特許第5673676号(P5673676)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5673676
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】イミダゾ[1,2−a]ピリジン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20150129BHJP
   C07D 495/14 20060101ALI20150129BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20150129BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20150129BHJP
   A61K 31/438 20060101ALI20150129BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20150129BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150129BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20150129BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20150129BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   C07D471/04 108Q
   C07D495/14 FCSP
   C07D519/00 301
   C07D519/00 311
   A61K31/437
   A61K31/438
   A61K31/4545
   A61P43/00 111
   A61P25/18
   A61P25/24
   A61P25/28
【請求項の数】10
【全頁数】78
(21)【出願番号】特願2012-512840(P2012-512840)
(86)(22)【出願日】2011年4月26日
(86)【国際出願番号】JP2011060098
(87)【国際公開番号】WO2011136192
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2014年2月6日
(31)【優先権主張番号】特願2010-101557(P2010-101557)
(32)【優先日】2010年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100109357
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 恵美子
(74)【代理人】
【識別番号】100117846
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 ▲頼▼子
(74)【代理人】
【識別番号】100137464
【弁理士】
【氏名又は名称】濱井 康丞
(74)【代理人】
【識別番号】100158089
【弁理士】
【氏名又は名称】寺内 輝和
(74)【代理人】
【識別番号】100158252
【弁理士】
【氏名又は名称】飯室 加奈
(74)【代理人】
【識別番号】100163887
【弁理士】
【氏名又は名称】森平 浩一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100172546
【弁理士】
【氏名又は名称】影山 路人
(74)【代理人】
【識別番号】100177482
【弁理士】
【氏名又は名称】川濱 周弥
(72)【発明者】
【氏名】三水 清寛
(72)【発明者】
【氏名】増田 直之
(72)【発明者】
【氏名】飯久保 一彦
(72)【発明者】
【氏名】小金丸 陽平
(72)【発明者】
【氏名】河野 則征
(72)【発明者】
【氏名】大森 淳弥
(72)【発明者】
【氏名】三谷 泰之
(72)【発明者】
【氏名】倪 健偉
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/045664(WO,A2)
【文献】 国際公開第2003/064422(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/008541(WO,A2)
【文献】 特表2005−519998(JP,A)
【文献】 特表2008−504223(JP,A)
【文献】 Badawey,E-S.A.M.,et al,“Benzimidazole condensed ring systems. XI. Synthesis of some substituted cycloalkyl pyrido[1,2-a]benzimidazoles with anticipated antineoplastic activity”,European Journal of Medicinal Chemistry,1999年,Vol.34, No.7-8,pp 663-667
【文献】 Kellenberger,E.,et al,“Identification of Nonpeptide CCR5 Receptor Agonists byStructure-based Virtual Screening”,Journal of Medicinal Chemistry,2007年,Vol.50, No.6,pp 1294-1303
【文献】 Kotovskaya,S.K.,et al,“Synthesis and antiviral activity of fluorinated pyrido[1,2-a]benzimidazoles”,Pharmaceutical Chemistry Journal,2005年,Vol.39, No.11,pp 574-578
【文献】 El-Hawash,S.A.M.,et al,“Benzimidazole condensed ring systems. Part 12. Synthesis and anticancer evaluation of certain pyrido[1,2-a]benzimidazole derivatives”,Pharmazie,1999年,Vol.54, No.5,pp 341-346
【文献】 Badawey,E.,et al,“Benzimidazole condensed ring system. IX. Potentialantineoplastics. New synthesis of some pyrido[1,2-a]benzimidazolesand related derivatives”,European Journal of Medicinal Chemistry,1995年,Vol.30, No.4,pp 327-332
【文献】 Russell,R.K.,et al,“The synthesis of cycloalka[4,5]pyrido[1,2-a]benzimidazolecarbonitrile analogs”,Journal of Heterocyclic Chemistry,1995年,Vol.32, No.1,pp 299-306
【文献】 Volovenko,Y.M.,et al,“Reactions of 1-substituted benz[4,5]imidazo[1,2-a]pyridines”,Chemistry of Heterocyclic Compounds,2002年,Vol.38, No.2,pp 213-218
【文献】 Nath,M.,et al,“An expeditious synthesis of heteroarenes throughcarbanion-induced ring transformation reactions of suitablefunctionalized pyran-2-ones”,European Journal of Organic Chemistry,1998年,Vol.1998, No.10,pp 2083-2088
【文献】 Sabnis,R.W.,et al,,“Synthesis of 2-N-(benzo[b]thiophen-2-yl)benzo andheterofused-1,2,3-triazoles”,Journal of Heterocyclic Chemistry,1990年,Vol.27, No.2,pp 417-420
【文献】 Rida,S.M.,et al,“Benzimidazole condensed ring systems. 2. New synthesis ofsubstituted 1-oxo-1H,5H-pyrido[1,2-α]benzimidazole-4-carbonitriles and related derivatives”,Journal of Heterocyclic Chemistry,1988年,Vol.25, No.6,pp 1725-1728
【文献】 Rida,S.M.,et al,“Benzimidazole condensed ring system. 1. Syntheses andbiological investigations of some substitutedpyrido[1,2-a]benzimidazoles”,Journal of Heterocyclic Chemistry,1988年,Vol.25, No.4,pp 1087-1093
【文献】 久保 一夫 他,“2(1H)-Pyridone 誘導体の合成研究(第4報)ヘテロ環縮合2(1H)-Pyridone の合成”,薬学雑誌,1979年,Vol.99,pp 880-888
【文献】 Ryabukhin,S.V.,et al,“Chlorotrimethylsilane-mediated synthesis of functionalized 2-(2-hydroxy-benzoyl)pyrido[1,2-a]benzimidazoles”,Synthesis,2007年,No.20,pp 3155-3162
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【化19】

(式中、
R1が、−CONH2であり;
R2とR3がともに結合して、隣接する環と縮合するシクロアルキル環、もしくは、1個の環原子がヘテロ原子である単環式飽和へテロ環を形成し、ここに、該シクロアルキル環及び単環式飽和へテロ環は架橋を有してもよく、さらに、ハロゲン、低級アルキル、モノもしくはジ−OH置換低級アルキル、−低級アルキレンアミン、−O−低級アルキル、シアノ、アリール、ヘテロ環基及びアシルからなる群より選択される1〜5個の置換基を有していてもよく;
R4が、低級アルキル、モノもしくはジ−OH置換低級アルキル、−O−低級アルキル、−低級アルキレン−(保護されていてもよいアミン)、シアノ及びハロゲンからなる群より選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよいヘテロ環基であり;
R5が、−Hであり;
Aが、CHまたはCH2;及び
点線は、その部位が二重結合を形成しうることを示す。)
【請求項2】
R2とR3がともに結合して、
【化20】

からなる群より選択される基を形成し;
n1が、1又は2であり;
R7が、同一または互いに異なってH又はメチルであり;及び、
R4が、
【化21】

からなる群より選択されるヘテロ環基であり、該ヘテロ環は、低級アルキル、モノもしくはジ−OH置換低級アルキル、−O−低級アルキル、−低級アルキレン−(保護されていてもよいアミン)、シアノ及びハロゲンからなる群より選択される1〜5個の置換基で置換されていてもよい請求項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項3】
以下の式(I-b)
【化22】

(式中、
R7が、H又はメチルであり;及び
R8が、同一又は互いに異なって、H、メチル、−CH2OH、−O−CH3、−CH2NH2、シアノ及び−Fからなる群より選択される置換基を示す。)
である請求項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項4】
rel-11-[(3R,4S)-3-フルオロ-4-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシピペリジン-1-イル]-2,2-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド、
11-[4-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシピペリジン-1-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド、
rel-11-[(3R,4S)-3-フルオロ-4-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシピペリジン-1-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド、
11-[4-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシピペリジン-1-イル]-2,2-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド、
11-[4-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシピペリジン-1-イル]-7,8,9,10-テトラヒドロ-7,10-メタノベンズイミダゾ[1,2-b]イソキノリン-6-カルボキサミド、
11-[4-(ヒドロキシメチル)-4-メチルピペリジン-1-イル]-9,9-ジメチル-7,8,9,10-テトラヒドロベンズイミダゾ[1,2-b]イソキノリン-6-カルボキサミド、及び、
11-[4-(ヒドロキシメチル)-4-メチルピペリジン-1-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミドからなる群より選択される、請求項1に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項5】
11-[4-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシピペリジン-1-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド請求項4に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項6】
11-[4-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシピペリジン-1-イル]-2,2-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド請求項4に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項7】
11-[4-(ヒドロキシメチル)-4-メチルピペリジン-1-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミドである請求項4に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項8】
請求項に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩を有効成分とする医薬組成物。
【請求項9】
PDE4B阻害剤である請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
統合失調症、アルツハイマー病、認知症、又はうつの治療または予防である請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬組成物、殊にPDE4B阻害作用を有し、統合失調症、アルツハイマー病、認知症、うつ等の治療または予防用医薬組成物の有効成分として有用なイミダゾ[1,2-a]ピリジン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
統合失調症とは妄想、幻覚、多動、鬱など多彩な症状を示す精神疾患である。それらの症状は、大まかに陽性症状、陰性症状、認知障害に分類される。従来、統合失調症治療においては、第一世代の定型抗精神病薬であるハロペリドールなどのD2受容体遮断薬、第二世代の非定型抗精神病薬であるリスペリドン、オランザピンなどが創製され、陽性症状の治療に一定の効果を発揮してきた。しかしながら、第一世代のハロペリドール等では錐体外路症状、また、第二世代のリスペリドン、オランザピンなどでは、代謝性障害、例えば、肥満、高血糖などの副作用が報告されている(Am. J. Psychiatry, 2003, 160: 1209-1222; Neuropsychopharmacology, 2003, 28: 1400-11; Diabetes Care, 2004, 27: 596; 臨床精神薬理, 2005, 8: 2151-64; Mol. Psychiatry 2008, 13: 27-35)。さらに、従来型の薬剤では陰性症状や認知障害に対しては、薬効が不十分である(Schizophrenia Res. 2006, 88: 5-25; 臨床精神薬理, 2005, 8: 2151-64)。特に近年、統合失調症における認知障害は普遍的に存在していることが共通認識となり、その障害が予後に大きく関わっていることが明らかになってきた一方で、有効な治療薬がなく、メディカルアンメットニーズが存在する症状である(Neuropsychology 1998, 12, 426-45; Am. J. Psychiatry 1996, 153: 321-30; Schizophrenia Bulletin 2000, 26: 119-36)。
認知症は、後天的な脳の障害によって脳機能が低下し、記憶障害と判断障害を基本とする症候群のことであり、血管性痴呆及びアルツハイマー型痴呆(以下、ADと略記する)が代表的な原因疾患である。従来、これらの治療薬が研究されてきたが、臨床における満足度は十分ではない。例えば、ADの治療薬として広く用いられているドネペジル等のコリンエステラーゼ阻害剤では、効果が十分ではないことが報告されている(Curr. Neurol. Neurosci. rep., 2005, 5(6): 455-457; Eur. J. Pharmacol., 1998, 346: 1-13)。さらに、末梢のコリン神経系を刺激することによる副作用が指摘されている(Curr. Psychiatry Rep., 2000, 2(6): 473-478; J. Psychopharmacol., 2000, 14(4): 406-408)。また、メマンチン等のNMDA拮抗剤が一部の国で承認されているが、認知障害、幻覚、運動失調、精神疾患等の精神症状を持つ患者では、副作用が特に指摘されている(J. Clin. Psychiatry, 2005, 66(5): 658-659; Learning & memory, 2001, 8: 20-25)。
以上のような背景から、安全かつ有効性の高い統合失調症治療薬及び認知症治療薬が待望されていた。
【0003】
cAMP-specific phosphodiesterase-4 (PDE4)はセカンドメッセンジャーcAMP調節に関わる酵素で、学習、記憶機能に深く関わっていることが知られている(Science 1993, 260: 1661-4)。PDE4阻害薬はin vitroでは神経可塑性を促進し、in vivoでは幅広いモデルで学習、記憶の改善、または促進が確認されている(PNAS 1998, 95: 15020-5; Current Pharmaceutical Design 2005, 11: 3329-34)。また、AD患者ではcAMP合成酵素活性が低下しており、病態時のcAMPシグナル伝達の低下が考えられる(Neurobiol Aging 1997, 18: 275-9)。更に、PDE4阻害薬であるdenbufyllineがヒトの認知症患者に投与され、一定の治療効果が認められていた(Biol Psychiatry 1992, 32: 668-81)。しかし、PDE4阻害薬の共通副作用として嘔吐が知られており、これが開発の障害となっていた。これに対し、脳内発現、および遺伝子改変マウスの研究から、嘔吐は主としてPDE4Dが関わっている可能性が示唆されている(Current Pharmaceutical design 2009, 15, 1693)。
また、PDE4Bと統合失調症の関連性が近年明らかになりつつある。DISC1(disrupted-in-schizophrenia 1)は統合失調症疾患感受性遺伝子であり、PDE4BとDISC1には相互作用が存在し、PDE4Bが重要な創薬ターゲットであることが示された(Current opinion Neurobiol 2007, 17: 95-102)。統合失調症患者では、脳内PDE4B発現が減ることによるcAMP/PKAシグナルカスケード機能の低下が考えられており(Schizophrenia Res 2008, 101: 36-49, 2008; J Neurochem 2002, 81: 745-57)、PDE4B阻害薬は統合失調症治療薬としての可能性が高いと考えられる。
さらに、古典的PDE4阻害薬rolipramが強い抗鬱作用を持っていることが臨床試験で確認されているが、嘔吐の副作用のため上市には至っていない(Current Therapeutic Res 1988, 43: 291-5)。近年、PDE4Bノックアウトマウスの解析から、PDE4Bとうつの関連性が示唆(Psychopharmacol 2008, 197: 115-26)されていることから、PDE4B阻害薬は優れた抗鬱作用を持ちながら、嘔吐の副作用を回避できる可能性が期待される。
【0004】
従って、PDE4Bを阻害する薬剤は、統合失調症、アルツハイマー病、認知症、うつ等の治療または予防に有効であると考えられる。
【0005】
非特許文献1のケミカルライブラリーには、式(A)で示される化合物の構造式が開示されているが、PDE4(PDE4B)阻害活性や、統合失調症、アルツハイマー病、認知症、うつ等に対する医薬用途の記載はない。
【化1】
【0006】
非特許文献2のケミカルライブラリーには、式(B)で示される化合物の構造式が開示されているが、PDE4(PDE4B)阻害活性や、統合失調症、アルツハイマー病、認知症、うつ等に対する医薬用途の記載はない。
【化2】
【0007】
特許文献1には、多様な構造を有する実施例の1つとして、実施例25に式(C)で示される化合物がPDE4を阻害し、炎症性疾患の治療に有用であることが報告されているが、統合失調症、アルツハイマー病、認知症、うつ等に有用であるとの記載はない。
【化3】
【0008】
特許文献2には、多様な構造を有する実施例の1つとして、実施例 AAEに式(D)で示される化合物が微生物の転写因子調節能を有することが報告されているが、PDE4(PDE4B)阻害活性に関する記述や統合失調症、アルツハイマー病、認知症、うつ等に有用であるとの記載はない。
【化4】
【0009】
特許文献3には、式(E)で示される化合物が抗真菌剤として有用であることが報告されているが、PDE4(PDE4B)阻害活性に関する記述や統合失調症、アルツハイマー病、認知症、うつ等に有用であるとの記載はない。
【化5】
(式中、A部分はベンゼン環など、R1は炭素数3から10の単環式、二環式もしくはスピロ環式の複素環など、R2はアルキル基など、もしくは、R1とR2とが一緒になって、5員環または6員環の複素環基を形成してもよく、R3はアルキル基など、R4はシアノ基、
【化6】
などを示す。その他詳細は当該公報参照。)
特許文献3には、式(E)で示される化合物の具体的実施例として、例えば式(F)の化合物などが開示されている。
【化7】
【0010】
非特許文献3には、式(G)、式(H)で示される化合物の合成法が開示されているが、PDE4(PDE4B)阻害活性に関する記述や統合失調症、アルツハイマー病、認知症、うつ等に有用であるとの記載はない。
【化8】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2008/045664号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/001058号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2003/064422号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】CHEMCATS Chemical Library, CAS Registry No.305335-00-6, Supplier : Otava
【非特許文献2】CHEMCATS Chemical Library, CAS Registry No.305331-71-9, Supplier : AsInEx
【非特許文献3】Journal of Heterocyclic Chemistry (1995),32(1),299-306
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、PDE4B阻害活性を有する医薬、特に統合失調症、アルツハイマー病、認知症、うつ等の治療または予防用医薬組成物の有効成分として有用なイミダゾ[1,2-a]ピリジン誘導体の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、PDE4Bを阻害する化合物について検討した結果、イミダゾ[1,2-a]ピリジン誘導体又はその塩が、優れたPDE4B阻害活性を有することを知見し本発明を完成した。
即ち、本発明は、式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩、並びに、式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩及び製薬学的に許容される賦形剤を含有する医薬組成物に関する。
【化9】
(式中、
R1は、-H、-CN、-CONH2、置換基を有していてもよい低級アルキルまたはアシルを示し;
R2は、-H、置換基を有していてもよい低級アルキル、アリール、置換基を有していてもよいヘテロ環基、置換基を有していてもよいアミノまたはアシルを示し;
R3は、-H、ハロゲン、置換基を有していてもよい低級アルキル、-O-低級アルキル、-S-低級アルキル、-SO-低級アルキル、-SO2-低級アルキルまたはアシルを示し;
もしくは、R2とR3がともに結合して、隣接する環と縮合するシクロアルキル環、もしくは、1個の環原子がヘテロ原子である単環式飽和へテロ環を形成し、ここに、該シクロアルキル環及び単環式飽和へテロ環は架橋を有してもよく、さらに置換基を有していてもよく;
R4は、-H、置換基を有していてもよいアリール、置換基を有していてもよいアミノまたは置換基を有していてもよいヘテロ環基を示し;
R5は、-H、ハロゲン、置換基を有していてもよい低級アルキル、-O-低級アルキル、-CO-O-低級アルキルまたは-SO2-R6を示し、
R6は、1つまたは2つの置換基を有していてもよいアミノまたはへテロ環基を示し;
Aは、CH、CH2またはNを示し;及び
点線は、その部位が二重結合を形成しうることを示す。)
なお、特に記載がない限り、本明細書中のある化学式中の記号が他の化学式においても用いられる場合、同一の記号は同一の意味を示す。
【0015】
また、本発明は、式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩を含有するPDE4B阻害剤、及び統合失調症、アルツハイマー病、認知症、又はうつの治療または予防剤に関する。
さらに、本発明は、統合失調症、アルツハイマー病、認知症、又はうつの治療または予防のための医薬の製造のための式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩の使用;統合失調症、アルツハイマー病、認知症、又はうつの治療または予防のための式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩;並びに、式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩の有効量を患者に投与することからなる統合失調症、アルツハイマー病、認知症、又はうつの治療または予防方法;に関する。
【発明の効果】
【0016】
式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩は、PDE4B阻害作用を有し、統合失調症、アルツハイマー病、認知症、うつ等の治療または予防剤として使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書中において、「低級アルキル」とは、直鎖又は分枝状の炭素数が1から6(以後、C1-6と略す)のアルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル基等を意味し、別の態様としては、C1-4アルキルであり、さらに別の態様としては、メチル及びエチルを意味する。
【0018】
本明細書中において、「低級アルキレン」とは、直鎖又は分枝状のC1-6のアルキレン、例えばメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、プロピレン、メチルメチレン、エチルエチレン、1,2-ジメチルエチレン、1,1,2,2-テトラメチルエチレン、2,2-ジメチルトリメチレン、2,2-ジメチルテトラメチレン等を意味し、別の態様としては、トリメチレン、テトラメチレン、2,2-ジメチルトリメチレン及び2,2-ジメチルテトラメチレンを意味する。
【0019】
本明細書中において、「架橋を有してもよく」における「架橋」とは、低級アルキレン、例えばメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン等で架橋していることを意味し、別の態様としては、メチレン及びエチレンで架橋していることを意味し、さらに別の態様としては、メチレンで架橋していることを意味する。
【0020】
本明細書中において、「ヘテロ環基」中の「ヘテロ環」とは、i)酸素、硫黄及び窒素から選択されるヘテロ原子を1〜4個含有する3〜8員の、別の態様としては5〜7員の単環ヘテロ環、並びに、ii)当該単環ヘテロ環が、単環へテロ環、ベンゼン環、C5-8シクロアルカン及びC5-8シクロアルケンからなる群より選択される1又は2個の環と縮環し形成される、酸素、硫黄および窒素から選択されるヘテロ原子を1〜5個含有する二〜三環式ヘテロ環、から選択される環基を意味する。環原子である硫黄又は窒素が酸化されオキシドやジオキシドを形成してもよい。
【0021】
「ヘテロ環基」として以下の態様が挙げられる。
(1)単環式飽和へテロ環基
(a)1〜4個の窒素原子を含むもの、例えば、アゼパニル、ジアゼパニル、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジル、ピラゾリジニル、ピペラジニル、アゾカニル等;
(b)1〜3個の窒素原子、ならびに1〜2個の硫黄原子および/または1〜2個の酸素原子を含むもの、例えば、チオモルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、オキサゾリジニル、モルホリニル等;
(c)1〜2個の硫黄原子を含むもの、例えば、テトラヒドロチオピラニル等;
(d)1〜2個の硫黄原子および1〜2個の酸素原子を含むもの、例えば、オキサチオラニル等;
(e)1〜2個の酸素原子を含むもの、例えば、オキシラニル、オキセタニル、ジオキソラニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、1,4-ジオキサニル等;
【0022】
(2)単環式不飽和へテロ環基
(a)1〜4個の窒素原子を含むもの、例えば、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジ二ル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニル、ジヒドロトリアジニル、アゼピニル等;
(b)1〜3個の窒素原子、ならびに1〜2個の硫黄原子および/または1〜2個の酸素原子を含むもの、例えば、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ジヒドロチアジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、オキサジニル等;
(c)1〜2個の硫黄原子を含むもの、例えば、チエニル、チエピニル、ジヒドロジチオピラニル、ジヒドロジチオニル等;
(d)1〜2個の硫黄原子および1〜2個の酸素原子を含むもの、具体的には、ジヒドロオキサチオピラニル等;
(e)1〜2個の酸素原子を含むもの、例えば、フリル、ピラニル、オキセピニル、ジオキソリル等;
【0023】
(3)縮合多環式飽和へテロ環基
(a)1〜5個の窒素原子を含むもの、例えば、キヌクリジニル、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプチル、3-アザビシクロ[3.2.2]ノナニル等;
(b)1〜4個の窒素原子、ならびに1〜3個の硫黄原子および/または1〜3個の酸素原子を含むもの、例えば、トリチアジアザインデニル、ジオキソロイミダゾリジニル等;
(c)1〜3個の硫黄原子および/または1〜3個の酸素原子を含むもの、例えば、2,6-ジオキサビシクロ[3.2.2]オクト-7-イル等;
【0024】
(4)縮合多環式不飽和へテロ環基
(a)1〜5個の窒素原子を含むもの、例えば、インドリル、イソインドリル、インドリニル、インドリジニル、ベンゾイミダゾリル、ジヒドロベンゾイミダゾリル、テトラヒゾロベンゾイミダゾリル、キノリル、テトラヒドロキノリル、イソキノリル、テトラヒドロイソキノリル、インダゾリル、イミダゾピリジル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリダジニル、カルバゾリル、アクリジニル、キノキサリニル、ジヒドロキノキサリニル、テトラヒドロキノキサリニル、フタラジニル、ジヒドロインダゾリル、ベンゾピリミジニル、ナフチリジニル、キナゾリニル、シンノリニル等;
(b)1〜4個の窒素原子、ならびに1〜3個の硫黄原子および/または1〜3個の酸素原子を含むもの、例えば、ベンゾチアゾリル、ジヒドロベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、イミダゾチアゾリル、イミダゾチアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ジヒドロベンゾオキサジニル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル等;
(c)1〜3個の硫黄原子を含むもの、例えば、ベンゾチエニル、ベンゾジチオピラニル、ジベンゾ[b,d]チエニル等;
(d)1〜3個の硫黄原子および1〜3個の酸素原子を含むもの、例えば、ベンゾオキサチオピラニル、フェノキサジニル等;
(e)1〜3個の酸素原子を含むもの、例えば、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ジヒドロベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、クロマニル、クロメニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニル等;
など。
【0025】
さらに、これらのヘテロ環は、(1)に記載した単環式飽和へテロ環とスピロ環を形成しても良い。
【0026】
本明細書中において、「ハロゲン」とは、F、Cl、Br及びIを意味する。
【0027】
本明細書中において、「置換基を有していてもよい」とは、無置換、若しくは置換基を1〜5個有していることを意味し、別の態様としては、無置換、若しくは置換基を1〜3個有していることを意味する。なお、複数個の置換基を有する場合、それらの置換基は同一であっても、互いに異なっていてもよい。
【0028】
本明細書中において、「置換基を有していてもよい」における「置換基」とは、当業者が一般的に用いる置換基全般を意味し、別の態様としては、ハロゲン、低級アルキル、モノもしくはジ-OH置換低級アルキル、-低級アルキレンアミン、-O-低級アルキル、シアノ、アリール、ヘテロ環基及びアシル等を意味する。
【0029】
本明細書中において、「置換基を有していてもよいヘテロ環基」における「置換基」とは、低級アルキル、モノもしくはジ-OH置換低級アルキル、-O-低級アルキル、-低級アルキレン-(保護されていてもよいアミン)、シアノ及びハロゲンを意味し、別の態様としては、メチル、-CH2OH、-O-CH3、-CH2-(保護されていてもよいアミン)、シアノ及び-Fを意味する。
【0030】
本明細書中において、「-低級アルキレン-(保護されていてもよいアミン)」における「保護されていてもよい」とは、-低級アルキレンに置換したアミノ基が、当業者が一般的に用いるアミノ保護基で保護されていても良いことを意味し、別の態様としては、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz基)で保護されていても良いことを意味する。
【0031】
本明細書中において、「アリール」とは、C6-14の単環〜三環式芳香族炭化水素環基であり、その部分的に水素化された環基を包含する。例えば、フェニル、ナフチル、5-テトラヒドロナフチル、4-インデニル、1-フルオレニル等である。
【0032】
本明細書中において、「アシル」とは、以下のアシル基を包含し得る。
(1)脂肪族アシル基。具体的には、-CHO、-CO-低級アルキル、-CO-低級アルケニル、-CO-低級アルキレン-O-低級アルキル、-CO-シクロアルキル、-CO-シクロアルケニル等が挙げられる。
(2)アリールを含むアシル基。具体的には、-CO-アリール、-CO-低級アルキレン-アリール、-CO-低級アルケニレン-アリール、-CO-低級アルキレン-O-アリール等が挙げられる。
(3)ヘテロ環を含むアシル基。具体的には、-CO-ヘテロ環基、-CO-低級アルキレン-ヘテロ環基、-CO-低級アルケニレン-へテロ環基等が挙げられる。
【0033】
本明細書中において、「R2とR3がともに結合して、隣接する環と縮合するシクロアルキル環、もしくは、1個の環原子がヘテロ原子である単環式飽和へテロ環を形成し」とは、R2とR3がそれぞれ結合している式(I)の環構造中の2つの炭素原子間の結合が、単結合及び二重結合である場合を含むことを意味する。
【0034】
式(I)の化合物のある態様を以下に示す。
(1)R1が、-CONH2である化合物。
(2)R2とR3がともに結合して、隣接する環と縮合するシクロアルキル環、もしくは、1個の環原子がヘテロ原子である単環式飽和へテロ環を形成し、ここに、該シクロアルキル環及び単環式飽和へテロ環は架橋を有してもよく、さらに置換基を有していてもよい。別の態様としては、R2とR3がともに結合して、
【化10】
(式中、n1は1又は2であり、R7は同一または互いに異なってH又はメチルである。)であり、さらに別の態様として、R2とR3がともに結合して、
【化11】
であり、さらに別の態様として、R2とR3がともに結合して、
【化12】
である化合物。
(3)R4が、置換基を有していてもよいヘテロ環基である化合物。別の態様として、R4が、
【化13】
であり、さらに別の態様として、
【化14】
であり、さらに別の態様として、
【化15】
であり、さらに別の態様として、
【化16】
である化合物であり、これら4種のヘテロ環は、いずれも、低級アルキル、モノもしくはジ-OH置換低級アルキル、-O-低級アルキル、-低級アルキレン-(保護されていてもよいアミン)、シアノ及びハロゲンからなる群より選択される1つまたはそれ以上の置換基、別の態様としては、メチル、-CH2OH、-O-CH3、-CH2-(保護されていてもよいアミン)、シアノ及び-Fからなる群より選択される1つまたはそれ以上の置換基を有していてもよい。
(4)R5が、-Hである化合物。
(5)Aが、CHであり、別の態様として、CH2である化合物。
(6)上記(1)〜(5)に記載の態様の二以上の組み合わせである化合物。
【0035】
式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩のある態様は、下式(I-b)の化合物又はその製薬学的に許容される塩である。
【化17】
更に、該式(I-b)の化合物のある態様を以下に示す。
(7)R7がH又はメチルである化合物。
(8)R8が、同一又は互いに異なって、H、メチル、-CH2OH、-O-CH3、-CH2NH2、シアノ又は-Fである化合物。
(9)上記(7)〜(8)に記載の態様の二以上の組み合わせである化合物。
【0036】
式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩のある態様は、下記の群より選択される化合物又はその製薬学的に許容される塩である。
rel-11-[(3R,4S)-3-フルオロ-4-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシピペリジン-1-イル]-2,2-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド、
11-[4-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシピペリジン-1-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド、
rel-11-[(3R,4S)-3-フルオロ-4-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシピペリジン-1-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド、
11-[4-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシピペリジン-1-イル]-2,2-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド、
11-[4-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシピペリジン-1-イル]-7,8,9,10-テトラヒドロ-7,10-メタノベンズイミダゾ[1,2-b]イソキノリン-6-カルボキサミド、
11-[4-(ヒドロキシメチル)-4-メチルピペリジン-1-イル]-9,9-ジメチル-7,8,9,10-テトラヒドロベンズイミダゾ[1,2-b]イソキノリン-6-カルボキサミド、及び、
11-[4-(ヒドロキシメチル)-4-メチルピペリジン-1-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド。
【0037】
式(I)の化合物には、置換基の種類によって、互変異性体や幾何異性体が存在しうる。本明細書中、式(I)の化合物が異性体の一形態のみで記載されることがあるが、本発明は、それ以外の異性体も包含し、異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
また、式(I)の化合物には、不斉炭素原子や軸不斉を有する場合があり、これに基づく光学異性体が存在しうる。本発明は、式(I)の化合物の光学異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
【0038】
さらに、本発明は、式(I)で示される化合物の製薬学的に許容されるプロドラッグも包含する。製薬学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で、本発明化合物に変換される化合物である。プロドラッグを形成する基としては、例えば、Prog. Med., 5, 2157-2161(1985)や、「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198に記載の基が挙げられる。
【0039】
また、式(I)の化合物は置換基の種類によって、酸付加塩又は塩基との塩を形成する場合があり、本発明には、式(I)の化合物の製薬学的に許容される塩が包含される。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基や、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リシン、オルニチン等の有機塩基との塩、アセチルロイシン等の各種アミノ酸及びアミノ酸誘導体との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
【0040】
さらに、本発明は、式(I)の化合物及びその製薬学的に許容される塩の各種の水和物や溶媒和物、及び結晶多形の物質も包含する。また、本発明は、種々の放射性又は非放射性同位体でラベルされた化合物も包含する。
【0041】
(製造法)
式(I)の化合物及びその製薬学的に許容される塩は、その基本構造あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料から中間体へ至る段階で適当な保護基(容易に当該官能基に転化可能な基)に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような保護基としては、例えば、ウッツ(P. G. M. Wuts)及びグリーン(T. W. Greene)著、「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis(第4版、2006年)」に記載の保護基等を挙げることができ、これらの反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、当該保護基を導入して反応を行なったあと、必要に応じて保護基を除去することにより、所望の化合物を得ることができる。
また、式(I)の化合物のプロドラッグは、上記保護基と同様、原料から中間体へ至る段階で特定の基を導入、あるいは得られた式(I)の化合物を用いてさらに反応を行なうことで製造できる。反応は通常のエステル化、アミド化、脱水等、当業者に公知の方法を適用することにより行うことができる。
以下、式(I)の化合物の代表的な製造法を説明する。各製法は、当該説明に付した参考文献を参照して行うこともできる。なお、本発明化合物の製造法は以下に示した例には限定されない。
【0042】
製法
【化18】
(式中、Lvは脱離基を示す。以下同様。)
本製法は、化合物(1)と化合物(2)の求核置換反応により式(I)の化合物を製造する方法である。ここで、脱離基の例には、ハロゲン、メタンスルホニルオキシ、メチルスルフィニル、メチルスルホニル、p-トルエンスルホニルオキシ基等が含まれる。
この反応では、化合物(1)と化合物(2)を等量若しくは一方を過剰量用い、これらの混合物を、反応に不活性な溶媒中、又は無溶媒下、冷却下から加熱還流下、場合によってはマイクロ波照射下に、好ましくは0度〜300度において、通常5秒間〜5日間攪拌する。ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定はされないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、アセトニトリル及びこれらの混合物が挙げられる。トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン若しくはN-メチルモルホリン等の有機塩基、又は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム若しくは水酸化カリウム等の無機塩基の存在下で反応を行うのが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。
〔文献〕
S. R. Sandler及びW. Karo著、「Organic Functional Group Preparations」、第2版、第1巻、Academic Press Inc.、1991年
日本化学会編「実験化学講座(第5版)」14巻(2005年)(丸善)
【0043】
(原料化合物の製法)
本発明化合物の製造に使用する上記化合物(1)、化合物(2)等の原料は、例えば、後述の製造例に記載の方法または当業者にとって自明な方法、あるいはそれらの変法等を適用することによって、入手可能な公知化合物から製造することができる。
【0044】
式(I)の化合物は、遊離化合物、その製薬学的に許容される塩、これらの水和物や溶媒和物、あるいは結晶多形の物質として単離され、精製される。式(I)の化合物の製薬学的に許容される塩は、常法の造塩反応に付すことにより製造することもできる。
単離、精製は、抽出、分別結晶化、各種分画クロマトグラフィー等、通常の化学操作を適用して行なわれる。
各種の異性体は、適当な原料化合物を選択することにより製造でき、あるいは異性体間の物理化学的性質の差を利用して分離することができる。例えば、光学異性体は、ラセミ体の一般的な光学分割法(例えば、光学活性な塩基又は酸とのジアステレオマー塩に導く分別結晶化や、キラルカラム等を用いたクロマトグラフィー等)により得られ、また、適当な光学活性な原料化合物から製造することもできる。
【0045】
式(I)の化合物の薬理活性は、以下の試験により確認した。
【0046】
試験方法1:ヒトPDE4B阻害活性
(1)ヒトPDE4B酵素の精製
FLAGタグを付加したヒトPDE4B2をコードするプラスミドDNAを作製し、大腸菌に導入、大量培養した。大腸菌からプラスミドDNAを抽出、精製した後、COS-1細胞にトランスフェクションし、培養した。細胞を破砕した後、発現した酵素をFLAGペプチドアフィニティーカラムを用いて精製した。
(2)ヒトPDE4B活性阻害試験
96ウェルプレートに、種々の濃度の被験化合物を溶解させたDMSO溶液を1μl/ウェル、バッファーで希釈した精製酵素を74μl/ウェルで添加し、室温で10分間インキュベーションした。40nMの[3H]-cAMP(Amersham, TRK559)および4μMのcAMPを含むバッファーを25μl/ウェルで添加し、室温で30分間反応させた。Polylysin coated yttrium silicate SPA beads(Amersham, RPNQ0010)の懸濁液(18mM ZnSO4, 5mM IBMX, 蒸留水)を50μl/ウェルで添加し、反応を停止させた。室温で20分間静置した後、トップカウントにて放射活性を測定し、酵素活性の指標とした。各実験における被験化合物による酵素阻害活性は、溶媒(DMSO)及び酵素を添加した時の放射活性を0%、溶媒のみを添加し、酵素を添加しなかった時の放射活性を100%阻害として、IC50値を算出した。
試験結果を、表1に示す。Exは後記実施例化合物番号を示す。
【表1】
本試験の結果、式(I)の化合物がヒトPDE4B阻害活性を有することが明らかとなった。
試験方法2:MK-801誘発マウスの自発交替行動障害に対する改善効果
MK-801誘発認知障害は統合失調症グルタミン酸低下仮説、及び認知症におけるグルタミン酸伝達機能低下とも反映するものである。自発交替行動は作業記憶を反映するタスクで、統合失調症、認知症ともこの作業記憶の障害が顕著に存在する。そこで、式(I)の化合物の認知障害に対する改善効果を、短期学習障害のモデルとして周知の首記の試験法により評価した。
(1)動物
種:雄ddYマウス系/匹数(一群例数):1群6〜9例
使用時週齢:5週齢
納入業者または生産業者:日本エスエルシー
(2)測定方法
マウスは試験開始1時間前に実験室に搬入した。3方向に同じ長さのアームをもつ迷路(Y-maze)のアームの一端にマウスを入れて8分間自由に探索させ、この間のアームへのエントリー数をカウントした。また、連続して3つの異なるアームにエントリーした場合を自発交替行動(Spontaneous alternation behavior)とし、この行動数の総エントリー数に対する割合を自発交替率(Alternation rate)として、以下の式により算出した。
自発交替率(%)=自発交替行動数/(総エントリー数-2)×100
被験化合物は試験開始50分前に経口投与し、その30分後に0.5 mg/kgスコポラミンまたは0.15 mg/kg MK-801 (通常群においては生理食塩水)を腹腔内投与した。なお、ノーマル群(生理食塩水を投与した群)と対照群(0.5 mg/kgスコポラミンまたは0.15 mg/kg MK-801を投与した群)においては、被験化合物投与時に溶媒(vehicle)を経口投与した。ノーマル群においては、スコポラミン投与時に生理食塩水を腹腔内投与した。
(3)データ解析
自発交替率(%)は各群における平均値(mean±SE)で示す。自発交替率(%)においてノーマル群と対照群の間に有意な差(スチューデントT検定)が認められた場合、MK-801投与による学習障害成立と判断した。対照群に対する被験化合物投与群のダネット検定を行うことで、被験化合物の学習障害作用の有無を判定した。各検定においてp<0.10で傾向有り、p<0.05で有意な差有りとした。
本試験の結果、式(I)の化合物は、0.001-100 mg/kg投与の範囲でMK-801誘発自発交替行動障害を抑制することが明らかとなり、統合失調症や認知症に効果を有することが確認された。
試験方法3:毒性試験
以下に記載の毒性試験を行うことにより、式(I)の化合物の遺伝毒性に係る安全性を確認することができる。
(1)Ames試験
Ames試験は、当業者が周知の一般的方法、例えば、Mutation Research, 113(1983) 173-215 に記載の方法を用いて実施することができる。
(2)umu試験
umu試験は、当業者が周知の一般的方法、例えば、Mutation Research, 253(1991) 215-222 に記載の方法を用いて実施することができる。
【0047】
以上の各試験の結果、式(I)の化合物はPDE4B阻害作用を有し、統合失調症、アルツハイマー病、認知症、うつ等の治療または予防用医薬組成物の有効成分として有用であることは明らかである。
【0048】
式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する医薬組成物は、当分野において通常用いられている薬剤用賦形剤、薬剤用担体等を用いて、通常使用されている方法によって調製することができる。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、又は、関節内、静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、点眼剤、眼軟膏、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
【0049】
経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、1種又は2種以上の有効成分を、少なくとも1種の不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、及び/又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等のような崩壊剤、安定化剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水又はエタノールを含む。当該液体組成物は不活性な希釈剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
【0050】
非経口投与のための注射剤は、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤又は乳濁剤を含有する。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水又は生理食塩液が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はオリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、又はポリソルベート80(局方名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、又は溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解又は懸濁して使用することもできる。
【0051】
外用剤としては、軟膏剤、硬膏剤、クリーム剤、ゼリー剤、パップ剤、噴霧剤、ローション剤、点眼剤、眼軟膏等を包含する。一般に用いられる軟膏基剤、ローション基剤、水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤等を含有する。例えば、軟膏又はローション基剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、白色ワセリン、サラシミツロウ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウロマクロゴール、セスキオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
【0052】
吸入剤や経鼻剤等の経粘膜剤は固体、液体又は半固体状のものが用いられ、従来公知の方法に従って製造することができる。例えば公知の賦形剤や、更に、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、滑沢剤、安定剤や増粘剤等が適宜添加されていてもよい。投与は、適当な吸入又は吹送のためのデバイスを使用することができる。例えば、計量投与吸入デバイス等の公知のデバイスや噴霧器を使用して、化合物を単独で又は処方された混合物の粉末として、もしくは医薬的に許容し得る担体と組み合わせて溶液又は懸濁液として投与することができる。乾燥粉末吸入器等は、単回又は多数回の投与用のものであってもよく、乾燥粉末又は粉末含有カプセルを利用することができる。あるいは、適当な駆出剤、例えば、クロロフルオロアルカン、ヒドロフルオロアルカン又は二酸化炭素等の好適な気体を使用した加圧エアゾールスプレー等の形態であってもよい。
【0053】
通常経口投与の場合、1日の投与量は、体重あたり約0.0001〜100 mg/kg程度であり、これを1回であるいは2乃至4回に分けて投与する。静脈内投与される場合は、1日の投与量は、体重当たり約0.0001〜10 mg/kgが適当で、1日1回〜複数回に分けて投与する。また、吸入の場合は、体重当たり約0.0001〜1 mg/kgを1日1回〜複数回に分けて投与する。投与量は症状、年令、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。
【0054】
式(I)の化合物は、前述の式(I)の化合物が有効性を示すと考えられる疾患の種々の治療剤又は予防剤と併用することができる。当該併用は、同時投与、或いは別個に連続して、若しくは所望の時間間隔をおいて投与してもよい。同時投与製剤は、配合剤であっても別個に製剤化されていてもよい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例に基づき、式(I)の化合物の製造法をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、下記実施例に記載の化合物に限定されるものではない。また、原料化合物の製法を製造例に示す。また、式(I)の化合物の製造法は、以下に示される具体的実施例の製造法のみに限定されるものではなく、式(I)の化合物はこれらの製造法の組み合わせ、あるいは当業者に自明である方法によっても製造されうる。
【0056】
また、実施例、製造例及び後記表中において、以下の略号を用いることがある。
PEx:製造例番号、Ex:実施例番号、Str:構造式(構造式中に、例えばHClの記載がある場合は、その化合物が塩酸塩であることを意味し、2HClの記載がある場合は、その化合物が2塩酸塩であることを意味する。)、rel:相対配置(PEx又はExの番号の下にrelの記載がある場合は、Strの欄に記載した構造式の立体表記が相対配置を表していることを意味する。)、Syn:製造法(数字のみの場合は同様に製造した実施例番号を、数字の前にPがある場合は同様に製造した製造例番号をそれぞれ示す。)、Dat:物理化学的データ、NMR1:DMSO-d6中の1H NMRにおけるδ(ppm)、NMR2:CDCl3中の1H NMRにおけるδ(ppm)、CI:CI-MS、EI:EI-MS、ESI+:ESI-MS (陽イオン)、A/E+:APCIとESIの同時測定(陽イオン)、FAB+:FAB-MS (陽イオン)、TFA:トリフルオロ酢酸、THF:テトラヒドロフラン、DMF:N,N-ジメチルホルムアミド、DMSO:ジメチルスルホキシド、MeOH:メタノール、EtOH:エタノール、Et2O:ジエチルエーテル、EtOAc:酢酸エチル、NMP:N-メチルピロリドン、DEAD:ジエチルアゾジカルボキシレート、DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン、mCPBA:m-クロロ過安息香酸、LAH:水素化アルミニウムリチウム。
【0057】
製造例1
tert-ブチル 4-(ヒドロキシメチル)-3,6-ジヒドロピリジン-1(2H)-カルボキシラート(5.77g)のTHF(87ml)溶液に氷冷下55% 水素化ナトリウム(1.30g)を加え、この懸濁液を室温で30分間攪拌した。再度氷冷とし臭化ベンジル(5.32g)およびテトラブチルアンモニウムヨージド(1.00g)を加え、室温にて3時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後、EtOAcで抽出した。飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮することにより得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)により精製し、tert-ブチル 4-[(ベンジルオキシ)メチル]-3,6-ジヒドロピリジン-1(2H)-カルボキシラート(6.16g)を得た。
【0058】
製造例2
tert-ブチル 4-[(ベンジルオキシ)メチル]-3,6-ジヒドロピリジン-1(2H)-カルボキシラート(6.68g)のクロロホルム(68ml)溶液にmCPBA(純度75%:5.57g)を加え、室温で1時間攪拌した。1M 水酸化ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を1M 水酸化ナトリウム水溶液で再度洗浄し、飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥し濃縮した。得られた粗tert-ブチル 6-[(ベンジルオキシ)メチル]-7-オキサ-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボキシラート(7.03g)は精製することなく次の反応に用いた。
【0059】
製造例3
LAH(520mg)のEt2O(75ml)懸濁液に氷冷下tert-ブチル 6-[(ベンジルオキシ)メチル]-7-オキサ-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボキシラート(3.37g)のEt2O(25ml)溶液を滴下し、室温にて1時間攪拌した。氷冷下、飽和アンモニア水溶液(1ml)を加え、THFで希釈後室温で2時間攪拌した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後セライトろ過し、濃縮により得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)により精製し、tert-ブチル 4-[(ベンジルオキシ)メチル]-4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボキシラート(2.59g)を得た。
【0060】
製造例4
tert-ブチル 4-[(ベンジルオキシ)メチル]-4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボキシラート(9.96g)のDMF(100ml)溶液に氷冷下55%水素化ナトリウム(4.06g)を加え、50℃で40分間攪拌した。氷冷下、ヨウ化メチル(22.0g)を滴下し、混合物を室温で4時間攪拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液および精製水を加え、EtOAcで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)により精製し、tert-ブチル 4-[(ベンジルオキシ)メチル]-4-メトキシピペリジン-1-カルボキシラート(9.27g)を得た。
【0061】
製造例6
tert-ブチル 4-[(ベンジルオキシ)メチル]-4-メトキシピペリジン-1-カルボキシラート(2.7g)のMeOH(80ml)溶液に20%水酸化パラジウム-炭素(270mg)を懸濁し、水素気流下にて室温で4時間攪拌した。セライトを用いてろ過し、ろ液を濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc)にて精製し、tert-ブチル 4-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシピペリジン-1-カルボキシラート(1.55g)を得た。
【0062】
製造例7
tert-ブチル 4-シアノ-4-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-1-カルボキシラート(886mg)に、4M 塩酸/ジオキサン溶液(15ml)を加えて、室温で1時間攪拌した。反応混合物を減圧下濃縮して、4-(ヒドロキシメチル)ピペリジン-4-カルボニトリル塩酸塩(663mg)を得た。
【0063】
製造例10
tert-ブチル rel-(3R,4S)-3-フルオロ-4-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシピペリジン-1-カルボキシラート(800mg)に4M 塩酸/ジオキサン溶液(11.4ml)を加え、室温で1時間攪拌した。減圧下濃縮しrel-[(3R,4S)-3-フルオロ-4-メトキシピペリジン-4-イル]メタノール 塩酸塩(607mg)を得た。
【0064】
製造例12
ヨウ化トリメチルスルホキソニウム(33.1g)のDMSO(250mL)懸濁液に氷冷下55%水素化ナトリウム(6.02g)を加え、室温で1時間撹拌した。ここにtert-ブチル 4-オキソピペリジン-1-カルボキシラート(25.0g)のDMSO(125mL)溶液を加え60℃で1時間加熱攪拌した。精製水を加えて、EtOAcで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)で精製し、tert-ブチル 1-オキサ-6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-カルボキシラート(21.5g)を得た。
【0065】
製造例13
ベンジルアルコール(17.62g)のDMF(130ml)溶液に、55%水素化ナトリウム(7.32g)を氷冷下加え、室温で40分間攪拌した。再度氷冷とし、tert-ブチル 1-オキサ-6-アザスピロ[2.5]オクタン-6-カルボキシラート(20.4g)のDMF(75ml)溶液を滴下し、室温で4時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液と精製水を加え、EtOAcで抽出し、精製水で再度洗浄した。次いで、飽和食塩水で洗浄後無水硫酸マグネシウムで乾燥し減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)で精製し、tert-ブチル 4-[(ベンジルオキシ)メチル]-4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボキシラート(10.01g)を得た。
【0066】
製造例14
4-メチルピペリジン-4-カルボキサミド 塩酸塩(2.24g)のDMF(70ml)懸濁液に塩化ベンジル(1.90g)、炭酸ナトリウム(1.59g)を加え室温で16時間攪拌した。反応液に水を加えEtOAcで抽出した。有機層を減圧濃縮し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH/クロロホルム)で精製して1-ベンジル-4-メチルピペリジン-4-カルボキサミド(2.85g)を得た。
【0067】
製造例15
アルゴン気流下、氷冷したLAH(1.40g)のTHF(50ml)懸濁液に1-ベンジル-4-メチルピペリジン-4-カルボキサミド(2.85g)のTHF(30ml)溶液を30分間かけて滴下した。反応を室温へ昇温して1時間攪拌した後、50℃で1時間加熱攪拌した。反応液を氷冷し90%THF水溶液(14mL)、15%水酸化ナトリウム水溶液(1.4mL)、水(4.2mL)を順次加えた。反応液を室温で1時間攪拌した後セライト濾過し、濾液を減圧濃縮して1-(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-4-イル)メチルアミン(2.68g)を得た。
【0068】
製造例16
1-(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-4-イル)メチルアミン(2.68g)のTHF(100ml)溶液にジ-tert-ブチルジカルボナート(2.81g)を加え室温で16時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)で精製してtert-ブチル[(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-4-イル)メチル]カルバマート(2.57g)を得た。
【0069】
製造例17
tert-ブチル[(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-4-イル)メチル]カルバマート(2.57g)のEtOH(100ml)溶液に20%水酸化パラジウム‐炭素(280mg)を加え3kgf/cm2の中圧水素雰囲気下、70℃で16時間加熱攪拌した。反応液をアルゴン置換後セライト濾過し減圧濃縮してtert-ブチル[(4-メチルピペリジン-4-イル)メチル]カルバマート(1.90g)を得た。
【0070】
製造例19
アルゴン雰囲気下、ジクロロメタン(40ml)を氷冷し、ジエチル亜鉛(1.0M ヘキサン溶液:27.0ml)を加えた後に、TFA(2ml)/ジクロロメタン(10ml)溶液を滴下し、氷冷下40分間撹拌した。次いでジヨードメタン(7.24g)/ジクロロメタン(10ml)溶液を滴下し、さらに同温にて40分間撹拌した後に、tert-ブチル 4-[(ベンジルオキシ)メチル]-3,6-ジヒドロピリジン-1(2H)-カルボキシラート(3.28g)/ジクロロメタン(30ml)溶液を滴下し、室温で15時間撹拌した。氷冷下トリエチルアミンを加えpH7-8とした後、ジ-tert-ブチルジカルボナート(2.83g)を加え、室温にて5時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出後飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下濃縮して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)で精製し、tert-ブチル 6-[(ベンジルオキシ)メチル]-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボキシラート(2.22g)を得た。
【0071】
製造例20
tert-ブチル 6-[(ベンジルオキシ)メチル]-7-オキサ-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボキシラート(2.50g)にフッ化水素カリウム(1.22g)およびテトラブチルアンモニウム三フッ化二水素(472mg)を加え120℃で2日間加熱攪拌した。反応をクロロホルムで希釈し、セライトろ過した。溶媒を減圧濃縮し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)で精製し、tert-ブチル 4-[(ベンジルオキシ)メチル]-3-フルオロ-4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボキシラート(1.76g)を得た。
【0072】
製造例21
tert-ブチル rel-(3R,4S)-4-[(ベンジルオキシ)メチル]-3-フルオロ-4-メトキシピペリジン-1-カルボキシラート(1.02g)のMeOH(29ml)溶液に20% 水酸化パラジウム‐炭素粉末(102mg)を懸濁し、水素気流下に室温にて4時間攪拌した。セライトろ過後、ろ液を濃縮し、tert-ブチル rel-(3R,4S)-3-フルオロ-4-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシピペリジン-1-カルボキシラート(800mg)を得た。
【0073】
製造例22
tert-ブチル 4-シアノ-4-({[(4-メチルフェニル)スルフォニル]オキシ}メチル)ピペリジン-1-カルボキシラート(1.24g)のジオキサン(50ml)懸濁液に氷冷下、1M 水酸化ナトリウム水溶液(6.0ml)、クロロ炭酸ベンジル(1.03g)を順次加え、室温で16時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、EtOAcで抽出した。有機層を減圧濃縮し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)で精製して2-ベンジル-7-tert-ブチル 2,7-ジアザスピロ[3.5]ノナン-2,7-ジカルボキシラート(1.68g)を得た。
【0074】
製造例23
1H-ベンズイミダゾール-2-イルアセトニトリル(13g)、4-オキソテトラヒドロ-2-H-チオピラン-3-カルボン酸メチル(15.3g)および酢酸アンモニウム(33g)の混合物を140℃で1時間加熱攪拌した。反応混合物を室温まで冷却し、水-アセトニトリルを加え、生じた沈殿を濾取、減圧乾燥して、12-オキソ-3,4,6,12-テトラヒドロ-1H-チオピラノ[4',3':4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-5-カルボニトリル(16g)を得た。
【0075】
製造例27
12-オキソ-3,4,6,12-テトラヒドロ-1H-チオピラノ[4',3':4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-5-カルボニトリル(16g)にオキシ塩化リン(50ml)を加え、3時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮し残渣を氷水に注加した。沈殿物を濾取、水で洗浄して、12-クロロ-3,4-ジヒドロ-1H-チオピラノ[4',3':4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-5-カルボニトリル(18g)を得た。
【0076】
製造例32
11-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボニトリル(4.00g)に硫酸(15ml)および精製水(2ml)を加え、50℃にて1日間攪拌した。反応溶液を冷却し、氷水で冷却しながら28%アンモニア水溶液を加えて中和した。析出した固体をろ取し、水で洗浄することにより、11-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド(4.48g)を得た。
【0077】
製造例38
11-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボニトリル(1.0g)とオキシ塩化リン(5ml)の混合物を100℃で30分間、130℃で1時間攪拌した。反応混合物を氷水にあけ、28%アンモニア水を用いてpHを9に調整し、析出した固体を濾取した。得られた固体を2-プロパノール及びEt2Oで洗浄し、減圧乾燥を行い、11-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド(1.03g)を得た。
【0078】
製造例39
シアン化カリウム(15g)の水溶液(30ml)を氷冷し、ここに2-(クロロメチル)-4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンズイミダゾール塩酸塩(12.0g)のEtOH(150ml)溶液を加え、室温で1時間、50℃で1時間攪拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて減圧濃縮し、クロロホルムで抽出した。有機層を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(28%アンモニア水/メタノール/クロロホルム)で精製して、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イルアセトニトリル(8.6g)を得た。
【0079】
製造例40
4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-ベンズイミダゾール-2-イルアセトニトリル(8.5g)、2-オキソシクロペンタンカルボン酸メチル(7.5g)および酢酸アンモニウム(20.3g)の混合物を140℃で2時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却し水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウム乾燥し減圧濃縮した。残渣をヘキサン/EtOAcを用いて固体化させ、11-ヒドロキシ-2,3,6,7,8,9-ヘキサヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボニトリル(2.56g)を得た。
【0080】
上記製造例の方法と同様にして、各製造例化合物をそれぞれ対応する原料を使用して製造した。製造例化合物の構造と、製法及び物理化学的データを以下の表に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
実施例1
3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプト-6-イルメタノール 塩酸塩(1.01g)のNMP懸濁液に11-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド(800mg)およびDIPEA(1.95ml)を加え、マイクロ波照射下に220℃で60分間攪拌した。反応液を水に加え、沈殿物をろ取した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトフィー(MeOH/クロロホルム)で精製し、11-[6-(ヒドロキシメチル)-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド(788mg)を得た。
【0087】
実施例18
11-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド(286mg)のNMP(3ml)溶液にtert-ブチル [(4-メチルピペリジン-4-イル)メチル]カルバマート(342mg)、DIPEA(348μl)を加え、マイクロ波照射下200℃で60分間加熱攪拌した。反応液に水を加え生じた沈殿を濾取し減圧乾燥した。得られた固体をクロロホルムに懸濁しここにTFAを加えて室温で1時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH/クロロホルム)で精製した。得られた粗精製物をクロロホルムに溶解し、ここに4M 塩酸−EtOAc溶液を加え室温で1時間攪拌した。溶媒を減圧濃縮し残渣をEtOH/Et2Oを用いて固体化させ、11-[4-(アミノメチル)-4-メチルピペリジン-1-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド・塩酸塩(177mg)を得た。
【0088】
実施例21
11-クロロ-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド(410mg)、ピペリジン-4-カルボニトリル(348mg)、DIPEA(556mg)のNMP(3.3ml)の混合溶液を、1日間120℃で加熱した。反応液に水を加えて、析出した固体を濾過して乾燥した。得られた固体をTHF/MeOHに溶解させ、シリカゲルを加え溶媒を濃縮してシリカゲルに吸着させた。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH/クロロホルム)で精製することにより、固体200mgを得た。その固体をMeOH/THFに溶解し、4M 塩酸-EtOAc(2.0ml)を加え攪拌した後濃縮し、アセトニトリルで洗浄することで11-(4-シアノピペリジン-1-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド・塩酸塩(138mg)を得た。
【0089】
実施例22
11-クロロ-2,2-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド(314mg)のNMP(3ml)溶液にrel-[(3R,4S)-3-フルオロ-4-メトキシピペリジン-4-イル]メタノール・塩酸塩(400mg)、DIPEA(520μl)を加え、マイクロ波照射下200℃で60分間加熱攪拌した。反応液に水を加え生じた沈殿を濾取し減圧乾燥した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH/クロロホルム)で精製した。得られた粗精製物をクロロホルム−EtOAc−ヘキサンで洗浄して、rel-11-[(3R,4S)-3-フルオロ-4-(ヒドロキシメチル)-4-メトキシピペリジン-1-イル]-2,2-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド(169mg)を得た。
【0090】
実施例23
11-[6-(ヒドロキシメチル)-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド(300mg)をEtOHに懸濁し、4M 塩酸-ジオキサン溶液(797μl)を加えて室温で攪拌した。濃縮後EtOH(5ml)を用いて固体化させ、11-[6-(ヒドロキシメチル)-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド・塩酸塩(75mg)を得た。
【0091】
実施例24
11-[6-(ヒドロキシメチル)-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-シクペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド(420mg)のTHF(21ml)懸濁液にトリフェニルホスフィン(439mg)およびフタルイミド(246mg)を加えた後、DEADのトルエン溶液(2.2M; 0.76ml)を滴下し室温で12時間攪拌した。減圧下濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH/クロロホルム)で精製し、粗11-{6-[(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)メチル]-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル}-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド(1.22g)を得た。
【0092】
実施例25
ベンジル 7-(4-カルバモイル-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-11-イル)-2,7-ジアザスピロ[3.5]ノナン-2-カルボキシラート(540mg)のTFA(10ml)溶液を60℃で1時間加熱攪拌した。溶媒を減圧濃縮し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(28%アンモニア水/MeOH/クロロホルム)で精製し、得られた粗精製物をクロロホルムに溶解し4M 塩酸−EtOAc溶液を加えた。反応液を1時間攪拌し減圧濃縮した。残渣をEtOH/Et2Oを用いて固体化させ、11-(2,7-ジアザスピロ[3.5]ノン-7-イルl)-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド 二塩酸塩(209mg)を得た。
【0093】
実施例27
ベンジル {[1-(4-カルバモイル-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-11-イル)-4-メトキシピペリジン-4-イル]メチル}カーバメート(262mg)のEtOH(10ml)-DMF(10ml)溶液に20%水酸化パラジウム/炭素粉末(50mg)を加え水素雰囲気下、室温で14時間攪拌した。反応液をセライト濾過し減圧濃縮した。ろ液を減圧濃縮し残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(28%アンモニア水/MeOH/クロロホルム)で分離精製した。得られた粗精製物をクロロホルムに溶解し4M 塩酸−EtOAc溶液を加えた。反応液を1時間攪拌し減圧濃縮した。残渣をEtOH/Et2Oを用いて固体化させ、11-[4-(アミノメチル)-4-メトキシピペリジン-1-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド 二塩酸塩(63mg)を得た。
【0094】
実施例28
粗11-{6-[(1,3-ジオキソ-1,3-ジオキソ-2H-イソインドール-2-イル)メチル]-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル}-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタン[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド(564mg)をEtOH(6ml)に懸濁し、ヒドラジン一水和物(0.24ml)を加え、2時間加熱還流した。熱時ろ過後、不溶物を慮別し、EtOHで洗浄した。減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(MeOH/クロロホルム)で精製し、次いで、塩基性シリカを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(MeOH/クロロホルム)で精製した。得られた固体をEtOH(3ml)およびクロロホルム(2ml)を用いて溶解し、4M 塩酸-ジオキサン(0.5ml)溶液を加え、室温で30分間攪拌した。減圧濃縮した後、EtOH/Et2O(1:1)で洗浄し、11-[6-(アミノメチル)-3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-イル]-2,3-ジヒドロ-1H-シクロペンタ[4,5]ピリド[1,2-a]ベンズイミダゾール-4-カルボキサミド 二塩酸塩(126mg)を得た。
【0095】
上記実施例の方法と同様にして、各実施例化合物をそれぞれ対応する原料を使用して製造した。各実施例化合物の構造と、製法及び物理化学的データを以下の表に示す。
【0096】
【表7】
【0097】
【表8】
【0098】
【表9】
【0099】
【表10】
【0100】
【表11】
【0101】
【表12】
【0102】
【表13】
【0103】
上記の製造例および実施例と同様に、それぞれ対応する原料を用いて、以下の表に示す化合物を製造した。
【0104】
【表14】
【0105】
【表15】
【0106】
【表16】
【0107】
【表17】
【0108】
【表18】
【0109】
【表19】
【0110】
【表20】
【0111】
【表21】
【0112】
【表22】
【0113】
【表23】
【0114】
【表24】
【0115】
【表25】
【0116】
【表26】
【0117】
【表27】
【0118】
【表28】
【0119】
【表29】
【0120】
【表30】
【0121】
【表31】
【0122】
【表32】
【0123】
【表33】
【0124】
【表34】
【0125】
【表35】
【0126】
【表36】
【0127】
【表37】
【0128】
【表38】
【0129】
【表39】
【0130】
【表40】
【0131】
【表41】
【0132】
【表42】
【0133】
【表43】
【0134】
【表44】
【0135】
【表45】
【0136】
【表46】
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【表47】
【0138】
【表48】
【0139】
【表49】
【0140】
【表50】
【0141】
【表51】
【0142】
【表52】
【0143】
【表53】
【0144】
【表54】
【産業上の利用可能性】
【0145】
式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩は、PDE4B阻害作用を有し、統合失調症、アルツハイマー病、認知症、うつ等の治療または予防剤として使用できる。