【実施例1】
【0025】
本実施例は、
図1に示すコンソール付けのカップホルダに本発明を適用している。本実施例に係るカップホルダは、
図2に示すように、収納容器1と、蓋体2と、フロント側ユニット3と、リア側ユニット4とから構成されている。
【0026】
収納容器1は従来と同様の形状をなし、上面に開口10をもつ単純なボックス形状に形成されている。フロント側の側壁にはフロント側シャフト11が前方へ向かって突出形成され、リア側の側壁にはリア側シャフト12が後方へ向かって突出形成されている。またフロント側の側壁の上端部には、一対のフロント側係合爪13が互いに所定の間隔を隔てて形成され、リア側の側壁の上端部には、一対のリア側係合爪14が互いに所定の間隔を隔てて形成されている。リア側係合爪14の近傍には、ピン15が外側へ突出している。
【0027】
蓋体2はプッシュロックオープン機構で収納容器1の開口10を開閉する。この蓋体2は、粉末強化ポリアミド樹脂から形成されたインナ20と、表面に加飾層をもつアッパ21とからなる。インナ20とアッパ21とは、図示しない爪嵌合によって一体に結合されている。アッパ21にはノブ22が形成され、ノブ22によって、カップホルダ使用時に蓋体2を開く際に乗員が指で押す位置が明示されている。
【0028】
蓋体2の開閉時に収納容器1内へ入り込む側のインナ20の端部には、櫛歯状の複数の突起23が形成され、開閉時には突起23が収納容器1に形成された複数の櫛歯状の凹凸条16と係合する。これによりカードやコインなどが収納容器1内部へ落下するのが防止されている。またインナ20のフロント側端部24及びリア側端部25には、突起23に近接した端部にそれぞれ一対のカバー取付部26が形成されている。
【0029】
フロント側ユニット3は、
図3に詳細を示すように、フロント側カバー30と、フロント側第1アーム31(連結腕部)と、フロント側第2アーム32(揺動腕部)と、コイルスプリング33とからなる。
【0030】
フロント側カバー30は略ボックス形状をなし、その上側壁には、収納容器1に形成された一対のフロント側係合爪13と係合可能な一対の係合孔301が形成されている。またフロント側カバー30の底壁には、上下方向に円弧状に延びる長孔302と、上下方向に円弧状に延びるラック歯部303と、分割筒状の筒部304が形成されている。
【0031】
フロント側第1アーム31は、フロント側カバー30に形成された筒部304が挿通される貫通孔310(第1の揺動軸)が一端に形成され、他端には軸部311(第2の揺動軸)が貫通孔310の軸方向と平行に突出している。
【0032】
フロント側第2アーム32は板状の先端部320と、先端部320の後端で先端部320に対して直角に突出する固定部321とからなる。先端部320の先端には、ラック歯部303と歯合可能なピニオン歯部322が形成され、その後方には貫通孔323が形成されている。また固定部321にはインナ20のフロント側端部24に形成された一対の取付部26に結合される一対のフロント側ボス324が形成されている。
【0033】
フロント側第1アーム31の軸部311は、フロント側第2アーム32の貫通孔323を貫通して長孔302に係合される。そしてコイルスプリング33は、一端がフロント側カバー30に形成された突起305に係止され、他端がフロント側第1アーム31の軸部311に係止される。
【0034】
このフロント側ユニット3を組み立てるには、先ずフロント側第1アーム31の軸部311をフロント側第2アーム32の貫通孔323に挿通し、貫通孔323から突出した軸部311にコイルスプリング33の一端部を係止する。そしてフロント側第2アーム32とコイルスプリング33が挿通された軸部311の先端を長孔302に係合させながら、コイルスプリング33の他端部を突起305に係止するとともに、筒部304をフロント側第1アーム31の貫通孔310に挿入する。このときフロント側第2アーム32のピニオン歯部322をラック歯部303と係合させ、固定部321が略水平になるようにしておく。
【0035】
リア側ユニット4は、
図4に詳細を示すように、リア側カバー40と、リア側第1アーム41(連結腕部)と、リア側第2アーム42(揺動腕部)と、付勢部材43と、ピン部材45と、ダンパ46とからなる。
【0036】
リア側カバー40は略ボックス形状をなし、その上側壁には、収納容器1に形成された一対のリア側係合爪14と係合可能な一対の係合孔401が形成されている。またリア側カバー40の底壁には、フロント側ユニット3と同様の、上下方向に円弧状に延びるラック歯部403(
図7参照)と、分割筒状の筒部404(
図7参照)が形成され、さらにピン部材45が揺動可能に保持される取付孔405とダンパ46が固定されるダンパ取付孔406と、円柱状の突起407(
図7参照)と、ピン孔409とが形成されている。また筒部404の近傍には、断面台形状の凸部47(
図7参照)が形成されている。
【0037】
リア側第1アーム41は、リア側カバー40に形成された筒部404(
図7参照)が挿通される貫通孔410(第1の揺動軸)が一端に形成され、他端には軸部411(第2の揺動軸)が貫通孔410の軸方向と平行に突出している。また一端にはダンパ46と歯合する歯部412が形成されている。
【0038】
リア側第2アーム42は板状の先端部420と、先端部420の後端で先端部420に対して直角に突出する固定部421と、先端部420の後端に形成されたカム部422とからなる。先端部420の先端には、ラック歯部403(
図7参照)と歯合可能なピニオン歯部423が形成され、その後方には貫通孔424が形成されている。また固定部421にはインナ20のリア側端部25に形成された一対の取付部26に結合される一対のリア側ボス425が形成されている。カム部422には公知のハートカム装置が形成されている。
【0039】
付勢部材43は、巻回部が大径の第1トーションスプリング431と、巻回部が小径の第2トーションスプリング432とを備え、第1トーションスプリング431は、蓄えられる付勢力が小さいように設計されている。また第2トーションスプリング432は第1トーションスプリング431より蓄えられる付勢力が大きい。第1トーションスプリング431の一端は、直線状の連続部433を介して第2トーションスプリング432の一端に連続している。第1トーションスプリング431は筒部404に介装され、その他端はリア側カバー40に形成された突起407(
図7参照)に係止されている。第2トーションスプリング432の他端はリア側第1アーム41に係止されている。
【0040】
リア側第1アーム41の軸部411は、リア側第2アーム42の貫通孔424に挿通される。またリア側カバー40の内側表面には、断面台形状の凸部47(
図8参照)が形成されている。
【0041】
このリア側ユニット4を組み立てるには、先ずピン部材45と、ダンパ46とを、取付孔405と、ダンパ取付孔406とにそれぞれ取り付ける。ピン部材45は、ロックピン450をもつ下端が上端を中心に揺動自在に取付けられている。次に第1トーションスプリング431をリア側カバー40の筒部404に外嵌する。次いでリア側第1アーム41の軸部411をリア側第2アーム42の貫通孔424に挿通し、貫通孔410に筒部404を挿入する。そして第2トーションスプリング432の他端をリア側第1アーム41に係止し、リア側第2アーム42のピニオン歯部423をラック歯部403(
図7参照)と歯合させるとともに、リア側第1アーム41の歯部412をダンパ46と係合させる。このとき、固定部421が略水平になるようにしておく。
【0042】
上記のように組み立てられたフロント側ユニット3は、収納容器1のフロント側の端部に配置され、フロント側シャフト11をフロント側第1アーム31の貫通孔310に挿入されている筒部304に挿入するとともに、一対の係合孔301に一対のフロント側係合爪13を係合させることで、フロント側ユニット3を収納容器1に固定する。
【0043】
またリア側ユニット4は、収納容器1のリア側の端部に配置され、リア側シャフト12をリア側第1アーム41の貫通孔410に挿入されている筒部404に挿入するとともに、ピン15をピン孔409に挿入して位置決めし、一対の係合孔401に一対のリア側係合爪14を係合させることで、リア側ユニット4を収納容器1に固定する。
【0044】
次いで蓋体2のインナ20を収納容器1の開口10に配置し、フロント側端部24及びリア側端部25にそれぞれ形成された一対の取付部26を一対のフロント側ボス324と一対のリア側ボス425にそれぞれ重ね、インナ20の上方から図示しないビスを用いて一体に固定する。その後、アッパ21をインナ20に図示されない爪嵌合にて固定する。このとき、ピン部材45から突出するロックピン450がカム部422のハートカムに係合し、ピン部材45とカム部422とでプッシュロックオープン装置が構成されている。
【0045】
以下、上記のように形成された本実施例のカップホルダの作動機構を説明する。
【0046】
収納容器1のフロント側の端部側から見た閉状態におけるフロント側ユニット3の正面図を
図5に、収納容器1のリア側の端部側から見た閉状態におけるリア側ユニット4の正面図を
図7に示す。この状態ではフロント側ユニット3の固定部321とリア側ユニット4の固定部421は共に略水平状態であり、蓋体2も略水平となって収納容器1の開口10を閉じている。この状態では、第1トーションスプリング431には、リア側第1アーム41の軸部411側端部をリア側シャフト12を回動中心として下方へ回動させる付勢力が蓄えられている。一方、コイルスプリング33には付勢力が発生していない。この閉位置では、連続部433が凸部47に下側から当接している。
【0047】
カップホルダとして使用する際には、
図5及び
図7に矢印で示すように、乗員が蓋体2のノブ22を手指で押圧する。すると蓋体2の先端が下方へ回動し、ロックピン450がカム部422のハートカムから外れる。このとき蓋体2の回動に伴ってリア側第1アーム41は軸部411側端部が上方へ回動し、第2トーションスプリング432がリア側第1アーム41によって上方へ向かって押圧されるため、その付勢力による適度な抵抗が乗員に伝えられる。
【0048】
閉位置では、第1トーションスプリング431は両端が係止状態であり、その巻回部の内周表面が筒部404の外周表面に当接しているため、ノブ22を押圧しても第1トーションスプリング431がさらに巻回されることはない。一方、第2トーションスプリング432は一端(連続部433)が凸部47に当接して係止されているが、他端はリア側第1アーム41に係止されている。したがって蓋体2の移動に伴ってリア側第1アーム41は図の反時計回りに回動し、第2トーションスプリング432には付勢力が発現する。
【0049】
乗員が蓋体2の押圧を解除すると、第1トーションスプリング431の付勢力によってリア側第1アーム41は、リア側シャフト12を回動中心として軸部411側端部が下方へ向かうように回動する。その動きは蓋体2を介してフロント側第1アーム31に伝達され、フロント側第1アーム31は軸部311側端部が下方へ向かうように回動する。これらの回動に伴って、リア側第2アーム42とフロント側第2アーム32は軸部311と軸部411を回動中心とし、ピニオン歯部423とラック歯部403とが歯合しながら、またピニオン歯部322とラック歯部303とが歯合しながら回動する。
【0050】
リア側第1アーム41とフロント側第1アーム31とが30°回動する間に、リア側第2アーム42とフロント側第2アーム32とは90°回動し、蓋体2は先端が収納容器1に対して倒れ込むように回動して、
図6及び
図8に示すように収納容器1の開口10を開く。またこの回動に伴って、リア側第1アーム41の歯部412によってダンパ46が駆動されるとともにコイルスプリング33には付勢力が蓄えられ、両者のダンパ効果によって蓋体2は緩やかに回動するとともに、開度が大きくなるにつれて回動速度が小さくなる。
【0051】
蓋体2を開状態から閉状態とするには、乗員は手指で蓋体2を閉方向へ回動させる。この際に第1トーションスプリング431には付勢力が蓄えられるが、その付勢力は小さく、しかもコイルスプリング33による付勢の援助によって小さな力で回動させることができる。そして蓋体2が略水平状態となってからさらに蓋体2の先端を収納容器1に向かって押圧することで、ロックピン450がカム部422のハートカムと係合して蓋体2がロックされる。
【0052】
このとき、連続部433が凸部47に下側から当接し、第2トーションスプリング432には大きな付勢力が発現する。したがって乗員には、第1トーションスプリング431の付勢による抵抗から第2トーションスプリング432の付勢による抵抗に変化したことが知覚されるので、プッシュロックオープン装置が作動したことを間接的に認知することができロックを確実に行うことができる。
【0053】
そしてこの閉状態では、走行時の振動による加速度などが作用しても、その押力は第2トーションスプリング432に蓄えられる付勢力には及ばず、蓋体2が収納容器1へ向かって移動するのが防止されている。したがってプッシュロックオープン装置によるロックが誤って解除されるような不具合がなく、誤作動によって蓋体2が開くことがない。
【0054】
すなわち本実施例の収納装置によれば、一つの付勢部材43を用いるだけで、手動で蓋体2を閉じる方向へ移動させる際の操作性の向上と誤作動によるロック解除の防止とを両立させることができ、安価とすることができる。
【実施例2】
【0055】
本実施例の収納装置は、蓋体の開閉の動きを一軸のアーム装置で行う場合に本発明を適用したものである。
図9に
図7相当の正面図を示す。この収納装置は大部分が実施例1と同様であるので、実施例1と同様の部分を引用する際は実施例1と同じ符号を付け、異なる部分については新しい符号を付けて説明する。
【0056】
収納容器1から突出するフロント側シャフト11及びリア側シャフト12は、実施例1より中央部寄りに形成されている。
【0057】
リア側ユニット5は、リア側カバー50と、リア側アーム51と、付勢部材52と、からなる。リア側カバー50の底壁には、略中央部に分割筒状の筒部501が突出形成され、筒部501の近傍には断面台形状の凸部53が形成されている。またプッシュロックオープン装置、ダンパ装置などは図示されないフロント側カバーに形成されている。
【0058】
リア側アーム51は、板状の先端部510及び後端部511と、後端部511から直角に突出する固定部512と、からなる。先端部510には筒部501が挿通される貫通孔513が形成され、固定部512は蓋体2の一端部に固定されている。貫通孔513には筒部501が挿通され、筒部501にはリア側シャフト12が挿通されている。
【0059】
付勢部材52は、実施例1と同様に巻回部が大径の第1トーションスプリング521と、巻回部が小径の第2トーションスプリング522とを備え、第1トーションスプリング521は、蓄えられる付勢力が小さいように設計されている。また第2トーションスプリング522は第1トーションスプリング521より蓄えられる付勢力が大きい。第1トーションスプリング521の一端は、直線状の連続部523を介して第2トーションスプリング522の一端に連続している。第1トーションスプリング521は筒部501に介装され、その他端はリア側カバー50に形成された突起502に係止されている。第2トーションスプリング522の他端はリア側アーム51の後端部511に係止されている。
【0060】
図9に示す閉状態では、リア側ユニット5の固定部512は略水平状態であり、蓋体2も略水平となって収納容器1の開口10を閉じている。この状態では、第1トーションスプリング521には、リア側アーム51の後端部511をリア側シャフト12を回動中心として図の時計回り方向へ回動させる付勢力が蓄えられている。この閉位置では、連続部523が凸部53に下側から当接している。また第1トーションスプリング521の巻回部の内周面は、蓄えられた付勢力によって筒部501の外周表面に当接している。
【0061】
すなわち閉状態では、第1トーションスプリング521は両端が係止状態であり、その巻回部の内周表面が筒部501の外周表面に当接しているため、ノブ22を押圧しても第1トーションスプリング521がさらに巻回されることはない。一方、第2トーションスプリング522は一端(連続部523)が凸部53に当接して係止され、他端はリア側アーム51に係止されている。
【0062】
カップホルダとして使用する際には、
図9に矢印で示すように、乗員が第2トーションスプリング522の付勢力に抗して蓋体2のノブ22を手指で押圧する。すると蓋体2の先端が下方へ回動し、図示しないロックピンがハートカムから外れる。このとき蓋体2の回動に伴って、リア側アーム51がリア側シャフト12を回動中心として図の反時計回りに回動し、リア側アーム51の後端部511に係止された第2トーションスプリング522の他端が上方へ持ち上げられるため、第2トーションスプリング522には付勢力が発現する。その付勢力による適度な抵抗が乗員に伝えられる。
【0063】
乗員が蓋体2の押圧を解除すると、第1トーションスプリング521の付勢力によってリア側アーム51は、リア側シャフト12を回動中心として
図9の時計回り方向に回動し、
図10に示すように蓋体2が収納容器1の開口10を開く。
【0064】
蓋体2を開状態から閉状態とするには、乗員は手指で蓋体2を閉方向へ回動させる。この際に第1トーションスプリング521には付勢力が蓄えられるが、その付勢力は小さいので小さな力で回動させることができる。そして蓋体2が略水平状態となってからさらに蓋体2の先端を収納容器1に向かって押圧することで、ロックピンがハートカムと係合して蓋体2がロックされる。
【0065】
このとき、連続部523が凸部53に下側から当接し、第2トーションスプリング522に付勢力が発現する。したがって乗員には、第1トーションスプリング521の付勢による抵抗から第2トーションスプリング522の付勢による抵抗に変化したことが知覚されるので、プッシュロックオープン装置が作動したことを間接的に認知することができロックを確実に行うことができる。
【0066】
そしてこの閉状態では、走行時の振動による加速度などが作用しても、その押力は第2トーションスプリング522に蓄えられる付勢力には及ばず、蓋体2が収納容器1へ向かって移動するのが防止されている。したがってプッシュロックオープン装置によるロックが誤って解除されるような不具合がなく、誤作動によって蓋体2が開くことがない。
【0067】
すなわち本実施例の収納装置によれば、一つの付勢部材52を用いるだけで、手動で蓋体2を閉じる方向へ移動させる際の操作性の向上と誤作動によるロック解除の防止とを両立させることができ、安価とすることができる。