特許第5673472号(P5673472)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5673472
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】アレーアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/44 20060101AFI20150129BHJP
   H01Q 19/32 20060101ALI20150129BHJP
   H01Q 15/10 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   H01Q3/44
   H01Q19/32
   H01Q15/10
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-208293(P2011-208293)
(22)【出願日】2011年9月24日
(65)【公開番号】特開2013-70292(P2013-70292A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2014年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】平岩 洋介
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 電子通信学会編,アンテナ工学ハンドブック,日本,オーム社,1980年10月,第1版第1刷,p.11 (2.2.1 均質等方性媒質内の平面波)
【文献】 電子通信学会ハンドブック委員会編,電子通信ハンドブック,電子通信学会,1973年,増補改訂版,p.872(5.5.2 偏波面の測定)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/08
H01Q 3/44
H01Q 15/10
H01Q 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を受信するための励振素子と、その励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数の非励振素子とが、円形の接地導体上に、その接地導体から絶縁された状態で設けられ、各非励振素子にそれぞれ接続された複数の可変リアクタンス素子のリアクタンス値が変化することにより指向性が変化するアレーアンテナ装置であって、
前記接地導体に対して前記励振素子および非励振素子側に導体円板が配置されており、
且つ、その導体円板は、前記接地導体と平行であり、その軸心が前記接地導体を通り、前記励振素子および非励振素子の上端と導体円板の下面との間の距離d、導体円板の半径rが下記(1)〜(8)のいずれかの条件を満たしていることを特徴とするアレーアンテナ装置。
(1) 0.008λ<d≦0.074λ、 0.37λ≦r≦0.59λ
(2) 0.074λ<d≦0.082λ、 0.37λ≦r≦0.60λ
(3) 0.082λ<d≦0.270λ、 0.37λ≦r≦0.65λ
(4) 0.270λ<d≦0.278λ、 0.37λ≦r≦0.61λ
(5) 0.278λ<d≦0.286λ、 0.38λ≦r≦0.59λ
(6) 0.286λ<d≦0.294λ、 0.38λ≦r≦0.49λ
(7) 0.294λ<d≦0.302λ、 0.38λ≦r≦0.45λ
(8) 0.302λ<d≦0.310λ、 0.38λ≦r≦0.41λ
なお、λはアレーアンテナ装置が受信する電波の波長である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレーアンテナ装置に関し、特に、アレーアンテナ装置において、主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比大きくする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アレーアンテナ装置として、無線信号を受信するための励振素子と、その励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数の非励振素子とを備え、各非励振素子にそれぞれ接続された複数の可変リアクタンス素子のリアクタンス値が変化することにより、指向性が変化するアレーアンテナ装置が知られている(たとえば、特許文献1)。なお、この形式のアレーアンテナ装置は、電子走査導波器アレーアンテナ装置と呼ばれことも多いが、以下では、単にアレーアンテナ装置という。
【0003】
アレーアンテナ装置では、励振素子および非励振素子は、円盤形状の接地導体上に、その接地導体から絶縁された状態で設けられる。また、一般的に、接地導体は、半径が受信電波の波長λの1/2に設定され、非励振素子は、接地導体の中心からの距離が波長λの1/4となるように配置される。
【0004】
このアレーアンテナ装置は、指向性が可変であることを利用して、無線端末(たとえば、無線タグ)の方向探知に用いられることがある。アレーアンテナ装置は、通常、水平面走査となるように設置され、この場合、垂直偏波に対して良好な指向性を有する。したがって、方向探知の対象となる無線タグが垂直偏波を送信すれば、精度のよい方向探知が可能になる。
【0005】
しかし、無線タグが人に携帯される場合は、無線タグが様々な向きとなる。従って、無線タグが送信する電波は、水平偏波が主放射偏波となることもある。アレーアンテナ装置は水平偏波に対する指向性は鋭くないことから、水平偏波によって無線タグの方向を推定すると、その精度が十分に得られない。そこで、無線タグが送信する電波は水平偏波成分が強く、垂直偏波成分が弱い場合であっても、アレーアンテナ装置は、垂直偏波成分に基づいた方向推定を行なうことが望まれる。そのためには、アレーアンテナ装置は、垂直偏波の利得が水平偏波の利得よりもできるだけ高いことが望まれる。
【0006】
レーアンテナ装置では、垂直偏波が受信する主放射成分となることが要求されるから、垂直偏波を主放射成分としてみた場合、主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比が大きいほど、水平偏波の利得と比較して垂直偏波の利得が高いことを意味する。よって、アレーアンテナ装置では、受信時におけるこの垂直偏波を主放射成分としてみた場合の主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比を大きくすることが望まれることになる。特許文献1には、主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比を大きくするとの明確な記載はないものの、接地導体(特許文献1では有限反射板1)の半径を大きくすることによって水平面の主放射成分利得を高くし、受信時の、主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比を大きくできることが推測できる。(段落0017など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−16427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、接地導体半径を大きくしてしまうと、アレーアンテナ装置が大型化してしまうので好ましくない。
【0009】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、装置の大型化を抑制しつつ、主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比を大きくすることができるアレーアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その目的を達成するための請求項1記載の発明は、
無線信号を受信するための励振素子と、その励振素子から所定の間隔だけ離れて設けられた複数の非励振素子とが、円形の接地導体上に、その接地導体から絶縁された状態で設けられ、各非励振素子にそれぞれ接続された複数の可変リアクタンス素子のリアクタンス値が変化することにより指向性が変化するアレーアンテナ装置であって、
前記接地導体に対して前記励振素子および非励振素子側に導体円板が配置されており、
且つ、その導体円板は、前記接地導体と平行であり、その軸心が前記接地導体を通り、前記励振素子および非励振素子の上端と導体円板の下面との間の距離d、導体円板の半径rが下記(1)〜(8)のいずれかの条件を満たしていることを特徴とする。
(1) 0.008λ<d≦0.074λ、 0.37λ≦r≦0.59λ
(2) 0.074λ<d≦0.082λ、 0.37λ≦r≦0.60λ
(3) 0.082λ<d≦0.270λ、 0.37λ≦r≦0.65λ
(4) 0.270λ<d≦0.278λ、 0.37λ≦r≦0.61λ
(5) 0.278λ<d≦0.286λ、 0.38λ≦r≦0.59λ
(6) 0.286λ<d≦0.294λ、 0.38λ≦r≦0.49λ
(7) 0.294λ<d≦0.302λ、 0.38λ≦r≦0.45λ
(8) 0.302λ<d≦0.310λ、 0.38λ≦r≦0.41λ
なお、λはアレーアンテナ装置が受信する電波の波長である。
【0011】
上記条件を満たす導体円板が配置されることにより、受信された時の主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比は、導体円板がない以外は同じ構成のアレーアンテナ装置(以下、従来アレーアンテナ装置)に比較して、有意に大きくなることをシミュレーションにより確認できた。たとえば、上記従来アレーアンテナ装置では、主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比が15.6dBである場合において、本発明のアレーアンテナ装置では、主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比が最低でも16.8dBとなる。しかも、導体円板の半径rは最大でも0.65λであることから、導体円板の大きさを最大としても、接地導体の一般的な半径が0.5λであることを考慮すると、それほどアレーアンテナ装置は大型化しない。また、導体円板の半径は0.5λ以下とすることもでき、この場合には、アレーアンテナ装置の径方向寸法を全く大きくしない。よって、装置の大型化を抑制しつつ、主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明が適用されたアレーアンテナ装置であるアンテナ部1を備えた無線端末方向探知装置の構成図である。
図2】アンテナ部1を拡大して示す図である。
図3】本実施形態のアレーアンテナ装置と、従来アレーアンテナ装置指向性利得を比較して示す図である。
図4】導体円板19の半径r、導体円板19と素子10、11との間の距離dを変化させつつシミュレーションにより算出した垂直偏波利得(dB)を示す図である。
図5】導体円板19の半径r、導体円板19と素子10、11との間の距離dを変化させつつシミュレーションにより算出した水平偏波利得(dB)を示す図である。
図6図4図5のシミュレーション結果から算出できる、主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明が適用されたアレーアンテナ装置であるアンテナ部1を備えた無線端末方向探知装置の構成図である。
【0014】
この無線端末方向探知装置は、アンテナ部1、電力検出回路5、方向探知コンピュータ6を備えている。アンテナ部1は、電子制御導波器アレーアンテナ装置であり、詳しくは図2を用いて後述するが、1本の励振素子10と6本の非励振素子11A〜11Fとを備えている。これら励振素子10、非励振素子11A〜11Fは、接地導体17の上に、その接地導体17から絶縁された状態に設けられている。また、励振素子10、非励振素子11A〜11Fの上方には導体円板19が配置されている。
【0015】
励振素子10の給電点は、同軸ケーブル20を介して電力検出回路5に接続されており、外部の無線端末から送信され励振素子10によって受信された電波を示す受信信号は電力検出回路5に供給される。
【0016】
非励振素子11A〜11Fには、可変リアクタンス回路18A〜18Fがそれぞれ接続されている。この可変リアクタンス回路18は、電子制御導波器アレーアンテナ装置において一般的に用いられるものと同一の回路であり、たとえば、バイアス電圧が印加されることによってリアクタンス値が変化する可変リアクタンス素子(例えば可変容量ダイオード)を含む回路として構成される。この回路は、高周波的に接地導体17に接続され、方向探知コンピュータ6の後述する可変リアクタンス制御部61によってリアクタンス値が電子的に変化させられる。このリアクタンス値が変化させられることにより、アンテナ部1は方位角φが変化する。
【0017】
電力検出回路5は、励振素子10から供給された受信信号の電力の大きさ(電力値)を検出する回路である。この電力検出回路5は、無線信号の電力を検出する種々の公知の回路を用いることができ、たとえばダイオード検波器を含む回路構成のものである。この電力検出回路5で検出された電力値を示す電力値信号は図示しないAD変換回路を介して方向探知コンピュータ6の方向探知部62に供給される。
【0018】
方向探知コンピュータ6は、CPU、ROM、RAM等(いずれも図示せず)を備えており、CPUがRAMの一時記憶機能を利用しつつROMに記憶されているプログラムを実行することにより、可変リアクタンス制御部61および方向探知部62として機能する。
【0019】
可変リアクタンス制御部61は、図示しないメモリに記憶されたデジタル電圧値を参照して、内蔵した6個のDA変換器(図示せず)を用いてそのデジタル電圧値をアナログのバイアス電圧値に変換し、このバイアス電圧値をリアクタンス値信号C11(θ)〜C16(θ)として各可変リアクタンス回路18A〜18Fに出力する。上記デジタル電圧値は、予め設定された複数の方位角(たとえば、0°から330°まで30°毎)にビームを形成する複数の指向性ビームパターンに対して記憶されている。可変リアクタンス制御部61は、リアクタンス値信号C11(θ)〜C16(θ)を切り替えることにより、指向性ビームパターンを複数の方位角に順次変化させる。なお、メモリに記憶されたデジタル電圧値は、実験に基づいて予め求められた値である。
【0020】
方向探知部62は、電力検出回路5から供給される電力値と、その電力値の受信信号を受信したときの方位角とに基づいて無線端末の方向探知を行なう。たとえば、方位角に対する電力値の変化を示す電力値パターンを作成し、そのパターンにおいてピーク値を示す方位角を無線端末の方向に決定する。
【0021】
図2は、アンテナ部1を拡大して示す図である。励振素子10および6本の非励振素子11A〜11Fはいずれも直棒形状であって接地導体17から垂直に突き出している。これらの素子10、11は、接地導体17の上面から素子上端までの長さがいずれも同一の長さであり、ここでは約λ/4となっている。また、励振素子10は接地導体17の中心に配置される一方、非励振素子11A〜11Fは、励振素子10を中心とする円周上に等間隔に設けられており、励振素子10と非励振素子11との間もλ/4に設定されている。なお、λは、アンテナ部1が受信する電波の波長である。
【0022】
接地導体17は、励振素子10や非励振素子11A〜11Fに対して十分に大きい広さの円板形状部材であり、ここでは半径λ/2とする。
【0023】
導体円板19も接地導体17と同様に円板形状部材である。この導体円板19は、励振素子10や非励振素子11の上方、すなわち、接地導体17に対して、励振素子10や非励振素子11の側に設けられており、且つ、それら励振素子10や非励振素子11から離隔して設けられている。また、この導体円板19は、接地導体17と平行となっている。また、この図2の例では、導体円板19は、その軸心が、接地導体17の軸心と一致する位置に配置されている。なお、この導体円板19は、接地導体17、励振素子10、非励振素子11とともにこの導体円板19を収容する図示しないアンテナ筐体に固定されている。
【0024】
ここで、図2に示すように、励振素子10あるいは非励振素子11の上端と導体円板19の下面との間の距離をd、導体円板19の半径をrとする。この距離dおよび半径rが以下に示す(1)〜(8)のいずれかの条件を満たす場合、この導体円板19があることにより、導体円板19がない場合に比べて、主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比が向上する。
(1) 0.008λ<d≦0.074λ、 0.37λ≦r≦0.59λ
(2) 0.074λ<d≦0.082λ、 0.37λ≦r≦0.60λ
(3) 0.082λ<d≦0.270λ、 0.37λ≦r≦0.65λ
(4) 0.270λ<d≦0.278λ、 0.37λ≦r≦0.61λ
(5) 0.278λ<d≦0.286λ、 0.38λ≦r≦0.59λ
(6) 0.286λ<d≦0.294λ、 0.38λ≦r≦0.49λ
(7) 0.294λ<d≦0.302λ、 0.38λ≦r≦0.45λ
(8) 0.302λ<d≦0.310λ、 0.38λ≦r≦0.41λ
なお、アレーアンテナ装置では、垂直偏波が、受信の主放射成分となることが要求され、垂直偏波を受信の主放射成分としてみたとき、水平偏波が、主放射成分と直交する偏波である。
【0025】
図3は、本実施形態のアレーアンテナ装置と、従来アレーアンテナ装置(導体円板19がない以外は本実施形態のアレーアンテナ装置と同じ構成)の仰角=0における指向性利得を比較して示す図である。図3(A)は垂直偏波の指向性利得を比較して示す図であり、図3(B)は水平偏波の指向性利得を比較して示す図である。なお、図3においては、本実施形態のアレーアンテナ装置は、図2において距離dが30mm、半径rが60mm、波長λが122.4mm(2.45GHz)の場合である。
【0026】
また、図3の利得は、コンピュータを用いたシミュレーションにより算出したものであり、シミュレーションにおいては、接地導体17、導体円板19は、いずれも完全導体としており、厚さは、いずれも0.02mmとしている。ただし、接地導体17については表皮効果により、電流は表面にしか流れないため、20μm以上では特性に差は生じないことが知られている。同様に、導体円板19についても、厚さはアンテナ特性に影響しないと考察している。また、材質についても、通常、アンテナの接地導体として用いられるものを導体円板19についても用いれば、このシミュレーションとほぼ同一の結果になると考えられる。
【0027】
図3(B)から分かるように、水平偏波指向性利得は、導体円板19があることにより、従来装置に比較して全体的に低下している。これに対し、図3(A)から分かるように、垂直偏波指向性利得は、導体円板19の有無による利得の変化はほとんどない。よって、導体円板19を備える本実施形態の装置の受信時の、主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比は、従来装置よりも高くなる。
【0028】
次に、距離dおよび半径rが上記(1)〜(8)の範囲であれば、従来装置よりも受信時の、主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比が大きくなることをシミュレーション結果を用いて説明する。図4は、導体円板19の半径rおよび導体円板19と素子10、11との間の距離dを変化させつつシミュレーションにより算出した垂直偏波利得(dB)であり、リアクタンス値を所望の方位角φとしたときのその方位角φにおける垂直偏波利得である。なお、このシミュレーションにおいて、周波数は2.45GHz、すなわち、波長λは122.4mmである。
【0029】
これに対して、図5は、導体円板19の半径rおよび導体円板19と素子10、11との間の距離dを変化させつつシミュレーションにより算出した水平偏波利得(dB)であり、リアクタンス値を所望の方位角φとしたときの360°方位内の最大の水平偏波利得である。
【0030】
そして、図4に示した垂直偏波利得から、図5に示す水平偏波利得のうち、垂直偏波利得に対応する条件での水平偏波利得を引くことで、種々の距離dと半径rにおける主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比を算出できる。図6には、種々の距離d、半径rにおける主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比を示す。
【0031】
この図6において、太線で囲んでいる範囲は、特許請求の範囲に記載した距離d、半径rにより規定される範囲であり、この範囲内では、従来アレーアンテナ装置と比較して主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比が有意に大きくなっている。具体的には、従来アレーアンテナ装置の主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比は15.6dBであるのに対して、図6に太線で示す範囲内では、主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比は、最低でも16.8dBとなっている。なお、図4図5にも、図6と対応する範囲を太線で囲っている。
【0032】
このように、導体円板19を、接地導体17に対して素子10、11側に、接地導体17と平行且つ軸心が一致するように配置し、この導体円板19を、素子10、11との間の距離d、半径rが、前述の(1)〜(8)のいずれかの条件を満たすようにすると、従来アレーアンテナ装置に比較して受信時の主放射成分と直交する偏波の利得に対する主放射成分の利得の比を有意に大きくすることができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0034】
たとえば、前述の実施形態では、導体円板19は、その軸心が接地導体17の軸心と一致する位置に配置されていた。しかし、これに限られず、導体円板19の軸心は、接地導体17を通っていればよい。
【符号の説明】
【0035】
1 アンテナ部、 5 電力検出回路、 6 方向探知コンピュータ、 10 励振素子、 11 非励振素子、 17 接地導体、 18 可変リアクタンス回路、 19 導体円板、 20 同軸ケーブル、 61 可変リアクタンス制御部、 62 方向探知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6