(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態について、
図1〜
図6を参照して説明する。
【0023】
竪型射出成形機において、金型は、固定型及び可動型を備える。金型は、可動型を上下方向へ移動させることにより開閉する。本明細書では、可動型を固定型に接近させる向きに移動させることを「型閉じ」と称し、固定型に接近又は接触した可動型を固定型に圧接させることを「型締め」と称す。また、型締めされた可動型を固定型から離すことを「離型」と称し、離型された可動型を固定型から離間させる向きに移動させることを「型開き」と称す。
【0024】
図1〜
図3に示すように、床面上の竪型射出成形機の設置箇所11には、上面が開口した凹部からなるピット12が形成されている。ピット12は、後述する型締め機構45等と設置箇所11との干渉を回避するために形成されている。
【0025】
基台15は、竪型射出成形機の下部を構成する。基台15は、細長い形状をなしている。基台15の幅方向(
図1の左右方向)の寸法は、基台15の奥行き方向(
図2の左右方向)の寸法よりも大きい。竪型射出成形機の幅方向の中央に近づく向きを内方と称し、竪型射出成形機の幅方向の中央から遠ざかる向きを外方と称す。
【0026】
基台15は、設置面11A上において、ピット12の周りの複数の箇所に固定されている。基台15の上部中央には、取付け台(図示略)が設けられている。固定型17は、取付け台上において、位置決めピン等(図示略)により位置決めされている。固定型17は、取付け台上に対して脱着可能に取付けられている。固定型17は、略直方体状をなしている。固定型17の上部には、成形部18が形成されている。
【0027】
図6に示すように、固定型17の四隅には、上下方向に延びる取付け孔19がそれぞれ形成されている。各取付け孔19には、上下方向に延びる棒状のガイドポスト21が挿入されている。ガイドポスト21の下部は、固定型17の少なくとも下部に挿入されている。ガイドポスト21は、固定型17に係止されている。各ガイドポスト21は、固定型17の下面付近まで挿入されているが、固定型17を貫通してもよい。各ガイドポスト21の下部を除く部分は、固定型17よりも上側に露出している。
【0028】
固定型17の上側には、可動型22が配置されている。可動型22は、固定型17と同様、略直方体状をなしている。可動型22の下部には、成形部23が形成されている。可動型22において各取付け孔19と対応する位置には、可動型22を上下方向に貫通する挿通孔24が形成されている。各ガイドポスト21の露出部分は、対応する挿通孔24に挿通されている。可動型22が固定型17に接触した状態で、各ガイドポスト21の上部は、可動型22よりも上側に露出している。ガイドポスト21は、可動型22の昇降時に、可動型22を上下方向に案内する。
【0029】
図3に示すように、可動型22の上端部には、天板部25が取り付けられている。天板部25には、可動型22よりも外方に張り出した部分が張出し部26として形成されている。張出し部26は、奥行き方向の中央部に切欠き部27を有している。
【0030】
図6に示すように、固定型17、可動型22及びガイドポスト21は、基台15に脱着される。この脱着は、可動型22を固定型17に接触させた状態、即ち固定型17、可動型22及びガイドポスト21を一体化した状態で行なわれる。この場合、クレーン等によって、固定型17、可動型22及びガイドポスト21が一緒に吊り上げられて移動される。固定型17、可動型22及びガイドポスト21は、基台15の上方にて吊下げられた状態で、基台15に対し昇降させられる。
【0031】
可動型22は、固定型17に接触する型閉じ位置(
図4参照)と、固定型17から上方へ大きく離れた型開き位置(
図1参照)との間で昇降する。可動型22が型閉じ位置まで下降されると、固定型17及び可動型22間にキャビティ28が形成される。キャビティ28は、両成形部18,23からなる空間である。
【0032】
図1〜
図3に示すように、前記取付け台の幅方向の外側部には、可動型駆動部31が取り付けられている。可動型駆動部31は、取付け台32を備えている。各取付け台32の略中央には、ボールねじ軸33の下端部が、軸受34を介して回転可能に支持されている。各取付け台32には、サーボモータ等のモータ35が取付けられている。モータ35の出力軸は、ボールねじ軸33に連結されている。各取付け台32上の離間した2箇所には、上下方向に延びるガイドバー36の下端部がそれぞれ固定されている。
【0033】
図5に示すように、ボールねじ軸33はボールナット37に螺合され、両ガイドバー36は可動部材38に挿通されている。この構成により、可動部材38は、両ガイドバー36に沿って昇降可能である。ボールナット37及び可動部材38は相互に連結されている。可動部材38により、ボールナット37の回転が規制されている。そのため、各モータ35によりボールねじ軸33が回転すると、ボールナット37は、可動部材38と共に上下動する。
【0034】
各可動型駆動部31は、可動部材38の両側部のそれぞれに型脱着部39を備えている。両型脱着部39は、可動部材38に対して幅方向に移動可能である。各型脱着部39の内側には、切欠き部41が形成されている。各型脱着部39は、切欠き部41内に可動型22の張出し部26が入り込む位置まで移動すると、可動型22に装着される。この状態でモータ35によりボールねじ軸33が回転すると、両型脱着部39は可動型22と共に昇降する。一方、各型脱着部39は、少なくとも切欠き部41から張出し部26が抜け出る位置まで移動すると、可動型22から取り外される。
【0035】
図5の二点鎖線で示すように、ボールねじ軸33等は、固定型17及び可動型22等の脱着時の昇降経路上に位置するため、固定型17及び可動型22等の昇降動作を妨げる虞がある。このため、可動型駆動部31には、固定型17及び可動型22等の脱着時に各可動型駆動部31を後退させるための一対の第1移動機構42が設けられている。
【0036】
図3に示すように、各第1移動機構42は、一対のスライドガイド43を備えている。両スライドガイド43は、互いに離間した状態で幅方向へ延びている。両スライドガイド43は、取付け台32に係合されている。スライドガイド43は、可動型駆動部31の2位置間での移動を案内する。2位置のうちの一方は、各可動型駆動部31の少なくとも一部が固定型17及び可動型22の昇降経路上に配置される「前進位置」(
図3の実線及び
図5の二点鎖線参照)であり、他方は、可動型駆動部31の全体が昇降経路から外れて配置される「後退位置」(
図3の二点鎖線及び
図5の実線参照)である。「前進位置」は、固定型17及び可動型22の非脱着時に金型の型閉じ及び型開きが行なわれるときの各可動型駆動部31の位置である。
図3に示すように、「前進位置」では、ボールねじ軸33が、可動型22の切欠き部27に入り込む。即ち、各ボールねじ軸33が、固定型17及び可動型22の昇降経路上に配置される。「後退位置」は、固定型17及び可動型22の脱着時に配置される各可動型駆動部31の位置である。
【0037】
各第1移動機構42は、各取付け台32に連結されたアクチュエータを備えている。アクチュエータとして、幅方向へ延びる油圧シリンダ44が用いられている。可動型駆動部31は、油圧シリンダ44が伸長すると「前進位置」に移動し、油圧シリンダ44が収縮すると「後退位置」に移動する。
【0038】
図1〜
図3に示すように、固定型17には、複数の型締め機構45が設けられている。型締め機構45は、両可動型駆動部31により固定型17に接近又は接触した可動型22を固定型17に圧接させて締付ける。型締め機構45は、固定型17及び可動型22の両側部に沿って並んで配置されている。可動型22の固定型17に対する圧接は、溶融樹脂が射出されてから固化するまでの期間、溶融樹脂の射出圧力により可動型22が固定型17から離れないようにするために行なわれる。型締め機構45として、特開2008−105391号公報に記載された型締め機構、特開2010−149433公報に記載された型締め機構等が挙げられる。
【0039】
いずれのタイプの型締め機構45も、シャフト46、係合部47及び被係合部29を備えている。各シャフト46は、固定型17を上下方向に貫通する貫通孔20(
図6参照)に挿通されている。係合部47は、シャフト46の少なくとも一部に設けられシャフト46と共に回転する。係合部47は、シャフト46の上端部に設けられている。各シャフト46は、モータ48等のアクチュエータによって係合部47と共に回転する。
【0040】
被係合部29は、可動型22において貫通孔20と同軸線上に設けられている。可動型22が固定型17と接触した状態で各モータ48により各シャフト46が回転すると、シャフト46と共に係合部47が回転して、被係合部29に係合される。このとき、可動型22を固定型17に接近させる向きに作用しかつ係合部47及び被係合部29の係合に伴いに発生する型締め力、又は可動型22を固定型17に接近させる向きに作用しかつ係合部47及び被係合部29の係合後にシャフト46に印加される型締め力によって、可動型22が固定型17に圧接される。
【0041】
前者のタイプの型締め機構45では、シャフト46の外周面に形成された雄ねじ部が係合部47として構成される。また、可動型22の下面において貫通孔20と同軸線上に組付けられた雌ねじ部が被係合部29として構成される。この種の型締め機構45では、各シャフト46がモータ48によって回転すると、係合部47が被係合部29に螺入する。これにより、型締め力が発生し、可動型22が固定型17に圧接される。
【0042】
これに対し、後者の型締め機構45では、シャフト46の外周面に形成された複数の係合山によって係合部47が構成される。各係合山は、シャフト46の軸線方向に一定間隔で設けられ、かつシャフト46の周方向に一定の長さを有している。また、可動型22の下端部には、挿入穴が形成されている。挿入穴の内周面には、複数の係合溝が被係合部29として構成されている。各係合溝は、挿入穴の軸線方向に一定間隔で設けられ、かつ挿入穴の周方向に一定の長さを有している。挿入穴の内形形状は、シャフト46の外形形状と一致している。
【0043】
各係合部47と各被係合部29とが軸線周りに互い違いに配置されるよう、各シャフト46の上端部が挿入穴に挿入される。そして、各シャフト46がモータ48により所定角度(例えば60°)回転すると、係合部47が被係合部29に係合する。この場合、後述する流体圧ワッシャ51により発生する力が、型締め力としてシャフト46に対し印加される。型締め力により、可動型22が固定型17に圧接される。第1実施形態では、後者のタイプの型締め機構45が用いられている。
【0044】
さらに、いずれのタイプの型締め機構45も、モータ48とは別に、係合部47を被係合部29に係合させたシャフト46に型締め力を印加するためのアクチュエータを備えている。これにより、可動型22を固定型17に圧接させるのに要する軸力の一部が、アクチュエータによって補われる。
【0045】
アクチュエータは、シリンダ及びピストンを備えた流体圧ワッシャ51によって構成されている。流体圧ワッシャ51は、特開2008−105391号公報に記載された油圧ワッシャと同様の構成を有している。ピストンは、シャフト46に固定された状態でシリンダ内にて上下動可能に収容されている。ピストンは、シリンダの内部を上下2つの流体圧室に区画している。上側の流体圧室は型締め用流体圧室であり、シャフト46に型締め力を印加する際には、型締め用流体圧室に作動流体が供給される。
【0046】
モータ48により係合部47が被係合部29に係合した後、流体圧ワッシャ51の型締め用流体圧室に作動流体が供給される。このとき、ピストンには、型締めするように作動流体の圧力が加えられる。このため、シャフト46には、ピストンを通じて型締め力が加えられる。これにより、可動型22が固定型17に圧接されて、型締めが行なわれる。このように、シリンダ及びピストン等の簡素な構成により、シャフト46に対し型締め力が加えられる。
【0047】
シャフト46は、固定型17、可動型22及びガイドポスト21が基台15に脱着される際の昇降経路上に位置している。そのため、シャフト46が、固定型17等の昇降を妨げる虞がある。固定型17、可動型22及びガイドポスト21は、基台15に脱着される際、クレーン等によって吊下げられて昇降する。そのため、貫通孔20等にシャフト46を挿入させるべく固定型17等を下降させたり、シャフト46に外力を加えずに固定型17等を上昇させたりすることは難しい。
【0048】
そこで、竪型射出成形機には、第2移動機構52が設けられている。第2移動機構52は、基台15に固定型17等を脱着するとき、固定型17等の昇降の妨げない位置まで各型締め機構45を後退させる。第2移動機構52は、全ての型締め機構45を上下方向の2位置間で移動させる。2位置のうちの一方は、各型締め機構45の少なくとも一部(シャフト46)が固定型17及び可動型22の昇降経路上に配置される「前進位置」(
図1参照)であり、他方は、各型締め機構45の全体が昇降経路から外れて配置される「後退位置」(
図5参照)である。「前進位置」は、固定型17及び可動型22の非脱着時に金型の型閉じ及び型開きが行なわれるときの各型締め機構45の位置である。「前進位置」では、シャフト46が、係合部47を露出させた状態で、ピット12の上方で固定型17の貫通孔20に挿通されている。即ち、シャフト46が、固定型17及び可動型22の昇降経路上に配置される。「後退位置」は、固定型17及び可動型22が脱着時に配置される各型締め機構45の位置である。
【0049】
第2移動機構52は、各型締め機構45に連結されたアクチュエータを備えている。アクチュエータとして、第1実施形態では、上下方向に延びる油圧シリンダ53が用いられている。各型締め機構45は、油圧シリンダ53が伸長すると「前進位置」に移動し、油圧シリンダ53が収縮すると「後退位置」に移動する。各型締め機構45の「前進位置」から「後退位置」への移動は、ピット12内で行なわれる。なお、アクチュエータとしての油圧シリンダ53に代えて、モータを用いてもよい。
【0050】
図2及び
図3に示すように、固定型17の背面側には、固定型17と可動型22との間に形成されるキャビティ28に溶融樹脂を射出する3つの射出機55が配置されている。
図2及び
図3は、射出機55のノズル56の部分を二点鎖線で示す。
【0051】
次に、上記の竪型射出成形機の作用について
図1を参照して説明する。
【0052】
図1に示すように、固定型17が基台15上に取付けられ、複数の型締め機構45が基台15下部に設けられている。これにより、固定型17及び型締め機構45が、基台15によって下側から支持されている。また、ボールねじ軸33も、基台15(取付け台32)によって下側から支持されている。そのため、特許文献1に記載される構成とは異なり、固定型、型締め機構、ボールねじ軸等を上側から支持する必要がない。よって、第1実施形態によれば、門型フレームが不要であるにも拘わらず、門型フレームを用いた場合と同様に、固定型17、各型締め機構45及び各ボールねじ軸33を支持することができる。
【0053】
また、各可動型駆動部31は、型脱着部39を可動型22に対し側方から脱着させると共に型脱着部39の上下動により可動型22を昇降させるように構成されている。そのため、特許文献1に記載の構成とは異なり、可動型を下側から可動台により受け止めると共に可動台を可動型駆動部31により昇降させる必要がない。よって、可動台が不要であるにも拘らず、可動台を用いた場合と同様に可動型22を昇降させることができる。
【0054】
また、可動型22の昇降を案内するためのガイドポスト21を、固定型17とは異なる箇所に設けることもできる。仮に、ガイドポスト21の下端部のみを基台15等に固定した場合、例えば、基台15に対するガイドポスト21の挿入量が少ない場合、ガイドポスト21の姿勢が不安定になる虞がある。この場合、ガイドポスト21を下端部だけでなく、下端部以外の上端部等でも固定する必要があり、結果として、竪型射出成形機の構造が複雑化する虞がある。この点、第1実施形態によれば、ガイドポスト21の下部が固定型17の下端面近くまで挿入されるため、固定型17に固定されたガイドポスト21の姿勢が安定化する。このため、ガイドポスト21の上端部を固定するための構造が不要となる。
【0055】
次に、竪型射出成形機の動作について
図1〜
図5を参照して説明する。
【0056】
図1及び
図2は、型開きされた状態の竪型射出成形機を示す。この状態では、全ての型締め機構45が、第2移動機構52により「前進位置」に保持されている。シャフト46は、固定型17の貫通孔20に挿通されている。係合部47は、固定型17の上面から露出している。各シャフト46は、係合部47と可動型22の被係合部29とをシャフト46の軸線周りに互い違いにして保持されている。流体圧ワッシャ51の両流体圧室の流体圧はいずれも低下している。
【0057】
また、各可動型駆動部31は、第1移動機構42により「前進位置」に保持されている。
図3の実線に示すように、ボールねじ軸33は、可動型22の切欠き部27に入り込んでいる。両型脱着部39は、ボールねじ軸33の上方に位置している。両型脱着部39の切欠き部41内には、可動型22の張出し部26が入り込んでいる。こうして、型脱着部39が可動型22に装着されている。
【0058】
上記の状態から金型を「型閉じ」するため、モータ35により各ボールねじ軸33を回転させる。
図5に示すように、ボールナット37は、両ガイドバー36に沿って昇降する可動部材38に連結されている。これにより、ボールナット37の回転が規制されている。このため、各ボールねじ軸33の回転運動は、ボールナット37により下方へ向かう直線運動に変換される。ボールナット37は、可動部材38と共にボールねじ軸33に沿って下動する。ボールナット37の下動は、型脱着部39を介して可動型22に伝達される。その結果、可動型22は、ガイドポスト21により水平方向の動きを規制されながら下降する。型脱着部39及び可動型22の下降に伴い、可動型22と固定型17との間隔は次第に狭まる。また、可動型22の被係合部29が係合部47に接近する。
【0059】
可動型22が更に下降すると、シャフト46の上端部が可動型22の挿入穴に挿入される。この際、上述したように、係合部47と、可動型22の被係合部29とが、シャフト46の軸線周りにおいて互い違いとなっていることから、シャフト46の挿入がスムーズに行なわれる。そして、
図4に示すように、可動型22が固定型17に接触した時点で、各モータ35の作動が停止する。これにより、各ボールねじ軸33の回転が停止し、各型脱着部39の下降が停止する。この状態で、固定型17及び可動型22間には、キャビティ28が形成される。
【0060】
次に、型締め機構45のモータ48が作動して、シャフト46が所定角度(例えば、60°)回転する。これにより、係合部47と被係合部29とが合致し係合部47が被係合部29に係合されるため、シャフト46の上端部が可動型22に連結される。この連結状態で、流体圧ワッシャ51の型締め用流体圧室に作動流体が供給される。型締め用流体圧室の流体圧が上昇して、ピストンには下向きに作用する力が加えられ、シャフト46にもピストンと同方向の力が加えられる。これにより、可動型22が固定型17に圧接されて、型締めが行なわれる。
【0061】
その後、各射出機55のノズル56から溶融樹脂が射出される。射出された溶融樹脂は、キャビティ28内に供給されて、充填される。この際、各型締め機構45により可動型22が固定型17に圧接されているため、溶融樹脂の射出圧力により可動型22は固定型17から離間しない。キャビティ28内の溶融樹脂は、冷却及び固化されて所望の成形品に形成される。成形品の形成後は、上記一連の動作とは逆の動作が行なわれる。まず、流体圧ワッシャ51の型締め用流体圧室から作動流体が排出される。これにより、型締め用流体圧室の流体圧が低下して流体圧ワッシャ51による軸力が減少するため、型締めが解除される。
【0062】
次に、シャフト46と可動型22との連結状態が解除される。即ち、モータ48が作動して、シャフト46が型締め時とは逆方向に所定角度(60°)回転する。これにより、係合部47と被係合部29とがシャフト46の軸線周りに互い違いとなり、係合部47と被係合部29との係合が解除される。これにより、シャフト46の上端部と可動型22との連結が解除され、可動型22は上方へ移動し、固定型17から離間する。
【0063】
その後、モータ35が作動して、ボールねじ軸33が可動型22の下降時とは反対方向に回転する。ボールナット37は、両ガイドバー36に沿って昇降する可動部材38に連結されている。これにより、ボールナット37の回転が規制されている。そのため、各ボールねじ軸33の回転運動は、ボールナット37により上方へ向かう直線運動に変換される。ボールナット37は、可動部材38と共にボールねじ軸33に沿って上動する。ボールナット37の上動は、型脱着部39を介して可動型22に伝達される。その結果、可動型22は、ガイドポスト21により水平方向の動きを規制されながら上昇する。そして、可動型22が固定型17から離型する。その後、型脱着部39及び可動型22の上昇に伴い、可動型22と固定型17との間隔は次第に拡がる。また、可動型22の被係合部29は上方に移動して、係合部47から遠ざかる。尚、成形部18,23のいずれか一方に密着した成形品は、突出し機構(図示略)により成形部18,23から突き出されて、固定型17及び可動型22間から取出される。
【0064】
ところで、固定型17及び可動型22を交換するため固定型17及び可動型22が基台15に脱着されるとき、次の操作及び動作が行なわれる。
【0065】
各型締め機構45では、油圧シリンダ53が収縮する。これにより、
図5に示すように、各型締め機構45が「前進位置」から「後退位置」に移動して、ピット12内に入り込む。こうした各型締め機構45の移動に伴い、シャフト46が下動して、固定型17の貫通孔20から抜け出る。各型締め機構45が「後退位置」まで移動すると、各型締め機構45の全体が、固定型17及び可動型22の昇降経路から外れて配置される。
【0066】
また、各可動型駆動部31の型脱着部39は、少なくとも切欠き部41から張出し部26が抜け出る位置まで外方に移動する。これにより、各型脱着部39が可動型22から取り外される。そして、油圧シリンダ44が収縮して、各可動型駆動部31が、
図3に示すスライドガイド43上を「前進位置」から「後退位置」へと移動する。これにより、ボールねじ軸33が外方に移動して、切欠き部27から抜け出る。可動型駆動部31が「後退位置」まで移動すると、可動型駆動部31の全体が固定型17及び可動型22の昇降経路から外れて配置される。
【0067】
このようにして、基台15上では、固定型17及び可動型22の昇降経路上から、各型締め機構45及び各可動型駆動部31が退避する。そのため、樹脂成形に使用していた固定型17及び可動型22等をクレーンで吊り上げて、型締め機構45及び可動型駆動部31と干渉させずに基台15から取り外すことができる。また、新たな固定型17及び可動型22等をクレーンで吊下げて、型締め機構45及び可動型駆動部31と干渉させずに基台15上に設置することもできる。
【0068】
従って、第1実施形態によれば、次の効果を得ることができる。
【0069】
(1)固定型17上には、可動型22が配置されている。可動型22は、一対の可動型駆動部31により昇降する。また、基台15下部には、複数の型締め機構45が設けられている。型締め機構45は、可動型22を固定型17に圧接させる。そして、複数の射出機55は、固定型17及び可動型22間に形成されるキャビティ28に溶融樹脂を射出する。この構成によれば、固定型や型締め機構を上側から支持する門型フレームが不要となる。そのため、竪型射出成形機の構造が簡略化される。
【0070】
(2)可動型駆動部31は、可動型22に側方から脱着される型脱着部39を備えている。可動型22に取付けられた型脱着部39を上下動させることで、可動型22が昇降する。この構成によれば、可動型22の昇降のために可動型22を下側から支える可動台が不要となる。よって、竪型射出成形機の構造が更に簡単化される。
【0071】
(3)可動型駆動部31は、ボールねじ軸33及びボールナット37を備えている。ボールねじ軸33は、基台15の取付け台32に下側から支持されている。また、型脱着部39は、可動部材38を介してボールナット37に取り付けられている。この構成によれば、ボールねじ軸33が下側から支持されている。この点からも、門型フレームが不要となるため、竪型射出成形機の構造が更に簡略化される。
【0072】
(4)第1移動機構42は、可動型駆動部31の少なくとも一部が固定型17及び可動型22の昇降経路上に配置される「前進位置」と、可動型駆動部31の全体が昇降経路から外れて配置される「後退位置」との間で、可動型駆動部31を移動させる。固定型17及び可動型22の非脱着時(金型の開閉時)には各可動型駆動部31が「前進位置」に保持され、固定型17及び可動型22の脱着時には可動型駆動部31が「後退位置」に移動する。そのため、固定型17及び可動型22を基台15に脱着する際、固定型17及び可動型22と両可動型駆動部31との干渉が抑制される。よって、固定型17及び可動型22の脱着作業が容易となる。
【0073】
(5)4本のガイドポスト21により、可動型22の昇降がガイドされる。各ガイドポスト21の下部は、固定型17に上方から挿入されて、固定型17の下面近くまで挿入される。こうして、各ガイドポスト21は、固定型17に対し上下動不能に係止される。また、各ガイドポスト21の固定型17よりも上側部分は、可動型22の挿通孔24に挿通されている。これにより、各ガイドポスト21を安定した状態で固定型17に固定することができる。このため、各ガイドポスト21の上端部を固定するための構成が不要となり、竪型射出成形機の構造が簡略化される
(6)シャフト46の少なくとも一部に、係合部47(係合山)が形成されている。シャフト46は、固定型17の貫通孔20に挿通されると共に回転可能に支持される。シャフト46は、モータ48によって回転する。一方、可動型22の貫通孔20と同軸線上には、可動型22と固定型17とを接触させた状態でシャフト46の回転により係合部47に係合される被係合部29が形成されている。係合部47が被係合部29に係合した後、流体圧ワッシャ51により、シャフト46に型締め力(下向きの力)を印加することで、可動型22を固定型17に圧接させて型締めすることができる。
【0074】
(7)第2移動機構52は、型締め機構45の少なくとも一部(シャフト46)が固定型17及び可動型22の昇降経路上に配置される「前進位置」と、型締め機構45の全体が昇降経路から外れて配置される「後退位置」との間で、各型締め機構45を移動させる。そして、固定型17及び可動型22の非脱着時には各型締め機構45が「前進位置」に保持され、固定型17及び可動型22の脱着時には各型締め機構45が「後退位置」に移動する。この構成によれば、固定型17及び可動型22を基台15に脱着する際に、固定型17及び可動型22と各型締め機構45との干渉が抑制される。よって、固定型17及び可動型22の脱着作業が容易となる。
【0075】
(8)竪型射出成形機では、各型締め機構45を「前進位置」から「後退位置」に移動させるとき、各型締め機構45と設置箇所11とが干渉しないようにする必要がある。これに関し、ピット12を設けずに竪型射出成形機の設置箇所11を平坦にしてもよいが、竪型射出成形機の高くなり過ぎて操作性が良くないとの問題や、重心が高くなって安定的に設置できないとの問題が生じる。この点、第1実施形態によれば、設置箇所11にピット12を設けることで、上記のような問題を解消することができる。
【0076】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について、
図7を参照して説明する。第2実施形態は、可動型駆動部31を「前進位置」と「後退位置」との間で移動させる第1移動機構42を有しない点で、第1実施形態と異なる。よって、第1実施形態で説明したものと同様の要素について同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
図7に示すように、可動型22の上端部には、外方に張り出した張出し部26が設けられている。同様に、固定型17の下端部にも、外方に張り出した張出し部61が設けられている。両張出し部26,61には、ボールねじ軸33が挿通されている。ボールねじ軸33は、張出し部26の下面に取付けられたボールナット37に螺合されている。また、ボールねじ軸33は、張出し部61の上面に取付けられた軸受34によって回転可能に支持されている。ボールねじ軸33の下端部33Lは、張出し部61よりも下方へ突出している。下端部33Lは、六角柱状に形成されている。
【0078】
ボールねじ軸33の下方には、回転伝達部材62が配置されている。回転伝達部材62は、基台(図示略)に対し回転可能に支持されている。回転伝達部材62は、六角穴63を有する頭部64と、頭部64と共に回転しかつ下方に延びる軸部65とを備えている。軸部65の下端部には、プーリ66が取り付けられている。回転伝達部材62は、軸部65の軸線に沿って移動可能である。軸部65の外周には、弾性部材としてのコイルばね67が装着されている。回転伝達部材62の側方には、軸部65と平行な出力軸69を有するモータ68が配置されている。出力軸69上には、プーリ71が取付けられている。両プーリ66,71には、伝動ベルト72が巻き掛けられている。
【0079】
第2実施形態によれば、固定型17及び可動型22等を下降させて基台に組付ける際、ボールねじ軸33が回転伝達部材62に接近する。この場合、固定型17及び可動型22等を下降させるには、第1実施形態と同様にクレーンを用いてもよく、アクチュエータを用いてもよい。このとき、ボールねじ軸33の下端部33Lの回転位相と回転伝達部材62の六角穴63の回転位相とを一致させれば、下端部33Lが六角穴63に嵌合する。そうでなければ、ばね67の付勢力に抗して、ボールねじ軸33により回転伝達部材62が押下げられる。モータ68の作動により回転伝達部材62が回転しかつ六角穴63及び下端部33Lの各回転位相が一致すると、ばね67によって回転伝達部材62が押上げられて、六角穴63が下端部33Lに嵌合する。この嵌合により、ボールねじ軸33と回転伝達部材62とが連結される。
【0080】
可動型22の昇降時には、モータ68が作動する。これに伴い、出力軸69の回転が、プーリ71、伝動ベルト72、プーリ66及び回転伝達部材62を通じてボールねじ軸33に伝達される。ボールナット37の回転は、可動型22の張出し部26により規制されている。そのため、ボールねじ軸33の回転運動が、ボールナット37を介して直線運動に変換される。可動型22には、固定型17よりガイドポスト21が挿通されている。ボールナット37は、可動型22と共にガイドポスト21に沿って昇降する。
【0081】
固定型17及び可動型22の交換時には、固定型17及び可動型22が上昇する。これにより、ボールねじ軸33の下端部33Lが回転伝達部材62の六角穴63から抜け出るため、ボールねじ軸33と回転伝達部材62との連結が解除される。
【0082】
従って、第2実施形態によれば、上述した(1),(3),(5)〜(8)の効果に加え、第1移動機構42が不要となる。
【0083】
なお、上記各実施形態を以下のように変更してもよい。
【0084】
・各可動型駆動部31のボールねじ軸33に代えて、油圧シリンダを用いてもよい。
【0085】
・雄ねじを係合部47とし雌ねじを被係合部29とする型締め機構45を次のように変更してもよい。雌ねじ部(被係合部29)は、貫通孔20と同軸線上であれば、可動型22の下端部を含む広い領域に設けてもよい。また、可動型22の貫通孔20と同軸線上に孔又は穴を設け、孔又は穴の中間部分に雌ねじ部(被係合部29)を設けてもよい。
【0086】
・流体圧ワッシャ51を省略してもよい。この場合、シャフト46の回転による伸びのみによって軸力を発生させる必要がある。よって、流体圧ワッシャ51を用いる場合よりも大型のモータ48が必要となる。
【0087】
・ガイドポスト21の下部が固定型17の少なくとも下部まで挿入されるのであれば、ガイドポストの挿入位置を、上記各実施形態とは異なる位置に変更してもよい。この場合であっても、固定型17に固定されたガイドポスト21の姿勢が安定化する。
【0088】
・ガイドポスト21の数や、ガイドポスト21の固定型17に対する取付位置を、上記各実施形態とは異なる数や位置にそれぞれ変更してもよい。射出機55の数や取付位置についても、同様に変更してもよい。
【0089】
・油圧シリンダ44に代えて、空圧シリンダを用いてもよい。