(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
[1.装置構成]
一実施形態に係る組電池の温度調節装置の構成について、
図1〜
図3を用いて説明する。本温度調節装置は、電気自動車やハイブリッド車等の電動車両に用いて好適であり、ここではハイブリッド車に適用したものを例として説明する。
【0022】
[1−1.全体構成]
図2は本温度調節装置を備えた車両の構成図である。
図2に示すように、車両1は、エンジン(ENG)2の出力軸(回転軸)2aにクラッチ3を介して電動発電機(以下、電動機ともいう)4の回転軸4aが接続され、電動機4の回転軸4aに変速機(T/M)5の入力軸5aが直結されたパラレル式ハイブリッド自動車として構成されている。また、変速機5の出力軸5bは、プロペラシャフト6,図示しないディファレンシャル及びドライブシャフトを介して左右の駆動輪7に接続されている。したがって、クラッチ3が接続されているときには、エンジン2の出力軸2aと電動機4の回転軸4aの双方が駆動輪7と機械的に接続され、クラッチ3が切断されているときには、電動機4の回転軸4aのみが駆動輪7と機械的に接続された状態となる。
【0023】
電動機4は、バッテリ(組電池)10に蓄えられた直流電力がインバータ8によって交流電力に変換されて供給されることにより電動機(モータ)として作動し、その駆動力が変速機5によって適切な速度に変換された後に駆動輪7に伝達される。また、車両減速時には、電動機4が発電機として作動し、駆動輪7の回転による運動エネルギが変速機5を介して電動機4に伝達され、交流電力に変換されることにより回生制動力を発生する。そして、この交流電力はインバータ8によって直流電力に変換された後、バッテリ10に充電され、駆動輪7の回転による運動エネルギが電気エネルギとして回収される。
【0024】
一方、エンジン2の駆動力は、クラッチ3が接続されているときに電動機4の回転軸4aを経由して変速機5に伝達され、適切な速度に変速された後に駆動輪7に伝達される。したがって、エンジン2の駆動力が駆動輪7に伝達されているときに電動機4がモータとして作動する場合には、エンジン2の駆動力と電動機4の駆動力とがそれぞれ駆動輪7に伝達される。すなわち、車両1の駆動のために駆動輪7に伝達されるべき駆動トルクの一部がエンジン2から供給されると共に、残りが電動機4から供給される。
【0025】
また、バッテリ10の充電率が低下してバッテリ10を充電する必要があるときには、電動機4が発電機として作動すると共に、エンジン2の駆動力の一部を用いて電動機4を駆動する。これにより発電が行われ、発電された交流電力がインバータ8によって直流電力に変換された後にバッテリ10に充電される。なお、バッテリ10の近傍には、バッテリ10内を暖房するためのヒータ11が設けられている。
【0026】
また、車両1には、上記の駆動系及び発電系の装置とは別に、車室内の空気の温度を調節するためのエアコン(A/C)9が設けられている。また、車両1にはこれら装置を制御する電子制御装置(以下、ECUという)が設けられている。すなわち、車両1には、エンジン2を制御するエンジンECU(ENG_ECU)12,インバータ8を制御するインバータECU13,エアコン9を制御するエアコンECU(A/C_ECU)14,バッテリ10の管理やヒータ11の制御等を行う車両ECU15がそれぞれ設けられている。車両ECU15は、エンジンECU12,インバータECU13及びエアコンECU14を通じて車両1の統合制御も実施する。各ECU12〜15は、メモリ(ROM,RAM)及びCPU等で構成されるコンピュータである。
なお、エンジンECU12,インバータECU13及びエアコンECU14の各機能については、周知の技術を適用可能であるため、詳細については省略する。
【0027】
[1−2.温度調節装置の構成]
図1は本温度調節装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、車室1a内には、バッテリ10,ヒータ11,車両ECU15及び配管20が設けられ、車室1a外には、エアコンECU14,配管17及び18,配管17内に配置されたエアコンブロア9a及びエアコン側シャッタバルブ9bが設けられる。配管17は車室1a内へ外気を導入する通路となるものであり、配管18は車室1a内の空気を配管17へ循環させる通路となる配管である。エアコン側シャッタバルブ9bはこれら配管17及び18の接続部分に設けられ、エアコンECU14により制御されて空気の流れを切り替える切替弁である。なお、エアコンブロア9a及びエアコン側シャッタバルブ9bの上流側には図示しないコンプレッサやコンデンサ等が設けられており、これらによってエアコン9(
図2参照)が構成される。車室1a内は、このエアコン9により空調される。
【0028】
バッテリ10は、バッテリケース(容器)30内に電池モジュール(電池)31が複数収容された組電池として構成される。ここでは、バッテリケース30の長手方向に四つずつ,短手方向に二つずつ配設され、合計八つの電池モジュール31が収容される。各電池モジュール31は、例えばそのケース内に複数の電池セルが直列に接続されて収容された組電池である。なお、電池モジュールの数はこれに限られない。また、バッテリケース30は、車室1a内(例えば、車両1のトランクルーム内やインパネの内部等)の任意の位置に固定されているものとする。
【0029】
複数の電池モジュール31は、互いに隙間を有してバッテリケース30内に収容されている。これら複数の電池モジュール31は、後述する供給流路21又は循環流路23から供給される空気が各電池モジュール31の周囲を流通することにより冷却又は加温される。これにより、バッテリ10の温度調節が行われる。各電池モジュール31には、それぞれ温度センサ32が設けられており、各電池モジュール31の温度が各温度センサ32によって検出される。検出された各電池モジュール31の温度情報は、車両ECU15へ伝達される。なお、
図1では分かりやすくするために、各電池モジュール31間の隙間は大きく表現されている。また、温度センサ32は二つのみ記載しているが、一つの電池モジュール31に一つの温度センサ32が設けられている。
【0030】
ヒータ11は、例えばPTCヒータ等の加熱器であって、スイッチがオンのときにヒータ11を流通する空気を加熱する。このヒータ11の暖房能力は段階的に変更可能とされており、ここではハイ/ロー(強/弱)の二段階に強さが切り替えられる。すなわち、ヒータ11の強さがハイ(強)のときは、強さがロー(弱)のときに比べて空気をより加熱することができる(言い換えると、空気をより高温にすることができる)。このヒータ11のスイッチのオン/オフ制御(作動制御)や温度切替制御(強さ制御)は、車両ECU15に設けられる後述のヒータ制御部15cにより行われる。なお、スイッチオンの場合の温度切替は二段階より多くてもよい。ヒータ11は、後述するようにバッテリケース30内を暖房する際に用いられる。なお、以下、バッテリケース30内の空間を暖房することを、単に「バッテリ10を暖房する」,「電池モジュール31を暖房する」等とも表現する。
【0031】
配管20は、車室1a内の空気をバッテリケース30内へ供給するための供給流路21と、バッテリケース30内を流通し終えた空気を車室1a外へ排出するための排出流路22と、排出流路22から排出された空気を再びバッテリケース30に戻して循環させるための循環流路23とを有している。
供給流路21は、その上流端が車室1a内の任意の位置で開口して設けられ、下流端がバッテリケース30の長手方向の一端部(ここでは、バッテリケース30の長手方向の一端の角部)に接続される。
【0032】
排出流路22は、その上流端がバッテリケース30の長手方向の他端部(ここでは、バッテリケース30の長手方向の他端の角部であって供給流路21と対向する角部)に接続され、下流端が車室1a外に向かって開口して設けられる。排出流路22の上流側には、供給流路21又は循環流路23からバッテリケース30内へ空気を導き排出流路22から外部へ放出させる(すなわち、バッテリケース30内に空気の流れを形成する)ためのファン25が設けられる。
【0033】
このファン25は段階的な強さ(送風能力)を有するものであり、ここではハイ/ロー(強/弱)の二段階に強さが切り替えられる。すなわち、ファン25の強さがハイのときは、強さがローのときに比べてより多くの空気をバッテリケース30内に導くことができる(言い換えると、空気の流量をより多くすることができる)。このファン25のスイッチのオン/オフ制御(作動制御)や流量切替制御(強さ制御)は、車両ECU15に設けられる後述のファン制御部15bにより制御される。また、排出流路22の下流側には隙間22cが設けられる。この隙間22cにより排出流路22内を流通する空気がわずかに車室1a内に排出され、車室1a内に負圧が生じにくくなる。
【0034】
循環流路23は、その上流端が排出流路22の中間部に接続され、下流端がバッテリケース30の長手方向の一端部(ここでは、供給流路21の接続部に対して短手方向他端側)に接続され、排出流路22を流通する空気を再びバッテリケース30内に流入させる流路である。この循環流路23にはヒータ11が介装され、ヒータ11は循環流路23を流通する空気を加熱する。すなわち、循環流路23は、ヒータ11とバッテリケース30内との間で空気を循環させるものである。
【0035】
排出流路22と循環流路23との接続点には、バッテリケース30内の空気の流通状態を切り替えるシャッタバルブ(流路切替手段)24が設けられる。このシャッタバルブ24は、閉状態のときに排出流路22の上流側と下流側とを連通状態とし、開状態のときに排出流路22の上流側と循環流路23とを連通状態とする。言い換えると、シャッタバルブ24が閉じているときは、空気が供給流路21からバッテリケース30内に導かれ、排出流路22から車室1a外へ放出される。また、シャッタバルブ24が開いているときは、空気が循環流路23からバッテリケース30内に導かれ、排出流路22から循環流路23のヒータ11を通過して再びバッテリケース30内へ流入する。
【0036】
すなわち、シャッタバルブ24は、バッテリケース30内に導かれた空気を排出流路22から外部へ放出する空気の流れと、バッテリケース30内に導かれた空気をヒータ11で加温してから(ヒータ11を通過させてから)バッテリケース30内へ循環させる空気の流れとを切り替えるものである。言い換えると、シャッタバルブ24は、ヒータ11を通過しない空気の流れと、ヒータ11を通過した空気の流れとを切り替える。このシャッタバルブ24の切替制御は、車両ECU15に設けられる後述のシャッタ制御部15dにより行われる。
【0037】
[2.制御構成]
[2−1.制御の概要]
本実施形態の車両ECU15では、おもに四つの制御が実施される。第一の制御は電池を冷却する冷却制御,第二の制御は電池を暖める(加温する)暖房制御,第三の制御は電池の温度を均一化する温度均一化制御,第四の制御は電池の温度を保持する保持制御である。
冷却制御とは、バッテリケース30内へ冷たい空気(冷気)を導くことにより、バッテリケース30内の電池モジュール31を冷却してバッテリ10全体を冷却する制御である。
【0038】
暖房制御とは、バッテリケース30内に加熱された空気(熱気)を流すことにより、バッテリケース30内の電池モジュール31を暖めてバッテリ10全体を暖房する制御である。この暖房制御には、ヒータ11及びファン25の強さを共にハイの状態とする第一暖房制御と、ヒータ11及びファン25の少なくとも一方の強さをローの状態とする第二暖房制御(弱暖房制御)とが含まれる。なお、本実施形態で説明する第二暖房制御は、ヒータ11及びファン25の強さをいずれもローの状態とする。以下、特に第一暖房制御と第二暖房制御とを区別しない場合には、単に暖房制御という。
【0039】
温度均一化制御とは、ヒータ11のスイッチをオフにした状態で、バッテリケース30内とヒータ11との間に空気を循環させることにより、バッテリケース30内の複数の電池モジュール31の温度を均一にさせる制御である。すなわち、バッテリケース30内へは冷気も熱気も流入させずに、電池モジュール31の温度を平準化する制御である。この温度均一化制御には、ファン25の強さがハイの状態の第一温度均一化制御と、ファン25の強さがローの状態の第二温度均一化制御(弱温度均一化制御)とが含まれる。以下、特に第一温度均一化制御と第二温度均一化制御とを区別しない場合には、単に温度均一化制御という。
【0040】
保持制御とは、バッテリケース30内へ空気を流入させずに、バッテリケース30内の電池モジュール31の温度を現状の状態に保持する制御である。
本実施形態の車両ECU15では、複数の電池モジュール31の温度のうち、最も高い最高温度と最も低い最低温度とに基づいて、冷却制御,暖房制御,温度均一化制御及び保持制御のいずれかの制御が実施される。
【0041】
[2−2.制御ブロック構成]
車両ECU15は、上記の四つの制御を実現するために、バッテリ管理部15aとしての機能要素と、ファン制御部15bとしての機能要素と、ヒータ制御部15cとしての機能要素と、シャッタ制御部15dとしての機能要素と、温度制御部15eとしての機能要素とを有している。
【0042】
バッテリ管理部(バッテリマネジメントユニット,BMU)15aは、バッテリ10の温度や電圧、インバータ8とバッテリ10との間に流れる電流等を検出すると共に、これらの検出結果からバッテリ10の充電率を算出し、過充電や過放電とならないようにバッテリ10の状態を監視するものである。ここでは、バッテリ管理部15aは、温度センサ32で検出された全ての電池モジュール31の温度を収集し、これらの温度情報から、全ての電池モジュール31の温度のうち、最も高温な電池モジュール31の温度(以下、最高温度という)T
MAXと最も低温な電池モジュール31の温度(以下、最低温度という)T
MINとを選択して取得する。バッテリ管理部15aで取得された情報は、温度制御部15eへ伝達される。
【0043】
ファン制御部(ファン制御手段)15bは、温度制御部15eの指令に応じて、ファン25のスイッチのオン/オフ(ファン25の作動)とスイッチがオンのときのファン25の強さとを制御するものである。ここでは、ファン25は二段階の強さに切り替えられるものであるため、ファン制御部15bは、ファン25の強さを切り替えることによりバッテリケース30内に導かれる空気の流量を制御する。
【0044】
ヒータ制御部(ヒータ制御手段)15cは、温度制御部15eの指令に応じて、ヒータ11のスイッチのオン/オフ(ヒータ11の作動)とスイッチがオンのときのヒータ11の強さとを制御するものである。ここでは、ヒータ11は二段階の強さに切り替えられるものであるため、ヒータ制御部15cは、ヒータ11の強さを切り替えることによりヒータ11を通過しバッテリケース30内に流れる空気の温度を制御する。
【0045】
シャッタ制御部(流路切替手段)15dは、温度制御部15eの指令に応じて、シャッタバルブ24の開閉を制御する。すなわち、シャッタ制御部15dは、シャッタバルブ24の閉閉制御を実施することにより、供給流路21からバッテリケース30内に空気を導く流路と、循環流路23からバッテリケース30内へ空気を導く流路とを切り替えるものである。
【0046】
温度制御部(温度制御手段)15eは、バッテリ管理部15aから伝達された最高温度T
MAXと最低温度T
MINとに基づいて、バッテリ10の温度を適切な温度に調節するために、上記した四つの制御を実施するものである。以下、
図3(a)に示す最高温度T
MAXと最低温度T
MINと制御内容との関係を示すグラフを参照しながら一つずつ説明する。なお、
図3(a)において、グラフの左下隅部から右上隅部に伸びる対角線上は最高温度T
MAXと最低温度T
MINとが同じ温度を示し、この線上は最高温度T
MAXと最低温度T
MINとの温度差がゼロであり、この対角線よりも右下の領域は存在しない領域である。また、
図3(b)は比較のため従来の温度調節制御の内容を示すものであり、
図3(a)と同じ符号を付した値や領域は、
図3(a)のものと対応する。
【0047】
まず、冷却制御について説明する。温度制御部15eは、最高温度T
MAXが冷却を必要とする温度(以下、この温度を要冷却温度という)T
C以上のときに、最低温度T
MINが暖房を必要とする温度(以下、この温度を要暖房温度という)T
Hよりも高い温度に設定された第一切替温度T
1以上であれば、バッテリ10の冷却が必要であると判断して冷却制御を実施する。これは、
図3(a)中のAの領域に対応する。すなわち、冷却制御の実施条件は、以下の(1)である。
(1)T
MAX≧T
C且つT
MIN≧T
1
【0048】
なお、要冷却温度T
Cはバッテリ10の冷却を行うか否かを判定するための閾値であり、要暖房温度T
Hは、バッテリ10の暖房を行うか否かを判定するための閾値である。これら要冷却温度T
C及び要暖房温度T
Hは、使用される電池モジュール31に応じて予め設定されるものであり、例えば要冷却温度T
C=30℃,要暖房温度T
H=10℃に設定される。なお、これらの値は一例である。
【0049】
温度制御部15eは、上記の条件(1)が成立した場合(冷却制御を実施する必要がある場合)は、ファン制御部15bに対してファン25のスイッチをオンにしてその強さをハイにするように指令を出す。また、ヒータ制御部15cに対してヒータ11のスイッチをオフにして作動を停止させるように指令を出す。さらに、シャッタ制御部15dに対してシャッタバルブ24を閉じるように指令を出す。これらの指令により、温度制御部15eは、バッテリケース30内の電池モジュール31に対して車室1a内の冷えた空気を供給し、バッテリ10の冷却を実施する。
【0050】
次に、暖房制御について説明する。温度制御部15eは、最低温度T
MINが要暖房温度T
H未満のときに、最高温度T
MAXが要冷却温度T
Cよりも低い温度に設定された第二切替温度T
2未満であれば、バッテリ10の暖房が必要であると判断して暖房制御を実施する。これは、
図3(a)中のB及びCの領域に対応する。すなわち、暖房制御の実施条件は、以下の(2)である。
(2)T
MAX<T
2且つT
MIN<T
H
【0051】
温度制御部15eは、上記の条件(2)が成立した場合(暖房制御を実施する必要がある場合)は、ファン制御部15bに対してファン25のスイッチをオンにするように指令を出し、ヒータ制御部15cに対してヒータ11のスイッチをオンにするように指令を出す。また、シャッタ制御部15dに対してシャッタバルブ24を開けるように指令を出す。これらの指令により、温度制御部15eは、バッテリケース30内の電池モジュール31に対してヒータ11により加熱された空気を供給し、バッテリ10の暖房を実施する。
【0052】
このとき、温度制御部15eは、バッテリケース30から放出された空気を再びヒータ11に通過させて加熱し、加熱された空気をバッテリケース30内へ供給することを繰り返す。言い換えると、排出流路22から循環流路23へ空気を流通させることにより、バッテリケース30内とヒータ11との間にヒータ11によって加熱された空気を循環させる。これにより効率的にバッテリ10を暖房する。
【0053】
なお、暖房制御には、上記したように第一暖房制御と第二暖房制御とが含まれる。これらのうち、第一暖房制御は、電池モジュール31をより強く暖房する必要がある場合に実施される制御のことであり、バッテリ10の温度が全体的に低いときに実施される。これに対して、第二暖房制御は、第一暖房制御に比べて緩やかに電池モジュール31を暖房する場合に実施される制御のことであり、バッテリ10の温度が全体的に低いが第一暖房制御を実施するときよりも高い温度のときに実施される。
【0054】
温度制御部15eは、最高温度T
MAXが第二切替温度T
2よりも低い温度に設定された第三切替温度T
3未満のときに、最低温度T
MINが要暖房温度T
Hよりも低い温度に設定された第四切替温度T
4未満であれば、バッテリ10の暖房の強化が必要であると判断して第一暖房制御を実施する。これは、
図3(a)中のBの領域に対応する。すなわち、第一暖房制御の実施条件は、以下の(3)である。
(3)T
MAX<T
3且つT
MIN<T
4
【0055】
また、温度制御部15eは、最高温度T
MAXが第二切替温度T
2未満且つ第三切替温度T
3以上であって最低温度T
MINが要暖房温度T
H未満の場合、又は、最低温度T
MINが要暖房温度T
H未満且つ第四切替温度T
4以上であって最高温度T
MAXが第三切替温度T
3未満の場合に、バッテリ10の暖房が必要であると判断して第二暖房制御を実施する。これは、
図3(a)中のCの領域に対応する。すなわち、第二暖房制御の実施条件は、以下の(4)又は(5)である。
(4)T
3≦T
MAX<T
2且つT
MIN<T
H
(5)T
MAX<T
3且つT
4≦T
MIN<T
H
なお、上記の第一暖房制御の実施条件(3)と第二暖房制御の実施条件(4)及び(5)とを組み合わせると、上記した暖房制御の実施条件(2)となる。
【0056】
温度制御部15eは、上記の第一暖房制御の実施条件(3)が成立した場合は、ファン制御部15b及びヒータ制御部15cに対して、ヒータ11及びファン25の強さをいずれもハイとするように指令を出し、第一暖房制御を実施する。一方、温度制御部15eは、上記の第二暖房制御の実施条件(4)又は(5)が成立した場合は、ファン制御部15b及びヒータ制御部15cに対して、ヒータ11及びファン25の強さをいずれもローとするように指令を出し、第二暖房制御を実施する。
【0057】
次に、温度均一化制御について説明する。温度制御部15eは、最高温度T
MAXと最低温度T
MINとの温度差ΔTを算出し、この温度差ΔTが所定の第一切替温度差ΔT
1以上であれば、複数の電池モジュール31の温度を均一にするための温度均一化制御を実施する。この温度均一化制御は、外部から熱量を加えたり積極的に取り除いたりするのではなく、バッテリケース30内に空気を導いて混合し、複数の電池モジュール31がそれぞれ有する熱量を均一化するものである。
【0058】
このため、温度制御部15eは、温度均一化制御を実施するときは、ファン制御部15bに対してスイッチをオンにするように指令を出し、ヒータ制御部15cに対してヒータ11のスイッチをオフにするように指令を出す。また、シャッタ制御部15dに対してシャッタバルブ24を開けるように指令を出し、バッテリケース30内とヒータ11との間に空気を循環させる(言い換えると、供給流路21から外部の空気を取り入れない)。
【0059】
温度均一化制御の実施条件は、以下の(6)である。
(6)ΔT≧ΔT
1 なお、ΔT=T
MAX−T
MIN
ただし、この条件(6)が成立する場合であっても、上記した冷却条件(1)又は暖房条件(2)が成立する場合には、温度制御部15eは冷却制御及び暖房制御を優先して実施する。言い換えると、温度均一化制御は、最高温度T
MAXと最低温度T
MINとの温度差ΔTが第一切替温度差ΔT
1以上であって、冷却制御及び暖房制御が不要な場合に実施されるものである。これは、
図3(a)中のD及びEの領域に対応する。すなわち、温度均一化制御の実施条件は、上記の条件(6)を加えた以下の(7)である。
(7)ΔT≧ΔT
1であって、T
MAX<T
C且つT
MIN≧T
H
【0060】
また、上記の条件(7)を満たさない場合(すなわち、T
MAX≧T
CやT
MIN<T
Hのとき)であっても、以下の条件(8)又は(9)を満たす場合には、温度均一化制御が実施される。言い換えると、条件(6)を加えた条件(8)又は条件(6)を加えた条件(9)も、それぞれ温度均一化制御の実施条件である。
(8)ΔT≧ΔT
1であって、T
MAX≧T
C且つT
MIN<T
1
(9)ΔT≧ΔT
1であって、T
MAX≧T
2且つT
MIN<T
H
【0061】
なお、温度均一化制御には、上記したように第一温度均一化制御と第二温度均一化制御とが含まれる。これらのうち、第一温度均一化制御は、電池モジュール31の最高温度T
MAXと最低温度T
MINとの温度差ΔTをより素早く均一にさせる場合に実施される制御のことであり、温度差ΔTが大きいときに実施される。これに対して、第二温度均一化制御は、第一温度均一化制御に比べて緩やかに温度差ΔTを解消する場合に実施される制御のことであり、温度差ΔTが小さいときに実施される。
【0062】
温度制御部15eは、最高温度T
MAXと最低温度T
MINとの温度差ΔTが、第一切替温度差ΔT
1よりも大きい温度差に設定された第二切替温度差ΔT
2以上のときに、より素早く電池モジュール31間の温度差を解消する必要があると判断し、第一温度均一化制御を実施する。これは、
図3(a)中のDの領域に対応する。すなわち、第一温度均一化制御の実施条件は、上記の(7)〜(9)のいずれかの条件に加え、以下の条件(10)である。
(10)ΔT≧ΔT
2
【0063】
また、温度制御部15eは、温度差ΔTが第一切替温度差ΔT
1以上且つ第二切替温度差ΔT
2未満のときに、第二温度均一化制御を実施する。これは、
図3(a)中のEの領域に対応する。すなわち、第二温度均一化制御の実施条件は、上記の(7)〜(9)のいずれかの条件に加え、以下の条件(11)である。
(11)ΔT
1≦ΔT<ΔT
2
【0064】
温度制御部15eは、温度均一化制御を実施する場合に、上記の(7)〜(9)のいずれかの条件に加え、上記の条件(10)が成立した場合は、ファン制御部15bに対してファン25の強さをハイとするように指令を出し、第一温度均一化制御を実施する。一方、温度制御部15eは、上記の(7)〜(9)のいずれかの条件に加え、上記の条件(11)が成立した場合は、ファン制御部15bに対してファン25の強さをローとするように指令を出し、第二温度均一化制御を実施する。
【0065】
最後に、保持制御について説明する。温度制御部15eは、最高温度T
MAXと最低温度T
MINとの温度差ΔTが第一切替温度差ΔT
1未満であって、最高温度T
MAXが要冷却温度T
C未満且つ最低温度T
MINが要暖房温度T
H以上のときに、バッテリ10の暖房も冷却も不要であると判断して保持制御を実施する。すなわち、保持制御の実施条件は、以下の(12)である。
(12)ΔT<ΔT
1であって、T
MAX<T
C且つT
MIN≧T
H
【0066】
温度制御部15eは、上記の条件(12)が成立した場合は、ファン制御部15b及びヒータ制御部15cに対して、ファン25及びヒータ11のスイッチをオフにするようにそれぞれ指令を出す。そして、シャッタ制御部15dに対して、シャッタバルブ24を直前の状態に保持する(すなわち、現状を維持する)ように指令を出す。これらの指令により、温度制御部15eは、バッテリケース30内の電池モジュール31に対して空気を導くことを停止し、バッテリ10の現状を保持する。
【0067】
以上の温度制御部15eによる制御内容をまとめると、以下の表1のようになる。なお、表1中の領域は、
図3(a)のグラフ中の領域と対応する。
【0069】
なお、いずれの制御を実施するか否かを判定するときに用いる判定閾値としての第一切替温度T
1,第二切替温度T
2,第三切替温度T
3及び第四切替温度T
4は、バッテリ10の種類(性質)やバッテリ出力、車両1の種類や要求(例えば、車両1の重量や電動機4の性能等)が変化すれば変化するものである。このため、例えば
図3(a)に示すようなマップにおいて、これらの判定閾値をパラメータ化しておき、上記したようなバッテリ10の出力や車両1の要求等に応じて適宜設定できるようにしてもよい。また、バッテリ10の種類や車両1の種類に応じて、予め設定しておいてもよい。
また、判定閾値としての第一切替温度差ΔT
1及び第二切替温度差ΔT
2は、要冷却温度T
Cと要暖房温度T
Hとの差よりも小さい値に予め設定される。例えば、第一切替温度差ΔT
1=5℃,第二切替温度差ΔT
2=10℃として設定される。なお、これらの値は一例である。
【0070】
[3.作用]
本実施形態に係る温度調節装置は上述のように構成されているので、バッテリ10の温度調節は、例えば以下のように行われる。
車両1のイグニッションスイッチがオンにされると、温度センサ32は各電池モジュール31の温度を検出し、この温度情報が車両ECU15へ伝達される。車両ECU15のバッテリ管理部15aは、この温度情報から最高温度T
MAXと最低温度T
MINとを選択して取得する。バッテリ管理部15aは、取得した最高温度T
MAXと最低温度T
MINとを温度制御部15eへ伝達する。車両ECU15の温度制御部15eは、これらの温度情報からバッテリ10の冷却制御が必要か、暖房制御が必要か、温度均一化制御が必要か、或いは保持制御が必要かを判断して温度調節制御を実施する。
【0071】
例えば、車両1の始動時においてバッテリ10が低温の場合(複数の電池モジュール31の最高温度T
MAXが第三切替温度T
3未満且つ最低温度T
MINが第四切替温度T
4未満のとき)、温度制御部15eは、まず第一暖房制御を実施する。これにより、バッテリケース30内には循環流路23からヒータ11で加熱された空気が流れ込み、循環流路23の接続部分の近く(すなわち、空気の流れの上流側)に配置された電池モジュール31は徐々に温度上昇する。これに対して、排出流路22の接続部分の近く(すなわち、空気の流れの下流側)に配置された電池モジュール31は、上流側の電池モジュール31の周囲を流通して温度が低下した空気が流れてくるため、温度上昇しにくい。
【0072】
言い換えると、上流側に配置された電池モジュール31は温度上昇しやすいため最も温度が高くなり(最高温度T
MAXになり)、下流側に配置された電池モジュール31は温度上昇しにくいため最も温度が低くなる(最低温度T
MINとなる)。このため、第一暖房制御を実施し続けると、最高温度T
MAXはますます上昇するのに対し最低温度T
MINはなかなか上昇せず、上流側と下流側とに配置された電池モジュール31間において温度差が生じる。この温度差は、第一暖房制御を実施している間に拡大していく。この現象を表したのが
図3(a)中の領域B内の右上向矢印である。
【0073】
図3(a)及び(b)に示す矢印は、それぞれの領域で対応する温度調節制御を実施した場合における、複数の電池モジュール31の最高温度T
MAXと最低温度T
MINとの変化傾向を表したものである。言い換えると、この矢印が指す方向の傾き(勾配)は、最高温度T
MAXと最低温度T
MINとの温度差がゼロを示す対角線に対して大きくなるほど、最高温度T
MAXと最低温度T
MINとの温度差ΔTが大きくなることを意味する。
【0074】
例えば、上記した領域Bの右上向矢印は、最高温度T
MAXの変化率(上昇率)が最低温度T
MINの変化率(上昇率)に対して大きく、温度差ΔTが拡大していくことを示す。また、第二暖房制御が実施される領域Cでは、右上向矢印の傾きが第一暖房制御が実施される領域Bの矢印よりも小さくなる。これは、第二暖房制御が第一暖房制御に比べて緩やかな暖房制御であるため、最高温度T
MAXの変化率(上昇率)は領域Bよりも小さくなり、最低温度T
MINの変化率(上昇率)は領域Bよりわずかに小さくなるかほとんど変化しないため、温度差ΔTの変化(温度差ΔTの拡大率,すなわち、矢印が指す方向の傾き)が小さくなるからである。
【0075】
なお、バッテリケース30内の温度の状態は、最高温度T
MAXの値と最低温度T
MINの値とで規定される座標を持つ
図3(a)のグラフ上の点(状態点)として表現することができる。状態点は、温度調節制御が進行するに連れて、その点が存在する領域の矢印方向に移動することになる。状態点の移動速度は、矢印の長さに対応する速度となる。
【0076】
車両1の始動時においてバッテリ10が低温のときに第一暖房制御が実施されると、電池モジュール31が徐々に温度上昇し、少なくとも最高温度T
MAXが第三切替温度T
3以上になるか、最低温度T
MINが第四切替温度T
4以上になったら、温度制御部15eはヒータ11及びファン25の強さがローに切り替えて第二暖房制御を実施する。温度制御部15eは、随時バッテリ管理部15aから最高温度T
MAX及び最低温度T
MINの情報を取得し、これらの温度情報に基づいて、上記した温度均一化制御の実施条件(7)〜(9)や保持制御の実施条件(12)が成立したか否かを判断し、成立するまで第二暖房制御を実施し、成立したら(すなわち、領域D,E,Fとなったら)その領域に対応した制御を実施する。
【0077】
また、例えば車両1が走行中にバッテリ10が高温となった場合(複数の電池モジュール31の最高温度T
MAXが要冷却温度T
C以上且つ最低温度T
MINが第一切替温度T
1以上のとき)、温度制御部15eは冷却制御を実施する。これにより、バッテリケース30内には供給流路21から外部の空気(すなわち、ヒータ11を通過しない空気)が導かれ、供給流路21の接続部分の近く(すなわち、空気の流れの上流側)に配置された電池モジュール31は徐々に温度低下する。これに対して、排出流路22の接続部分の近く(すなわち、空気の流れの下流側)に配置された電池モジュール31は、上流側の電池モジュール31の周囲を流通して温度が上昇した空気が流れてくるため、温度低下しにくい。
【0078】
言い換えると、上流側に配置された電池モジュール31は温度低下しやすいため最も温度が低くなり(最低温度T
MINとなり)、下流側に配置された電池モジュール31は温度低下しにくいため最も温度が高くなる(最高温度T
MAXとなる)。このため、冷却制御を実施し続けると、最低温度T
MINはますます低下するのに対し最高温度T
MAXはなかなか低下せず、冷却制御においても上流側と下流側とに配置された電池モジュール31間において温度差が生じる。この温度差は、冷却制御を実施している間に拡大していく。この現象を表したのが
図3(a)中の領域A内の左下向矢印である。
【0079】
つまり、バッテリ10が高温になった場合に冷却制御が実施されると、電池モジュール31が徐々に温度低下し、最低温度T
MINが第一切替温度T
1未満になるか最高温度T
MAXが要冷却温度T
C未満になったら、温度制御部15eは、最高温度T
MAX及び最低温度T
MINの情報に基づいて、上記した温度均一化制御の実施条件(7)〜(9)や保持制御の実施条件(12)が成立したか否かを判断し、成立するまで冷却制御を実施し、成立したら(すなわち、領域D,E,Fとなったら)その領域に対応した制御を実施する。
【0080】
また、温度制御部15eは、上記した温度均一化制御の実施条件(7)〜(9)のいずれかが成立した場合は温度均一化制御を実施する。温度均一化制御では、ファン25のみがハイ又はローの強さで作動され、バッテリケース30内には循環流路23からヒータ11で加熱されない空気が流れ込むため、この空気の流れを利用して温度の高い電池モジュール31から温度の低い電池モジュール31へ熱量が移動する(すなわち、熱が伝達される)。
言い換えると、温度均一化制御が実施されると、空気の流れによる熱伝導(対流)によって最高温度T
MAXは低下し最低温度T
MINは上昇するため、温度差ΔTは小さくなる。この現象を表したのが
図3(a)中の領域D及びE内の右下向矢印である。なお、ここでは、温度の高い電池モジュール31から温度の低い電池モジュール31へ熱量が移動する際に熱損失はないものと考え(すなわち、温度の和は一定であると考え)、矢印の傾きは対角線に対して垂直となっている。
【0081】
また、温度制御部15eは、上記した保持制御の実施条件(12)が成立した場合は保持制御を実施する。保持制御では、ファン25の作動を停止させるため、バッテリケース30内には空気は導かれない。そのため、保持制御の領域Fでは温度差ΔTを積極的に変化させない。なお、領域Fは、バッテリ10が使用される温度として最も適している領域である。言い換えると、温度制御部15eは、電池モジュール31の最高温度T
MAX及び最低温度T
MINがこの領域Fに収まるように温度調節制御を実施する。
【0082】
[4.フローチャート]
次に、
図4を用いて車両ECU15で実施される温度調節制御の手順の例を説明する。このフローチャートは、所定の周期(例えば、数ms周期)で動作する。また、下記の各ステップは、コンピュータのハードウェアに割り当てられた各機能(手段)が、ソフトウェア(コンピュータプログラム)によって動作することによって実施される。
ドライバによる車両1のイグニッションスイッチのオン操作が行われてエンジン2が始動すると、本温度調節装置は以下の制御フローをスタートする。
【0083】
図4に示すように、ステップS10において、複数の温度センサ32によって各電池モジュール31の温度情報が取得される。次いでステップS20において、取得した温度情報から最高温度T
MAXと最低温度T
MINとが選択される。以下のステップS30〜ステップS130は、温度制御部15eによって判定されるステップであり、車両ECU15によっていずれの制御を実施するかが判定される。また、以下のステップS140〜ステップS190は、車両ECU15によって実施される制御ステップであり、A〜Fは
図3(a)の領域A〜Fに対応し、それぞれの領域の制御が実施されることを意味する。
【0084】
まずステップS30において、最高温度T
MAXと最低温度T
MINとの温度差ΔTが第一切替温度差ΔT
1以上か否かが判定される。この判定は上記の条件(6)に対応する。温度差ΔTが第一切替温度差ΔT
1以上のときは、YESルートからステップS40へ進み、最高温度T
MAXが要冷却温度T
C未満であるか否かが判定される。最高温度T
MAXが要冷却温度T
C未満のときは、YESルートからステップS50へ進み、最低温度T
MINが要暖房温度T
H以上であるか否かが判定される。最低温度T
MINが要暖房温度T
H以上のときは、YESルートからステップS60へ進み、温度差ΔTが第二切替温度差ΔT
2以上であるか否かが判定される。
【0085】
ステップS60において温度差ΔTが第二切替温度差ΔT
2以上であると判定されると、YESルートからステップS140へ進み、第一温度均一化制御(領域D)が実施される。一方、ステップS60において温度差ΔTが第二切替温度差ΔT
2以上ではない(すなわち、温度差ΔTが第二切替温度差ΔT
2未満である)と判定されると、NOルートからステップS150へ進み、第二温度均一化制御(領域E)が実施される。すなわち、ステップS30でYES,ステップS40でYES及びステップS50でYESの場合は、上記の条件(7)を満たす。また、ステップS60でYESの場合は上記の条件(10)を満たし、ステップS60でNOの場合は上記の条件(11)を満たす。
【0086】
また、ステップS40において最高温度T
MAXが要冷却温度T
C未満ではないと判定されると、NOルートからステップS70へ進み、最低温度T
MINが第一切替温度T
1未満であるか否かが判定される。最低温度T
MINが第一切替温度T
1未満のときは、YESルートからステップS140へ進み、第一温度均一化制御(領域D)が実施される。すなわち、ステップS30でYES,ステップS40でNO及びステップS70でYESの場合は、上記の条件(8)を満たす。
【0087】
また、ステップS50において最低温度T
MINが要暖房温度T
H以上ではないと判定されると、NOルートからステップS80へ進み、最高温度T
MAXが第二切替温度T
2以上であるか否かが判定される。最高温度T
MAXが第二切替温度T
2以上のとき合は、YESルートからステップS140へ進み、第一温度均一化制御(領域D)が実施される。すなわち、ステップS30でYES,ステップS40でYES,ステップS50でNO及びステップS80でYESの場合は、上記の条件(9)を満たす。
【0088】
一方、ステップS70において最低温度T
MINが第一切替温度T
1未満ではないと判定されると、NOルートからステップS160へ進み、冷却制御(領域A)が実施される。すなわち、ステップS40でNO及びステップS70でNOの場合は、上記の条件(1)を満たす。また、ステップS80において最高温度T
MAXが第二切替温度T
2以上ではないと判定されると、NOルートからステップS90へ進み、最高温度T
MAXが第三切替温度T
3未満であるか否かが判定される。すなわち、ステップS50でNO及びステップS80でNOの場合は、上記の条件(2)を満たす。
【0089】
ステップS90において最高温度T
MAXが第三切替温度T
3未満であると判定されると、YESルートからステップS100へ進み、最低温度T
MINが第四切替温度T
4未満か否かが判定される。最低温度T
MINが第四切替温度T
4未満のときは、YESルートからステップS170へ進み、第一暖房制御(領域B)が実施される。すなわち、ステップS90でYES及びステップS100でYESの場合は、上記の条件(3)を満たす。
【0090】
一方、ステップS90において最高温度T
MAXが第三切替温度T
3未満ではないと判定された場合、及び、ステップS100において、最低温度T
MINが第四切替温度T
4未満ではないと判定された場合は、いずれもNOルートからステップS180へ進み、第二暖房制御(領域C)が実施される。すなわち、ステップS50でNO,ステップS80でYES及びステップS90でNOの場合は、上記の条件(4)を満たし、ステップS50でNO,ステップS90でYES及びステップS100でNOの場合は、上記の条件(5)を満たす。
【0091】
また、ステップS30において温度差ΔTが第一切替温度差ΔT
1以上ではないと判定されると、NOルートからステップS110へ進み、最高温度T
MAXが要冷却温度T
C未満であるか否かが判定される。最高温度T
MAXが要冷却温度T
C未満のときは、YESルートからステップS120へ進み、最低温度T
MINが要暖房温度T
H以上であるか否かが判定される。最低温度T
MINが要暖房温度T
H以上のときは、YESルートからステップS190へ進み、保持制御(領域F)が実施される。すなわち、ステップS30でNO,ステップS110でYES及びステップS120でYESの場合は、上記の条件(12)を満たす。
【0092】
一方、ステップS120において最低温度T
MINが要暖房温度T
H以上ではないと判定されると、NOルートからステップS130へ進み、最低温度T
MINが第四切替温度T
4未満であるか否かが判定される。最低温度T
MINが第四切替温度T
4未満である場合は、YESルートからステップS170へ進み、第一暖房制御(領域B)が実施される。また、最低温度T
MINが第四切替温度T
4未満ではない場合は、NOルートからステップS180へ進み、第二暖房制御(領域C)が実施される。すなわち、ここではステップS30でNO及びステップS120でNOの場合は、最高温度T
MAXが第二切替温度T
2未満となるため、上記の条件(2)を満たし、ステップS130の判定結果によって上記の条件(3)又は(5)を満たす。
【0093】
一方、ステップS110において最高温度T
MAXが要冷却温度T
C未満ではないときは、NOルートからステップS160へ進み、冷却制御(領域A)が実施される。すなわち、ここではステップS30でNO及びステップS110でNOの場合は、最低温度T
MINが第一切替温度T
1以上となるため、上記の条件(1)を満たす。
【0094】
以上のステップS140〜ステップS190の制御が実施されると、ステップS200へ進み、イグニッションスイッチがオフであるか否かが判定され、オンの場合はNOルートへ進んでリターンし、ステップS10から再び制御フローが実施される。また、イグニッションスイッチがオフの場合は、制御フローを終了する。
【0095】
[5.効果]
したがって、本温度調節装置によれば、複数の電池モジュール31を有するバッテリ10において、複数の温度センサ32により検出した温度のうち最高温度T
MAXと最低温度T
MINとを取得し、この最高温度T
MAXと最低温度T
MINとの温度差ΔTが所定の第一切替温度差ΔT
1以上であるときに温度均一化制御が実施される。この温度均一化制御は、ヒータ11の作動を停止させた状態でバッテリケース30内とヒータ11との間を空気が循環するようにシャッタバルブ24とファン25とを制御するものであるため、電池モジュール31に対して外部から熱量を加えたり取り除いたりすることなく(すなわち、暖房したり冷却したりすることなく)、複数の電池モジュール31間の温度差を解消することができる。
【0096】
すなわち、複数の電池モジュール31間の温度差ΔTが第一切替温度差ΔT
1以上のときに、冷却制御や暖房制御ではなく温度均一化制御を実施するため、冷却制御と暖房制御とが繰り返されるようなことがなく(言い換えると、ハンチングの発生を抑制して)、確実に温度差ΔTを解消することができる。
【0097】
また、
図3(b)に示すように、これまでは、複数の電池モジュール31の最高温度T
MAXが冷却を必要とする温度である要冷却温度T
C以上のときは冷却制御が実施されていた(領域A)。この冷却制御は、バッテリケースの外部から内部の電池に対して冷たい空気を送ってバッテリを冷却するものであるため、空気の流れの上流側に配置される電池はよく冷却されて温度低下しやすいのに対し、下流側に配置される電池は上流側において温度上昇した空気が流れてくるので冷却されにくく温度低下しにくい。そのため、冷却制御が実施される
図3(b)の領域Aでは、最低温度T
MINの低下率に対して最高温度T
MAXの低下率が小さく、矢印で示すように最高温度T
MAXと最低温度T
MINとの温度差がどんどん拡大してしまっていた。
【0098】
これに対して、本温度調節装置では、最高温度T
MAXが要冷却温度T
C以上であっても、最低温度T
MINが第一切替温度T
1よりも低ければ、冷却制御ではなく温度均一化制御を実施する(
図3(a)の領域D)。これにより、最高温度T
MAXの電池モジュール31等の温度の高い電池モジュール31の有する熱量を、最低温度T
MINの電池モジュール31等の温度の低い電池モジュール31へ移動させることができる。すなわち、温度の高い電池モジュール31の温度を低下させながら、温度の低い電池モジュール31の温度を上昇させることができ、複数の電池モジュール31間の温度差が拡大することを防いで徐々に電池間の温度差を解消することができる。
【0099】
また、
図3(b)に示すように、これまでは、複数の電池モジュール31の最低温度T
MINが要暖房温度T
H未満であって最高温度T
MAXが要冷却温度T
C未満の場合は暖房制御が実施されていた(領域B)。この暖房制御は、バッテリケースの外部から内部の電池に対して熱い空気を送ってバッテリを暖房するものであるため、空気の流れの上流側に配置される電池はよく暖房されて温度上昇しやすいのに対し、下流側に配置される電池は上流側において温度低下した空気が流れてくるので暖房されにくく温度上昇しにくい。そのため、暖房制御が実施される
図3(b)の領域Bでは、最高温度T
MAXの上昇率に対して最低温度T
MINの上昇率が小さく、矢印で示すように最高温度T
MAXと最低温度T
MINとの温度差がどんどん拡大してしまっていた。
【0100】
これに対して、本温度調節装置では、最低温度T
MINが要暖房温度T
H未満であっても、最高温度T
MAXが要冷却温度T
Cよりも低い第二切替温度T
2よりも低ければ、暖房制御ではなく温度均一化制御を実施する(
図3(a)の領域D)。これにより、最高温度T
MAXの電池モジュール31等の温度の高い電池モジュール31の有する熱量を、最低温度T
MINの電池モジュール31等の温度の低い電池モジュール31へ移動させることができる。すなわち、温度の高い電池モジュール31の温度を低下させながら、温度の低い電池モジュール31の温度を上昇させることができ、複数の電池モジュール31間の温度差が拡大することを防いで徐々に電池間の温度差を解消することができる。
【0101】
さらに、
図3(b)に示すように、これまでは、最低温度T
MINが要暖房温度T
H未満のときは、最高温度T
MAXが要冷却温度T
C以上か否かによって冷却制御と暖房制御とが切り替えられて実施されていた。そのため、この温度範囲において、冷却制御と暖房制御とが繰り返し実施される(すなわち、ハンチングが生じ易い)という課題があった。
これに対して、本温度調節装置は、冷却制御と暖房制御との間に温度均一化制御を実施するため(言い換えると、冷却制御と暖房制御とが切り替わる温度条件を設定しないため)、冷却制御と暖房制御との切替が頻繁に生じることがなく、ハンチングを抑制することができる。
【0102】
また、この温度均一化制御を実施するときに、温度差ΔTが第二切替温度差ΔT
2未満のときはファン25の強さを弱くして空気の流量を減少させるため(言い換えると、温度差ΔTが第二切替温度差ΔT
2になるまではファン25の強さが強く、第二切替温度差ΔT
2未満になったらファン25の強さを弱めるため)、電池モジュール31間の温度差ΔTが小さくなってきたら徐々に温度を均一化することができる。
【0103】
また、最低温度T
MINが要暖房温度T
H未満のときに暖房制御を実施するため、バッテリ10の入出力性能の低下や電費の悪化を抑制することができる。
また、この暖房制御を実施するときに、最高温度T
MAXが第二切替温度T
2未満且つ第三切替温度T
3以上の場合、又は、最低温度T
MINが要暖房温度T
H未満且つ第四切替温度T
4以上の場合に、ヒータ11の強さを弱めて第二暖房制御(弱暖房制御)を実施するため、電池モジュール31の温度が全体的に高くなってきたら緩やかな暖房制御を実施することによりソフトランディング制御をすることができる。
【0104】
同様に、この暖房制御を実施するときに、最高温度T
MAXが第二切替温度T
2未満且つ第三切替温度T
3以上の場合、又は、最低温度T
MINが要暖房温度T
H未満且つ第四切替温度T
4以上の場合に、ファン25の強さを弱めて第二暖房制御(弱暖房制御)を実施するため、電池モジュール31の温度が全体的に高くなってきたら緩やかな暖房制御を実施することによりソフトランディング制御をすることができる。
【0105】
また、温度差ΔTが第一切替温度差ΔT
1未満であって最高温度T
MAXが要冷却温度T
C未満且つ最低温度T
MINが要暖房温度T
H以上のときに、この状態を保持する保持制御を実施するため、バッテリ10の状態を最も適した状態(すなわち、入出力性能や電費,バッテリの耐久性等にとって最適な状態)にすることができる。
【0106】
[6.その他]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0107】
例えば、上記実施形態では、第二暖房制御を実施する場合にファン25及びヒータ11の強さを共にローとしたが、第二暖房制御はこれに限られず、ファン25及びヒータ11のいずれか一方の強さのみローとしてもよい。例えばファン25の強さがハイでヒータ11の強さがローの場合の第二暖房制御では、循環流路23から流入する空気の温度を第一暖房制御よりも低くすることができるため、上流側の電池モジュール31の温度上昇を第一暖房制御よりも緩やかにすることができ、第一暖房制御よりも緩やかな暖房制御とすることができる。また、ファン25の強さがローでヒータ11の強さがハイの場合の第二暖房制御では、循環流路23から流入する空気の流量を第一暖房制御よりも小さくすることができるため、この場合も上流側の電池モジュール31の温度上昇を第一暖房制御よりも緩やかにすることができ、第一暖房制御よりも緩やかな暖房制御とすることができる。
【0108】
また、ファン25及びヒータ11の強さが多段階であれば、弱暖房制御や弱温度均一化制御を実施することができるが、これらの強さの切り替えができないものであっても暖房制御及び温度均一化制御は実施可能であるため、ファン25及びヒータ11がオンオフ制御のみ実施可能なものであってもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、流路切替手段を排出流路22と循環流路23との接続部に設けたシャッタバルブ24としたが、流路切替手段はこれに限られない。例えば、供給流路21と、ヒータ11の下流側の循環流路23とにそれぞれシャッタバルブを設け、これらを切り替えることによりバッテリケース30内に導かれた空気を外部へ放出する空気の流れと循環流路23を循環させる空気の流れとを切り替えるように構成してもよい。
【0110】
また、ファン25の配置も排出流路22に限られず、バッテリケース30内に空気を導くことができる配置であればよい(すなわち、バッテリケース30内に空気の流れを形成できればよい)。
また、上記実施形態では、
図3(a)のマップに示すような温度条件で温度領域を区分して制御内容を切り替えているが、領域の区分はこれに限られるものではなく、それぞれの温度条件を変化させることによって変化させてもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、バッテリ10は、バッテリケース30内に複数の電池モジュール31が収容された組電池として構成されているが、組電池は容器内に複数の電池セルを収容した電池モジュールとして構成してもよく、また、収容される電池セルや電池モジュールの数は任意に選択可能である。
また、バッテリ10は車室1a内に設けられていなくてもよく、例えば車体下等の車室1a外に設けられていてもよい。この場合は、外気を取り入れてバッテリ10を冷却することになる。また、ヒータ11や車両ECU15も車室1a内に設けられていなくてもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、パラレル式のハイブリッド車に搭載されたバッテリ10を例として説明したが、車両1はハイブリッド車に限られず、電気自動車等の電動車両であればよい。また、バッテリ10は車両に搭載されたものでなくてもよい。