【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能、高機能真空断熱材」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
作花 済夫 外2名,ガラスハンドブック,日本,株式会社朝倉書店,1987年 2月10日,第9刷,p.226-227
【文献】
高橋保治、毛利哲夫,ガラス繊維,ロックウールおよびセラミックファイバーの製造と利用,エアロゾル研究,日本,日本エアロゾル学会,1991年,Vol.6 No1,p.4−9
【文献】
山根正之 外6名,ガラス工学ハンドブック,日本,株式会社朝倉書店,2005年 2月20日,第3刷,p.513-524
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガラス繊維からなる芯材をガスバリア性を有する外包材で被覆し、前記外包材の内部を減圧密閉してなり、前記ガラス繊維は、重量%で、SiO2が50〜70%、Al2O3が0〜7%、Na2OとK2Oとを合わせて8〜20%、MgOが0〜6%、CaOが2〜15%、B2O3が0.1〜12%、その他の組成が3%以下で、且つ、これら各組成の重量%の合計が100%となるように構成するとともに平均繊維径が1μm〜10μmの範囲からなり、前記ガラス繊維の表面張力は、1000℃付近で、300mN/m以下であるとともに、前記ガラス繊維の繊維化後のショット率は0.1重量%以下であることを特徴とする真空断熱材。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の防止を目的に省エネルギー化が望まれており、民生用機器に対しても省エネルギー化の推進が行われている。特に、冷凍冷蔵庫に関しては、冷熱を効率的に利用するという観点から、優れた断熱性を有する断熱材が求められている。
【0003】
一般的な断熱材としては、グラスウールなどの繊維体やウレタンフォームなどの発泡体が用いられている。しかし、これらの断熱材の断熱性を向上するには断熱材の厚みを増大して適用する必要がある。よって、断熱材を設置できる空間に制限がある場合や、省スペース化や空間の有効利用が必要な場合には従来断熱材の適用は望ましくない。
【0004】
このような課題を解決する一手段として、多孔体からなる芯材と、芯材を外包材によって覆い内部を減圧密閉して構成した真空断熱材がある。
【0005】
真空断熱材は、ガラス繊維、発泡体、或いは粉体からなる芯材をガスバリア性のプラスチック積層フィルムで覆い、内部を減圧密閉したものであり、その優れた断熱性能から幅広い分野における断熱材として適用されている。このような真空断熱材は、その内部を高真空度に保持することで気体成分による熱伝導を低減して断熱性能を向上させている。
【0006】
そのため、断熱性能を長期にわたって維持するには、その内部真空度を維持することが必要であり、高強度で耐ピンホール性に優れ、かつ高いガスバリア性を有するプラスチック積層フィルム材料の適用が必須条件となる。
【0007】
特に、プラスチック積層フィルムに所定厚さ以上の金属箔や金属蒸着層を積層した場合、外部からのガス侵入は、最内層であるシール層端部側面からの侵入が支配的となる。これを改善する一例としては、ガスバリア性を有する樹脂含有層(A層)とシーラント層とをそれぞれ少なくとも1層有する積層フィルムの端部をシールして形成せしめた中空部を有する真空断熱材であって、該シール部は、シーラント層の厚みをd(mm)、シール幅をH(mm)とする時、H/d>20を満足する真空断熱材が望ましいことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
上記従来技術では、H/dが20以下ではシール部分からのガス透過が大きくなるため、H/dが大きいほど、ガスバリア性の観点から好ましく、1×102以上がより好ましく、1×103以上が更に好ましいことが示されている。
【0009】
つまり、ガスバリア性の観点から、dは0.2mm以下が好ましく、0.05mm以下がさらに好ましく、0.04mm以下が特に好ましい。一方、Hは、ガスバリア性の観点から、10mm以上が好ましく、20mm以上がより好ましいことが提案されている。
【0010】
以上の構成により、従来のものと比較して、断熱性能に優れ、かつ長期にわたって断熱性を維持することができる。
【0011】
また、最外層に熱可塑性樹脂層、中間層にガスバリア層および最内層にヒートシール層を有する多層フィルムのガスバリア層が、バリア性樹脂(A)70〜95重量%および粒子径0.5〜2.5μmの無機フィラー(B)5〜30重量%からなる樹脂組成物でなる
延伸フィルムからなり、かつ、前記延伸フィルムの、外層側に金属が真空蒸着されている真空断熱構造体が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
本構成により、用いる外包材に無機フィラーを混練することで、ピンホールの発生を防止し、ガスバリア性、耐熱性に優れた真空断熱材としたものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の請求項1に記載の真空断熱材の発明は、ガラス繊維からなる芯材をガスバリア性を有する外包材で被覆し、前記外包材の内部を減圧密閉してなり、前記ガラス繊維は、重量%で、SiO2が50〜70%、Al2O3が0〜7%、Na2OとK2Oとを合わせて8〜20%、MgOが0〜6%、CaOが2〜15%、B2O3が0.1〜12%、その他の組成が3%以下で、且つ、これら各組成の重量%の合計が100%となるように構成するとともに平均繊維径が1μm〜10μmの範囲からなり、
前記ガラス繊維の表面張力は、1000℃付近で、300mN/m以下であるとともに、前記ガラス繊維の繊維化後のショット率
は0.1重量%以下
であることを特徴とする。
【0025】
これにより、ガラス繊維は溶融時の表面張力を300mN/m以下に制御することが可能となり、ガラス繊維紡糸工程における抵抗力を小さくすることができるために、ガラスを繊維状に引き伸ばしやすく、糸切れや未繊維化を防止する作用がある。
【0026】
以上の作用により、ガラス繊維化時における切断頻度を低減し、ショットの混入確率を大幅に低減できる。よって、真空断熱材は内部の芯材による突き刺しピンホール発生の恐れがなく、汎用の軟質プラスチックラミネートフィルムが適用可能であるため、品質不良となる破袋の問題を全数検査工程することなしに解決できる。
【0027】
また、請求項2に記載の真空断熱材の発明は、請求項1に記載の発明において、ガラス繊維が、重量%で、B
2O
3を
5〜12%の範囲で含むものである。
【0028】
ここで、B
2O
3は、特に表面張力を下げる作用が大きいため、これにより、ガラスは溶融時の表面張力をさらに低減でき、ショットの混入を抑えることができる。
【0029】
以上の作用により、請求項1に記載の発明よりも、さらに真空断熱材は内部の芯材による突き刺しピンホール発生の恐れがなく、破袋に関する全数検査工程が不要となる。
【0033】
また、請求項
3に記載の真空断熱材の発明は、請求項1
または2に記載の発明において、外包材が、少なくとも最内層に厚みが15μm以上で50μm以下の樹脂製フィルムを有する複層ラミネートフィルムであるものである。
【0034】
本発明は、ガラス繊維製造におけるショットの混入を防止することにより、突き刺しピンホールの問題がなく、最内層がより薄い外包材を適用可能となる。
【0035】
これにより、熱溶着後の端部ガス侵入経路を縮小できることから、経年的なガス侵入を抑制することが可能となる。
【0036】
以上の作用により、断熱性能の劣化がなく、長期的に信頼性の高い真空断熱材を提供できる。
【0037】
なお、本発明で使用できるガラスは、ガラス状態になり得るガラス形成酸化物からなる繊維であればよいが、特に汎用性、環境面を混慮すると、SiO2を主成分とするケイ酸塩系、ホウケイ酸塩系のガラスが好ましい。
【0038】
また、繊維製造上、ガラスの粘性が低くなればより低温で紡糸可能であり生産性が向上し、紡糸時に最低限失透しないことが条件となるため、失透が起こる液相温度を低減するような以下のような組成範囲が望まれる。さらに、ガラス繊維物性としては、高耐水性、高強度であることも重要である。
【0039】
SiO
2の重量%は、減少すれば液相温度が上昇し、増大すれば粘性が高くなることで生産性が低下するため、50〜70%の範囲が良いが、より好ましくは52〜68%の範囲である。
【0040】
Al
2O
3の重量%が増加すると液相温度の上昇を招き、また粘性が高くなってしまい、含まなければ耐水性が低下する。よって、0.1%〜7%の範囲で含む方が良いが、より好ましくは0.5〜5.5%以下の範囲が良い。
【0041】
B
2O
3の重量%は、増加することで材料コストの増大を招き、含まない場合には素材強度が低下するため、0.1〜12%の範囲で含むことが良い。より好ましくは1〜12%、さらに好ましくは5〜12%の範囲である。
【0042】
Na
2OとK
2Oを合わせた重量%は、増加すると素材強度が低下し、低下しすぎると溶融温度の上昇を招くため、8〜20%の範囲が良い。さらに好ましくは、10〜18%の範囲である。また、耐水性の問題からK
2Oの重量%は5%以下である方が良いが、0.1%以上含むことで粘性の低減効果が大きく、かつ材料コストの問題から、K
2Oの重量%は0.1〜3.5%の範囲である方が良い。尚、アルカリ土類金属酸化物は、他のLiO
2等を混合してもよく、その場合には素材強度が更に向上する。
【0043】
MgOを含むことで、液相温度を下げ、MgOの重量%が増加すると素材強度を向上させるが、MgOの重量%が6%を超えると逆に液相温度が上昇するため、0〜6%の範囲が良く、より好ましくは2〜5%の範囲である。
【0044】
CaOは重量%で2%以上含むことでMgOと同様にガラス素材の強度を高め、CaOの重量%が15%を超えると液相温度が上昇するので、2〜15%の範囲、より好ましくは4〜11%の範囲である。
【0045】
ZnOは重量%で0.1%以上含むことで、表面張力の低減効果が得られるが、失透性
と材料コスト面から好ましくは重量%で0.1〜7%の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜5%の範囲である。
【0046】
その他の成分としては、重量%で合計3%未満であれば、ガラス全体への影響はほとんどなく、原料としては不純物を含む天然原料を用いることが可能である。
【0047】
また、上記の成分に加えて、ZrO
2、TiO
2、P
2O
5を1成分、または2成分以上を同時に含んでもよい。この場合、重量%が5%以下の領域においては失透性が改善するため、併せて用いることが好ましい。
【0048】
また、ガラスの製造時には、清澄剤を用いると泡切れを良好にし、生産性を向上させるために好ましく、Sb
2O
3等の公知のものが適用できる。
【0049】
また、本発明の真空断熱材には水分吸着剤を外包材内に使用できる。水分吸着剤は特に限定するものではなく、真空断熱材の内部に存在する水蒸気を吸着し、内部雰囲気中の水蒸気量を減少されるものであればよい。
【0050】
一例としては、合成ゼオライト、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル、ドーソナイト、ハイドロタルサイトなどの物理吸着剤、アルカリ金属やアルカリ土類金属単体やその酸化物および水酸化物などの化学吸着剤などが適用可能である。さらに、空気成分が吸着できるゲッター材等を併用することで内部の気体成分の熱伝導を低減して、断熱性能を向上させることも可能である。
【0051】
また、本発明における外包材は、プラスチックラミネートフィルムが使用できるが、より高いガスバリア性を付与するためには金属箔や蒸着層が適用できる。なお、金属箔、および蒸着層は公知のもが利用でき、特に指定するものではない。
【0052】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0053】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における真空断熱材の断面図を示す。
図2は、本発明の実施の形態1における外包材の部分断面図を示す。
【0054】
図1において、真空断熱材1は、芯材2と水分吸着剤3とを外包材4に挿入して、外包材4の内部を減圧密閉して構成している。
【0055】
真空断熱材1の作製は、芯材2を、140℃の乾燥炉で30分間乾燥した後、ラミネートフィルムの三方を熱溶着によりシールして袋状に成形した外包材4に挿入し、減圧チャンバー内で、外包材4内部が10Pa以下になるように減圧し、外包材4の開口部を熱溶着により密閉封止している。
【0056】
この時、外包材4は、表面保護層5としてポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)、中間層6にはアルミ箔(6μm)、熱溶着するための最内層7として直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(15〜50μm)からなるラミネートフィルムにより構成している。
【0057】
このとき、各層5,6,7の材料、厚さは任意に公知材料を用いて設計可能であるが、最内層7の厚みとしては、熱溶着によるシール強度確保のためには15μm以上必要であり、また透過ガス侵入を抑制するために厚み50μm以下であることが好ましい。さらに
好ましくは15〜30μm以下の範囲である。
【0058】
また、水分吸着剤3は、酸化カルシウムを適用している。水分吸着剤3がない場合にも特に問題はないが、水分吸着剤3を備えることで、内部の残存水蒸気を吸着し、端面からの水蒸気侵入による内圧上昇を長期に渡って抑制できる。さらに、ガス吸着剤を併用することでより内圧を低減し、断熱性能を高めることも可能である。
【0059】
一方、芯材2は、平均繊維径3.5μmのガラス繊維集合体を加圧した状態で加熱し、密度が200kg/m
3程度の形状を維持しているボード状のものを用いている。平均繊維径は1μm〜10μmの範囲のものが品質、生産性の面で好ましい。
【0060】
また、断熱性能及び取扱い性の面で密封後の芯材2部嵩密度は200kg/m
3〜280kg/m
3の範囲がより好ましく、この範囲となるように作製した。芯材2部嵩密度は、芯材2のみの重量と密封後のサイズから算出している。
【0061】
ここではバインダーを用いることなく芯材2成形を行っているが、バインダーを用いてより低温で芯材2を成形しても良い。また、表面性が問題とならない場合には、ガラス繊維の集合体をそのまま密閉封止しても構わない。その場合には、製造工数が削減するために、生産性が向上する。
【0062】
実施例の中で示すガラス組成を用いて、溶融ガラス1000℃付近における表面張力を測定した結果、300mN/m以下のガラスが得られ、これを用いてガラス繊維を成形したところ、表面張力がさらに低下するほどショット混入率が低減した。
【0063】
また、表面張力が251N/m以下のガラスにおいては、外包材4の最内層7厚みが15μmでも突き刺しピンホールの問題がないことが確認できた。ここで、最内層7が15μm未満では、熱溶着後のシール強度が不足し、外包材4での突き刺しピンホールの問題が発生した。
【0064】
このように、本構成により作製した真空断熱材1は、外包材4の最内層7の厚みが15〜50μmの範囲において、内部からの突き刺しピンホールの発生がなく、優れた品質を確保できる。また、外包材4の最内層7の厚みが50μm以下の領域において、ガス侵入量を低減し、長期に渡ってその断熱性能を確保できる。さらに好ましくは15〜30μmの範囲で長期信頼性が向上する。
【0065】
表面張力測定は、繊維化時の温度周辺である1000℃付近の溶融ガラスについて液適法を用いたが、900〜1200℃の範囲で300mN/m以下であれば問題なく、リング引き上げ法等、どの測定方法を用いても構わない。
【0066】
ショット率測定は、100gのガラス繊維集合体をミキサーで粉砕し、篩にて50μmオーバーをショットとして重量比率を算出した。真空断熱材1としての破袋問題に対しては、0.1重量%以下であることが好ましく、さらに最内層7を薄くする場合には、0.06重量%以下とすることがより望ましい。
【0067】
突き刺しピンホールの問題については、真空断熱材1を100枚製造時に破袋不良品が何枚発生するかを評価した。
【0068】
尚、Fe
2O
3は不純物として混入し易いが、特にこれにより問題となることはなく、輻射熱を吸収する効果があるために、輻射の寄与が大きい50℃以上の温度領域での適用には有用である。また、失透性の面ではFe
2O
3の重量%が4%以下であることがより
好ましく、0.5〜4%の範囲がさらに良い。
【0069】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における真空断熱材1の芯材2のガラス繊維のガラス組成物について説明する。各ガラス組成物は繊維状態に成形を行った。
【0070】
本実施の形態のガラス組成物からなる溶融物を平均繊維径が3.5μm程度になるように繊維化した。平均繊維径は、1〜10μmの範囲が良い。平均繊維径が1μm未満では繊維化のコストが極端に増大し、10μmを超える場合は繊維端部の形状によっては突き刺しピンホールの原因となりうるため、好ましくない。
【0071】
繊維化工程については、長繊維として連続紡糸、または短繊維として火炎法、遠心法等どのようにして行ってもよいが、生産性を考慮して遠心法によりグラスウールを作製した。チョップストランドマットや、ロービングクロス等のように長繊維を作製した後に加工して断熱材として用いることもできる。
【0072】
このようにして作製したグラスウールを100gサンプル中のショット率を評価したところ、0.1重量%以下であった。
【0073】
結果、本実施の形態による950〜1200℃の領域で表面張力が300mN/m以下のガラスからなるグラスウールは、繊維化時に紡糸抵抗力が小さく、未繊維化物であるショット率が低くなることで、高品質、高生産性の断熱材として有用である。
【実施例】
【0074】
以下、実施例、および比較例を用いて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は本実施例のみに限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
本実施例はガラス組成の重量%において、SiO
2が65.0%、B
2O
3が5.0%、Na
2Oが14.3%、K
2Oが0.9%、MgOが3.7%、CaOが9.7%、Fe
2O
3を含むその他複数成分合計が1.4%からなるガラスを作製した。このガラスの1010℃における表面張力は300mN/mであった。
【0076】
このガラスをグラスウールとして繊維化後にショット率を測定したところ、0.1重量%であった。
【0077】
また、このグラスウールを芯材2として、外包材4の最内層7の厚みを50μmにして真空断熱材1を作製したときに、外包材4の内部からの突き刺しピンホールの問題は発生しなかった。
【0078】
(実施例2)
本実施例はガラス組成の重量%において、SiO
2が62.7%、Al
2O
3が0.1%、B
2O
3が7.5%、Na
2Oが14.5%、K
2Oが0.1%、MgOが3.6%、CaOが9.5%、Fe
2O
3を含むその他複数成分合計が2.0%からなるガラスを作製した。このガラスの1000℃における表面張力は282mN/mであった。
【0079】
このガラスをグラスウールとして繊維化後にショット率を測定したところ、0.06重量%であった。
【0080】
また、このグラスウールを芯材2として、外包材4の最内層7の厚みを30μmにして
真空断熱材1を作製したときに、外包材4の内部からの突き刺しピンホールの問題は発生しなかった。また、B
2O
3の重量%を実施例1より増加したことにより、表面張力は下がり、ショット率が低減した。
【0081】
(実施例3)
本実施例はガラス組成の重量%において、SiO
2が59.7%、Al
2O
3が1.7%、B
2O
3が6.5%、Na
2Oが16.8%、K
2Oが1.5%、MgOが3.0%、CaOが7.0%、ZnOが3.1%、Fe
2O
3を含むその他複数成分合計が0.7%からなるガラスを作製した。このガラスの1050℃における表面張力は251mN/mであった。
【0082】
このガラスをグラスウールとして繊維化後にショット率を測定したところ、0.02重量%であった。
【0083】
また、このグラスウールを芯材2として、外包材4の最内層7の厚みを15μmにして真空断熱材1を作製したときに、外包材4の内部からの突き刺しピンホールの問題は発生しなかった。また、ZnOを重量%で3.1%添加したことにより、表面張力は下がり、ショット率が低減した。
【0084】
(比較例1)
本比較例はガラス組成の重量%において、SiO
2が70.4%、Al
2O
3が0.5%、Na
2Oが13.9%、K
2Oが0.8%、MgOが4.0%、CaOが10.0%、Fe2O3を含むその他複数成分合計が0.4%からなるガラスを作製した。このガラスの1040℃における表面張力は308N/mであった。
【0085】
このガラスをグラスウールとして繊維化後にショット率を測定したところ、1.21重量%であった。
【0086】
また、このグラスウールを芯材2として、最内層7の厚みが15〜60μmの範囲の外包材4を用いて真空断熱材1を作製したとき、内部からの突き刺しピンホールの問題が、100枚のうち、2枚発生した。よって、最内層7の厚みが60μmあってもショットの混入によって突き刺しピンホールの問題は避けられなかった。
【0087】
(比較例2)
本比較例は実施例3と同様のグラスウールを芯材2として、外包材4の最内層7の厚みを10μmにして真空断熱材1を作製したときに、内部からの突き刺しピンホールの問題は発生しなかったが、シール強度の不足によって、簡単に剥離して密閉状態を維持することが困難であった。
【0088】
以上、実施例1から3の結果から、ガラス溶融時の表面張力を300mN/m以下にすることで、ガラス繊維化後のショット率を0.1重量%以下に抑制することが可能となり、真空断熱材1への適用時には、外包材4の最内層7の厚みが15〜50μmの範囲においても突き刺しピンホールによる問題の発生がなかった。
【0089】
なお、実施例1〜3、および比較例1、2の結果について(表1)にまとめた。
【0090】
【表1】