特許第5673527号(P5673527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5673527ユビキノン類の製剤用粉末の製造方法及びその製造物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5673527
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】ユビキノン類の製剤用粉末の製造方法及びその製造物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/122 20060101AFI20150129BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20150129BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20150129BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   A61K31/122
   A61K9/14
   A61P9/04
   A61P39/06
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-507193(P2011-507193)
(86)(22)【出願日】2010年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2010055612
(87)【国際公開番号】WO2010113900
(87)【国際公開日】20101007
【審査請求日】2013年3月1日
(31)【優先権主張番号】特願2009-87424(P2009-87424)
(32)【優先日】2009年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2009-87425(P2009-87425)
(32)【優先日】2009年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100081765
【弁理士】
【氏名又は名称】東平 正道
(72)【発明者】
【氏名】吉村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】中野 里愛子
(72)【発明者】
【氏名】古谷 雅之
(72)【発明者】
【氏名】内保 雄
【審査官】 田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0258967(US,A1)
【文献】 特開2007−332162(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/033054(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/084828(WO,A1)
【文献】 特開2007−084532(JP,A)
【文献】 特開2006−213601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−A61K 33/44
A61K 9/00−A61K 9/72
A61K 47/00−A61K 47/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(補正案1)
コエンザイムQ10の結晶粉末を0.6〜2.5トン/cmの成形線圧で圧縮成形して圧縮片を得る工程1と、工程1で得られた圧縮片を粉砕して粉末体を得る工程2とを有する、コエンザイムQ10の製剤用粉末の製造方法。
【請求項2】
工程1において、ローラー型圧縮成形機で圧縮成形する、請求項1に記載のコエンザイムQ10の製剤用粉末の製造方法。
【請求項3】
工程1において、対向した間隔幅が0.2〜1.2mmの二つのロール間にコエンザイムQ10の結晶粉末を通過させることによって圧縮成形する、請求項2に記載のコエンザイムQ10の製剤用粉末の製造方法。
【請求項4】
工程1において、35〜52℃の品温下で圧縮成形する、請求項1〜3のいずれかに記載のコエンザイムQ10の製剤用粉末の製造方法。
【請求項5】
工程2で得られた粉末体を加熱処理する工程3を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のコエンザイムQ10の製剤用粉末の製造方法。
【請求項6】
工程3において、粉末体を30〜52℃の品温下で加熱処理する、請求項5に記載のコエンザイムQ10の製剤用粉末の製造方法。
【請求項7】
コエンザイムQ10が酸化型CoQ10及び還元型CoQ10から選ばれる1種以上である、請求項1〜6のいずれかに記載のコエンザイムQ10の製剤用粉末の製造方法。
【請求項8】
コエンザイムQ10の製剤用粉末の嵩密度が0.35〜0.65g/mlである、請求項1〜7のいずれかに記載のコエンザイムQ10の製剤用粉末の製造方法
【請求項9】
コエンザイムQ10の製剤用粉末の安息角が7〜30度である、請求項1〜8のいずれかに記載のコエンザイムQ10の製剤用粉末の製造方法
【請求項10】
コエンザイムQ10の製剤用粉末の嵩密度が0.4〜0.65g/mlである、請求項1〜7のいずれかに記載のコエンザイムQ10の製剤用粉末の製造方法
【請求項11】
コエンザイムQ10の製剤用粉末の安息角が7〜18度である、請求項1〜7及び10のいずれかに記載のコエンザイムQ10の製剤用粉末の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は取り扱い性や流動性に優れたユビキノン類の製剤用粉末の製造方法及びその製造物に関する。ユビキノン類、特にコエンザイムQ10(以下、「CoQ10」ともいう。)は医薬品や健康食品分野において広く利用されている重要な物質である。
【背景技術】
【0002】
ユビキノン類はミトコンドリア電子伝達系の必須構成成分として、高エネルギーリン酸化合物であるATPの生産上極めて重要な役割を果たしている。従来、CoQ10は心筋機能の賦活化を目的した鬱血性心不全の治療薬として処方されている。近年、さらに、もう一つの重要な生体内作用である抗酸化能に対する注目が高まり、CoQ10は健康食品市場でも非常に重要な地位を占めるに至っている。
【0003】
CoQ10は融点50〜52℃の結晶性の粉末であり、そのままでも錠剤、ハードカプセル、ソフトカプセルなど種々の製品形態の医薬品や健康食品の原料として使用することができる。
しかしながら、CoQ10の結晶性粉末には、嵩密度が低く嵩張ることや、凝集性、付着性が強いことなど、取り扱い性や流動性に係わる製剤上の問題がある。このため、高充填率のカプセル製剤製品の設計・製造が困難であり、製造が安定して行えないなどの問題がある。
【0004】
そこで、CoQ10含有製剤の製造に係わるこれらの問題を解決することを目的にした種々の技術が提案されている。例えば、薬物と軽質無水ケイ酸等の流動改質剤を含有する添加剤を混合し、次いで粉砕する方法(例えば、特許文献1参照)、低融点物及び吸着担体を含有する混合粉体を造粒し、得られた造粒物を、流動層乾燥機を用いて融点以上の給気温度で流動させる方法(例えば、特許文献2参照)、流動層装置でCoQ10粉末と賦形剤を流動させて混合しながらプロラミン蛋白を溶液状態で噴霧し粉体を得る方法(例えば、特許文献3参照)が開示されている。
しかしながら、これらの方法は何れも賦形剤や結合剤など添加剤を用いることによって、CoQ10粉末の流動性を改善し、コンパクト化を図ろうとするものであり、添加剤を用いることなくCoQ10の粉体性状を改善する技術については全く触れられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−123594号公報
【特許文献2】特開2006−160730号公報
【特許文献3】特開2007−191425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、嵩密度が高く、凝集性や付着性が少なく、取り扱い性及び流動性に優れた、医薬及び健康食品用の製剤用粉末を製造する方法並びにその製造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、かかる課題を解決するべく鋭意検討した結果、ユビキノン類を圧縮成形しその後粉砕することで、結合剤や賦形剤等の添加物を用いることなく、凝集性や付着性の少ない、取り扱い性及び流動性に優れたユビキノン類の製剤用粉末を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は下記(1)〜(12)のとおりである。
【0008】
(1)ユビキノン類の結晶粉末を0.6〜2.5トン/cmの成形線圧で圧縮成形して圧縮片を得る工程1と、工程1で得られた圧縮片を粉砕して粉末体を得る工程2とを有する、ユビキノン類の製剤用粉末の製造方法。
(2)工程1において、ローラー型圧縮成形機で圧縮成形する、前記(1)に記載のユビキノン類の製剤用粉末の製造方法。
(3)工程1において、対向した間隔幅が0.2〜1.2mmの二つのロール間にユビキノン類の結晶粉末を通過させることによって圧縮成形する、前記(2)に記載のユビキノン類の製剤用粉末の製造方法。
(4)工程1において、35〜52℃の品温下で圧縮成形する、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のユビキノン類の製剤用粉末の製造方法。
(5)工程2で得られた粉末体を加熱処理する工程3を含む、前記(1)〜(4)のいずれかに記載のユビキノン類の製剤用粉末の製造方法。
(6)工程3において、粉末体を30〜52℃の品温下で加熱処理する、前記(5)に記載のユビキノン類の製剤用粉末の製造方法。
(7)ユビキノン類が酸化型CoQ10及び還元型CoQ10から選ばれる1種以上である、前記(1)〜(6)に記載のユビキノン類の製剤用粉末の製造方法。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法によって得られる、ユビキノン類の製剤用粉末。
(9)嵩密度が0.35〜0.65g/mlである、前記(8)に記載のユビキノン類の製剤用粉末。
(10)安息角が7〜30度である、前記(8)又は(9)に記載のユビキノン類の製剤用粉末。
(11)嵩密度が0.4〜0.65g/mlである、前記(8)に記載のユビキノン類の製剤用粉末。
(12)安息角が7〜18度である、前記(8)又は(11)に記載のユビキノン類の製剤用粉末。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、賦形剤や結合剤などの添加剤を用いることなく、取り扱い性や流動性に優れた性能を示すユビキノン類の製剤用粉末を製造供給できるようになり、充填率の高いコンパクトな剤形のカプセル剤等の製剤を安定的に製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の製造方法によって得られたCoQ10の製剤用粉末の電子顕微鏡写真像を示す。結晶粉末が圧縮され積層構造をとっている(倍率 450倍)。
図2】原料の乾燥結晶粉末の電子顕微鏡写真像を示す。薄片状の結晶粉末が、無秩序に散乱した構造をとっている(倍率 250倍)。
図3】加熱処理前のCoQ10の製剤用粉末の電子顕微鏡写真像を示す。結晶粉末が圧縮され積層構造をとっている。
図4】40℃で7時間、加熱処理したCoQ10の製剤用粉末の電子顕微鏡写真像を示す。
図5】40℃で28時間、加熱処理したCoQ10の製剤用粉末の電子顕微鏡写真像を示す。経過と共に粒子が丸くなり、さらには表面が溶融している様子がわかる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のユビキノン類の製剤用粉末の製造方法は、ユビキノン類の結晶粉末を0.6〜2.5トン/cmの成形線圧で圧縮成形して圧縮片を得る工程1と、工程1で得られた圧縮片を粉砕して粉末体を得る工程2とを有する。
【0012】
本発明に用いるユビキノン類は、2,3−ジメトキシ−5−メチル−6−ポリプレニル−1,4−ベンゾキノンの誘導体で側鎖のイソプレン単位が6〜10のユビキノン等が知られている。これらのうち入手性等の観点から、側鎖のイソプレン単位が10であるCoQ10(ユビデカレノン)が好ましい。CoQ10は、酸化型CoQ10及び還元型CoQ10のいずれも好ましく用いることができる。
【0013】
本発明に用いるユビキノン類の製法に特に限定はない。例えば、還元型CoQ10は、酸化型CoQ10を適当な還元剤、即ち、ハイドロサルファイトナトリウムやビタミンC等を用いて還元することで容易に合成することができる。酸化型、還元型CoQ10は、共に晶析や再結晶で得られた結晶を用いることができる。CoQ10の結晶は必ずしも完全に乾燥させる必要はないが、できるだけ溶媒を除いておいた方が圧縮成形性の面で良い。
【0014】
本発明の工程1で採用できる圧縮成形法は、2つのロールを回転させロールの隙間に粉体を供給し圧縮するローラー圧縮成形法、粉体を型に充填して圧縮するタブレット法等がある。この中で、ローラーコンパクター等のローラー型圧縮成形機で行うローラー圧縮成形法が、圧縮むらの少ない圧縮片を効率良く製造できる点で好ましい。
工程1の圧縮成形時の成形圧力は、充分圧縮成形された成形片が得られる圧力であれば良く、ローラー圧縮成形法における成形線圧は0.6〜2.5トン/cmであり、1.0〜2.0トン/cmが好ましい。成形線圧が2.5トン/cmよりも高い場合は、ユビキノン類は融点が低いため成形品が溶融する場合がある。また成形線圧が0.6トン/cmより低い圧力では成形が不十分で次の粉砕工程での粉化率が高くなり目的とする粉末体の歩留まりが悪くなる傾向がある。
【0015】
工程1の圧縮成形に際し、原料粉体は嵩密度を上げる目的で予備脱気をしながら供給しても良い。圧縮成形時のロール間隔は0.2〜1.2mmの範囲が好ましく、0.4〜1.0mmの範囲がより好ましい。ロール間隔が0.2mm以上であれば、処理量が向上する。0.2mmより狭くても製造は可能であるが、処理量が非常に低下し非現実的な処理量となる。ロール間隔が1.2mm以下であれば、成形品の厚み方向において中心部まで十分成形圧を伝えることができる。そうすることで、成形品内部で斑が生じ、続く粉砕工程で成形不足に起因した粉化率上昇による歩留まり低下といった問題が起こりにくくなる。
【0016】
工程1の圧縮成形時のユビキノン類の品温は、35〜52℃の温度範囲に保持することが好ましく、36〜49℃の温度範囲に保持することがより好ましく、40〜49℃の温度範囲に保持することが更に好ましい。52℃を越えると、ユビキノン類の溶融によるロール面の汚染により安定運転が困難になる。また、35℃より温度が低いと十分な圧縮成形品が得られなくなる。
【0017】
本発明の工程2で行う粉砕方法は特に限定されるものでなく、工業的に利用されている一般的な粉砕法を採用することができる。具体的にはハンマーミル、ピンミル、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いる粉砕法が挙げられる。粉砕に供する圧縮成形品が大きい場合は、粗粉砕を行ってから前記粉砕を行うことができる。また粉砕による発熱を徐熱する目的で粉砕機や原料供給部分を冷却したり、液体窒素中やドライアイスを共存させて粉砕することもできる。
【0018】
工程2で得られた粉砕品はそのままでも製剤用粉末として使用することが出来るが、目的に応じて適当な目開きの篩で整粒してから使用することが出来る。粉砕品に溶媒や水分が残っている場合は乾燥してから使用することも出来る。また原料が還元型のユビキノン類の場合は、空気中の酸素で容易に酸化型のユビキノン類に戻るため、それを低減するために、圧縮成形から粉砕までの全工程を不活性雰囲気で行うことも出来る。
【0019】
本発明方法において、工程2で得られた粉末体を加熱処理する工程3を含むことが好ましい。加熱処理することにより、ユビキノン類の製剤用粉末の安息角をより低減することができる。
工程2で得られた粉砕品は、そのまま次の工程3の加熱処理を行うことが出来るが、適当な目開きの篩で整粒してから熱処理を行っても良い。
工程3における加熱処理温度は、ユビキノン類の融点以下で行う必要があり、30〜52℃が好ましく、40〜49℃がより好ましい。30℃以下でも操作は可能であるが、温度が低くいため加熱処理に非常に長時間を要し現実的でない。
工程3における加熱処理の方法は、特に限定されず、実験室スケールのように少量では静置状態でも良い。工業的規模での実施を想定し、処理時間を短縮する観点から、被処理物を運動させながら加熱処理を行うのが好ましい。運動させる手段として具体的には、加熱状態で被処理物を攪拌、振動、振とうさせる等、一般的な混合方法を採用することが出来る。また処理は窒素等の不活性雰囲気下で行っても良い。工程2で得られた粉砕品に溶媒や水分が残っている場合は乾燥してから加熱処理を行うことができる。
【0020】
工程3における加熱処理時間は、処理温度や方法により異なるため一概に限定することはできない。
工程3で得られた処理品は加熱処理により小粒子同士が融着する場合があるため、必要に応じて粗粉砕や篩により整粒をかけても良い。
【0021】
本発明により得られる粉末体の顕微鏡写真(図1)を、原料結晶粉の写真(図2)と共に示す。写真から明らかなように、本発明により得られる粉末体の粒子は、原料結晶粉の一枚一枚が圧縮された積層構造をとっていることがわかる。
加熱処理前の粉末体の写真(図3)、温度40度、時間7時間で加熱処理を行った場合(図4)、温度40度、時間28時間で加熱処理を行った場合(図5)を示す。写真から明らかなように、加熱処理により得られる粉末体の粒子は、表面が溶融した小石状の形態をとっている。
【0022】
本発明方法により、嵩密度が0.35〜0.6g/mlの粉末体を得ることができる。さらに、本発明方法により、嵩密度が0.35〜0.65g/ml、更には0.4〜0.65g/mlの高嵩密度の粉末体を得ることができる。本発明方法により得られるユビキノン類の製剤用粉末は、原料の低嵩密度品に比べ、同容積のカプセル1錠あたりの含有量を高くすることができるため、カプセルを小さく設計することができ、経口摂取しやすくすることができる。
また、本発明方法により安息角が15〜30度、さらには7〜30度の粉末体を得ることができる。また、工程1〜3を経ることで、安息角が7〜18度の粉末体を得ることができる。本発明方法では安息角を低減することができるため、得られたユビキノン類の製剤用粉末は、流動性が良く、オイルと混合した際のオイルスラリーの流動性もよいため、カプセルに容易に充填することができ、1錠あたりのユビキノン類の含量が400mgを超えるような高濃度ソフトカプセル等を安定的に製造することが可能となる。また加熱処理することにより、安息角をさらに低減することができるため、図4及び図5に示す写真から分かるように、粉末体の形状が小石状で表面に隙間が無いため、特にオイルと混合した際のオイルスラリーの流動性を長期間に亘って保持できる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例及び比較例を示すが、本発明はこれら例にのみ限定されるものではない。粉末の嵩密度及び安息角は以下に示す方法により測定した。
【0024】
(1)嵩密度
分級後に形成された1mm程度の二次粒子を除去するために、目開き425μmの篩を取り付けた上部漏斗の下に、粉体の受け器となる円筒形のステンレス製カップ(容積(Vc)36.0mL、内径30mm)を置いた。試験サンプルを篩に通し、過剰の粉体が溢れるまでカップへ流下させた。カップの上面に垂直に立てて接触させたヘラの刃を滑らかに動かし、圧密やカップからの粉体の溢流を防ぐためにヘラを垂直にしたままで、カップの上面から過剰の粉体を注意深くすり落とした。カップの側面からも試料をすべて除去し,粉体の質量(M3)を0.1%まで測定した。カップに量りとった粉体を、容量50mL、最小目盛り1mLのメスシリンダーに取り、メスシリンダー底面を50〜60回/分で機械的にタップした。嵩体積が減少しなくなったときの嵩体積(V)を最小目盛りまで読み取りタップ体積とした。下記式用いて嵩密度(g/ml)を計算した。
嵩密度(g/ml)=M3(g)/V(ml)
(2)安息角
粉末の流動性を示す指標として安息角を、安息角測定器(粉体用)(アズワン株式会社製、ASK−01、JIS規格K6911.5.2に準拠したロート、落下高さ90mm)を用い注入法で測定した。
【0025】
実施例1
晶析により得られたCoQ10の乾燥結晶粉末を、ローラー型圧縮成形機(フロイント産業株式会社製、TF-MINI型)で、ロール線圧0.7トン/cm、ロール幅0.8mm、ロール回転数4rpm、品温36℃の条件で成形し、圧縮片を得た。この圧縮片をコーヒーミルで粉砕した後、得られた粉砕品を米国薬局方の規格による80メッシュの篩で篩いわけを行い、通過したものを集めてCoQ10の製剤用粉末を調製した。この粉末体の嵩密度は0.48g/mlで、安息角は23度であった。
なお、原料として用いたCoQ10乾燥結晶粉末の嵩密度は0.2g/mlで、安息角は43度であった。このように、本発明により、嵩密度が高く流動性が改善された粉末が得られた。結果を表1に示す。
【0026】
実施例2
実施例1と同じCoQ10の乾燥結晶粉末を、ローラー型圧縮機(フロイント産業株式会社製、TF−156)で、ロール線圧1.5トン/cm、ロール幅0.8mm、ロール回転数8rpm、品温36℃の条件で成形し圧縮片を得た。この圧縮片をハンマーミルで粉砕した後、得られた粉砕品を、米国薬局方の規格による80メッシュの篩で篩いわけを行い、通過したものを集めて製剤用粉末を調製した。この粉末体の嵩密度は0.5g/mlで、安息角は20度であった。結果を表1に示す。
【0027】
実施例3
実施例1と同じCoQ10の乾燥結晶粉末を、ローラー型圧縮機(ターボ工業株式会社製、WP−160×60)で、ロール線圧2.0トン/cm、ロール幅0.6mm、ロール回転数10rpm、品温36℃の条件で成形し圧縮片を得た。この圧縮片を実施例1と同様にして粉砕篩別し、製剤用粉末を調整した。この粉末体の嵩密度は0.53g/mlで、安息角は25度であった。結果を表1に示す。
【0028】
実施例4
酸化型CoQ10の結晶粉末(自社製)を、ローラー型圧縮機TF−156(フロイント産業製)にて、ロール線圧1.5t/cm、ロール幅0.8mm、ロール回転数8rpm、品温36℃で成形し圧縮片を得た。この圧縮片をハンマーミル(ダルトン社製)で粉砕し粉砕粉を得た。次いで、この粉砕粉を、ユニバーサルミキサーEM25B(月島機械社製)で、40℃の温度条件下、28時間加熱攪拌処理を行った。得られた処理粉は、米国薬局方の規格による80メッシュの篩で篩い、酸化型CoQ10粉末体を得た。この粉末体の嵩密度は0.56g/ml、安息角は10度であった。
【0029】
実施例5
実施例1で得られたCoQ10の製剤用粉末60gを300mlジャケット付き平底フラスコに仕込み、40℃で4枚翼のプロペラ形状の攪拌羽根で攪拌しながら24時間の加熱処理を行った。得られた粉末体の嵩密度は0.54g/ml、安息角は15度であった。
【0030】
比較例1
実施例1と同じCoQ10の乾燥結晶粉末をローラー型圧縮機(ターボ工業株式会社製、WP−160×60)で、ロール線圧3.0t/cm、ロール幅0.6mmロール回転数5rpm、品温36℃の条件で成形したが、ロール面に溶融物が付着し圧縮片が得られなかった。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、賦形剤や結合剤などの添加剤を用いることなく、嵩密度が高く、安息角の小さい、取り扱い性及び流動性に優れたユビキノン類の製剤用粉末を製造することができ、医薬及び健康食品用のユビキノン類の製剤用粉末を提供することが可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5