(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シートクッション側及びシートバック側のいずれか一方に固定される第1ブラケットと、前記シートクッション側及び前記シートバック側のいずれか他方に固定され前記第1ブラケットに対する相対回動に伴って前記シートクッションに対する前記シートバックの傾斜角度を調整可能な第2ブラケットと、前記第2ブラケットに設けられた内歯に係脱可能な外歯を有し前記第1ブラケットに配設された一対のガイド部により形成されたガイド溝によって径方向への移動が案内されるポールと、前記ポールに係合されて前記第1ブラケットに回動自在に設けられたカム部材と、前記外歯及び前記内歯の噛合側に前記ポールが移動するように前記カム部材を回動付勢する付勢部材と、前記外歯及び前記内歯の噛合の解除側に前記ポールが移動するように前記付勢部材の付勢力に抗して前記カム部材を回動させる操作部材とを備える車両用シートリクライニング装置において、
前記ガイド部の少なくとも前記径方向において前記内歯に近い側となる先端部には、前記外歯及び前記内歯の噛合解除時に生じうる前記ガイド部に対する前記ポールの傾き支点が、これら外歯及び内歯の噛合面の法線と前記ガイド部との交点よりも前記内歯に近い側に配置されるように周方向に突出部が突設されていることを特徴とする車両用シートリクライニング装置。
シートクッション側及びシートバック側のいずれか一方に固定される第1ブラケットと、前記シートクッション側及び前記シートバック側のいずれか他方に固定され前記第1ブラケットに対する相対回動に伴って前記シートクッションに対する前記シートバックの傾斜角度を調整可能な第2ブラケットと、前記第2ブラケットに設けられた内歯に係脱可能な外歯を有し前記第1ブラケットに配設された一対のガイド部により形成されたガイド溝によって径方向への移動が案内されるポールと、前記ポールに係合されて前記第1ブラケットに回動自在に設けられたカム部材と、前記外歯及び前記内歯の噛合側に前記ポールが移動するように前記カム部材を回動付勢する付勢部材と、前記外歯及び前記内歯の噛合の解除側に前記ポールが移動するように前記付勢部材の付勢力に抗して前記カム部材を回動させる操作部材とを備える車両用シートリクライニング装置において、
前記ガイド部の前記内歯に近い側となる先端部は、第1のプレス工程で成形された後に焼き入れが施された初期ガイド部が第2のプレス工程で成形されることで、前記外歯及び前記内歯の噛合解除時に生じうる前記ガイド部に対する前記ポールの傾き支点が、これら外歯及び内歯の噛合面の法線と前記ガイド部との交点よりも前記内歯に近い側に配置されるように周方向に突出していることを特徴とする車両用シートリクライニング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では、ツース部材97の歯部98及びツースプレート94の歯部96の噛合を解除するようにツース部材97を後退させる際、該ツース部材97は、付勢手段の付勢力に抗して回動するカムに連動して回動しようとする。このため、ツース部材97は、その歯部98及びツースプレート94の歯部96の噛合面の法線方向にツースプレート94から押されて、ガイド部93に対して傾こうとする。このとき、ツース部材97がガイド部93に当接(密接)する部位である傾き支点が、前記法線とガイド部93との交点よりも歯部96から遠い側に位置していると、ツース部材97の後退動作が阻害されて、ツース部材97の歯部98及びツースプレート94の歯部96の噛合解除時の操作性・操作フィーリングの悪化や解除異音の発生を余儀なくされる。
【0007】
本発明の目的は、解除操作時の操作性・操作フィーリングの悪化や解除異音の発生を抑制することができる車両用シートリクライニング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、シートクッション側及びシートバック側のいずれか一方に固定される第1ブラケットと、前記シートクッション側及び前記シートバック側のいずれか他方に固定され前記第1ブラケットに対する相対回動に伴って前記シートクッションに対する前記シートバックの傾斜角度を調整可能な第2ブラケットと、前記第2ブラケットに設けられた内歯に係脱可能な外歯を有し前記第1ブラケットに配設された一対のガイド部により形成されたガイド溝によって径方向への移動が案内されるポールと、前記ポールに係合されて前記第1ブラケットに回動自在に設けられたカム部材と、前記外歯及び前記内歯の噛合側に前記ポールが移動するように前記カム部材を回動付勢する付勢部材と、前記外歯及び前記内歯の噛合の解除側に前記ポールが移動するように前記付勢部材の付勢力に抗して前記カム部材を回動させる操作部材とを備える車両用シートリクライニング装置において、前記ガイド部の少なくとも前記径方向において前記内歯に近い側となる先端部には、前記外歯及び前記内歯の噛合解除時に生じうる前記ガイド部に対する前記ポールの傾き支点が、これら外歯及び内歯の噛合面の法線と前記ガイド部との交点よりも前記内歯に近い側に配置されるように周方向に突出部が突設されていることを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、前記突出部により、前記外歯及び前記内歯の噛合解除時に生じうる前記ガイド部に対する前記ポールの傾き支点が、これら外歯及び内歯の噛合面の法線と前記ガイド部との交点よりも前記内歯に近い側に配置されることで、前記ポールの移動(後退)動作をより円滑化することができ、ひいては操作性・操作フィーリングの悪化や解除異音の発生を抑制することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、シートクッション側及びシートバック側のいずれか一方に固定される第1ブラケットと、前記シートクッション側及び前記シートバック側のいずれか他方に固定され前記第1ブラケットに対する相対回動に伴って前記シートクッションに対する前記シートバックの傾斜角度を調整可能な第2ブラケットと、前記第2ブラケットに設けられた内歯に係脱可能な外歯を有し前記第1ブラケットに配設された一対のガイド部により形成されたガイド溝によって径方向への移動が案内されるポールと、前記ポールに係合されて前記第1ブラケットに回動自在に設けられたカム部材と、前記外歯及び前記内歯の噛合側に前記ポールが移動するように前記カム部材を回動付勢する付勢部材と、前記外歯及び前記内歯の噛合の解除側に前記ポールが移動するように前記付勢部材の付勢力に抗して前記カム部材を回動させる操作部材とを備える車両用シートリクライニング装置において、前記ガイド部の前記内歯に近い側となる先端部は、第1のプレス工程で成形された後に焼き入れが施された初期ガイド部が第2のプレス工程で成形されることで、前記外歯及び前記内歯の噛合解除時に生じうる前記ガイド部に対する前記ポールの傾き支点が、これら外歯及び内歯の噛合面の法線と前記ガイド部との交点よりも前記内歯に近い側に配置されるように周方向に突出していることを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、前記外歯及び前記内歯の噛合解除時に生じうる前記ガイド部に対する前記ポールの傾き支点が、これら外歯及び内歯の噛合面の法線と前記ガイド部との交点よりも前記内歯に近い側に配置されることで、前記ポールの移動(後退)動作をより円滑化することができ、ひいては操作性・操作フィーリングの悪化や解除異音の発生を抑制することができる。
【0012】
また、前記ガイド部の素材である前記初期ガイド部は、前記第1のプレス工程で成形された後に焼き入れが施されることで強度が増加しているものの、その寸法精度が低下している。しかしながら、前記ガイド部の前記内歯に近い側となる前記先端部は、前記初期ガイド部が前記第2のプレス工程で成形されたものであるため、増加した強度を維持したまま寸法精度を向上させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用シートリクライニング装置において、前記ガイド部の前記径方向において前記内歯から遠い側となる端部は、前記初期ガイド部が前記第2のプレス工程で成形されることで、前記周方向に突出していることを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、前記ガイド部の前記径方向において前記内歯から遠い側となる前記端部は、前記初期ガイド部が前記第2のプレス工程で成形されたものであるため、増加した強度を維持したまま寸法精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、解除操作時の操作性・操作フィーリングの悪化や解除異音の発生を抑制することができる車両用シートリクライニング装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〜
図5を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、車両フロア1には、乗員の着座部を形成するシート2が設置されている。このシート2は、座面を形成するシートクッション3と、該シートクッション3の後端部に略円盤状のリクライナ20を介して傾動(回動)自在に支持されたシートバック4とを備えて構成される。そして、シートクッション3に対するシートバック4の傾斜角度は、リクライナ20によって所定角度ごとに多段階で調整・保持可能となっている。これにより、当該シート2の着座者は、例えばその体格に合わせて目線の位置を調整可能である。あるいは、当該シート2の着座者は、例えばその求める快適性に合わせて着座姿勢を調整可能である。
【0018】
次に、リクライナ20について説明する。
図2に示すように、リクライナ20は、シート幅方向に中心線(軸線)O1の延びる円盤状の第1ブラケット21及び第2ブラケット31を備えている。第1ブラケット21は、例えばシートクッション3側に固定され、第2ブラケット31は、シートバック4側に固定される。
【0019】
第1ブラケット21は、例えば金属板の半抜き(ハーフブランキング)により成形されたもので、第2ブラケット31側に開口する円形の凹部22を有している。凹部22は、中心線O1(軸線)を中心とする内周面22aを有している。
【0020】
第1ブラケット21の凹部22内には、3つの略扇状のガイド部としての凸部23が円周上に等角度間隔に配置されている。各凸部23は、その周方向両側にガイド壁24を形成する。各隣り合う凸部23の周方向で対向するガイド壁24同士は、中心線O1を中心とする径方向に互いに概ね平行に延びており、凹部22の底面と協働して当該径方向に延びる略U字溝状のガイド溝26を円周上に等角度間隔に形成する。
【0021】
また、第1ブラケット21の中央部には、略円形の貫通孔25が形成されている。この貫通孔25は、所定角度位置で径方向外側に凹設された係止孔25aを有する。
第2ブラケット31は、例えば金属板の半抜きにより成形されたもので、第1ブラケット21の内周面22aの内径と同等の外径の外周面31aを有する。また、第2ブラケット31は、その中央部に円形の貫通孔31bが形成されている。さらに、第2ブラケット31は、
図3に示すように、第1ブラケット21側に開口する略円形の凹部32を有している。凹部32の内周面には、中心線O1を中心とする内歯33が全周に亘って形成されている。
【0022】
第2ブラケット31は、その外周面31aで、第1ブラケット21の内周面22aと摺接するように嵌合されている。そして、第1ブラケット21及び第2ブラケット31の外周部には、第1ブラケット21の内周面22aと第2ブラケット31の外周面31aとが嵌合された状態で、金属板からなるリング状の保持部材30が装着されている。第1ブラケット21及び第2ブラケット31は、この保持部材30によって相対回動が許容された状態で軸線方向に抜け止めされている。
【0023】
図2に示すように、第1ブラケット21と第2ブラケット31との間には、第1ポール41Aと、一対の第2ポール41Bと、カム42と、レリーズプレート43と、付勢部材としての渦巻きばね44とが配設されている。カム42及びレリーズプレート43はカム部材を構成する。
【0024】
第1及び第2ポール41A,41Bは、隣り合う2つのガイド壁24の間(即ちガイド溝26)に装着されて、中心線O1を中心とする円周上に等角度間隔に配置されている。
第1ポール41Aは、鋼材を鍛造加工するなどして作製され、互いに段違い形成された第1ブロック51と第2ブロック52とを備えている。第1ポール41Aは、第1ブロック51及び第2ブロック52がそれぞれ第2ブラケット31の内歯33側及び中心線O1側に配置されている。
【0025】
第1ブロック51の円弧状の外方端(第2ブラケット31の内歯33と対向する端面)には、第2ブラケット31の内歯33と噛合可能な外歯54が形成され、第1ブロック51の内方端(外方端とは逆向きの端面である背面)には、カム42の外周部に係合する内面カム部55が形成されている。一方、第2ブロック52の略中央部には、板厚方向に貫通するポール側溝カム部56が透設されている。
【0026】
そして、第1ポール41Aは、その両幅端部を両ガイド壁24に摺接する態様で、ガイド溝26により中心線O1を中心とする径方向への移動が案内されている。第1ポール41Aは、ガイド溝26に沿って径方向に進退することで、その外歯54と内歯33とを噛合又は解除(係脱)する。
【0027】
第2ポール41Bは、板状の鋼板をプレス加工するなどして作製され、第1ポール41Aの第2ブロック52が切除され、第1ブロック51のみによって構成された形状に近似した段差をもたない平板形状をなしている。第2ポール41Bの円弧状の外方端(第2ブラケット31の内歯33と対向する端面)には、第2ブラケット31の内歯33と噛合可能な外歯57が形成され、第2ポール41Bの内方端(外方端とは逆向きの端面である背面)には、カム42の外周部に係合する内面カム部58が形成されている。さらに、第2ポール41Bには、幅方向の中央部に係合突起59が突設されている。
【0028】
そして、第2ポール41Bは、その両幅端部を両ガイド壁24に摺接する態様で、ガイド溝26により中心線O1を中心とする径方向への移動が案内されている。第2ポール41Bは、ガイド溝26に沿って径方向に進退することで、その外歯57と内歯33とを噛合又は解除(係脱)する。
【0029】
カム42は、第2ブラケット31の凹部32内となる第1及び第2ポール41A,41Bの内周側で、中心線O1上に回動可能に配置されている。カム42は、板状の鋼板をプレス加工するなどして作製され、段差をもたない平板形状をなしている。そして、カム42は、その外周部に円周上に等角度間隔に3組のカム面65を有している。また、カム42の中央部には、略小判形の嵌合孔66が形成されている。
【0030】
各カム面65は、該当の第1及び第2ポール41A,41Bの対向する内面カム部55,58に当接可能であり、カム42がロックする方向(以下、「ロック回動方向」ともいう)に回動されたときに該当の内面カム部55,58を押圧する。
【0031】
一方、カム42がロックを解除する方向(以下、「ロック解除回動方向」ともいう)に回動されると、各カム面65は、該当の第1及び第2ポール41A,41Bの内面カム部55,58から離隔される。
【0032】
カム42の側面には、円周上に間隔をおいて複数の係合突起67が突設され、これら係合突起67の1つが、第1ポール41Aのポール側溝カム部56に挿入・係合されている。ポール側溝カム部56及び係合突起67は、カム42のロック解除回動方向への回動によって第1ポール41Aを径方向内方へ移動させるように作用する。
【0033】
カム42の側面には、略半円薄板状のレリーズプレート43が係合突起67に係合されて一体的に取付けられている。レリーズプレート43は、第1ポール41Aの第2ブロック52と軸線方向に一致するようにカム42に取付けられており、両第2ポール41Bの端面に摺接可能に対接されている。これによって、両第2ポール41B及びレリーズプレート43が第1ポール41Aの厚みの範囲内に収められている。なお、第1ポール41Aに対応する角度範囲を開放することで、カム42と一体でのレリーズプレート43の回動によって該レリーズプレート43が第1ポール41Aと干渉することを回避している。
【0034】
レリーズプレート43には、板厚方向に貫通する2つのレリーズプレート側溝カム部69が形成されている。これらレリーズプレート側溝カム部69には、両第2ポール41Bに突設された係合突起59がそれぞれ挿入・係合されている。レリーズプレート側溝カム部69及び係合突起59は、カム42及びレリーズプレート43のロック解除回動方向への回動によって第2ポール41Bを径方向内方へ移動させるように作用する。
【0035】
渦巻きばね44は、第1及び第2ポール41A,41Bを第2ブラケット31に係合する方向(ロック回動方向)にカム42を回動付勢するもので、第1ブラケット21の貫通孔25内に収納されている。渦巻きばね44は、例えば略矩形の扁平な線材を所定の渦巻き形状に曲成することにより形成されており、第1ブラケット21とカム42との間に配設されている。すなわち、渦巻きばね44の外側の脚部44aは、係止孔25aに係止され、内側の脚部44bは、カム42の端面に設けた図略の係止部に係止されている。
【0036】
かかる渦巻きばね44の付勢力によって、カム42は第1ブラケット21に対してロック回動方向に回転付勢され、そのカム面65によって第1及び第2ポール41A,41Bを径方向外方に押圧し、各々の外歯54,57を第2ブラケット31の内歯33に係合させるようになっている。
【0037】
図3に示すように、各リクライナ20には、例えば金属棒からなるヒンジピン70が中心線O1に沿って挿通されている。このヒンジピン70は、前記カム42の嵌合孔66に嵌挿される略小判柱状の嵌合軸部71を有するとともに、第2ブラケット31(貫通孔31b)に軸支される略円柱状の軸部72を有する。なお、カム42の嵌合孔66に嵌挿される嵌合軸部71の先端部は、第1ブラケット21(貫通孔25)に遊挿されて外側に突出している。
【0038】
第1ブラケット21(貫通孔25)から外側に突出する嵌合軸部71の先端部には、例えば金属板からなるアーム状の操作部材としての解除用レバー76が一体回動するように連結されている。従って、中心線O1を中心に一方向(カム42のロック解除回動方向に相当)に解除用レバー76を回動させると、これに連動してヒンジピン70及びカム42が回動する。このとき、カム42及びレリーズプレート43がロック解除回動方向に回動することで、第1ポール41A及び両第2ポール41Bが径方向内方に移動し、リクライナ20が回動自在となる。
【0039】
その後、解除用レバー76を解放すると、渦巻きばね44に付勢されるカム42は、レリーズプレート43と共にロック回動方向に回動することで、第1ポール41A及び両第2ポール41Bが径方向外方に移動し、リクライナ20が回動不能となる。同時に、ヒンジピン70及び解除用レバー76は、カム42に連動して元位置に復帰する。
【0040】
次に、第1ブラケット21の各ガイド壁24の形状について、カム42のロック解除回動方向への回動に伴う第1及び第2ポール41A,41Bの外歯54,57と第2ブラケット31の内歯33との噛合解除時の動作との関係等を含めて説明する。
図4(a)に拡大して示すように、凸部23の各ガイド壁24は、その延在方向に概ね3つの領域に分割されており、内歯33に近い側から順番に突出部としての第1突出部24a、本体部24b、第2突出部24cをそれぞれ形成する。
【0041】
本体部24bは、略平面形状を呈しており、隣接するガイド壁24(本体部24b)との間に形成するガイド溝26の開口幅が内歯33側に近付くに従って徐々に縮開されるように僅かに傾斜している。つまり、ガイド溝26を形成する対の本体部24b(ガイド壁24)は、いわゆる「八」の字形状をなす。
【0042】
第1突出部24aは、本体部24bに対して周方向に突出している。これは、第1及び第2ポール41A,41Bの外歯54,57と第2ブラケット31の内歯33との噛合解除時、第1及び第2ポール41A,41Bの移動(後退)動作をより円滑化するためである。
【0043】
すなわち、
図4(b)(c)に示すように、例えば第1ポール41Aの外歯54及び第2ブラケット31の内歯33の噛合を解除するように第1ポール41Aを後退させる際、該第1ポール41Aは、ロック解除回動方向に回動するカム42に連動して回動しようとする。このため、
図4(b)に示すように、解除動作の開始直後では、第1ポール41Aは、主としてその幅方向中央の外歯54a及び内歯33aの噛合面の法線N1方向に第2ブラケット31から押されて、ガイド壁24に対して傾こうとする。このとき、ガイド壁24に第1突出部24aが形成されていることで、第1ポール41Aがガイド壁24に当接(密接)する部位である傾き支点Pf1は、法線N1とガイド壁24との交点Pi1よりも内歯33に近い側に位置する。中心線O1及び外歯54aを結ぶ径方向と法線N1方向とがなす角度θ1の余角(=π/2−θ1)は、外歯54aにおける圧力角に相当する。
【0044】
また、
図4(c)に示すように、解除動作が完了する直前では、第1ポール41Aは、主としてその幅方向一端(カム42の回動方向における先行側の先端)の外歯54b及び内歯33bの噛合面の法線N2方向に第2ブラケット31から押されて、ガイド壁24に対して傾こうとする。このときも、ガイド壁24に第1突出部24aが形成されていることで、第1ポール41Aがガイド壁24に当接(密接)する部位である傾き支点Pf2は、法線N2とガイド壁24との交点Pi2よりも内歯33に近い側に位置する。中心線O1及び外歯54bを結ぶ径方向と法線N2方向とがなす角度θ2の余角(=π/2−θ2)は、外歯54bにおける圧力角に相当する。
【0045】
なお、
図4(b)(c)から明らかなように、解除動作の進行に伴い、第1ポール41Aがガイド壁24に当接(密接)する部位である傾き支点Pfは徐々に内歯33から離れていき、外歯54及び内歯33の噛合面の法線Nとガイド壁24との交点Piは徐々に内歯33に近付いていく。従って、以上の関係から、解除動作の全期間を通じて、傾き支点Pfが交点Piよりも内歯33に近い側に位置することになる。換言すれば、第1突出部24aは、解除動作において、傾き支点Pfと前記交点Piとの上記した配置関係を逆転させないように成形されている。そして、第2ブラケット31から押される第1ポール41Aは、傾き支点Pfを中心にその移動方向に対する傾きを抑えるように揺動し、第1ポール41Aの円滑化な移動(後退)動作が実現される。つまり、内歯33(第2ブラケット31)からの第1ポール41Aの離脱性に係る該第1ポール41Aの可動方向及び姿勢は、その挙動の支点となる傾き支点Pfによって支配的に制御されるものであり、ガイド壁24に形成された第1突出部24aによって所要の配置関係となる傾き支点Pfが確保されている。
【0046】
第2突出部24cも、本体部24bに対して周方向に突出している。これは、第1ポール41Aの移動(進退)動作時の姿勢をより安定化するためである。すなわち、解除動作が一旦完了すると、第1ポール41Aは、第2ブラケット31から押されることなく、ガイド壁24(ガイド溝26)に案内されて移動(後退)動作する。このとき、第1ポール41Aの姿勢は、第1及び第2突出部24a,24cでの2点支持でより安定した状態で支えられる。第1ポール41Aの外歯54及び第2ブラケット31の内歯33を噛合するように第1ポール41Aを前進させる場合についても同様である。
【0047】
なお、第2突出部24cの本体部24bに対する周方向への突出長は、第1突出部24aの本体部24bに対する周方向への突出長と略同等に設定されている。しかしながら、第1突出部24aは、見かけ上、本体部24bの傾斜分だけ第2突出部24cよりも周方向に突出している。このため、解除動作の当初は、各ガイド壁24と第1及び第2ポール41A,41Bとの関係が第1突出部24aで支配的となって、前述の円滑化な移動(後退)動作が実現されている。
【0048】
上記した各ガイド壁24の形状と第1ポール41Aの動作との関係は、各ガイド壁24の形状と第2ポール41Bの動作との関係についても成立することはいうまでもない。
次に、本実施形態の動作について説明する。
【0049】
解除用レバー76の解除操作により、カム42をロック解除回動方向に回動させると、第1及び第2ポール41A,41Bは、各々の外歯54,57及び内歯33の噛合面の法線方向に第2ブラケット31から押されて、ガイド壁24に対して傾こうとする。このとき、ガイド壁24に第1突出部24aが形成されていることで、第1及び第2ポール41A,41Bの各々の傾き支点は、前記法線とガイド壁24との交点よりも内歯33に近い側に位置する。このため、第1及び第2ポール41A,41Bの移動(後退)動作が前述の態様でより円滑化される。
【0050】
次に、第1ブラケット21の各ガイド壁24の製造方法について説明する。
第1ブラケット21は、第1のプレス工程により前述の半抜きで成形された後に焼き入れされる。この段階では、
図5(a)に拡大して示すように、凸部23の素材となる初期ガイド部としての初期凸部Wは、ガイド壁24の素材となる初期ガイド壁Wgを有する。この初期ガイド壁Wgは、その延在方向に概ね2つの領域に分割されており、内歯33に近い側から順番に第1素材部Wga、第2素材部Wgbをそれぞれ形成する。
【0051】
第1素材部Wgaは、略平面形状を呈しており、隣接する初期ガイド壁Wg(第1素材部Wga)との距離(ガイド溝26の開口幅に相当)が内歯33側に近付くに従って徐々に縮小されるように僅かに傾斜している。つまり、隣り合う両第1素材部Wgaは、いわゆる「八」の字形状をなす。
【0052】
一方、第2素材部Wgbは、第1素材部Wgaとの接続部(第1素材部Wgaの内歯33から遠い側の先端)に対して周方向に突出している。
そして、初期ガイド壁Wgからガイド壁24を成形する際には、第2のプレス工程において、
図5(b)に模式的に示すように、第1素材部Wgaの内歯33に近い側の先端部(ガイド壁24の第1突出部24aに相当)及び第2素材部Wgbをそれぞれ略四角ブロック状の潰しパンチP1,P2で潰す。
【0053】
これにより、第1素材部Wgaの内歯33に近い側の先端部の肉が周方向に突出するように移動して第1突出部24aを形成するとともに、第2素材部Wgbの肉が周方向に突出するように移動して第2突出部24cを形成する。そして、初期ガイド壁Wgからガイド壁24が成形される。第2のプレス工程にてガイド壁24を成形するのは、第1のプレス工程後に強度増加を目的に焼き入れた際、例えば寸法精度の低下に伴い初期凸部Wの初期ガイド壁Wgに繋がる隅部に生じたひけを改善するためである。
【0054】
なお、
図5(b)には、第1突出部24a(ガイド壁24)に対する第1及び第2ポール41A,41Bの傾き支点Pfを、第1素材部Wga(初期ガイド壁Wg)に対するその傾き支点Pfsと共に表している。同図に示すように、第1突出部24aでの傾き支点Pfは、第1素材部Wgaの先端部を周方向に湾出させた分だけ、第1素材部Wgaでの傾き支点Pfsよりも内歯33から遠い側に位置している。すなわち、前述の解除動作において、傾き支点Pfが外歯54,57及び内歯33の噛合面の法線Nとガイド壁24との交点Piに、より近付くことになる。しかしながら、第1素材部Wgaを前述の態様で傾斜させたことと、潰しパンチP2とは分離された潰しパンチP1にて第1素材部Wgaの先端部を潰したこととで、両傾き支点Pf,Pfs間の距離が縮小されている。つまり、第2のプレス工程の前後における傾き支点(Pf,Pfs)の移動量が縮小されている。
【0055】
図5(c)には、前述の傾斜を割愛して第1及び第2ポール41A,41Bの移動方向に全長に亘って延びる初期ガイド壁Wg91に対し、その内歯33に近い側の先端部を潰しパンチP1で潰した際の傾き支点Pf91の位置を示している。同図から明らかなように、第2のプレス工程の前後における傾き支点(Pf91,Pfs)の移動量が相対的に拡大されていること、即ち前述の解除動作において、傾き支点Pfと前記交点Piとの配置関係が逆転する可能性がより高くなっていることが確認される。
【0056】
また、
図5(d)には、前述の初期ガイド壁Wg91をその略全長に亘って延在する潰しパンチP3で潰した際の傾き支点Pf92の位置を示している。同図から明らかなように、第2のプレス工程の前後における傾き支点(Pf92,Pfs)の移動量が更に拡大されていること、即ち前述の解除動作において、傾き支点Pfと前記交点Piとの配置関係が逆転する可能性が更に高くなっていることが確認される。これは、潰しパンチP3で潰される初期ガイド壁Wg91がその略全長に亘って周方向に湾出するためである。
【0057】
以上により、本実施形態では、第2のプレス工程の前後における傾き支点(Pf,Pfs)の移動量が相対的に縮小されている。そして、前述の解除動作において、傾き支点Pfと前記交点Piとの配置関係が逆転する可能性が低減されている。
【0058】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、第1突出部24aにより、外歯54,57及び内歯33の噛合解除時に生じうるガイド壁24(凸部23)に対するポール41A,41Bの傾き支点Pfが、これら外歯54,57及び内歯33の噛合面の法線Nとガイド壁24(凸部23)との交点Piよりも内歯33に近い側に配置される。このため、ポール41A,41Bの移動(後退)動作をより円滑化することができ、ひいては操作性・操作フィーリングの悪化や解除異音の発生を抑制することができる。
【0059】
また、傾き支点Pf及び交点Piの配置関係の実現にあたり、第1突出部24aに集中して寸法精度を管理すればよい。このため、例えばガイド壁24の径方向における全長に亘って寸法精度を管理する場合に比べ、当該配置関係をより簡易に実現することができる。そして、第1ブラケット21の生産性、ロバスト性及び製作性を向上することができ、ひいてはコストを削減することができる。
【0060】
(2)本実施形態では、ガイド壁24(凸部23)の素材である初期ガイド壁Wg(初期凸部W)は、第1のプレス工程で成形された後に焼き入れが施されることで強度が増加しているものの、その寸法精度が低下している。しかしながら、ガイド壁24の内歯33に近い側となる先端部(第1突出部24a)は、第1素材部Wgaの先端部が第2のプレス工程で成形されたものであるため、増加した強度を維持したまま寸法精度を向上させることができる。
【0061】
(3)本実施形態では、ガイド壁24の前記径方向において内歯33から遠い側となる先端部(第2突出部24c)は、第2素材部Wgbが第2のプレス工程で成形されたものであるため、増加した強度を維持したまま寸法精度を向上させることができる。
【0062】
(4)本実施形態では、第1及び第2突出部24a,24c(径方向におけるガイド壁24の両先端部)は、周方向にそれぞれ突出していることで、ポール41A,41Bの移動(進退)時には該ポール41A,41Bの姿勢をこれら突出する二つの部位でより安定した状態で支えることができる。特に、第1及び第2突出部24a,24cは、第2のプレス工程において寸法精度が向上されていることで、ポール41A,41Bの姿勢をいっそう安定した状態で支えることができる。従って、ポール41A,41Bをより円滑に移動させることができ、ひいては外歯54,57及び内歯33をより円滑に係脱させることができる。
【0063】
また、ポール41A,41Bの上記した姿勢安定化の実現にあたり、第1及び第2突出部24a,24cに集中して寸法精度を管理すればよい。このため、例えばガイド壁24の径方向における全長に亘って寸法精度を管理する場合に比べ、当該姿勢安定化をより簡易に実現することができる。そして、第1ブラケット21の生産性、ロバスト性及び製作性を向上することができ、ひいてはコストを削減することができる。
【0064】
(5)本実施形態では、周方向で対向する第1素材部Wgaとの間で「八」の字形状をなすように傾斜する第1素材部Wgaの内歯33に近い側の先端部を潰しパンチP1で潰すようにしたことで、第2のプレス工程の前後における傾き支点(Pf,Pfs)の移動量を相対的に小さくに抑えることができる。
【0065】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態では、ガイド溝26を形成する対のガイド壁24を左右対称の形状としたが、第1突出部24a等は、ポール41A,41Bの解除動作に係る片側(カム42のロック解除回動方向で遅れ側)のガイド壁24のみに設ければよい。
【0066】
・前記実施形態において、ガイド壁24の形状は一例であり、解除動作の全期間を通じて、傾き支点Pfが交点Piよりも内歯33に近い側に位置するように内歯33に近い側の先端部が周方向に突出していればよい。
【0067】
例えば、各ガイド壁24は、ガイド溝26を形成する隣接するガイド壁24とで、いわゆる「八」の字形状をなすように傾斜する平面状であってもよい。また、第1ブラケット21(ガイド壁24)を切削にて成形する場合には、前記条件を満足する任意の形状に成形すればよい。
【0068】
なお、「解除動作の全期間」とは、ポール41A,41Bの外歯54,57及び内歯33の噛合解除の開始直後から噛合解除の完了直前までのことであって、ガイド溝26に沿うその後のポール41A,41Bの移動期間を含むものではない。
【0069】
・前記実施形態において、第1ブラケット21内に配設されるポール(41A,41B)の個数は任意である。また、複数のポールが配設される場合、これらの動作が連動するのであれば互いに異なる形状であってもよいし、同一形状であってもよい。特に、全てのポールを第1ポール41Aの形状にする場合には、レリーズプレート43を割愛すればよい。
【0070】
・前記実施形態において、第1ブラケット21及び第2ブラケット31と、シートクッション3及びシートバック4との固定関係は逆であってもよい。