(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5673813
(24)【登録日】2015年1月9日
(45)【発行日】2015年2月18日
(54)【発明の名称】レーザ加工機
(51)【国際特許分類】
B23K 26/06 20140101AFI20150129BHJP
B23K 26/046 20140101ALI20150129BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20150129BHJP
【FI】
B23K26/06
B23K26/046
B23K26/073
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-515043(P2013-515043)
(86)(22)【出願日】2012年4月4日
(86)【国際出願番号】JP2012059143
(87)【国際公開番号】WO2012157355
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2013年11月13日
(31)【優先権主張番号】特願2011-112131(P2011-112131)
(32)【優先日】2011年5月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 圭太
【審査官】
青木 正博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−024782(JP,A)
【文献】
特開平11−309595(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0072180(US,A1)
【文献】
特開2009−113095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送用光ファイバの出射点から出射されたレーザ発振器からのレーザビームを平行光束にするコリメートレンズと、平行光束になったレーザビームを集光して被加工物に照射する集光レンズと、この集光レンズよりも被加工物側に位置し、アシストガスを吐出させるノズルとを備え、前記出射点から前記ノズルの先端までの距離が不変であるレーザ加工機であって、
前記コリメートレンズを光軸方向と直交する直交方向にずらして複数設け、
複数のコリメートレンズの任意の一つが、そのレンズ中心が前記出射点から出射されたレーザビームの中心と合致するように、各コリメートレンズの前記直交方向の位置を切り替える切替装置を設け、
複数のコリメートレンズは、互いに焦点距離が異なるレーザ加工機。
【請求項2】
さらに、加工条件と前記複数のコリメートレンズのうちの定められた一つとを互いに対照させて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段を照合することで前記加工条件に合ったコリメートレンズを選択する選択手段と、
この選択手段により選択されたコリメートレンズが前記出射点から出射されたレーザビームを平行光束にする位置となるように、前記切替装置の駆動源を制御する切替制御手段と、
を備えた請求項1記載のレーザ加工機。
【請求項3】
さらに、前記切替装置により前記直交方向の位置を切り替えられてレーザビームの光軸上に配置されたコリメートレンズの前記直交方向の位置を検出する検出手段と、
この検出手段により検出されたコリメートレンズのレンズ中心が前記出射点から出射されたレーザビームの中心の位置と合致しない位置にある場合に、定められた非常対応措置を講じる非常対応手段と、
を備えた請求項1または請求項2記載のレーザ加工機。
【請求項4】
さらに、前記集光レンズを前記レーザビームの光軸方向に移動させて、前記レーザビームの焦点位置を変更する焦点位置変更機構を備えた請求項1または請求項2記載のレーザ加工機。
【請求項5】
さらに、前記複数のコリメートレンズを保持するレンズホルダを有し、
前記切替装置が、前記レンズホルダを前記直交方向に移動させることにより、前記直交方向の位置を切り替える請求項1または請求項2記載のレーザ加工機。
【請求項6】
さらに、前記複数のコリメートレンズを保持するレンズホルダを有し、
前記切替装置が、前記レンズホルダを前記光軸方向と平行な回転軸心回りに回転させることにより、前記直交方向の位置を切り替える請求項1または請求項2記載のレーザ加工機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
この出願は、2011年5月19日出願の特願2011−112131の優先権を主張するものであり、その全体を参照により本願の一部をなすものとして引用する。
【技術分野】
【0002】
この発明は、板金加工等に用いるレーザ加工機に関し、特にレーザ加工機における集光レンズに入射するビーム径を変更可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0003】
ファイバ導光式のレーザ加工機は、基本的には
図7に示す構成である。すなわち、レーザ発振器から出力されたレーザビームLBは、伝送用光ファイバ5を介して出射点Pから出射され、コリメートレンズ7を経由して集光レンズ8に入射されて、被加工物Wに照射される。レーザビームLBはビーム径の小さい箇所ほどエネルギー密度が高いので、最小ビーム径となる焦点位置(加工点)Qの周辺で被加工物Wを加工する。出射点PからのレーザビームLBの発散角が同じである場合、焦点位置Qにおけるビーム径すなわちスポット径S1,S2(
図8(A),(B))、およびスポット径S1,S2に対するレイリー長R1,R2(
図8(A),(B))は、集光レンズ8に入射するレーザビームLBの径(以下、入射ビーム径とする)Dによって決まる。レイリー長R1,R2は、最小のスポット径S1,S2の半径に対して√2倍程度となる光軸方向の距離であり、この範囲内で被加工物Wを加工するのが望ましい。
【0004】
図8(A),(B)は、入射ビーム径とスポット径、レイリー長との関係を示す図である。
図8(A)のように、入射ビーム径D1が大きいと、スポット径S1は小さく、かつレイリー長R1は短い。逆に、
図8(B)のように、入射ビーム径D2が小さいと、スポット径S2は大きく、かつレイリー長R2は長い。したがって、板厚の薄い板金については、入射ビーム径を大きくして、高エネルギー密度で効率の良い加工を行い、板厚の厚い板金については、入射ビーム径を小さくすることで、エネルギー密度は低いものの板厚の厚い板金に対しても、長いレイリー長R2の範囲内での加工を可能にする。
【0005】
従来、入射ビーム径を変更させる方法として、以下のものがある。
一つは、炭酸ガスレーザ発振器をレーザ光源とするレーザ加工機において、発振器から集光レンズに至るレーザビーム伝送光路内に、複数枚の伝送用ミラーとは別に曲率可変ミラーを設け、この曲率可変ミラーの曲率を変化させることで、集光レンズに入射するレーザビームの径を変更する方法である(例えば特許文献1)。
【0006】
もう一つは、出射点と集光レンズとの間にコリメートレンズを介在させ、このコリメートレンズを光軸方向に移動させることで、集光レンズに入射するレーザビームの径を変更する方法である(例えば特許文献2)。なお、コリメートレンズは、本来、出射点から発散して出射されるレーザビームを平行光束にするために用いられるレンズである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−084689号公報
【特許文献2】特開2009−226473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の曲率可変ミラーを用いる方法は、曲率可変ミラーの反射面ではない裏面側に圧力をかけて凹凸形状を変化させることで、曲率可変ミラーの曲率を変化させる。曲率可変ミラーを所望の凹凸形状に変化させるためには、圧力制御が非常に複雑となり、しかも曲率可変ミラーの各部に作用する圧力を監視するのが難しい。
【0009】
また、コリメートレンズを光軸方向に移動させる方法は、出射点から発散して出射されたレーザビームを、コリメートレンズで敢えて平行光束にせずに、大きく収束または発散させて入射ビーム径を変える。そのため、入射ビーム径の変化に伴って出射点から焦点位置までの距離も変化してしまい、集光レンズよりも被加工物側に位置するノズルと被加工物との位置調整が複雑になる。
【0010】
この発明の目的は、出射点からノズルの先端までの距離が不変の構成でありながら、焦点位置上のスポット径およびレイリー長の変更を簡単な構成で行えるレーザ加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明のレーザ加工機を実施形態に用いた符号を付して説明する。この発明のレーザ加工機は、伝送用光ファイバ(5)の出射点(P)から出射されたレーザ発振器(1)からのレーザビーム(LB)を平行光束にするコリメートレンズ(7A,7B)と、平行光束になったレーザビーム(LB)を集光して被加工物(W)に照射する集光レンズ(8)と、この集光レンズ(8)よりも被加工物(W)側に位置し、アシストガスを吐出させるノズル(9)とを備え、前記出射点(P)から前記ノズル(9)の先端までの距離が不変である。この構成のレーザ加工機において、前記コリメートレンズ(7A,7B)を光軸方向と直交する直交方向にずらして複数設け、複数のコリメートレンズ(7A,7B)の任意の一つが、そのレンズ中心が前記出射点(P)から出射されたレーザビーム(LB)の中心(O)と合致するように、各コリメートレンズ(7A,7B)の前記直交方向の位置を切り替える切替装置(10)を設け、複数のコリメートレンズ(7A,7B)は、互いに焦点距離が異なるものとする。切替装置(10)の駆動は、手動で行っても自動で行ってもよい。
【0012】
この構成によると、出射点(P)から発散して出射されたレーザビーム(LB)をコリメートレンズ(7A,7B)により平行光束にし、さらにこの平行光束のレーザビーム(LB)を集光レンズ(8)により集光して被加工物(W)に照射する。切替装置(10)により各コリメートレンズ(7A,7B)の位置を切り替えて、平行光束のビーム径を変えることにより、スポット径(S1,S2)およびレイリー長(R1,R2)を変更する。
【0013】
従来の特許文献2のように1つのコリメートレンズを光軸方向に移動させるのでは、コリメートレンズから出るレーザビームが平行光束にならず、焦点位置を同じ位置に保つためには、コリメートレンズの位置調整に伴って集光レンズの位置を補正する必要があり、その補正のための機構が必要で構造が複雑となる。あるいは、その補正のための調整に手間がかかる。しかし、この構成では、焦点距離の異なる複数のコリメートレンズ(7A,7B)を交換して用い、交換後もコリメートレンズ(7A,7B)から出るレーザビーム(LB)は平行光束とし、コリメートレンズ(7A,7B)から出るレーザビーム(LB)のビーム径を変えることで、焦点位置(Q)上のスポット径(S1,S2)およびレイリー長(R1,R2)の変更を行う。そのため、複数のコリメートレンズ(7A,7B)の切替えを行うのみで、集光レンズ(8)の位置調整を行うことなく、焦点位置(Q)上のスポット径(S1,S2)およびレイリー長(R1,R2)の変更が行える。
【0014】
また、出射点(P)からノズル(9)の先端までの距離を変更することなく、焦点位置(Q)上のスポット径(S1,S2)およびレイリー長(R1,R2)の変更が行える。そのため、構成が簡単となる。このように、出射点(P)からノズル(9)の先端までの距離が不変の構成でありながら、焦点位置(Q)上のスポット径(S1,S2)およびレイリー長(R1,R2)の変更を簡単な構成で行える。
【0015】
この発明において、さらに、加工条件と前記複数のコリメートレンズ(7A,7B)のうちの定められた一つとを互いに対照させて記憶する記憶手段(23)と、前記記憶手段(23)を照合することで前記加工条件に合ったコリメートレンズ(7A,7B)を選択する選択手段(24)と、この選択手段(24)により選択されたコリメートレンズ(7A,7B)が前記出射点(P)から出射されたレーザビーム(LB)を平行光束にする位置となるように、前記切替装置(10)の駆動源(13)を制御する切替制御手段(25)とを備えていてもよい。
【0016】
この構成とすると、選択手段(24)が、加工条件に関する情報を記憶手段(23)と照合して、加工条件に合ったコリメートレンズ(7A,7B)を選択する。つづいて、選択されたコリメートレンズ(7A,7B)が出射点(P)から出射されたレーザビーム(LB)を平行光束にする位置となるように、切替制御手段(25)によって切替装置(10)の駆動源(13)が制御される。これにより、加工条件に適したコリメートレンズ(7A,7B)の選択を自動で行える。
【0017】
この発明において、さらに、前記切替装置(10)により前記直交方向の位置を切り替えられてレーザビーム(LB)の光軸上に配置されたコリメートレンズ(7A,7B)の前記直交方向の位置を検出する検出手段(14A,14B)と、この検出手段(14A,14B)により検出されたコリメートレンズ(7A,7B)のレンズ中心が前記出射点(P)から出射されたレーザビーム(LB)の中心(O)の位置と合致しない位置にある場合に、定められた非常対応措置を講じる非常対応手段(26)とを備えていてもよい。非常対応措置は、例えば警報を出す、運転を停止する、再度コリメートレンズ(7A,7B)の切替動作を行う等である。
【0018】
これにより、コリメートレンズ(7A,7B)の位置が適正でない場合に、例えば警報を出す、運転を停止する、再度コリメートレンズ(7A,7B)の切替動作を行う等の非常対応措置をとることができる。
【0019】
この発明において、さらに、前記集光レンズ(8)を前記レーザビーム(LB)の光軸方向に移動させて、前記レーザビーム(LB)の焦点位置(Q)を変更する焦点位置変更機構(15)を備えることが好ましい。この構成によれば、集光レンズ(8)もコリメートレンズ(7A,7B)も、動作方向はいずれも1方向であるから、集光レンズ(8)を動作させる焦点位置変更機構(15)、およびコリメートレンズ(7A,7B)を動作させる切替機構(10)の構成が簡略である。
【0020】
この発明において、好ましくは、さらに、前記複数のコリメートレンズ(7)を保持するレンズホルダ(11)を有し、前記切替装置(10)が、前記レンズホルダ(11)を前記直交方向に移動させることにより、前記直交方向の位置を切り替える。
【0021】
この発明において、好ましくは、さらに、前記複数のコリメートレンズ(7)を保持するレンズホルダ(11)を有し、前記切替装置(10)が、前記レンズホルダ(11)を前記光軸方向と平行な回転軸心(32a)回りに回転させることにより、前記直交方向の位置を切り替える。
【0022】
請求の範囲および/または明細書および/または図面に開示された少なくとも2つの構成のどのような組合せも、本発明に含まれる。特に、請求の範囲の各請求項の2つ以上のどのような組合せも、本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
この発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施形態の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかしながら、実施形態および図面は単なる図示および説明のためのものであり、この発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。この発明の範囲は添付の請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【
図1】この発明の第1実施形態にかかるレーザ加工機の概念構成図に制御系のブロック図を加えた図である。
【
図2】(A)は同レーザ加工機の切替機構の一状態を示す水平断面図、(B)は異なる状態を示す水平断面図である。
【
図3】同レーザ加工機の光学系を示す図で、(A)と(B)は互いに平行光束のビーム径が異なる状態を示す。
【
図4】平行光束のビーム径の違いによるスポット径およびレイリー長の違いを比較する説明図で、(A)はビーム径が大きい状態を示し、(B)はビーム径が小さい状態を示す。
【
図5】この発明の第2実施形態にかかるレーザ加工機の概念構成図である。
【
図6】同レーザ加工機の切替機構の水平断面図である。
【
図7】従来のレーザ加工機の光学系を示す図である。
【
図8】平行光束のビーム径の違いによるスポット径およびレイリー長の違いを比較する説明図で、(A)はビーム径が大きい状態を示し、(B)はビーム径が小さい状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の第1実施形態を
図1〜
図4と共に説明する。
図1に示すように、このレーザ加工機は、レーザ発振器1と、加工機ヘッド2と、制御装置3とを備える。
【0025】
レーザ発振器1は例えば固体レーザ発振器からなり、発振されたレーザ光は、伝送用光ファイバ5を介して、加工機ヘッド2に設けられた出射部材6へ送られる。レーザ発振器1は、半導体レーザ発振器であってもよい。
【0026】
加工機ヘッド2は、前記出射部材6と、この出射部材6の出射点Pから発散して出射されるレーザビームLBを平行光束にするコリメートレンズ7と、平行光束になったレーザビームLBを集光して被加工物Wに照射する集光レンズ8とを備える。出射部材6は、伝送用光ファイバ5の先端にある部材であり、出射部材6の出射点Pは、伝送用光ファイバ5の出射点となる。加工機ヘッド2の下端には、レーザビームLBによって溶融された金属を吹き飛ばすための高速流ガス、すなわちアシストガスを吐出させるノズル9が設けられている。アシストガスとしては、例えば、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガスが用いられる。ノズル9は、集光レンズ8の下方、すなわち被加工物W側に位置している。なお、出射部材6は、必ずしも必要とせず、時に省かれる場合もある。
【0027】
コリメートレンズ7は、平行光束のビーム径を変えるために、互いに焦点距離の異なるものが複数個、この実施形態では2個設けられている。第1および第2のコリメートレンズ7A,7Bは、互いにレーザビームLBの光軸と直交する方向(X軸方向)にずらして配置され、それぞれの光軸方向(Z軸方向)の位置は、その中心をレーザビームLBの中心Oと合致させた場合に、出射点Pから出射されたレーザビームLBを平行光束にする位置とされている。
【0028】
第1および第2のコリメートレンズ7A,7Bは、切替装置10によりX軸方向に位置切替される。切替装置10は、
図2(A),(B)に示すように、第1および第2のコリメートレンズ7A,7Bが取付けられた共通のレンズホルダ11と、このレンズホルダ11をX軸方向に案内する一対のX軸レール12と、レンズホルダ11をZ軸方向と直交するX軸方向に進退させる切替駆動源13とで構成される。切替駆動源13は、例えばエアシリンダである。
図2(A)のように、エアシリンダである切替駆動源13を伸長作動させると、焦点距離の長い第1のコリメートレンズ7Aの中心がレーザビームLBの中心Oと合致し、
図2(B)のように、切替駆動源13を収縮作動させると、焦点距離の短い第2のコリメートレンズ7Bの中心がレーザビームLBの中心Oと合致する。
【0029】
レンズホルダ11の移動範囲の両端には、第1および第2のコリメートレンズ7A,7Bの位置を検出するための、近接スイッチ等からなる一対の検出手段14A,14Bが設けられている。第1のコリメートレンズ7Aの中心がレーザビームLBの中心Oと合致しているときは、一方の検出手段14Aがレンズホルダ11を検出してONになり、第2のコリメートレンズ7Bの中心がレーザビームLBの中心Oと合致しているときは、他方の検出手段14Bがレンズホルダ11を検出してONになる。第1および第2のコリメートレンズ7A,7Bの位置は、リニアスケール等によって検出してもよい。
【0030】
レーザ発振器1の個体差によるレーザビームLBの特性に若干の差異が生じることがある。また、第1および第2のコリメートレンズ7A,7Bには、個体差による曲率等の差異がある。これらの差異により、後述する焦点位置Qが若干ばらつく。この焦点位置Qのばらつきを補正するために、第1および第2のコリメートレンズ7A,7Bの光軸方向(Z軸方向)の位置、および光軸方向と直交する平面(X−Y平面)における位置を微調整する微調整機構を設けるのが望ましい。Z軸方向の位置だけを微調整可能としてもよく、X−Y平面における位置だけを微調整可能としてもよい。微調整機構は、例えば、第1および第2のコリメートレンズ7A,7Bをそれぞれ個別に2つのレンズ取付部材(図示せず)に取付け、各レンズ取付部材をレンズホルダ11に対してねじ機構等により微調整する構成とする。
【0031】
また、
図1に示すように、
加工機ヘッド2には、集光レンズ8をレーザビームLBの光軸方向(Z軸方向)に移動させて、レーザビームLBの焦点位置Qを変更する焦点位置変
更機構15が設けられている。焦点位置変更機構15は、集光レンズ8が取付けられたレンズホルダ16と、このレンズホルダ16をZ軸方向に案内する一対のZ軸レール17と、レンズホルダ16をZ軸方向に進退させる進退駆動源18とで構成される。進退駆動源18は、例えばサーボモータである。
【0032】
図1において、制御装置3は、
加工機ヘッド2の移動とレーザ発振器1の出力とを制御する基本動作制御部20と、焦点位置変更機構15の進退駆動源18を制御する焦点位置変更制御部21と、切替装置10の切替駆動源13を制御するコリメートレンズ切替制御部22とを有する。さらに、コリメートレンズ切替制御部22は、記憶手段23と、選択手段24と、切替制御手段25と、非常対応手段26とを有する。
【0033】
前記記憶手段23は、加工条件と第1および第2のコリメートレンズ7A,7Bのうちの定められた一つとを互いに対照させて記憶する。加工条件は、被加工物Wの材質、板厚等である。
【0034】
前記選択手段24は、加工条件についての情報を前記記憶手段23に照合することで加工条件に合った第1のコリメートレンズ7A(または第2のコリメートレンズ7B)を選択する。加工条件についての情報は、外部から供給されるものであっても、あるいは前記基本動作制御部20から供給されるものであってもよい。
【0035】
前記切替制御手段25は、前記選択手段24により選択された第1のコリメートレンズ7A(または第2のコリメートレンズ7B)が伝送用光ファイバ5の出射点Pから出射されたレーザビームLBを平行光束にする位置となるように、すなわち第1のコリメートレンズ7A(または第2のコリメートレンズ7B)の中心がレーザビームLBの中心Oと合致するように、切替装置10の駆動源13に出力命令を出す。
【0036】
前記非常対応手段26は、前記検出手段14A,14Bにより検出された第1のコリメートレンズ7A(または第2のコリメートレンズ7B)の位置が、出射点Pから出射されたレーザビームLBを平行光束にする位置でない場合に、定められた非常対応措置を講じる。この実施形態では、非常対応措置として、警報器27に出力して警報を出させる。他に、レーザ加工機の運転を停止する、再度第1および第2のコリメートレンズ7A,7Bの切替動作を行う等の非常対応措置をとってもよい。
【0037】
この構成のレーザ加工機は、出射点Pから発散して出射されたレーザビームLBを第1のコリメートレンズ7A(または第2のコリメートレンズ7B)により平行光束にし、さらにこの平行光束のレーザビームLBを集光レンズ8により集光して被加工物Wに照射する。焦点位置変更機構15により、集光レンズ8の位置をレーザビームLBの光軸方向(Y軸方向)に移動させることで、レーザビームLBの焦点位置Qを変更する。
【0038】
また、切替装置10により第1および第2のコリメートレンズ7A,7Bの位置を相互に切り替えて、
図3(A),(B)のように平行光束のビーム径D1,D2を変えることで、スポット径およびレイリー長を変更する。第1のコリメートレンズ7Aを用いた
図4(A)のように、平行光束のビーム径D1が大きい場合は、スポット径S1は小さく、かつレイリー長R1は短くなる。逆に、第2のコリメートレンズ7Bを用いた
図4(B)のように、平行光束のビーム径D2が小さい場合は、スポット径S2は大きく、かつレイリー長R2は長くなる。比較のために、平行光束のビーム径が大きい場合と小さい場合の各寸法を表1に示す。
【0040】
このように、焦点位置Qの変更は集光レンズ8を光軸方向(Z軸方向)に移動させて行い、スポット径およびレイリー長の変更は第1および第2のコリメートレンズ7A,7Bを、光軸方向と垂直な方向(X軸方向)に位置切替して行う。つまり、集光レンズ8も第1および第2のコリメートレンズ7A,7Bも、動作方向はいずれも1方向である。そのため、集光レンズ8を動作させる焦点位置変更機構15、および第1および第2のコリメートレンズ7A,7Bを動作させる切替機構10の構成が簡略である。
【0041】
また、前述の特許文献2のように、出射点Pから発散して出射されたレーザビームLBを、第1および第2のコリメートレンズ7A,7Bで収束させたり発散させたりするのではなく、コリメートレンズ7A,7Bを通過したレーザビームLBは平行光束とし、そのビーム径を変えることで焦点位置Q上のスポット径S1,S2およびレイリー長R1,R2を変える。そのため、上記スポット径S1,S2およびレイリー長R1,R2を変えるための第1および第2のコリメートレンズ7A,7Bの位置切替が、集光レンズ8から出たレーザビームLBの焦点位置Qに影響せず、第1および第2のコリメートレンズ7A,7Bの位置切替に伴う集光レンズ8の位置調整が不要となる。そのため、焦点位置Q上のスポット径S1,S2およびレイリー長R1,R2の変更を簡単な構成で行える。
【0042】
図5および
図6は第2実施形態を示す。このレーザ加工機は、第1実施形態と比べて、コリメートレンズ7の数と切替機構10の構成が異なる。他は、第1実施形態と同じ構成である。
【0043】
このレーザ加工機は、平行光束のビーム径を変えるために、互いに焦点距離の異なる4個の第1、第2、第3および第4のコリメートレンズ7A,7B,7C,7Dを有する。第1〜第4のコリメートレンズ7A〜7Dは、円周方向に等配で配置され、それぞれの光軸方向(Z軸方向)の位置は、その中心をレーザビームLBの中心Oと合致させた場合に、出射点Pから出射されたレーザビームLBを平行光束にする位置とされている。
【0044】
切替装置10は、第1〜第4のコリメートレンズ7A〜7Dが取付けられ、平面形状が円形のレンズホルダ31と、このレンズホルダ31と一体に回転し、第1〜第4のコリメートレンズ7A〜7Dが配置されている円周の中心に位置する回転軸32と、この回転軸32を回転させるモータ等の回転駆動源33とで構成される。回転軸32の回転軸心32aは光軸方向(Z軸方向)に平行である。
図6は、第1のコリメートレンズ7Aの中心がレーザビームLBの中心Oと合致している状態、すなわち第1のコリメートレンズ7Aが出射点Pから出射されたレーザビームLBを平行光束にする位置である状態を示す。この状態からレンズホルダ31を左回り(矢印AR方向)に90°回転させる毎に、第2、第3,第4のコリメートレンズ7B,7C,7Dの順に平行光束にする位置となるように、第1〜第4のコリメートレンズ7A〜7Dの位置が切り替わる。
【0045】
以上のとおり、図面を参照しながらこの発明の好適な実施形態を説明したが、この発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、上記第1および第2実施形態では、コリメートレンズ7の数は、それぞれ2個および4個であるが、3個、あるいは5個以上としてもよい。したがって、そのようなものもこの発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 レーザ発振器
5 伝送用光ファイバ
7,7A,7B,7C,7D コリメートレンズ
8 集光レンズ
9 ノズル
10 切替装置
11 レンズホルダ
14A,14B 検出手段
15 焦点位置変更機構
23 記憶手段
24 選択手段
25 切替制御手段
26 非常対応手段
32a 回転軸心
LB レーザビーム
O 中心
P 出射点
Q 焦点位置
W 被加工物