(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂粒子は、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物(MF)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE、CTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、及びエチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤の混合の際、更に帯電制御剤を混合することを特徴とする請求項1または2に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
前記樹脂粒子は、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物(MF)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE、CTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、及びエチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項5に記載の消色型電子写真トナー。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の種々の実施形態について説明する。
【0020】
本発明の一実施形態に係る消色型電子写真トナーは、結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤および帯電制御剤を混合、溶融混練、及び粉砕してなるものである。これら結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤及び帯電制御剤の混合する際、及び/又は溶融混練する際に、平均粒径0.3μm以上、10μm以下の樹脂粒子が添加されている。
【0021】
通常、消色後のトナー中のバインダ樹脂は、従来の樹脂色になり、消色後の画像または印字はやや黄ばんでしまう。同様に、トナー中の色素も消色後は僅かに黄ばんでしまう。これに対し、トナーに所定の粒径の樹脂粒子を添加することにより、消色後の画像または印字を程よく隠蔽し、消色後の印字部が黄ばむのを目立たなくする効果を発揮するものと推察され、実際に、消色後の印字部の黄変を抑制することができた。その結果、消色後の視認性の向上に有効であった。
【0022】
樹脂粒子の平均粒径は、0.3μm以上、10μm以下である必要がある。より好ましい平均粒径は、0.3〜6μmである。
【0023】
樹脂粒子の平均粒径が0.3μm未満では、
図4(a)に示すように、同じ添加量(樹脂粒子の添加量はトナー質量の5〜20質量%)の場合に一定の体積中に存在する樹脂粒子の数は粒径が大きい場合と比較して増大するため、沢山屈折する機会があり、そのため、消色に使われない乱反射の光が多くなる。このように光の屈折、損失を繰り返すので効率が悪くなる。つまり、乱反射が増加するため、光が色素に到達しにくく、消色に必要な光量が不足してしまう。
【0024】
一方、樹脂粒子の平均粒径が10μmを超えると、
図4(c)に示すように、一定の体積中に存在する樹脂粒子の数は粒径が大きいため少なくなり、屈折の機会が減少するので、光が十分に届かなくなる。つまり、1つの粒子内で屈折した光が再度他の粒子内に屈折する場合が少なくなるため、トナー層の中で光が行き渡らない場所が発生する。従って、光が色素に到達しにくく、消色に必要な光量が不足してしまう傾向にある。
【0025】
これに対し、3μm以上、10μm以下の平均粒径の樹脂粒子を用いた場合には、
図4(b)に示すように、一定体積中に存在する粒子の数は程よくなり、屈折の機会が適度なので、まんべんなくトナー層の中を光が行き来することになり、消色後の印字部の黄変を抑制し、消色後の視認性を向上させることができる。
【0026】
更に、平均粒径0.3μm以上10μm以下(望ましくは0.3μm以上6μm以下)の樹脂粒子を添加するのを、結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤、帯電制御剤を混合する際、及び/又は混合により得た混合物を溶融混練する際とした場合、
図5(a)に示すように、樹脂粒子はトナー粒子内で均一に分散しやすい。つまり、消色型電子写真トナーは、結着樹脂と、近赤外線吸収色素と、消色剤と、平均粒径0.3μm以上10μm以下の樹脂粒子と、を含むトナー粒子を複数備えており、樹脂粒子はトナー粒子中に分散されている。
【0027】
これに対し、溶融混練により得た混練物を粉砕した後に、平均粒径0.3μm以上10μm以下(望ましくは0.3μm以上6μm以下)の樹脂粒子を添加したとしても、
図5(b)に示すように、トナー粒子の表面に樹脂粒子が付着するだけであるので、トナー粒子の表面から樹脂粒子が取れやすい状態となる。また、樹脂粒子同士が集まりあい凝集しやすい。従って、均一に分散されないので、消色後の視認性を向上させることは困難となる。
【0028】
この樹脂粒子の粒子径は、一意的に決まる真球の粒子径と異なり、沢山の粒を同じ方法で測定し、統計的に粒の大きさを決める必要がある。例えば、目視や画像解析では、ランダムに配向した粒子を一定軸方向の長さについて測定する定方向径や、粒子の投影面積に等しい理想形状(通常は円)の粒子の大きさを求める相当径が一般的である。また、粒子の長軸と短軸の比率を表すアスペクト比等がある。更に、頻度で表す粒度分布や、細かい粒子の側を0として右上がりのカーブとなるオーバーサイズと粗い側を0として右下がりとなるアンダーサイズがある累積分布で表す粒度分布がある。
【0029】
また、粉体の大きさを、必ず分布で表さなければならないとすると不便なので。一つの指標をもって粒度を表すことがある。よく使われる指標としては、出現比率が最も大きい粒子径チャンネル又は分布の極大値であるモード径、算術平均径、そして粉体をある粒子径から2つに分けた時、大きい側と小さい側が等量となる径のことであり、D50(メジアン径)がある。
【0030】
今回は、粒子の個数と大きさを分布として表記する個数分布基準ではなく、レーザー回折散乱法を用いる体積分布基準のD50を用いる。つまり、樹脂粒子の平均粒径とは、レーザー回折散乱法で測定した体積分布基準の50%粒子径(D50)のことをいう。つまり、平均粒径とは、複数の粒子を所定の粒径から2つに分類する際、粒径が大きい側と粒径が小さい側とが体積基準で等量となる際の所定の粒径のことである。
【0031】
本実施形態に係る消色型電子写真トナーに好ましく用いられる樹脂粒子として、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物(MF)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE、CTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等を挙げることができる。
【0032】
これらの樹脂の中では、フッ素樹脂、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を好ましく用いることが出来る。
【0033】
なお、これら以外にも、可視光や近赤外光に透過性があり、同様の効果が期待できるものであれば限定されない。
【0034】
以上のように構成される消色型電子写真トナーを用いて、電子写真プロセスにより印字又は画像を形成すると、印字又は画像は、可視光下では高い画像濃度であるが、近赤外線を照射すると、印字又は画像が消色する。これは、次のような現象に基づく。
【0035】
すなわち、印字又は画像に近赤外線を照射すると、トナー中の近赤外線吸収色素が励起状態になり、消色剤と反応し、消色現象が生ずる。その結果、印字又は画像が消色し、用紙を再利用することが可能となる。
【0036】
本実施形態に係る消色型電子写真トナーは、原料の混合及び/又は溶融混練の際に、平均粒径0.3μm以上10μm以下の樹脂粒子が添加されている。そのため、消色後の視認性を向上させ、消色前の印字情報を消色後に識別、復元し難くすることが可能である。溶融混練の後に、平均粒径が0.3μm以上10μm以下の樹脂粒子を添加する外添を行うと、均一に撹拌されないため、消色後の視認性を向上させることが難しくなる。また、原料の混合前に、平均粒径0.3μm以上10μm以下の樹脂粒子を添加する場合よりも、原料の混合及び/又は溶融混練の際に、平均粒径0.3μm以上10μm以下の樹脂粒子を添加する方が、消色後の視認性を向上させることができる。 樹脂粒子の添加量は、好ましくトナー質量の5〜20質量%である。
【0037】
これに対し、樹脂粒子の添加量がトナー質量の5質量%未満では、樹脂粒子の添加による効果が発揮されず、消色後のトナー中のバインダ樹脂が、従来の樹脂色になり、消色後の画像または印字はやや黄ばんでしまう。一方、20質量%を超えると、樹脂粒子の添加量が多すぎて、透過率が落ち、白濁する傾向となる。
【0038】
なお、消色反応は、近赤外線吸収色素の色素カチオンが消色剤のアルキル基と結合することにより生ずる。消色トナーにおける近赤外線吸収色素と消色剤の比率は、消色反応後に未反応の近赤外線吸収色素が残留しないように、適宜選択される。
【0039】
本実施形態に係る消色トナーに含まれる近赤外線吸収色素としては、従来公知のものを用いることが出来る。そのような近赤外線吸収色素として、例えば、特開平4−362935号公報及び特開平5−119520号公報に記載されているものがある。具体的な近赤外線吸収色素の例として、例えば、下記式に示すようなIRT(商品名、昭和電工(株)製)を挙げることが出来る。
【化1】
【0040】
式中、X及びYは、いずれもN(C
2H
5)
2を表し、Z
−は下記式に示す対イオンである。
【化2】
【0041】
消色剤としては、従来公知の4級アンモニウムホウ素錯体を用いることが出来る。そのような4級アンモニウムホウ素錯体として、例えば、特開平4−362935号公報及び特開平5−119520号公報に記載されているものがある。具体的な4級アンモニウムホウ素錯体の例として、下記式に示すP3B(商品名、昭和電工(株)製)を挙げることが出来る。
【化3】
【0042】
結着樹脂としては、公知のものを含む広い範囲から選択することができる。具体的には、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、およびスチレン−ブタジエン共重合体などのスチレン系樹脂をはじめ、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、クマロン樹脂、キシレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが例示でき、これらの樹脂を二種類以上組み合わせて用いてもよい。なお、これらの樹脂のうち、ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0043】
帯電制御剤としては、通常、電子写真用トナーに使用される任意のものを使用可能であり、その添加による効果を得ることができる。
【0044】
本発明の一実施形態に係る消色トナーは、結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤、帯電制御剤、樹脂粒子以外に、離型材を含むことができる。離型剤としては、通常、電子写真用トナーに使用される任意のものを使用可能である。
【0045】
以下、図面を参照して、以上説明した消色型電子写真トナーを用いて印字された用紙を消色して再生し、再度印字するための色消機能付プリンターについて説明する。
【0046】
図1に示すプリンターは、市販されているプリンター(N3500:カシオ計算機(株)製)を改造したものである。このプリンターでは、印字ベルト1の周囲に、光感応性トナー現像器2、消色用ヒータ3、消色用LEDヘッド4、転写部5、定着部6が配置されている。このプリンターの底部には光感応性トナーを用いて印字された用紙Pを収納するカセット7が配置され、上部には、光感応性トナーを用いて再印字された用紙を排出する排紙部8が配置されている。なお、光感応性トナー現像器2には、光感応性トナーを収納する光感応性トナーカートリッジ9が取り付けられている。
【0047】
図1に示すプリンターは、次のようにして動作する。
【0048】
最初に、カセット7から光感応性トナーを用いて印字された用紙Pが取り出され、用紙経路10に沿って各部を通る。即ち、用紙Pは、消色用ヒータ3及び消色用LEDヘッド4により熱が加えられるとともに近赤外線が照射され、印字が消色される。次いで、印字が消色された用紙は転写部5において、現像された光感応性トナーの画像が転写される。現像された光感応性トナーの画像は、光感応性トナーカートリッジ9から供給された光感応性トナーを用いて、光感応性トナー現像器2により現像された画像であり、印字ベルト1により転写部5に送られたものである。
【0049】
転写部5において転写された光感応性トナーの画像は、用紙経路10に沿って更に定着部に送られ、そこで定着処理が行われ、その後、排紙部8に排紙され、操作が完了する。
【0050】
以上のプリンターの動作では、ハロゲンランプヘッド3の出力は50mW/cm
2、消色用ヒータ2の温度設定は100℃とした。用紙経路4は、任意の設定速度に変更可能である。
【0051】
以下に本発明の実施例と比較例を示し、本発明の効果について具体的に説明する。
【0052】
実施例1
使用する光感応性トナーを以下のようにして製造した。
【0053】
波長817nmに感度を持つ赤外線感光色素「IRT」(昭和電工(株)製)1.5質量部、有機ホウ素化合物消色剤「P3B」(昭和電工(株)製)7.5質量部、トナー用ポリエステル結着樹脂(花王(株)製)82.0質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット(株)製)1.5質量部、カルナバWAX1号粉末(加藤洋行(株)輸入品)2.5質量部、及びポリテトラフルオロエチレン粒子(PTFE)「KTL−500F」(喜多村(株)製)5.0質量部からなる原料をヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製)に投入し、混合した。
【0054】
続いて、この混合物を二軸混練機で溶融混練した。次いで、得られた混練物をロートプレックス(ホソカワミクロン(株)製)で粗砕して、粗砕物を得た。得られた粗砕物を衝突式粉砕機にて、平均粒径が9μmになるように粉砕した。得られた粉砕物100質量部に外添剤としてシリカ「R972」(日本アエロジル(株)製)を1質量部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して、光感応性トナーを得た。
【0055】
実施例2
トナー用ポリエステル結着樹脂を77.0質量部、PTFE粒子「KTL−500F」を10.0質量部としたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0056】
実施例3
トナー用ポリエステル結着樹脂を72.0質量部、PTFE粒子「KTL−500F」を15.0質量部としたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0057】
実施例4
トナー用ポリエステル結着樹脂を67.0質量部、PTFE粒子「KTL−500F」を20.0質量部としたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0058】
実施例5
樹脂粒子として「KTL−500F」に替えて「ルブロンL−2」(ダイキン工業(株)製)5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0059】
実施例6
トナー用ポリエステル結着樹脂を77.0質量部、樹脂粒子として「KTL−500F」に替えて「ルブロンL−2」(ダイキン工業(株)製)10.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0060】
実施例7
樹脂粒子として「KTL−500F」に替えて「ルブロンL−5」(ダイキン工業(株)製)5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0061】
実施例8
樹脂粒子として「KTL−500F」に替えて「エポスターS6」(日本触媒(株)製)5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0062】
実施例9
樹脂粒子として「KTL−500F」に替えて「エポスターMA1002」(日本触媒(株)製)5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0063】
実施例10
樹脂粒子として「KTL−500F」に替えて「エポスターMA1004」(日本触媒(株)製)5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0064】
実施例11
樹脂粒子として「KTL−500F」に替えて「エポスターMA1006」(日本触媒(株)製)5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0065】
実施例12
樹脂粒子として「KTL−500F」に替えて「エポスターMS」(日本触媒(株)製)5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0066】
実施例13
樹脂粒子として「KTL−500F」に替えて「M
X−150」(綜研化学(株)製)
5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した
。
【0067】
実施例14
樹脂粒子として「KTL−500F」に替えて「M
X−300」(綜研化学(株)製)
5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した
。
【0068】
実施例15
樹脂粒子として「KTL-500F」に替えて「MX-1000」(綜研化学(株)製)5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0069】
実施例16
樹脂粒子として「KTL−500F」に替えて「SX−130H」(綜研化学(株)製)5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0070】
実施例17
樹脂粒子として「KTL−500F」に替えて「SX−350H」(綜研化学(株)製)5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0071】
実施例18
樹脂粒子として「KTL−500F」に替えて「SX−500H」(綜研化学(株)製)5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0072】
比較例1
トナー用ポリエステル結着樹脂を87.0質量部、PTFE粒子「KTL−500F」を0質量部としたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0073】
比較例2
トナー用ポリエステル結着樹脂を84.5質量部、樹脂粒子として「KTL−500F」に替えて酸化チタン「TA−500」(富士チタン(株)製)2.5質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0074】
比較例3
樹脂粒子として「KTL−500F」に替えて「エポスターS」(日本触媒(株)製)5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0075】
比較例4
樹脂粒子として「KTL−500F」に替えて「ポリフロンM-112」(ダイキン工業(株)製)(5.0質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0076】
比較例5
トナー用ポリエステル結着樹脂を83質量部、樹脂粒子として「KTL−500F」4質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0077】
比較例6
トナー用ポリエステル結着樹脂を66質量部、樹脂粒子として「KTL−500F」21質量部を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で光感応性トナーを作成した。
【0078】
下記表1に、上記実施例及び比較例で用いた樹脂粒子及び酸化チタンを挙げる。なお、
粒子の平均粒径は、レーザー回折散乱法(LA−920:堀場(株)製)を用いて測定し
た。
【表1】
【0080】
また、下記表2に、上記実施例及び比較例で用いたトナー組成を示す。
【表2】
【0081】
上記実施例及び比較例において得られた光感応性トナーをカートリッジに詰め、このカートリッジを
図1に示すプリンターに設置した。プリンターは、印字要求に対して、現像器2において光感応性トナーにより現像された像を転写部5にて用紙に転写し、定着部6にて定着する、通常の印字を行った。その結果、
図2に示すような印字物が得られた。用紙としては、P紙(富士ゼロックス(株)製)を用いた。
【0082】
得られた画像サンプルをX−rite938(X−rite(株)製)により測定した。測定項目は、
図2に示す印字部11と非印字部12のc濃度である。
【0083】
次に、画像サンプルを消色した。まず、
図1に示すプリンターのカセット7へ印字済み用紙Pをセットした。プリンターの消色用LEDヘッド4と消色用ヒータ3を点灯し、印字済み用紙Pを経路10を通過させて消色した。その後、用紙を機外へ排出した。得られた消色済み画像サンプルを
図3に示す。
【0084】
得られた画像サンプルをX−rite938(X−rite(株)製)により測定した。測定項目は、
図3に示す印字部11と非印字部12のL*、a*、b*、c濃度である。また、トナーの透過率をUV−2400(島津製作所(株)製)を用いて測定した。
【0085】
以上の測定項目を用いて、各例の視認性を以下の4点で評価した。
【0086】
<視認性評価1>
c濃度消色率を下記の計算式により求める(特開2009−192631号公報の記載を参考とした)。
【0087】
c濃度消色率=(
図2の印字部11のID−
図2の非印字部12のID)/(
図3の印字部11のID−
図3の非印字部12のID)
c濃度消色率は数字が高いほどc濃度が落ちていることを表しており、視認性評価1の評価基準は下記の通りである。
【0088】
7未満 :◎非常に良好
7未満6以上 :○良好
6未満5以上 :△実用上問題ないレベル
5未満 :×使用に耐えないレベル
<視認性評価2>
図3に示す印字部11と非印字部12の消色値ΔEを、下記の計算式により求める。
【0089】
ΔE={(印字部11のL*−非印字部12のL*)
2+(印字部11のa*−非印字部12のa*)
2+(印字部11のb*−非印字部12のb*)
2}
1/2
視認性評価は、ΔEの数値が低いほど下地の用紙に近接していることを表しており、評価基準は下記の通りである。
【0090】
5未満 :◎非常に良好
5以上6未満 :○良好
6以上7未満 :△実用上問題ないレベル
7以上 :×使用に耐えないレベル
<視認性評価3>
トナーの光透過率(%)をJIS K6717−4.5項(1977)に基づき測定する。
【0091】
<視認性評価4>
目視により以下の様に評価した。
【0092】
非常に良好、未印字物とみなされるレベル :◎
良好 :○
実用上問題ないレベル :△
使用に耐えないレベル :×
以上の評価方法にて得られた結果を下記表3に示す。
【表3】
【0093】
上記表3から、平均粒径0.3μm以上、10μm以下の樹脂粒子が添加された実施例1 から18に係る光感応性トナーは、いずれも良好な視認性評価を示していることがわかる。即ち、視認性評価が良好〜非常に優れていて、消色後の印字部と下地の用紙の視認性が近接しており、これにより消去された情報の識別及び復元を確実に防止することが可能である。その結果、印字を消去された用紙を違和感なく再使用することが可能であった。
【0094】
なお、樹脂粒子の量を調整することにより、各種用紙に対応する光感応性トナーの設計が可能となる。
【0095】
これに対し、樹脂粒子が添加されていない比較例1に係るトナーにより得たサンプルは、視認性は良好ではないが、実用上問題ないレベルであり、標準品である。比較例2から6 に係るトナーにより得たサンプルは、視認性は実施例に比べ劣るレベルであり、消色後の印字部の黄変が認められた。また、樹脂粒子の添加量が少なすぎる比較例5に係るトナー及び樹脂粒子の添加量が多すぎる比較例6に係るトナーにより得たサンプルもまた、視認性評価が劣るレベルであり、消色後の印字部の黄変が認められた
酸化チタンを2.5質量%添加した比較例2に係るトナーは、視認性評価が使用に耐えないレベルであり、消色後の印字部と下地の用紙の視認性が離れており、消色後の印字部の黄変が認められた。
【0096】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらはいずれも特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0097】
以下に、特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0098】
1.結着樹脂、近赤外線吸収色素、消色剤を混合し、前記混合により得た混合物を溶融混練し、前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤の混合の際、及び/又は溶融混練の際に、平均粒径0.3μm以上10μm以下の樹脂粒子を添加することを特徴とする消色型電子写真トナーの製造方法。
【0099】
2.前記平均粒径とは、複数の粒子を所定の粒径から2つに分類する際、前記粒径が大きい側と前記粒径が小さい側とが体積基準で等量となる際の前記所定の粒径であることを特徴とする1に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
【0100】
3.前記樹脂粒子の添加量は、トナー質量の5〜20質量%であることを特徴とする1または2に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
【0101】
4.前記樹脂粒子は、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物(MF)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE、CTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、及びエチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする1乃至3の何れか一に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
【0102】
5.前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤の混合の際、更に帯電制御剤を混合することを特徴とする1乃至4の何れか一に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
【0103】
6.前記溶融混練により得た混練物を粉砕することを特徴とする1乃至5の何れか一に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
【0104】
7.前記トナー質量は、前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤、前記帯電制御剤、前記蛍光増白剤、ワックスの合計の質量であることを特徴とする5または6に記載の消色型電子写真トナーの製造方法。
【0105】
8.結着樹脂と、近赤外線吸収色素と、消色剤と、平均粒径0.3μm以上10μm以下の樹脂粒子と、を含むトナー粒子を複数備え、前記樹脂粒子は前記トナー粒子中に分散されていることを特徴とする消色型電子写真トナー。
【0106】
9.前記平均粒径とは、複数の粒子を所定の粒径から2つに分類する際、前記粒径が大きい側と前記粒径が小さい側とが体積基準で等量となる際の前記所定の粒径であることを特徴とする8に記載の消色性型電子写真トナー。
【0107】
10.前記樹脂粒子の添加量は、トナー質量の5〜20質量%であることを特徴とする8または9に記載の消色性型電子写真トナー。
【0108】
11.前記樹脂粒子は、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物(MF)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE、CTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、及びエチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする8乃至10の何れか一に記載の消色性型電子写真トナー。
【0109】
12.更に帯電制御剤を含むことを特徴とする8乃至11の何れか一に記載の消色型電子写真トナー。
【0110】
13.前記トナー質量は、前記結着樹脂、前記近赤外線吸収色素、前記消色剤、前記帯電制御剤、前記蛍光増白剤、ワックスの合計の質量であることを特徴とする12に記載の消色型電子写真トナー。