(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下,本発明の実施の形態について,図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
まず,第一の実施例について説明を行う。本実施例は扉付きの分電盤における実施例である。
図1,
図2は第一の実施例を示した概観図を示し,それぞれ扉を閉じた状態,扉を開けた状態を示している。本分電盤は住宅の壁面等に配設する住宅用分電盤として使用されるもので,壁面に取り付けられるボックス100と,該ボックス100に取り付けられるカバー101と,該カバー101の前面を覆う扉102とで構成され,
図3に示したように,ボックス100内には,内器ユニット104が配設され,ボックス100に導入される電線が内器ユニット104に電気的に接続される。
【0014】
内器ユニット104は,単相三線用の主開閉器1041と,複数の分岐開閉器1042と,電源手段105を備え,分岐開閉器1042は,主開閉器1041の電源負荷側方向に2列に電源側の併設部と負荷側の併設部とに分けて併設配置されている。また,各々の併設部においては,分岐開閉器は並設されている。主開閉器1041と,分岐開閉器1042及び電源手段105とは,L1相,L2相の電圧極側の導電バーと,中性極側導電バーとによって電気的に接続される。尚,導電バーとは,住宅盤内で2つ以上の分岐開閉器に電力を供給する母線,または母線と分岐開閉器との間を接続する電気導体を意味している。
【0015】
内器ユニット104が配設されるボックス100は,カバー101と嵌め合わせにより取り付けられる。そのため,ボックス100にはボックスの箱体から突出した嵌合部104bが形成され,また,カバー101には前記嵌合部104bと嵌め合い可能な嵌合部104aが形成されている。
【0016】
カバー101には,主開閉器1041と複数の分岐開閉器1042の操作ハンドルをカバー前面から操作できるよう,操作ハンドルを逃げるように孔1011が設けられている。
【0017】
また,カバー101には,枢着部103を介して扉102が開閉自在に枢着されている。枢着部103を
図14に示した。枢着部103は,カバー101側に設けられた枢着部a103aと扉103側に設けられた枢着部b103bとから成り,枢着部b103bには,扉103を開状態に保持するよう弾性部材からなる弾性保持部103cが設けられており,枢着部a103aと枢着部b103bは軸103dにより,カバーに対して扉を回動操作できるようお互いが軸支されている。
【0018】
扉102には,照明手段200が設けられている。照明手段200は,その発光部分がEL(エレクトロルミネセンス:Electroluminescent)ライトにより構成されている。照明手段200は,扉102の前面に,該扉102の面形状に沿って配設されてあり,
図7(a)に示したように扉のAA断面のように滑らかな円弧を描くように配設されている。ELライトはその特性上,柔軟性,低発熱性,省電力に優れており,形状の加工も自在であり,面発光で照射する。そのため,扉102のサイズに応じた加工が可能であり,また,扉102の曲率に応じて配設が可能である。扉102の面形状に沿って配設されているため,分電盤が設置された場所において,足元付近から天井付近まで広範囲に渡って明るく照射することが可能である。
【0019】
扉102への配設は
図7(a)に示したように,扉102の前面側にELライトを貼付し,その上を透光性のフィルムで覆うように配設するほか,
図7(b)に示したように,扉の背面側を光の透過が分かる程度にELライトに合わせて薄肉加工し,該薄肉加工部に背面側からELライトを貼付配設して照明手段を扉102に設けている。
【0020】
これにより
図7(a)の配設によれば面状に分電盤周囲を直接的に照らすことが可能である。また,
図7(b)の配設によれば面状に分電盤周囲を(a)に比べて和らいだ光で照らすことが可能である。このため,スポット的に光を照射する場合と比べて,面状に広い範囲を照らすため,分電盤周辺全体が明るく逆光とならずに眩さを低減できる分電盤を提供できる。
【0021】
次に,電源手段105から照明手段200への電源供給について説明を行う。電源手段105は
図4に示したように,分岐開閉器1042と略同一形状で形成され,分岐開閉器1042と差し替え装着可能なように設けられる。該電源手段105は分岐開閉器1042と併設して使用する。
図5には電源手段105を取外した図を示しているが,電源手段105には,内器ユニット104に設けられた分岐開閉器1042に電力を供給する導電バーに接続可能な電源端子部1051と,その他端には,照明手段200への電源供給を行う電源出力端子部1053とが設けられている。分岐回路を1回路使用することになるが,分岐開閉器と差し替えて設置することができるため,照明手段への電源供給及び蓄電する機能を内器ユニットはそのままに,容易に分電盤内に設けることができる。
【0022】
図6には電源手段105の内部構造の概略図を示している。電源手段105の内部には,制御回路部1054と,蓄電部1052が設けられている。制御回路部1054は,交流−直流変換処理を行うAC/DCコンバータや,電圧を昇圧処理する昇圧コンバータ,電路の停電を検出する停電検出手段,ライトを点灯消灯させるスイッチなどが設けられている。尚,スイッチはその操作部が電源手段の表面に設けられており,分岐開閉器1042のハンドル操作部と同様に,外部から操作可能となっている。また,前記スイッチは,分岐開閉器1042のハンドル操作部とは形状を違えて構成されている。
【0023】
蓄電部1052は電力を蓄電しておくためのもので,2次電池を用いて構成されている。2次電池にはリチウムイオン電池を用いているが,その他リチウムポリマー電池や,NiCd電池など充電可能な電池や,電気2重槽キャパシタ等を用いて構成してもよい。
【0024】
導電バーから入力された電力は,電源接続部1051を経て制御回路部1054に入力され,交流−直流変換された後,蓄電部1052に入力され蓄電される。停電検出手段が停電を検出した場合や,スイッチが点灯操作された場合には,蓄電部1052から昇圧コンバータを経て,電源出力端子部1053からELライトに向けて給電され,ELライトが点灯する。
【0025】
停電検出手段は,電源接続部1051の電源極側−中性極側間の電圧を監視しており,該電圧が低下した場合に停電が発生したと判断する。なお,停電検出においては,本電圧検出の他,電路に流れる電流を検出する変流器を電路に設けて該変流器からの出力により検出するように構成しても良い。
尚,スイッチを設けていることにより,停電時のみならず照明手段を点灯させたい場合には手動で点灯が行え,所望の場合には一時的な照明として用いることができる。
【0026】
電源出力端子部1053にはリード線が接続され(図示しない),ボックス100内に敷設されたリード線は,カバー101に設けられた枢着部103付近に設けられた小孔を通って扉102に配設された照明手段200と接続されている。
【0027】
このように照明手段200を設けた分電盤を構成したため,従来例のように,夜間の停電など真暗な状態において保安灯からスポット的に光が照射されることによる,分電盤を臨む際に眩く,逆光効果となることがない。また,面状に広範囲に周囲を照らすため,停電時などにおいて分電盤が設置してある場所が分かりやすくなるとともに,足元付近も照らすために足元にあるものにより躓くといったことから回避できるという効果がある。また,ブレーカの復帰作業を行う際には扉102を開けた状態で作業を行うため,必然的に照明手段200は天井方向を照らすため,視界への直接的な照射が避けられ,眩くなくブレーカの復帰作業が行える。また,既存の分岐開閉器と差し替えて電源手段を配設できるため,既存の内器ユニットを流用して使用できるとともに,製作コストを低減でき,容易に電源手段を分電盤に配設できる分電盤を提供できる。
【0028】
なお,照明手段はELライトの他,固体素子照明である高輝度発光ダイオードを用いて構成しても良い。この場合,導電性の高分子材料であるプラスチックの薄いシートから生産できる有機LED(OLED)や,ナノメーター寸法ドットの光放射材料をカプセルに入れてLEDデバイスを形成する量子ドットを用いて固体素子照明用のLEDを形成することにより,厚みの薄いシート状の照明手段を得ることができる。これらのOLEDや量子ドットを用いたLEDにより,より照度を増した照明手段を構成することが可能である。この場合には,蓄電部の出力電圧を照明手段の動作電圧に合わせるようDC/DCコンバータを用いればよく,昇圧コンバータは不要に構成できる。もしくは蓄電部からの出力電圧を照明手段に合わせて蓄電部を構成すればDC/DCコンバータも不要とできる。
【0029】
次に,第二の実施例について説明を行う。第二の実施例は扉なしの分電盤における実施例である。
図8は本件発明の分電盤の第二の実施例を示した概観図を示している。本実施形態の分電盤は,第一の実施例と同じく,住宅の壁面等に配設する住宅用分電盤として使用されるもので,壁面に取り付けられるボックス110と,該ボックス110に取り付けられるカバー111とで構成され,
図9に示したように,ボックス110内には,内器ユニット114が配設され,ボックス110に導入される電線が内器ユニット114に電気的に接続される。内器ユニット114は前述した内器ユニット104と同様であるので構成説明については省略する。
【0030】
内器ユニット114が配設されるボックス110は,カバー111と嵌め合わせにより取り付けられる。そのため,ボックス110にはボックスの箱体から突出した嵌合部114bが形成され,また,カバー111には前記嵌合部114bと嵌め合い可能な嵌合部114aが形成されている。
【0031】
また,カバー111には,主開閉器1141と複数の分岐ブレーカ1142の操作ハンドルをカバー前面から操作できるよう,操作ハンドルを逃げるように孔1111が設けられている。
【0032】
カバー111には,照明手段210が設けられている。照明手段210は,第一の実施例と同じく,その発光部分がELライトにより構成されている。照明手段210は,カバー111の周縁部に配設されてあり,
図10に示したカバーのBB断面のようにカバー断面形状に沿うように配設されている。
【0033】
カバー111への配設は
図10(a)に示したように,カバー111の前面にELライトを貼付しその上を透光性のフィルム211で覆うように配設したり,
図10(b)に示したように,カバーの背面側を光の透過が分かる程度に薄肉加工部212を設け,該薄肉加工部212に背面側からELライトを貼付配設して照明手段をカバー111に設けている。これにより
図10(a)の配設によれば面状に分電盤周囲を直接的に照らすことが可能である。また,
図10(b)の配設によれば面状に分電盤周囲を(a)に比べて和らいだ光で照らすことが可能である。このため,スポット的に光を照射する場合と比べて,面状に広い範囲を照らすため,分電盤周辺全体が明るく逆光とならずに眩さを低減できる分電盤を提供できる。
【0034】
次に,電源手段115から照明手段210への電源供給について説明を行う。電源手段115の構成は第一の実施例で示した電源手段105と同様であるので説明を省略する。電源手段115の電源出力端子部にはリード線が接続され(図示しない),ボックス110内に敷設されたリード線は,照明手段210が
図10(a)のように配設されている場合には,カバー111の,分電盤前面に臨んで電源手段115が位置する付近に開けられた小孔を通って照明手段210と接続され,また,
図10(b)のように配設されている場合には,小孔は設けずに,カバー111の,分電盤前面に臨んで電源手段115が位置する付近にて照明手段210と接続されている。
【0035】
このように照明手段210を設けた分電盤を構成したため,第一の実施例と同じく,従来例のように,真暗な状態において保安灯からスポット的に光が照射されることによる,分電盤を臨む際に眩く,逆光効果となることがない。また,面状に広範囲に周囲を照らすため,停電時などにおいて分電盤が設置してある場所が分かりやすくなるとともに,足元付近も照らすために足元にあるものにより躓くといったことから回避できるという効果がある。また,照明手段210により,面状に広範囲に周囲を照らすため周囲全体が明るいため,ブレーカの復帰作業を行う際など,眩くなくブレーカの復帰作業が行えるという効果がある。
【0036】
次に第三の実施例について説明を行う。第三の実施例は第一の実施例に示した扉付きの分電盤における変形実施例である。第一の実施例と比べて,電源手段105から照明手段200への電源供給の経路が異なるため,その部分について説明を行う。
尚,
図11に示したように,電源手段105については,内器ユニット104に設けられた複数の分岐開閉器1042の2列の併設部のうち,第一の実施例においては負荷側の併設部に設けてあったが,第三の実施例においては,照明手段200への電源供給経路を短くするために,電源側の併設部に設けている。
【0037】
図12は,嵌合部104b付近を拡大した図である。電源手段105の電源出力端子部1053には,折り曲げ加工された導通部1042bが接続されており,該導通部1042bには,嵌合部104bの形状に沿って折り曲げ配設された導通部1041bが接続されている。カバー101の嵌合部104aには前記導通部1041bと,嵌合時に接触対応して電気的に接続される導通部1041aが設けられている。該導通部1041aはカバー内壁面に沿うよう折り曲げ加工されて配設されている。
【0038】
また,
図14に示した枢着部103に設けられた軸103dと弾性保持部103cは導電体で構成され,互いに導通を持たせてあり,前記導通部1041aはリード線により軸103dに接続され,弾性保持部103cには照明手段200から延出したリード線が接続されている。このように,電源手段105から照明手段200への電力供給は,電源手段105の電源出力端子部1053に接続された導通部1042bからボックス側の嵌合部104bの導通部1041bを経て,カバー側の嵌合部104aの導通部1041a,リード線,軸103d,弾性保持部103cを通り,照明手段200に至るよう行われる。尚,
図7に示したように,照明手段200の配置が扉の前面側の場合には,枢着部103付近に照明手段200に電源を供給するリード線を貫通させる小孔が設けられる。
【0039】
このように,嵌合部及び枢着部に導通部を設けて照明手段200への電源供給を行うように分電盤を構成したため,第一の実施例に示したようなリード線を用いて電源手段105と照明手段200とを接続する場合と比べると,容易にボックスとカバーの分離を行えるために,分電盤施工時や,メンテナンス時における作業性がより向上できるという効果を有して分電盤を提供できる。
【0040】
次に第四の実施例について説明を行う。第四の実施例は第二の実施例に示した扉なしの分電盤における変形実施例である。第二の実施例と比べて,電源手段115から照明手段210への電源供給の経路が異なるため,その部分について説明を行う。また,第三の実施例と同様,電源手段115については,内器ユニット114に備えられる複数の分岐開閉器1142の2列の併設部のうち,第二の実施例においては負荷側の併設部に設けてあったが,第四の実施例においては,第三の実施例に倣い,電源側の併設部に設けた構成で説明を行う。
【0041】
図13は,嵌合部114b付近を拡大した図である。電源手段115の電源出力端子部1153には,折り曲げ加工された導通部1142bが接続されており,該導通部1142bには,嵌合部114bの形状に沿って折り曲げ配設された導通部1141bが接続されている。カバー111の嵌合部114aには前記導通部1141bと,嵌合時に接触対応して電気的に接続される導通部1141aが設けられている。該導通部1141aはカバー背面側に沿うよう折り曲げ加工されて配設され,照明手段210に電源を供給するリード線と接続されている。
尚,
図10に示したように,照明手段の配置がカバーの前面側の場合には,嵌合部103付近に照明手段200に電源を供給するリード線を貫通させる小孔が設けられる。
【0042】
このように照明手段210への電源供給は,電源手段115の電源出力端子部1153から導通部1142b,導通部1141b,導通部1041aを経て行われる。このように,導通部を嵌合部に設けて照明手段210への電源供給を行うように分電盤を構成したため,第二の実施例に示したようなリード線を用いて電源手段115と照明手段210とを接続する場合と比べると,容易にボックスとカバーの分離を行えるために,分電盤施工時や,メンテナンス時における作業性がより向上できるという効果を有して分電盤を提供できる。
【0043】
尚,その他,分電盤の前面に臨んで左右に2箇所設けてある枢着部をそれぞれ金属蝶番A,金属蝶番Bで構成し,蝶番Aと蝶番Bが電気的に導通を持つよう構成しておき,扉付きの場合には導通部1041aの各々の極において,片方の極を金属蝶番Aに,他方の極を金属蝶番Bに片方づつ接続し,照明手段から延出する電源リード線を片方づつ金属蝶番A,金属蝶番Bに接続し,導通部1041aと照明手段とを電気的に接続する構造としてもよい。