特許第5673272号(P5673272)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5673272
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/00 20110101AFI20150129BHJP
   F24F 13/20 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   F24F1/00 311
   F24F1/00 401C
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-63923(P2011-63923)
(22)【出願日】2011年3月23日
(65)【公開番号】特開2012-198002(P2012-198002A)
(43)【公開日】2012年10月18日
【審査請求日】2014年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】田野 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】立木 敬剛
(72)【発明者】
【氏名】川崎 和博
(72)【発明者】
【氏名】広川 泰昭
(72)【発明者】
【氏名】菅原 秀治
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−076597(JP,A)
【文献】 特開2000−301093(JP,A)
【文献】 特開2004−131512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00
F24F 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口と吹出口とを結ぶ空気通路に、熱交換器とクロスフローファンとを備えた空気調和機において、
前記クロスフローファンの下流側の空気通路に、各層毎に撮み部を備えて引剥し可能に積層された保護フィルムが貼着され
前記吹出口の側部に側部吹出口を備え、同側部吹出口に前記撮み部を配置したことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記保護フィルムに抗菌・防カビ剤を含有させたことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記保護フィルムに帯電防止加工を施したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関わり、より詳細には、空気通路の汚れを容易に除去できるようにした構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機は、図5(A)および図5(B)に示すように、吸込グリル101を備えた吸込口102と吹出口103とを結ぶ空気通路にフィルタ104と熱交換器105とクロスフローファン106とが設けられ、吸込口102から吸い込まれフィルタ104で清浄化された空気が熱交換器105により冷媒と熱交換されたのち吹出口103に送出され、熱交換された空気が吹出口103から被空調室に吹き出される構成になっていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
吹出口103は、本体100内の空気通路に連なる本体側吹出口103aと、この本体側吹出口103aの内面に沿って着脱自在に装着されるカセット式吹出口103bとで構成されていた。
【0004】
吸込口102から吸い込まれた空気中の埃の殆どはフィルタ104によって除去されるが、除去しきれなかった微細な埃の一部は、クロスフローファン106の下流側となるカセット式吹出口103bに汚れとして付着していた。そのため、このカセット式吹出口103bを本体側吹出口103aから取り外して水洗い、または、付着した汚れを拭き取ることで清掃できるようにしていた。
【0005】
しかしながら、別部材からなるカセット式吹出口103bは、本体側吹出口103aから取り外して洗浄または清掃する必要があることから、カセット式吹出口103bを本体側吹出口103aに着脱自在に装着するための構成が複雑化するとともに、装着したカセット式吹出口103bを、被空調室の壁面上位部に壁掛け設置されている本体100の本体側吹出口103aから取り外すための作業が面倒であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−285319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、複雑な構成や面倒な作業を必要とすることなく、クロスフローファンの下流側の空気通路に付着した汚れを容易に除去できるようにした空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成できるように構成するため、本発明は以下に示す特徴を備えている。
【0009】
吸込口と吹出口とを結ぶ空気通路に、熱交換器とクロスフローファンとを備えた空気調
和機において、
前記クロスフローファンの下流側の空気通路に、各層毎に撮み部を備えて引剥し可能に
積層された保護フィルムが貼着され
前記吹出口の側部に側部吹出口を備え、同側部吹出口に前記撮み部を配置したことを特徴としている。
【0011】
また、前記保護フィルムに抗菌・防カビ剤を含有させたことを特徴としている。
【0012】
また、前記保護フィルムに帯電防止加工を施したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複雑な構成や面倒な作業を必要とすることなく、クロスフローファンの下流側の空気通路に付着した汚れが保護フィルムを剥がすことで容易に除去できる空気調和機を提供できる。また、保護フィルムを積層フィルムとすることで、積層された枚数分は繰り返して容易に汚れを除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による空気調和機の説明図で、(A)は外観斜視図であり、(B)は上下風向板を取り外した外観斜視図である。
図2】本発明による空気調和機の説明図で、(A)は断面図であり、(B)は要部斜視図であり、(C)は要部断面図である。
図3】本発明による空気調和機の他の実施例を示す要部説明図である。
図4】本発明による空気調和機の説明図で、(A)は上下風向板(ディフューザ)の斜視図であり、(B)は上下風向板(ディフューザ)に貼着した積層フィルムの引剥しを示す要部斜視図であり、(C)は上下風向板(ディフューザ)の要部斜視図である。
図5】従来例による空気調和機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【0016】
本発明による空気調和機は、図1(A)および図1(B)と、図2(A)とに示すように、空気調和機本体1の吸込口2と吹出口5とを結ぶ空気通路に設けられた熱交換器3によって、吸込口2から吸い込まれた空気が冷媒と熱交換されたのち、クロスフローファン4によって吹出口5に送出され、吹出口5から被空調室に吹き出されるようになっている。
【0017】
熱交換器3の上流側には、吸込口2に面するフィルタ21が設けられており、吸込口2から吸い込まれた空気中に含まれている埃が、フィルタ21によって捕捉されるようになっている。
【0018】
吹出口5は、上壁5aと下壁5bとに接続された複数の支柱6が設けられることで、強度が増強されて変形しにくいように構成されている。また、吹出口5には、この吹出口5の一側を拡張するように側部吹出口5cが連続形成されている。
【0019】
熱交換された調和空気が吹出口5から吹き出される際、側部吹出口5cの風速は、クロスフローファン4用のファンモータ(図示せず)の前方に配置されているため、クロスフローファン4の前方に位置する吹出口5の風速に較べて遅い流れとなる。
【0020】
また、吹出口5には、回動軸部10aを備えた前部の上下風向板10が、上壁5aから垂下された支軸片8の支軸孔9により回動自在に軸支されるとともに、吹出口5および側部吹出口5cには、回動軸部13aを備えた後部の上下風向板(ディフューザ)13が支軸孔12により回動自在に軸支されることで、調和空気が吹出口5および側部吹出口5cを流通する時の上下方向の風向を広範囲に偏向できるようになっている。
【0021】
上下風向板13は、図1(A)に示すように、その両側部と吹出口5の両壁部とに備えた凹凸状の枢支部Bで回動自在に枢支されるとともに、図4(A)および図4(C)に示す長手方向の中間部に備えた複数の回動軸部13aが、図2(A)乃至図2(C)に示すように、この回動軸部13aに対応して、支柱6の前端下部から下方に延出された支軸孔12によって回動自在に軸支されている。
【0022】
支柱6は平板状に形成され、上下風向板13に備えた回動軸部13aを回動自在に軸支する支軸孔12と、支軸孔12を備えた支軸片11とからなる支軸部を備えている。
【0023】
吸込口2から吸い込まれた空気中の埃の殆どはフィルタ21によって捕捉されるが、フィルタ21で捕捉しきれなかった微細な埃は、調和空気と一緒に空気通路に流入し、熱交換器3およびクロスフローファン4を経て吹出口5および側部吹出口5cに到るようになる。
【0024】
その際、フィルタ21で捕捉しきれなかった微細な埃の一部は、空気通路や熱交換器3およびクロスフローファン4などに付着することになり、とくに、空気流をガイドし側部吹出口5cの一部をなす上下風向板13には汚れとして付着しやすくなる。
【0025】
そのため、本発明では、汚れが付着しやすい部位であって、クロスフローファン4の下流側の空気通路の一部を構成する上下風向板13に、積層された保護フィルム14(以下、積層フィルム14という)が貼着された構成にしている。
【0026】
これにより、この積層フィルム14に汚れが付着するため、上下風向板13には汚れが付着しないように保護されることになって、汚れが付着した積層フィルム14を引き剥がすことで、汚れを積層フィルム14と一緒に除去できる構成になる。
【0027】
積層フィルム14には、図4に示すように、側部吹出口5cの前方から手指で撮めるように舌片15からなる撮み部を備えており、この撮み部を撮み上方に引きあげることで積層フィルム14の端部を剥離でき、横方向に引くことで引き剥がせるように構成している。
【0028】
舌片15からなる撮み部は、手指で撮みやすくするため、積層フィルム14の一部を延出した構成にしているが、これに限らず、積層フィルム14の一部に、例えば、側部吹出口5cの側部前端に対応する所定範囲の部位に接着剤を塗布しないことで、この部位を、指先で弾性変形させながら容易にめくれるようにした構成にしてもよい。
【0029】
積層フィルム14に備えた舌片15は、吹出空気流の風速が遅い側部吹出口5cに配置されることで、吹出空気流によって煽られることがなく、また、異音が生じてしまう虞はない。
【0030】
ここで、積層フィルム14の構成および積層フィルム14が上下風向板13に貼着された構成について、図1乃至図4に基づいて以下に詳細に説明する。
【0031】
積層フィルム14は、例えば、厚さ約30μm(マイクロメータ)のポリエステルフィルムからなる基材を、10枚前後積層した構成になっている。
【0032】
ポリエステルフィルムからなる基材は、縦方向および横方向に延伸加工することで機械的性質(強度)を向上させた2軸延伸フィルムが用いられることにより、積層フィルム14を各層毎に引き剥がす時に破損しない強度をもたせている。
【0033】
積層される基材同士は、例えば、アクリル系の接着剤により各層毎に剥離可能に接着されることで積層フィルム14が構成されている。
【0034】
図1(A)と、図4(A)および図4(C)とに示すように、上下風向板13に、各層毎に舌片15を備えて剥離可能にした積層フィルム14を貼着することにより、付着した汚れと一緒に、積層フィルム14を各層毎に引き剥がすことで除去できる構成になる。
【0035】
この場合、10枚前後積層した積層フィルム14は、例えば、一年毎に一枚ずつ引き剥がすようにすれば、約10年間は汚れやすい上下風向板13に汚れが付着しないように保護できるようになる。
【0036】
積層フィルム14の最下層の基材は、一例として図1(A)と、図2(A)および図2(C)と、図4(A)乃至図4(C)に示すように、例えば、ポリエステル系の接着剤により、上下風向板13から簡単に剥離しないように貼着されている。
【0037】
ここまでは、上下風向板13に積層フィルム14を貼着した構成について説明したが、上下風向板13に貼着した構成に限らず、積層フィルム14は、図3に示すように吹出口5の下壁5bに貼着した構成にしてもよい。
【0038】
その際、例えば、ポリエステル系の接着剤により、下壁5bに凹設された段部5b1に貼着することで、吹出口5を流通する空気流によって簡単に剥離できないように貼着された構成にすればよい。
【0039】
この場合、下壁5bに凹設された段部5b1が、例えば、0.5〜1.0mm(ミリメータ)程度の段差に形成されることにより、厚さ約30μmのポリエステルフィルムを約10枚積層してなる積層フィルム14は、最上層にある一層目の積層フィルム14aが下壁5bよりも上方に突出しないように貼着できようになるので、吹出口5および側部吹出口5cを流通する空気流の通風抵抗にはならない。
【0040】
また、積層フィルム14は、抗菌・防カビ剤を含有させることで、汚れが付着したとしても雑菌やカビ類を増殖させないようにして、吹出口5および側部吹出口5cを流通する空気を汚すことがない構成になる。
【0041】
また、積層フィルム14に帯電防止加工を施すことで、汚れが付着しにくいようにして、積層フィルム14を引き剥がす頻度を抑えるようにした構成になる。
【0042】
ここで、上下風向板13に貼着された、図4(A)および図4(C)に示すような積層フィルム14が、舌片15を撮んで引き剥がされる動作について説明する。
【0043】
上下風向板13に貼着された積層フィルム14は、図4(B)に示すように、一層目の積層フィルム14aに備えた一層目の舌片15aを撮んで上方に引きあげ、白抜きの矢印aのように、汚れが付着した一層目の積層フィルム14aを横方向に引き剥がしつつ、横方向から吹出口5の前方に向けながら引き剥がすことで取り除かれる。
【0044】
これにより、汚れのない二層目の積層フィルム14bが表面に現れることになり、この二層目の積層フィルム14bに汚れが付着した頃に、同様に、二層目の舌片15bを撮んで上方に引きあげ、この二層目の積層フィルム14bを横方向に引き剥がすようにすればよい。
【0045】
なお、積層フィルム14が、図3に示すように、吹出口5の下壁5bに凹設された段部5b1に貼着された構成においても、同様に、一層目の積層フィルム14aに備えた一層目の舌片15aを撮んで上方に引きあげ、この汚れが付着した一層目の積層フィルム14aを横方向に引き剥がせばよい。
【0046】
また、積層フィルム14は、図示はしないが、前部の上下風向板10に貼着することで、後部の上下風向板13に貼着したのと同様の作用効果を得ることができる。
【0047】
上下風向板10は、図1(A)に示すように、その両側部と吹出口5の両壁部とに備えた凹凸状の枢支部Aで回動自在に枢支されるとともに、長手方向の中間部に備えた複数の回動軸部10aが、この回動軸部10aに対応して吹出口5の上壁5aから垂下され、先端に支軸孔9を備えた支軸片8からなる支軸部によって回動自在に軸支されている。
【0048】
以上説明したように、本発明の構成によれば、クロスフローファン4の下流側の空気通路をなす上下風向板13に積層フィルム14が貼着されるとともに、積層フィルム14は手指に対応する舌片15を備えたことで、上下風向板13に付着した汚れを容易に除去できるようにした空気調和機1を提供できる。
【符号の説明】
【0049】
1 空気調和機
2 吸込口
21 フィルタ
3 熱交換器
4 クロスフローファン
5 吹出口
5a 上壁
5b 下壁
5b1 段部
5c 側部吹出口
6 支柱
8 支軸片
9 支軸孔
10 上下風向板
10a 回動軸部
11 支軸片
12 支軸孔
13 上下風向板(ディフューザ)
13a 回動軸部
14 保護フィルム(積層フィルム)
14a 一層目のフィルム
14b 二層目のフィルム
15 舌片(撮み部)
15a 一層目の舌片
15b 二層目の舌片
A,B 枢支部
図1
図2
図3
図4
図5