(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、当該制御部に接続されたティーチング装置により前記領域情報が入力されるように構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1に示されるように、ロボットシステム1は、ロボットセル2及び設定部3を備えている。ロボットセル2は、架台部4、双腕ロボット5、ロボットコントローラ(制御部)6、プロジェクタ(投影部)8及びカメラ(撮像部)9を備えている。このようなロボットセル2を複数配列することにより、製造ラインを構成することが可能である。なお、複数のロボットセル2を配列して製造ラインを構成する際、設定部3は、ロボットセル2のそれぞれに設けられてもよいし、複数のロボットセル2で共有されてもよい。
【0011】
架台部4は、双腕ロボット5を支持している。架台部4は、矩形板状の支持板41及び支持板41下に取り付けられた4本の脚部42を有している。支持板41上には、矩形板状の台座43が設けられており、台座43上に、双腕ロボット5が配置されている。また、台座43上には、双腕ロボット5と離間した位置に、双腕ロボット5が作業を行う際に使用する円柱状の作業台44が設けられている。
【0012】
さらに、支持板41上には、台座43と離間した位置(
図1では、支持板41の隅の位置)に、直方体状の受渡部45が設けられている。この受渡部45にワークWが載置されることにより、双腕ロボット5と作業者との間でワークWの受け渡しが行われる。なお、受渡部45では、例えば、双腕ロボット5が作業に用いる工具Tが受け渡されてもよい。
【0013】
支持板41には、カバー46が設けられ、双腕ロボット5、台座43、作業台44及び受渡部45を側方及び上方から覆っている。カバー46は、支持板41の4辺のそれぞれから上方に延びる側板と、側板の上部に設けられた天板と、側板及び天板を支持するフレームFとで構成されている。フレームFは、支持板41の4隅のそれぞれから上方に延びる縦方向の柱と、縦方向の柱の上端部同士を連結する横方向の柱とを有している。カバー46の側板及び天板は、例えば、外部から視認できるように透明な材料(例えば、ポリカーボネイト等)により形成されている。カバー46の1つの側板には、受渡部45に対応する一部分に、カバー46内に作業者が手を進入させることが可能な受渡口47が設けられている。なお、フレームFには、ロボットセル2の動作状況を示す表示灯Pが取り付けられている。
【0014】
双腕ロボット5は、左アーム51L及び右アーム51Rを有している。左アーム51L及び右アーム51Rは、互いに共同して作業を行うことが可能であり、さらに、互いに独立して作業を行うことが可能である。すなわち、左アーム51L及び右アーム51Rのそれぞれが、ロボットとして機能する。左アーム51L及び右アーム51Rのそれぞれは、多関節構造を有し、その先端部に継手部52を含んでいる。左アーム51L及び右アーム51Rのそれぞれは、双腕ロボット5に内蔵された複数のアクチュエータにより、6自由度の動作が可能となっている。これにより、継手部52は様々な位置、姿勢をとることが可能である。継手部52には、工具Tが取り付けられている。なお、左アーム51L及び右アーム51Rのそれぞれの自由度は一例であり、5自由度であっても7自由度以上であってもよい。
【0015】
ロボットコントローラ6は、双腕ロボット5の動作を制御し、加えて、プロジェクタ8及びカメラ9も制御する。ロボットコントローラ6は、例えば演算装置、記憶装置及び入出力装置を有するコンピュータである。ロボットコントローラ6において入出力される情報には、例えば、左アーム51L及び右アーム51Rの動作を規定する領域の情報(領域情報)、左アーム51L及び右アーム51Rの一連の動作を規定するプログラム(ジョブ)等がある。
【0016】
左アーム51L及び右アーム51Rの動作を規定する領域には、ロボット動作領域、協調動作領域及び進入禁止領域が含まれている。ロボット動作領域においては、左アーム51L及び右アーム51Rが進入可能である。ロボット動作領域は、協調動作領域及び進入禁止領域以外の領域である。
【0017】
協調動作領域においては、当該協調動作領域に進入が許可された左アーム51L、右アーム51R又は作業者が進入可能である。協調動作領域は、例えば、作業台44の上方の領域、及び、受渡部45の上方の領域である。さらに協調動作領域は、左アーム51L及び右アーム51Rが協調して動作し、作業者は進入しないとする第1の協調動作領域と、双腕ロボット5及び作業者が協調して動作する第2の協調動作領域とに細分化されてもよい。例えば、作業台44の上方の協調動作領域は第1の協調動作領域であり、進入が許可された左アーム51L又は右アーム51Rが進入可能である。受渡部45の上方の協調動作領域は第2の協調動作領域であり、進入が許可された左アーム51L、右アーム51R又は作業者が進入可能である。
【0018】
進入禁止領域においては、左アーム51L及び右アーム51Rの進入が禁止される。進入禁止領域は、左アーム51L及び右アーム51Rが周辺物と衝突すること等を回避するために設定される領域である。進入禁止領域は、例えば、支持板41、台座43、作業台44、受渡部45及びカバー46等の各周辺物が存在する領域、並びに、カバー46外の領域である。なお、安全性を向上させるため、進入禁止領域には、周辺物から所定距離以内の領域を含めてもよい。
【0019】
ロボットコントローラ6は、例えば支持板41下に配置されている。双腕ロボット5とロボットコントローラ6とは、配線により接続されている。なお、双腕ロボット5とロボットコントローラ6とは無線で接続されてもよいし、ロボットコントローラ6が双腕ロボット5に内蔵されていてもよい。
【0020】
ロボットコントローラ6内の領域情報及びジョブ等は、ティーチングペンダント(ティーチング装置)7により、現場において作業者が設定又は修正することができる(オンラインティーチング)。ティーチングペンダント7は、配線によりロボットコントローラ6に接続されても、無線によりロボットコントローラ6に接続されてもよい。
【0021】
プロジェクタ8は、ロボットコントローラ6に入力された領域情報に基づいて、左アーム51L及び右アーム51Rの動作を規定する領域を双腕ロボット5の周辺物に投影する。プロジェクタ8は、カバー46の天板に下向きに配向されて固定されており、双腕ロボット5の上方より光を照射する。領域が投影される周辺物としては、例えば、支持板41、台座43、作業台44、受渡部45及びカバー46等がある。プロジェクタ8は、配線によりロボットコントローラ6に接続されても、無線によりロボットコントローラ6に接続されてもよい。
【0022】
カメラ9は、双腕ロボット5及び双腕ロボット5の周辺物を含む範囲を撮像する。カメラ9は、カバー46の天板にプロジェクタ8と並べて下向きに配向されて固定されており、双腕ロボット5の上方より撮像する。カメラ9は配線によりロボットコントローラ6に接続されており、カメラ9により撮像された画像はロボットコントローラ6を介して設定部3に送られる。なお、カメラ9は、無線によりロボットコントローラ6に接続されてもよい。
【0023】
設定部3は、ロボットコントローラ6に設定される領域情報及びジョブ等を生成する(オフラインティーチング)。設定部3は、例えば演算装置、記憶装置及び入出力装置を有するコンピュータである。設定部3は、液晶ディスプレイ等の表示部31を有している。設定部3には、双腕ロボット5及び双腕ロボット5の周辺物の情報として、CADデータが入力される。設定部3は、CADデータを用いて、表示部31に仮想空間を表示する。なお、双腕ロボット5及び双腕ロボット5の周辺物の寸法情報等が設定部3に入力され、入力された情報に基づいて、設定部3自身が双腕ロボット5及び双腕ロボット5の周辺物のCADデータを生成してもよい。設定部3には、カメラ9により撮像された画像がロボットコントローラ6を介して入力される。
【0024】
設定部3は、入力されたこれらの情報に基づいて、領域情報及びジョブ等を生成する。設定部3は、領域情報として、例えば、ロボットセル2内における所定の点を基準とした座標系における領域の座標値(例えば、X座標値、Y座標値、Z座標値の各座標値又はそれらの組み合わせ)を生成する。設定部3は、表示部31に表示された情報を作業者が確認し、作業者が指示を入力すると、入力された指示に基づいて領域情報を生成するように構成されている。なお、設定部3は、入力されたCADデータから自動的に領域情報を生成するように構成されていてもよい。さらには、設定部3は、カメラ9により撮像された画像から自動的に領域情報を生成するように構成されていてもよい。
【0025】
設定部3は、配線によりロボットコントローラ6に接続されているが、無線によりロボットコントローラ6に接続されてもよく、ロボットコントローラ6に接続されていなくてもよい。設定部3がロボットコントローラ6と接続されていない場合には、設定部3により生成された領域情報を記憶媒体に記憶し、当該記憶媒体をロボットコントローラ6に接続することにより、領域情報をロボットコントローラ6に入力することができる。反対に、記憶媒体を用いて、カメラ9により撮像された画像を設定部3に入力することもできる。
【0026】
次に、ロボットシステム1の動作の一例について説明する。
【0027】
ロボットシステム1では、先ず、設定部3に双腕ロボット5及び双腕ロボット5の周辺物のCADデータが入力される。入力されたCADデータは、設定部3の表示部31に仮想空間として表示される。作業者により設定部3に指示が入力されると、設定部3は、指示が示す範囲を左アーム51L及び右アーム51Rの動作を規定する領域として設定し、当該領域の領域情報を生成する。
図2に示されるように、表示部31では、受渡部45の上方の協調動作領域Aの領域情報が生成される。続いて、設定部3により生成された領域情報が、ロボットコントローラ6に入力される。
【0028】
続いて、
図3に示されるように、ロボットコントローラ6に入力された領域情報に基づいて、協調動作領域Aがプロジェクタ8により実際に双腕ロボット5の周辺物に投影されて、可視化される。このとき、設定部3により仮想空間で生成された領域情報と、現場の双腕ロボット5の周辺物の位置との間に誤差がある場合には、
図3に示されるように、協調動作領域Aと受渡部45とが一致しない。具体的には、協調動作領域Aが、受渡部45及び支持板41にまたがって投影されて、所望の位置からY方向にずれる場合等がある。この場合、現場において、作業者がティーチングペンダント7を用いて領域情報を修正するといった対応がされる。
【0029】
以上、本実施形態のロボットシステム1では、左アーム51L及び右アーム51Rの動作を規定する領域を現場にいる作業者が視認できるため、領域設定の正誤を短時間で確認することができる。
【0030】
従来のロボットシステムにおいては、例えば、ロボットを実際に動作させ、ロボットの動作に基づいて領域設定の正誤を確認する必要があった。このため、確認に時間がかかる上に、確認が困難であった。
【0031】
これに対し、本実施形態のロボットシステム1では、ロボットコントローラ6に入力された領域情報に基づいて、左アーム51L及び右アーム51Rの動作を規定する領域がプロジェクタ8により双腕ロボット5の周辺物に投影される。このため、左アーム51L及び右アーム51Rの動作を規定する領域を現場にいる作業者が視認することが可能となる。作業者は、可視化された領域情報を確認しながらティーチング作業を行うことができる。従って、ティーチングの効率を向上できる。
【0032】
ロボットシステム1は、双腕ロボット5の周辺物の情報が入力され、入力された周辺物の情報を使用して領域情報を生成する設定部3を備えており、設定部3により生成された領域情報がロボットコントローラ6に入力される。このため、所望の領域情報を容易に生成できる。特に、複数のロボットセル2を配列して製造ラインを構成する場合、設定部3により生成された同一の領域情報を複数のロボットセル2に設定することにより、ティーチングの効率をさらに向上できる。
【0033】
設定部3に、双腕ロボット5の周辺物の情報として、双腕ロボット5の周辺物のCADデータが入力される。このため、周辺物のCADデータを基準にして領域情報を生成することが可能となり、領域情報を容易に生成できる。従って、ティーチングの効率をさらに向上できる。
【0034】
ロボットシステム1は、プロジェクタ8により双腕ロボット5の周辺物に投影された領域を撮像するカメラ9を備え、設定部3に、双腕ロボット5の周辺物の情報として、カメラ9により撮像された画像が入力される。このため、例えば、仮想空間で生成された領域情報と、現場の双腕ロボット5の周辺物の位置との間に誤差がある場合に、作業者は、カメラ9により撮像された画像を設定部3の表示部31で確認しながら、領域情報を遠隔で修正できる。
【0035】
左アーム51L及び右アーム51Rの動作を規定する領域には、ロボット動作領域、協調動作領域及び進入禁止領域が含まれており、ロボット動作領域においては、左アーム51L及び右アーム51Rが進入可能であり、協調動作領域においては、当該協調動作領域に進入が許可された左アーム51L、右アーム51R又は作業者が進入可能であり、進入禁止領域においては、左アーム51L及び右アーム51Rの進入が禁止される。これらの領域は実際には視認できないため、これらの領域を双腕ロボット5の周辺物に投影して可視化することにより、ティーチングの効率を向上できる。
【0036】
ロボットシステム1は、双腕ロボット5を支持する架台部4を備え、ロボットセル2として構成されている。複数のロボットセル2を配列して製造ラインを構成する場合、上述のように、ロボットセル2のそれぞれにおいてティーチングの効率を向上できるため、製造ライン全体の立ち上げに要する時間を短縮できる。
【0037】
上述のようなロボットシステム1を用いて被加工物を得る被加工物の製造方法においても、同様の効果が得られる。被加工物には、ボルト等の部品や自動車等の組立体が含まれる。
【0038】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態では、設定部3により領域情報を生成しているが、ティーチングペンダント7を用いて領域情報を設定し、ティーチングペンダント7によりロボットコントローラ6に領域情報を入力して、これらの領域をプロジェクタ8により双腕ロボット5の周辺物に投影してもよい。
【0040】
上記実施形態では、プロジェクタ8及びカメラ9は、ロボットコントローラ6に接続され、ロボットコントローラ6を介して設定部3との入出力を行っているが、プロジェクタ8及びカメラ9の一方又は双方がロボットコントローラ6を介さずに設定部3と接続され、設定部3により制御されるように構成されていてもよい。
【0041】
上記実施形態では、プロジェクタ8及びカメラ9は、カバー46の天板に固定されているが、カバー46の側板に固定されていてもよい。プロジェクタ8がカバー46の側板に固定されている場合、双腕ロボット5の側方から領域を投影でき、高さ方向(Z方向)におけるずれを確認できる。また、プロジェクタ8及びカメラ9は、ロボットセル2外に固定されていてもよい。要は、プロジェクタ8は、領域を双腕ロボット5の周辺物に投影できる位置に固定されていればよく、カメラ9は、双腕ロボット5及び双腕ロボット5の周辺を含む範囲を撮像できる位置に固定されていればよい。さらに、プロジェクタ8及びカメラ9は、それぞれ複数設けられていてもよい。
【0042】
上記実施形態では、領域は、ロボットシステム1のティーチング時に投影されているが、ロボットシステム1のプレイバック時(稼働時)に投影されてもよい。また、状況に応じて、領域に対する投影の状態が変化してもよい。
【0043】
具体的には、ロボットシステム1のプレイバック時において、例えば、プロジェクタ8により協調動作領域Aが緑色の光で受渡部45に投影されている場合には、作業者が協調動作領域への進入を許可されている期間とし、協調動作領域Aが赤色の光で受渡部45に投影されている場合には、左アーム51L又は右アーム51Rが協調動作領域への進入を許可されている期間とすることができる。また、プロジェクタ8により協調動作領域Aが連続的に投影(点灯)されている場合には、作業者が協調動作領域への進入を許可されている期間とし、協調動作領域Aが断続的に投影(点滅)されている場合には、左アーム51L又は右アーム51Rが協調動作領域への進入を許可されている期間とすることができる。これらの場合、作業者が協調動作領域への進入を許可されている否かを容易に認識でき、安全性を向上できる。
【0044】
上記実施形態では、協調動作領域Aが投影されているが、ロボット動作領域又は進入禁止領域が投影されてもよい。また、協調動作領域、ロボット動作領域及び進入禁止領域のいずれか2つ以上の領域が同時に投影されてもよい。2つ以上の領域が同時に投影される場合には、各領域を異なる色で投影することにより、作業者は各領域を容易に判別できる。
【0045】
上記実施形態では、双腕ロボット5を制御するロボットコントローラ6がプロジェクタ8の制御部を兼ねているが、プロジェクタ8の制御部がロボットコントローラ6とは別に設けられていてもよい。上記実施形態では、領域は、双腕ロボット5の周辺物に投影されているが、必要に応じて、双腕ロボット5自体に投影されてもよい。
【0046】
上記実施形態では、架台4にカバー46が設けられているが、カバー46は設けられていなくてもよい。上記実施形態では、ロボットは、双腕ロボット5の左アーム51L及び右アーム51Rであるが、例えば、一つの腕を有するロボットであってもよい。各要素の構成、個数及び材質等は、上記実施形態における構成、個数及び材質等に限られず、適宜変更可能である。