【実施例】
【0100】
本発明において採用した各種測定方法について以下に説明する。
【0101】
(重合度の測定)
本発明において、重合度は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定または赤外分光法などによるイミド化率の測定によってあらかじめ数平均重合度と溶液粘度との対応を調べておき、反応溶液の溶液粘度の測定によって数平均重合度を知ることができる。なお、イミド化率が90%以上のものが対象の場合には、GPC測定法によって求め、イミド化率が90%未満の場合には、赤外分光法によるイミド化率測定法から求めた。
本発明においてGPC測定は以下のようにして行った。日本分光工業株式会社製800シリーズHPLCシステムを用い、カラムはShodex KD−806Mを1 本、カラム部温度は40℃、検出器は未知試料用としてインテリジェント紫外可視分光検出器(吸収波長350nm)、標準物質用として示差屈折計(標準物質はポリエチレングリコール)を使用した。溶媒は塩化リチウム及びリン酸を各々0.05モル/L含むN−メチル−2−ピロリドン溶液を使用し、溶媒の流速は0.5mL/分、サンプルの濃度は約0.1%とした。データの取り込み及びデータ処理はJASCO−JMBS/BORWINを用い行なった。データの取り込みは2回/秒行ない、試料のクロマトグラムを得た。一方、標準物質として分子量82,250、28,700、6,450、1,900のポリエチレングリコールを使用し、これらのクロマトグラムからピークを検出し、保持時間と分子量の関係を示す校正曲線を得た。未知試料の分子量解析は、校正曲線から各保持時間における分子量Mi を各々求め、また、各保持時間におけるクロマトグラムの高さhi の合計に対する分率Wi =hi /Σhi を求め、それらをもとに数平均分子量Mnは1/{Σ(Wi /Mi )}から、重量平均分子量MwはΣ(Wi ・Mi )から求めた。
【0102】
数平均重合度Nは、重合時の仕込み割合に応じて平均化したモノマー単位分子量<m>で数平均分子量Mnを除して求めた。
【0103】
数式3
N=Mn/<m>
【0104】
なお、モノマー単位分子量<m>は下記のとおり求めた。すなわち、複数種のテトラカルボン酸成分(分子量m1,i 、仕込みモル比R1,i 、但し、ΣR1,i =1、i=1,2,3,・・・,n1 )、複数種のジアミン成分(分子量m2,j 、仕込みモル比R2,j 、但し、ΣR2,j =1、j=1,2,3,・・・,n2 )を仕込んだ場合のモノマー単位分子量<m>は下記の式に従って求めた。
【0105】
数式4
<m>=(ΣR1,i m1,i +ΣR2,j m2,j )−36
なお、ポリイミド成分の一部については、N−メチル−2−ピロリドンへの溶解性が乏しいため用いる溶媒を変更し、CF
3COONaを0.01モル/L含むヘキサフルオロイソプロパノールを溶媒としてGPC測定を行った。このとき、カラムはShodex HFIP−LG+HFIP−806Mを2本、カラム部温度は40℃、検出器はRI−8011、標準物質用として示差屈折計を使用した。溶媒の流速は0.8mL/分、サンプルの濃度は約0.1%とした。標準物質として分子量1,400,000、820,000、480,000、260,000,127,000、67,000、34,500、15,100、6,400、2,400、960のポリメチルメタクリレートを使用し、これらのクロマトグラムからピークを検出し、保持時間と分子量の関係を示す校正曲線を得た。未知試料の分子量解析は、N−メチル−2−ピロリドン溶媒を用いる場合と同様に、校正曲線から各保持時間における分子量Mi を各々求め、また、各保持時間におけるクロマトグラムの高さhi の合計に対する分率Wi =hi /Σhi を求め、それらをもとに数平均分子量Mnは1/{Σ(Wi /Mi )}から、重量平均分子量MwはΣ(Wi ・Mi )から求めた。
【0106】
(イミド化率の測定による重合度の測定)
赤外分光法によるイミド化率の測定はパーキンエルマー社製スペクトラムワンを用い、全反射吸収測定法−フーリエ変換赤外分光法(ATR−FTIR)によって行った。イミド化率pI の算出は、イミド結合のC−N伸縮振動(波数約1360cm
-1)の吸光度Aを芳香核C=C面内振動(波数約1500cm
-1)の吸光度AI を内部標準として規格化した値(A/AI )を、190℃にて5時間熱処理した後の試料について先と同様にして求めたC−N伸縮振動の吸光度A
S を芳香核C=C面内振動の吸光度A
SIを内部標準として規格化した値(A
S /A
SI)で除して求めた。
【0107】
数式5
pI =(A/AI )/(A
S /A
SI)
なお、吸収バンドの吸光度は、吸収バンドの両側の谷を結んだ線をベースラインとしたピーク強度とした。
ここで得られたイミド化率の値から、さらに下記式により数平均重合度Nを求めた。
【0108】
数式6
N=(1+r)/(2r(1−pI )+(1−r))
ここでrはポリイミドのテトラカルボン酸成分の総モル数に対するジアミン成分の総モル数の組成比であり、ジアミン成分がテトラカルボン酸成分より多い場合その逆数を取るものとし(即ちどの場合においてもrは1以下)、pI はイミド化率である。
【0109】
(X線光電子分光による緻密層表面のフッ素原子濃度の測定)
本発明において、フッ素原子含有ポリイミドが緻密層に存在する割合は、X線光電子分光(以下、XPSまたはESCAと略記する場合もある)で緻密層表面のフッ素原子濃度φ
S を調べることにより知ることができる。
ここで、特定元素jの原子濃度φj は、ポリイミドに含まれる検出可能な(水素原子とヘリウム原子は検出できない)各元素の原子数をNi (下付きの添え字は元素の種類を表す)とし、特定の元素jの原子数をNj として、下記数式で表されるものである。
【0110】
数式7
φj =Nj /ΣNi
(ここで、ΣNi はポリイミドに含まれる検出可能な全元素の原子数の和を示す。)
【0111】
XPSの測定は、X線をポリイミド非対称膜の緻密層表面に照射し、ポリイミドに含まれる各々の元素の各軌道にある電子を真空中に放出させ、放出された電子(光電子)の運動エネルギーに対する光電子の強度(光電子スペクトル)を測定することによって行われる。本発明においては、照射するX線として、ポリイミド表面の損傷などを抑制するために、XPSに不必要なX線成分を除去した単色化AlKα線が好適に利用される。
また、光電子の運動エネルギーEk から電子の物質原子中における束縛エネルギーEb が、下記数式で求められる。
【0112】
数式8
Eb =hν−Ek −W
(ここで、hνは照射X線のエネルギー、Wは光電子を検出した分光器の仕事関数である。)
この束縛エネルギーの値は、元素と電子軌道によりほぼ決まった値をとるので、照射X線のエネルギーを適当に選択すれば、原理的には全元素の検出が可能なはずである。しかしながら、各軌道の電子がX線によって励起される確率(光イオン化断面積)が小さい水素とヘリウムに関しては、実際には観測できない。
ポリイミドに含まれる特定の元素jのl軌道からX線照射によって放出された光電子の強度Ij は下記数式で示される。
【0113】
数式9
Ij =Nj σj
l λj
l Aj
l R
(ここで、Nj は単位体積当りの元素jの原子数、σj
l は元素jのl殻に対する光イオン化断面積、λj
l は元素jのl殻から放出された電子がポリイミド中を走行する際の非弾性散乱平均自由行程、Aj
l は元素jのl殻から放出された電子に対する装置関数、Rはポリイミド非対称膜の表面粗さ係数である。)
光イオン化断面積σj
l 、非弾性散乱平均自由行程λj
l の値は公知である。Aj
l は装置と測定条件から決まる値である。Rの値はサンプルによって異なるが、強度比を取ると消える値であるため、後述する原子濃度の算出には必要ない。
【0114】
本発明において、ポリイミドに含まれる特定の元素jの原子濃度φj は、測定された光電子の強度Ij を用いて下記数式で求めた。
【0115】
数式10
φj =(Ij /Sj )/Σ(Ii /Si )
(ここで、Sj =σj
l λj
l Aj
l であり、Sj は元素iに対する相対的な感度を表しており、Σ(Ii /Si )はポリイミドに含まれる検出できる全ての元素iについて光電子の強度を前記の相対感度で除した値の和を表している。)
なお、相対感度Sj は原子濃度が既知である基準物質等を用いて別途決定することができる。相対感度Sj として、XPSの装置メーカーなどから提供されている相対感度S'j を便宜的に用いることがあるが、本発明においては、単一組成からなる、換言すれば1種類のテトラカルボン酸成分と1種類のジアミン成分からなるホモポリイミド(原子濃度が既知)を用いて相対感度を決定した。
すなわち、単一組成のポリイミド(1種類のテトラカルボン酸成分と1種類のジアミン成分からなるホモポリイミド)からなるサンプルについては、表面原子濃度φ
s,j の値と該ポリイミドにおける平均の原子濃度の値fj がほぼ一致することが期待されるが、表面原子濃度φ
s,j を求める際に用いる相対感度Sj として、XPSの装置メーカーなどから提供されている相対感度係数を装置関数で補正した相対感度S'j をそのまま用いた場合、φ
s,j とfj の間にしばしばズレが生じる。これは前記相対感度S'j が、ポリイミド以外の他の標準物質を用いて実験的に決められた値であることによる。このためポリイミド材料の表面原子濃度を求める際の相対感度Sj は、単一組成のホモポリイミドからなるサンプルを用いたときの表面原子濃度φ
s,j と平均の原子濃度fj が一致するように、S'j を補正した値を用いた。すなわち、本発明の相対感度Sj は、下記数式で示される。
【0116】
数式11
Sj =S'j ×αj
(ここでαj は元素jについて、他の標準材料を用いて決定された相対感度S'j をポリイミド材料に適用するために使用する補正係数である)
本発明においては前記補正係数を元素ごとに測定して求め、その補正係数で補正した相対感度Sj を用いた。
本発明において、光電子の強度Ij は、XPS測定の結果得られる光電子スペクトルについて、光電子ピークの面積から求めた。光電子ピークのうち、比較的に光イオン化断面積の大きい遷移に関するものが好適に利用される。通常は光イオン化断面積の値が炭素1s軌道の値の10%より高い遷移に関する光電子ピークが好適に利用される。本発明では、フッ素に関しては1s軌道からの光電子ピークを好適に利用でき、例えば炭素に関しては1s軌道、窒素に関しては1s軌道、酸素に関しては1s軌道、硫黄に関しては2p軌道から放出された光電子ピークを好適に利用できた。
また、光電子スペクトルは、光電子が試料から真空中へ脱出する過程で非弾性散乱を起こすことにより生じたバックグラウンドを含んでいる。このため、原子濃度の決定に利用する各光電子ピークについて、前記のバックグラウンドを差し引いた後に求めた残りの面積をIj とした。
【0117】
更に、本発明のXPSの測定において、ポリイミド非対称膜が中空糸の場合、照射径を中空糸径より細く絞ったX線が使用される。中空糸径が30μm以上概略100μm程度以上であるため、照射径として100μmφ程度以下が好適に採用され、更に20μmφ程度が好適に採用された。
また、光電子の放出によりポリイミド表面が帯電するため、電子線照射などによる試料表面電荷の中和が好適に採用された。
XPSの測定においては、試料表面から測った光電子の取り出し角度(エミッション角)θに応じて、XPSで測定される厚みが変化する。XPSで検出される光電子の95%は試料表面から測った厚み3λj
l sinθの範囲から放出されたものである。θの値には、測定が可能な範囲であれば特に制限はないが、45°などが好適に利用される。分析される厚みとしては試料表面から数nmの厚みの範囲となる。このためXPSで測定された原子濃度は表面から数nmの厚みの範囲における表面原子濃度φ
s,j である。
一方、膜全体を形成した多成分のポリイミドに含まれる元素jについての平均の原子濃度fj は下記数式で示される。
【0118】
数式12
fj =Σmk nk /Σmk Nk
(ここでnk はモノマーkに含まれる元素jの原子数であり、モノマーkがテトラカルボン酸又はその無水物の場合で元素jが酸素の場合、ポリイミド重合時に縮合水として脱離する酸素原子の数を除いた数であり、Nk はモノマーkに含まれるX線光電子分光で検出可能な全原子数であり、モノマーkがテトラカルボン酸又はその無水物の場合、ポリイミド重合時に縮合水として脱離する酸素原子の数を除いた数であり、mk は膜を形成した多成分のポリイミド中におけるモノマーkのモル分率であり、Σは多成分のポリイミドに含まれる全てのモノマーkについて和を取ることを示す)
本発明において、膜全体における平均のフッ素原子濃度(f)は、前記数式に基づいて算出されたものである。
【0119】
(表面張力の測定)
本発明においてポリイミドフィルムの表面張力測定は、表面張力の異なる種々の試験用混合液を用い、フィルム上にこれらの液滴を形成させ、その液滴の接触角(θ)を測定し、種々の試験用混合液の表面張力とcosθとの関係、すなわちZismanプロットからcosθが1になる表面張力(臨界表面張力)を、外挿により求める方法で行った。
具体的に説明すれば、測定装置はクルス自動接触角計DSA20装置を使用した。測定温度は23℃で行った。測定表面はフィルム形成時の空気に曝した表面とし、和光純薬工業株式会社製ぬれ張力試験用混合液(表面張力の異なる種々の混合液)を乗せ、各々の液滴の接触角を測定した。液滴の接触角評価方法として、静置した液滴の完全な輪郭を一般円錐曲線式でフィッティングすることによって、3相の接点での傾斜を基準線における曲線式の導関数として求め、これによって接触角を決定する方法を用いた。接触角は、まず試験用混合液を5μL 乗せ30秒後に測定した。次いで試験用混合液をさらに5μL 増やして接触角を測定し、これを繰り返し合計量30μLまで求めた。試験用混合液の液適量と接触角との関係から液適量が0μLの接触角を求め、これを試験フィルム表面におけるその試験用混合液の接触角(θ)とした。表面張力の異なる種々の液体を用いて、同様にフィルム表面における各々の接触角(θ)を求め、試験用混合液の表面張力とcosθとの関係、すなわちZismanプロットから試験フィルムの表面張力(臨界表面張力)を求めた。
なお、原料組成をランダム重合して得られたポリイミドフィルムの表面張力をγ
randとして、本発明で得られたポリイミドフィルムの表面張力をγとしたときの、表面張力の変化δは、δ=γ−γ
randで求めた。
【0120】
(ガラス転移温度の測定)
本発明においてガラス転移温度Tgは、レオメトリックスサイエンティフィック社製固体粘弾性アナライザーRSAIIIを用い、各ポリイミド成分からなるフィルムについて、損失正接(tanδ)の温度依存性曲線を測定し、tanδのピーク位置の温度として求めた。前記tanδ曲線の測定は、サンプルを予め120℃で10分間保持した後、窒素気流下で、−150℃から450℃まで3℃刻みで各温度において、測定周波数10Hzにて、フィルムの貯蔵弾性率E'、損失弾性率E"を測定し求めた。
上記測定でtanδ曲線に明確なピークが観察されない一部のホモポリイミドについては、Biceranoの方法に従いAccelrys社製Materials Studio(ver. 4.0)のSynthiaモジュールを用いて、ガラス転移温度の推算値Tgcalcを求め、参考値として代用した。ランダムコポリイミド成分についてTgcalcを推算する場合については、ランダムコポリイミドを構成する各ホモポリイミド成分iについて上記Biceranoの方法で求めたTgcalc,i、及びランダムコポリイミド中における各ホモポリイミド成分iの重量分率wiを用い、次のFoxの式を使って見積もった。
【0121】
数式13
ランダムコポリイミドのTgcalc=1/[Σ(wi/Tgcalc,i)]
【0122】
(回転粘度の測定方法)
ポリイミド溶液の溶液粘度は、回転粘度計(ローターのずり速度1.75sec
-1)を用い温度100℃で測定した。
【0123】
(ポリイミドフィルムの作製)
ポリイミド溶液は、溶液粘度が100℃で50〜1000ポイズになるように調製し、400メッシュ金網を用いて濾過し、引き続き100℃で静置により脱泡した。このポリイミド溶液を50℃でガラス板上に0.5mmまたは0.2mmのドクターナイフを用いて流延し、オーブン中100℃で3時間加熱し溶媒を蒸発させ、更にオーブン中300℃で1時間加熱処理をおこないポリイミドフィルムを得た。
【0124】
(フィルムの機械的性質の測定)
ポリイミドを幅約2mmに切り出して得られた短冊状試験片を、紙枠にエポキシ接着剤で固定したものをサンプルとして、引張り試験を行った。試験フィルムの断面積は、サンプルの厚さをデジタルダイヤルゲージを用いて測定し、幅を光学顕微鏡像上にて測定し、算出した。引張試験は、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気にて、有効長20mm、引張り速度10mm/分にて行い、初期弾性率(単に弾性率と書くこともある)、破断強度、破断伸びを測定した。
(フィルムの濁りの測定)
フィルムの濁りの有無は目視にても判定できるが、フィルムのヘイズ値を用いて判定した。日本分光工業株式会社製V−570紫外可視近赤外分光光度計を用い、積分球(日本分光工業株式会社製ISN−470)測定を行うことにより、各フィルムについて全光線透過率Tt、散乱光線透過率Tdを測定し、ヘイズ値Th=Td/Tt×100(%)を求めた。このヘイズ値が50%より大きいフィルムを、濁りありと判定した。例えば、後述する実施例3、比較例3のフィルムはヘイズ値が4%未満なのに対して、比較例4、比較例5のフィルムはヘイズ値がそれぞれ61%、87%であった。従って実施例3、比較例3は濁りなし、比較例4、比較例5のフィルムは濁りありと判定した。
(凍結破断面のノジュールサイズの測定)
フィルムを液体窒素温度に冷却し、予めフィルムの一部に導入した切れ込みから瞬時に破断して、フィルムの凍結破断面を得た。この凍結破断面に、極薄い導電膜をコーティングした後、フィールドエミッション型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて破断面の形態を観察した。フィルムの破断は、フィルム中における多成分ポリイミドの多数の分子鎖の空間的な配置がつくる構造(これ以降、単に高次構造と呼ぶこともある)の内で相対的に脆弱な部分を通して進行するため、破断面には前記高次構造の特徴を反映した凹凸の形態(これ以降、単に破断面のモルホロジーと呼ぶこともある)が出現する。この破断面のモルホロジーは1nm〜100nm程度のサイズを有する微小な粒子、あるいは微小な枝状物ともいうべき構造(これ以降、この構造をノジュールと呼ぶこともある)が集合したように見える高次構造を示した。高次構造はポリイミド分子鎖の空間的な配置によるのであるから、多成分ポリイミドの分子構造(鎖構造)がブロック性を有する場合と、ランダム共重合体である場合とで前記高次構造は異なり、またミクロ相分離とも言うべき相分離状態が生じている場合と生じていない場合、あるいはマクロ相分離が生じている場合それぞれにおいて前記高次構造は異なる。なお、破断面のモルホロジーが示す微小な粒子の直径、あるいは微小な枝状物の長手方向と垂直な方向における断面径をFE−SEM像上で計測し、その平均値を凝集構造の特徴的なサイズλとした。
【0125】
(実施例1)
ポリイミドAとして2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(以下、6FDAと略記することもある)とジメチル−3,7−ジアミノジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド(以下、TSNと略記することもある)からなるホモポリイミド(6FDA−TSN)、ポリイミドBとして3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、s−BPDAと略記することもある)とTSNからなるポリイミド(s−BPDA−TSN)を選んだ。
この場合、ポリイミドAの溶解度パラメータSP
A は24.33MPa
1/2、ポリイミドBの溶解度パラメータSPB は25.38MPa
1/2であり、|SPB −SP
A |=1.05MPa
1/2であった。
またポリイミドAの弾性率E
A は3.80GPa、ガラス転移温度Tg
A (参考値)は371℃であり、ポリイミドBの弾性率EB は5.07GPa、ガラス転移温度TgB は400℃以上であった。従ってE
B/E
A=1.33、|TgB −Tg
A |>29℃であった。
s−BPDA12.36gとTSN11.38g(酸二無水物1モル部に対してジアミンが0.988モル部、B/A=0.988)を、溶媒のパラクロロフェノール(以下、PCPと略記することもある)171gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で30時間重合イミド化し、ポリマー濃度が11.5重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度N
B を前記GPC測定方法によって測定したところ、75であった。このポリイミド溶液へ2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(以下、6FDAと略記することもある)12.44gとTSN8.30g(酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.081モル部)を溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で8時間重合イミド化し、回転粘度が2306ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、40であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは25μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例1)の表面張力γ
randと比較して、その差|γ−γ
rand|が5.0mN/mであった。またこのフィルムの弾性率Eは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例1)の弾性率E
randと比較して、その比E/E
randが1.019であった。
このフィルム表面のフッ素原子濃度φsは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例1)のフッ素原子濃度φs
,randと比較して、その比(φs/φs
,rand)が2.2であった。
また、このポリイミドフィルム凍結破断面のFE−SEMを用いて観察し、ノジュールサイズをもとめた。(
図8)
【0126】
(比較例1)
s−BPDA12.36gと6FDA12.44gとTSN19.68gを、溶媒のPCP191gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で16時間重合イミド化し、回転粘度が2195ポイズ、ポリマー濃度が18重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、44であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは25μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
この例は原料組成が実施例1とほぼ同じであるが、φs/fが1.05であり、低いものであった。またこのフィルムの弾性率、破断強度は、実施例1のフィルムのそれらより低いものであった。
また、このポリイミドフィルム凍結破断面のFE−SEMを用いて観察し、ノジュールサイズをもとめた。(
図9)
【0127】
(実施例2)
ポリイミドAとして6FDAと3,5−ジアミノ安息香酸(以下、DABAと略記することもある)からなるホモポリイミド(6FDA−DABA)、ポリイミドBとしてs−BPDAとTSNからなるポリイミド(s−BPDA−TSN)を選んだ。
この場合、SP
A は24.31MPa
1/2、SPB は25.38MPa
1/2であり、|SPB −SP
A |=1.07MPa
1/2であった。
またE
A は3.87GPa、Tg
A (参考値)は275℃であり、EB は5.07GPa、TgB は400℃以上であった。従ってE
B/E
A=1.31、|TgB −Tg
A |>125℃であった。
s−BPDA12.36gとTSN11.38gを、溶媒のPCP154gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で30時間重合イミド化し、ポリマー濃度が12.6重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度N
B を前記GPC測定方法によって測定したところ、75であった。このポリイミド溶液へ6FDA12.44gとDABA4.61gを溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で5時間重合イミド化し、回転粘度が2120ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、78であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは27μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例2)と比較して|γ−γ
rand|が4.6mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例2と比較して、その比E/E
randが1.136であった。
このフィルム表面のフッ素原子濃度φsは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例2)と比較して、その比(φs/φs
,rand)が2.3であった。
【0128】
(比較例2)
s−BPDA12.36gと6FDA12.44gとTSN11.81gとDABA4.37gを、溶媒のPCP175gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で26時間重合イミド化し、回転粘度が1655ポイズ、ポリマー濃度が18重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、44であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは29μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
この例は原料組成が実施例2とほぼ同じであるが、φs/fが1.04であり、低いものであった。またこのフィルムの弾性率、破断強度、破断伸びは、実施例2のフィルムのそれらより低いものであった。
【0129】
(実施例3)
ポリイミドAとして6FDAとTSN、DABA(TSNとDABAのモル比85/15)からなるランダムコポリイミド(6FDA−TSN−DABA)、ポリイミドBとしてs−BPDAとTSNからなるポリイミド(s−BPDA−TSN)を選んだ。
この場合、SP
A は24.33MPa
1/2、SPB は25.38MPa
1/2であり、|SPB −SP
A |=1.05MPa
1/2であった。
またE
A は3.82GPa、Tg
A (参考値)は335℃であり、EB は5.07GPa、TgB は400℃以上であった。従ってE
B/E
A=1.33、|TgB −Tg
A |>65℃であった。
s−BPDA12.36gとTSN11.35gを、溶媒のPCP165gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で35時間重合イミド化し、ポリマー濃度が11.9重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度N
B を前記GPC測定方法によって測定したところ、77であった。このポリイミド溶液へ6FDA12.44gとTSN5.21gDABA1.73gを溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で8時間重合イミド化し、回転粘度が1618ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、41であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは26μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例3)と比較して|γ−γ
rand|が6.8mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例3と比較して、その比E/E
randが1.038であった。
このフィルム表面のフッ素原子濃度φsは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例3)と比較して、その比(φs/φs
,rand)が2.0であった。
【0130】
(比較例3)
s−BPDA12.36gと6FDA12.44gとTSN16.73gとDABA1.64gを、溶媒のPCP185gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で13時間重合イミド化し、回転粘度が2623ポイズ、ポリマー濃度が18重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、37であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは28μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
この例は原料組成が実施例3とほぼ同じであるが、φs/fが1.23であり、低いものであった。またこのフィルムの弾性率、破断強度、破断伸びは、実施例3のフィルムのそれらより低いものであった。
【0131】
(比較例4)
ポリイミドAとして6FDAとTSN、DABA(TSNとDABAのモル比5/3)からなるホモポリイミド(6FDA−TSN−DABA)、ポリイミドBとしてs−BPDAとTSN、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(以下、DADEと略記することもある)(TSNとDADEのモル比9/1)からなるポリイミド(s−BPDA−TSN−DADE)を選んだ。なおDADEの量は僅少であるため、実施例3の組成の組合せとほぼ同じものである。
6FDA27.32gとTSN10.29gとDABA3.42gを溶媒のPCP162gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で110時間重合イミド化し、ポリマー濃度が19.3重量%のポリイミドA溶液を得た。このポリイミドAの数平均重合度N
A を前記GPC測定方法によって測定したところ、30であった。
s−BPDA52.66gとTSN46.00gとDADE3.73gを、溶媒のPCP419gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で25時間重合イミド化し、ポリマー濃度が18.7重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度N
B を前記GPC測定方法によって測定したところ、63であった。
次に前記ポリイミドA溶液92g及び前記ポリイミドB溶液100gをセパラブルフラスコに秤り取り混合した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で3時間重合イミド化し、回転粘度が1618ポイズ、ポリマー濃度が18.8重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、76であった。このN
A、N
Bは本発明の範囲からはずれるものである。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは27μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。このフィルムの弾性率、破断強度は、実施例3のフィルムのそれらより低いものであった。
このフィルムはマクロ相分離を示し濁ったものとなった。
【0132】
(比較例5)
ポリイミドA、ポリイミドBは比較例4と同じ化学構造を選んだ。
6FDA26.65gとTSN10.49gとDABA3.49gを溶媒のPCP161gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で40時間重合イミド化し、ポリマー濃度が19.3重量%のポリイミドA溶液を得た。このポリイミドAの数平均重合度N
A を前記GPC測定方法によって測定したところ、44であった。
s−BPDA52.66gとTSN46.00gと4,4'−ジアミノジフェニルエーテル(以下、DADEと略記することもある)3.73gを、溶媒のPCP419gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で25時間重合イミド化し、ポリマー濃度が18.7重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度N
B を前記GPC測定方法によって測定したところ、66であった。
次に前記ポリイミドA溶液90g及び前記ポリイミドB溶液100gをセパラブルフラスコに秤り取り混合した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに温度130℃で3時間攪拌混合し、回転粘度が2753ポイズ、ポリマー濃度が19重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、56であった。このN
A、N
Bは本発明の範囲からはずれるものである。この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは30μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。このフィルムの弾性率、破断強度は、実施例3のフィルムのそれらより低いものであった。
このフィルムはマクロ相分離を示し濁ったものとなった。
【0133】
(実施例4)
ポリイミドAとして6FDA、s−BPDAとTSN、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン(以下MASNと略する場合もある)、DABA(6FDAとs−BPDAのモル比4/3、TSN、MASN、DABAのモル比4/2/1)からなるランダムコポリイミド(6FDA−s−BPDA−TSN−MASN−DABA)、ポリイミドBとしてs−BPDAとTSNからなるポリイミド(s−BPDA−TSN)を選んだ。
この場合、SP
A は24.77MPa
1/2、SPB は25.38MPa
1/2であり、|SPB −SP
A |=0.61MPa
1/2であった。
またE
A は4.17GPa、Tg
A (参考値)は343℃であり、EB は5.07GPa、TgB は400℃以上であった。従ってE
B/E
A=1.21、|TgB −Tg
A |>57℃であった。
s−BPDA6.36gとTSN6.07gを、溶媒のPCP171gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で27時間重合イミド化し、ポリマー濃度が6.4重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度N
B を前記GPC測定方法によって測定したところ、57であった。このポリイミド溶液へs−BPDA6.36gと6FDA12.79gとTSN8.10gとMASN3.67gとDABA1.12gを溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で19時間重合イミド化し、回転粘度が1507ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、50であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは34μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例6)と比較して|γ−γ
rand|が4.9mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例6と比較して、その比E/E
randが1.055であった。
このフィルム表面のフッ素原子濃度φsは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例6)と比較して、その比(φs/φs
,rand)が1.2であった。
【0134】
(実施例5)
ポリイミドAとして6FDAとTSN、MASN、DABA(TSN、MASN、DABAのモル比1/2/1)からなるランダムコポリイミド(6FDA−s−BPDA−TSN−MASN−DABA)、ポリイミドBとしてs−BPDAとTSNからなるポリイミド(s−BPDA−TSN)を選んだ。
この場合、SP
A は24.34MPa
1/2、SPB は25.38MPa
1/2であり、|SPB −SP
A |=1.04MPa
1/2であった。
またE
A は3.76GPa、Tg
A (参考値)は279℃であり、EB は5.07GPa、TgB は400℃以上であった。従ってE
B/E
A=1.35、|TgB −Tg
A |>121℃であった。
6FDA23.10gとTSN3.66gとMASN6.62gとDABA2.03gを溶媒のPCP153gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で6時間重合イミド化し、ポリマー濃度が18重量%のポリイミドA溶液を得た。このポリイミドAの数平均重合度N
A を前記GPC測定方法によって測定したところ、4.9であった。
s−BPDA21.18gとTSN20.25gを、溶媒のPCP177gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で0.5時間重合イミド化し、ポリマー濃度が18重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度N
B を前記GPC測定方法によって測定したところ、6.0であった。
次に前記ポリイミドA溶液88g及び前記ポリイミドB溶液110gをセパラブルフラスコに秤り取り混合した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で19時間重合イミド化し、回転粘度が1376ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、57であった。この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは30μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例6)と比較して|γ−γ
rand|が5.0mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例6と比較して、その比E/E
randが1.175であった。
このフィルム表面のフッ素原子濃度φsは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例6)と比較して、その比(φs/φs
,rand)が1.7であった。
【0135】
(実施例6)
ポリイミドA、ポリイミドBは実施例5と同じ化学構造を選んだ。
s−BPDA12.36gとTSN11.35gを、溶媒のPCP165gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で27時間重合イミド化し、ポリマー濃度が11.8重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度N
B を前記GPC測定方法によって測定したところ、76であった。このポリイミド溶液へ6FDA12.44gとTSN2.08gとMASN3.77gとDABA1.16gを溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で30時間重合イミド化し、回転粘度が911ポイズ、ポリマー濃度が18重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、45であった。この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは36μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例6)と比較して|γ−γ
rand|が8.1mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例6と比較して、その比E/E
randが1.113であった。
このフィルム表面のフッ素原子濃度φsは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例6)と比較して、その比(φs/φs
,rand)が2.0であった。
【0136】
(比較例6)
s−BPDA12.71gと6FDA12.79gとTSN14.17gとMASN3.67gとDABA1.12gを、溶媒のPCP191gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で73時間重合イミド化し、回転粘度が1190ポイズ、ポリマー濃度が18重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、49であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは34μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
この例は原料組成が実施例6とほぼ同じであるが、φs/fが1.25であり、低いものであった。またこのフィルムの弾性率、破断強度、破断伸びは、実施例4、5、6の各フィルムのそれらより低いものであった。
【0137】
(実施例7)
ポリイミドAとしてs−BPDAと2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下、HFBAPPと略記することもある)からなるホモポリイミド(s−BPDA−HFBAPP)、ポリイミドBとしてs−BPDAと1,4−ジ(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、TPEQと略記することもある)、DADE(TPEQ、DADEのモル比3/2)からなるランダムコポリイミド(s−BPDA−TPEQ−DADE)を選んだ。
この場合、SP
A は22.67MPa
1/2、SPB は23.80MPa
1/2であり、|SPB −SP
A |=1.13MPa
1/2であった。
またE
A は2.59GPa、Tg
A は260℃であり、EB は3.49GPa、TgB は284℃であった。従ってE
B/E
A=1.34、|TgB −Tg
A |=24℃であった。
s−BPDA4.61gと2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン(以下、HFBAPPと略記することもある)8.30gを、溶媒のPCP171gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で8時間重合イミド化し、ポリマー濃度が6.7重量%のポリイミドA溶液を得た。このポリイミドAの数平均重合度N
A を前記GPC測定方法によって測定したところ、18.2であった。このポリイミド溶液へs−BPDA18.45gと1,4−ジ(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(以下、TPEQと略記することもある)11.23gとDADE5.13gを溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で4時間重合イミド化し、回転粘度が1190ポイズ、ポリマー濃度が19重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、39であった。この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは29μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例7)と比較して|γ−γ
rand|が1.9mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例7と比較して、その比E/E
randが1.083であった。
このフィルム表面のフッ素原子濃度φsは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例7)と比較して、その比(φs/φs
,rand)が2.0であった。
【0138】
(比較例7)
s−BPDA23.07gとHFBAPP8.30gとTPEQ11.23gとDADE5.13gを、溶媒のPCP191gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で3時間重合イミド化し、回転粘度が1246ポイズ、ポリマー濃度が19重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、41であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは27μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。このフィルムの弾性率、破断強度は、実施例7のフィルムのそれらより低いものであった。
【0139】
(実施例8)
ポリイミドA、ポリイミドBは実施例7と同じ化学構造を選んだ(ポリイミドAとポリイミドBの比率が異なる)。
s−BPDA6.92gとHFBAPP12.44gを、溶媒のPCP180gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で15時間重合イミド化し、ポリマー濃度が9.3重量%のポリイミドA溶液を得た。このポリイミドAの数平均重合度N
A を前記GPC測定方法によって測定したところ、22.5であった。このポリイミド溶液へs−BPDA16.15gとTPEQ9.82gとDADE4.49gを溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で4時間重合イミド化し、回転粘度が1897ポイズ、ポリマー濃度が19重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、44であった。この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは27μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例8)と比較して|γ−γ
rand|が0.9mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例8と比較して、その比E/E
randが1.078であった。
このフィルム表面のフッ素原子濃度φsは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例8)と比較して、その比(φs/φs
,rand)が1.8であった。
【0140】
(比較例8)
s−BPDA23.07gとHFBAPP12.44gとTPEQ9.82gとDADE4.49gを、溶媒のPCP191gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で3時間重合イミド化し、回転粘度が1079ポイズ、ポリマー濃度が19重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、37であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは27μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。このフィルムの弾性率、破断強度、破断伸びは、実施例8のフィルムのそれらより低いものであった。
【0141】
(実施例9)
ポリイミドAとしてs−BPDAと1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン(以下、ADBと略記することもある)からなるホモポリイミド(s−BPDA−ADB)、ポリイミドBとしてs−BPDAとTSNからなるホモポリイミド(s−BPDA−TSN)を選んだ。
この場合、SP
A は20.71MPa
1/2、SPB は25.38MPa
1/2であり、|SPB −SP
A |=4.67MPa
1/2であった。
またE
A は0.02GPa、Tg
A は125℃であり、EB は5.07GPa、TgB は400℃以上であった。従ってE
B/E
A=330、|TgB −Tg
A |>275℃であった。
s−BPDA14.12gとTSN13.43gを、溶媒のPCP126.1gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で15時間重合イミド化し、ポリマー濃度が17.0重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度N
B を前記GPC測定方法によって測定したところ、57であった。このポリイミド溶液へs−BPDA3.53gと1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン(以下、ADBと略記することもある)3.78gを溶媒のPCP33.6gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で5時間重合イミド化し、回転粘度が930ポイズ、ポリマー濃度が17重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、31であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは19μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例9)と比較して|γ−γ
rand|が8.6mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例9と比較して、その比E/E
randが1.077であった。
このフィルム表面のケイ素原子濃度φsは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例9)のそれと比較して、その比(φs/φs
,rand)が3.3であった。
【0142】
(比較例9)
s−BPDA17.65gとTSN13.43gとADB3.78gを、溶媒のPCP159.7gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で17時間重合イミド化し、回転粘度が781ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、49であった。この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは26μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
この例は原料組成が実施例9とほぼ同じであるが、φs/fが2.2であり、低いものであった。またこのフィルムの弾性率、破断強度、破断伸びは、実施例9のフィルムのそれらより低いものであった。
【0143】
(実施例10)
ポリイミドAとしてs−BPDAと2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(以下、BAPPと略記することもある)からなるホモポリイミド(s−BPDA−BAPP)、ポリイミドBとしてs−BPDAと2,2'−ジメチルー4,4'−ジアミノジフェニル(以下、m−ToLと略記することもある)からなるホモポリイミド(s−BPDA−m−ToL)を選んだ。
この場合、SP
A は22.67MPa
1/2、SPB は23.42MPa
1/2であり、|SPB −SP
A |=0.75MPa
1/2であった。
またE
A は2.52GPa、Tg
A は260℃であり、EB は6.53GPa、TgB は330℃であった。従ってE
B/E
A=2.59、|TgB −Tg
A |=70℃であった。
s−BPDA5.88gと2,2'−ジメチルー4,4'−ジアミノジフェニル(以下、m−ToLと略記することもある)4.33gを、溶媒のPCP53.8gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で12時間重合イミド化し、ポリマー濃度が15重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度N
B を前記GPC測定方法によって測定したところ、51であった。このポリイミド溶液へs−BPDA5.88gと2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(以下、BAPPと略記することもある)8.37gを溶媒のPCP76.7gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で5時間重合イミド化し、回転粘度が751ポイズ、ポリマー濃度が15重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、68であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは20μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例10)と比較して|γ−γ
rand|が6.6mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例10と比較して、その比E/E
randが1.032であった。
また、このポリイミドフィルム凍結破断面のFE−SEMを用いて観察し、ノジュールサイズをもとめた。(
図10)
【0144】
(比較例10)
s−BPDA11.77gとm−ToL4.33gとBAPP8.37gを溶媒のPCP130.5gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で17時間重合イミド化し、回転粘度が552ポイズ、ポリマー濃度が15重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、50であった。この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは20μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。このフィルムの弾性率、破断強度は、実施例10のフィルムのそれらより低いものであった。
また、このポリイミドフィルム凍結破断面のFE−SEMを用いて観察し、ノジュールサイズをもとめた。(
図11)
【0145】
(実施例11)
ポリイミドAとポリイミドBは実施例10と同じ化学構造を選んだ(ポリイミドAとポリイミドBの比率が異なる)。
s−BPDA8.24gとm−ToL6.06gを、溶媒のPCP75.3gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で13時間重合イミド化し、ポリマー濃度が15重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度N
B を前記GPC測定方法によって測定したところ、56であった。このポリイミド溶液へs−BPDA3.53gとBAPP5.02gを溶媒のPCP46.1gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で4時間重合イミド化し、回転粘度が460ポイズ、ポリマー濃度が15重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、42であった。この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは27μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例11)と比較して|γ−γ
rand|が1.5mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例11と比較して、その比E/E
randが1.100であった。
【0146】
(比較例11)
s−BPDA11.77gとm−ToL6.06gとBAPP5.02gを溶媒のPCP121.4gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で19時間重合イミド化し、回転粘度が580ポイズ、ポリマー濃度が15重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、53であった。この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは29μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。このフィルムの弾性率、破断強度、破断伸びは、実施例11のフィルムのそれらより低いものであった。
【0147】
(実施例12)
ポリイミドAとポリイミドBは実施例10と同じ化学構造を選んだ(ポリイミドAとポリイミドBの比率が異なる)。
s−BPDA3.53gとm−ToL2.60gを、溶媒のPCP32.3gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で15時間重合イミド化し、ポリマー濃度が15重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度N
B を前記GPC測定方法によって測定したところ、50であった。このポリイミド溶液へs−BPDA8.24gとBAPP11.72gを溶媒のPCP107.4gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で5時間重合イミド化し、回転粘度が420ポイズ、ポリマー濃度が15重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、39であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは28μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例12)と比較して|γ−γ
rand|が2.4mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例12と比較して、その比E/E
randが1.064であった。
【0148】
(比較例12)
s−BPDA11.77gとm−ToL2.60gとBAPP11.72gを溶媒のPCP139.7gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で17時間重合イミド化し、回転粘度が550ポイズ、ポリマー濃度が15重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、50であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは24μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。このフィルムの弾性率、破断強度は、実施例12のフィルムのそれらより低いものであった。
【0149】
(実施例13)
ポリイミドAとしてs−BPDAとDADEからなるホモポリイミド(s−BPDA−DADE)、ポリイミドBとしてs−BPDAとm−ToLからなるホモポリイミド(s−BPDA−m−ToL)を選んだ。
この場合、SP
A は24.12MPa
1/2、SPB は23.42MPa
1/2であり、|SPB −SP
A |=0.70MPa
1/2であった。
またE
A は2.94GPa、Tg
A は300℃であり、EB は6.53GPa、TgB は330℃であった。従ってE
B/E
A=2.22、|TgB −Tg
A |=30℃であった。
s−BPDA3.53gとm−ToL2.60gを、溶媒のPCP32.3gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で11時間重合イミド化し、ポリマー濃度が15重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度N
B を前記GPC測定方法によって測定したところ、49であった。このポリイミド溶液へs−BPDA8.24gとDADE5.72gを溶媒のPCP73.4gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で3時間重合イミド化し、回転粘度が508ポイズ、ポリマー濃度が15重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、46であった。この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは24μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例13)と比較して|γ−γ
rand|が4.0mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例13と比較して、その比E/E
randが1.090であった。
【0150】
(比較例13)
s−BPDA11.77gとm−ToL2.60gとDADE5.72gを溶媒のPCP105.7gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で13時間重合イミド化し、回転粘度が470ポイズ、ポリマー濃度が15重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、45であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは27μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。このフィルムの弾性率、破断強度、破断伸びは、実施例13のフィルムのそれらより低いものであった。
【0151】
(実施例14)
ポリイミドAとポリイミドBは実施例10と同じ化学構造を選んだ(ポリイミドAとポリイミドBの比率が異なる)。
s−BPDA8.24gとBAPP11.72gを、溶媒のPCP107.4gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で15時間重合イミド化し、ポリマー濃度が15重量%のポリイミドA溶液を得た。このポリイミドAの数平均重合度N
A を前記GPC測定方法によって測定したところ、52であった。このポリイミド溶液へs−BPDA3.53gとm−ToL2.60gを溶媒のPCP32.3gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で5時間重合イミド化し、回転粘度が630ポイズ、ポリマー濃度が15重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、58であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは21μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例14)と比較して|γ−γ
rand|が2.5mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例14と比較して、その比E/E
randが1.155であった。
【0152】
(比較例14)
s−BPDA11.77gとm−ToL2.60gとBAPP11.72gを溶媒のPCP139.7gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で14時間重合イミド化し、回転粘度が621ポイズ、ポリマー濃度が15重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、56であった。この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは26μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。このフィルムの弾性率、破断強度は、実施例14のフィルムのそれらより低いものであった。
【0153】
(実施例15)
ポリイミドAとして3,3',4,4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(以下、ETDAと略記することもある)とBAPPからなるホモポリイミド(ETDA−BAPP)、ポリイミドBとしてETDAとm−ToLからなるホモポリイミド(ETDA−m−ToL)を選んだ。
この場合、SP
A は22.68MPa
1/2、SPB は23.42MPa
1/2であり、|SPB −SP
A |=0.74MPa
1/2であった。
またE
A は3.15GPa、Tg
A は204℃であり、EB は3.42GPa、TgB は285℃であった。従ってE
B/E
A=1.08、|TgB −Tg
A |=80℃であった。
ETDA4.65gとm−ToL3.25gを、溶媒のPCP41.7gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で12時間重合イミド化し、ポリマー濃度が15重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度N
B を前記GPC測定方法によって測定したところ、51であった。このポリイミド溶液へETDA10.86gとBAPP14.66gを溶媒のPCP137.4gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で4時間重合イミド化し、回転粘度が577ポイズ、ポリマー濃度が15重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、52であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは39μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例15)と比較して|γ−γ
rand|が3.0mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例15と比較して、その比E/E
randが1.234であった。
【0154】
(比較例15)
ETDA12.41gとm−ToL2.60gとBAPP11.72gを溶媒のPCP143.3gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で17時間重合イミド化し、回転粘度が595ポイズ、ポリマー濃度が15重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、54であった。この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは34μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。このフィルムの弾性率、破断強度、破断伸びは、実施例15のフィルムのそれらより低いものであった。
【0155】
(実施例16)
ポリイミドAとしてs−BPDAとBAPPからなるホモポリイミド(s−BPDA−BAPP)、ポリイミドBとしてs−BPDAと3,3'−ジメチルー4,4'−ジアミノジフェニル(以下、o−ToLと略記することもある)からなるホモポリイミド(s−BPDA−o−ToL)を選んだ。
この場合、SP
A は22.67MPa
1/2、SPB は23.42MPa
1/2であり、|SPB −SP
A |=0.75MPa
1/2であった。
またE
A は2.52GPa、Tg
A は260℃であり、EB は6.35GPa、TgB は400℃以上であった。従ってE
B/E
A=2.52、|TgB −Tg
A |>140℃であった。
s−BPDA4.41gと3,3'−ジメチルー4,4'−ジアミノジフェニル(以下、o−ToLと略記することもある)3.25gを、溶媒のPCP40.4gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で8時間重合イミド化し、ポリマー濃度が15重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度N
B を前記GPC測定方法によって測定したところ、48であった。このポリイミド溶液へs−BPDA10.3gとBAPP14.66gを溶媒のPCP134.3gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で5時間重合イミド化し、回転粘度が616ポイズ、ポリマー濃度が15重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、56であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは35μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例16)と比較して|γ−γ
rand|が6.8mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例16と比較して、その比E/E
randが1.042であった。
【0156】
(比較例16)
s−BPDA11.77gとo−ToL2.60gとBAPP14.66gを溶媒のPCP139.7gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で17時間重合イミド化し、回転粘度が651ポイズ、ポリマー濃度が15重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、60であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは27μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。このフィルムの弾性率、破断伸びは、実施例16のフィルムのそれらより低いものであった。
【0157】
(比較例17)
ポリイミドAとしてs−BPDAとTPEQからなるホモポリイミド(s−BPDA−TPEQ)、ポリイミドBとしてs−BPDAとDADEからなるホモポリイミド(s−BPDA−DADE)を選んだ。
この場合、SP
A は23.63MPa
1/2、SPB は24.12MPa
1/2であり、|SPB −SP
A |=0.49MPa
1/2であり、このポリイミドAとポリイミドBは相溶性が高い組合せとなっている。
またE
A は3.46GPa、Tg
A は280℃であり、EB は3.54GPa、TgB は290℃であった。従ってE
B/E
A=1.03、|TgB −Tg
A |=10℃であり、このポリイミドAとポリイミドBは機械的性質の差が小さい組合せとなっている。
s−BPDA20.16gとDADE2.00gを溶媒のPCP138gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で2時間重合イミド化し、引き続きTPEQ17.54gを溶媒のPCP20gと共に添加し3時間重合イミド化し、ポリマー濃度が19重量%のポリイミドA溶液を得た。このポリイミドAの数平均重合度N
A を前記GPC測定方法によって測定したところ、51であった。
s−BPDA6.04gとDADE4.21gを、溶媒のPCP134gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で11時間重合イミド化し、ポリマー濃度が19重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度N
B を前記GPC測定方法によって測定したところ、44であった。
次に前記ポリイミドA溶液137g及び前記ポリイミドB溶液49gをセパラブルフラスコに秤り取り混合した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに温度130℃で3時間攪拌混合し、回転粘度が1990ポイズ、ポリマー濃度が19重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、45であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは24μmであった。得られたフィルムの特性を測定、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例19)と比較して|γ−γ
rand|が0.2mN/m以下しかなく、弾性率Eは、同じく比較例19と比較して、その比E/E
randが0.986でしかなかった。
【0158】
(比較例18)
ポリイミドA及びポリイミドBとして比較例17と同じ化学構造のものを選んだ。
s−BPDA6.04gとDADE4.21gを、溶媒のPCP131gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で15時間重合イミド化し、ポリマー濃度が6.7重量%のポリイミドB溶液を得た。このポリイミドBの数平均重合度N
B を前記GPC測定方法によって測定したところ、46であった。このポリイミド溶液へs−BPDA14.10gとTPEQ12.28gとDADE1.40gを溶媒のPCP20gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液を、さらに反応温度190℃で3時間重合イミド化し、回転粘度が1786ポイズ、ポリマー濃度が19重量%の多成分ポリイミドの混合溶液を得た。この多成分ポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、43であった。
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは26μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
このフィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例19)と比較して|γ−γ
rand|が0.2mN/m以下でしかなく、弾性率Eは、同じく比較例19と比較して、その比E/E
randが1.003でしかなかった。
【0159】
(比較例19)
s−BPDA20.14gとTPEQ12.28gとDADE5.61gを、溶媒のPCP151gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で3時間重合イミド化し、回転粘度が1042ポイズ、ポリマー濃度が19重量%のポリイミド溶液を得た。このポリイミドの数平均重合度を前記GPC測定方法によって測定したところ、36であった。この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.5mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは24μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
【0160】
(実施例17)
実施例10で製造した多成分ポリイミドの混合溶液を用い、上記に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.2mmのドクターナイフを用いて極薄フィルムを製造し、フィルムの厚さは3μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
この極薄フィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなる極薄フィルム(比較例20)と比較して|γ−γ
rand|が2.4mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例20と比較して、その比E/E
randが1.170であった。
【0161】
(比較例20)
比較例10で製造した多成分ポリイミドの混合溶液を用い、実施例17に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.2mmのドクターナイフを用いて極薄フィルムを製造し、フィルムの厚さは4μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。このフィルムの弾性率、破断強度、破断伸びは、実施例17のフィルムのそれらより低いものであった。
【0162】
(実施例18)
実施例12で製造した多成分ポリイミドの混合溶液を用い、実施例17に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.2mmのドクターナイフを用いて極薄フィルムを製造し、フィルムの厚さは5μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
この極薄フィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなる極薄フィルム(比較例21)と比較して|γ−γ
rand|が6.7mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例21と比較して、その比E/E
randが1.175であった。
【0163】
(比較例21)
比較例12で製造した多成分ポリイミドの混合溶液を用い、実施例17に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.2mmのドクターナイフを用いて極薄フィルムを製造し、フィルムの厚さは6μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。このフィルムの弾性率、破断強度、破断伸びは、実施例18のフィルムのそれらより低いものであった。
【0164】
(実施例19)
実施例16で製造した多成分ポリイミドの混合溶液を用い、実施例17に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.2mmのドクターナイフを用いて極薄フィルムを製造し、フィルムの厚さは4μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
この極薄フィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなる極薄フィルム(比較例22)と比較して|γ−γ
rand|が3.7mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例22と比較して、その比E/E
randが1.314であった。
【0165】
(比較例22)
比較例16で製造した多成分ポリイミドの混合溶液を用い、実施例17に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.2mmのドクターナイフを用いてフィルムを製造し、フィルムの厚さは4μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。またこのフィルムの弾性率、破断強度、破断伸びは、実施例19のフィルムのそれらより低いものであった。
【0166】
(実施例20)
実施例15で製造した多成分ポリイミドの混合溶液を用い、実施例17に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.2mmのドクターナイフを用いて極薄フィルムを製造し、フィルムの厚さは7μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。
この極薄フィルムの表面張力γは、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなる極薄フィルム(比較例23)と比較して|γ−γ
rand|が3.6mN/mであり、弾性率Eは、同じく比較例23と比較して、その比E/E
randが1.089であった。
【0167】
(比較例23)
比較例15で製造した多成分ポリイミドの混合溶液を用い、実施例17に示したポリイミドフィルムの作製方法に従い0.2mmのドクターナイフを用いて極薄フィルムを製造し、フィルムの厚さは7μmであった。得られたフィルムの特性を測定し、その結果を表に示した。またこのフィルムの弾性率、破断強度、破断伸びは、実施例20のフィルムのそれらより低いものであった。
【0168】
(比較例24)
N
A=1.7、N
B=0.5とした以外は実施例2と同様にしてポリイミドフィルムを得た。このフィルムの弾性率Eは4.10GPaしかなく、ポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例2)と比較して、その比E/E
randが0.901でしかなかった。
【0169】
(比較例25)
N
A=0.5、N
B=7.0とした以外は実施例4と同様にしてポリイミドフィルムを得た。このフィルムの弾性率、破断強度、破断伸びはポリイミドAとポリイミドBのランダムコポリイミドからなるフィルム(比較例6)と略同じものであった。
【0170】
以上の実施例と比較例の結果について、実施例1〜8と比較例1〜8を表1に、実施例9と比較例9を表2に、実施例10〜16と比較例10〜19を表3に、実施例17〜20と比較例20〜23を表4に示した。なお、表中B/Aは、ジアミン成分(B)とテトラカルボン酸成分(A)のモル比を示す。
【0171】
【表1】
【0172】
【表2】
【0173】
【表3】
【0174】
【表4】
【0175】
本発明によれば、表面が改質された多成分ポリイミドフィルムを得ることができる。このポリイミドフィルムは、例えば、フィルムを形成している全ポリイミドの原料成分がランダムに結合したポリイミドフィルムに対して、表面張力が大幅に改質されたものである。