(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のコイル部品において、ワイヤと端子金具との接続は、ワイヤの先端部を端子金具上に熱圧着することで実現される。ワイヤを端子金具に熱圧着すると、ワイヤの線材(Cu)と端子金具の表面のめっき膜(Ni及びSn)とが反応して合金層が形成される。ここで、合金層は融点が高いことから、コイル部品を回路基板上に実装するときにこの部分が半田の接合面となる場合には、半田の濡れ性を低下させる要因となる。特に、
図9(a)に示すように、熱圧着されるワイヤ20の先端部20eの位置を、端子金具21の端子面の端部に合わせると、ワイヤの延在方向における端子面の端から端まで、つまり端子面の広範囲に合金層が形成されてしまい、合金層が半田フィレットの形成を阻害し、実装不良を引き起こすおそれがある。
【0006】
この問題を解決するためには、
図9(b)に示すように、ワイヤ20の先端部20eを端子金具の端子面の端部ではなく、それよりも内側(中央付近)に設定すればよい。この場合、コアの巻芯部から引き出されたワイヤ20は、端子金具21の端子面を通過してそれよりも前方に引き出された後、ワイヤの先端部とすべき位置よりも後方のワイヤ部分(実践部分)が端子面に熱圧着され、前方のワイヤ部分(破線参照)は切断して取り除く必要がある。しかしながら、前方のワイヤ部分が端子金具21の端子面に接触していると、熱圧着時の熱で端子金具の表面のめっき膜が溶融した際に、ワイヤが端子金具の表面に固着してしまい、うまく切断して除去することができないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明によるコイル部品は、ワイヤを巻回してなるコイルと、前記コイルを支持する基体と、前記コイルの前記端末部が接続される端子金具とを備え、前記基体は、前記コイルの端末部の延在方向と平行な第1の表面を有し、前記端子金具は、前記基体の前記第1の表面上に位置する第1の端子部を有し、前記第1の端子部は、前記端末部と接触する第1の端子面を有する接触部と、前記端末部の延長線上に位置し、前記第1の端子面と同一平面上に端子面を有しない非接触部とを含むことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、熱圧着時にワイヤの端末部が端子金具の表面に圧接されないので、ワイヤの端末部の圧着を回避することができ、熱圧着後においてワイヤの切断除去を確実かつ容易に行うことができる。
【0009】
本発明において、前記第1の端子部は、上段部及び下段部からなる段差形状を有し、前記上段部の表面は、前記接触部の前記第1の端子面であり、前記下段部の表面は、前記非接触部に設けられた第2の端子面であることが好ましい。この構成によれば、半田実装される端子面の面積を広く確保することができる。また、圧着時においてコイルの端末部を正確に位置決めしなくてもよく、ワイヤの端末部を容易に圧着することができる。
【0010】
本発明において、前記基体の前記第1の表面は、前記第1の端子部の段差形状に合わせた段差面を有することが好ましい。この構成によれば、基体の表面を端子金具の段差面に沿わせることができ、端子金具の全体を確実に支持することができる。
【0011】
本発明において、前記基体は、前記第1の表面と直交する第2の表面を有し、前記端子金具はL字型であって、前記基体の前記第2の表面上に位置する第2の端子部をさらに有し、前記第2の端子部は、前記第2の表面に接着固定されており、前記第1の端子部は、前記第1の表面に接着固定されていないことが好ましい。この構成によれば、接着剤の塗付量のばらつきによる端子金具の高さばらつきを無くすことができる。
【0012】
本発明において、少なくとも前記非接触部が設けられた部位における前記第1の端子部の裏面と前記基体の前記第1の表面との間には隙間が設けられていることが好ましい。この構成によれば、コイルの端末部を切断する際、端子金具の弾性力によって切断時のクッションを与えることができ、これによりコイルの端末部を確実に切断することができる。
【0013】
本発明において、前記基体は、前記コイルが巻回される巻芯部と当該巻芯部の両端に設けられた一対の鍔部とを有するドラムコアであり、前記鍔部に前記端子金具が設けられていることが好ましい。この構成によれば、ドラムコアを用いた表面実装型のコイル部品において、ワイヤが継線される端子面の半田の濡れ性を高めることができ、電気的かつ機械的接続の信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱圧着後のワイヤの不要部分を確実に切断し、容易に除去することができる。したがって、半田の濡れ性が良好な端子面を有するコイル部品を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態による表面実装型コイル部品の外観構成を示す略斜視図である。また、
図2は、
図1のコイル部品の分解斜視図であり、
図3は、
図1のコイル部品を上下反転させた状態を示す略斜視図である。
【0018】
図1〜
図3に示すように、このコイル部品1は、ドラムコア2と、板状コア5と、6つの端子金具6a〜6fと、ドラムコア2に巻回されたワイヤからなるコイル7とを備えている。特に限定されないが、コイル部品1は表面実装型のパルストランスであり、そのサイズは、約4.5×3.2×2.6mmである。
【0019】
ドラムコア2は例えばNi−Zn系フェライトなどの磁性材料からなり、コイル7が巻回された巻芯部3と、巻芯部3の両端に配置された一対の鍔部4A,4Bを有している。板状コア5もまたNi−Zn系フェライトなどの磁性材料からなり、一対の鍔部4A,4Bの上面に載置され、接着剤等で固定されている。
【0020】
板状コア5の上面は平坦な平滑面であるため、コイル部品1を実装時に、この平滑面を吸着面として吸着実装することができる。さらに、鍔部4A,4Bの上面と接着される板状コア5の表面も平滑面であることが好ましい。板状コア5の平滑な表面が鍔部4A,4Bと当接することにより、両者を確実に密着させることができ、磁束漏れのない閉磁路を形成することができる。
【0021】
端子金具6a〜6fは、鍔部4A,4Bの底面から外側側面にかけて延設されたL字型の金属片である。ここで、鍔部の外側側面とは、巻芯部3の取り付け面とは反対側に位置する面である。これらの端子金具6a〜6fは、一枚の金属板を加工して得られるリードフレームから切り出された部分であることが好ましい。端子金具6a〜6fはリードフレームの状態のままでドラムコア2に接着固定され、フレーム部から切り離されることにより、独立した端子となる。端子金具6a〜6fを用いた場合には、めっき電極に比べてその形成が容易であり、量産時のコスト面でも有利である。さらに、端子金具6a〜6fの取り付け時の位置精度を高くすることができる。
【0022】
端子金具6a〜6fのうち、3つの端子金具6a,6b,6cは鍔部4A側に設けられており、他の3つの端子金具6d,6e,6fは鍔部4B側に設けられている。さらに3つの端子金具6a,6b,6cのうち、2つの端子金具6a,6bは鍔部4Aの右側寄りに設けられており、端子金具6cは鍔部4Aの左側寄りに設けられており、両者の間には一定の絶縁間隔が設けられている。これと同様に、3つの端子金具6d,6e,6fのうち、2つの端子金具6d,6eは鍔部4Bの右側寄りに設けられており、端子金具6fは鍔部4Bの左側寄りに設けられており、両者の間には一定の絶縁間隔が設けられている。
【0023】
図2に示すように、L字型の端子金具6a〜6fの各々は、鍔部4A,4Bの底面(第1の表面)に接する底面部T
B(第1の端子部)と、鍔部4A,4Bの外側側面(第2の表面)に接する側面部T
S(第2の端子部)とを有している。そして
図3に示すように、コイル7の端末部は、端子金具6a〜6fの底面部T
Bの表面に熱圧着されている。
【0024】
図4は、ドラムコア2の構成を示す略斜視図であって、端子金具6a〜6fが取り付けられた状態を示すものである。また、
図5は、端子金具6a〜6fがない状態のドラムコア2であって、底面が上方を向いた反転状態を示している。さらに、
図6(a)は、鍔部4Aを底面側から見た略平面図であり、
図6(b)は、鍔部4Aの外側側面側から見た略平面図である。
【0025】
図4及び
図5に示すように、ドラムコア2は、巻芯部3と、巻芯部3の両端に配置された一対の鍔部4A,4Bとで構成されている。ドラムコア2は平面視にて回転対称な形状であり、鍔部4A,4Bは同一の形状を有している。したがって、
図6には鍔部4Aのみを示し、鍔部4Bの図示は省略する。
【0026】
図4に示すように、鍔部4A,4Bの上面S
Tは平滑な平坦面であり、これにより板状コア5との密着性が高められている。上述のように、鍔部4A,4Bの上面S
T間には板状コア5が架設され、これにより実質的な閉磁路が形成される。
【0027】
図4、
図5及び
図6(b)に示すように、鍔部4A,4Bの外側側面S
Sは、端子金具6a〜6fの設置領域が低く、それ以外の領域が高い段差面となっている。端子金具6a〜6fは、外側側面S
Sの下段面S
S1に設けられており、外側側面S
Sの上段面S
S2の高さは、端子金具6a〜6fの上面とほぼ面一になるように形成されている。
図6(b)において、ハッチングが付された領域が上段面S
S2であり、ハッチングがない領域が下段面S
S1である。
【0028】
図5及び
図6(a)に示すように、鍔部4A,4Bの底面S
Bは、端子金具6a〜6fの基端部側の設置領域が高く、それ以外の領域が低い段差面となっている。すなわち、端子金具6a〜6fの設置領域には上段面S
B2と下段面S
B1が設けられており、端子金具6a〜6fの非設置領域の大部分は下段面S
B1である。そして、端子金具6a〜6fの底面部T
Bの基端部側は鍔部4A,4Bの底面S
Bの上段面S
B2に設けられており、端子金具6a〜6fの底面部T
Bのコーナー部側は鍔部4A,4Bの底面S
Bの下段面S
B1に設けられている。
図6(a)において、ハッチングが付された領域が上段面S
B2であり、ハッチングがない領域が下段面S
B1である。
【0029】
図7(a)及び(b)は、鍔部4A,4Bにそれぞれ取り付けられた端子金具6a〜6fの形状を示す略側面断面図であって、(a)はドラムコア全体を含む略側面図、(b)は鍔部4A側の端子金具の部分拡大図である。なお、鍔部4B側の構成は、鍔部4A側と同一である。
【0030】
図7(a)及び(b)に示すように、L字型の端子金具6a〜6fの底面部T
B及び側面部T
Sは、鍔部4A,4Bの底面S
B(第1の表面)及び外側側面S
S(第2の表面)にそれぞれ接している。ここで、側面部T
Sは鍔部の外側側面S
Sに接着剤11によって接着固定されているが、底面部T
Bは鍔部の底面S
Bに接着固定されていない。この構成によれば、接着剤の塗付量のばらつきによる端子金具6a〜6fの底面部T
Bの高さばらつきを無くすことができる。
【0031】
コイル7の端末部が接合される端子金具6a〜6fの底面部T
Bは段差形状を有している。そして、鍔部4A,4Bの底面S
Bの段差面はこの端子金具6a〜6fの段差形状に合わせた形状となっている。
【0032】
端子金具6a〜6fの底面部T
Bは、鍔部4A,4Bの内側側面寄り(巻芯部3寄り)に設けられた上段部T
B1と、鍔部4A,4Bの外側側面S
S寄りに設けられた下段部T
B2からなる。ここで、上段部T
B1は、コイル7の端末部と接触する端子面(上段面S
U)を提供する部位(接触部)であり、下段部T
B2は、コイル7の端末部と接触しない端子面(下段面S
L)を提供する部位(非接触部)である。すなわち、下段部T
B2は、上段面S
Uと同一平面上に端子面を有していない。
【0033】
端子金具6a〜6fの底面部T
Bの上段面S
Uは、熱圧着時にコイル7の端末部への圧接力を受ける「圧接面」を提供する。また、端子金具6a〜6fの底面部T
Bの下段面S
Lは、コイル7の端末部への圧接力を逃がす「非圧接面」を提供する。端子金具6a〜6fの底面部T
Bが上段面S
U及び下段面S
Lからなる段差面を有することにより、コイル7の端末部が、端子金具6a〜6fの底面部における当該コイルの延在方向の全幅にわたって熱圧着されることを回避することができる。したがって、ワイヤとめっき膜との反応による合金層が形成されない領域を広く確保することができ、ワイヤの切断除去を確実かつ容易に行うことができる。
【0034】
端子金具6a〜6fの底面部T
Bの下段部T
B2の裏面と鍔部4A,4Bの下段面S
B1側の表面との間には、隙間d
1が設けられていることが好ましい。このような隙間d
1が設けられている場合には、熱圧着後にコイル7の端末部を切断する際、カッターに対し、端子金具6a〜6fの弾性力によるクッションを与えることができる。したがって、コイル7の端末部を確実に切断することができる。
【0035】
図7(b)においては、側面部T
Sのみが接着剤11で接着固定されているが、側面部T
Sと底面部T
Bの下段部T
B2(隙間d
1の部分)の2か所を接着固定するようにしてもよい。この場合、上段部T
B1は接着しない。この構成によれば、端子金具6a〜6fの底面部T
Bの高さばらつきを防止しながら、その接着強度をさらに高めることができる。
【0036】
図8(a)〜(c)は、コイル7の端末部の熱圧着工程を説明するための模式図である。
【0037】
図8(a)に示すように、熱圧着工程では、ドラムコア2の巻芯部3に巻回されたコイル7の端末部を、対応する端子金具6a〜6f上に配線する。コイル7の端末部は、端子金具6a〜6fを通過して鍔部4A,4Bの外側まで引き出され、鍔部4A,4Bの底面とほぼ平行に延在している。
【0038】
次に、
図8(b)に示すように、ヒータチップ12を用いて、コイル7の端末部を端子金具6a〜6fの表面に熱圧着する。端子金具6a〜6fの底面部T
Bの上段面S
Uの上方に位置するワイヤ部分は、ヒータチップ12と上段面S
Uとの間に挟み込まれ、高温なヒータチップ12の圧接力で端子面に押し付けられ、ワイヤの線材(Cu)と端子面のめっき膜(Ni及びSn)とが合金化して十分な接合力が得られる。
【0039】
一方、端子金具6a〜6fの底面部T
Bの下段面S
Lの上方に位置するワイヤ部分は、ヒータチップ12と下段面S
Lとの間の隙間d
2に逃げ込み、上段面S
Uのような十分な圧接力が付与されない。そのため、このワイヤ部分の端子面への熱圧着を回避することができる。
【0040】
図8(c)に示すように、こうして端子金具6a〜6f上に熱圧着されたコイル7の端末部は、カッター13により切断されてその長さが整えられる。このとき、コイル7の切断位置は端子金具6a〜6fの段差付近である。コイル7の端末部の切断時において、熱圧着されなかったワイヤの余線部分7rは、端子面に固着されていないか、仮に熱圧着時に溶融しためっき膜によって端子面に固着されていたとしてもその固着力は弱いので、少しの力を加えるだけで剥離される。その結果、端子金具の底面部T
Bの表面うち上段面S
Uだけにワイヤが熱圧着され、下段面S
Lにはワイヤがない状態となる。
【0041】
上段面S
Uにおいて、ワイヤの周囲は合金化によって半田の濡れ性の悪い領域となるが、さらにその周りには合金化されなかった領域も存在し、この領域は半田接続に寄与する。一方、下段面S
Lにはワイヤが存在せず、半田の濡れ性の良好な領域となる。下段面S
Lは端子金具の側面部T
Sに接する部分であり、表面実装時には、側面部T
Sと共に半田フィレットの形成に寄与する部分である。そのため、このようなコイル部品1を表面実装した場合には、端子金具6a〜6fの半田の濡れ性を高めることができ、端子金具の下段部T
B2から側面部T
Sにかけて半田フィレットを確実に形成することができる。したがって、コイル部品1の電気的かつ機械的接続の信頼性を向上させることができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によるコイル部品1は、コイル7の端末部が接合される端子金具6a〜6fの端子面に、コイル7の先端部との接触を回避させる段差面が設けられているので、ワイヤに先端部が端子面に熱圧着されることを回避することができる。したがって、熱圧着後のワイヤの切断除去を確実かつ容易に行うことができる。
【0043】
また、本実施形態においては、ワイヤの端末部との非接触部は、接触部よりも低い電極面であるので、端子金具の電極面を広く確保することができる。そのため、コイルの端末部の位置決めに高い精度を必要とせず、ワイヤの端末部を容易に熱圧着することができる。
【0044】
さらに本実施形態においては、端子金具6a〜6fが取り付けられるドラムコア2の鍔部4A,4Bの底面S
Bに段差面が設けられているので、端子金具とその取り付け面との密着性を高めることができ、端子金具を確実に支持することができる。
【0045】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明に包含されるものであることは言うまでもない。
【0046】
例えば、上記実施形態においては、コイルが巻回される基体として、コイルが巻回される巻芯部とその両端に設けられた一対の鍔部とを有する横型のドラムコアを用いているが、いわゆる縦型のドラムコアを用いてもかまわない。また、端子金具の取付け個数は特に限定されない。さらに、上記実施形態において、端子金具はドラムコアの表面に直接接着されているが、ドラムコアを樹脂ケース(ボビン)に収容し、この樹脂ケースの表面に端子金具を取り付けるようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、非接触部が段差面によって実現されているが、ワイヤの端末部の延長線上に位置する端子金具の一部分が打ち抜き加工された切り欠き部であってもよい。この場合にも、端子金具の肉厚の分だけ段差が発生するので、ワイヤに先端部が端子面に熱圧着されることを回避することができる。したがって、熱圧着後のワイヤの切断除去を確実かつ容易に行うことができる。