(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0013】
図1〜
図4を参照して、本実施形態に係る積層型圧電アクチュエータの構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る積層型圧電アクチュエータの斜視図である。
図2は、圧電素子の斜視図である。
図3は、
図1に示すIII−III線に沿った断面図である。
図4は、
図1に示す積層型圧電アクチュエータ1の分解斜視図である。
図3及び
図4では、積層型圧電アクチュエータの長手方向の中央に一点鎖線で表された中央線CLが付されている。
図4においては、スルーホールは微小であるため省略し、図中において上下方向に延びる一点鎖線が通過する位置にスルーホール導体が形成されるものとする。
【0014】
図1に示されるように、積層型圧電アクチュエータ1は、交流電圧が印加されて変位することによって、被駆動体DB(例えば、ローター等)を移動させる機能を有している。積層型圧電アクチュエータ1は、複数の圧電体層を積層して一体化することによって形成された略直方体状の圧電素子2を備えている。圧電素子2は、積層体部3と、保護膜5と、を有している。
【0015】
圧電素子2の積層体部3は、長方形状の第一主面(
図1において上面)3a及び長方形状の第二主面(
図1において下面)3bを備えている。以下の説明においては、第一及び第二主面3a,3bの長辺方向を積層体部3(圧電素子2)の「長手方向」、短辺方向を積層体部3(圧電素子2)の「短手方向」、第一及び第二主面3a,3bが対向する方向、すなわち圧電体層を積層する積層方向を積層体部3(圧電素子2)の「厚み方向」と称する。積層体部3は、長手方向の大きさが1〜20mm程度、短手方向の大きさが1〜10mm程度、及び、厚み方向の大きさが0.2〜5mm程度に設定されている。
【0016】
積層体部3の第一主面3aの長手方向の中央位置には、他の外部装置を実装する際の端子電極となる外部電極層11が配置されている。外部電極層11は、第一主面3aの長手方向の中央位置において短手方向に配列されている。外部電極層11は、第一主面3a上において互いに電気的に絶縁された、第一外部電極12、グランド外部電極13、及び第二外部電極14を含んでいる。
【0017】
第一外部電極12は、短手方向の一端側で矩形形状に形成されると共に、外部装置の電圧の出力端子に接続される。グランド外部電極13は、短手方向の中央位置で矩形形状に形成されると共に、外部装置のグランド端子に接続される。第二外部電極14は、短手方向の他端側で矩形形状に形成されると共に、外部装置の電圧の出力端子に接続される。第一外部電極12、グランド外部電極13、及び第二外部電極14は、圧電素子2の第一主面3aに導電性ペーストを付与した後に所定温度(例えば、700℃程度)にて焼き付けることにより、形成される。導電性ペーストの焼き付けにより得られた焼付電極層に、電気めっきを施してめっき層を更に形成してもよい。導電性ペーストとしては、Agを主成分とした導電材料を含む導電性ペーストを用いることができる。めっき層としては、Ni/Auめっき層等が挙げられる。
【0018】
各外部電極12,13,14は、各外部電極12,13,14に対応する部分に開口が形成されたメタルマスクを用い、スパッタリング法や蒸着法等により形成されてもよい。この場合、各外部電極12,13,14を構成する膜構造は、Cr/Ni、NiCu/Ag、SnAg、又はAu等が挙げられる。
【0019】
図2に示されるように、積層体部3の第二主面3bは、第1の領域4Aと、第1の領域4Aから突出した一対の第2の領域4B
1,4B
2と、を含んでいる。すなわち、第2の領域4B
1,4B
2は、圧電体層10,20,30,40,50,70の積層方向に平行な方向に第1の領域4Aから突出するように形成されている。
【0020】
第2の領域4B
1は、積層体部3の長手方向の大きさをLとした場合、積層体部3の長手方向の一端3cから1/3L離れた位置において積層体部3の短手方向へ向かって延びるように位置している。第2の領域4B
2は、積層体部3の長手方向の他端3dから1/3L離れた位置において積層体部3の短手方向へ向かって延びるように配置されている(
図3参照)。本実施形態では、第2の領域4B
1,4B
2長さは、積層体部3の幅と同じである。
【0021】
保護膜5は、積層体部3よりも硬質な材料、例えば、DLC(Diamond Like Carbon)、TiN、SiC、又はBP(Boron Phosphor)からなる。保護膜5は、第二主面3b(第1の領域4A及び第2の領域4B
1,4B
2)を覆っている。すなわち、保護膜5は、圧電素子2の一の外表面を構成している。保護膜5は、第1の領域4Aを覆っている第1の領域5Aと、第2の領域4B
1,4B
2を覆っている第2の領域5B
1,5B
2と、を有する。そして、第2の領域5B
1,5B
2は、圧電体層10,20,30,40,50,70の積層方向に平行な方向に第1の領域5Aから突出するように形成される。
【0022】
本実施形態では、保護膜5の第2の領域5B
1,5B
2は、被駆動体DBと接触して被駆動体DBとの間に摩擦力を生じさせる摩擦部として機能する平面5B
11,5B
21をそれぞれ有する。被駆動体DBは、上記摩擦力により移動する。圧電素子2が保護膜5を有していない場合には、第二主面3bの第2の領域4B
1,4B
2が上記摩擦部として機能する平面を有する。保護膜5は、必ずしも第二主面3b全体を覆っている必要はなく、少なくとも第2の領域4B
1,4B
2を覆うように形成されていればよい。保護膜5の厚みは、例えば0.5〜20μm程度である。
【0023】
平面5B
11,5B
21の各々は、第二主面(
図2において上面)3b側からみて、圧電素子2の長手方向の径よりも短手方向の径の方が長い楕円形状となっている。平面5B
11,5B
21の各々は、第二主面3b側からみて、圧電素子2の長手方向に沿った長さよりも短手方向に沿った長さの方が長い略矩形形状、多角形形状、これらを組み合わせた形状など、短手方向における端が辺を有する形状でもよい。この場合、平面5B
11,5B
21の各々において、その短手方向での中央領域における長手方向に沿った長さが、短手方向での端領域における長手方向に沿った長さよりも長くなる。なお、中央領域とは、平面5B
11,5B
21の各々において少なくともその中心を通過し長手方向に沿った線分を含む領域であり、端領域とは、平面5B
11,5B
21の各々において少なくとも短手方向における一端を含む領域である。
【0024】
積層体部3は、
図3及び
図4に示されるように、圧電特性(すなわち、通電されることによって変形する)を有する長方形板状の圧電体層10,20,30,40,50,70と、中継電極層21、第一内部電極層31、第一グランド電極層(グランド電極層)41、及び第二内部電極層51が積層された積層体として構成されている。中継電極層21、第一内部電極層31、第一グランド電極層(グランド電極層)41、及び、第二内部電極層51は、圧電素子2内において圧電体層10,20,30,40,50,70の積層方向(すなわち圧電素子2の厚み方向)に沿ってそれぞれ一層ずつ配置されている。
【0025】
外部電極層11は、後述するように、積層体部3の第一主面3aとなる圧電体層10上に形成されている。同様に、中継電極層21は、圧電体層20上に形成され、第一内部電極層31は圧電体層30上に形成され、第一グランド電極層41は圧電体層40上に形成され、第二内部電極層51は圧電体層50上に形成されている。
【0026】
圧電体層10,20,30,40,50,70は、例えば、PZTを主成分とする圧電セラミック材料からなる。また、圧電体層10,20,30,40,50,70の厚みは、例えば10〜100μm程度である。実際の積層型圧電アクチュエータ1では、複数の圧電体層10,20,30,40,50,70は、互いの間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0027】
中継電極層21は、圧電体層20の長手方向の中央位置において短手方向に配列されている。中継電極層21は、圧電体層20上において互いに電気的に絶縁された、第一中継電極22、グランド中継電極23、及び第二中継電極24を含んでいる。第一中継電極22は、短手方向の一端側に位置しており、矩形形状を呈している。グランド中継電極23は、短手方向の中央に位置しており、短手方向を長手方向とする長方形状を呈している。第二中継電極24は、短手方向の他端側に位置しており、矩形形状を呈している。
【0028】
第一内部電極層31は、圧電体層30上において互いに電気的に絶縁された第一電極32、グランド中継電極33、及び第二電極34を含んでいる。グランド中継電極33は、長手方向の中央位置において厚み方向から見てグランド中継電極23と重なるように位置しており、長方形状を呈している。
【0029】
第一電極32は、電極部32aと中継電極部32bとを有している。電極部32aは、圧電素子2の長手方向の中央位置よりも一端3c側(すなわち、圧電体層30の一端30c側)に配置されている。電極部32aは、グランド中継電極33よりも一端30c側の圧電体層30上面の略全領域を覆うように位置しており、矩形形状を呈している。電極部32a内で第2の領域4B
1と対応する位置には、厚み形成領域101が形成されている。厚み形成領域101は、圧電素子2の厚み方向から見て、圧電素子2の長手方向よりも短手方向の方が長い直方体形状である。厚み形成領域101の短手方向の長さは、圧電素子2の短手方向における電極部32aの長さ以下であることが好ましい。厚み形成領域101は、電極部32aと同じ導電材料からなり、その高さは、例えば0.5〜10μm程度である。
【0030】
中継電極部32bは、長手方向中央に配置されている。中継電極部32bは、電極部32aから長手方向の中央位置に突出すると共に厚み方向から見て第一中継電極22と重なるように位置しており、矩形形状を呈している。
【0031】
第二電極34は、電極部34aと中継電極部34bとを有している。電極部34aは、圧電素子2の長手方向の中央位置よりも他端3d側(すなわち、圧電体層30の他端30d側)に配置されている。電極部34aは、グランド中継電極33よりも他端30d側の圧電体層30上面の略全領域を覆うように位置しており、矩形形状を呈している。電極部34a内での第2の領域4B
2に対応する位置には、厚み形成領域101と同様の形状及び厚さを有する厚み形成領域102が形成されている。厚み形成領域102は、電極部34aと同じ導電材料からなる。
【0032】
中継電極部34bは、長手方向中央に配置されている。中継電極部34bは、電極部34aから長手方向の中央位置に突出すると共に厚み方向から見て第二中継電極24と重なるように位置しており、矩形形状を呈している。
【0033】
第一グランド電極層41は、圧電体層40上において互いに電気的に絶縁された、第一中継電極42、グランド電極43、及び第二中継電極44を含んでいる。グランド電極43は、圧電体層40上面の略全面を覆うように位置しており、略矩形形状を呈している。グランド電極43は、厚み方向から見て電極部33a、電極部34a及びグランド中継電極23,33の全てと重なるように位置している。グランド電極43内での第2の領域4B
1に対応する位置には、厚み形成領域101と同様の形状及び厚さを有する厚み形成領域111が形成されている。同様に、グランド電極43内での第2の領域4B
2に対応する位置には、厚み形成領域102と同様の形状及び厚さを有する厚み形成領域112が形成されている。厚み形成領域111,112は、グランド電極43と同じ導電材料からなる。
【0034】
グランド電極43には、その長手方向の中央位置において、圧電体層40の短手方向の両端側に矩形形状の凹部が形成されている。当該凹部には、それぞれ第一中継電極42及び第二中継電極44が配置されている。第一中継電極42は、厚み方向から見て、中継電極部33b及び第一中継電極22と重なるように位置している。第二中継電極44は、厚み方向から見て、中継電極部34b及び第二中継電極24と重なるように位置している。
【0035】
第二内部電極層51は、圧電体層50上において互いに電気的に絶縁された、第三電極54、グランド中継電極53、及び第四電極52を含んでいる。グランド中継電極53は、長手方向の中央位置において厚み方向から見て、グランド中継電極23,33と重なるように位置しており、長方形状を呈している。
【0036】
第三電極54は、電極部54aと中継電極部54bとを有している。電極部54aは、圧電素子2の長手方向の中央位置よりも一端3c側(すなわち、圧電体層50の一端50c側)に配置されている。電極部54a内での第2の領域4B
1に対応する位置には、厚み形成領域101と同様の形状及び厚さを有する厚み形成領域121が形成されている。厚み形成領域121は、電極部54aと同じ導電材料からなる。
【0037】
中継電極部54bは、長手方向中央に配置されている。電極部54aは、グランド中継電極53よりも一端50c側の圧電体層50上面の略全領域を覆うように位置しており、矩形形状を呈している。これにより、電極部54aは、厚み方向から見て、電極部32a及びグランド電極43の一部と重なる。中継電極部54bは、電極部54aから長手方向の中央位置に突出すると共に厚み方向から見て第二中継電極24,44及び中継電極部34bと重なるように矩形形状を呈している。
【0038】
第四電極52は、電極部52aと中継電極部52bとを含んでいる。電極部52aは、圧電素子2の長手方向の中央位置よりも他端3d側(すなわち、圧電体層50の他端50d側)に配置されている。電極部52a内での第2の領域4B
1に対応する位置には、厚み形成領域101と同様の形状及び厚さを有する厚み形成領域122が形成されている。厚み形成領域122は、電極部52aと同じ導電材料からなる。
【0039】
中継電極部52bは、長手方向中央に配置されている。電極部52aは、グランド中継電極53よりも他端50d側の圧電体層50上面の略全領域を覆うように位置しており、矩形形状を呈している。これにより、電極部52aは、厚み方向から見て、電極部34a及びグランド電極43の一部と重なる。中継電極部52bは、電極部52aから長手方向の中央位置に突出すると共に厚み方向からみて上方の第一中継電極22,42及び中継電極部33bと重なるように位置しており、矩形形状を呈している。
【0040】
圧電体層10,20,30,40には、第一中継電極22,42、中継電極部32b,52bに対応する位置に、厚み方向へ貫通するスルーホールが形成されている。これらのスルーホールには、第一スルーホール導体6が配置されている。これにより、第一外部電極12、第一中継電極22、第一電極32、第一中継電極42、及び第四電極52が互いに電気的に接続される。
【0041】
圧電体層10,20,30,40には、グランド中継電極23,33,53、及び、グランド電極43の長手方向中央領域に対応する位置には、厚み方向へ貫通するスルーホールが形成されている。これらのスルーホールには、グランドスルーホール導体7が配置されている。これにより、グランド外部電極13、グランド中継電極23、グランド中継電極33、グランド電極43、及びグランド中継電極53が互いに電気的に接続される。
【0042】
圧電体層10,20,30,40には、第二中継電極24,44及び中継電極部34b,54bに対応する位置に、厚み方向へ貫通するスルーホールが形成される。これらのスルーホールには、第二スルーホール導体8が配置されている。これにより、第二外部電極14、第二中継電極24、第二電極34、第二中継電極44、及び第三電極54が互いに電気的に接続される。
【0043】
第一スルーホール導体6とグランドスルーホール導体7と第二スルーホール導体8とは、圧電素子2の長手方向の中央位置に位置すると共に、それぞれ圧電素子2の短手方向に配列される。これらのスルーホール導体6,7,8は、導電性材料を含んでいる。各スルーホール導体に含まれる導電性材料としては、Pd、Ag、Cu、W、Mo、Sn及びNiからなる群より選ばれる1種以上の金属、又は上記金属を1種以上含む合金からなることが好ましい。各スルーホール導体6,7,8の直径は、例えば20〜100μm程度である。各電極層11,21,31,41,51及び圧電体層10,20,30,40,50,70からなる圧電素子2は、厚み調整層LY1,LY2及び圧電素子2を振動させる駆動層LY3を含む。
【0044】
駆動層LY3は、第一内部電極層31、圧電体層30、第一グランド電極層41、圧電体層40、及び第二内部電極層51から構成されている。厚み調整層LY1は、圧電体層10、中継電極層21、及び圧電体層20から構成されている。厚み調整層LY2は、圧電体層50及び圧電体層70から構成されている。駆動層LY3の内、第一内部電極層31、第一グランド電極層41、及び第二内部電極層51と重なり、電圧の印加により変位を生じる領域は活性部であり、これらと重ならず、電圧の印加によっても変位しない領域は非活性部となる。厚み調整層LY1,LY2は、圧電素子2の製造時において、研磨されてその厚みが調整されることにより、圧電素子2における振動の周波数が調整される。厚み調整層LY1,LY2の厚みが略同一に設定されることにより、圧電素子2は厚み方向に対称な構成となる。
【0045】
駆動層LY3において、第一内部電極層31と第一グランド電極層41とに挟まれた圧電体層30と、第一グランド電極層41と第二内部電極層51とに挟まれた圧電体層40とは、それぞれ分極処理が施されている。分極処理においては、第一内部電極層31から第一グランド電極層41に向かって分極され、第二内部電極層51から第一グランド電極層41に向かって分極される。
【0046】
積層体部3では、厚み形成領域101,102,111,112,121,122の厚みに対応した分、第2の領域4B
1,4B
2が第1の領域4Aから突出する。したがって、第2の領域4B
1,4B
2の突出する高さは、厚み形成領域の数及び高さにより調整することができる。
【0047】
次に、積層型圧電アクチュエータ1の動作について、
図5及び
図6を参照して説明する。
図5は、積層型圧電アクチュエータ1の各振動モードを示した図である。
図6は、積層型圧電アクチュエータ1が被駆動体DBを駆動させる様子を示した図である。
【0048】
積層型圧電アクチュエータ1は、駆動時においては2つの共振モードを有している。具体的には、積層型圧電アクチュエータ1は、
図5の(a)に示されるような圧電素子2の長手方向に振動する縦振動モードと、
図5の(b)に示されるような圧電素子2の厚み方向への曲げ振動モードと、の重ね合わせによって振動する。縦振動モードの共振周波数と曲げ振動モードの共振周波数は、圧電素子2の厚み調整層LY1及びLY2(
図3参照)の研磨によって合わせ込みがなされている。
【0049】
図6では、縦振動モードと曲げ振動モードが重ね合わされた様子が示されている。第一電極32とグランド電極43と圧電体層30とから構成される活性部A1、及び、第四電極52とグランド電極43と圧電体層40とから構成される活性部A4を駆動させると、
図6の(a)に示されるように、保護膜5の第2の領域5B
2における平面5B
21が被駆動体DBと接触して、第2の領域5B
2の平面5B
21と被駆動体DBとの間に摩擦力が生じる。第2の領域5B
2の平面5B
21と被駆動体DBとの間に生じた摩擦力により、被駆動体DBが
図6の(a)中の矢印方向に移動する。活性部A1及び活性部A4の中心が電圧印加による変位が最も大きいので、第2の領域5B
2は、圧電素子2の厚み方向から見て、活性部A1及び活性部A4の中心と重なっていることが好ましい。
【0050】
一方、第二電極34とグランド電極43と圧電体層30とから構成される活性部A2、及び第三電極54とグランド電極43と圧電体層40とから構成される活性部A3を駆動させると、
図6の(b)に示されるように、保護膜5の第2の領域5B
1における平面5B
11が被駆動体DBと接触して、第2の領域5B
1の平面5B
11と被駆動体DBとの間に摩擦力が生じる。第2の領域5B
1の平面5B
11と被駆動体DBとの間に生じた摩擦力により、被駆動体DBが
図6の(b)中の矢印方向に移動する。活性部A2及び活性部A3の中心が電圧印加による変位が最も大きいので、第2の領域5B
1は、圧電素子2の厚み方向から見て、活性部A2及び活性部A3の中心と重なっていることが好ましい。
【0051】
第一外部電極12と第二外部電極14とに位相を90度ずらした電圧をそれぞれ印加して圧電素子2を駆動させると、摩擦部(平面5B
11,5B
21)にそれぞれ位相が180度ずれた楕円運動が生じ、交互に被駆動体DBとの間に摩擦力が作用して、被駆動体DBが移動する。
【0052】
上述の振動は、
図3及び
図6を参照して、圧電素子2の長手方向の中央位置と、一端3cから1/6Lの位置と、他端3dから1/6Lの位置とを節(振動において振幅を生じない位置)とすると共に、一端3cと、他端3dと、一端3cから1/3Lの位置(すなわち第2の領域5B
1が設けられる位置)と、他端3dから1/3Lの位置(すなわち第2の領域5B
2が設けられる位置)とを最大振幅を生じる位置とする。
【0053】
次に、本実施形態に係る積層型圧電アクチュエータ1の製造方法について、
図7を参照して説明する。
図7は、本実施形態に係る積層型圧電アクチュエータ1の製造方法を示すフローチャートである。
【0054】
図7に示されるように、積層型圧電アクチュエータ1の製造工程は、塗料化工程S1から工程を開始する。塗料化工程S1では、圧電体層10〜70の材料となる圧電材料と有機溶剤と有機バインダとを混合して、これらを塗料化する。次に、シート化工程S2が行われる。シート化工程S2では、PETフィルム201上に、塗料化工程S1で得られた塗料を付与し、圧電体層1枚あたりの厚みに対応する厚みを有する圧電体シートを形成する。
【0055】
シート化工程S2が終了すると、スルーホール形成工程S3が行われる。スルーホール形成工程S3では、圧電体シートに、スルーホール導体6,7,8の配置位置に対応する所定の位置にスルーホールを形成する。圧電体シートにスルーホールを形成した後、内部電極印刷工程S4及び電極材料パターン形成工程S5が行われる。内部電極印刷工程S4は、電極材料パターン形成工程S5の後に行われてもよい。
【0056】
内部電極印刷工程S4では、導電性ペーストを用い、切断前の各圧電体層10〜70の上面に、対応する電極パターン及びスルーホール導体パターンをスクリーン印刷等により形成する。このとき、各圧電体層10〜70に対して、外部電極層11、中継電極層21、第一内部電極層31、第一グランド電極層41、第二内部電極層51、及びスルーホール導体6,7,8に対応するパターンが形成される。
【0057】
電極材料パターン形成工程S5では、少なくとも第一内部電極層31、第一グランド電極層41、及び第二内部電極層51の所望の位置に、スクリーン印刷等により各電極層と同じ材料からなる導電性ペーストを付与する。この導電性ペーストは、それぞれが厚み形成領域101,102,111,112,121,122となる。厚み形成領域101〜122は、直方体形状に形成されている。長手方向における厚み形成領域101〜122の長さは、例えば0.1〜5mm程度であり、短手方向における厚み形成領域101〜122の長さは、例えば0.5〜10mm程度である。厚み形成領域101〜122の高さは、例えば0.5〜10μm程度であり、スクリーン印刷等の工程の繰り返し回数によって、調節することができる。
【0058】
積層・プレス工程S6では、切断前の圧電体層10,20,30,40,50,70を、上からこの順番で積層することで、
図8に示されるような積層体80が得られる。積層体80のプレスは、静水圧プレスによって行われる。
図9に示されるように、PETフィルム201上に配置された積層体80は、SUS基板202上に配置され、積層体80、PETフィルム201、及びSUS基板202は、真空フィルム203,204によって真空密封される。この真空密封された積層体80を、例えば水槽内に溜められた水に沈め、静水圧プレスを行う。静水圧プレスにより、厚み形成領域101〜122が形成されている領域と対応する、積層体80のPETフィルム201と接していない外表面が突出し、
図9に示されるような第2の領域4B
1,4B
2が形成される。一方で、積層体80のPETフィルム201と接する外表面は、SUS基板202の存在により、突出が阻害される。これにより、圧電素子2の外表面の選択性よく第2の領域4B
1,4B
2が形成される。静水圧プレスにて積層体80に加える圧力は、例えば1000kgf/cm
2程度(100MPa程度)である。また、水の温度は、例えば60℃程度である。静水圧プレス後、脱バインダ・焼成工程S7が行なわれる。
【0059】
ところで、ディスペンサによる塗布やスクリーン印刷による導電性ペーストの付与は、積層体80に凹部を形成する機械加工精度に比して、導電性ペーストの付与位置の精度が極めて高い。したがって、第2の領域4B
1,4B
2を形成するための位置精度が向上し、第2の領域4B
1,4B
2の位置ばらつきが生じるのを防ぐことができる。また、導電性ペーストの付与をディスペンサによる塗布やスクリーン印刷にて行なうことにより、導電性ペーストの高さを上述したように低く抑えることができ、積層型圧電アクチュエータ1の低背化を図ることができる。更に、ディスペンサによる塗布やスクリーン印刷は既存の工程であり、第2の領域4B
1,4B
2を極めて安価で且つ簡易に形成することができる。
【0060】
次に、脱バインダ・焼成工程S7が行われる。ここでは、所定の熱処理条件にて、積層体80の脱バインダ処理が行われ、さらに焼成処理が行われる。これにより、焼成された積層体80に、活性部に対応する領域と重なるように第2の領域4B
1,4B
2が形成される。第2の領域4B
1,4B
2の高さは、例えば5〜30μm程度であり、その幅は、例えば0.5〜2mm程度である。
【0061】
積層体80の焼成後、研磨工程S8が行われる。研磨工程S8では、厚み調整層LY1,LY2の研磨を行うことによって、縦振動モードの共振周波数と曲げ振動モードの共振周波数との合わせ込みがなされる。具体的には、圧電体層10あるいは圧電体層70の研磨が行われる。研磨工程S8後、第2の領域4B
1,4B
2の一部が平坦化され、第2の領域4B
1,4B
2が、それぞれ平面を有する。
【0062】
続いて、表面電極形成工程S9が行なわれる。ここでは、導電性ペーストを用い、圧電体層10の上面に露出しているスルーホール導体6,7,8と外部回路とを電気的に接続するための第一外部電極12、グランド外部電極13、及び第二外部電極14に対応する電極パターンを圧電体層10の上面にスクリーン印刷等により形成する。その後、所定の熱処理条件にて、電極パターンを焼成(焼付け)する。これにより、第一外部電極12、グランド外部電極13、及び第二外部電極14が形成される。各外部電極12,13,14は、上述したように、メタルマスクを用い、スパッタリング法や蒸着法等により形成してもよい。
【0063】
次に、保護膜形成工程S10が行なわれる。保護膜形成工程S10では、積層体80における第2の領域4B
1,4B
2が形成された外表面全体を覆うように、保護膜5を形成する。保護膜5の形成は、プラズマCVD法等を用いることができる。保護膜形成工程S10後、平面5B
11を有する第2の領域5B
1と、平面5B
21を有する第2の領域5B
2がそれぞれ形成される。
【0064】
平面5B
11,5B
21の各々は、積層体80の厚さ方向から見て、圧電素子2の長手方向の径よりも短手方向の径の方が長い楕円形状となっている。平面5B
11,5B
21の短手方向における端領域にて、第一内部電極層31、第一グランド電極層41、及び第二内部電極層51と重ならない部分が形成される場合がある。当該部分は非活性部と重なり、第2の領域5B
1,5B
2の変位を阻害するように働く。このため、平面5B
11,5B
21を上述のような楕円形状とすることで、平面5B
11,5B
21における端領域が小さくなる。平面5B
11,5B
21の形状を上述の楕円形状に代えて、圧電素子2の長手方向の長さよりも短手方向の長さの方が長い略矩形形状、多角形形状、またはこれらを組み合わせた形状など、短手方向における端が辺を有する形状でもよい。この場合、平面5B
11,5B
21の各々において、短手方向での中央領域における長手方向に沿った長さが、短手方向での端領域における長手方向に沿った長さよりも長くなることで、端領域が小さくなる。平面5B
11,5B
21の各々の短手方向に沿った長さを、短手方向における上述の電極の長さ以下にしてもよい。
【0065】
次に、分極工程S11が行われる。分極工程S11では、圧電材料の極性を揃えるために、既知の手法により、分極処理が行われる。その後、積層体80を、圧電素子2ごとに切断する個品切断工程S12が行われる。積層体80は、
図8に示された一点鎖線に沿って切断される。個別に切断された圧電素子2はバレル研磨機に入れられ、バレル研磨工程S13が行われる。最後に、電気特性を検査する電気特性検査工程S14と外観検査工程S15が行われて、
図7に示された製造工程が終了する。
【0066】
次に、上述のように構成された積層型圧電アクチュエータ1の作用・効果について説明する。
【0067】
積層型圧電アクチュエータ1は、上述したように、複数の圧電体層を積層することによって形成され、第一及び第二主面を有する直方体状の素体と、第一及び第二主面に対向するように素体内に配置され、素体の長手方向の中央位置よりも一端側に配置される電極部を含む第一電極、及び中央位置よりも他端側に配置される電極部を含むと共に第一電極と電気的に絶縁された第二電極を有する第一内部電極層と、第二主面側で圧電体層を挟んで第一内部電極層の第一電極の電極部及び第二電極の電極部と対向するように素体内に配置されるグランド電極を有するグランド電極層と、第二主面側で圧電体層を挟んでグランド電極層と対向するように素体内に配置され、中央位置よりも一端側に配置される電極部を含む第三電極、及び中央位置よりも他端側に配置される電極部を含むと共に第三電極部と電気的に絶縁された第四電極を有する第二内部電極層と、第一主面に形成され、それぞれが電気的に絶縁された第一外部電極、第二外部電極、及びグランド外部電極を有する外部電極層と、素体内を圧電体層が積層される方向である厚み方向に延びて第一外部電極、第一電極及び第四電極同士を電気的に接続する第一スルーホール導体と、素体内を厚み方向に延びて第二外部電極、第二電極及び第三電極同士を電気的に接続する第二スルーホール導体と、素体内を厚み方向に延びてグランド外部電極及びグランド電極同士を電気的に接続するグランドスルーホール導体と、を備え、第一スルーホール導体、第二スルーホール導体及びグランドスルーホール導体は、中央位置に配置されると共に、それぞれ素体の幅方向に配列されており、長手方向に縦振動を生じると共に厚み方向に曲げ振動を生じる。
【0068】
すなわち、本実施形態に係る積層型圧電アクチュエータ1では、第一外部電極12、第一電極32及び第四電極52同士を電気的に接続する圧電素子2内の第一スルーホール導体6と、第二外部電極14、第二電極34及び第三電極54同士を電気的に接続する圧電素子2内の第二スルーホール導体8と、グランド外部電極13及びグランド電極43を電気的に接続する圧電素子2内のグランドスルーホール導体7とが、圧電素子2の長手方向の中央位置に配置されると共に、それぞれ圧電素子2の短手方向に配列されている。このように、電極同士の電気的な接続が圧電素子2内に形成された各スルーホール導体6,7,8によってなされているため、他部品との接触を考慮することなく設計することが可能となると共に、従来の積層型圧電アクチュエータのように側面電極を設けた場合に比して部品の小型化を図ることが可能となる。
【0069】
電極同士を接続するスルーホール導体6,7,8は圧電素子2内部に設けられているため、周囲の環境の影響を受けることを防止することができ、信頼性を向上させることができる。また、外部に側面電極があった場合は、製造時において、積層体80を形成して、圧電素子ごとに切断した後、各々の圧電素子について側面電極を形成する工程が追加されるが、圧電素子2内にスルーホール導体6,7,8を設けることによって、積層体80切断後の側面電極形成工程を省略することが可能となる。
【0070】
ここで、上述のように、グランド電極43を挟んで圧電素子2の長手方向の中央位置を基準として対角の位置関係をなす第一電極32と第四電極52が電気的に接続されると共に同様の位置関係をなす第二電極34と第三電極54が電気的に接続されている。このため、積層型圧電アクチュエータ1は圧電素子2の中央位置(中央線CLの位置)を節として長手方向に縦振動と厚み方向の曲げ振動を発生させるが、本実施形態に係る積層型圧電アクチュエータ1では節となる中央位置に各スルーホール導体6,7,8が形成されているため、各スルーホール導体6,7,8に作用する応力を緩和することができ、信頼性を向上させることができる。
【0071】
スルーホール導体を設けた圧電素子部分周辺の構造は柔らかくなるが、圧電素子2の長手方向の中央位置に複数のスルーホール導体6,7,8を設けることによって圧電素子2中央位置付近の構造が柔らかくなることによって変形し易くなる。具体的には、
図10に示すように、スルーホール導体が長手方向の中央位置に形成されていない従来の積層型圧電アクチュエータPの変位(図中で変位DP2で示される)に比して、本実施形態の積層型圧電アクチュエータ1の変位(
図10中で変位DP1で示される)が大きくなる。これによって、圧電素子2に作用する内部応力を増加させることなく、駆動時の変位を大きくすることが可能となり、性能を向上させることができる。以上によって、積層型圧電アクチュエータ1の小型化を図ると共に信頼性及び性能を向上させることができる。
【0072】
更に、積層型圧電アクチュエータ1では、圧電素子2の一の外表面が、第1の領域5Aから突出した第2の領域5B
1,5B
2を含んでおり、被駆動体DBに接触して該被駆動体との間に摩擦力を生じさせる平面5B
11,5B
21を圧電素子2が有することとなる。このため、上記被駆動体DBとの間に摩擦部として機能する平面5B
11,5B
21を圧電素子2とは別体の部材にて構成する必要はなく、また、別体の部材を固定するための凹部を圧電素子2(不活性部)に形成する必要がない。したがって、平面5B
11,5B
21の形成が不活性部の設計寸法に影響を及ぼすことはなく、圧電素子2のサイズが制限されるのを防ぐことができる。そして、凹部の形成に起因する摩擦部の位置のばらつきが排除され、共振モード(第1及び第2の振動モード)における共振周波数がばらつくのを抑制されることとなる。この結果、積層型圧電アクチュエータ1の駆動状態にばらつきが生じるのを抑制することができる。
【0073】
積層型圧電アクチュエータ1では、摩擦部として機能する平面5B
11,5B
21を別体の部材にて構成しないので、別体の部材が圧電素子2から剥がれるといった不具合も発生しない。
【0074】
積層型圧電アクチュエータ1において、平面5B
11,5B
21は、圧電素子2の長手方向に沿った長さが圧電素子2の短手方向に沿った長さよりも短く、且つ、短手方向での中央領域における長手方向に沿った長さが、短手方向での端領域における長手方向に沿った長さよりも長い。このような第2の領域5B
1,5B
2を有する積層型圧電アクチュエータ1は、電圧印加による変位が大きい領域の面積が大きくなる。つまり、圧電素子2と被駆動体とが接触する面積が大きくなることにより生じる摩擦力が大きくなる。一方で、短手方向での平面の端が短いことにより、圧電素子2の変位を阻害する領域の面積が小さくなる。従って、第2の領域5B
1が平面5B
11を、第2の領域5B
2が平面5B
21を有することによって、積層型圧電アクチュエータ1の駆動力が向上する。
【0075】
平面5B
11,5B
21の各々の圧電素子2の短手方向に沿った長さは、該短手方向における活性部の長さ以下である。平面5B
11,5B
21の各々の短手方向に沿った長さが上述の長さになることによって、平面5B
11,5B
21は、圧電素子2の厚み方向から見て、活性部の内部に位置する。これにより、短手方向での平面5B
11,5B
21の端領域によって、圧電素子2の変位が阻害されることを抑制することができる。
【0076】
積層型圧電アクチュエータ1では、圧電素子2の第2の領域5B
1,5B
2の各々は、一の外表面に直交する方向(圧電素子2の厚み方向)から見て、対応する活性部の中心と重なっていることが好ましい。活性部の中心は、電圧印加により最も変位する位置である。第2の領域5B
1,5B
2の各々が、対応する活性部の中心と上述のように重なることによって、電圧印加による第2の領域5B
1,5B
2の変位が大きくなる。
【0077】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0078】
本実施形態では、圧電素子2の外表面に位置する電極層(外部電極層11)と、圧電素子2内に位置する電極層(中継電極層21、第一内部電極層31、第一グランド電極層41、及び第二内部電極層51)と、が圧電素子2内に位置するスルーホール導体6,7,8により電気的に接続されているが、これに限られない。例えば、圧電素子2内に位置する電極層に含まれる電極を圧電素子2の外表面に露出するように引き出し、圧電素子2の外表面に露出するように引き出された電極部分と圧電素子2の外表面に位置する電極層とを、圧電素子2の外表面に配置された導体により電気的に接続してもよい。ところで、本実施形態では、圧電素子2の外表面に保護膜5を形成している。保護膜5が導電性を有する材料を含んでいる場合には、ショートの発生を防止するためにも、スルーホール導体6,7,8により電気的な接続を実現した構成を採用することが好ましい。