特許第5673750号(P5673750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5673750電流出力回路、および同回路を有する広帯域2線式伝送器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5673750
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】電流出力回路、および同回路を有する広帯域2線式伝送器
(51)【国際特許分類】
   G08C 19/02 20060101AFI20150129BHJP
   H04B 3/54 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
   G08C19/02 301
   H04B3/54
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-153505(P2013-153505)
(22)【出願日】2013年7月24日
(65)【公開番号】特開2014-112350(P2014-112350A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2014年1月15日
(31)【優先権主張番号】特願2012-248042(P2012-248042)
(32)【優先日】2012年11月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岩野 陽一
【審査官】 井上 昌宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−329380(JP,A)
【文献】 特開昭56−088596(JP,A)
【文献】 特開昭61−039199(JP,A)
【文献】 実開平03−086489(JP,U)
【文献】 米国特許第04250490(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C13/00〜25/04
H04B1/76〜3/44;3/50〜3/60;7/005〜7/015
G05B1/00〜7/04;11/00〜13/04;17/00〜17/
02;21/00〜21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部回路から2本の伝送線を介して電源の供給を受け、センサにより測定される物理量を電気信号に変換して信号処理回路で信号処理し、前記伝送線を介して前記外部回路に所定の電流を出力する2線式伝送器の電流出力回路であって、
前記信号処理回路から出力される制御電圧によって制御される第1の電流を出力する第1の電流源回路と、
前記第1の電流によって制御される第2の電流を出力する第2の電流源回路と、
前記第2の電流から前記2線式伝送器の内部電源を生成する第1のシャント電圧源回路と、
基準電圧によって制御される第3の電流を生成する第3の電流源回路と、
前記第3の電流により前記第2の電流源回路の電源を生成する第2のシャント電圧源回路と、を有し、
前記第1の電流と、前記第2の電流と、前記第3の電流とにより、前記外部回路に前記伝送線を介して前記制御電圧によって制御される前記所定の電流を出力することを特徴とする電流出力回路。
【請求項2】
前記第1の電流源回路は、
非反転入力端子と前記2本の伝送線のうちの一方が接続される負極電源端子との間に前記制御電圧が印加される演算増幅器と、
ゲート端が前記演算増幅器の出力端子に、ソース端が前記演算増幅器の反転入力端子に、ドレイン端が前記第2の電流源回路にそれぞれ接続されたN型MOS−FETからなる電圧電流変換素子と、
一端が前記電圧電流変換素子のソース端に、他端が前記負極電源端子に接続され、前記ソース端との接続点が前記演算増幅器の反転入力端子に接続される電流検出抵抗と、を含み、
前記演算増幅器は、
前記電圧電流変換素子のゲート・ソース間電圧を制御して前記電流検出抵抗にかかる電圧と前記制御電圧とが同じになるように制御して前記電圧電流変換素子のドレイン端に前記第1の電流を出力することを特徴とする請求項1記載の電流出力回路。
【請求項3】
前記第1の電流源回路は、
前記信号処理回路によって、前記演算増幅器の非反転入力端子に直流成分の第1の制御電圧が印加され、前記演算増幅器の反転入力端子に容量性素子を介して交流成分の第2の制御電圧が印加されると、前記電圧電流変換素子が、前記直流成分と前記交流成分とを混合した前記第1の電流を出力することを特徴とする請求項2記載の電流出力回路。
【請求項4】
前記第1の電流源回路は、
前記2本の伝送線のそれぞれが接続される正極電源端子と負極電源端子との間に複数接続され、それぞれに設けられる演算増幅器の非反転入力端子と前記負極電源端子間に印加される制御電圧をそれぞれ制御して前記第1の電流を出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の電流出力回路。
【請求項5】
前記第2の電流源回路は、
非反転入力端子に前記第1の電流源回路の出力が、反転入力端子に電流検出抵抗を介して前記2本の伝送線のうちの一方の正極電源端子がそれぞれ接続される演算増幅器と、
前記正極電源端子と前記演算増幅器の非反転入力端子との間に接続され、前記第1の電流を電圧に変換する電流電圧変換抵抗と、
ゲート端が前記演算増幅器の出力端子に、ソース端が前記演算増幅器の反転入力端子に、ドレイン端が前記第1のシャント電圧源回路にそれぞれ接続され、前記ドレイン端に前記第1の電流によって制御される前記第2の電流を出力するP型MOS−FETからなる電圧電流変換素子と、
一端が前記電圧電流変換素子のソース端に、他端が前記2本の伝送線の他方の極電源端子に接続され、前記ソース端との接続点が前記演算増幅器の反転入力端子に接続される電流検出抵抗と、を含み、
前記演算増幅器は、
前記電圧電流変換素子のゲート・ソース間電圧を制御して前記電流検出抵抗にかかる電圧と前記電流電圧変換抵抗によって変換された電圧とが同じになるように制御して前記電圧電流変換素子のドレイン端に前記第2の電流を出力することを特徴とする請求項1記載の電流出力回路。
【請求項6】
一端が前記電流電圧変換抵抗に、他端が前記電圧電流変換素子のドレイン端にそれぞれ接続され、前記電圧電流変換素子の寄生容量に流れる電流を制限して前記第1の電流の変動を抑制する電流制限抵抗と、
前記電流電圧変換抵抗と並列に接続され、前記第1の電流の変動により前記電流電圧変換抵抗の両端にかかる電圧の変動を抑制する容量性素子と、を備えたことを特徴とする請求項5記載の電流出力回路。
【請求項7】
前記電圧電流変換素子は、
前記第2の極性を有するMOSトランジスタと前記MOSトランジスタにダーリントン接続されたバイポーラトランジスタとを含み、前記バイポーラトランジスタのコレクタ端を介して前記第2の電流を出力し、前記バイポーラトランジスタのベース端に、前記MOSトランジスタの動作点を決定するソース抵抗を介して前記演算増幅器の反転入力端子にフィードバックする接続構成とすることを特徴とする請求項5または6記載の電流出力回路。
【請求項8】
前記第2の電流源回路は、
前記第2の電流により前記内部電源よりも低電圧の第2内部電源を生成して前記MOSトランジスタのドレイン端に印加し、前記正極電源端子と前記負極電源端子間の電圧が所定値より低い場合の低電圧動作を可能にすることを特徴とする請求項7記載の電流出力回路。
【請求項9】
前記第3の電流源回路は、
非反転入力端子と前記2本の伝送線のうちの一方の負極電源端子間に基準電圧が印加される演算増幅器と、
ゲート端が前記演算増幅器の出力端子に、ソース端が前記演算増幅器の反転入力端子に、ドレイン端が前記第2のシャント電圧源回路にそれぞれ接続され、前記ドレイン端を介して前記第3の電流を出力するN型MOS−FETからなる電圧電流変換素子と、
前記電圧電流変換素子のソース端と前記負極電源端子との間に接続され、前記電圧電流変換素子のソース端との接続点が前記演算増幅器の反転入力端子に接続される電流検出抵抗、とを含み、
前記演算増幅器は、
前記電圧電流変換素子のゲート・ソース間電圧を制御して前記電流検出抵抗にかかる電圧と前記基準電圧とが同じになるように制御して前記電圧電流変換素子のドレイン端に前記第3の電流を出力することを特徴とする請求項1記載の電流出力回路。
【請求項10】
センサと、
信号処理回路と、
外部回路から2本の伝送線がそれぞれ接続される正極電源端子と負極電源端子を介して電源の供給を受け、前記センサにより測定される物理量を電気信号に変換して前記信号処理回路で信号処理し、前記伝送線を介して前記外部回路に所定の電流を出力する請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の電流出力回路と、
を有することを特徴とする電流出力回路を有する広帯域2線式伝送器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部回路と2本の伝送線を介して接続され、外部回路を電源として用いながら外部回路へ所定の電流信号を出力する電流出力回路、および同回路を有する広帯域2線式伝送器に関する。
【背景技術】
【0002】
2線式伝送器は、DCS(分散制御システム)等の外部回路と2本の伝送線を介して接続され、外部回路を電源として用いながら、センサ等から取得した物理量を電流信号に変換して外部回路へ出力する、例えば、フィールド機器である。2線式伝送器は、専用の電源配線が不要であり、安価に設置できることから、プラントにおける差圧・圧力伝送機器や温度伝送器等のフィールド機器として広く利用されている。このフィールド機器は、物理量をフィールド機器の信号として世界標準である4[mA]〜20[mA]の直流電流に変換して外部回路へ送信する。
【0003】
例えば、特許文献1には、ツェナーダイオードによらず、シャントレギュレータ(シャント電圧源回路)により任意に内部電圧の設定が可能であり、かつ安定した回路電源を確保することができる2線式伝送器についての発明が開示されている。
【0004】
図6には、上記した2線式伝送器において使用される従来の電流出力回路50の構成例が示されている。図6によれば、電流出力回路50は、電圧源回路51と、演算増幅器520(オペアンプ)と、電圧電流変換素子53(NPNトランジスタ)と、カレントミラー回路54と、シャント電圧源回路55と、電流検出抵抗R11と、帰還抵抗R12と、帯域制限抵抗R13および帯域制限容量C11と、を含み構成される。上記構成により、電流出力回路50は、シャント電圧源回路55により電流I1を出力しながら2線式伝送器の内部電源#1(不図示のセンサや信号処理回路の駆動電源)を生成し、正極電源端子VPと負極電源端子VN間に、Iout=(1+R12/R11)*I1になる電流を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−81883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図6に示す電流出力回路50によれば、演算増幅器52の出力端子から非反転入力端子(+)に至る負帰還ループ(図6の点線矢印)の中にカレントミラー回路54が挿入されている。このカレントミラー回路54の挿入による不都合を解消するために、演算増幅器52の出力端子と演算増幅器52の反転入力端子(−)間に帯域制限容量C11を接続し、この帯域制限容量C11により、演算増幅器52の出力から入力に至る系の安定性を確保している。
【0007】
上記した帯域制限容量C11を接続して演算増幅器52の出力から入力に至る系の安定性を確保する理由は、カレントミラー回路54の持つ極が演算増幅器52の帯域近傍にあり、ループゲインが1倍になる周波数近傍で位相が回り、位相余裕(マージン)が確保できなくなることに基づく。このように、従来の2線式伝送器の電流出力回路50は、図6中、点線矢印で示す演算増幅器52の負帰還ループの中にカレントミラー回路54のような低い極を持つ回路要素が挿入されることにより狭帯域化され、かつ交流的な入力インピーダンスが低くなって耐ノイズ性が悪化するといった課題があった。
【0008】
本発明は上記した課題を解決するためになされたものであり、広帯域化をはかり、かつ耐ノイズ性の向上をはかった、電流出力回路、および同回路を有する広帯域2線式伝送器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために本発明は、外部回路から2本の伝送線を介して電源の供給を受け、センサにより測定される物理量を電気信号に変換して信号処理回路で信号処理し、前記伝送線を介して前記外部回路に所定の電流を出力する2線式伝送器の電流出力回路であって、前記信号処理回路から出力される制御電圧によって制御される第1の電流を出力する第1の電流源回路と、前記第1の電流によって制御される第2の電流を出力する第2の電流源回路と、前記第2の電流から前記2線式伝送器の内部電源を生成する第1のシャント電圧源回路と、基準電圧によって制御される第3の電流を生成する第3の電流源回路と、前記第3の電流により前記第2の電流源回路の電源を生成する第2のシャント電圧源回路と、を有し、前記第1の電流と、前記第2の電流と、前記第3の電流とにより、前記外部回路に前記伝送線を介して前記制御電圧によって制御される前記所定の電流を出力することを特徴とする。
【0010】
本発明において、前記第1の電流源回路は、非反転入力端子と前記2本の伝送線のうちの一方が接続される負極電源端子との間に前記制御電圧が印加される演算増幅器と、ゲート端が前記演算増幅器の出力端子に、ソース端が前記演算増幅器の反転入力端子に、ドレイン端が前記第2の電流源回路にそれぞれ接続されたN型MOS−FETからなる電圧電流変換素子と、一端が前記電圧電流変換素子のソース端に、他端が前記負極電源端子に接続され、前記ソース端との接続点が前記演算増幅器の反転入力端子に接続される電流検出抵抗と、を含み、前記演算増幅器は、前記電圧電流変換素子のゲート・ソース間電圧を制御して前記電流検出抵抗にかかる電圧と前記制御電圧とが同じになるように制御して前記電圧電流変換素子のドレイン端に前記第1の電流を出力してもよい。
【0011】
本発明において、前記第1の電流源回路は、前記信号処理回路によって、前記演算増幅器の非反転入力端子に直流成分の第1の制御電圧が印加され、前記演算増幅器の反転入力端子に容量性素子を介して交流成分の第2の制御電圧が印加されると、前記電圧電流変換素子が、前記直流成分と前記交流成分とを混合した前記第1の電流を出力してもよい。
【0012】
本発明において、前記第1の電流源回路は、前記2本の伝送線のそれぞれが接続される正極電源端子と負極電源端子との間に複数接続され、それぞれに設けられる演算増幅器の非反転入力端子と前記負極電源端子間に印加される制御電圧をそれぞれ制御して前記第1の電流を出力してもよい。
【0013】
本発明において、前記第2の電流源回路は、非反転入力端子に前記第1の電流源回路の出力が、反転入力端子に電流検出抵抗を介して前記2本の伝送線のうちの一方の正極電源端子がそれぞれ接続される演算増幅器と、前記正極電源端子と前記演算増幅器の非反転入力端子との間に接続され、前記第1の電流を電圧に変換する電流電圧変換抵抗と、ゲート端が前記演算増幅器の出力端子に、ソース端が前記演算増幅器の反転入力端子に、ドレイン端が前記第1のシャント電圧源回路にそれぞれ接続され、前記ドレイン端に前記第1の電流によって制御される前記第2の電流を出力するP型MOS−FETからなる電圧電流変換素子と、一端が前記電圧電流変換素子のソース端に、他端が前記2本の伝送線の他方の極電源端子に接続され、前記ソース端との接続点が前記演算増幅器の反転入力端子に接続される電流検出抵抗と、を含み、前記演算増幅器は、前記電圧電流変換素子のゲート・ソース間電圧を制御して前記電流検出抵抗にかかる電圧と前記電流電圧変換抵抗によって変換された電圧とが同じになるように制御して前記電圧電流変換素子のドレイン端に前記第2の電流を出力してもよい。
【0014】
本発明において、一端が前記電流電圧変換抵抗に、他端が前記電圧電流変換素子のドレイン端にそれぞれ接続され、前記電圧電流変換素子の寄生容量に流れる電流を制限して前記第1の電流の変動を抑制する電流制限抵抗と、前記電流電圧変換抵抗と並列に接続され、前記第1の電流の変動により前記電流電圧変換抵抗の両端にかかる電圧の変動を抑制する容量性素子と、を更に備えてもよい。
【0015】
本発明において、前記電圧電流変換素子は、前記第2の極性を有するMOSトランジスタと前記MOSトランジスタにダーリントン接続されたバイポーラトランジスタと、を含み、前記バイポーラトランジスタのコレクタ端を介して前記第2の電流を出力し、前記バイポーラトランジスタのベース端に、前記MOSトランジスタの動作点を決定するソース抵抗を介して前記演算増幅器の反転入力端子にフィードバックする接続構成としてもよい。
【0016】
本発明において、前記第2の電流源回路は、前記第2の電流により前記内部電源よりも低電圧の第2内部電源を生成して前記MOSトランジスタのドレイン端に印加し、前記正極電源端子と前記負極電源端子間の電圧が所定値より低い場合の低電圧動作を可能にしてもよい。
【0017】
本発明において、前記第3の電流源回路は、非反転入力端子と前記2本の伝送線のうちの一方の負極電源端子間に基準電圧が印加される演算増幅器と、ゲート端が前記演算増幅器の出力端子に、ソース端が前記演算増幅器の反転入力端子に、ドレイン端が前記第2のシャント電圧源回路にそれぞれ接続され、前記ドレイン端を介して前記第3の電流を出力するN型MOS−FETからなる電圧電流変換素子と、前記電圧電流変換素子のソース端と前記負極電源端子との間に接続され、前記電圧電流変換素子のソース端との接続点が前記演算増幅器の反転入力端子に接続される電流検出抵抗、とを含み、前記演算増幅器は、前記電圧電流変換素子のゲート・ソース間電圧を制御して前記電流検出抵抗にかかる電圧と前記基準電圧とが同じになるように制御して前記電圧電流変換素子のドレイン端に前記第3の電流を出力してもよい。
【0018】
本発明において、電流出力回路を有する広帯域2線式伝送器は、センサと、信号処理回路と、外部回路から2本の伝送線がそれぞれ接続される正極電源端子と負極電源端子を介して電源の供給を受け、前記センサにより測定される物理量を電気信号に変換して前記信号処理回路で信号処理し、前記伝送線を介して前記外部回路に所定の電流を出力する前記電流出力回路と、を有する構成としたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、広帯域化をはかり、かつ耐ノイズ性の向上をはかった、電流出力回路、および同回路を有する広帯域2線式伝送器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る2線式伝送器の基本構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る電流出力回路の構成を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係る電流出力回路において、ノーマルモードノイズが印加された場合の挙動を説明するために引用した図である。
図4】本発明の実施の形態に係る電流出力回路の変形例1の構成を示す図である。
図5】本発明の実施の形態に係る電流出力回路の変形例2の構成を示す図である。
図6】従来の電流出力回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための実施の形態(以下、単に実施形態という)について詳細に説明する。
【0022】
(実施形態の構成)
図1は、本実施形態に係る2線式伝送器の基本構成を示す図である。図1によれば、本実施形態に係る2線式伝送器1は、センサ10と、信号処理回路20と、電流出力回路30とから構成され、2本の伝送線L1,L2にそれぞれ接続される、正極電源端子VPと負極電源端子VNを介してDCS等の外部回路40に接続される。
【0023】
2線式伝送器1は、例えば、フィールド機器であり、外部回路40から2本の伝送線L1,L2を介して電源の供給を受け、センサ10により測定される物理量を電気信号に変換して信号処理回路20で信号処理し、電流出力回路30により、伝送線L1,L2を介して外部回路40に、例えば、4[mA]〜20[mA]の所定の電流を出力する。
【0024】
電流出力回路30は、電流源回路31(第1の電流源回路),32(第2の電流源回路),33(第3の電流源回路)と、シャント電圧源回路34(第1のシャント電圧源回路),35(第2のシャント電圧源回路)とを含む。電流源回路31は、信号処理回路20から出力される制御電圧(制御信号x)によって制御される電流I1(第1の電流)を生成して電流源回路32へ出力する。電流源回路32(第2の電流源回路)は、電流I1によって制御される電流I2(第2の電流)を生成してシャント電圧源回路34へ出力する。
【0025】
シャント電圧源回路34(第1のシャント電圧源回路)は、電流源回路32から出力される電流I2から2線式伝送器1(センサ10と信号処理回路20)の内部電源#1を生成する。電流源回路33は、基準電圧Vrefによって制御される電流I3(第3の電流)を生成する。シャント電圧源回路35は、電流源回路33から出力される電流I3により電流源回路32の電源を生成する。
【0026】
電流出力回路30は、電流源回路31により生成される電流I1,電流源回路32により生成される電流I2,電流源回路33により生成される電流I3により、伝送線L1,L2を介して外部回路40に対し、制御電圧(制御信号x)によって制御される、4〜20[mA]の所定の電流Ioutを出力する。
【0027】
図2に本実施形態に係る電流出力回路30を構成する各電流源回路31,32,33の詳細な回路構成が示されている。
【0028】
図2において、電流源回路31は、演算増幅器OP1と、N型MOS−FETからなる電圧電流変換素子M1(第1の極性を有する電圧電流変換素子)と、電流検出抵抗R1とを含み構成される。演算増幅器OP1は、非反転入力端子(+)と伝送線L2に接続される負極電源端子VNとの間に信号処理回路20により生成される制御電圧(制御信号x)が印加される。電圧電流変換素子M1は、ゲート端が演算増幅器OP1の出力端子に、ソース端が演算増幅器OP1の反転入力端子(−)に、ドレイン端が電流源回路32(後述する演算増幅器OP2の非反転入力端子(+)と電流電圧変換抵抗R7の一端)にそれぞれ接続され、ここで(電流源回路31)生成される電流I1を、ドレイン端を介して電流源回路32に出力する。なお、電流検出抵抗R1は、一端が電圧電流変換素子M1のソース端に、他端が負極電源端子VNに接続され、ソース端との接続点が演算増幅器OP1の反転入力端子(−)に接続される。
【0029】
電流源回路32は、演算増幅器OP2と、P型MOS−FETからなる電圧電流変換素子M2(第2の極性を有する電圧電流変換素子)と、電流検出抵抗R3と、電流電圧変換抵抗R7とを含み構成される。
【0030】
演算増幅器OP2は、非反転入力端子(+)に電流源回路31(電圧電流変換素子M1のドレイン端)の出力が、反転入力端子(−)に電流検出抵抗R3を介して伝送線L1が接続される正極電源端子VPがそれぞれ接続される。電圧電流変換素子M2は、ゲート端が演算増幅器OP2の出力端子に、ソース端が演算増幅器OP2の反転入力端子(−)に、ドレイン端がシャント電圧源回路34にそれぞれ接続され、ドレイン端を介し、電流源回路31により生成される電流I1によって制御される電流I2を生成してシャント電圧源回路34に出力する。なお、電流検出抵抗R3は、一端が電圧電流変換素子M2のソース端に、他端が極電源端子Vに接続され、ソース端との接続点が演算増幅器OP2の反転入力端子(−)に接続される。また、電流電圧変換抵抗R7は、正極電源端子VPと演算増幅器OP2の非反転入力端子(+)との間に接続される。
【0031】
電流源回路33は、演算増幅器OP3と、型MOS−FETからなる電圧電流変換素子M3と、電流検出抵抗R5とを含み構成される。
【0032】
演算増幅器OP3は、非反転入力端子(+)と負極電源端子VN間に基準電圧が印加される。電圧電流変換素子M3は、ゲート端が演算増幅器OP3の出力端子に、ソース端が演算増幅器OP3の反転入力端子(−)に、ドレイン端がシャント電圧源回路35にそれぞれ接続され、ドレイン端を介して電流I3を生成してシャント電圧源回路35に出力する。なお、電流検出抵抗R5は、電圧電流変換素子M3のソース端と負極電源端子VNとの間に接続され、電圧電流変換素子M3のソース端との接続点が演算増幅器OP3の反転入力端子(−)に接続される。
【0033】
(実施形態の動作)
以下、本実施形態に係る電流出力回路30の動作について、図1,および図2を参照しながら詳細に説明する。
【0034】
まず、センサ10は、圧力や温度等の物理量を電気信号に変換して信号処理回路20へ出力する。信号処理回路20は、センサ10から出力される電気信号に対して、例えば、歪み補正やノイズ除去等の所定の処理を施して制御信号x(制御電圧)を生成し、電流源回路31を構成する演算増幅器OP1の非反転入力端子(+)と負極電源端子VN端子間に印加する。
【0035】
電流源回路31は、この制御電圧(制御信号x)によって制御される電流I1を生成する。すなわち、演算増幅器OP1は、電圧電流変換素子M1のゲート・ソース間の電圧を制御して、電流検出抵抗R1の両端に印加される電圧と制御電圧xとが同じ電圧値になるように制御する。結果的に、制御電圧(制御信号x)が電流I1に変換され、その電流I1は、電圧電流変換素子M1のドレイン端を介し、電流源回路32(演算増幅器OP2の非反転端子および電流電圧変換抵抗R7の一端)へ出力される。
【0036】
次に、電流源回路32は、電流源回路31により生成される電流I1によって制御される電流I2を生成する。すなわち、電流電圧変換抵抗R7に電流I1が流れることにより電圧降下が発生して電流I1が再度電圧に変換され、その電圧は、演算増幅器OP2の非反転入力端子(+)と正極電源端子VP間に印加される。そして、このVP基準の電圧により、演算増幅器OP2は、電圧電流変換素子M2のゲート・ソース間電圧を制御し、電流検出抵抗R3の両端に印加される電圧とVP基準の電圧とが同じ電圧値になるように制御する。結果的に、ドレイン端を介して生成した電流I2をシャント電圧源回路34に出力する。シャント電圧源回路34は、この電流I2を利用し、センサ10と信号処理回路20を駆動する内部電源#1を生成する。
【0037】
なお、電流源回路32を構成する電圧電流変換素子(P型MOS−FET)の主要なキャリアはホール(正孔)であり、ゲート端に入力される電圧がソース端より低い場合(ゲート・ソース間電圧)、ソースからドレインへ電流が流れるが、その電流は、入力電圧が−側であるほど大きくなり、+側であるほど小さくなり、所定の値で0になる。
【0038】
次に、電流源回路33とシャント電圧源回路35は、電流源回路32の電源を生成する。すなわち、電流源回路33では、演算増幅器OP3の非反転入力端子(+)と正極電源端子VP間に基準電圧Vrefが印加されており、演算増幅器OP3は、電圧電流変換素子M3のゲート・ソース間電圧を制御することによって、電流検出抵抗R5の両端に印加される電圧が基準電圧と同じ値になるように制御する。結果的に基準電圧Vrefが電流I3に変換され、電圧電流変換素子M3のドレイン端を介してシャント電圧源回路35に出力される。シャント電圧源回路35は、この電流I3により電流源回路32の電源を生成する。
【0039】
最終的に、電流出力回路30は、電流源回路31により生成される電流I1と、電流源回路32により生成される電流I2と、電流源回路33により生成される電流I3とにより、制御電圧(制御信号x)によって制御される4〜20[mA]の電流Ioutを生成し、2本の伝送線L1,L2を介してDCS等の外部回路40へ出力するとともに、センサ10と信号処理回路20とを駆動する内部電源#1を生成する。ここで、電流源回路31の伝達関数をf(x),電流源回路32の伝達関数をg(I2)とすれば、I1=f(x),I2=g(f(x)),Iout=f(x)+g(f(x))+13になる。
【0040】
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態に係る電流出力回路30によれば、図中、実線矢印で示した電流源回路31,32を構成する演算増幅器(それぞれOP1,OP2)の負帰環ループの内部に、カレントミラー回路のような低い局を持つ要素が含まれない(応答の遅い要素を除外した)ため、帯域制限の必要がなくなり、したがって広帯域化が可能な2線式伝送器1を提供することができる。具体的に、2線式伝送器1は、外部回路40に対し、4〜20[mA]の直流アナログ信号に交流デジタル信号を重畳して伝送するが、例えば、HART(Highway Addressable Remote Transducer)のようなキャリア周波数の低い通信波形から、Foundation Field BUSのようなキャリア周波数の高い通信波形を一つの2線式伝送器1(フィールド機器)内で、定数を変更することなく出力が可能になる。
【0041】
また、広帯域化により、交流的な入力インピーダンスが向上し、入力インピーダンスが向上することでノイズ耐性が向上するといった派生的効果も得られる。なお、電流を出力しながら内部電源を生成することも可能である。
【0042】
(変形例1)
ところで、上記した本実施形態に係る電流出力回路30において発生するノイズは、伝導の方法(モード)により、2つの種類に区分することができる。一つは、信号ランイ間や電源ライン間に発生するノーマルモードノイズであり、他の一つは、信号ラインや電源ラインとGND間に発生するコモンモードノイズである。図3は、ノーマルモードノイズが印加された場合の本実施形態に係る電流出力回路30のうち、第1の電流源回路31,第2の電流源回路32周辺の構成を抜粋して示した図である。
【0043】
図3において、正極電源端子VPと負極電源端子VN間にノーマルモードノイズ(ノイズ源)が印加されると、第1の電流源回路31の電圧電流変換素子M1の寄生容量Cdegを介して電流Idegが流れる。この電流Idegは、演算増幅器OP1でコントロールできないため、寄生容量Cdegに流れる電流は、第1の電流I1の変動(I1+Ideg)になって現れる。この第1の電流I1の変動は定数倍され、第2の電流源回路32によって出力される第2の電流I2の変動(I2=(I1+Ideg)×(R7/R3)に反映され、この第2の電流I2の変動は第1の電流I1の変動(I1+Ideg)よりも大きくなる。
【0044】
このため、以下に説明する変形例1の電流出力回路30Aは、第2の電流I2の変動を抑えるために、第1の電流I1の変動を容量性素子(図4に示すコンデンサC1)と電流制限抵抗(図4に示す抵抗R4)により抑制することにした。図4にそのための電流出力回路30Aの構成が示されている。図4によれば、変形例1の電流出力回路30Aは、コンデンサC1と電流制限抵抗R4を付加したことを除けば、図2に示した本実施形態に係る電流出力回路30の構成と同様である。
【0045】
電流制限抵抗R4は、一端が電流電圧変換抵抗R7に、他端が電圧電流変換素子M1のドレイン端にそれぞれ接続され、電圧電流変換素子M1の寄生容量Cdegに流れる電流を制限して第1の電流I1の変動を抑制する。また、コンデンサC1は、電流電圧変換抵抗R7と並列に接続され、第1の電流I1の変動により電流電圧変換抵抗R7の両端にかかる電圧の変動を抑制する。この電流電圧変換抵抗R7の両端の電圧変動を抑制することは電流I2の変動を抑制することにつながる。
【0046】
上記した変形例1の電流出力回路30Aによれば、電流電圧変換抵抗R7と並列にコンデンサC1を接続し、第1の電流I1の変動による電流電圧変換抵抗R7の両端の電圧変動を抑制し、かつ、電流制限抵抗R4を電流電圧変換抵抗R7と電圧電流変換素子M1のドレイン端間に挿入することで、電圧電流変換素子M1の寄生容量Cdegに流れる電流を制限して電流I1の変動を抑え、結果的に第2の電流I2の変動を抑制することができる。この第2の電流I2の変動を抑制すれば、第2の電流I2が出力される第3の電流源回路33に流れる電流や電圧が小さくなるため、変形例1の電流出力回路30Aが異常動作を起こすことを回避することができる。したがって、ノイズ耐性が高まり、電流出力回路30Aの回路の健全性を向上させた2線式伝送器1を提供することができる。
【0047】
(変形例2)
次に、図5を参照して変形例2の電流出力回路30Bについて説明する。図5に示すように、変形例2に係る電流出力回路30Bは、電流源回路31を構成する演算増幅器OP1の非反転入力端子(+)に直流成分の制御電圧#1(第1の制御電圧)を、反転入力端子(−)にコンデンサC2(容量性素子)を介して交流成分の制御電圧#2(第2の制御電圧)をそれぞれ入力することで、直流成分と交流成分とが混合された出力電流Ioutを得ることができる。この場合、後段のミキシング回路が不要になる。また、図示省略したが、2本の伝送線L1,L2のそれぞれが接続される正極電源端子VPと負極電源端子VNとの間に電流源回路31を複数並列に接続し、それぞれに印加される制御電圧(制御信号x)を制御して電流I1を生成することで柔軟性、拡張性の高い電流出力回路30を提供することができる。
【0048】
また、電流源回路32において、電流電圧変換素子M2を、P型MOS−FET(M2)と、当該MOS−FET(M2)にダーリントン接続されたバイポーラトランジスタ(PNPトランジスタQ1)で構成し、このPNPトランジスタQ1のコレクタ端を介して電流I2を出力し、ベース端に、MOS−FET(M2)の動作点を決定するソース抵抗R8を介して演算増幅器OP2の反転入力端子(−)にフィードバックする接続構成としてもよい。この構成によれば、電流精度を維持しながらMOS−FET(M2)の低いgm(相互コンダクタンス)を補うことが可能である。
【0049】
また、上記した電流源回路32において、電流I2により内部電源#1(第1の内部電源)よりも低電圧の内部電源#2(第2の内部電源)を生成してMOS−FET(M2)のドレイン端に印加すれば、正極電源端子VPと負極電源端子VN間の電圧が所定値より低い場合の低電圧動作が可能になる。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0051】
1…2線式伝送器、10…センサ、20…信号処理回路、30,30A,30B…電流出力回路、31…第1の電流源回路、32…第2の電流源回路、33…第3の電流源回路、34…第1のシャント電圧源回路、35…第2のシャント電圧源回路、40…外部回路、OP1,OP2,OP3…演算増幅回路、R1,R3,R5…電流検出抵抗、R4…電流制限抵抗、R7…電流電圧変換抵抗、R8…ソース抵抗、C1,C2…容量性素子(コンデンサ)、M1,M2,M3…電圧電流変換素子(MOS−FET)、Q1…バイポーラトランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6