(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
設定値と空調制御の対象となる空間の空間温度とに基づいて制御される周波数で圧縮機を駆動し、前記周波数を低減する工程を含んで空調を行う第1空調制御と、所定の空調能力で空調を行う第2空調制御とを選択的に実行する空気調和機(10)と、設定温度が入力され、前記空間温度と前記設定温度との大小関係に基づいて信号の活性/非活性を切り替えて前記信号を送信する操作装置(20)と、の間の通信を仲介する仲介装置(30)であって、
前記空気調和機に前記第2空調制御を実行させるための入力部(31)と、
前記操作装置から前記信号を受信する信号受信部(331)と、
前記入力部への入力を契機として前記空気調和機に前記第2空調制御の開始を指示し、前記信号の活性/非活性の切り替えを契機として前記空気調和機に前記第2空調制御の終了を指示する指示部(335)と、
前記空間温度を示す情報を受け取る室温取得部(332)と、
前記信号の活性/非活性の切り替えを契機として、前記空間温度に基づいて前記設定温度の推定値を算出する設定温度推定部(333)と、
前記推定値を前記設定値として前記空気調和機に送信する推定値送信部(334)と
を備える、仲介装置。
前記所定の空調能力は、前記信号の活性/非活性が切り替わる時点(t2〜t5,t8))のうち前記入力部への入力があった入力時点(t6)の直前の時点(t5)と、前記入力時点との間の期間において前記第1空調制御によって出力される空調能力の平均値以上である、請求項1に記載の仲介装置。
前記指示部(335)は、前記信号が活性であるときには前記入力部(31)への入力を契機として前記第2空調制御の開始を前記空気調和機に指示し、前記信号が非活性であるときには前記入力部への入力を契機として前記所定の空調能力よりも小さい第2空調能力で空調を行う第3空調制御の開始を前記空気調和機に指示し、前記信号の活性/非活性の切り替えを契機として前記空気調和機に前記第2空調制御または第3空調制御の終了を指示する、請求項1から3のいずれか一つに記載の仲介装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、仲介装置はサーモ信号を受信しなければ設定温度を推定できない。よって、ユーザーが設定温度を変更したとしても、サーモスタットがサーモ信号を送信するまでは空気調和機の運転には設定温度の変更が反映されない。
【0008】
そこで、本発明は、設定温度の変更から設定温度の反映までの期間の短縮に資する仲介装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる仲介装置の第1の態様は、設定値と空調制御の対象となる空間の空間温度とに基づいて制御される周波数で圧縮機を駆動し、前記周波数を低減する工程を含んで空調を行う第1空調制御と、所定の空調能力で空調を行う第2空調制御とを選択的に実行する空気調和機(10)と、設定温度が入力され、前記空間温度と前記設定温度との大小関係に基づいて信号の活性/非活性を切り替えて前記信号を送信する操作装置(20)と、の間の通信を仲介する仲介装置(30)であって、前記空気調和機に前記第2空調制御を実行させるための入力部(31)と、前記操作装置から前記信号を受信する信号受信部(331)と、前記入力部への入力を契機として前記空気調和機に前記第2空調制御の開始を指示し、前記信号の活性/非活性の切り替えを契機として前記空気調和機に前記第2空調制御の終了を指示する指示部(335)と、前記空間温度を示す情報を受け取る室温取得部(332)と、前記信号の活性/非活性の切り替えを契機として、前記空間温度に基づいて前記設定温度の推定値を算出する設定温度推定部(333)と、前記推定値を前記設定値として前記空気調和機に送信する推定値送信部(334)とを備える。
【0010】
本発明にかかる仲介装置の第2の態様は、第1の態様にかかる仲介装置であって、前記所定の空調能力は、前記信号の活性/非活性が切り替わる時点(t2〜t5,t8))のうち前記入力部への入力があった入力時点(t6)の直前の時点(t5)と、前記入力時点との間の期間において前記第1空調制御によって出力される空調能力の平均値以上である。
【0011】
本発明にかかる仲介装置の第3の態様は、第2の態様にかかる仲介装置であって、前記操作装置(20)は前記空気調和機(10)が冷房運転を実行しているときには前記空間温度が前記設定温度よりも
高いときに前記信号を活性させて送信し、前記空気調和機が暖房運転を実行しているときには前記空間温度が前記設定温度よりも
低いときに前記信号を活性させて送信し、前記指示部(335)は、前記信号が活性しているときのみ前記第2空調制御の前記開始を指示する。
【0012】
本発明にかかる仲介装置の第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる仲介装置であって、前記所定の空調能力よりも小さい第2空調能力で空調を行う第3空調制御を前記空気調和機(10)に行わせるための第2入力部(35)を更に有し、前記指示部(335)は、前記第2入力部(35)への入力を契機として前記空気調和機に前記第3空調制御の開始を指示し、前記信号の活性/非活性の切り替えを契機として前記空気調和機に前記第3空調制御の終了を指示する。
【0013】
本発明にかかる仲介装置の第5の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる仲介装置であって、前記指示部(335)は、前記信号が活性であるときには前記入力部(31)への入力を契機として前記第2空調制御の開始を前記空気調和機に指示し、前記信号が非活性であるときには前記入力部への入力を契機として前記所定の空調能力よりも小さい第2空調能力で空調を行う第3空調制御の開始を前記空気調和機に指示し、前記信号の活性/非活性の切り替えを契機として前記空気調和機に前記第2空調制御または第3空調制御の終了を指示する。
【0014】
本発明にかかる空気調和システムの第1の態様は、前記空気調和機(10)と、前記操作装置(20)と、第1から第5のいずれか一つの態様にかかる仲介装置(30)とを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる仲介装置の第1の態様および空気調和システムの第1の態様によれば、ユーザーが入力部に入力することで空気調和機に第2空調制御を行わせることができる。このとき空気調和機は設定値とは無関係に所定の空調能力を出力することができる。
【0016】
第1空調制御が実行されている状態でユーザーが設定温度を変更した場合、変更直後において設定温度の推定値は送信されるとは限らない。これは次の理由による。即ち、空気調和機は設定温度の推定値たる設定値に基づいており、変更後の設定温度に基づいた空調が行われないために、空間温度が変更後の設定温度に適切に追随しない。したがって、推定値を算出する契機となる信号の活性/非活性が切り替わるのに時間がかかる場合がある。
【0017】
このように変更後の設定温度の反映に時間がかかっていることをユーザーが認識すれば、ユーザーは入力部を操作することができる。
【0018】
そして、例えば空調能力を必要とする方向に設定温度を変更したのであれば、所定の空調能力を比較的大きな値に設定しておくことで、入力部への入力を契機として大きな空調能力での空調運転を実現でき、速やかに空間温度を変更後の設定温度と交差させることができる。これに伴って、設定温度の変更から操作装置が信号の活性/非活性が切り替わるまでの期間を短縮することができる。よって、速やかに変更後の設定温度を推定してこれを設定値として空気調和機に送信でき、速やかに変更後の設定温度(設定値)に基づいた第1空調制御を実現できる。
【0019】
本発明にかかる仲介装置の第2の態様によれば、空調能力を必要とする方向に設定温度を変更したときに、ユーザーが入力部へと入力を行うことで、設定温度の変更から空気調和機における設定温度の反映までの期間を短縮できる。
【0020】
本発明にかかる仲介装置の第3の態様によれば、本操作装置が仲介装置に取り付けられた場合の次の不具合を解消できる。以下、冷房運転を例に挙げて説明する。例えば設定温度を低下させても、なお空間温度が設定温度よりも低い場合、信号が非活性を維持する。信号が非活性の状態で入力部への入力が行われ、しかも比較的大きな空調能力での第2空調運転を行い続ければ、空間温度が設定温度(例えば
図4の高設定温度THref)から遠ざかる。よって信号の活性/非活性が切り替わらない。しかるに、仲介装置の第3の態様によれば、信号が活性しているときのみ第2空調制御を指示するので、ユーザーの誤った入力による上記不具合を解消できる。
【0021】
本発明にかかる仲介装置の第4の態様によれば、例えば設定温度を空調能力が必要しない方向に変更し、かつ変更後の設定温度の反映に時間がかかっているとユーザーが認識したときに、ユーザーは第2入力部へと入力する。これによって、第2入力部への入力を契機として比較的小さな空調能力での第3空調制御を実現でき、速やかに空間温度を変更後の設定温度と交差させることができる。これに伴って、設定温度の変更から操作装置が信号の活性/非活性が切り替わるまでの期間を短縮することができる。換言すれば、設定温度の変更から空気調和機における設定温度の反映までの期間短縮に資することができる。
【0022】
本発明にかかる仲介装置の第5の態様によれば、設定温度を変更したとしても、入力部の操作によって、変更後の設定温度の推定値に基づく第1空調制御を速やかに、かつより確実に実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1の実施の形態.
<空気調和システム>
まず空気調和機システムの全体的な概要について説明する。
図1に例示するように、本空気調和システムは、空気調和機10と、操作装置(以下、サーモスタットと呼ぶ)20と、仲介装置30(以下、ユニットと呼ぶ)とを備えている。空気調和機10は第1空調制御および第2空調制御を選択的に実行することができる。第1空調制御において空気調和機10は、後述の設定値と、空調制御の対象となる空間(室内)の空間温度(以下、室温と呼ぶ)とに基づいて制御される周波数で圧縮機を駆動して空調を行う。第2空調制御において空気調和機10は所定の空調能力で空調を行う。
【0025】
サーモスタット20は空調制御のユーザーインターフェースとして機能し、例えば室温についての設定温度が入力される。サーモスタット20は入力された設定温度と別途に検知される室温との大小関係に基づいて信号(以下、サーモ信号と呼ぶ)の活性/非活性を切り替えてこれを送信する。なお室温を検知する室温検知部はサーモスタット20の内部に設けられていてもよく、サーモスタット20の外部に設けられていても良い。設定温度と室温に基づくサーモ信号の送信については後に詳述する。
【0026】
ユニット30は空気調和機10とサーモスタット20との間の通信を仲介するものである。詳細な通信内容の一例については後に詳述する。
【0027】
<空気調和機10>
図1の例示では、空気調和機10は室外機11と室内機12と補助ユニット13とを備えている。室外機11は建造物の屋外に設けられて、空気調和機10の熱源として機能する。室内機12は空調制御の対象となる室内に設けられて、室外機11と協働して室内の空気(代表的には空気の温度)を整える。より詳細には、室外機11は圧縮機と膨張弁と室外熱交換器とを有し、室内機12は室内熱交換器とを有する。そして、これらが冷媒配管を介して接続されて冷媒回路を構成する。この冷媒回路を冷媒が循環することで、冷媒の潜熱を利用して室内と室外との間での熱交換を実現する。より詳細には、空気調和機10は例えば室外の空気から熱量を吸収してこの熱量を室内へと与えたり(いわゆる暖房運転)、逆に室外へと熱量を与えて室内から熱量を吸収する(いわゆる冷房運転)。さらに室外機11及び室内機12にはファンが設けられており、これらのファンはそれぞれ室外熱交換器と室内熱交換器へと送風し、熱交換後の空気をそれぞれ室外および室内へと吹き出させている。
【0028】
空気調和機10は不図示の制御部を有している。かかる制御部は所望の周波数で圧縮機を制御すると共に、膨張弁の開度を制御して冷媒の状態(流量など)を調整する。またかかる制御部はファンの回転速度を制御する。制御部はこれらの制御対象を適切に制御して空気調和機10が出力する空調能力を制御する。なお、ここでは一例として圧縮機はインバータによって制御される。インバータは容易に直流電圧を任意の周波数の交流電圧に変換することができ、ひいては容易に圧縮機の周波数を制御することができるからである。
【0029】
かかる制御部は、ユニット30から入力される設定値と室温とに基づいて制御される周波数で圧縮機を駆動して空調を行う第1空調制御を実行することができる。以下に詳細な一例として冷房運転を例に挙げて説明する。室温が設定値より低い場合には、例えば室温が設定値に近づくに従って徐々に周波数を大きくし、室温が設定値よりも高い場合には、例えば室温が設定値に近づくに従って周波数を小さくする。暖房運転ではその逆となる。
【0030】
また制御部は設定値とは無関係に所定の空調能力で空調を行う第2空調制御を実行することができる。より詳細には、空気調和機10が発揮する空調能力が例えば予め設定された空調能力となるように、圧縮機の周波数などを制御する。かかる第1空調制御及び第2空調制御の選択はユニット30からの指示によって行われる。
【0031】
補助ユニット13は例えば地下に設けられる。補助ユニット13はユニット30からの信号を受け取って、これに基づいて室外機11および室内機12へと制御信号を出力する。なお補助ユニット13は必須要件ではなく、室外機11或いは室内機12がユニット30からの信号を受け取っても良い。また、補助ユニット13を設けるのであれば、これにガスファーネスの機能を搭載してもよい。この点は本願の本質とは異なるため詳細な説明は省略する。
【0032】
<サーモスタット20>
サーモスタット20は、圧縮機の周波数制御が行われない(例えばインバータ制御方式ではない)空気調和機10の操作装置として機能するものである。サーモスタット20は例えば空調運転の開始/停止、及び設定温度が入力される操作部を有している。
【0033】
サーモスタット20は、自身に入力された設定温度と別途に検知された室温との比較に基づいて圧縮機の運転の開始/停止(いわゆるサーモオン/サーモオフ)を指示するサーモ信号を出力する。以下、空気調和機10が冷房運転を実行しているときの具体例について説明する。即ち、室温が設定温度を超えたときにサーモスタット20はサーモ信号を例えば活性させてこれをユニット30に送信し、室温が設定温度を下回ったときにサーモ信号を例えば非活性にしてこれをユニット30に送信する。一方、空気調和機10が暖房運転を実行しているときには、室温が設定温度を下回ったときにサーモスタット20はサーモ信号を例えば活性させてこれをユニット30に送信し、室温が設定温度を超えたときにサーモ信号を例えば非活性にしてこれをユニット30に送信する。
【0034】
さらに、サーモ信号の活性/非活性の切り替え機能がヒステリシスを有してもよい。以下、代表的に空気調和機10が冷房運転を実行するときについて説明する。
図3に例示するように、室温が例えば設定温度Trefよりも大きい高設定温度THrefを超えたときに、サーモスタット20はサーモ信号を活性させてこれをユニット30に送信し、室温が例えば設定温度Trefよりも小さい低設定温度TLrefを下回ったときにサーモ信号を非活性にしてこれをユニット30に送信する。
【0035】
以上のように、サーモスタット20は、圧縮機の周波数制御が行われない空気調和機に必要なサーモ信号を出力する。一方でサーモスタット20は、圧縮機の周波数制御が行われる空気調和機に必要な設定温度についての情報を出力しない。
【0036】
<ユニット30>
ユニット30は、圧縮機の周波数制御が行われない空気調和機を対象とした汎用のサーモスタット20と、圧縮機の周波数制御が行われる空気調和機10との間の通信を仲介する。このユニット30によって、汎用サーモスタット20を用いつつも圧縮機の周波数制御が行われる空調を可能とする。
【0037】
図2に例示するように、ユニット30は入力部31と、通信部32と、制御部33とを備えている。室温検知部34は室内に設けられており、室温を検知する。なお室温検知部34はサーモスタット20に設けられる室温検知部であってもよい。通信部32は有線または無線により空気調和機10及びサーモスタット20と通信することができる。
【0038】
制御部33は信号受信部331と室温取得部332と設定温度推定部333と推定値送信部334と指示部335とを備えている。
【0039】
なおここでは、制御部33はマイクロコンピュータと記憶装置を含んで構成される。マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップ(換言すれば手順)を実行する。上記記憶装置は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable Programmable ROM)等)、ハードディスク装置などの各種記憶装置の1つ又は複数で構成可能である。当該記憶装置は、各種の情報やデータ等を格納し、またマイクロコンピュータが実行するプログラムを格納し、また、プログラムを実行するための作業領域を提供する。なお、マイクロコンピュータは、プログラムに記述された各処理ステップに対応する各種手段として機能するとも把握でき、あるいは、各処理ステップに対応する各種機能を実現するとも把握できる。また、制御部33はこれに限らず、制御部33によって実行される各種手順、あるいは実現される各種手段又は各種機能の一部又は全部をハードウェアで実現しても構わない。
【0040】
信号受信部331はサーモスタット20から送信される信号を受信してこれを認識することができる。
【0041】
制御部33には室温検知部34が接続されており、室温取得部332は室温検知部34から室温を示す情報を受け取る。
【0042】
設定温度推定部333は、サーモ信号の活性/非活性の切り替えを契機として、サーモスタット20に入力された設定温度を、室温に基づいて推定する。より詳細には、設定温度推定部333はサーモ信号の活性/非活性が切り替わったときの室温に基づいて設定温度の推定値を算出する。例えばサーモ信号の切り替え機能がヒステリシスを有さない場合、設定温度推定部333はサーモ信号の活性/非活性が切り替わったときの室温を設定温度と推定する。或いはサーモ信号の切り替え機能がヒステリシスを有している場合には、
図3を参照して、高設定温度THrefと設定温度Trefとの差ΔT、及び低設定温度TLrefと設定温度Trefとの差ΔTを考慮して、サーモ信号の活性/非活性が切り替わったときの室温から設定温度の推定値を算出しても構わない。例えば時点t2における室温に差ΔTを加算した値を設定温度Trefと推定する。
【0043】
推定値送信部334は設定温度推定部333が算出した推定値を設定値として空気調和機10へと送信する。これによって空気調和機10は設定値と室温とに基づいた第1空調制御を実行することができる。
【0044】
以上のように、ユニット30はサーモ信号を、これが本来的に意図する圧縮機の運転開始/停止の信号としては用いずに、設定温度の推定処理を開始する条件として用いている。そして、この推定値を設定値として空気調和機10へと送信することで、空気調和機10は設定値(推定された設定温度)と室温とに基づいて圧縮機の周波数を制御する第1空調制御を実行できる。したがって、圧縮機の周波数制御が行われない空気調和機を対象としたサーモスタット20を用いつつも、圧縮機の周波数制御が行われる空気調和機10の空調運転を実現することができる。
【0045】
また制御部33には入力部31が接続されている。入力部31は空気調和機10に所定の空調能力で空調を行う第2空調制御を実行させるための入力部である。指示部335は入力部31への入力を契機として空気調和機10に第2空調制御の開始を指示する。かかる指示を受け取った空気調和機10は例えば予め定められた所定の空調能力(例えば最大空調能力)で第2空調制御を実行する。その後、指示部335はサーモ信号の活性/非活性の切り替えを契機として空気調和機10に第2空調制御の終了を指示する。入力部31および指示部335については後に詳細に説明する。
【0046】
<本空気調和システムの動作>
以下では
図3を参照して、冷房運転を例に挙げて説明する。まず本空気調和システムの起動時の動作について説明する。ユーザーがサーモスタット20へと空調運転の開始を入力すると、サーモスタット20は室温と設定温度Tref(若しくは高設定温度THref、以下、この段落において同様)とに基づいてサーモ信号を活性化させて出力する。これは次の理由による。通常、運転開始時においては空調能力を必要とする方向に室温が設定温度Trefから離れている。例えば冷房運転を実行する場合であれば室温は設定温度Trefよりも高い。よって、サーモスタット20はサーモ信号を活性してこれをユニット30へと送信する。
【0047】
さて起動時においては、空気調和機10は設定値(設定温度Trefの推定値)を受け取っていないため、早期に設定温度Trefを推定する必要がある。よって、早期に室温が設定温度Tref(若しくは低設定温度TLref、以下この段落において同様)と交差するように例えば最大空調能力で空調を行うことが望ましい。そこで、ユニット30は活性したサーモ信号を受け取った回数が1回であるかどうかを判断する。換言すれば、ユニット30は最初にサーモ信号を受け取ったかどうか、更に言い換えれば空気調和機10の起動時かどうかを判断する。起動時であれば例えば最大空調能力で空調を行うように空気調和機10へと指示する。かかる指示を受け取った空気調和機10は例えば最大空調能力で空調を行う。これによって、速やかに室温を設定温度Trefと交差させることができる。
【0048】
図3の例示では、空調運転が開始する時点t1には最大空調能力で空調が実行される。なお、
図3の例示ではサーモ信号の切り替え機能がヒステリシスを有している。
図3の例示では高設定温度THrefは設定温度Trefよりも1度高く、低設定温度TLrefは設定温度Trefよりも1度低い。
【0049】
そして、時点t2において室温が低設定温度TLrefよりも下回ったとき、サーモ信号が非活性となる。かかる信号の活性/非活性の切り替えを契機として、ユニット30は時点t2における室温に基づいて設定温度Trefを推定する。上記の例では推定値は室温に1度加算した値である。かかる推定値が設定値として空気調和機10へと送信される。空気調和機10は受け取った設定値と、室温とに基づいて制御される周波数で圧縮機を駆動する第1空調制御を実行する。
【0050】
例えば時点t2の直後は室温が設定温度Trefの推定値を下回っているので、空気調和機10は圧縮機の周波数を低減させて運転する。これに伴って、室温が低下から増大へと切り替わる。なお、時点t2直後では低い周波数(例えば0)で圧縮機を駆動し、室温が設定温度Trefに近づくにつれて圧縮機の周波数を徐々に増大させるとよい。これによって室温を滑らかに設定温度Trefに近づけることができる。一方で、室温が設定温度Trefを超えた後は、より確実に室温が高設定温度THrefを上回るように、比較的低い上昇速度で室温を増大させ続けてもよい。
【0051】
そして時点t3において室温が高設定温度THrefを超えると、サーモ信号が再び活性する。かかる信号の活性/非活性の切り替えを契機として、ユニット30は再び設定温度Trefを推定する。上記の例では推定値は室温に1度減算した値である。そしてユニット30はかかる推定値を設定値として空気調和機10へと送信する。
【0052】
時点t3の直後において室温が設定温度Trefの推定値を上回っているので、空気調和機10は圧縮機の周波数を増大させて運転する。これに伴って、室温は増大から再び低下に切り替わる。なお、時点t3直後では高い周波数で圧縮機を駆動し、室温が設定温度Trefに近づくにつれて圧縮機の周波数を徐々に低減させるとよい。これによって室温を滑らかに設定温度Trefに近づけることができる。一方で、室温が設定温度Trefを下回った後は、より確実に室温が低設定温度TLrefを下回るように比較的低い低下速度で室温を冷やし続けてもよい。
【0053】
そして時点t4において室温が低設定温度TLrefを下回ると、再び設定温度Trefが推定されて、空気調和機10へと送信される。これに伴って、圧縮機の周波数が更に低減されて室温は低下から再び増大へと切り替わる。そして、室温が時点t5において高設定温度THrefを超えると、再び設定温度Trefが推定される。
【0054】
さて
図3の例示では、時点t5よりも後の時点t6で設定温度Trefがユーザーによって変更されている。
図3の例示ではより空調能力を必要とする方向に設定温度Trefが変更されている。即ち、ここでは冷房運転が行われているので、設定温度Trefがより小さい値に変更されている。
【0055】
しかしながら時点t6において、設定温度Trefの変更は空気調和機10の第1空調制御に反映されない。ユニット30が変更後の設定温度Trefを推定しておらず、空気調和機10が変更前の設定温度Trefの推定値に基づく第1空調制御を実行するからである。
【0056】
かかる状況において、室温は変更後の設定温度Trefに追随するのに時間を要する場合がある(
図3の時点t7以降の破線参照)。
図3の例示では、例えば室温が変更前の設定温度Trefを下回った以降に比較的低い周波数で圧縮機を運転させて室温を冷やしているので、室温の低下速度は低い。よって、室温は変更後の低設定温度TLrefを下回るのに比較的長い時間がかかっている。
図3の例示では時点t9において室温が変更後の低設定温度TLrefを下回っている。
【0057】
このような追随の遅延は例えば体感温度、或いはサーモスタット20又はユニット30に表示される室温によってユーザーが認識できる。そして、室温が変更後の設定温度Trefに追随するのに要する時間が長いとユーザーが判断すれば、例えば時点t7においてユーザーは入力部31を操作することができる。指示部335はかかる入力を契機として空気調和機10に第2空調制御の開始を指示する。
【0058】
かかる指示を受け取った空気調和機10は例えば予め定められた所定の空調能力で空調運転を実行する。かかる所定の空調能力は空気調和機10が出力可能な空調能力範囲のうち比較的大きい値であり、例えば最大空調能力である。なお所定の空調能力は最大空調能力に限らず、例えば第1空調制御によって時点t5から時点t7において出力される空調能力の平均値以上であればよい。言い換えれば、所定の空調能力は、サーモ信号の活性/非活性が切り替わる時点のうち、入力部31への入力があった時点t6の直前の時点t5と、時点t6との間の期間において、第1空調制御によって出力される空調能力の平均値以上であればよい。
【0059】
これによって室温の低下速度が増大し、時点t9よりも前の時点t8において室温が低設定温度TLrefを下回る。そして時点t8において、サーモスタット20はサーモ信号を活性させてこれをユニット30に送信する。指示部335はかかるサーモ信号の活性/非活性の切り替えを契機として空気調和機10に第2空調制御の終了を指示する。さらに、設定温度推定部333は変更後の設定温度Trefを推定し、推定値送信部334がこの推定値を設定値として空気調和機10に送信する。これによって、空気調和機10は変更後の設定温度Trefの推定値に基づいた第1空調制御を実行することができる。
【0060】
以上のように、室温が変更後の設定温度Trefに追随する時間が遅いとユーザーが感じたときにユーザーが入力部31を操作する。これによって、設定温度Trefが変更される時点t6から設定温度Trefの変更が反映される時点t8までの期間を短縮することができる。また所定の空調能力を最大空調能力に設定すれば、当該期間をより短縮することができる。
【0061】
なお、冷房運転を例に挙げて本空気調和システムの動作を説明したが、暖房運転であっても同様である。
【0062】
また、ユーザーへの入力部31の操作を惹起すべく、ユニット30は報知部を備えていても良い。当該報知部は例えばサーモ信号の活性/非活性が切り替えられた時点から所定時間が経過したときに、入力部への入力を促す旨を外部へと報知する。かかる報知は光、音、振動などによって実行される。
【0063】
第2の実施の形態.
第1の実施の形態と同様に冷房運転を例に挙げて第2の実施の形態を説明する。
図4の例示では、時点t4において室温が低設定温度TLrefを下回り、サーモ信号が非活性に切り替わっている。この切り替わりを契機として設定温度Trefが推定され、この推定値が空気調和機10に送信される。これに伴って、空気調和機10は室温が増大するように圧縮機の周波数を制御する。これによって室温が低減から増大へと切り替わる。
【0064】
また
図4の例示では、サーモ信号が非活性である時点t5においてユーザーによって設定温度Trefがより低い値へと変更されている。これに伴って高設定温度THrefも低下する。よって室温が高設定温度THrefを超える時点t7は、設定温度Trefの変更前よりも早く到来する。したがって、空気調和機10は設定温度Trefの変更を比較的早期に認識することができる。
【0065】
しかしながら、サーモ信号が非活性である時点t6において、ユーザーが入力部31を操作すると、空気調和機10は所定の空調能力で空調を行う第2空調制御を実行する。これに伴って室温が低下し続け、結果として室温が高設定温度THrefを超えない場合がある。
【0066】
第2の実施の形態では、このようなユーザーの誤った操作を防止すべく、指示部335はサーモ信号が活性であるときのみ、入力部31への入力を契機として空気調和機10に第2空調制御の開始を指示する。これによって、たとえユーザーが時点t6において入力部31を操作してとしても、空気調和機10は第2空調制御を行わずに、変更前の設定温度Trefの推定値に基づいて第1空調制御を実行する。したがって時点t7において室温が高設定温度THrefを超え、比較的速やかに変更後の設定温度Trefの推定値に基づいた第1空調制御が実行される。
【0067】
なお、第1の実施の形態においても、変更後の設定温度Trefへの室温の追随が遅いと感じたときにユーザーが入力部を操作することで、第1の実施の形態で述べた効果を正しく招来することができる。つまり、
図4に例示するように、サーモ信号が非活性である場合に設定温度Trefをより低い値に変更すれば、比較的速やかに室温が高設定温度THrefを超える。よってこのとき、ユーザーは変更後の設定温度への室温の追随が遅いと感じない。言い換えればユーザーは追随が遅いと感じたときに入力部31を操作すればよい。一方で第2の実施の形態によれば、ユーザーは追随が遅いと感じるかどうかを判断せずに設定変更の直後に入力部31を操作することができる。
【0068】
また第2の実施の形態においても冷房運転を例に挙げて説明しているが、これに限らず暖房運転でも同様である。暖房運転においては、室温が設定温度を超えたときにサーモスタット20はサーモ信号を非活性に切り替えて送信し、室温が設定温度を下回ったときにサーモ信号を活性に切り替えて送信する。この場合であっても、指示部335はサーモ信号が活性であるときのみ第2空調制御の開始を指示すればよい。これによって、ユーザーの誤った使い方による不具合を回避できる。
【0069】
第3の実施の形態.
図5に例示するように、ユニット30は更に第二入力部35を備えていても良い。第二入力部35は、所定の第2空調能力で空調を行う第3空調制御を、空気調和機10に行わせるための入力部である。第2空調能力は第2空調制御で出力される所定の空調能力よりも低い。
【0070】
以下、
図6を参照して冷房運転を例に挙げて説明する。
図5の例示では時点t4において室温が低設定温度TLrefを下回り、このときサーモ信号が非活性へと切り替わっている。そしてサーモ信号が非活性である時点t5において、例えば設定温度Trefをより高い値に変更した場合、設定温度を変更した時点t5から設定温度が反映される時点t8までの間の期間が比較的長い。
【0071】
そこで、室温が変更後の設定温度Trefに追随するのが遅いとユーザーが感じた場合にはユーザーは第二入力部35を操作する。指示部335はこの第二入力部35への入力を契機として空気調和機10に第3空調制御の開始を指示する。第2空調能力は例えば時点t4から時点t6までの間で出力される空調能力の平均値よりも低ければよく、例えば最小空調能力である。言い換えれば、所定の空調能力は、サーモ信号の活性/非活性が切り替わる時点のうち、入力部31への入力があった時点t6の直前の時点t5と、時点t6との間の期間において、第1空調制御によって出力される空調能力の平均値以下であればよい。
【0072】
したがって、時点t6以降は室温が比較的高い上昇速度で増大し、以って時点t7において室温が高設定温度THrefを超える。時点t7においてサーモ信号が活性へと切り替わると、この活性/非活性の切り替えを契機として指示部335は空気調和機10に第3空調制御の終了を指示する。そして、設定温度推定部333及び推定値送信部334によって、変更後の設定温度Trefが推定されてこれが空気調和機10に送信される。
【0073】
これによって、変更後の設定温度Trefの推定値が空気調和機へと送信される時点t7を早めることができ、速やかに変更後の設定温度Trefの推定値に基づく第1空調制御を実現することができる。
【0074】
なお、第2の実施の形態と同様に、指示部335はサーモ信号が非活性であるときのみ第二入力部35への入力を契機として空気調和機10に第3空調制御の開始を指示してもよい。これによって、ユーザーの誤った使い方を禁止することができる。
【0075】
さらに入力部31と第二入力部35とを一つの入力部31で実現しても構わない。より詳細には指示部335はサーモ信号が活性しているときには入力部31への入力を契機として第2空調制御の開始を指示し、サーモ信号が非活性しているときには入力部31への入力を契機として第3空調制御の開始を指示する。また指示部335はサーモ信号の活性/非活性の切り替えを契機として、第2空調制御または第3空調制御の終了を指示する。
【0076】
図4,6の例示から理解できるように、サーモ信号が非活性であるときに第3空調制御(低空調能力での空調制御)が実行されれば、室温が高設定温度THrefを超える時点を早めることができる。一方、
図4の例示から理解できるように、サーモ信号が活性であるときに第2空調制御(高空調能力での空調制御)が実行されれば、室温が低設定温度TLrefを下回る時点を早まることができる。これはサーモ信号が活性しているときに設定温度Trefをより高い値に変更したときであっても同様である。
【0077】
したがって、ユーザーが設定温度を高い値に変更しようと低い値に変更しようとも、入力部31の入力によって、変更後の設定温度Trefの推定値に基づく第1空調制御を速やかに、かつ確実に実現することができる。