(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5673411
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車用燃料タンク装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/30 20060101AFI20150129BHJP
B60W 20/00 20060101ALI20150129BHJP
F02M 37/08 20060101ALI20150129BHJP
B60K 15/077 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
B60K6/20 380
F02M37/08 A
B60K15/077 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-158752(P2011-158752)
(22)【出願日】2011年7月20日
(65)【公開番号】特開2013-23042(P2013-23042A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2013年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078499
【弁理士】
【氏名又は名称】光石 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】230111796
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 忠敬
(74)【代理人】
【識別番号】230112449
【弁護士】
【氏名又は名称】光石 春平
(74)【代理人】
【識別番号】100102945
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100120673
【弁理士】
【氏名又は名称】松元 洋
(72)【発明者】
【氏名】岩屋 教文
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】木全 康之
【審査官】
鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−285073(JP,A)
【文献】
特開2009−068420(JP,A)
【文献】
実開昭59−030553(JP,U)
【文献】
特表2008−531908(JP,A)
【文献】
特開平08−061175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/30
B60K 15/077
B60W 20/00
F02M 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに燃料供給されるエンジン駆動状態でエンジン走行又はエンジン発電を行うエンジン駆動モードと、前記エンジンへの燃料供給が遮断されるエンジン停止状態で電気モータ走行又は走行準備状態保持を行うエンジン停止モードとの切替えが可能なハイブリッド車に搭載される燃料タンク装置であって、
前記燃料タンク装置は、
前記エンジンへ燃料供給するよう燃料タンク本体から延びて一端が前記エンジンに連結された燃料供給管と、
前記エンジン駆動状態の際は前記燃料供給管から前記エンジンへの燃料供給を許可し、前記エンジン停止状態の際は前記エンジンへの燃料供給を遮断する燃料供給遮断手段と、
前記燃料タンク本体内に配置されると共に内部と外部とを連通する連通口から燃料の進入を許すことで前記燃料供給管へ流入する燃料を一時的に貯留するカップと、
前記カップに貯留された燃料を前記燃料供給管に送ると共に前記カップ内部に負圧を発生させて前記連通口を通じて前記カップ内部に燃料を進入させるよう作動する燃料ポンプと、
前記燃料ポンプの作動を制御する燃料ポンプ制御手段と、
前記車の加速度を検知する加速度検知手段とを有し、
前記燃料ポンプ制御手段は、
前記エンジン駆動モードの際は前記燃料ポンプを作動させて前記エンジンへの燃料供給を実施すると共に前記カップ内部に燃料を進入させ、
前記エンジン停止モードの際は前記燃料供給遮断手段によって前記エンジンへの燃料供給が遮断されているにも関わらず、前記加速度検知手段に応じて前記燃料ポンプを強制的に一定時間作動させ、前記カップ内部に燃料を進入させる
ことを特徴とする燃料タンク装置。
【請求項2】
前記燃料ポンプ制御手段は、前記エンジン停止モードの際に、さらに、前記燃料ポンプを繰り返しタイマ作動させ、前記カップ内部に燃料を進入させる
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク装置。
【請求項3】
前記燃料ポンプが作動された際に前記カップ内に発生する負圧により開放されて前記燃料タンクから前記カップへの燃料の進入を許可する一方向弁が前記連通口に配設される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料タンク装置。
【請求項4】
前記燃料供給管より分岐するよう形成されて前記カップの内部燃料を前記燃料供給管から前記カップの外部へ排出すると共に前記カップ外部側一端を前記連通口に対向するように位置させた分岐管とを有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の燃料タンク装置。
【請求項5】
前記燃料ポンプ制御手段は、前記エンジン停止モードで前記車両の電源が入って走行準備保持状態に移行したときに、前記繰り返しタイマ作動の初回作動を行う
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の燃料タンク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンとモータをそれぞれ単独で駆動して走行することが可能なハイブリッド車に搭載される燃料タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常のガソリン車はエンジンを起動することで前後輪を回転させて車体を走行させる仕組みになっているが、エンジンの出力は高負荷(高速)運転を考慮して設定されているため、低負荷(低速)運転時においてはエネルギー変換効率が著しく下がる。そこで低速運転時にはエンジンを起動せずに電気モータで前後輪が回るようにしたハイブリッド車が普及するようになった。ハイブリッド車は、石油燃料をあまり使わずCO
2排出量が少ないことから、世界的な石油燃料価格の高騰やCO
2削減意識の向上等も相俟って近年飛躍的に普及している。
【0003】
ハイブリッド車に搭載される主な装置の一例を
図3に簡単に示す。ハイブリッド車は、車体11中に、エンジン14と、発電機15と、インバータ16と、フロントモータ17と、リアモータ18と、キャタライザ19と、高圧バッテリ20と、燃料タンク21と、マフラ22と、前部動力伝達装置23と、クラッチ24と、後部動力伝達装置25と、前輪12と、後輪13とを有している。
【0004】
ここで例に挙げるハイブリッド車は、前輪12にはエンジン14とフロントモータ17が前部動力伝達装置23を介してそれぞれ繋がっており、後輪13にはリアモータ18のみが後部動力伝達装置25を介して繋がっている。
【0005】
発進時や低速走行時には、高圧バッテリ20に蓄えられた電気がインバータ16で変換されてフロントモータ17とリアモータ18を動かすことで、前輪12と後輪13がそれぞれ回転して走行する。このとき、前部動力伝達装置23内のクラッチ24が離れることで、エンジン14は切り離されており、当該動作に関与しない。
【0006】
通常走行時には前部動力伝達装置23内のクラッチ24が繋がり、エンジン14を起動して前輪12を回し、発電機15で高圧バッテリ20の充電を行いながら速度制御を行う(以下、フロントモータ17とリアモータ18を纏めて電気モータ17と称する)。
【0007】
ここで、以降の説明を理解しやすいよう、エンジン14とその周辺の一部の装置例について
図4を用いて簡単に説明する。まず、給油口用スイッチ32を押すと給油口センサ33に取り付けられている給油口蓋34が開く。そこから入れられた燃料2は、燃料シャットオフバルブ35を通り、燃料タンク21の底に溜まる。燃料タンク21に溜まった燃料2は、エンジン14が起動すると燃料ポンプ3によって吸い上げられ、配管10aを通り、インジェクタ31からエンジン14に移送されるが、その際、ポンプカップ1にも燃料2が溜まる。ちなみに、各装置の制御指令を行うコントローラは、ECU(Electronic Controlled Unit:電子制御装置)7がその役割を担っている。
【0008】
ちなみにインジェクタ31は燃料噴射をするノズルであるが、エンジン14が起動していないときに燃料2がエンジン14内に流れ込まないようになっている。その際、配管10a内の圧力が高まってくると、ポンプカップ1内に燃料2を排出する仕組みになっている(排出方法は後述)。尚、ポンプカップ1内の燃料2が満杯になり溢れた燃料2は、燃料タンク21内に戻る仕組みになっている。
【0009】
ところで、ハイブリッド車は前述のようにエンジン14と電気モータ17のどちらでも走行できる構成になっている(
図3参照)ことから、運転方法によってはエンジン14を起動しない状態で長期間走行するケースも想定されるが、そのような場合、燃料タンク21内にある燃料2から水が分離して配管が錆びたり、エンジン14起動時に燃料劣化の影響で悪影響の出る可能性がある。この解決策として、エンジン14停止期間が一定以上になったら燃料ポンプ3を駆動させ、燃料タンク21内の燃料2を循環するという方法がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4280870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、エンジン14を起動せずに走行し続けると、上述とは別の問題が、より短い時間間隔で発生する可能性がある。
【0012】
一般的なポンプカップとその周辺の一部の装置について
図1、
図4を用いて説明する。まず、燃料タンク21内にポンプカップ1を設置し、ポンプカップ1の中には燃料ポンプ3を有しており、燃料ポンプ3から配管10aがエンジン14へ伸びている。配管10aは途中から分岐しており、配管10aから分岐した分岐管10bには、その途中にレギュレータ6がポンプカップ1の方向を向くように設置され、分岐管10bの先端は、1WAYバルブ(一方向弁)5を有するポンプカップ1の燃料吸引口(連通口)1aの付近に、当該口1aに向かい合う方向に配置されており、分岐管10bの先端部分とポンプカップ1の燃料吸引口1aを合わせてフィリングジェットポンプ4という。ちなみに燃料ポンプ3の制御指令を行うコントローラは、ECU7がその役割を担っている。
【0013】
通常エンジン14を起動していれば、まず燃料ポンプ3が駆動し、ポンプカップ1内の燃料2の一部を燃料ポンプ3の燃料吸引口3aから吸い上げ、吸い上げられた燃料2は配管10aを通りエンジン14へ移送される。その際、配管10aから分岐した分岐管10bにも燃料2が流れる。燃料2は分岐管10bの途中のレギュレータ6を通過し、分岐管10bの先端から噴出し、当該燃料2と燃料タンク21内の燃料2の一部が、1WAYバルブ5を有するポンプカップ1の燃料吸引口1aを通過し、ポンプカップ1に移送されるという仕組みになっている。即ちフィリングジェットポンプ4により、ポンプカップ1はエンジン14起動時には常に燃料2が充満された状態となる。
【0014】
エンジン14を起動させずに電気モータ17を駆動させて走行している状態では上記の動作は行われない。もし燃料2がエンジン14に流れ込もうとしても、前述のようにインジェクタ32がそれを防ぐ働きをする。そのためエンジン14の停止中に燃料ポンプ3を駆動させても、エンジン14に燃料2が移送されることはない。その際、配管10a内の圧力が高まってくると、レギュレータ6よりポンプカップ1に燃料2を排出するため、圧力により配管10aが破裂する危険性はない。
【0015】
しかし、走行揺動により、ポンプカップ1内に溜めてある燃料2がポンプカップ1上部の開口部から溢れてしまうことがある。特に、スラローム走行などにより大幅な揺動が起きると一度に大量の燃料2が溢れてしまう。
【0016】
エンジン14の起動による走行中は、ポンプカップ1内に燃料2が供給されるため問題はない。しかし、電気モータ17により走行している間は、燃料ポンプ3やフィリングジェットポンプ4が停止しているので、ポンプカップ1内への燃料2の供給はされないため、ポンプカップ1内の燃料2は走行揺動によって減っていく一方である。もちろんエンジン14も電気モータ17も起動していない時であっても、走行さえしていればこの状態はあり得る。
【0017】
このような状態を続けていると、エンジン14の始動要求時に燃料2がポンプカップ1内に残っておらず、始動不良状態となってしまう可能性がある。
【0018】
また停車中であっても、1WAYバルブ5のシールが不完全であれば、そこからポンプカップ1内の燃料2が漏れてしまうため、長時間停車し続けていると上記と同様の問題が発生する可能性がある。
【0019】
本発明は、エンジンが停止した状態で走行しているときにポンプカップ内に燃料を自動的に供給することにより、上述の問題を解決する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決する第1の発明に係る燃料タンク装置は、エンジンに燃料供給されるエンジン駆動状態でエンジン走行又はエンジン発電を行うエンジン駆動モードと、前記エンジンへの燃料供給が遮断されるエンジン停止状態で電気モータ走行又は走行準備状態保持を行うエンジン停止モードとの切替えが可能なハイブリッド車に搭載される燃料タンク装置であって、前記燃料タンク装置は、前記エンジンへ燃料供給するよう燃料タンク本体から延びて一端が前記エンジンに連結された燃料供給管と、前記エンジン駆動状態の際は前記燃料供給管から前記エンジンへの燃料供給を許可し、前記エンジン停止状態の際は前記エンジンへの燃料供給を遮断する燃料供給遮断手段と、前記燃料タンク本体内に配置されると共に内部と外部とを連通する連通口から燃料の進入を許すことで前記燃料供給管へ流入する燃料を一時的に貯留するカップと、前記カップに貯留された燃料を前記燃料供給管に送ると共に前記カップ内部に負圧を発生させて前記連通口を通じて前記カップ内部に燃料を進入させるよう作動する燃料ポンプと、前記燃料ポンプの作動を制御する燃料ポンプ制御手段と
、前記車の加速度を検知する加速度検知手段とを有し、前記燃料ポンプ制御手段は、前記エンジン駆動モードの際は前記燃料ポンプを作動させて前記エンジンへの燃料供給を実施すると共に前記カップ内部に燃料を進入させ、前記エンジン停止モードの際は前記燃料供給遮断手段によって前記エンジンへの燃料供給が遮断されているにも関わらず
、前記加速度検知手段に応じて前記燃料ポンプを強制的に一定時間作動させ、前記カップ内部に燃料を進入させることを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決する第2の発明に係る燃料タンク装置は、上記第1の発明の燃料タンク装置において、
前記燃料ポンプ制御手段は、さらに、前記燃料ポンプを繰り返しタイマ作動させ、前記カップ内部に燃料を進入させることを特徴とする。
【0022】
上記課題を解決する第3の発明に係る燃料タンク装置は、上記第1または2の発明の燃料タンク装置において、
前記燃料ポンプが作動された際に前記カップ内に発生する負圧により開放されて前記燃料タンクから前記カップへの燃料の進入を許可する一方向弁が前記連通口に配設されることを特徴とする。
【0023】
上記課題を解決する第4の発明に係る燃料タンク装置は、上記第1乃至第3の発明のいずれか1つの燃料タンク装置において、
前記燃料供給管より分岐するよう形成されて前記カップの内部燃料を前記燃料供給管から前記カップの外部へ排出すると共に前記カップ外部側一端を前記連通口に対向するように位置させた分岐管とを有することを特徴とする。
【0024】
上記課題を解決する第5の発明に係る燃料タンク装置は、上記
第1乃至4のいずれか1つの発明の燃料タンク装置において、前記燃料ポンプ制御手段は、前記エンジン停止モードで前記車両の電源が入って走行準備保持状態に移行したときに、前記繰り返しタイマ作動の初回作動を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
第1の発明によれば、エンジン停止状態での走行中、燃料をポンプカップ内に供給することにより、エンジンが始動される際にエンジンへの燃料供給不足による始動不良を防ぐことができる。
また、一定以上の揺動を感知すると燃料をポンプカップ内に供給することにより、エンジンへの燃料供給不足による始動不良を防ぐことができる。
【0027】
第2の発明によれば、
燃料ポンプを一定期間毎に作動できるので、カップ内の燃料欠乏を回避することができる。
【0028】
第3の発明によれば、
燃料タンクからカップへ燃料の進入を許可する一方向弁を有するため、カップ内に供給された燃料を貯留してカップ内の液面高さを高く保持することができる。
【0029】
第4の発明によれば、
分岐管の一端が連通口に対向しているため、分岐管から排出される燃料を連通口に供給し易くなる。
【0030】
第5の発明によれば、車体の電源を入れてから最初に走行し始めた直後に燃料をポンプカップ内に供給することにより、エンジンへの燃料供給不足による始動不良を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】ポンプカップとそれに関連する一部の装置の模式図
【
図2】本発明の実施例2に係る、ポンプカップとそれに関連する一部の装置の模式図
【
図3】ハイブリッド車に搭載される主な装置の配置図
【
図4】エンジンと燃料タンクとそれらに関連する一部の装置の模式図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係るエンジンとモータをそれぞれ単独で駆動して走行することが可能なハイブリッド車、すなわち、エンジンに燃料が供給されるエンジン駆動状態でエンジンの駆動力により駆動輪を駆動させるエンジン走行又はエンジンの駆動力により発電機を駆動して発電するエンジン発電を行うエンジン駆動モードと、エンジンへの燃料供給が遮断されるエンジン停止状態でモータにより走行を行う電気モータ走行又は車両の電源が入れられた際に走行準備状態保持を行うエンジン停止モードとの切替えが可能なハイブリッド車に搭載される燃料タンク装置を、実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0034】
本発明の実施例1に係る装置を、
図1、
図3、
図4を用いて説明する。燃料タンク21内にポンプカップ(カップ)1を設置し、ポンプカップ1の中には燃料ポンプ3を有しており、燃料ポンプ3から配管(燃料供給管)10aがエンジン14へ伸びている。配管10aは途中から分岐しており、配管10aから分岐した分岐管10bには、その途中にレギュレータ6がポンプカップ1の方向を向くように設置され、分岐管10bの先端は、1WAYバルブ(一方向弁)5を有するポンプカップ1の燃料吸引口(連通口)1aの付近に、当該口1aに向かい合う方向に配置されており、分岐管10bの先端部分とポンプカップ1の燃料吸引口1aを合わせてフィリングジェットポンプ4という。ちなみに燃料ポンプ3の制御指令を行うコントローラは、時間計測機能を内蔵したECU(燃料ポンプ制御手段)7がその役割を担っている。
【0035】
エンジン14が起動しているとき、すなわち、エンジンの駆動力で駆動輪を作動させるエンジン走行やエンジンの駆動により発電機を発電させるエンジン発電を行うエンジン駆動モードの際には、従来の技術と同様、まず燃料ポンプ3が駆動し、ポンプカップ1内の燃料2の一部を燃料ポンプ3の燃料吸引口3aから吸い上げ、吸い上げられた燃料2は配管10aを通りエンジン14へ移送される。その際、配管10aから分岐した分岐管10bにも燃料2が流れる。燃料2は分岐管10bの途中のレギュレータ6を通過し、分岐管10bの先端から噴出し、当該燃料2と燃料タンク21内の燃料2の一部が、1WAYバルブ5を有するポンプカップ1の燃料吸引口1aを通過し、ポンプカップ1に移送されるという仕組みになっている。即ちフィリングジェットポンプ4により、ポンプカップ1はエンジン14起動時には常に燃料2が充満された状態となる。よって、エンジン14起動による走行中に、燃料2が揺動でポンプカップ1から溢れてしまっても、燃料2が無くなることがない。
【0036】
ここで実施例1に係る装置は、時間計測機能を内蔵したECU7の制御指令により、エンジン14停止状態(エンジン停止モード)、すなわち、モータの駆動力で走行する電気モータ走行や、車両の電源が入れられたときの走行準備状態保持で車両停止しているときにも、一定時間毎に自動的に燃料ポンプ2を駆動させるタイマ機能を有し、燃料2をポンプカップ1に供給することで、ポンプカップ1内の燃料2を維持し、エンジン14始動時に燃料2がポンプカップ1内に無い状態を避けることができる。
【0037】
既に述べたように、エンジン14を停止した状態で、燃料2がエンジン14に流れ込もうとしても、インジェクタ(燃料供給遮断手段)31がそれを防ぐ働きをする。そのためエンジン14の停止中に燃料ポンプ3を駆動させても、エンジン14に燃料2が移送されることはない。その際、配管10a内の圧力が高まってくると、レギュレータ6よりポンプカップ1に燃料2を排出するため、圧力により配管10aが破裂する危険性はない。
【0038】
実施例1に係る装置は、上述のような設定を行うことでポンプカップ1内の燃料維持を可能としている。
【実施例2】
【0039】
本発明の実施例2に係る装置を、
図2を用いて説明する。実施例2に係る装置は、実施例1に係る装置に加速度センサ(加速度検出手段)8が追加されている。加速度センサ8はECU7に電気的に接続されている。ECU7は、加速度センサ8が一定以上の揺動を感知したときに燃料ポンプ3を自動的に駆動する制御指令を行う機能を備えている。その他の構成は前述した実施例1に係る装置と同様であるから説明は省略する。
【0040】
実施例1に係る装置ではエンジン14停止状態での走行中に一定時間毎に燃料2をポンプカップ1内に供給するが、もしスラローム走行などによる大幅な揺動が起きた場合、一度に大量の燃料2がポンプカップ1内から溢れてしまい、一定時間毎に決まった量の燃料2を供給するだけではポンプカップ1内の燃料2が不足してしまうことも考えられる。
【0041】
よって、実施例2に係る装置では、ECU7と電気的に接続された加速度センサ8を設け、加速度センサ8が一定以上の揺動を感知したときに燃料ポンプ3を自動的に駆動する制御指令を行う機能をECU7に備え、ポンプカップ1内に燃料2を供給する。ちなみにECU7の当該動作は上述の時間計測には全く関与しない。そのため、上述の時間計測による一定時間毎のポンプカップ1内への燃料2供給の制御指令は当該動作に関係なく行われる。
【0042】
この設定により、実施例2に係る装置は、大幅な揺動が起きた場合にもポンプカップ1内の燃料2を維持し、より確実にエンジン14始動時に燃料2がポンプカップ1内に無い状態を避けることができる。
【実施例3】
【0043】
本発明の実施例3に係る装置を、
図1を用いて説明する。実施例1に係る装置や実施例2に係る装置では、ポンプカップ1内の燃料不足が、揺動よりポンプカップ1の開口部から燃料2が溢れてしまうことに起因することを前提としているが、ポンプカップ1内の燃料不足の原因は揺動によるものだけではない。停車中であっても、1WAYバルブ5のシールが不完全であれば、そこからポンプカップ1内の燃料2が漏れてしまうため、長時間停車し続けていると同様の問題が起きる可能性がある。
【0044】
よって、実施例3に係る装置は、実施例1に係る装置のECU7に、車体の電源を入れた直後、すなわち、エンジン停止モードで車両の走行準備保持状態に移行する際に、自動的に燃料ポンプ3を駆動する制御指令を行う機能を設け、ポンプカップ1内に燃料2を供給する。
【0045】
この設定により、実施例3に係る装置は、長時間に渡る停車中にポンプカップ1から燃料2が漏れた場合にも、発進時に燃料2をポンプカップ1内に供給することで、エンジン14始動時に燃料2がポンプカップ1内に無い状態を避けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、エンジンとモータをそれぞれ単独で駆動して走行することが可能なハイブリッド車に搭載される燃料タンク装置として好適である。
【符号の説明】
【0047】
1 ポンプカップ(カップ)
1a ポンプカップの燃料吸引口(連通口)
2 燃料
3 燃料ポンプ
3a 燃料ポンプの燃料吸引口
4 フィリングジェットポンプ
5 1WAYバルブ(一方向弁)
6 レギュレータ
7 ECU(燃料ポンプ制御手段)
8 加速度センサ(加速度検出手段)
10a 配管(燃料供給管)
10b 分岐管
11 車体
12 前輪
13 後輪
14 エンジン
15 発電機
16 インバータ
17 フロントモータ
18 リアモータ
19 キャタライザ
20 高圧バッテリ
21 燃料タンク
22 マフラ
23 前部動力伝達装置
24 クラッチ
25 後部動力伝達装置
31 インジェクタ
32 給油用スイッチ
33 給油用センサ
34 給油口用蓋
35 燃料シャットオフバルブ