(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
家庭やオフィスにおいて可搬型ネットワーク接続装置を利用する場合には、可搬型ネットワーク接続装置をルータとして動作させることは好ましくない。宅内やオフィスに、ルータ装置(例えば、ISP(Internet Services Provider)事業者から提供されるホームゲートウェイ)が既に配置されているケースでは、可搬型ネットワーク接続装置をルータとして動作させると、宅内やオフィスにインターネットに接続するためのルータ装置が2台存在することとなり、クライアントがデフォルトゲートウェイを識別できず、インターネットを介したデータのやりとりが正常に行えないおそれがあるからである。したがって、家庭やオフィスでは、可搬型ネットワーク接続装置をブリッジとして動作させたいという要請があった。
【0006】
また、可搬型ネットワーク接続装置を屋外や公衆無線LAN接続エリアにおいて利用する場合には、ルータとして動作させたいという要請があった。これは、例えば、以下の理由による。屋外等において可搬型ネットワーク接続装置を用いて複数のクライアントをインターネットに接続させる際に、複数のクライアントのそれぞれについて、ISP事業者とインターネット接続サービス契約を結んでおかなくとも、可搬型ネットワーク接続装置についてのみ契約を結んでおき、可搬型ネットワーク接続装置をルータとして動作させることにより、複数のクライアントをインターネット接続させることができるからである。
【0007】
しかしながら、従来においては、可搬型ネットワーク接続装置におけるパケット転送の動作モード(ブリッジとしての動作モード及びルータとしての動作モード)を、適切に設定する方法について十分に考慮されていないのが実情であった。
【0008】
本発明は、可搬型ネットワーク接続装置におけるパケット転送の動作モードを適切に設定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[形態1] 可搬型ネットワーク接続装置であって、
互いに異なる所定位置に配置されている複数の無線基地局の各々に対して、1対1の無線通信を実行可能な無線通信制御部と、
ブリッジ機能部として動作する第1の動作モードとルータ機能部として動作する第2の動作モードとのうち、いずれかの動作モードに設定されて、前記無線通信においてやり取りされるパケットの転送処理を実行するパケット転送処理部と、
前記可搬型ネットワーク接続装置の現在位置の特定と、前記可搬型ネットワーク接続装置の将来位置の特定と、のうち、少なくとも一方を実行する位置特定部と、
前記特定された現在位置と前記特定された将来位置とのうち、少なくとも一方に基づき、前記パケット転送処理部の動作モードを設定する動作モード制御部と、
を備える、可搬型ネットワーク接続装置。
【0010】
[適用例1]可搬型ネットワーク接続装置であって、
互いに異なる位置に配置されている複数の無線基地局の各々に対して、1対1の無線通信を実行可能な無線通信制御部と、
ブリッジ機能部として動作する第1の動作モードとルータ機能部として動作する第2の動作モードとのうち、いずれかの動作モードに設定されて、前記無線通信においてやり取りされるパケットの転送処理を実行するパケット転送処理部と、
前記可搬型ネットワーク接続装置の現在位置の特定と、前記可搬型ネットワーク接続装置の将来位置の特定と、のうち、少なくとも一方を実行する位置特定部と、
前記特定された現在位置と前記特定された将来位置とのうち、少なくとも一方に基づき、前記パケット転送処理部の動作モードを設定する動作モード制御部と、
を備える、可搬型ネットワーク接続装置。
【0011】
適用例1の可搬型ネットワーク接続装置によると、可搬型ネットワーク接続装置の現在位置の特定及び将来位置の特定の少なくとも一方が実行され、特定された現在位置と特定された将来位置とのうち少なくとも一方に基づき、パケット転送処理部の動作モードが設定されるので、前記複数の無線基地局のうち、無線通信の対象となる無線基地局との関係で適した動作モードに、パケット転送処理部の動作モードを設定することができる。したがって、可搬型ネットワーク接続装置におけるパケット転送の動作モードを適切に設定することができる。
【0012】
[適用例2]適用例1に記載の可搬型ネットワーク接続装置において、さらに、
前記複数の無線基地局について、それぞれ前記所定位置を示す位置情報を記録する無線基地局位置テーブルと、
前記複数の無線基地局と、前記第1の動作モード及び前記第2の動作モードのうちのいずれかの動作モードとをそれぞれ対応付ける動作モード決定テーブルと、
を備え、
前記位置特定部は、前記現在位置の特定を実行し、
前記動作モード制御部は、前記特定された現在位置と前記無線基地局位置テーブルに記録されている各無線基地局の前記位置情報とに基づき、前記複数の無線基地局のうち、前記可搬型ネットワーク接続装置と各無線基地局との間の距離に関する所定の条件を満たす1つの無線基地局を対応基地局として決定し、前記動作モード決定テーブルにおいて前記対応基地局に対応付けられている動作モードに、前記パケット転送処理部の動作モードを設定する、可搬型ネットワーク接続装置。
【0013】
このような構成により、可搬型ネットワーク接続装置との間の距離に関する所定の条件を満たす1つの無線基地局(対応基地局)を、無線通信において利用する無線基地局として用いた場合に、対応基地局に適した動作モードを、予め動作モード決定テーブルに対応付けておくことにより、パケット転送処理部の動作モードを、対応基地局に適した動作モードに設定することができる。
【0014】
[適用例3]適用例2に記載の可搬型ネットワーク接続装置において、さらに、
前記複数の無線基地局と、前記対応基地局として選択される予め設定されている優先度とを、それぞれ対応付ける優先度テーブルを備え、
前記動作モード制御部は、前記対応基地局を決定する際に、前記特定された現在位置と前記無線基地局位置テーブルに記録されている各無線基地局の前記位置情報とに基づき、前記複数の無線基地局のうち、前記可搬型ネットワーク接続装置と前記無線基地局との間の距離が所定の距離以下である無線基地局を抽出すると共に、前記優先度テーブルを参照して、前記抽出された無線基地局のうち設定されている前記優先度が最も高い無線基地局を、前記対応基地局として決定する、可搬型ネットワーク接続装置。
【0015】
このような構成により、可搬型ネットワーク接続装置と前記無線基地局との間の距離が所定の距離以下である無線基地局を、無線通信において利用する無線基地局として選択する場合に、選択された無線基地局に適した動作モードに、パケット転送処理部の動作モードを設定することができる。加えて、無線通信に用いる要請の高い無線基地局の優先度を高く設定し、無線通信に用いる要請の低い無線基地局の優先度を低く設定することで、無線通信に用いる要請のより高い無線基地局に適した動作モードに、パケット転送処理部の動作モードを設定することができる。
【0016】
[適用例4]適用例1に記載の可搬型ネットワーク接続装置において、さらに、
複数の代表地点の位置を示す位置情報と、前記第1の動作モード及び前記第2の動作モードのうちいずれかの動作モードとをそれぞれ対応付ける動作モード決定テーブルと、
を備え、
前記位置特定部は、前記現在位置の特定を実行し、
前記動作モード制御部は、前記特定された現在位置と前記動作モード決定テーブルに記録されている各代表地点の前記位置情報とに基づき、前記可搬型ネットワーク接続装置と各代表地点との間の距離に関する所定の条件を満たす1つの代表地点を対応代表地点として決定し、前記動作モード決定テーブルにおいて前記対応代表地点に対応付けられている動作モードを、前記パケット転送処理部の動作モードとして設定する、可搬型ネットワーク接続装置。
【0017】
このような構成により、代表地点として、可搬型ネットワーク接続装置が配置される可能性の高いエリア内の地点を設定しておくことにより、可搬型ネットワーク接続装置が配置された地点において適切な動作モードに、パケット転送処理部の動作モードを設定することができる。加えて、可搬型ネットワーク接続装置の現在位置を特定してから、動作モードを設定するまでの処理をシンプルに構成できるので、可搬型ネットワーク接続装置の移動に伴って動作モードを切り替える必要が生じた場合に、短期間のうちに適切な動作モードに切り替える(設定する)ことができる。
【0018】
[適用例5]適用例1に記載の可搬型ネットワーク接続装置において、さらに、
記憶部を備え、
前記位置特定部は、
前記現在位置の特定を繰り返し実行すると共に、前記特定した現在位置に関する情報を、前回特定してから今回特定するまでに要した期間に関連する期間関連情報と対応付けて前記記憶部に記憶させる現在位置特定部と、
今回特定された前記現在位置に関する情報及び前記期間関連情報と、前記記憶部に記憶されている前回以前に特定された前記現在位置に関する情報及び前記期間関連情報と、に基づき、前記将来位置を推定して特定する将来位置推定部と、
を有し、
前記動作モード制御部は、前記特定された将来位置に基づき、前記動作モードを設定する、可搬型ネットワーク接続装置。
【0019】
このような構成により、予めパケット転送処理部の動作モードを、所定期間後における可搬型ネットワーク接続装置の位置(将来位置)において適した動作モードに切り替えておく(設定しておく)ことができる。したがって、将来位置に到達してからパケット転送処理部の動作モードを切り替える(設定する)構成に比べて、適切な動作モードによる無線通信を開始できるまでに要する期間(オーバーヘッドの期間)を短くすることができる。
【0020】
[適用例6]適用例5に記載の可搬型ネットワーク接続装置において、
前記所定期間は、前記無線通信に先立ち実行される認証処理を含む事前処理に要する期間である、可搬型ネットワーク接続装置。
【0021】
このような構成により、認証処理を含む事前処理が完了した時点における可搬型ネットワーク接続装置の位置に適した動作モードに、パケット転送処理部の動作モードを予め設定しておくことができる。したがって、事前処理が終わり無線通信によってデータのやり取りを行おうとする際には、既に適した動作モードに設定されているので、オーバーヘッドの期間を省略して無線通信によるデータのやり取りを開始することができる。
【0022】
[適用例7]適用例1ないし適用例6のいずれかに記載の可搬型ネットワーク接続装置において、さらに、
前記複数の無線基地局について、それぞれ、前記無線基地局を特定可能な識別子と、前記所定位置を示す位置情報と、前記無線基地局における信号出力強度と、を記録する無線基地局位置テーブルと、
各無線基地局から出力される前記識別子を含む信号を、前記無線通信制御部において受信した際の受信信号強度を検出する受信信号強度検出部と、
を備え、
前記位置特定部は、前記現在位置の特定を実行し、前記現在位置の特定を実行する際に、前記複数の無線基地局のうち少なくとも3つの無線基地局について、それぞれ、前記無線基地局位置テーブルにおいて設定されている前記信号出力強度と、前記識別子を含む信号を受信して得られた前記受信信号強度との差分を求め、前記少なくとも3つの無線基地局について求めた前記差分と、前記少なくとも3つの無線基地局の位置情報とに基づき、前記現在位置を特定する、可搬型ネットワーク接続装置。
【0023】
このような構成により、少なくとも3つの無線基地局についての信号出力と受信信号強度との差分と、少なくとも3つの無線基地局の位置情報とに基づき、可搬型ネットワーク接続装置の現在位置を特定するので、現在位置を正確に特定することができる。
【0024】
[適用例8]互いに異なる位置に配置されている複数の無線基地局の各々に対して、1対1の無線通信を実行可能であり、ブリッジ機能部として動作する第1の動作モードとルータ機能部として動作する第2の動作モードとのうち、いずれかの動作モードに設定されて、前記無線通信においてやり取りされるパケットを転送する可搬型ネットワーク接続装置におけるパケットを転送する際の動作モードを設定する方法であって、
(a)前記可搬型ネットワーク接続装置の現在位置の特定と、前記可搬型ネットワーク接続装置の将来位置の特定と、のうち、少なくとも一方を実行する工程と、
(b)前記特定された現在位置と前記特定された将来位置とのうち、少なくとも一方に基づき、前記パケット転送処理部の動作モードを設定する工程と、
を備える、方法。
【0025】
適用例8の方法によると、可搬型ネットワーク接続装置の現在位置の特定及び将来位置の特定の少なくとも一方が実行され、特定された現在位置と特定された将来位置とのうち少なくとも一方に基づき、パケット転送処理部の動作モードが設定されるので、前記複数の無線基地局のうち、無線通信の対象となる無線基地局との関係で適した動作モードに、パケット転送処理部の動作モードを設定することができる。したがって、可搬型ネットワーク接続装置におけるパケット転送の動作モードを適切に設定することができる。
【0026】
[適用例9]互いに異なる位置に配置されている複数の無線基地局の各々に対して、1対1の無線通信を実行可能であり、ブリッジ機能部として動作する第1の動作モードとルータ機能部として動作する第2の動作モードとのうち、いずれかの動作モードに設定されて、前記無線通信においてやり取りされるパケットを転送する可搬型ネットワーク接続装置におけるパケットを転送する際の動作モードを設定するためのコンピュータプログラムであって、
前記可搬型ネットワーク接続装置の現在位置の特定と、前記可搬型ネットワーク接続装置の将来位置の特定と、のうち、少なくとも一方を実行する機能と、
前記特定された現在位置と前記特定された将来位置とのうち、少なくとも一方に基づき、前記パケット転送処理部の動作モードを設定する機能と、
をコンピュータに実現させるコンピュータプログラム。
【0027】
適用例9のコンピュータプログラムによると、可搬型ネットワーク接続装置の現在位置の特定及び将来位置の特定の少なくとも一方が実行され、特定された現在位置と特定された将来位置とのうち少なくとも一方に基づき、パケット転送処理部の動作モードが設定されるので、前記複数の無線基地局のうち、無線通信の対象となる無線基地局との関係で適した動作モードに、パケット転送処理部の動作モードを設定することができる。したがって、可搬型ネットワーク接続装置におけるパケット転送の動作モードを適切に設定することができる。
【0028】
[適用例10]適用例9に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0029】
このような構成により、かかる記録媒体を用いてコンピュータにプログラムを読み取らせ、各機能を実現させることができる。
【0030】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、可搬型ネットワーク接続装置を含む無線通信システム、可搬型ネットワーク接続装置またはシステムの制御方法、これらの方法、装置またはシステムの機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
A.第1実施例:
A1.システム構成:
図1は、本発明の一実施例としての可搬型ネットワーク接続装置の構成を示すブロック図である。可搬型ネットワーク接続装置100は、無線LAN(Local Area Network)制御回路174と、無線WAN(Wide Area Network)制御回路175と、移動体通信制御回路176と、CPU(Central Processing Unit)120と、ROM(Read Only Memory)171と、RAM(Random Access Memory)172とを備えている。可搬型ネットワーク接続装置100は、パーソナルコンピュータやゲーム機などの無線LANクライアント(以下、単に「クライアント」とも呼ぶ)を、インターネット等の上位ネットワークや無線LANに接続させる。
【0033】
無線LAN制御回路(「無線LANインタフェース」とも呼ばれる)174は、変調器やアンプ、アンテナを含み、例えばIEEE802.11a/b/gに準拠した無線LANのアクセスポイントとして、無線LANのクライアント(例えばパーソナルコンピュータやゲーム機)と無線通信を行う。無線WAN制御回路(「無線WANインタフェース」とも呼ばれる)175は、変調器やアンプ、アンテナを含み、例えばIEEE802.11a/b/gに準拠した無線LANのクライアントとして、無線LANのアクセスポイント(例えば公衆無線LANのアクセスポイント)と無線通信を行う。移動体通信制御回路176は、変調器やアンプ、アンテナを含み、例えば3G/HSPAに準拠した移動体通信の端末として、移動体通信網の基地局と無線通信を行う。このように、第1実施例の可搬型ネットワーク接続装置100は、それぞれが互いに異なる無線通信ネットワークにおける無線通信を行う複数の無線通信インタフェースを含んでいる。
【0034】
ROM171には、予めパケット転送処理のためのアプリケーション及び転送処理部121の動作モードを設定するためのアプリケーションプログラムが記憶されており、CPU120は、これらのアプリケーションプログラムを実行することにより、転送処理部121,転送制御部122,無線基地局検索部123,位置特定部124,無線基地局決定部125として機能する。
【0035】
転送処理部121は、ルータ機能部121rと、ブリッジ機能部121bとを有しており、各無線通信インタフェース(無線LAN制御回路174、無線WAN制御回路175、移動体通信制御回路176)を介して入力されるパケット(レイヤ3パケット及びレイヤ2フレーム)を、宛先アドレスに従って転送する。転送処理部121はパケット転送の動作モードとして、ブリッジ機能部121bのみが処理を行う第1の動作モードと、ブリッジ機能部121b及びルータ機能部121rが処理を行う第2の動作モードとを有している。第1の動作モードでは、ブリッジ機能部121bのみがレイヤ2フレームの転送を行うため、可搬型ネットワーク接続装置100は、全体としてブリッジ装置として動作する。これに対し、第2の動作モードでは、ブリッジ機能部121b及びルータ機能部121rのいずれもが処理を行うため、可搬型ネットワーク接続装置100は、全体としてルータ装置として動作する。
【0036】
転送制御部122は、転送処理部121を制御する。かかる制御の1つとして、転送制御部122は、後述の動作モード切り替え処理を実行することにより、転送処理部121の動作モードを設定する(切り替える)。
【0037】
無線基地局検索部123は、後述の動作モード切り替え処理において、無線基地局から出力される信号を受信することにより、無線基地局を検索する。本実施例では、無線基地局とは、無線LANにおける無線LANアクセスポイントと、移動体通信網の基地局とを含む広い意味を有する。
【0038】
位置特定部124は、後述の動作モード切り替え処理において、可搬型ネットワーク接続装置100の位置を特定する。本実施例では、位置特定部124は、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置を特定する。無線基地局決定部125は、後述の動作モード切り替え処理において、可搬型ネットワーク接続装置100がインターネット等などの上位ネットワークに接続する際に用いる無線基地局を決定する。
【0039】
ROM171は、いわゆるフラッシュROMであり、前述のアプリケーションプログラムに加えて、サービス提供ポイントテーブルRT1と、動作モード決定テーブルRT2と、ルーティングテーブルRT3と、MACアドレステーブルRT4とを記憶している。サービス提供ポイントテーブルRT1及び動作モード決定テーブルRT2は、いずれも後述する動作モード切り替え処理において参照されるテーブルである。なお、これらのテーブルRT1,RT2の詳細については後述する。ルーティングテーブルRT3は、パケット(レイヤ3パケット)の転送経路が設定されたテーブルであり、可搬型ネットワーク接続装置100がルータとして動作する際に、転送制御部122により参照される。
MACアドレステーブルRT4は、パケット(レイヤ2フレーム)の転送経路が設定されたテーブルであり、可搬型ネットワーク接続装置100がブリッジとして動作する際に、転送制御部122により参照される。
【0040】
可搬型ネットワーク接続装置100は、クライアント及び上位ネットワークとの接続態様として、複数の接続態様を許容している。
図2は、可搬型ネットワーク接続装置を用いた第1の接続態様を示す説明図である。
図3は、
図2に示す第1の接続態様における可搬型ネットワーク接続装置内のデータの流れを模式的に示す説明図である。
【0041】
図2に示す第1の接続態様では、ロケーションAに、可搬型ネットワーク接続装置100と、ホームゲートウェイ500と、クライアントCL1とが配置されている。ロケーションAは、例えば、可搬型ネットワーク接続装置100のユーザの宅内であり、ホームゲートウェイ500は、例えば、ISP事業者より提供されるルータ装置である。ホームゲートウェイ500は、ブロードバンド回線を介してインターネットINTと接続されている。また、ホームゲートウェイ500は、無線LANインタフェースを有し、可搬型ネットワーク接続装置100との間で無線通信を行うことができる。クライアントCL1は、パーソナルコンピュータであり、無線LANクライアントとして動作する。
【0042】
第1の接続態様では、可搬型ネットワーク接続装置100は、無線LANアクセスポイント及びブリッジとして機能している。具体的には、
図3に示すように、無線LAN制御回路174は、クライアントCL1から出力される無線信号を受信してレイヤ2フレームを抽出し、ブリッジ機能部121bに送る。ブリッジ機能部121bは、転送制御部122の制御の下、レイヤ2フレームを、無線WAN制御回路175を介して無線信号として出力する。また、これとは逆に、無線WAN制御回路175は、ホームゲートウェイ500から出力される無線信号を受信してレイヤ2フレームを抽出し、ブリッジ機能部121bに送る。ブリッジ機能部121bは、転送制御部122の制御の下、レイヤ2フレームを、無線LAN制御回路174を介して無線信号として出力する。
【0043】
図4は、可搬型ネットワーク接続装置を用いた第2の接続態様を示す説明図である。
図5は、
図4に示す第2の接続態様における可搬型ネットワーク接続装置内のデータの流れを模式的に示す説明図である。
【0044】
図4に示す第2の接続態様では、ロケーションBに、可搬型ネットワーク接続装置100と、公衆無線LANアクセスポイント600と、クライアントCL1とが配置されている。公衆無線LANアクセスポイント600は、インターネットINTに接続されており、予め登録された無線LANクライアントがインターネットに接続するために用いられる。公衆無線LANアクセスポイント600は、例えば、駅やレストランなどに配置されている。
【0045】
第2の接続態様では、可搬型ネットワーク接続装置100は、無線LANアクセスポイント及びルータとして機能している。具体的には、
図5に示すように、無線LAN制御回路174は、クライアントCL1から出力される無線信号を受信してレイヤ2フレームを抽出し、ブリッジ機能部121bに送る。ブリッジ機能部121bは、転送制御部122の制御の下、レイヤ2フレームをルータ機能部121rに送る。ルータ機能部121rは、転送制御部122の制御の下、レイヤ3パケットを組み立てて無線WAN制御回路175を介して無線信号として出力する。また、これとは逆に、無線WAN制御回路175は、公衆無線LANアクセスポイント600から出力される無線信号を受信してレイヤ2フレームを抽出し、ブリッジ機能部121bに送る。ブリッジ機能部121bは、転送制御部122の制御の下、レイヤ2フレームをルータ機能部121rに送る。ルータ機能部121rは、転送制御部122の制御の下、レイヤ3パケットを組み立ててブリッジ機能部121bに送る。ブリッジ機能部121bは、転送制御部122の制御の下、レイヤ2フレームを、無線LAN制御回路174を介して無線信号として出力する。
【0046】
図6は、可搬型ネットワーク接続装置を用いた第3の接続態様を示す説明図である。
図7は、
図6に示す第3の接続態様における可搬型ネットワーク接続装置内のデータの流れを模式的に示す説明図である。
【0047】
図6に示す第3の接続態様では、ロケーションCに、可搬型ネットワーク接続装置100と、移動体通信網基地局700と、クライアントCL1とが配置されている。移動体通信網基地局700は、移動体通信網12の一部を構成し、インターネットINTに接続されている。
【0048】
第3の接続態様では、可搬型ネットワーク接続装置100は、無線LANアクセスポイント及びルータとして機能している。具体的には、
図7に示すように、無線LAN制御回路174は、クライアントCL1から出力される無線信号を受信してレイヤ2フレームを抽出し、ブリッジ機能部121bに送る。ブリッジ機能部121bは、転送制御部122の制御の下、レイヤ2フレームをルータ機能部121rに送る。ルータ機能部121rは、転送制御部122の制御の下、レイヤ3パケットを組み立ててブリッジ機能部121bに送る。ブリッジ機能部121bは、転送制御部122の制御の下、レイヤ2フレームを、移動体通信制御回路176を介して無線信号として出力する。また、これとは逆に、移動体通信制御回路176は、移動体通信網基地局700から出力される無線信号を受信してレイヤ2フレームを抽出し、ブリッジ機能部121bに送る。ブリッジ機能部121bは、転送制御部122の制御の下、レイヤ2フレームをルータ機能部121rに送る。ルータ機能部121rは、転送制御部122の制御の下、レイヤ3パケットを組み立ててブリッジ機能部121bに送る。ブリッジ機能部121bは、転送制御部122の制御の下、レイヤ2フレームを、無線LAN制御回路174を介して無線信号として出力する。なお、第3の接続態様において、移動体通信網基地局700がルータとして動作する場合、可搬型ネットワーク接続装置100は、ルータとして機能せずにブリッジとしてのみ動作する構成を採用することができる。
【0049】
A2.サービス提供ポイントテーブルの詳細:
図8は、
図1に示すサービス提供ポイントテーブルの設定内容の一例を示す説明図である。サービス提供ポイントテーブルRT1は、各無線基地局について、無線基地局ID(識別子)と、緯度と、経度と、送信出力とを対応付ける。無線基地局IDとして、無線LANアクセスポイントについてはMAC(Media Access Control)アドレスが、移動体通信網の基地局についてはセルIDが、それぞれ設定されている。緯度及び経度として、各無線基地局の配置位置の緯度及び経度が設定されている。送信出力は、各無線基地局からの信号の送信出力が設定されている。
図8では、図示の便宜上、6つのエントリ(No.1〜6)が代表して示されている。なお、説明の便宜上、
図8では、各エントリに設定されている各値として、模式的な値により表わしている。
【0050】
このサービス提供ポイントテーブルRT1は、例えば、予めユーザが設定しておくことができる。この場合、ユーザは、可搬型ネットワーク接続装置100の使用が見込まれるエリアに配置されている無線基地局(無線LANアクセスポイント及び移動体通信網の基地局)について、識別子,緯度,経度,送信出力値を予め調べておき、サービス提供ポイントテーブルRT1に設定することができる。また、例えば、公衆無線LANサービスの提供事業者が、各無線LANアクセスポイントについての識別子(MACアドレス),緯度,経度,送信出力値を対応付けたデータベースを有し、このデータベースをユーザに開放しているケースにおいては、このデータベースにアクセスして、一部の無線LANアクセスポイント(例えば、可搬型ネットワーク接続装置100の使用が見込まれるエリアに配置されている無線LANアクセスポイント)又は全ての無線LANアクセスポイントについての情報を可搬型ネットワーク接続装置100にダウンロードして、サービス提供ポイントテーブルRT1に設定することもできる。また、公衆無線LANサービスの提供事業者が各無線基地局についての識別子(セルID),緯度,経度,送信出力値を対応付けたデータベースを有し、このデータベースをユーザに開放しているケースにおいても、同様にして、一部又は全ての無線基地局について、サービス提供ポイントテーブルRT1に設定することができる。
【0051】
A3.動作モード決定テーブルの詳細:
図9は、
図1に示す動作モード決定テーブルの設定内容の一例を示す説明図である。動作モード決定テーブルRT2は、所定の無線基地局について、無線基地局IDと、優先度と、動作モードとを対応付ける。動作モード決定テーブルRT2は、予めユーザによって設定され、ROM171に記憶される。
【0052】
図9では、図示の便宜上、6つのエントリ(No.1〜6)が代表して示されている
。第1のエントリ(No.1)には、無線基地局IDとしてMACアドレス「MA1」が、優先度「60」が、動作モード「第2の動作モード」(ルータ)が、それぞれ設定されている。第2のエントリ(No.2)には、無線基地局IDとしてセルID「CA1」が、優先度「45」が、動作モード「第2の動作モード」が、それぞれ設定されている。第3のエントリ(No.3)には、無線基地局IDとしてMACアドレス「MA2」が、優先度「−1」が、動作モード「第2の動作モード」が、それぞれ設定されている。第4のエントリ(No.4)には、無線基地局IDとしてMACアドレス「MA3」が、優先度「60」が、動作モード「第1の動作モード」(ブリッジ)が、それぞれ設定されている。第5のエントリ(No.5)には、無線基地局IDとしてMACアドレス「MA4」が、優先度「−1」が、動作モード「第2の動作モード」が、それぞれ設定されている。第6のエントリ(No.6)には、無線基地局IDとしてMACアドレス「MA5」が、優先度「60」が、動作モード「第1の動作モード」が、それぞれ設定されている。なお、説明の便宜上、
図9では、無線基地局IDに設定されている各値として、模式的な値により表わしている。
【0053】
動作モード決定テーブルRT2における無線基地局IDは、サービス提供ポイントテーブルRT1の無線基地局IDと同じであるので説明を省略する。優先度は、後述する動作モード切り替え処理において、上位ネットワーク接続用の無線基地局を決定する際に参照される優先度であり、より高い値が設定されているエントリ(無線基地局)が、上位ネットワーク接続用無線基地局として決定され易い。したがって、ユーザは、上位ネットワーク接続用無線基地局としての使用の要請の高い無線基地局に対して、より高い優先度を設定しておくことができる。例えば、第1,4,6のエントリでは、優先度として「60」が設定されており、他のエントリと比較して相対的に高い値が設定されている。また、例えば、第3,5のエントリでは、優先度として「−1」が設定されており、他のエントリと比較して相対的に低い値が設定されている。
【0054】
図9に示す各エントリの設定は、例えば、以下のようなケースにおいて設定され得る。すなわち、第1のエントリに設定されている無線基地局は、ユーザが頻繁に使用する公衆無線LANの無線LANアクセスポイントであるため、上位ネットワーク接続用無線基地局として使用の要請が高く、同様に、第4のエントリに設定されている無線基地局は、ユーザ宅内に設置されているホームゲートウェイであるため、また、第6のエントリに設定されている無線基地局がユーザのオフィス内に設置されているルータ装置(いわゆる無線ルータ)であるため、それぞれ、上位ネットワーク接続用無線基地局としての使用の要請が高いケースが想定される。また、第3,5のエントリに設定されている無線基地局については、こららの無線基地局(公衆無線LANアクセスポイント)を使用する公衆無線LAN接続サービスにユーザが加入していないため、上位ネットワーク接続用無線基地局としての使用の要請が低いケースが想定される。
【0055】
動作モード決定テーブルRT2における動作モードは、各無線基地局が上位ネットワーク接続用無線基地局として用いられるケースにおいて、可搬型ネットワーク接続装置100(転送処理部121)の動作モードとして設定されるべき動作モードが、予めユーザによって設定されている。例えば、第1のエントリの無線基地局が
図4に示す公衆無線LANアクセスポイント600である場合には、可搬型ネットワーク接続装置100の動作モードとして、第2の動作モード(ルータ)が設定され得る。また、例えば、第4のエントリの無線基地局が
図2に示すホームゲートウェイ500である場合には、可搬型ネットワーク接続装置100の動作モードとして第1の動作モード(ブリッジ)が設定され得る。
【0056】
このような構成を有する可搬型ネットワーク接続装置100では、後述する動作
モード切り替え処理を実行することにより、可搬型ネットワーク接続装置100におけるパケット転送の動作モードとして適切なモードに設定することができる。
【0057】
なお、前述の無線WAN制御回路175は、請求項における無線通信制御部に相当する。また、転送処理部121は請求項におけるパケット転送処理部に、転送制御部122は請求項における動作モード制御部に、サービス提供ポイントテーブルRT1は請求項における無線基地局位置テーブルに、動作モード決定テーブルRT2は請求項における動作モード決定テーブル及び優先度テーブルに、無線基地局検索部123は請求項における受信信号
強度検出部に、それぞれ相当する。
【0058】
A4.動作モード切り替え処理:
図10は、第1実施例における動作モード切り替え処理の手順を示すフローチャートである。
図11は、動作モード切り替え処理が実行される際の可搬型ネットワーク接続装置及び無線基地局の配置例を示す説明図である。
【0059】
図11では、可搬型ネットワーク接続装置100と、
図2に示すホームゲートウェイ500と、
図4に示す公衆無線LANアクセスポイント600と、
図6に示す移動体通信網基地局700と、無線ルータ610との間の相対的な位置が表わされている。無線ルータは、ロケーションD(例えば、ユーザのオフィス)に配置されている。
図11に示すように、ホームゲートウェイ500は、他の無線基地局(移動体通信網基地局700,公衆無線LANアクセスポイント600,無線ルータ610)とは大きく離れた位置に配置されている。可搬型ネットワーク接続装置100は、公衆無線LANアクセスポイント600と、無線ルータ610と、移動体通信網基地局700とで囲まれた領域に配置されている。なお、図示しないクライアントは、可搬型ネットワーク接続装置100の近くに配置されている。
【0060】
図11では、各無線基地局から出力される信号の受信可能エリア(以下、単に「受信可能エリア」と呼ぶ)と、各無線基地局から所定の距離以内のエリア(以下、「近傍エリア」と呼ぶ)とを、それぞれ破線の円弧で示している。具体的には、ホームゲートウェイ500を中心とした受信可能エリアARg及び近傍エリアARg1と、公衆無線LANアクセスポイント600を中心とした受信可能エリアAR1及び近傍エリアAR11と、無線ルータ610を中心とした受信可能エリアAR2及び近傍エリアAR21と、移動体通信網基地局700を中心とした受信可能エリアAR3及び近傍エリアAR31と、が示されている。なお、近傍エリアを特定する「所定の距離」は、各無線基地局から出力される信号の受信強度が所定値以上となり、上位ネットワークを介したデータのやり取りが安定して実行され得るような領域を特定する距離であり、予め可搬型ネットワーク接続装置100に設定されている。この所定の距離として、例えば30mを設定することができる。
【0061】
図10に示す動作モード切り替え処理は、可搬型ネットワーク接続装置100の電源がオンすると実行される。なお、初期状態では、可搬型ネットワーク接続装置100(転送処理部121)の動作モードは、第2動作モード(ルータ)に設定されている。
【0062】
無線基地局検索部123は、無線WAN制御回路175及び移動体通信制御回路176を介して無線基地局から出力された信号を受信することにより、無線基地局を検索し(ステップS10)、無線基地局を発見したか否かを判定する(ステップS15)。この無線基地局の検索方法としては、周知な方法を採用することができる。例えば、無線LANアクセスポイントから出力されるビーコンを受信することで、無線LANアクセスポイントを発見することができる。また、プローブ要求をブロードキャストして、プローブ応答を受信することで、無線LANアクセスポイントを発見することができる。なお、プローブ要求において設定するSSID(Service Set Identifier)としては、例えば、所定の無線LANアクセスポイントについて、予めROM171に記憶されている利用プロファイル(SSIDや、暗号鍵や、暗号化方式など、各無線通信で用いられる情報群)に設定されている値を利用することができる。ビーコンやプローブ応答には、無線LANアクセスポイントのMACアドレスが含まれている。また、移動体通信網の基地局から出力される信号には、セルIDが含まれている。したがって、ステップS10により無線基地局が発見されると、発見された無線基地局に割り当てられている無線基地局ID(MACアドレス又はセルID)を取得することができる。
図11では、可搬型ネットワーク接続装置100は、公衆無線LANアクセスポイント600の受信可能エリアAR1,無線ルータ610の受信可能エリアAR2,および移動体通信網基地局700の受信可能エリアAR3の重複する位置に配置されている。したがって、
図11に示す位置に可搬型ネットワーク接続装置100が配置されている状態では、ステップS10において、公衆無線LANアクセスポイント600,無線ルータ610及び移動体通信網基地局700が発見される。なお、
図11に示す状態では、可搬型ネットワーク接続装置100は、ホームゲートウェイ500の受信可能エリアARg内に存在しないので、ステップS10では、ホームゲートウェイ500は発見されない。
【0063】
無線基地局を検索した結果、無線基地局を発見できない場合(ステップS15:NO)、前述のステップS10に戻る。したがって、この場合、可搬型ネットワーク接続装置100の動作モードは、初期設定の第2動作モードのままである。これに対して、無線基地局を発見した場合(ステップS15:YES)、無線基地局検索部123は、無線基地局を発見する際に受信した信号の受信信号強度を検出(算出)すると共に、発見した無線基地局の無線基地局ID(MACアドレス又はセルID)をキーとして、サービス提供ポイントテーブルRT1を参照して、発見した無線基地局の位置情報(緯度及び経度)を取得する(ステップS20)。
【0064】
位置特定部124は、ステップS20において検出された受信信号強度及び取得された無線基地局の位置情報に基づき、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置(緯度,経度)を特定する(ステップS25)。例えば、上述のように、ステップS10において、3台の無線基地局(2台の公衆無線LANアクセスポイント600,610及び移動体通信網基地局700)が発見された場合、位置特定部124は、以下のようにして、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置を特定することができる。まず、各無線基地局について、サービス提供ポイントテーブルRT1に設定されている送信出力と、ステップS20で検出された受信信号強度とに基づき、各無線基地局から可搬型ネットワーク接続装置100に至るまでの減衰電力を求める。各無線基地局と可搬型ネットワーク接続装置100との間における電波伝搬環境(遮蔽物の有無等)が同じであると想定すると、各無線基地局と可搬型ネットワーク接続装置100との間の距離がより大きいほど、減衰電力はより大きくなると推定される。次に、3つの無線基地局のうち任意に選択した2つの無線基地局について求めた減衰電力の比と、これら2つの無線基地局の位置情報(緯度,経度)から、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置の候補の地点からなる第1の直線が定められる。同様にして、前回と異なる組み合わせとなる2つの無線基地局について求めた減衰電力の比と、これら2つの無線基地局の位置情報(緯度,経度)から、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置の候補の地点からなる第2の直線が定められる。そして、第1の直線と第2の直線との交点(緯度,経度)を求め、この交点を、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置として特定(推定)することができる。
【0065】
なお、ステップS10において発見された無線基地局の数が2つである場合には、例えば、上述した第1の直線を求めた上で、2つの無線基地局を結ぶ直線と第1の直線との交点を求め、この交点を、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置として特定することができる。また、ステップS10において発見された無線基地局の数が1つである場合には、例えば、発見された1つの無線基地局を基準として所定の方向及び所定の距離だけ離れた位置を、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置として特定することができる。
【0066】
前述のステップS25において、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置を特定すると、無線基地局決定部125は、特定された可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置に基づき、近傍エリアに可搬型ネットワーク接続装置100が存在するような無線基地局を決定する(ステップS30)。上述したように、近傍エリアは、無線基地局から所定の距離以内の領域である。そこで、無線基地局決定部125は、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置(緯度,経度)と、サービス提供ポイントテーブルRT1に設定されている各無線基地局の位置情報(緯度,経度)とに基づき、可搬型ネットワーク接続装置100と各無線基地局との間の距離を算出し、得られた距離が所定の距離以下であるような無線基地局を決定することができる。
図11に示すように可搬型ネットワーク接続装置100が配置されているケースでは、可搬型ネットワーク接続装置100は、無線ルータ610の近傍エリアAR21にのみ所属しており、他の無線基地局の近傍エリアには所属していない。したがって、このケースでは、ステップS30において、無線ルータ610のみが決定されることとなる。
【0067】
無線基地局決定部125は、ステップS30で決定された無線基地局のうち、最も高い優先度が設定された無線基地局を、上位ネットワーク接続用無線基地局として特定すると共に、動作モード決定テーブルRT2を参照して、特定された上位ネットワーク接続用無線基地局に対応付けられている動作モードを特定する(ステップS35)。転送制御部122は、転送処理部121の動作モードを、ステップS35で特定された動作モードに設定する(ステップS40)。上述のように、ステップS30において決定された無線基地局が無線ルータ610のみの場合、ステップS35では、無線ルータ610に対応付けられている動作モードが特定されることとなる。
【0068】
例えば、
図9に示すMACアドレス「MA5」が設定されている無線基地局が無線ルータ610である場合には、無線ルータ610に対応付けられている動作モード「第1動作モード」が特定されることとなる。したがって、転送処理部121の動作モードは、初期設定の「第2の動作モード」(ルータ)から「第1動作モード」(ブリッジ)に切り替わり、可搬型ネットワーク接続装置100はブリッジとして機能することとなる。上述したように、無線ルータ610がユーザのオフィス(ロケーションD)に配置されているケースにおいては、可搬型ネットワーク接続装置100がブリッジとして機能するので、オフィス内にルータ装置が2台存在することが避けられる。したがって、ユーザは、ロケーションDにおいて、クライアントCL1を、可搬型ネットワーク接続装置100及び無線ルータ610を介してインターネットに接続させることができる。
【0069】
なお、ステップS40の後、ステップS10に戻り、上述したステップS10〜S40が実行される。したがって、ユーザが、可搬型ネットワーク接続装置100を持って移動すると、可搬型ネットワーク接続装置100におけるパケット転送の動作モードとして、移動先の環境に適した動作モードが設定されることとなる。
【0070】
以上説明した第1実施例の可搬型ネットワーク接続装置100では、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置が特定され、さらに、特定された現在位置に基づき上位ネットワーク接続用無線基地局が特定され、特定された上位ネットワーク接続用無線基地局に対応する動作モードが、転送処理部121の動作モードとして設定される。したがって、クライアントCL1からインターネットなどの上位ネットワークに接続する際に、可搬型ネットワーク接続装置100におけるパケット転送の動作モードを適切に設定することができる。
【0071】
加えて、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置に基づき、可搬型ネットワーク接続装置100におけるパケット転送の動作モードが決定されるので、可搬型ネットワーク接続装置100が現在配置されている位置において、上位ネットワーク接続用無線基地局として最も適した無線基地局を特定することができる。それゆえ、可搬型ネットワーク接続装置100におけるパケット転送の動作モードとして、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置に適した動作モードに切り替える(設定する)ことができる。例えば、各無線基地局から出力される信号の受信信号強度に基づき、上位ネットワーク接続用無線基地局を特定し、特定された上位ネットワーク接続用無線基地局に対応する動作モードを設定する構成に比べて、適切な動作モードに設定する可能性をより高めることができる。これは以下の理由による。各無線基地局から出力される信号の受信信号強度は、例えば、人物や車両が通るといった可搬型ネットワーク接続装置100と無線基地局との間の遮蔽物の有無が変化すると変動し得るため、上位ネットワーク接続用無線基地局として最適な無線基地局を特定できないおそれがある。これに対して、第1実施例の可搬型ネットワーク接続装置100では、現在位置における各無線基地局と可搬型ネットワーク接続装置100との間の距離に基づき、上位ネットワーク接続用無線基地局を特定するので、最適な無線基地局を特定でき、最適な動作モードに設定することができるからである。
【0072】
また、動作モード決定テーブルRT2に設定された優先度に基づき、上位ネットワーク接続用無線基地局が決定されるので、上位ネットワーク接続用無線基地局としての使用の要請の高い無線基地局に対して、より高い優先度を設定することにより、かかる無線基地局が上位ネットワーク接続用無線基地局として決定され易くすることができる。また、上位ネットワーク接続用無線基地局としての使用の要請の低い無線基地局に対しては、相対的に低い優先度を設定することにより、上位ネットワーク接続用無線基地局として決定される可能性を低くすることができる。したがって、各無線基地局のうち、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置を特定するために利用するが上位ネットワーク接続用無線基地局としては利用しない無線基地局を、低い優先度を設定することによって特定(指定)することができる。
【0073】
B.第2実施例:
図12は、第2実施例の可搬型ネットワーク接続装置の構成を示すブロック図である。第2実施例の可搬型ネットワーク接続装置100aは、GPS(Global Positioning System)受信部126を備えている点において、
図1に示す第1実施例の可搬型ネットワーク接続装置100と異なり、他の構成は、可搬型ネットワーク接続装置100と同じである。GPS受信部126は、受信アンテナやアンプ等を備え、GPS衛星(測位衛星)から送信されるGPS信号(測位信号)を受信することにより、現在位置を特定する。
【0074】
図13は、第2実施例の動作モード切り替え処理の手順を示すフローチャートである。第2実施例の動作モード切り替え処理は、ステップS10〜S20を省略し、ステップS25に代えてステップS25aを実行する点において、
図10に示す第1実施例の動作モード切り替え処理と異なり、他の手順は、第1実施例と同じである。第1実施例では、無線基地局を検索し、見つかった無線基地局の位置情報及び検出した受信信号強度に基づき、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置を特定していた。これに対し、第2実施例では、GPSにより可搬型ネットワーク接続装置100
aの現在位置を特定する。具体的には、GPS受信部126は、GPS衛星から送信されるGPS信号に基づき可搬型ネットワーク接続装置100
aの現在位置を特定する(ステップS25a)。可搬型ネットワーク接続装置100
aの現在位置を特定した後は、上述したステップS30〜S40が実行され、可搬型ネットワーク接続装置100
aにおけるパケット転送の動作モードが設定される。
【0075】
以上説明した第2実施例の可搬型ネットワーク接続装置100aは、第1実施例の可搬型ネットワーク接続装置100と同様な効果を有する。
【0076】
C.第3実施例:
図14は、第3実施例の可搬型ネットワーク接続装置の構成を示すブロック図である。第3実施例の可搬型ネットワーク接続装置100bは、無線基地局決定部12
5を備えていない点と、動作モード決定テーブルRT2に代えて動作モード決定テーブルRT5を備えている点とにおいて、
図1に示す第1実施例の可搬型ネットワーク接続装置100と異なり、他の構成は、可搬型ネットワーク接続装置100と同じである。
【0077】
図15は、
図14に示す動作モード決定テーブルの設定内容の一例を示す説明図である。動作モード決定テーブルRT5は、所定の代表地点について、位置情報(緯度,
経度)と、動作モードとを対応付けるテーブルであり、予めユーザによって設定されてROM171に記憶される。なお、説明の便宜上、
図15では、各代表地点の位置情報を模式的な値により表わしている。
【0078】
「代表地点」とは、ユーザにより任意に設定された地点である。ユーザは、例えば、可搬型ネットワーク接続装置100bの使用が見込まれるエリア内の任意の地点を、代表地点として設定することができる。加えて、ユーザは、設定した各代表地点に対して、各代表地点から最も近い無線基地局を上位ネットワーク接続用無線基地局として使用する場合に設定すべき適切な動作モードを、設定することができる。例えば、
図11に示すように、ホームゲートウェイ500,公衆無線LANアクセスポイント600,移動体通信網基地局700,無線ルータ610が配置されている場合には、ホームゲートウェイ500から近い地点(例えば、ホームゲートウェイ500から数m程度離れた地点)を代表地点として設定し、この代表地点に対して「第1の動作モード」を設定することができる。同様に、公衆無線LANアクセスポイント600から近い地点を代表地点として設定し、この代表地点に対して「第2の動作モード」を設定することができる。また、無線ルータ610から近い地点を代表地点として設定し、この代表地点に対して「第1の動作モード」を設定することができる。また、移動体通信網基地局700から近い地点を代表地点として設定し、この代表地点に対して「第2の動作モード」を設定することができる。
【0079】
図16は、第3実施例の動作モード切り替え処理の手順を示すフローチャートである。第3実施例の動作モード切り替え処理は、ステップS30
,S35に代えて、ステップS36,S38を実行する点において、
図10に示す第1実施例の動作モード切り替え処理と異なり、他の手順は、第1実施例と同じである。
【0080】
ステップS10〜S25が実行され、可搬型ネットワーク接続装置100bの現在位置が特定されると、位置特定部124は、動作モード決定テーブルRT5を参照して、可搬型ネットワーク接続装置100bの現在位置に最も近い代表地点を特定する(ステップS36)。位置特定部124は、動作モード決定テーブルRT5を参照して、ステップS36で特定された代表地点に対応付けられている動作モードを特定する(ステップS38)。動作モードが特定されると、転送制御部122は、前述のステップS40を実行する。例えば、可搬型ネットワーク接続装置100
bの現在位置から最も近い代表地点として、
図15に示す第5の代表地点(緯度y5,経度
x5)が特定されると、転送制御部122は、転送処理部121の動作モードとして、第1の動作モードに設定する。
【0081】
以上説明した第3実施例の可搬型ネットワーク接続装置100bは、第1実施例の可搬型ネットワーク接続装置100と同様な効果を有する。加えて、可搬型ネットワーク接続装置100bの現在位置を特定してから動作モードを特定するまでの処理が、可搬型ネットワーク接続装置100bの現在位置からの最も近い代表地点の特定(ステップS36)及び代表地点に対応付けられた動作モードの特定(ステップS38)であり、シンプルな処理となっている。したがって、ステップS10〜S40の処理を短期間で実行できるので、可搬型ネットワーク接続装置100bの移動に伴って動作モードを切り替える必要が生じた場合に、短期間のうちに適切な動作モードに切り替える(設定する)ことができる。
【0082】
また、代表地点として、可搬型ネットワーク接続装置100bが配置される可能性の高いエリア内の地点を選択して設定することにより、可搬型ネットワーク接続装置100bが配置された地点において適した動作モードに、転送処理部121の動作モードを設定することができる。
【0083】
D.第4実施例:
図17は、第4実施例の可搬型ネットワーク接続装置の構成を示すブロック図である。第4実施例の可搬型ネットワーク接続装置100cは、位置特定部124が現在位置特定部124a及び将来位置推定部124bを有する点、およびROM171が位置情報格納部LSを備えている点において、
図1に示す第1実施例の可搬型ネットワーク接続装置100と異なり、他の構成は、可搬型ネットワーク接続装置100と同じである。
【0084】
現在位置特定部124aは、動作モード切り替え処理において、可搬型ネットワーク接続装置100cの現在位置を特定する。将来位置推定部124bは、動作モード切り替え処理において、所定期間後における可搬型ネットワーク接続装置100cの位置を推定して特定する。位置情報格納部LSは、可搬型ネットワーク接続装置100cの現在位置についての情報(緯度,経度)と、現在位置を特定した時刻とを対応付けて記憶する。
【0085】
図18は、第4実施例の動作モード切り替え処理の手順を示すフローチャートである。第4実施例の動作モード切り替え処理は、ステップS25に代えてステップS25aを実行する点と、ステップS30に代えてステップS30aを実行する点と、ステップS2
8を実行する点とにおいて、
図10に示す第1実施例の動作モード切り替え処理と異なり、他の手順は、第1実施例と同じである。
【0086】
ステップS10〜S20が実行され、発見された無線基地局の位置情報が取得されると、現在位置特定部124aは、受信信号強度及び発見された無線基地局の位置情報に基づき、可搬型ネットワーク接続装置100cの現在位置を特定すると共に、特定時刻をROM171に記憶させる(ステップS25a)。ステップS25aにおける現在位置の特定方法は、第1実施例と同じであるので、説明を省略する。
【0087】
将来位置推定部124bは、ステップS25aで特定された現在位置と、ROM171に記憶されている現在位置とに基づき、所定期間ΔT後の可搬型ネットワーク接続装置100cの位置(将来位置)を推定することにより特定する(ステップS28)。本実施例では、所定期間ΔTは、可搬型ネットワーク接続装置100cが無線基地局との間で無線通信を行う前に、事前に行うべき処理を実行するのに要する期間として設定されている。無線通信を行う前に事前に行うべき処理としては、例えば、無線基地局又は図示しない認証サーバ装置と可搬型ネットワーク接続装置100cとの間で実行される認証処理などを採用することができる。本実施例では、このような事前処理に要する期間を予め実験により測定して所定期間ΔTが設定される。以下では、所定期間ΔTとして、3秒間が予め設定されているものとする。なお、予め実験により事前処理に要する期間を測定し、得られた期間に予備の期間を加えて、所定期間として設定することもできる。
【0088】
図19は、ステップS28において可搬型ネットワーク接続装置の将来位置を推定する一例を模式的に示す説明図である。
図19では、可搬型ネットワーク接続装置100cの現在位置を地点P(T)として表わしている。また、N秒前(N=1〜6の整数)の可搬型ネットワーク接続装置100cの位置を地点P(T−N)として表わしている。また、M秒後(M=1〜3の整数)の可搬型ネットワーク接続装置100cの位置を地点
P(T+M)として表わしている。
図19に示すように、可搬型ネットワーク接続装置100cは、現時点(ステップS25aを実行する時点)において、無線基地局800の近傍エリアAR4の境界に位置している。そして、
図19に示す可搬型ネットワーク接続装置100cの過去及び現在の位置から分かるように、可搬型ネットワーク接続装置100cは、無線基地局800に近づくように移動している。
図19に示すように、可搬型ネットワーク接続装置100cでは、可搬型ネットワーク接続装置100cの現在位置の位置情報が、現在よりも6秒前から1秒ごとに記録されている。したがって、位置情報格納部LSには、地点P(T−6)から地点P(T−1)までの各地点における位置情報(緯度,経度)と、位置特定時刻とが記録されている。
【0089】
図19に示すように可搬型ネットワーク接続装置100cが移動していた場合、ステップS28において、将来位置推定部124bは、例えば、以下のようにして所定期間(3秒)後の可搬型ネットワーク接続装置100cの位置(将来位置)を推定する。まず、将来位置推定部124bは、既に取得している地点P(T−6)から地点P(T−1)までの各地点における位置情報(緯度,経度)、及びステップS25aで求めた現在位置(緯度,経度)に基づき、可搬型ネットワーク接続装置100cの移動の軌跡と近似する回帰曲線(以下、「移動ライン」とも呼ぶ)を求める。回帰曲線の求め方は周知の方法を採用し得る。なお、
図19では、移動ラインL1は、一次曲線(直線)として求められているが、m次(mは2以上の整数)の回帰曲線として求めることもできる。次に、将来位置推定部124bは、既に取得している地点(T−6)から地点(T−1)までの各地点における位置情報(緯度,経度)、及びステップS25aで求めた現在位置(緯度,経度)に基づき、移動ライン上における所定期間ΔT後の可搬型ネットワーク接続装置100cの位置を求める。例えば、
図19に示すように、移動ラインL1が求められると、現在位置(地点P(T))及び過去の位置(地点P(T−6)〜地点P(T−1))から、各地点間の平均移動距離、すなわち、1秒間の平均移動距離(平均移動速度)を求め、得られた平均移動速度に基づき所定期間後(3秒後)における移動ラインL1上の位置を、可搬型ネットワーク接続装置100cの将来位置として求める(推定する)ことができる。
【0090】
ステップS28において、可搬型ネットワーク接続装置100cの将来位置が特定されると、無線基地局決定部125は、特定された可搬型ネットワーク接続装置100cの将来位置に基づき、近傍エリアに可搬型ネットワーク接続装置100
cが存在するような無線基地局を決定する(ステップS30a)。この処理は、可搬型ネットワーク接続装置の現在位置に代えて、可搬型ネットワーク接続装置の将来位置を用いる点を除き、第1実施例におけるステップS30の処理
と同じである
。
【0091】
ステップS30aにおいて無線基地局が決定されると、前述のステップS35,S40が実行され、転送処理部121の動作モードが設定される。
例えば、図19に示す無線基地局800の優先度が、図示しない他の無線基地局の優先度に比べて相対的に高い場合には、この無線基地局800がステップS35において決定される。例えば、ステップS3
5において、無線基地局800が決定され、無線基地局800に対応付けられている動作モードが第1の動作モード(ブリッジ)であり、地点P(T−1)では、第2の動作モード(ルータ)であった場合、現在位置である地点P(T)において、第2の動作モードから第1の動作モードに切り替わる。例えば、ユーザが、現在位置において、インターネットを介した接続を行うアプリケーションプログラム(例えば、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)を用いたウェブサーバへのアクセスのためのプログラム)を起動させると、可搬型ネットワーク接続装置100cは、上位ネットワークにアクセスするために、上位ネットワーク接続用無線基地局との間で認証等の事前処理を行う。そして、事前処理が完了した時点では、可搬型ネットワーク接続装置100cは、事前処理を開始した時点に比べて、無線基地局800により近い位置(例えば、
図19に示す地点P(T+3))に配置されている。したがって、事前処理が完了してインターネットを介したデータのやり取りを行う際には、既に、可搬型ネットワーク接続装置100におけるパケット転送の動作モードとして、上位ネットワーク接続用無線基地局である無線基地局800に対応した最適の動作モードが設定されている状態とすることができる。したがって、ユーザは、事前処理が完了した後において、改めて動作モードを設定する必要がないので、事前処理が完了すると即座に、上位ネットワークにアクセスすることができる。
【0092】
以上説明した第4実施例の可搬型ネットワーク接続装置100cは、第1実施例の可搬型ネットワーク接続装置100と同様な効果を有する。加えて、可搬型ネットワーク接続装置100cは、所定期間ΔT後における可搬型ネットワーク接続装置100cの位置(将来位置)を推定して特定し、特邸した将来位置において使用する上位ネットワーク接続用無線基地局に対応する動作モードに転送処理部121の動作モードを設定するので、所定期間ΔT後において可搬型ネットワーク接続装置100cを用いてインターネット等に接続する際に最も適した動作モードに予め設定しておくことができる。
【0093】
また、可搬型ネットワーク接続装置100cでは、所定期間ΔTとして、可搬型ネットワーク接続装置100cが無線基地局との間で無線通信を行う前に、事前に行うべき処理を実行するのに要する期間以上の期間として設定されているので、事前に行うべき処理が完了した時点で上位ネットワークに接続する際に最も適した動作モードに設定しておくことができる。したがって、事前に行うべき処理が完了した後に、最適な動作モードに切り替える(設定する)構成に比べて、実際にインターネット等に接続できるまでに要する期間(オーバーヘッドの期間)を短縮することができる。
【0094】
また、ROM171に記憶されている可搬型ネットワーク接続装置100cの現在位置の位置情報、すなわち、可搬型ネットワーク接続装置100cの過去の位置の位置情報に基づき将来位置を推定するので、将来位置を高い精度で推定することができる。
【0095】
また、可搬型ネットワーク接続装置100cの現在位置をROM171に記録しておくので、可搬型ネットワーク接続装置100cの過去の位置を特定することができると共に、特定した過去の位置の情報を用いて、可搬型ネットワーク接続装置100cの軌跡(移動ラインL1)を推定することができる。
【0096】
なお、第4実施例において、特定時刻は、請求項における期間関連情報に相当する。
【0097】
E.変形例:
この発明は、上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0098】
E1.変形例1:
第1,3,4実施例では、可搬型ネットワーク接続装置100,100b,100cの現在位置を特定する方法として、各無線基地局から出力される信号の受信信号強度と、各無線基地局の位置情報(緯度,経度)とを用いて特定する方法を採用していた。第2実施例では、可搬型ネットワーク接続装置100aの現在位置を特定する方法として、GPSを用いて特定する方法を採用していた。しかしながら、本発明は、これらの方法に限定されるものではない。例えば、GPSに代えて、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System:準天頂衛星システム)などの他の衛星測位システムを用いて可搬型ネットワーク接続装置の現在位置を特定することもできる。また、第2実施例において、GPS受信部126に代えて、可搬型ネットワーク接続装置100aの現在位置を設定するためのユーザインタフェースを可搬型ネットワーク接続装置100aが備える構成を採用することもできる。この構成においては、例えば、ユーザは、可搬型ネットワーク接続装置100aとは別にGPS受信専用機を用意し、このGPS受信専用機を用いて可搬型ネットワーク接続装置100aの現在位置を特定して、ユーザインタフェースを用いて可搬型ネットワーク接続装置100aに可搬型ネットワーク接続装置100aの現在位置を設定することができる。この構成においては、可搬型ネットワーク接続装置100aにおいて、ユーザインタフェースは、請求項における位置特定部に相当する。
【0099】
E2.変形例2:
第1実施例では、動作モード決定テーブルRT2は、予めユーザによって設定されてROM171に記憶されていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、公衆無線LANサービスの提供事業者や、移動体通信網事業者からダウンロードして設定される構成を採用することもできる。この構成においては、全てのユーザに対して同じ動作モード決定テーブルが設定される前提であれば容易に実現することができる。
【0100】
また、サービス提供ポイントテーブルRT1や動作モード決定テーブルRT2を、公衆無線LANサービスの提供事業者や移動体通信網事業者からダウンロードする構成においては、可搬型ネットワーク接続装置から、公衆無線LANサービスの提供事業者や移動体通信網事業者のデータベースに定期的にアクセスしてダウンロードする構成を採用することができる。このような構成により、最新のサービス提供ポイントテーブルRT1又は動作モード決定テーブルRT2を取得することができ、可搬型ネットワーク接続装置の現在位置や、最適な上位ネットワーク接続用無線基地局を、より高い精度で特定することができる。
【0101】
E3.変形例3:
第1実施例では、上位ネットワーク接続用無線基地局の特定方法として、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置に基づき、近傍エリアに可搬型ネットワーク接続装置100が存在するような無線基地局を決定し、決定された無線基地局のうち、最も高い優先度が設定された無線基地局を、上位ネットワーク接続用無線基地局として決定する方法を採用していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、近傍エリアに可搬型ネットワーク接続装置100が存在するような無線基地局を決定し、決定された無線基地局のうち、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置に最も近い位置の無線基地局を、上位ネットワーク接続用無線基地局として特定する方法を採用することもできる。このような構成においても、第1実施例と同様な効果を有する。なお、第1実施例において優先度として「−1」が設定されていた無線基地局(
図9に示すNo.3,5の無線基地局)は、これら無線基地局を利用した公衆無線LAN接続サービスにユーザが加入していない無線基地局であったが、可搬型ネットワーク接続装置100の現在位置に最も近い位置の無線基地局を上位ネットワーク接続用無線基地局として特定する方法を採用する場合には、このような無線基地局は、予め動作モード決定テーブルRT2に設定しないようにすることが好ましい。このようにすることにより、公衆無線LAN接続サービスにユーザが加入していない無線基地局を、上位ネットワーク接続用無線基地局として特定することを抑制できる。
【0102】
E4.変形例4:
第4実施例では、ステップS25aにおいて、可搬型ネットワーク接続装置100cの現在位置の位置情報(緯度,経度)と共にROM171に記憶させる情報として、特定時刻(位置を特定した時刻)を採用していたが、本発明はこれに限定されるものではない。現在位置の特定順序を、現在位置と共にROM171に記憶させる情報として採用することもできる。例えば、第2実施例のように、GPSを用いて現在位置を特定する方法を採用した場合、現在位置の特定を定期的に行うことが可能となる。この場合、現在位置の特定が定期的に実行されるので、特定時刻を記録しなくとも、可搬型ネットワーク接続装置の現在位置(緯度,経度)を特定した地点間の移動に要した期間(前回特定してから今回特定するまでに要する期間)を特定できる。したがって、平均移動速度を推定できるので、移動ラインにおける将来位置を推定することができる。
【0103】
E5.変形例5:
第4実施例では、可搬型ネットワーク接続装置100cの現在位置と、ROM171に記憶されている現在位置(すなわち、可搬型ネットワーク接続装置100cの過去の位置)に基づき、可搬型ネットワーク接続装置100cの将来位置を推定していたが、過去の位置のみに基づき、可搬型ネットワーク接続装置100cの将来位置を推定することもできる。例えば、
図19に示す地点P(T−6)〜地点P(T−1)の各地点の位置情報と、特定時刻とに基づき移動ラインを特定し、移動ライン上において将来位置を推定することもできる。
【0104】
E6.変形例6:
第1〜3実施例では、動作モードを設定する際に参照されるテーブルは、サービス提供ポイントテーブルRT1と動作モード決定テーブルRT2の2つであったが、2つに限定されるものではない。例えば、サービス提供ポイントテーブルRT1の設定項目と、動作モード決定テーブルRT2の設定項目とを合わせた1つのテーブルを可搬型ネットワーク接続装置100,100a,100bに用意し、この1つのテーブルのみを参照して動作モードを設定することもできる。また、例えば、動作モード決定テーブルRT2から、優先度(上位ネットワーク接続用無線基地局として選択され易さを示す優先度)を省略し、優先度と各無線基地局IDとを対応付けるテーブル(以下、「優先度テーブル」と呼ぶ)を用意し、サービス提供ポイントテーブルRT1及び動作モード決定テーブルRT2と、優先度テーブルとの合計3つのテーブルを参照して動作モードを設定することもできる。
【0105】
E7.変形例7:
第1,2,4実施例では、サービス提供ポイントテーブルRT1及び動作モード決定テーブルRT2において、無線LANアクセスポイントについて無線基地局IDとして用いる情報は、MACアドレスであったが、MACアドレスに代えて、ESSIDを採用することもできる。
【0106】
E8.変形例8:
第3の実施例では、各代表地点のうち、可搬型ネットワーク接続装置100bから最も近い代表地点に対応付けられている動作モードに設定されていたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、可搬型ネットワーク接続装置100bから2番目に近い代表地点に対応付けられている動作モードに設定する構成を採用することもできる。また、例えば、可搬型ネットワーク接続装置100bから所定の距離以下の領域に存在する代表地点のうち、対応付けられている無線基地局が無線LANアクセスポイントである代表地点を、対応付けられている無線基地局が移動体通信網の基地局である代表地点に比べて、より優先して特定して、この代表地点に対応付けられている動作モードに転送処理部121の動作モードを設定する構成を採用することもできる。すなわち、一般には、可搬型ネットワーク接続装置100bと各代表地点との間の距離に関する所定の条件を満たす1つの代表地点を特定する任意の構成を、本発明の可搬型ネットワーク接続装置に採用することができる。
【0107】
E9.変形例9:
各実施例における可搬型ネットワーク接続装置100,100a,100b,100cの構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、各実施例において、無線LAN制御回路174や無線WAN制御回路175は、IEEE802.11a/b/gに準拠した無線LANに限らず、将来的に利用可能となる無線LAN一般により無線通信を行う無線通信インタフェースであるとしてもよい。また、移動体通信制御回路176は、3G/HSPAに準拠した移動体通信に限らず、例えばLTEや次世代モバイルWiMAX(IEEE802.16m)、次世代PHS(XGP:eXtended Global Platform)といった将来的に利用可能となる移動体通信一般により無線通信を行う無線通信インタフェースであるとしてもよい。
【0108】
また、上記実施例では、可搬型ネットワーク接続装置100,100a,100b,100cが無線LAN制御回路174と無線WAN制御回路175と移動体通信制御回路176との3種類の無線通信インタフェースを含むとしているが、これら3種類の無線通信インタフェースの内の1種類あるいは2種類のみを含むとしてもよいし、4種類以上の無線通信インタフェースを含むとしてもよい。あるいは、可搬型ネットワーク接続装置100,100a,100b,100cが同じ種類の無線通信インタフェースを複数含むとしてもよい。また、本発明は、無線LANや移動体通信に限らず、所定の無線通信ネットワークにおける無線通信一般に適用することができる。
【0109】
また、上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。また、本発明の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。この発明において、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、データを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。