特許第5673734号(P5673734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5673734
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20150129BHJP
【FI】
   B62D25/20 C
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-116197(P2013-116197)
(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2014-234058(P2014-234058A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2014年8月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】蔵本 隆充
(72)【発明者】
【氏名】蓮見 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】大渕 泰知
(72)【発明者】
【氏名】六車 健
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−090828(JP,A)
【文献】 特開2010−188875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B60K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が前方衝突した場合に車室に向かって相対的に後退する方向へ変形する車体構造部材と、
前記車室よりも前に配置され前記車体構造部材が変形することに伴って前記車室に対して相対的に後退する剛体機器と、
前記車両の進行方向に前記剛体機器の後方に配置され後退してくる前記剛体機器を受け止めて変形する衝撃吸収ブラケットと、
を備え
前記車体構造部材は、前記車両の進行方向に沿って配置されるサイドメンバであって、
前記サイドメンバは、パワープラントを支持するマウントを備え、
前記剛体機器は、前記サイドメンバの上方かつ前記マウントよりも前に配置され、
前記衝撃吸収ブラケットは、前記剛体機器および前記マウントの間に配置される
ることを特徴とする車両前部構造。
【請求項2】
前記衝撃吸収ブラケットは、前記前方衝突の開始から終了までの時間の少なくとも前半で、後退してくる前記剛体機器を受け止め変形する
ことを特徴とする請求項1に記載された車両前部構造。
【請求項3】
前記マウントは、前記車両の車幅方向に沿って中心軸が配置され前記サイドメンバに固定される外筒を有し、
前記衝撃吸収ブラケットは、前記外筒に固定される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された車両前部構造。
【請求項4】
前記衝撃吸収ブラケットは、前記外筒の前記中心軸よりも高い位置に配置される
ことを特徴とする請求項3に記載された車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が前方衝突した場合に乗客に作用する衝突加速度を軽減する車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が前方衝突した場合に乗員に作用する衝撃を軽減するために、車体フレームを変形させて衝突エネルギーを吸収する技術が知られている。つまり、衝突エネルギーは、車体フレームを変形させる荷重とその変位量に変換される。そして、車両フレームが変形している間、乗員に作用する衝撃が軽減される。
【0003】
特許文献1に記載された車両前部構造は、フロントサイドフレームの下方に配置されるサブフレームを有している。このサブフレームは、左右両方のフロントサイドフレームの前端から下方に延びるブラケットに連結されるとともに、ブラケットで接合された部分から後方の斜め上に向かって延びる衝突荷重伝達部材によってフロントサイドフレームの下面に接合されている。先端から衝突荷重伝達部材が結合されるまでの範囲のフロントサイドフレームは、座屈域に設定され、衝突荷重伝達部材が結合された位置から後方の範囲のフロントサイドフレームは、屈曲域に設定されている。フロントサイドフレームは、前面衝突の衝突荷重を受けると、座屈域が座屈し、続いて屈曲域が三次元的に屈曲して衝突エネルギーを吸収する。特にこの特許文献1の車両前部構造では、左右のサイドメンバの間すなわち車両の中央部分に電柱などが衝突する「ポール衝突」の場合にエンジンを保護するために、衝突エネルギーをフロントサイドフレームに衝突荷重伝達部材を介して伝達している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−83257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両が前方衝突する場合、初期段階では、車体が変形して衝突エネルギーを吸収する。また、乗員はシートベルトをしていても座席から前方へ移動するので、乗員に作用する衝突エネルギーの割合が小さい。車体の変形が進むと、衝突エネルギーを吸収しながら変形できるものが少なくなる。その結果、車両の前部の剛性が増し、車体の変形量が小さくなるため、前方衝突の後期において乗員に作用する衝突エネルギーの割合が大きくなる。
【0006】
前方衝突の衝突エネルギーを吸収するためには、衝突の開始から終了まで、車体が変形し続ける変形ストロークが必要である。車両は、車種の区分によって、その外形寸法が定められている。普通自動車は、車室空間を十分に確保しつつ、前方衝突の衝突エネルギーを吸収するために必要な変形ストロークを車室の前に設定しやすい。これに対して、小型自動車や軽自動車は、規定された外形寸法が普通自動車よりも小さいため、普通自動車と同程度の車室空間を確保すると、衝突エネルギーを吸収するために必要な変形ストロークを設定することが難しい。したがって短い変形ストロークでも効率よく衝突エネルギーを吸収することが求められる。
【0007】
そこで、本発明は、短い変形ストロークでも前方衝突の後期に乗員に作用する衝突加速度を軽減することのできる車両前部構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一実施形態の車両前部構造は、車体構造部材と剛体機器と衝撃吸収ブラケットとを備える。車体構造部材は、車両が前方衝突した場合に車室に向かって相対的に後退する方向へ変形する。剛体機器は、車室よりも前に配置され、車体構造部材が変形することに伴って車室に対して相対的に後退する。衝撃吸収ブラケットは、車両の進行方向に剛体機器の後方に配置され、後退してくる剛体機器を受け止めて変形する。このとき、車体構造部材は、車両の進行方向に沿って配置されるサイドメンバであって、サイドメンバは、パワープラントを支持するマウントを備え、剛体機器は、サイドメンバの上方かつマウントよりも前に配置され、衝撃吸収ブラケットは、剛体機器およびマウントの間に配置される。
【0009】
このとき、衝撃吸収ブラケットは、前方衝突の開始から終了までの時間の少なくとも前半で、後退してくる剛体機器を受け止め変形するように配置されることが好ましい。また、マウントは、車両の車幅方向に沿って中心軸が配置されてサイドメンバに固定される外筒を有し、衝撃吸収ブラケットは、この外筒に固定される。さらに、衝撃吸収ブラケットは、外筒の中心軸よりも高い位置に配置される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車両前部構造によれば、車両が前方衝突した場合、車体構造部材が変形し、それに伴って剛体機器が車室に対して相対的に後退する。そして後退してきた剛体機器を衝撃吸収ブラケットが受け止めると、さらに衝撃吸収ブラケットも変形する。衝撃吸収ブラケットが変形することで、その分だけ衝突エネルギーを吸収することができる。車体構造部材とは別に衝撃を吸収するために配置されるので、吸収したい衝突エネルギー量に合わせて硬さを設定することができる。
【0011】
衝撃吸収ブラケットが前方衝突の開始から終了までの時間の少なくとも前半で、後退してくる剛体機器を受け止め変形するように配置された発明の車両前部構造によれば、前方衝突によって車体が変形する時間の前半でより多くの衝突エネルギーを吸収することができるので、車体の変形が進み乗員への影響が出始める後半で吸収すべき衝突エネルギー量が減り、乗員への負担が軽減される。
【0012】
また、車体構造部材がサイドメンバであって、このサイドメンバがパワープラントのマウントを備え、剛体機器がサイドメンバの情報かつマウントの前に配置される場合に衝撃吸収ブラケットが剛体機器とマウントとの間に配置される発明の車両前部構造によれば、後退した剛体機器によって衝撃吸収ブラケットが変形するようにしっかりと支持することができる。また、衝撃吸収ブラケットに伝わった荷重をサイドメンバへマウントを介して伝達することができるので、より大きな衝突エネルギーを衝撃吸収ブラケットで吸収させることができる。
【0013】
また、車両の車幅方向に沿って中心軸が配置される外筒をマウントが有し、衝撃吸収ブラケットが外筒に固定される発明の車両前部構造によれば、衝撃吸収ブラケットからマウントを介してサイドメンバに伝わる荷重の入力方向をあらかじめ決められた方向に設定しやすい。
【0014】
さらに、外筒の中心軸よりも高い位置に衝撃吸収ブラケットが配置される発明の車両前部構造によれば、サイドメンバの上方に配置される剛体機器から衝突荷重をサイドメンバへ衝撃吸収ブラケットを介して伝達しやすい。また剛体機器がサイドメンバに沿って平行に後退してくるような場合でも、衝撃吸収ブラケットがマウントの外筒に沿っていなされることで、変形ストロークを大きくとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る第1の実施形態の車両前部構造を有した車両を示す斜視図。
図2図1の車両前部構造の斜視図。
図3図2の車両前部構造を上から見た平面図。
図4図2の車両前部構造を車両の中心側から見た側面図。
図5図4の車両前部構造の衝撃吸収ブラケットの中心を通る断面図。
図6図5の車両前部構造が前方衝突によって変形した状態の図。
図7図5の車両前部構造の前方衝突の前と後のサイドメンバの外形図。
図8図5の車両前部構造が前方衝突した場合に車室に作用する衝突加速度と変形量との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る一実施形態の車両前部構造10について、図1から図8を参照して説明する。以下、実施形態を説明するうえで、理解しやすいように、車両の進行方向を基準に、「前」、「後」、「右」、「左」をそれぞれ定義する。また、車両の車幅方向に、中央側を「内」、車両から離れる側を「外」とそれぞれ定義する。さらに重力の作用する方向を基準に「上」、「下」を定義する。
【0017】
図1に示す車両1は、パワープラントであるエンジンおよびトランスミッションを車室20の前方に配置した車体2を有している。車体2は、車両の進行方向に沿って左右で一対に配置されるサイドメンバ21と、これら一対のサイドメンバ21を車幅方向に連結するクロスメンバと、車室20の床を主に形成するフロアパネルと、車体2の外装を形成するアウタパネル22と、車体2の内装を形成するインなパネルと、アウタパネルとインなパネルとの間やサイドメンバとクロスメンバとの接合部に組み込まれるリインフォースメントなどの車体構造部材で構成される。
【0018】
サイドメンバ21の前側部分は、図1に示すようにパワープラントなどが格納されるエンジンルーム2Aの両側に沿って配置され、サイドメンバ21の中央部分から後側部分はダッシュパネルの位置から車室20の下を通って後方まで延びている。サイドメンバ21は、パワープラントを支持するマウント23を上壁21Aに有している。
【0019】
このマウント23は、車両の車幅方向に沿って中心軸が配置される外筒231と、この外筒の中心軸に沿って配置されるステム232と、外筒231とステム232の間に装着され振動や捩れを吸収するインシュレータ233とを備える。外筒231は、図3に示すように真上から見た場合に、内側の端面がやや前方に向いており、前側及び後側の外周面に接合されたブラケット234でサイドメンバ21に固定されている。
【0020】
また、マウント23は、外筒の上部の外周壁に溶接された上部ブラケット235を有している。この上部ブラケット235は、図2及び図3に示すようにタイヤハウス24を形成する車体2の一部に連結ブラケット236を介して連結されている。連結ブラケット236は、図2及び図3に示すように上部ブラケット235を超えて車両の内側に向かって延びており、先端部にバッテリーを乗せるためのトレイ51が上から取り付けられている。このトレイ51の後部側は、図4に示すように、マウント23よりも後方のサイドメンバ21に取り付けられた支持ブラケット52で保持されている。
【0021】
エンジンルーム2Aには、エンジンとトランスミッションが一体に組み立てられたパワープラントのほかに、冷却水を循環させるためのウォータポンプや潤滑油を循環させるためのオイルポンプなどパワープラントに一体的に形成された補助機器、ラジエータやオイルフィルタなどパワープラントに関係する補助機器、あるいは、車両のブレーキを制御するアンチロックブレーキシステム(ABS)のハイドロユニット31、バッテリーなども配置されている。
【0022】
このABSのハイドロユニット31は、アルミニウム合金の削り出しや鋳造合金などで作られた高い剛性を有した剛体機器の一つである。このハイドロユニット31は、図2から図4に示すように、車両1の左前側に位置するサイドメンバ21の上方に配置され、サイドメンバ21に固定された支持ブラケット32に保持されている。また、ハイドロユニット31は、図2に示すようにストラットタワー25よりも前方に位置している。ABSの制御装置33は、図3の示すようにハイドロユニット31に対して車両の内側に取り付けられている。制御装置33は、この車両1のECUや各ホイールの速度センサにつながるケーブルを接続するコネクタ331を車両の外側に向けられた面に有している。
【0023】
図1から図5に示すように、ハイドロユニット31とマウント23との間には、衝撃吸収ブラケット40が配置されている。この衝撃吸収ブラケット40は、ハイドロユニット31の後部端面311に隣接して配置された前部当接部41と、ハイドロユニット31の後部端面311に垂直な中心軸を有した座屈部42と、前部当接部41及び座屈部42を保持する後部支持ブラケット43とを備える。後部支持ブラケット43は、図2及び図3に示すように、座屈部42よりも後方へ延びた固定タブ431と、固定タブ431に対して座屈部42の反対側となる車両の内側に向かって延びた位置決めアーム432とを有している。固定タブ43は、図2から図5に示すように、上部ブラケット235と連結ブラケット236とが結合されている同じ位置に、同じボルトで友締め固定されている。位置決めアーム432は、図2及び図3に示すように、上部ブラケット235よりも車両1の内側に延びた連結ブラケット236の前縁に当接していることによって、前部当接部41及び座屈部42の向きを決めている。そして、この衝撃吸収ブラケット40は、マウント23の外筒231の中心軸よりも高い位置に配置される。より具体的には、衝撃吸収ブラケット40の座屈部42の中心軸がマウント23の外筒231の中心軸よりも高い位置に位置決めされている。
【0024】
以上のように構成された車両前部構造10は、車体構造部材と剛体機器と衝撃吸収ブラケットを備える。車体構造部材は、車両1が前方衝突した場合に車室20に向かって相対的に後退する方向へ変形する。本実施形態では、車室20よりも前側に位置する部分のサイドメンバ21が車体構造部材に相当する。剛体機器は、車室20よりも前に配置され、車体構造部材が変形することに伴って車室20に対して相対的に後退する。本実施形態では、サイドメンバ21に支持されているハイドロユニット31が剛体機器に相当する。衝撃吸収ブラケットは、車両の進行方向に剛体機器の後方に配置され、後退してくる剛体機器を受け止めて変形する。本実施形態において、衝撃吸収ブラケット40は、剛体機器となるハイドロユニット31の後方に位置しており、後部支持ブラケット43がマウント23に固定されているので、前方衝突によってハイドロユニット31が後退してきた場合にこれを受け止めて変形する。つまりこの衝撃吸収ブラケット40は、車両前部構造10の衝撃吸収ブラケットに相当する。
【0025】
本実施形態の車両前部構造10は、ハイドロユニット31及び衝撃吸収ブラケット40が、図5に示す状態に配置されている。車両1が前方衝突することによって車体構造部材の一例であるサイドメンバ21が車室20に向かって相対的に後退する方向変化すると、これに伴って、剛体機器の一例であるハイドロユニット31も車室20に対して相対的に後退する。衝撃吸収ブラケット40は、後退してきたハイドロユニット31を受け止める。ハイドロユニット31はさらにサイドメンバ21が変形することに伴って後退するので、衝撃吸収ブラケット40その荷重を受けながら後方へ押され、上部ブラケット235及び連結ブラケット236を変形させる。衝撃吸収ブラケット40の後部支持ブラケット43の下縁がマウント23の外筒231に当接する位置まで後退したのち、さらに荷重を受けると座屈部42が図6に示す状態にまで変形して、衝突エネルギーを吸収する。
【0026】
衝撃吸収ブラケット40は、エンジンルーム2Aの前よりに位置しており、全面衝突の開始から終了までの時間の少なくとも前半で変形し始める。したがって、車室20にいる乗員に衝突加速度がかかり始める初期段階で、衝突エネルギーを吸収する。その結果、図7に示すように、前方衝突によってサイドメンバ21が車室20に向かって後方へ変形する変形ストロークが小さくなるため、車室の前側であるダッシュパネル26の変形量も小さくなる。図7中において、実線が衝突前のサイドメンバ21とダッシュパネル26を表しており、二点鎖線が本実施形態の車両前部構造を有している場合の前方衝突後のサイドメンバ21とダッシュパネル26を表している。また、破線は、本実施形態の車両前部構造を有していない場合の前方衝突によって変形したダッシュパネル26を表している。
【0027】
また、前方衝突の開始から終了までの間に、乗員のいる位置にかかる衝突加速度とその変位量すなわち車体の変形量との関係を図8に示す。変形量が大きくなるにしたがって、前方衝突が進行していることを意味している。前方衝突の開始から終了までの時間のうちの前半において衝撃吸収ブラケット40が変形した分だけ、すなわち衝突エネルギーを吸収した分だけ衝突加速度が上昇し(P1)、前方衝突の後半で乗員にかかる衝突加速度を軽減することができている(P2)ことがわかる。さらに、最終段階で衝突加速度が軽減されているため、車体の変形量も少なくなっている(P3)。衝撃吸収ブラケット40で衝突エネルギーを吸収したことによって、サイドメンバ21の変形量が小さくなる、すなわち、衝突エネルギーを吸収するために必要な変形ストロークを短くすることができる。
【符号の説明】
【0028】
1…車両、2…車体、10…車体前部構造、20…車室、21…サイドメンバ(車体構造部材)、23…マウント、231…外筒、31…ハイドロユニット(剛体機器)、40…衝撃吸収ブラケット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8