特許第5673717号(P5673717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5673717ロボットシステム及び被加工物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5673717
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】ロボットシステム及び被加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
   B25J9/22 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-56701(P2013-56701)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-180724(P2014-180724A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2013年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】澤田 有希子
(72)【発明者】
【氏名】旭 岳史
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−139806(JP,A)
【文献】 特開2010−208002(JP,A)
【文献】 特開2005−346718(JP,A)
【文献】 特許第3421191(JP,B2)
【文献】 特許第4648486(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットと、
前記ロボット外に固定され、前記ロボット及び前記ロボットの周囲を含む範囲を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像に基づいて、前記ロボットの動作を規定する領域情報を生成する設定部と
を備え、
前記設定部は
形状が定められた複数の要素を記憶する記憶部と、
前記複数の要素の中から要素を選択する選択部と、を有し、
前記設定部は、前記選択部によって選択された前記要素を前記領域情報の生成に用いるロボットシステム。
【請求項2】
前記ロボットは、ワークに加工を施す際に、前記ロボットの周囲に配置された周辺物を使用し、
前記設定部は、前記撮像部により撮像された前記周辺物の外形に応じて、前記領域情報を生成する、
請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記設定部は、
前記画像を作業者に対して表示するさらに表示部を有し、
前記選択部は、作業者から入力された指示に基づいて、選択する要素を決定する、
請求項1または2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記領域には、ロボット動作領域、協調動作領域及び進入禁止領域の少なくとも一つが含まれており、
前記ロボット動作領域においては、前記ロボットが進入可能であり、
前記協調動作領域においては、当該協調動作領域に進入が許可された前記ロボット又は作業者が進入可能であり、
前記進入禁止領域においては、前記ロボットの進入が禁止される、
請求項1〜のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記ロボットを支持する架台部を備え、
ロボットセルとして構成される請求項1〜のいずれか一項に記載のロボットシステム。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載のロボットシステムを用いて被加工物を得る、
被加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステム及び被加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人間による作業をロボットにより自動化させる需要が高まっている。ロボットの動作を規定する種々の領域は、ロボットコントローラに設定される(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4648486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットを備えるロボットシステムにおいては、ロボットの動作を規定する領域の設定を簡易化してティーチングの効率を向上させることが望まれている。
【0005】
そこで本発明は、ロボットの動作を規定する領域の設定が簡易化されティーチングの効率の向上が図られたロボットシステム、及び、被加工物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るロボットシステムは、ロボットと、ロボット外に固定され、ロボット及びロボットの周囲を含む範囲を撮像する撮像部と、撮像部により撮像された画像に基づいて、ロボットの動作を規定する領域情報を設定する設定部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロボットの動作を規定する領域の設定が簡易化されティーチングの効率の向上が図られたロボットシステム、及び、被加工物の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るロボットシステムの一実施形態を示す概略図である。
図2】撮像部により撮像された画像を示す図である。
図3】記憶部に記憶されている要素の例を示す図である。
図4】ロボットの動作を規定する領域の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1に示されるように、ロボットシステム1は、ロボットセル2及び設定部3を備えている。ロボットセル2は、架台部4、双腕ロボット5、ロボットコントローラ6、プロジェクタ8及びカメラ(撮像部)9を備えている。このようなロボットセル2を複数配列することにより、製造ラインを構成することが可能である。なお、複数のロボットセル2を配列して製造ラインを構成する際、設定部3は、ロボットセル2のそれぞれに設けられてもよいし、複数のロボットセル2で共有されてもよい。
【0011】
架台部4は、双腕ロボット5を支持している。架台部4は、矩形板状の支持板41及び支持板41下に取り付けられた4本の脚部42を有している。支持板41上には、矩形板状の台座43が設けられており、台座43上に、双腕ロボット5が配置されている。また、台座43上には、双腕ロボット5と離間した位置に、双腕ロボット5が作業を行う際に使用する作業台44が設けられている。
【0012】
さらに、支持板41上には、台座43と離間した位置(図1では、支持板41の隅の位置)に、受渡部45が設けられている。この受渡部45にワークWが載置されることにより、双腕ロボット5と作業者との間でワークWの受け渡しが行われる。なお、受渡部45では、例えば、双腕ロボット5が作業に用いる工具Tが受け渡されてもよい。
【0013】
ロボットシステム1に用いられる作業台44及び受渡部45の形状は規格化され得る。この場合、作業台44及び受渡部45は、複数の所定の形状の中から選択される。複数の所定の形状には、例えば、直方体(六面体)、円柱、円錐、球及び円筒等が含まれていてもよい(図3参照)。各形状には、サイズが異なるものが含まれていてもよい。さらに、複数の所定の形状には、他の形状が含まれていてもよく、例えば、六面体以外の多面体及び円筒以外の筒形状が含まれていてもよい。本実施形態では、作業台44は円柱状を呈しており、受渡部45は直方体状を呈している。
【0014】
支持板41には、カバー46が設けられ、双腕ロボット5、台座43、作業台44及び受渡部45を側方及び上方から覆っている。カバー46は、支持板41の4辺のそれぞれから上方に延びる側板と、側板の上部に設けられた天板と、側板及び天板を支持するフレームFとで構成されている。フレームFは、支持板41の4隅のそれぞれから上方に延びる縦方向の柱と、縦方向の柱の上端部同士を連結する横方向の柱とを有している。カバー46の側板及び天板は、例えば、外部から視認できるように透明な材料(例えば、ポリカーボネイト等)により形成されている。カバー46の1つの側板には、受渡部45に対応する一部分に、カバー46内に作業者が手を進入させることが可能な受渡口47が設けられている。なお、フレームFには、ロボットセル2の動作状況を示す表示灯Pが取り付けられている。
【0015】
双腕ロボット5は、左アーム51L及び右アーム51Rを有している。左アーム51L及び右アーム51Rは、互いに共同して作業を行うことが可能であり、さらに、互いに独立して作業を行うことが可能である。すなわち、左アーム51L及び右アーム51Rのそれぞれが、ロボットとして機能する。左アーム51L及び右アーム51Rのそれぞれは、多関節構造を有し、その先端部に継手部52を含んでいる。左アーム51L及び右アーム51Rのそれぞれは、双腕ロボット5に内蔵された複数のアクチュエータにより、6自由度の動作が可能となっている。これにより、継手部52は様々な位置、姿勢を取ることが可能である。継手部52には、工具Tが取り付けられている。なお、左アーム51L及び右アーム51Rのそれぞれの自由度は一例であり、5自由度であっても7自由度以上であってもよい。
【0016】
ロボットコントローラ6は、双腕ロボット5の動作を制御し、加えて、プロジェクタ8及びカメラ9も制御する。ロボットコントローラ6は、例えば演算装置、記憶装置及び入出力装置を有するコンピュータである。ロボットコントローラ6において入出力される情報には、例えば、左アーム51L及び右アーム51Rの動作を規定する領域の情報(領域情報)、左アーム51L及び右アーム51Rの一連の動作を規定するプログラム(ジョブ)等がある。
【0017】
左アーム51L及び右アーム51Rの動作を規定する領域には、ロボット動作領域、協調動作領域及び進入禁止領域が含まれている。ロボット動作領域においては、左アーム51L及び右アーム51Rが進入可能である。ロボット動作領域は、協調動作領域及び進入禁止領域以外の領域である。
【0018】
協調動作領域においては、当該協調動作領域に進入が許可された左アーム51L、右アーム51R又は作業者が進入可能である。協調動作領域は、例えば、作業台44の上方の領域、及び、受渡部45の上方の領域である。さらに協調動作領域は、左アーム51L及び右アーム51Rが協調して動作し、作業者は進入しないとする第1の協調動作領域と、双腕ロボット5及び作業者が協調して動作する第2の協調動作領域とに細分化されてもよい。例えば、作業台44の上方の協調動作領域は、第1の協調動作領域であり、進入が許可された左アーム51L又は右アーム51Rが進入可能である。受渡部45の上方の協調動作領域は、第2の協調動作領域であり、進入が許可された左アーム51L、右アーム51R又は作業者が進入可能である。
【0019】
進入禁止領域においては、左アーム51L及び右アーム51Rの進入が禁止される。進入禁止領域は、左アーム51L及び右アーム51Rが周辺物と衝突すること等を回避するために設定される領域である。進入禁止領域は、例えば、支持板41、台座43、作業台44、受渡部45及びカバー46等の各周辺物が存在する領域、並びに、カバー46外の領域である。なお、安全性を向上させるため、進入禁止領域には、周辺物から所定距離以内の領域を含めてもよい。
【0020】
ロボットコントローラ6は、例えば支持板41下に配置されている。双腕ロボット5とロボットコントローラ6とは、配線により接続されている。なお、双腕ロボット5とロボットコントローラ6とは無線で接続されてもよいし、ロボットコントローラ6が双腕ロボット5に内蔵されていてもよい。
【0021】
ロボットコントローラ6内の領域情報及びジョブ等は、ティーチングペンダント7により、現場において作業者が設定又は修正することができる(オンラインティーチング)。ティーチングペンダント7は、配線によりロボットコントローラ6に接続されても、無線によりロボットコントローラ6に接続されてもよい。
【0022】
プロジェクタ8は、ロボットコントローラ6に入力された領域情報に基づいて、左アーム51L及び右アーム51Rの動作を規定する領域を双腕ロボット5の周辺物に投影する。プロジェクタ8は、カバー46の天板に下向きに配向されて固定されており、双腕ロボット5の上方より光を照射する。領域が投影される周辺物としては、例えば、支持板41、台座43、作業台44、受渡部45及びカバー46等がある。プロジェクタ8は、配線によりロボットコントローラ6に接続されても、無線によりロボットコントローラ6に接続されてもよい。
【0023】
カメラ9は、双腕ロボット5及び双腕ロボット5の周辺物を含む範囲を撮像する。カメラ9は、カバー46の天板にプロジェクタ8と並べて下向きに配向されて固定されており、双腕ロボット5の上方より撮像する。カメラ9は配線によりロボットコントローラ6に接続されており、カメラ9により撮像された画像はロボットコントローラ6を介して設定部3に送られる。なお、カメラ9は、無線によりロボットコントローラ6に接続されてもよい。
【0024】
設定部3は、ロボットコントローラ6に設定される領域情報及びジョブ等を生成する(オフラインティーチング)。設定部3は、例えば演算装置、記憶装置及び入出力装置を有するコンピュータである。設定部3には、双腕ロボット5及び双腕ロボット5の周辺物の情報として、CADデータが入力される。設定部3は、CADデータを用いて、後述する表示部31に仮想空間を表示する。なお、双腕ロボット5及び双腕ロボット5の周辺物の寸法情報等が設定部3に入力され、入力された情報に基づいて、設定部3自身が双腕ロボット5及び双腕ロボット5の周辺物のCADデータを生成してもよい。設定部3には、カメラ9により撮像された画像がロボットコントローラ6を介して入力される。
【0025】
設定部3は、表示部31、記憶部32、周辺物抽出部33、選択部34及び領域情報生成部35を有している。表示部31は、例えば液晶ディスプレイ等であり、CADデータ及びカメラ9により撮像された画像等の各種情報を表示する。
【0026】
記憶部32には、形状が定められた複数の要素が記憶されている。作業台44及び受渡部45を規格化する場合には、複数の要素の形状を、作業台44及び受渡部45の形状と対応させることができる。図3に示されるように、複数の要素の形状には、例えば、直方体(六面体)、円柱、円錐、球及び円筒等が含まれている。各形状のサイズに関しては、サイズが異なるものが記憶されていてもよく、サイズが可変である要素が記憶されていてもよい。さらに、複数の要素の形状には、他の形状が含まれていてもよく、例えば、六面体以外の多面体及び円筒以外の筒形状が含まれていてもよい。
【0027】
周辺物抽出部33は、カメラ9により撮像された画像中から、双腕ロボット5の周辺物を抽出する。本実施形態では、周辺物抽出部33は、画像中から、作業台44及び受渡部45を抽出する。
【0028】
選択部34は、カメラ9により撮像された画像に基づいて、記憶部32に記憶された複数の要素の中から、双腕ロボット5の周辺物の外形に対応した要素を選択する。
【0029】
領域情報生成部35は、CADデータ及び選択部34により選択された要素を用いて、領域情報を生成する。領域情報生成部35は、領域情報として、例えば、ロボットセル2内における所定の点を基準とした座標系における領域の座標値(例えば、X座標値、Y座標値、Z座標値の各座標値又はそれらの組み合わせ)を生成する。領域情報生成部35は、表示部31に表示された情報を作業者が確認し、作業者が指示を入力すると、入力された指示に基づいて領域情報を生成するように構成されている。なお、領域情報生成部35は、CADデータ及び選択部34により選択された要素から、自動的に領域情報を生成するように構成されていてもよい。
【0030】
設定部3は、配線によりロボットコントローラ6に接続されているが、無線によりロボットコントローラ6に接続されてもよく、ロボットコントローラ6に接続されていなくてもよい。設定部3がロボットコントローラ6と接続されていない場合には、設定部3により生成された領域情報を記憶媒体に記憶し、当該記憶媒体をロボットコントローラ6に接続することにより、領域情報をロボットコントローラ6に入力することができる。また、反対に、記憶媒体を用いて、カメラ9により撮像された画像を設定部3に入力することができる。周辺物抽出部33、選択部34及び領域情報生成部35は、ソフトウェアで構成されてもよいし、ハードウェアで構成されてもよい。
【0031】
次に、ロボットシステム1の動作の一例について説明する。
【0032】
図2に示されるように、ロボットシステム1では、先ず、カメラ9により、双腕ロボット5及び双腕ロボット5の周辺物を含む範囲が撮像され、カメラ9により撮像された画像が、ロボットコントローラ6を介して設定部3に入力される。
【0033】
続いて、周辺物抽出部33により、カメラ9により撮像された画像中から、作業台44及び受渡部45が抽出される。抽出は、公知の画像処理技術を用いて行うことができる。
【0034】
続いて、表示部31に、カメラ9により撮像された画像が表示される。また、表示部31に、記憶部32に記憶された複数の要素の中から、作業台44及び受渡部45のそれぞれに対応する要素の選択を促す指示が表示される。
【0035】
作業者により設定部3に指示が入力されると、選択部34は、作業者からの指示が示す要素を、選択する要素に決定する。ここでは、作業者により、作業台44に対応する要素として所定のサイズの円柱を選択すると共に、受渡部45に対応する要素として所定のサイズの直方体を選択する旨の指示が入力され、選択部34は、これらの要素を選択する要素に決定する。
【0036】
続いて、図4に示されるように、表示部31に、双腕ロボット5、支持板41、台座43及びカバー46のCADデータが表示されると共に、選択部34により選択された要素が表示される。続いて、表示部31に、左アーム51L及び右アーム51Rの動作を規定する領域の設定を促す指示が表示される。
【0037】
作業者により指示が入力されると、領域情報生成部35は、入力された指示に基づいて、左アーム51L及び右アーム51Rの動作を規定する領域の領域情報を生成する。図4に示されるように、ここでは、作業者により、作業台44に対応する円柱状の要素を含む領域、及び、受渡部45に対応する直方体状の要素を含む領域のそれぞれを進入禁止領域Rとして設定する旨の指示が入力され、領域情報生成部35は、これら進入禁止領域Rの領域情報を生成する。
【0038】
続いて、設定部3により生成された領域情報が、ロボットコントローラ6に入力される。続いて、ロボットコントローラ6に入力された領域情報に基づいて、プロジェクタ8により進入禁止領域Rが作業台44及び受渡部45のそれぞれに投影される(不図示)。以上により、一連の動作が終了する。
【0039】
以上、本実施形態のロボットシステム1では、双腕ロボット5外に固定されカメラ9により双腕ロボット5及び双腕ロボット5の周辺を含む範囲が撮像され、カメラ9により撮像された画像に基づいて、設定部3により、左アーム51L及び右アーム51Rの動作を規定する領域情報が生成される。このため、カメラ9により撮像された画像から領域情報の生成に有益な情報を事前に得ることが可能となるため、何ら情報を得ずに領域情報を生成する場合に比して、ロボットコントローラ6に設定される領域情報の生成にかかる時間を短縮できる。従って、各領域の設定が簡易化されティーチングの効率を向上できる。
【0040】
ロボットシステム1では、左アーム51L及び右アーム51Rは、ワークWに加工を施す際に、ロボットの周囲に配置された作業台44及び受渡部45を使用し、設定部3は、カメラ9により撮像された作業台44及び受渡部45の外形に応じて、領域情報を設定する。ワークWに加工を施す際に使用される作業台44及び受渡部45には、ロボットシステム1の稼働中に左アーム51L及び右アーム51Rが頻繁に近づくため、撮像された作業台44及び受渡部45の外形に応じて領域情報を生成することにより、安全性を向上できる。
【0041】
設定部3は、形状が定められた複数の要素を記憶する記憶部32と、複数の要素の中から要素を選択する選択部34と、を有しており、設定部3は、選択部34によって選択された要素を領域情報の生成に用いる。形状が定められた要素を使用して領域情報を生成することにより、領域情報の生成に伴い設定部3にかかる負荷を低減できる。また、例えば、上述のように、作業台44及び受渡部45を規格化する場合には、これらの形状に対応した要素を記憶部32に記憶しておくことにより、作業台44及び受渡部45に対応した要素を容易に選択できる。従って、領域情報の生成に要する時間を短縮できる。
【0042】
設定部3は、画像を作業者に対して表示する表示部31をさらに有しており、選択部34は、作業者から入力された指示に基づいて、選択する要素を決定する。どの要素を選択するかの判断は、表示部31に表示された画像を確認できる作業者が行うため、要素の選択に伴い設定部3にかかる負荷を低減できる。
【0043】
左アーム51L及び右アーム51Rの動作を規定する領域には、ロボット動作領域、協調動作領域及び進入禁止領域が含まれており、ロボット動作領域においては、左アーム51L及び右アーム51Rが進入可能であり、協調動作領域においては、当該協調動作領域に進入が許可された左アーム51L、右アーム51R又は作業者が進入可能であり、進入禁止領域においては、左アーム51L及び右アーム51Rの進入が禁止される。これらの領域の領域情報を、双腕ロボット5を含む範囲の画像に基づいて生成することにより、各領域の設定を簡易化できる。
【0044】
ロボットシステム1は、双腕ロボット5を支持する架台部4を備え、ロボットセル2として構成されている。複数のロボットセル2を配列して製造ラインを構成する場合、上述のように、ロボットセル2のそれぞれにおいて各領域の設定を簡易化できるため、領域の設定からティーチングの実施までの作業全体の効率が向上し、製造ライン全体の立ち上げに要する時間を短縮できる。
【0045】
上述のようなロボットシステム1を用いて被加工物を得る被加工物の製造方法においても、同様の効果が得られる。被加工物には、ボルト等の部品や自動車等の組立体が含まれる。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、作業台44及び受渡部45は、規格化されていなくてもよい。この場合、カメラ9により撮像された画像に基づいて、記憶部32に記憶された複数の要素の中から、画像中の作業台44及び受渡部45の外形に近い要素を選択できる。
【0047】
上記実施形態では、プロジェクタ8及びカメラ9は、カバー46の天板に固定されているが、カバー46の側板に固定されていてもよい。カメラ9がカバー46の側板に固定されている場合、作業台44及び受渡部45の高さ方向(Z方向)の寸法を得ることができるため、作業台44及び受渡部45の外形に近い要素を好適に選択できる。また、プロジェクタ8及びカメラ9は、ロボットセル2外に固定されていてもよい。要は、プロジェクタ8は、領域を双腕ロボット5の周辺物に投影できる位置に固定されていればよく、カメラ9は、双腕ロボット5及び双腕ロボット5の周辺を含む範囲を撮像できる位置に固定されていればよい。さらに、プロジェクタ8及びカメラ9は、それぞれ複数設けられていてもよい。
【0048】
上記実施形態では、プロジェクタ8及びカメラ9は、ロボットコントローラ6に接続され、ロボットコントローラ6を介して設定部3との入出力を行っているが、プロジェクタ8及びカメラ9の一方又は双方がロボットコントローラ6を介さずに設定部3と接続され、設定部3により制御されるように構成されていてもよい。
【0049】
上記実施形態では、作業台44及び受渡部45は、周辺物抽出部33により自動的に画像中から抽出されているが、表示部31に表示された画像を確認できる作業者が設定部3に指示を入力し、入力された指示に基づいて抽出されてもよい。
【0050】
上記実施形態では、選択部34は、作業者により入力された指示に基づいて、記憶部32に記憶された複数の要素の中から、作業台44及び受渡部45のそれぞれに対応する要素を選択するように構成されているが、選択部34は、カメラ9により撮像された画像に基づいて、作業台44及び受渡部45のそれぞれに近い要素を自動的に選択するように構成されていてもよい。
【0051】
上記実施形態では、作業台44及び受渡部45が設けられた状態で撮像が行われているが、作業台44及び受渡部45が設けられていない状態で撮像が行われてもよい。具体的には、上述したロボットシステム1の動作に先立って、先ず、作業台44及び受渡部45のそれぞれが設けられる予定の位置に、目印(例えば、作業者により保持された指し棒の先端)を配置する。続いて、カメラ9により、双腕ロボット5及び目印を含む範囲を撮像する。続いて、周辺物抽出部33により、カメラ9により撮像された画像の中から、目印を抽出する。そして、記憶部32に記憶された複数の要素の中から、設けられる予定の作業台44及び受渡部45に対応する要素を選択する。それ以外の動作は、上述と同様である。
【0052】
上記実施形態では、作業台44及び受渡部45に対応する要素のそれぞれとして、一つの円筒及び直方体が選択されているが、複数の要素が選択され、複数の要素が組み合わされたものが用いられてもよい。
【0053】
上記実施形態では、設定部3は、記憶部32に記憶された複数の要素の中から、双腕ロボット5の周辺物に対応する要素を選択するように構成されているが、設定部3は、カメラ9により撮像された画像に基づいて、双腕ロボット5の周辺物に対応する要素を新たに生成するように構成されていてもよい。
【0054】
上記実施形態では、架台部4にカバー46が設けられているが、カバー46は設けられていなくてもよい。上記実施形態では、ロボットは、双腕ロボット5の左アーム51L及び右アーム51Rであるが、例えば、一つの腕を有するロボットであってもよい。各要素の構成、個数及び材質等は、上記実施形態における構成、個数及び材質等に限られず、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…ロボットシステム、3…設定部、4…架台部、5…双腕ロボット、9…カメラ(撮像部)、31…表示部、32…記憶部、34…選択部、51L…左アーム(ロボット)、51R…右アーム(ロボット)。
図1
図2
図3
図4