する磁束の一部が漏れ磁束となって互いの磁束に影響しあい、ロータの回転負荷となるディテントトルクが生じる。
【0005】
第一ステータと第二ステータのステータコアには、スペーサと対向する面に突部が複数設けられ、スペーサにはステータコアの突部に対応して円弧状の凹部に形成されたガイド溝が設けられている。スペーサを回転させて突部をガイド溝に摺動させることにより、第一ステータと第二ステータの距離を調整することができ、これにより漏れ磁束による影響を最小にしてディテントトルクを抑制することができるようになっている。(特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、突部の先端を所謂、点接触によりガイド溝に接触させ、第一ステータと第二ステータとの距離を調整する構造であるためステッピングモータに衝撃力あるいは振動が加わると、突部とガイド溝との点接触位置がずれる虞があり、その場合にはステータ間の距離が変動してディテントトルクの抑制を維持することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−22532号(4頁、図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、衝撃力あるいは振動が加わったとしても、ステータ間の距離を適正に保持できディテントトルクを抑制することのできるステッピングモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、ハウジングに回動自在に軸支されロータマグネットを固着した回転軸と、前記ハウジングの内部に前記ロータマグネットの外周面と所定の隙間を介して配置され、上部ステータコアと下部ステータコアとを夫々備えた第一ステータ及び第二ステータと、同第一ステータと第二ステータの間に設けられた非磁性体のスペーサとからなるステッピングモータにおいて、前記スペーサの上下面の少なくとも一方にステータ間調整突起を複数設け、前記第一ステータの下部ステータコア、あるいは、前記第二ステータの上部ステータコアに、前記ステータ間調整突起に対応する調整突起受部を設けるとともに、前記ステータ間調整突起に少なくとも一箇所の突部を設け、前記調整突起受部に前記突部が係合する複数の係合溝を設けて係合手段とした構成となっている。
【0010】
また、前記ステータ間調整突起及び前記調整突起受部が相互に接する階段状に夫々形成されるか、あるいは、いずれか一方が階段状に形成され、これに嵌め合わされる他方が直方体状に形成されてなる構成となっている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、運転中にステッピングモータに衝撃力あるいは振動が加わったとしても、ステータ間調整突起と調整突起受部との係合手段により、漏れ磁束が最小となるように設定した第一ステータと第二ステータ間の距離を確実に保持できディテントトルクの抑制を適切に維持することができるようになっている。
【0012】
請求項2の発明によれば、ステータ間調整突起及び調整突起受部のいずれか一方または両者が階段状に形成され、ステータ間調整突起とこれに対応する調整突起受部とを段階的にずらすことにより第一ステータと第二ステータ間の距離調整が容易に行えるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明によるステッピングモータを示す外観斜視図と断面図である。
図2】第一ステータ及び第二ステータとスペーサとを示す分解斜視図である。
図3】第一ステータの下部ステータコアとスペーサとを示す分解斜視図である。
図4】ステータコアとスペーサとを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
本発明によるステッピングモータは、図1(A)の外観斜視図で示すように、円筒形状に形成され上部ハウジング1aと下部ハウジング1bとで上下に分割されたハウジング1の中央部に回転軸2を設け、ハウジング1からは後述する第一コイル12及び第二コイル13に接続される配線15が導出されている。また、ハウジング1の上面一側には、円弧状のガイド孔1cが設けられ、同ガイド孔1cからは、ステータ間調整レバー6aが突設されている。
【0016】
回転軸2は、図1(B)の断面図で示すように、ハウジング1の上下に備えられた上部軸受5a及び下部軸受5bにより回動自在に軸支されるとともに、ハウジング1内の中央部に、樹脂材からなる円環状のスリーブ3を介して永久磁石からなるロータマグネット4を固着しており、同ロータマグネット4は周方向において複数のN極とS極とに分割されている。
【0017】
ハウジング1の内周面にはロータマグネット4の外周面と所定の隙間を介して、第一ステータ6と第二ステータ7とが上下に配設されている。上部に設けられた第一ステータ6は、第一ステータコア8と、同第一ステータコア8の内周面に被着される断面コ字状に形成された第一ボビン10と、同第一ボビン10に巻回された第一コイル12とからなり、第一ステータコア8の上面には上記したステータ間調整レバー6aが設けられている。第二ステータ7は、第二ステータコア9と、同第二ステータコア9の内周面に被着される断面コ字状に形成された第二ボビン11と、同第二ボビン11に巻回された第二コイル13とからなっている。
【0018】
配線15を介して第一コイル12と第二コイル13とに駆動パルスが印加されると、第一ステータ6及び第二ステータ7とロータマグネット4との間に磁気回路が形成され、ロータマグネット4を固着した回転軸2がパルス数に従って正転方向及び逆転方向に回転するようになっている。
【0019】
また、第一ステータ6と第二ステータ7との間には円環状に形成された非磁性体からなるスペーサ14が設けられている。第一ステータ6及び第二ステータ7の端部からは夫々漏れ磁束が発生し互いの後述するステータコアとロータマグネット4との間に存在する磁束を打ち消す方向に作用することによりロータマグネット4の回転負荷となるディテントトルクが生じる。スペーサ14はこの漏れ磁束の影響を低減するために設けられている。
【0020】
第一ステータ6を構成する第一ステータコア8は、図2の分解斜視図で示すように、上下に分割された上部ステータコア8aと下部ステータコア8bとからなっており、同様に、第二ステータ7を構成する第二ステータコア9は、上下に分割された上部ステータコア9aと下部ステータコア9bとからなっている。
【0021】
上部ステータコア8aは円環状に形成され、内周縁側に先細状の複数の磁極歯8cを下方に向けて垂下させており、下部ステータコア8bも円環状に形成され、内周縁側に先細状の複数の磁極歯8dを立設しており、第一ステータコア8は上部ステータコア8aの磁極歯8cと下部ステータコア8bの磁極歯8dとを噛み合わせるよう交互に配置して組み合わされている。同様に、上部ステータコア9aは円環状に形成され、内周縁側に先細状の複数の磁極歯9cを下方に向けて垂下させており、下部ステータコア9bも円環状に形成され、内周縁側に先細状の複数の磁極歯9dを立設しており、第二ステータコア9は上部ステータコア9aの磁極歯9cと下部ステータコア9bの磁極歯9dとを噛み合わせるよう交互に配置して組み合わされている。
【0022】
円環状に形成されたスペーサ14の上面には、ステータ間調整突起14aが略120度の間隔で3箇所に設けられている。また、図4に示すように、第一ステータコア8を構成する下部ステータコア8bの下面には、スペーサ14の上面に設けられたステータ間調整突起14aに対応する調整突起受部8eが略120度の間隔で3箇所に設けられている。
【0023】
図3は、スペーサ14と、下部ステータコア8b及び上部ステータコア9aとを示す分解斜視図であり、これらが組合わさった側面図を図4(A)に示す。図4(A)に示すように、スペーサ14の上面に設けられたステータ間調整突起14aは下部ステータコア8bの下面に設けられた複数の調整突起受部8eに噛み合い、スペーサ14と、第一ステータコア8を構成する下部ステータコア8bとの距離を調整するようになっている。
【0024】
ステータ間調整突起14aは、図4(B)のA部詳細で示すように、階段状に形成されており、下部ステータコア8bに設けられた調整突起受部8eは、ステータ間調整突起14aの各階段部に嵌め合わされる方向に階段状に形成されている。
【0025】
スペーサ14の上面に設けられたステータ間調整突起14aの最上位の階段部には、断面三角状に形成された突部14cが設けられており、下部ステータコア8bに設けられた調整突起受部8eの各階段部には、突部14cに対応する断面三角形状の係合溝8fが複数設けられており、突部14cと複数の係合溝8fとで係合手段を構成するようになっている。
【0026】
スペーサ14のステータ間調整突起14aと下部ステータコア8bの調整突起受部8eとにおいて、ステータ間調整突起14aの階段部位と調整突起受部8eの階段部位とが接する面を一段ずつずらすことにより、スペーサ14と下部ステータコア8bとの距離、つまり第一ステータ6と第二ステータ7との距離が調整できるようになっている。また、ステータ間調整突起14aの突部14cが調整突起受部8eの係合溝8fに嵌入されると、スペーサ14と下部ステータコア8bとの円周方向のズレは規制されるようになっている。
【0027】
例えば、スペーサ14のステータ間調整突起14aの最上位階段部と、下部ステータコア8bの調整突起受部8eの最上位階段部とが嵌め合わされるように調整すれば、スペーサ14と下部ステータコア8bとの距離が最大となり、ステータ間調整突起14aの最上位階段部が、調整突起受部8eで最も低い最下部の階段部と嵌め合わされるように調整すれば、スペーサ14と下部ステータコア8bとの距離が最小となる。このように一段ずつずらしてスペーサ14と下部ステータコア8bとの距離調整を行うことにより、スペーサ14と下部ステータコア8bと位置決めを、つまりスペーサ14と下部ステータコア8bとの距離設定を行い易くなっている。
【0028】
調整作業を行う最は、第一ステータコア8の上部ステータコア8aの上面に設けられ、ハウジング1のガイド孔1cから突設されたステータ間調整レバー6aを上方に引き上げることにより、調整突起受部8eと、スペーサ14のステータ間調整突起14aとを離間させる。次に、ステータ間調整レバー6aをガイド孔1cに沿って移動させることにより、第一ステータコア8を回動させ、調整突起受部8eの階段部とステータ間調整突起14aの階段部とが嵌め合わされる位置をずらしてステータ間調整レバー6aを下ろす。
【0029】
以上、説明したように、スペーサ14に設けられたステータ間調整突起14aが階段状に形成され、下部ステータコア8bに設けられた調整突起受部8eがステータ間調整突起14aに対応して階段状に形成され、ステータ間調整突起14aと調整突起受部8eとの階段部を段階的にずらすことによりスペーサ14と下部ステータコア8bと位置決めが行い易く、スペーサ14と第一ステータコア8bとの距離設定が行い易くなっている。これにより、第一ステータ6と第二ステータ7との距離設定が的確に行える一方、ステータ間調整突起14aの突部14cが調整突起受部8eの係合溝8fcに嵌入されると、スペーサ14と下部ステータコア8bとの円周方向のズレは規制され、ステッピングモータに衝撃力あるいは振動が加わったとしても、設定した第一ステータ6と第二ステータ7間の距離を的確に保持でき、ディテントトルクの抑制を維持することができるようになっている。
【0030】
尚、本発明においては、スペーサ14の上面にステータ間調整突起14aを設け、第一ステータ6に備えられた下部ステータコア8の下面に調整突起受部8eを設けているが、これに限定されるものではなく、スペーサ14の下面にステータ間調整突起14aと同様なステータ間調整突起を設け、第二ステータ7に備えられた上部ステータコア9aの上面に、調整突起受部8eと同様な調整突起受部を設けてもよく、また、これら両者を同時に設けても良い。また、ステータ間調整突起14aと調整突起受部8eを共に階段状に形成しているが、これに限定されるものではなく、いずれか一方を階段状に形成し、他方を直方体状に形成して相互に噛み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 ハウジング
1a 上部ハウジング
1b 下部ハウジング
2 回転軸
3 スリーブ
4 ロータマグネット
5a 上部軸受
5b 下部軸受
6 第一ステータ
7 第二ステータ
8 第一ステータコア
8a 上部ステータコア
8b 下部ステータコア
8c 磁極歯
8d 磁極歯
8e 調整突起受部
8f 係合溝
9 第二ステータコア
9a 上部ステータコア
9b 上部ステータコア
9c 磁極歯
9d 磁極歯
10 第一ボビン
11 第二ボビン
12 第一コイル
13 第二コイル
14 スペーサ
14a ステータ間調整突起
14c 突部
15 配線
図1
図2
図3
図4