(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワークを支持するワーク支持手段と工具を支持する工具支持手段とを、固定基台上に互いに切り込み方向に沿って相対的に進退可能に設置し、前記ワーク支持手段と工具支持手段とを相対的に進退させる移動機構を設けた工作機械において、
前記ワーク支持手段の中心相当位置と工具支持手段の刃先相当位置との間の、前記切り込み方向の距離であるワーク中心・刃先間距離の変位量を計測する変位計測手段を設け、
この変位計測手段は、前記ワークおよび工具が相対移動する加工移動領域を避けた前記ワーク支持手段の中心相当位置と刃先相当位置間の連続した経路上に設けられてこの連続した経路の変位量を計測することにより、ワーク中心・刃先間距離の変位量を計測し、
前記変位計測手段は、前記固定基台よりも熱膨張係数の低い低熱膨張材からなり前記連続した経路上に位置して前記固定基台に設置された基準フレームと、前記切り込み方向に延びるスケールおよびこのスケールを読む読取ヘッドを有しこれらスケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームに設けられた直線位置検出手段とでなる工作機械。
前記基準フレームが、前記ワーク支持手段の中心の軸心に沿う方向に延びる軸心方向フレーム部と前記軸心と直交する方向に延びる直交方向フレーム部とを有し、前記直線位置検出手段として、前記ワーク支持面の中心相当位置と前記基準フレームとの間の変位量を計測するワーク側の直線位置検出手段と、前記刃先相当位置と前記基準フレームとの間の変位量を計測する工具側の直線位置検出手段とを有する請求項1記載の工作機械。
前記工具支持手段が前記固定基台上に位置固定に設置され、前記ワーク支持手段が、前記固定基台上で前記軸心と直交する方向に移動する送り台上に、前記軸心に沿う方向に移動可能に設置され、
前記ワーク側の直線位置検出手段は、前記スケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームの前記直交方向フレーム部に設けられ、他方が前記送り台に設けられ、
前記工具側の直線位置検出手段は、前記スケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームの前記軸心方向フレーム部に設けられ、他方が前記工具支持手段に設けられた請求項2記載の工作機械。
前記ワーク支持手段が前記固定基台上に位置固定に設置され、前記工具支持手段が、前記固定基台上で前記軸心と直交する方向に移動する送り台上に、前記軸心に沿う方向に移動可能に設置され、
前記ワーク側の直線位置検出手段は、前記スケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームの前記直交方向フレーム部に設けられ、他方が前記ワーク支持手段に設けられ、
前記工具側の直線位置検出手段は、前記スケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームの前記軸心方向フレーム部に設けられ他方が前記工具支持手段に設けられた請求項2記載の工作機械。
前記ワーク支持手段が前記固定基台上に前記軸心と直交する方向に移動自在に設置され、前記工具支持手段が、前記固定基台上で前記軸心に沿う方向に移動自在に設置され、
前記ワーク側の直線位置検出手段は、前記スケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームの前記直交方向フレーム部に設けられ、他方が前記ワーク支持手段に設けられ、
前記工具側の直線位置検出手段は、前記スケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームの前記軸心方向フレーム部に設けられ他方が前記工具支持手段に設けられた請求項2記載の工作機械。
前記ワーク支持手段が前記固定基台上に前記軸心に沿う方向に移動自在に設置され、前記工具支持手段が、前記固定基台上で前記軸心と直交する方向に移動自在に設置され、
前記ワーク側の直線位置検出手段は、前記スケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームの前記直交方向フレーム部に設けられ、他方が前記ワーク支持手段に設けられ、
前記工具側の直線位置検出手段は、前記スケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームに設置され他方が前記工具支持手段に設けられた請求項2記載の工作機械。
前記移動機構を制御する制御装置を設け、この制御装置は、前記ワーク支持手段と工具支持手段とを前記軸心と直交する方向に相対的に進退させるモータを制御するX軸の移動制御手段と、加工プログラムの移動命令の指令値により前記X軸の移動制御手段へ指令値を与える演算制御部とを有し、前記演算制御部に、前記変位計測手段の変位量の計測値によって前記X軸の移動制御手段へ与える指令値を補正する補正手段を有する請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の工作機械。
【背景技術】
【0003】
旋盤等の工作機械において、刃物台の送りや、主軸移動型旋盤における主軸台の送りの制御には、フィードバック制御系のあるクローズドループ制御が用いられる。通常は、サーボモータに付属のパルスコーダを利用したセミクローズドループ方式が採られるが、高精度な位置決めのために、刃物台等の位置をリニアエンコーダ等の直線位置検出手段で直接に読み取って制御するフルクローズドループ方式が採用されることがある。
【0004】
また、工作機械では、切削熱や機械運転に伴う各部位の発熱のために、ベッドや他の部位の熱膨張、熱変形が生じる。このような熱膨張,熱変形は、加工精度の低下に繋がる。冷却装置を装備してその対策とするものもあるが、熱膨張を十分に抑えるには、冷却装置が大掛かりとなり、また冷却だけでは加工精度を確保することができない。
【0005】
そのため、従来より、温度を計測することで、機械全体の熱変位を推測し、工具の切り込み量等の熱変位補正を行なうものが種々提案されている。しかし、温度から変位を推測する場合、温度から変位に計算する段階で時間遅れ等の複雑な計算が必要となる。温度変化には種々の要因があり、温度の計測値から精度良く熱変位補正を行うことが難しい。そのため、リニアスケール等で実際の熱変位を計測し、補正するものも提案されている。
【0006】
例えば特許文献1に記載の工作機械は、
図8に示すように、主軸台51がベッド52上に位置固定され、刃物台53を搭載した送り台54が主軸半径方向(X軸方向)に移動可能に設けられた旋盤であり、主軸台51に取付けられ主軸半径方向に延びるスケール55を、送り台54に取付けられた読取部56で読み取ることにより、刃物台53の主軸半径方向における位置を計測する。この刃物台53の主軸半径方向位置の計測値は、熱変位等により変化する。そこで、計測値に応じて刃物台53の工具57の切り込み量等を補正することで、常に適正な加工精度を確保する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のように、主軸台51と送り台54との相対位置だけを計測するのでは、送り台54に対する刃物台53の熱変位が生じた場合に、主軸軸心と工具の間の距離に誤差が生じる。
【0009】
従来のフルクローズドループ方式の制御は、例えば刃物台移動型の旋盤では、刃物台の移動をリニアエンコーダ等の直線位置計測器で直接に読み取って制御を行うが、直線位置計測器の取付箇所に熱変位が生じた場合、高精度な制御が行えなくなる。そのため熱変位補正を行う手段を別に設ける必要がある。
【0010】
ワークの加工寸法は、ワーク中心と工具の刃先との間の距離によって定まるため、この距離を直接に検出できれば、精度良く加工することができる。しかし、ワーク中心と工具の刃先との間の距離を直接に計測することは、計測手段がワークや工具に干渉することになるため、実現することができない。
【0011】
この発明の目的は、ワーク中心と工具の刃先間の変位を、直接に計測する形態にできるだけ近い形態で計測できて、加工精度の向上を図ることができる工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明のレーザ加工機を実施形態に用いた符号を付して説明する。この発明の工作機械は、ワークを支持するワーク支持手段と工具を支持する工具支持手段とを、固定基台上に互いに切り込み方向に沿って相対的に進退可能に設置し、前記ワーク支持手段と工具支持手段とを相対的に進退させる移動機構を設けた工作機械において、
前記ワーク支持手段の中心相当位置(Xw)と工具支持手段の刃先相当位置(Xt)との間の前記切り込み方向の距離であるワーク中心・刃先間距離(L)の変位量を計測する変位計測手段(30)を設け、
この変位計測手段(30)は、前記ワークおよび工具が相対移動する加工移動領域(E)を避けた前記ワーク支持手段の中心相当位置(Xw)と刃先相当位置(Xt)間の連続した経路(C)上に設けられてこの連続した経路(C)の変位量(ΔL,ΔL1,ΔL2)を計測することにより、前記ワーク中心・刃先間距離(L)の変位量(ΔL)を計測することを特徴とする。
【0013】
なお、上記の「ワーク支持手段の中心相当位置(Xw)」とは、変位量の計測方向において、ワーク支持手段の中心と見なせる位置であり、変位量の計測方向と直交する方向に対して離れていても良い。しかし、ワーク支持手段の中心相当位置(Xw)は、変位量の計測方向にはワーク支持手段の中心にあって、かつワーク支持手段上にあるか、またはワーク支持手段と一体に前記直交方向に移動する部材上にある。また、「刃先相当位置(Xt)」とは、変位量の計測方向において、多少の位置の違いあっても良いが、刃先の位置に近くて、熱変位の影響については刃先位置を計測するのと同等に扱える位置を言う。
【0014】
この構成によると、前記変位計測手段(30)は、ワーク支持手段の中心相当位置(Xw)と刃先相当位置(Xt)間の連続した経路(C)上にあってこの連続した経路(C)の変位量(ΔL,ΔL1,ΔL2)を計測する。このため、迂回した経路上での計測とはなるが、工作機械の制御上の限度を考慮した実質上、ワーク中心と工具の刃先間の変位量を直接に計測する場合と同等の計測が行える。このように、主軸軸心に直交する方向のワーク中心と工具の刃先間の変位量を、直接に計測する場合と同等に計測できるため、切り込み方向についての加工精度を向上させることができる。
【0015】
また、前記の変位量を計測する前記の連続した経路(C)は、加工のための前記ワーク支持手段と工具支持手段の相対移動によって前記ワークおよび前記工具が相対移動する加工移動領域(E)を避けた経路であるため、ワークや工具との干渉を避けて、変位計測手段(30)を配置することができる。
【0016】
前記制御装置による変位計測手段(30)の計測値を用いた前記移動機構の位置制御は、例えば、前記変位計測手段(30)の計測値を用いて、移動量または原点位置等の補正を行う。このように補正を行う場合に、変位計測手段(30)による変位量の計測値を用いるため、温度計測値から熱変位補正を行うものと異なり、精度の良い補正が簡単な演算で済む。なお、前記変位計測手段(30)が、ある程度長い距離の計測が行えて位置検出を行うものである場合は、補正演算によらずに、変位計測手段(30)の計測値を直接に用いてフィードバック制御するようにしても良い。
【0017】
この発明において、前記変位計測手段(30)は、前記固定基台よりも熱膨張係数の低い低熱膨張材からなり前記連続した経路(C)上に位置して前記固定基台に設置された基準フレームと、切り込み方向に延びるスケールおよびこのスケールを読む読取ヘッドを有しこれらスケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームに設けられた直線位置検出手段とを有していてもよい。すなわち、上記の「加工移動領域(E)を避けた前記ワーク支持手段の中心相当位置(Xw)と刃先相当位置(Xt)間の連続した経路(C)上」という構成を、「前記連続した経路(C)上に位置して前記固定基台に設置された基準フレーム」という構成によって具現化する。なお、前記直線位置検出手段は、直線方向の位置を検出する検出手段のことである。前記熱膨張係数は線膨張係数と同義である。
【0018】
固定基台よりも熱膨張係数の低い低熱膨張材からなる基準フレームを前記連続した経路(C)上に配置し、この基準フレームに直線位置検出手段を設置するため、ワーク表面と工具の刃先間の変位量を、直接に計測する形態に近い形態で計測することが、簡易な構成で実現可能となる。直線位置検出手段が、上記のようなスケールおよびこのスケールを読み取る読取りヘッドからなる場合に、上記のようにスケールおよび読取りヘッドを設置することで、上記の温度計測値による熱変位補正手段を設けることなく、熱変位にかかわらずに高精度にワーク支持手段と工具支持手段間の相対位置の移動制御が行えて、制御系が簡素にでき、かつ加工精度の向上が図れるという効果が実現される。また、工作機械において一般的に用いられる直線位置検出手段を用いて、この発明の上記各効果を得ることができる。
【0019】
前記基準フレームを設ける場合に、基準フレームが、前記ワーク支持手段の中心の軸心に沿う方向に延びる軸心方向フレーム部と前記軸心と直交する方向に延びる直交方向フレーム部とを有し、前記直線位置検出手段として、前記ワーク支持面の中心相当位置(Xw)と前記基準フレームとの間の変位量を計測するワーク側の直線位置検出手段と、前記刃先相当位置(Xt)と前記基準フレームとの間の変位量を計測する工具側の直線位置検出手段とを有するものとしても良い。
【0020】
この場合、ワーク中心と工具の刃先間の変位量(ΔL)を、直接に計測する形態に近い形態で計測することができる、より具体的な構成となる。すなわち、ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段を設け、ワーク支持手段の中心相当位置(Xw)の変位量(ΔL1)と刃先相当位置(Xt)の変位量(ΔL2)との両方を計測して制御に用いるため、ワーク支持手段に支持されたワークと工具支持手段に設置された工具の刃先との間の距離を、精度良く検出することができる。
【0021】
また、ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段は、固定基台に設置された低熱膨張材からなる検出手段支持枠に設置し、かつ共通の検出手段支持枠に設置したため、前記固定基台や移動機構の熱変位に係わらずに、ワーク側の直線位置検出手段と工具側の直線位置検出手段の検出値から、ワークと工具刃先間の距離を精度良く検出できる。すなわち、理想的には、熱変形しない検出手段支持枠および直線位置検出手段で、移動や熱変形後のワーク位置と工具位置を検出することになり、ワークと工具刃先間の距離を精度良く検出できる。そのため、ワーク側の直線位置検出手段および工具側の直線位置検出手段の両方の検出値を用いて前記移動機構を制御する制御装置を設けたことで、温度計測による煩雑な熱変位補正を行うことなく、精度良く加工することができ、制御系も簡素になる。
【0022】
このワーク側の直線位置検出手段と工具側の直線位置検出手段とを設ける構成は、工作機械のワーク支持手段と工具支持手段との各種の相対移動の形式に応じて、次のように実現される。
【0023】
その一つは、主軸移動型の工作機械において、前記工具支持手段が前記固定基台上に位置固定に設置され、前記ワーク支持手段が、前記固定基台上で前記軸心と直交する方向に移動する送り台上に、前記軸心に沿う方向に移動可能に設置され、前記ワーク側の直線位置検出手段は、前記スケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームの前記直交方向フレーム部に設けられ、他方が前記送り台に設けられ、前記工具側の直線位置検出手段は、前記スケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームの軸方向フレーム部に設けられ、他方が前記工具支持手段に設けられたものである。この構成の場合、主軸移動型の工作機械において、ワーク表面と工具の刃先間の変位量を、直接に計測する形態にできるだけ近い形態で計測できて、加工精度の向上を図ることができる。
【0024】
他の一つは、前記ワーク支持手段が前記固定基台上に位置固定に設置され、前記工具支持手段が、前記固定基台上で前記軸心と直交する方向に移動する送り台上に、前記軸心に沿う方向に移動可能に設置され、前記ワーク側の直線位置検出手段は、前記スケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームの前記直交方向フレーム部に設けられ、他方が前記ワーク支持手段に設けられ、前記工具側の直線位置検出手段は、前記スケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームの前記軸心方向フレーム部に設けられ他方が前記工具支持手段に設けられたものである。この構成の場合、工具移動型の工作機械において、ワーク中心と工具の刃先間の変位量を、直接に計測する形態にできるだけ近い形態で計測できて、加工精度の向上を図ることができる。
【0025】
さらに他の一つは、前記ワーク支持手段が前記固定基台上に前記軸心と直交する方向に移動自在に設置され、前記工具支持手段が、前記固定基台上で主軸軸心に沿う方向に移動自在に設置され、前記ワーク側の直線位置検出手段は、前記スケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームの前記直交方向フレーム部に設けられ、他方が前記ワーク支持手段に設けられ、前記工具側の直線位置検出手段は、前記スケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームの前記軸心方向フレーム部に設けられ他方が前記工具支持手段に設けられたものである。この構成の場合、主軸が主軸軸心と直交する方向に移動する、主軸,工具双方工具移動型の工作機械において、ワーク中心と工具の刃先間の変位量を、直接に計測する形態にできるだけ近い形態で計測できて、加工精度の向上を図ることができる。
【0026】
さらに他の一つは、前記ワーク支持手段が前記固定基台上に主軸軸心に沿う方向に移動自在に設置され、前記工具支持手段が、前記固定基台上で前記軸心と直交する方向に移動自在に設置され、前記ワーク側の直線位置検出手段は、前記スケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームの前記直交方向フレーム部に設けられ、他方が前記ワーク支持手段に設けられ、前記工具側の直線位置検出手段は、記スケールおよび読取ヘッドのいずれか一方が前記基準フレームに設置され他方が前記工具支持手段に設けられたものである。この構成の場合、主軸が主軸軸心に沿う方向に移動する、主軸,工具双方工具移動型の工作機械において、ワーク中心と工具の刃先間の変位量を、直接に計測する形態にできるだけ近い形態で計測できて、加工精度の向上を図ることができる。
【0027】
この発明において、前記移動機構を制御する制御装置を設け、この制御装置は、前記ワーク支持手段と工具支持手段とを前記軸心と直交する方向に相対的に進退させるモータを制御するX軸の移動制御手段と、加工プログラムの移動命令の指令値により前記X軸の移動制御手段へ指令値を与える演算制御部とを有し、前記演算制御部に、前記変位計測手段(30)の変位量の計測値によって前記X軸の移動制御手段へ与える指令値を補正する補正手段を有するものとしても良い。この構成の場合、前記変位計測手段(30)の計測値は補正に用いるため、変位計測手段(30)は短いもので済み、そのため安価で高精度の変位計測手段(30)を入手して用いることができる。
【0028】
請求の範囲および/または明細書および/または図面に開示された少なくとも2つの構成のどのような組合せも、本発明に含まれる。特に、請求の範囲の各請求項の2つ以上のどのような組合せも、本発明に含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
この発明の第1実施形態を
図1(A)および(B)ないし
図4と共に説明する。この工作機械は数値制御式の工作機械であり、機械部分である工作機械本体1と、この工作機械本体1を制御する制御装置2とで構成される。工作機械本体1は、主軸移動型の旋盤であり、固定基台であるベッド3上に送り台4を介して設置された主軸台5に、主軸6が回転自在に支持され、ベッド3上に刃物台7が、支持台26を介して設置されている。支持台26は、ベッド3に固定して設置されている。刃物台7はタレットからなり、支持台26に回転割出可能に支持されている。前記主軸6および主軸台5によりワーク支持手段21が構成される。前記刃物台7および支持台26により、工具支持手段22が構成される。
【0031】
送り台4は、ベッド3に設けられたX軸案内9上を、主軸6の軸心Oに対して直交する水平な主軸半径方向(X軸方向)に移動自在に設置され、ベッド3上に設置されたサーボモータ10とその回転出力を直線動作に変換する送りねじ機構11とからなるX軸移動機構12によって左右に進退駆動される。前記送りねじ機構11は、ねじ軸とナットとからなる。
図2のように、主軸台5は、送り台4上に設けられたZ軸案内13上に主軸軸心方向(Z軸方向)に移動自在に設置され、送り台4上に設置されたサーボモータ14とその回転出力を直線動作に変換する送りねじ機構15(
図1(A))からなるZ軸移動機構16によって前後に進退駆動される。前記送りねじ機構15は、ねじ軸とナットとからなる。主軸6の回転駆動は、主軸台5に内蔵の主軸モータ(図示せず)よって行われる。主軸6の前端にはチャック17が着脱可能に設けられている。チャック17は、チャック半径方向に移動する複数のチャック爪17aにより、ワークWを把持可能である。
【0032】
図1(A)の刃物台7は、支持台26に対してX軸方向に沿う水平な回転中心軸T回りに回転自在であり、外周部に円周方向に並ぶ複数の工具取付部(図示せず)を有している。回転中心軸Tは、刃物台中心軸となる。各工具取付部に、工具ホルダ18aを介してバイトや回転工具等の工具18が取付けられる。刃物台7は、軸受8を介して支持台26に回転自在に支持された中空軸7cの先端に固定されており、割出用モータ(図示せず)で中空軸7cを回転させることにより、任意の工具取付部が主軸6に対向する位置に旋回割出しされる。刃物台7は、その正面形状が、
図2に示すような円形状であっても、また多角形状であっても良い。なお、
図1(A),
図2では、工具18は一部の工具取付部に取付けられたもののみを示し、他は図示を省略してある。
【0033】
図1(A)において、この実施形態の工作機械は、前記基本構造の工作機械本体1に、ワーク支持手段21の中心相当位置Xwと工具支持手段22の刃先相当位置Xtとの間の、主軸軸心Oに直交する方向(X方向)の距離であるワーク中心・刃先間距離Lの変位量ΔL(図示せず)を計測する変位計測手段30を設けたものである。ワーク支持手段21のワーク支持面21aは、図示の例では主軸6に設けられたチャック17のワーク着座面である。この例では、ワーク支持面21aの中心は、ワーク支持手段21の変位量計測方向(この例ではX軸方向)の中心となる。
【0034】
ワーク支持手段21の中心相当位置Xwは、変位量の計測方向(この例ではX軸方向)において、ワーク支持手段21の中心と見なせる位置であり、変位量の計測方向と直交する方向である上下方向又は前後方向に対して離れていても良い。このワーク支持手段21の中心相当位置Xwは、変位量の計測方向(X軸方向)にはワーク支持手段21の中心にあって、かつワーク支持手段21上であるか、またはワーク支持手段21と一体に前記直交方向(X軸方向)に移動する部材上の位置である。この実施形態では、ワーク支持手段21の中心相当位置Xwは、
図2のように、送り台4の前面(Z軸方向の刃物台7側の面)における主軸軸心Oと同じX軸方向位置である。
【0035】
また、刃先相当位置Xtは、変位量の計測方向において、多少の位置の違いあっても良いが、工具18の刃先の位置に近くて、熱変位の影響については刃先位置を計測するのと同等に扱える位置であり、この実施形態では、タレットからなる刃物台7の前面(X軸方向の送り台7側の面)位置とされている。刃先相当位置Xtと実際の刃先位置と間のX軸方向の距離L0(
図3)は、例えば固定値として演算する。
【0036】
図1(B),
図4に斜線を施した範囲(加工移動領域)Eは、加工のためのワーク支持手段21と工具支持手段22の相対移動によってワークWおよび工具18が相対移動する領域である。変位計測手段30は、前記ワーク支持手段21の中心相当位置Xwと刃先相当位置Xt間の連続した経路C上に設けられ、この連続した経路Cの変位量を計測することにより、前記ワーク中心・刃先間距離Lの変位量ΔLを計測する。経路Cは、前記加工移動領域Eを避けた領域を通る。 この経路Cは、平面視で後述の基準フレーム40上に沿う経路であり、経路部分C1〜C3からなる。変位計測手段30は、低熱膨張材の基準フレーム40と、この基準フレーム40に設けられたワーク側(直交方向)および工具側(軸心方向)の直線位置検出手段31,32とで構成される。
【0037】
基準フレーム40の材質は、ベッド3よりも熱膨張係数の低い材料である低熱膨張材、例えばインバー(不変鋼とも言う)等の合金材料、特にスーパーインバーやステンレスインバー等の合金材料からなる。基準フレーム40は、インバーの他に、インバーと同等以下の熱膨張係数の合金材料でも、セラミックス等であっても良い。
【0038】
基準フレーム40は、固定基台であるベッド3に、基準フレーム40の一部となる1箇所の取付部で固定して設置される。具体的には、基準フレーム40は、ベッド3の上面に下端が固定された1本の支柱部40cを有し、この支柱部40cの下端が前記取付部を構成する。上記「1箇所の」とは、ある程度の範囲を持っていても、分岐された2つの部分等であっても良く、基準フレーム40の全体として、両端固定のような複数箇所ではなく、概念的に1点支持と見なせる箇所で固定されていることを言う。また、基準フレーム40のベッド3への固定箇所は1箇所であることが望ましいが、基準フレーム40に対するベッド30の熱伸縮等を阻害しないスライド構造等で他の箇所が支持されていても良い。
【0039】
基準フレーム40は、主軸軸心Oに沿う方向に延びる軸心方向フレーム部40aと、主軸軸心Oに対して直交する方向に延びる直交方向フレーム部40bとを有し、平面視でL字状である。これら、軸心方向フレーム部40aおよび直交方向フレーム部40bは、前記支柱部40cから片持ち状に延びるように設けられている。軸心方向フレーム部40aは、タレットからなる刃物台7の回転中心の高さで、支持台26の背面(後面)側に位置している。直交方向フレーム部40bは、送り台4の高さ位置で、送り台4の前面に近づけて配置されている。軸心方向フレーム部40aのZ軸方向中間部と支柱部40cの下部とは、補強用の斜材部40eにより連結されている。基準フレーム40は、その全体が前記低熱膨張材で構成されている。
【0040】
前記各直線位置検出手段31,32は、いずれも、主軸軸心Oに直交する方向(X軸方向)に延びる第1および第2スケール31a,32aと、この第1および第2スケール31a,32aを読み取る第1および第2読取ヘッド31b,32bとでなる。第1および第2スケール31a,32aは、検出可能な目盛を設けた部材である。各直線位置検出手段31,32は、光学式の検出手段と磁気式の検出手段とのいずれであっても良いが、この例では光学式の検出手段とされている。
【0041】
ワーク側の直線位置検出手段31は、第1スケール31aが直交方向フレーム部40bに設けられ、第1読取ヘッド31bが送り台4の前面における前記ワーク支持面21aの中心相当位置Xwに設置されている。第1スケール31aは、直交方向フレーム部40bに直接に目盛りを施したものであっても、また目盛りが形成された目盛り形成部材(図示せず)を直交方向フレーム部40bに貼り付けたものであっても良い。目盛り形成部材を用いる場合、熱膨張係数が基準フレーム40と同等の材料とされる。第1スケール31aの長さは、熱変位等によるワーク中心・刃先間距離Lの変位量ΔLの計測時に、その変位量が計測できる長さであれば良く、したがって短いものであっても良い。変位量ΔLの計測を行う箇所が、主軸直交方向(X軸方向)の複数箇所である場合は、第1スケール31aの長さは、それら複数箇所に渡る長さとされるか、または変位量ΔLが計測可能な長さである短いものを複数箇所に分けて設けられる。
【0042】
なお、第1スケール31aは上記のように短いもので良いため、送り台4に第1スケール31aを設け、直交方向フレーム部40bに第1読取ヘッド31bを設けても良い。この他に、第1スケール31aは、送り台4の移動範囲の全域に渡って設けたものであっても良く、その場合、X軸方向の位置制御をフルクローズド制御とできるが、長尺を計測できるワーク側の直線位置検出手段31は高精度なものが得難く、コストや精度面から、第1スケール31aは変位量ΔLが計測可能な範囲で短いものが好ましい。
【0043】
工具側の直線位置検出手段32は、第2スケール32aが工具支持手段22に設けられ、第2読取ヘッド32bが基準フレーム40の軸心方向フレーム部40aに設けられている。工具側の直線位置検出手段32も、光学式と磁気式のいずれの位置センサであって良いが、この例では光学式の位置センサが用いられている。
【0044】
工具側の直線位置検出手段32は、具体的には次のように設けられる。第2スケール32aは、刃物台7に固定された軸部材32aaの先端部に設けられている。軸部材32aaは、刃物台7の中空軸7c内に挿通されて基端部が刃物台7の回転部分の前板部7d(
図3)に回転中心軸Tと同心に固定され、先端部が中空軸7cから突出している。この突出した先端部に第2スケール32aが設けられている。軸部材32aaは、基準フレーム40と同じかまたは同程度の熱膨張係数の材料からなり、基端の固定部分以外は工具支持手段22に対して軸方向に非拘束である。第2スケール32aは、軸部材32aaの周方向の一部かまたは全周に渡って目盛りが設けられる。第2読取りヘッド32bには、図示の例では、軸部材32aaが挿通自在に設けられているが、軸部材32aaの一部の面に対向するように設けられたものであっても良い。
【0045】
図1(A)において、制御系を説明する。制御装置2は、コンピュータ式の数値制御装置およびプログラマブルコントローラからなり、プログラム記憶手段41に記憶された加工プログラム42を、CPU(中央処理装置)等からなる演算制御部43で実行することにより、工作機械本体1の各部を制御する。制御装置2は、演算制御部43の他にX軸の移動制御手段44とZ軸の移動制御手段45を有し、かつシーケンス制御部(図示せず)を有する。加工プログラム42は、NCコード等により記述されたX軸移動命令Rx、およびZ軸移動命令Rzや、各部のシーケンス制御命令(図示せず)を有しており、演算制御部43は各命令を記述順に読み出す。その読み出されたシーケンス制御命令は、前記シーケンス制御部に転送され、シーケンス制御部によって制御が実行される。
【0046】
演算制御部43は、加工プログラム42におけるX軸移動命令Rxを、X軸移動制御手段44にX軸の位置指令として与え、Z軸移動命令Rzを、Z軸移動制御手段45にX軸の位置指令として与える。後述の補正手段47を機能させる場合は、補正後の位置指令を与える。
【0047】
X軸の移動制御手段44およびZ軸の移動制御手段45は、それぞれX軸およびZ軸のサーボコントローラからなり、演算制御部43から与えられたX軸およびZ軸の指令位置となるように、X軸サーボモータ10およびZ軸サーボモータ14を制御する。このときX軸,Z軸の移動制御手段44,45は、X軸サーボモータ10およびZ軸サーボモータ1に付属のパルスコーダまたはエンコーダからなる位置検出器10a,14aの位置検出値を用い、セミクローズループ制御となるフィードバック制御を行う。
【0048】
演算制御部43には、読み取り制御手段46および補正手段47が設けられている。
読み取り制御手段46は、X軸サーボモータ10の位置検出器10aで検出される位置が定められた検出位置にあり、かつ検出時として定められた時に、前記各直線位置検出手段31,32の第1および第2読取ヘッド31b,32bの検出値を読み取る手段である。前記の「定められた検出位置」は、読み取り制御手段46に任意に定めておけば良いが、例えば、主軸6のチャック17で支持されたワークWを工具18によって加工できる位置に、工具18が主軸6に対して位置する範囲内の位置で、任意に定めた位置である。
【0049】
具体的には、主軸6の軸心Oと工具18の刃先の位置とのX軸方向の距離Lが、主軸6のチャック17に支持されるワークWの半径内、またはこの半径に任意の余裕距離を加えた半径内において、任意に定めた位置である。これから加工しようとするワークWの周面の加工仕上げ径となる位置であっても良い。この任意に定める位置は、固定の値としても良く、または加工プログラム42や操作盤等からの操作で変えられた値であっても良い。
【0050】
上記の「検出時として定められた時」は、加工プログラム42等によって任意に定めれば良いが、例えばワークWを加工する直前や、一つのワークWを加工して次のワークWを加工する間における定められた時である。主軸6にワークWが支持されている状態で読み取るときは、工具18がワークWに干渉しないように、工具18とワークWとをZ軸方向に離した状態、または工具18がワークWに接触していないが近接した位置にあるとき、つまり上記の「任意の余裕距離」の範囲にあるときである。
【0051】
補正手段47は、加工プログラム41のX軸移動命令で与えられるX軸指令値を、両直線位置検出手段31,32で検出された変位量ΔLで補正し、X軸の移動制御手段44に与える処理を行う。補正量は、検出された変位量ΔL、すなわち両直線位置検出手段31,32でそれぞれ検出された変位量ΔL1,ΔL2の和ΔL(=ΔL1+ΔL2)をそのままオフセット値として補正しても良く、検出された変位量ΔLに定められた係数を掛けた値をオフセット値として補正しても良い。また、各直線位置検出手段31,32で変位検出を行ったときの主軸軸心Oと工具刃先位置との距離(X軸サーボモータ10の位置検出器10aで検出した位置)と、ワークWの加工面の半径との差に応じて、前記の検出された変位量ΔLに係数を掛けて補正量としても良い。なお、各直線位置検出手段31,32で計測される変位量は、例えば、工作機械が常温(摂氏20度)であるときに、零であるとする。
【0052】
上記構成の工作機械による加工方法の例を説明する。複数のワークWの切削加工を順次行う場合、主軸6のチャック17からワークWが搬出されて次のワークWが搬入されるまでの間に、上記の定められた検出位置に刃物台7を主軸6に対して相対移動させ(この例では主軸6が移動)、上記各直線位置検出手段31,32で変位量ΔLの計測を行う。あるいはこれから加工しようとするワークWが主軸6のチャック17に把持されている状態で、変位量ΔLの計測を行う。この計測された変位量ΔLで、加工時における、加工プログラム41のX軸移動命令RxのX軸指令値を補正手段47により補正し、X軸方向の切り込みの制御を行う。
【0053】
この構成の工作機械によると、変位計測手段30となる各直線位置検出手段31,32は、ワーク支持手段21の中心相当位置Xwと刃先相当位置Xt間の連続した経路C上にあってこの連続した経路Cの変位量を計測する。このため、迂回した経路上での計測とはなるが、工作機械の構造や制御上の限度を考慮した実質上で、ワークWの中心と工具18の刃先間の変位量を直接に計測する場合と同等の計測が行える。このように、主軸軸心Oに直交する方向(X軸方向)のワークW表面と工具18の刃先間の変位量を、直接に計測する場合と同等に計測できるため、切り込み方向についての加工精度を向上させることができる。
【0054】
また、変位量を計測する連続した経路Cは、加工のためのワーク支持手段21と工具支持手段22の相対移動によってワークWおよび工具18が相対移動する領域である加工移動領域Eを避けた領域における経路であるため、ワークWや工具18との干渉を避けて、変位計測手段30を配置することができる。
【0055】
X軸の移動制御手段44による変位計測手段30の計測値を用いたX軸移動機構12の位置制御は、変位計測手段30の各直線位置検出手段31,32の計測値を単に加算するか、または係数を掛けて値で補正するオフセット補正とされる。そのため、温度計測値から熱変位補正を行うものと異なり、精度の良い補正が簡単な演算で済む。
【0056】
変位計測手段30を構成するワーク側の直線位置検出手段31および工具側の直線位置検出手段32は、固定基台であるベッド3に1箇所で設置された低熱膨張材からなる共通の基準フレーム40に設置したため、ベッド3やX軸移動機構12の熱変位に係わらずに、ワーク側の直線位置検出手段31と工具側の直線位置検出手段32の検出値から、ワークWと工具刃先間の距離を精度良く検出できる。すなわち、理想的には、熱変形しない基準フレーム40および各直線位置検出手段31,32で、移動や熱変形後のワーク位置と工具位置を検出することになり、ワークWと工具刃先間の距離を精度良く検出できる。
【0057】
そのため、ワーク側の直線位置検出手段31および工具側の直線位置検出手段32の両方の検出値を用いてX軸指令値を補正する補正手段47を設けたことで、温度検出値による熱変位補正を行うことなく、精度良く加工することででき、制御系も簡素になる。基準フレーム40は、ベッド3に1箇所で固定されているため、ワーク支持手段21と工具支持手段22間に作用する切削反力等の加工による力を受けず、またベッド3の変形の影響を受けず、そのため加工力で変形せず、これによっても、より精度良く位置検出が行えて、精度良く加工することができる。
【0058】
また、旋盤では、切り込み方向の加工精度と送り方向の加工精度のうち、切り込み方向の寸法に、より高い精度が求められる。この実施形態の場合、ワーク側の直線位置検出手段31および工具側の直線位置検出手段32が、いずれも主軸中心軸Oに直交する方向(X軸方向)の位置を検出するものであるため、高精度化の要求の強い切り込み方向の位置制御が高精度に行える。切り込み方向と送り方向の両方を、基準フレーム40に直線位置検出手段を設けて検出することは、構成が複雑になって困難な場合があるが、この実施形態では切り込み方向のみを各直線位置検出手段31,32で検出し、送り方向につてはサーボモータ14に付属の位置検出器14aを用いて制御しているため、構成の複雑化を回避して必要な精度を満足することができる。なお、この実施形態では、Z軸方向の熱変位補正は不要であるが、適宜のリニアライズ手段や、補正手段を追加して設けても良い。
【0059】
また、この実施形態では、変位計測手段30は補正に用いるようにしたため、変位計測手段30で用いてフルクローズド制御するものと異なり、変位計測手段30となる各直線位置検出手段31,32が短いもので済む。そのため、安価で高精度の各直線位置検出手段31,32を入手して用いることができる。
【0060】
上記実施形態では、主軸移動型の旋盤に適用した場合につき説明したが、
図5に示す刃物台移動型の旋盤や、
図6,
図7にそれぞれ示す主軸・刃物台双方移動型の旋盤にもこの発明を適用することができる。なお、以下の各実施形態において、
図1〜
図4に示した第1実施形態と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0061】
図5は、刃物台移動型の旋盤である工作機械で適用した第2実施形態である。この実施形態では、ワーク支持手段21が固定基台であるベッド3上に位置固定に設置され、工具支持手段22が、ベッド3上で主軸軸心Oと直交する方向(X軸方向)に移動する送り台27上に、主軸軸心Oに沿う方向に移動可能に設置されている。ワーク側の直線位置検出手段31は、前記第1スケール31aが基準フレーム40の直交方向フレーム部40bに設けられ、第1読取ヘッド31bがワーク支持手段21に設けられている。工具側の直線位置検出手段32は、第2読取ヘッド32bが基準フレーム40の軸心方向フレーム部40aの先端に設けられ、第2スケール32aが工具支持手段22に設けられている。
【0062】
この構成の場合、刃物台移動型の工作機械において、変位計測手段によりワーク中心と工具18の刃先間の変位量を、直接に計測する形態にできるだけ近い形態で計測できて、加工精度の向上を図ることが実現される。
【0063】
図6は、主軸・刃物台双方移動型で主軸6が主軸軸心Oと直交する方向(X軸方向)に移動する旋盤からなる工作機械に適用した第3実施形態である。この実施形態ではワーク支持手段21の主軸台5が固定基台であるベッド3上に主軸軸心Oと直交する方向に移動自在に設置され、工具支持手段22は、ベッド3上で主軸軸心Oに沿う方向に移動自在に設置されている。ワーク側の直線位置検出手段31は、第1スケール31aが基準フレーム40の直交方向フレーム部40bに設けられ、第1読取ヘッド31bがワーク支持手段21に設けられている。工具側の直線位置検出手段32は、第2読取ヘッド32bが基準フレーム40の軸心方向フレーム部40aに設けられ、第2スケール32aが工具支持手段22に設けられている。この構成の場合も、工具側の直線位置検出手段32における第2読取ヘッド32bは、刃物台7のZ軸方向移動を妨げないように、第1スケール31aと共に軸心方向フレーム部40aに沿って移動自在なように、案内レール29によって案内される。
【0064】
この構成の場合、主軸6が主軸軸心Oと直交する方向に移動する、主軸・工具双方工具移動型の工作機械において、ワーク中心と工具18の刃先間の変位量を、直接に計測する形態にできるだけ近い形態で計測できて、加工精度の向上を図ることが実現される。
【0065】
図7は、主軸・刃物台双方移動型で主軸6が主軸軸心Oに沿う方向(Z軸方向)に移動する旋盤からなる工作機械に適用した第4実施形態である。この実施形態では、ワーク支持手段21の主軸台5が固定基台であるベッド3上に主軸軸心Oに沿う方向(Z軸方向)に移動自在に設置され、工具支持手段22が、ベッド3上で主軸軸心Oと直交する方向(X軸方向)に移動自在に設置されている。ワーク側の直線位置検出手段31は、第1スケール31aが基準フレーム40の直交方向フレーム部40bに設けられ、第1読取ヘッド31bがワーク支持手段21に設けられている。工具側の直線位置検出手段32は、第2読取ヘッド32bが基準フレーム40に設置され第2スケール32aが工具支持手段22に設けられている。
【0066】
この構成の場合、主軸6が主軸軸心Oに沿う方向に移動する、主軸・工具双方工具移動型の工作機械において、ワーク中心と工具18の刃先間の変位量を、直接に計測する形態にできるだけ近い形態で計測できて、加工精度の向上を図ることが実現される。
【0067】
なお、
図6〜
図7の第2および第3実施形態において、第1および第2スケール31a,32aと第1および第2読取ヘッド31b,32bとを設ける箇所は、基準フレーム40側に設けるかワーク支持手段21等の被計測側に設けるかを、互いに逆にしても良い。また、変位計測手段30は、上記各実施形態ではワーク側の直線位置計測手段31と工具側の直線位置計測手段32との2つの検出手段で構成したが、例えば、これら2つに、基準フレーム40の変位を検出する手段を加えるなどして、3つ以上の検出手段で構成してもよく、また変位計測手段30の全体で検出手段を一つだけとしても良い。
【0068】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。例えば、上記各実施形態は、タレット型の旋盤に適用した場合につき説明したが、タレット型以外の、例えばくし歯型の旋盤にも適用できる。さらに、旋盤以外の工作機械にも、この発明を適用することができる。したがって、そのような変更および修正は、添付の特許請求の範囲から定まるこの発明の範囲内のものと解釈される。