(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の一置換テトラキスフェノール誘導体モノマー及び/若しくは請求項2記載の二置換テトラキスフェノール誘導体モノマーと、これらの化合物と共重合可能な他の重合性不飽和単量体とを(共)重合させて得られる事を特徴とする請求項6又は請求項7記載の(共)重合体。
共重合可能な他の重合性不飽和単量体が、不飽和脂肪酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、N−置換マレイミド、不飽和脂肪酸またはその誘導体である請求項9記載の(共)重合体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明は、かかる事情を背景になされたものであり、添加量の制限なく使用できる反応性置換基を有するテトラキスフェノール誘導体モノマー及びその製造方法を提供し、かつ高耐熱性や高屈折率といった特性を有する(共)重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行なった結果、一置換又は二置換重合性置換基を有するテトラキスフェノール誘導体モノマーにより、添加量の制限もなく高耐熱性、高屈折率の硬化物を与える事ができ、光学材料用途やコーティング材料用途も含め幅広い用途に有用な(共)重合体が得られる事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本願発明は、上記本願発明の前記課題を解決するための手段として、以下の構成を具備する。
【0014】
本願発明は、第一の態様として、下記一般式(1)で示される一置換テトラキスフェノール誘導体モノマーに関する。
【化1】
[式中、R
0は水素またはメチル基であり、R
1〜R
4は、それぞれ、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖を有するアルキル基であり、それらは同一環内又は異なる環内で互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、a,b,c及びdは、それぞれ、0又は1〜4の整数であり、R
5はフェノール性水酸基の保護基として機能する炭素数1〜8のアルキル基、アルキルアルコキシ基、アルキルエステル基およびベンジル基のいずれかである。Xは、炭素数0〜3の直鎖状若しくは分岐鎖を有するアルキレン基又はフェニレン基であり、Yは、下記一般式(2)〜(4)のいずれかで示される結合基である。]
上記式(1)中、Yで表された結合基の端部の炭素原子は、(メタ)クリル基に結合し、その他端側の酸素原子はフェノール環の酸素に結合している。以下の本願発明に係るテトラキスフェノール誘導体に関連する式中のYについても同様である。
【化2】
【化3】
(式(3)は、プロピレンオキサイド単位を示し、式中、R7及びR8は水素又はメチル基のいずれかであり、R7がメチル基の場合は、R8は水素となり、R7が水素の場合は、R8はメチル基となる。mが2以上のとき、それぞれのR7及びそれぞれのR8は互いに同一であっても良いし、異なっていてもよい。)
【化4】
【0015】
本願発明は、第二の態様として、
下記一般式(5)又は(6)で示される二置換テトラキスフェノール誘導体モノマーに関する。
【化5】
【化6】
[式中、R
0は水素またはメチル基であり、R
1〜R
4は、それぞれ、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖を有するアルキル基であり、それらは同一環内又は異なる環内で互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、a,b,c及びdは、それぞれ、0又は1〜4の整数であり、R
5はフェノール性水酸基の保護基として機能する炭素数1〜8のアルキル基、アルキルアルコキシ基、アルキルエステル基およびベンジル基のいずれかである。Xは、炭素数0〜3の直鎖状若しくは分岐鎖を有するアルキレン基又はフェニレン基であり、Yは、前記第一の態様で定義した結合基である。]
【0016】
本願発明は、第三の態様として、テトラキスフェノール誘導体モノマーの
a〜dが0であり、Xが炭素数0である事を特徴とする前記第一の態様又は第二の態様のテトラキスフェノール誘導体モノマーに関する。
【0017】
本願発明は、第四の態様として、下記一般式(7)にて示されるテトラキスフェノール化合物のフェノール性水酸基のうち、選択的に1箇所若しくは2箇所にアクリル基又はメタクリル基のいずれかを直接導入し、前記前記第一の態様に記載の一般式(1)、前記前記第二の態様に記載の(5)若しくは(6)で示される化合物を得る事を特徴とするテトラキスフェノール誘導体モノマーの製造方法に関する。
【化7】
[式中、R
1〜R
4は、それぞれ、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖を有するアルキル基であり、それらは同一環内又は異なる環内で互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、a,b,c及びdは、それぞれ、0又は1〜4の整数である。また、Xは、炭素数0〜3の直鎖状若しくは分岐鎖を有するアルキレン基又はフェニレン基である。]
【0018】
本願発明は、第五の態様として、
一般式(7)にて示されるテトラキスフェノール化合物中の4つのフェノール性水酸基に選択的に非重合性の置換基を導入すると同時に残りのフェノール性水酸基を保護し、非重合性の置換基を脱離させ、下記一般式(8)、(9)若しくは(10)で示されるテトラキスフェノール誘導体を得た上で、残りのフェノール性水酸基に、アクリル基又はメタクリル基のいずれかを導入し、前記第一の態様に記載の一般式(1)、前記第二の態様に記載の(5)若しくは(6)で示される化合物を得る事を特徴とするテトラキスフェノール誘導体モノマーの製造方法に関する。
本願発明は、第六の態様として、下記一般式(8)、(9)若しくは(10)で示されるテトラキスフェノール誘導体。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【0019】
本願発明は、第
七の態様として、下記一般式(11)にて示されるテトラキスフェノール誘導体を構造内に有する事を特徴とする(共)重合体に関する。
【化9】
[式中、R
0は水素またはメチル基であり、R
1〜R
4は、それぞれ、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖を有するアルキル基であり、それらは同一環内又は異なる環内で互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、a,b,c及びdは、それぞれ、0又は1〜4の整数であり、R
5はフェノール性水酸基の保護基として機能する炭素数1〜8のアルキル基、アルキルアルコキシ基、アルキルエステル基およびベンジル基のいずれかである。Xは、炭素数0〜3の直鎖状若しくは分岐鎖を有するアルキレン基又はフェニレン基であり、Yは、前記前記第一の態様で定義した結合基である。]
【0020】
本願発明は、第
八の態様として、下記一般式(12)、または(13)にて示されるテトラキスフェノール誘導体を構造内に有する事を特徴とする(共)重合体に関する。
【化10】
【化11】
[式中、R
0は水素またはメチル基であり、R
1〜R
4は、それぞれ、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖を有するアルキル基であり、それらは同一環内又は異なる環内で互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、a,b,c及びdは、それぞれ、0又は1〜4の整数であり、R
5はフェノール性水酸基の保護基として機能する炭素数1〜8のアルキル基、アルキルアルコキシ基、アルキルエステル基およびベンジル基のいずれかである。Xは、炭素数0〜3の直鎖状若しくは分岐鎖を有するアルキレン基又はフェニレン基であり、Yは、前記第一の態様で定義された結合基である。]
【0021】
本願発明は、第
九の態様として、前記第一の態様の一置換テトラキスフェノール誘導体モノマーを重合させて得られる事を特徴とする前記第
五の態様の重合体に関する。
【0022】
本願発明は、第
十の態様として、前記第一の態様の一置換テトラキスフェノール誘導体モノマー及び/若しくは前記第二の態様の二置換テトラキスフェノール誘導体モノマーと、これらの化合物と共重合可能な他の重合性不飽和単量体とを(共)重合させて得られる事を特徴とする前記第
七の態様又は第
八の態様の(共)重合体に関する。
【0023】
本願発明は、第
十一の態様として、共重合可能な他の重合性不飽和単量体が、不飽和脂肪酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、N−置換マレイミド、不飽和脂肪酸またはその誘導体である前記第
十の態様の(共)重合体に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、一般式(7)にて示されるテトラキスフェノール化合物中の4つの水酸基に、選択的に重合性置換基を直接導入すると同時に残りの水酸基を保護する方法(製法1)、若しくは一旦選択的に非重合性の置換基を導入すると同時に残りの水酸基を保護し、非重合性の置換基を脱離させた上で重合性置換基に変える方法(製法2)のいずれかにより、前記一般式(1)で示される一置換の重合性テトラキスフェノール誘導体モノマー、及び前記一般式(5)及び(6)で示される二置換の重合性テトラキスフェノール誘導体モノマーを提供することができる。
【0025】
また、本発明によれば、前記一置換の重合性テトラキスフェノール誘導体モノマー及び/または二置換の重合性テトラキスフェノール誘導体モノマーを添加量の制限無く(共)重合することにより、耐熱性及び屈折率を改善した(共)重合体を提供することができる。
【0026】
本発明で得られた、モノマー及び(共)重合体は、例えば光学材料、コーティング材料、記録材料、エポキシ樹脂、電気・電子部品、フォトレジスト材料、プリント配線板用ソルダーレジスト、半導体封止材、積層材、構造用材料、接着剤、粘着剤、ライニング剤、塗料、ゴムなどとして幅広く用いる事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を構成するテトラキスフェノール誘導体モノマーは、前記一般式(7)にて表される構造を持つテトラキスフェノール化合物を出発原料として誘導される。
【0029】
前記一般式(7)において、R
1〜R
4は、それぞれ、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖を有するアルキル基であり、それらは同一環内又は異なる環内で互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、a,b,c及びdは、それぞれ、0又は1〜4の整数である。R
5はフェノール性水酸基の保護基として機能する炭素数1〜8のアルキル基、アルキルアルコキシ基、アルキルエステル基およびベンジル基のいずれかである。また、Xは、炭素数0〜3の直鎖状若しくは分岐鎖を有するアルキレン基又はフェニレン基である。そして、Yは、前記第一の態様において示した、式(2)〜(4)のいずれかで示される置換基である。また、Xは、炭素数0〜3の直鎖状若しくは分岐鎖を有するアルキレン基又はフェニレン基である。
【0030】
前記一般式(7)にて表される化合物の具体的な例としては、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ペンタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)ペンタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)ペンタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ペンタン、1,1,2,2−テトラキス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,2,2−テトラキス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ペンタン、1,1,2,2−テトラキス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,2,2−テトラキス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ペンタン、α,α,α’,α’,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’,−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’,−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’,−テトラキス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’,−テトラキス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’,−テトラキス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’,−テトラキス(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’,−テトラキス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’,−テトラキス(5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−p−キシレン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−メチルフェニル)−2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)エタン、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α’,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−p−キシレン、α,α−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−α’,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−p−キシレン、α,α−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−α’,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−p−キシレン、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α’,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−p−キシレン、α,α−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−α’,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−p−キシレン等を挙げる事ができる。これらの中でも、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、α,α,α’,α’,−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレンが好ましく、特に、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンがより好ましい。
【0031】
また、本発明では、前記一般式(1)で示される一置換の重合性テトラキスフェノール誘導体モノマー、及び前記一般式(5)及び(6)で示される二置換の重合性テトラキスフェノール誘導体モノマーを得る為に、製法1と製法2の二通りの製法を提供する。
【0032】
製法1は、一般式(7)にて示されるテトラキスフェノール化合物中の4つの水酸基に、選択的に重合性置換基を直接導入すると同時に残りの水酸基を保護する方法であり、工程が短い為、生産性に優れている。一方、製法2は、一般式(7)にて示されるテトラキスフェノール化合物中の4つの水酸基に、一旦選択的に非重合性の置換基を導入すると同時に残りの水酸基を保護し、非重合性の置換基を脱離させた上で重合性置換基に変える方法であり、様々な重合性置換基を導入出来る点と、目的物収率が高い点で優れている。
【0033】
本発明に係る製法1は、上述のテトラキスフェノール化合物等を出発原料として、直接(メタ)アクリレート化を行う方法であり、詳しくは、溶媒中にてテトラキスフェノール類のフェノール性水酸基をイオン化し、(メタ)アクリロイルハライドとアルキル化剤を加えて塩基性触媒存在下に反応させる方法である。ここで、(メタ)アクリロイルハライドとは、アクリル酸ハロゲン化物とメタクリル酸ハロゲン化物の総称であり、通常用いるものは、アクリロイルクロライド及び/若しくはメタクリロイルクロライドである。
【0034】
製法1における反応溶媒としては、任意のものが用いられる。具体的には、水、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素などが挙げられ、単独または2種以上の混合系で用いられる。好ましくは、水と有機溶剤の混合系であり、反応後の後処理が円滑に進む事を考慮すると、水と水に任意に混合しない有機溶剤の混合系がより好ましい。より具体的には、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンである。
【0035】
製法1におけるフェノール性水酸基のイオン化剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩等が挙げられ、これらのうちの1種が単独で、或いは2種以上が組み合わせて用いられる。これらの中でも、水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。使用量としては、一般的な使用量が採用され、テトラキスフェノール化合物のフェノール性水酸基1当量に対して、通常、1当量以上、好ましくは、1〜4当量となるように用いられる。なお、このイオン化剤は、そのまま塩基性触媒として反応に用いても良いし、別の塩基性触媒を利用する為、アルキル化剤を加えて反応を行なう前に除去しておいても良い。
【0036】
製法1においては、選択的に一置換または二置換のテトラキスフェノールを得る為に、テトラキスフェノール化合物と(メタ)アクリロイルハライドとの反応モル比の選択が重要である。具体的には、一置換テトラキスフェノール合成時は、テトラキスフェノール1当量当り、(メタ)アクリロイルハライド0.2〜0.5当量であり、好ましくは、0.25〜0.3当量である。また、二置換テトラキスフェノール合成時は、テトラキスフェノール1当量当り、(メタ)アクリロイルハライド0.4〜1.0当量であり、好ましくは、0.5〜0.6当量である。
【0037】
また、製法1におけるアルキル化剤としては、塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化低級アルキル、2−ヨードエチルメチルエーテル等のハロゲン化エーテル、臭化ベンジル等のハロゲン化ベンジル、メタンスルホン酸メチルエステル等の低級アルキルスルホン酸の低級アルキルエステル、p−トルエンスルホン酸メチルエステル等のアリールスルホン酸の低級アルキルエステル等が挙げられ、好ましくはハロゲン化低級アルキルが用いられる。なお、前記一般式におけるR
5は、使用するアルキル化剤に依存するが、メチル基、エチル基等の低級アルキル基のほか、酸解離性を有するt−ブチル基、t−アミル基、1−t−ブトキシエチル基などでも良い。添加量としては、テトラキスフェノール1当量あたり、2当量以上である。
【0038】
製法1における塩基性触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド等のアルカリ金属アルコラート;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の三級アミン等が挙げられ、これらのうちの1種が単独で、或いは2種以上が組み合わせて用いられる。これらの中でも、アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属炭酸塩が好ましく、更にこの中でも、炭酸カリウムがより好ましく用いられる。使用量としては、テトラキスフェノール化合物1当量に対して、通常、1当量以上、好ましくは、1〜4当量である。なお、この塩基性触媒は、前記イオン化剤をそのまま利用しても構わない。
【0039】
製法1における反応温度は、20℃〜150℃であり、好ましくは、50℃〜120℃である。反応終了後に、塩基性触媒と反応溶媒の除去を行なう事で、目的物であるテトラキスフェノール誘導体モノマーが得られる。必要に応じ、カラムクロマトグラフィー等を用いて精製する事で、結晶性の目的物を得る事も出来る。
【0040】
次いで、本発明に係る製法2は、上述の一般式(5)で示されるテトラキスフェノール化合物等を出発原料として、一旦選択的に非重合性の置換基を導入すると同時に残りの水酸基を保護し、次いで非重合性の置換基を脱離させた上で重合性置換基に変える方法である。詳しくは、溶媒中にてテトラキスフェノール類のフェノール性水酸基をイオン化し、ベンゾイルハライドとアルキル化剤を加えて塩基性触媒存在下に反応させ、非重合性置換基の導入とフェノール性水酸基の保護を行い、次いで、塩基性触媒下に非重合性置換基の脱離を行い、最後に塩基性触媒存在下に(メタ)アクリロイルハライドと反応させて、脱保護されたフェノール性水酸基に重合性置換基を導入する方法である。なお、非重合性置換基が脱離したフェノール性水酸基に、エチレンオキサイド付加、プロピレンオキサイド付加、グリシジルエーテル化などを行なった上で(メタ)アクリロイルハライドと反応させる事で、前記式(2)〜(4)で示されるYなる置換基(架橋構造単位)を具備する様々なバリエーションのテトラキスフェノール誘導体モノマーを作る事が出来る。
【0041】
製法2における非重合性置換基の導入においても、選択的に一置換または二置換のテトラキスフェノールを得る為に、テトラキスフェノール化合物とベンゾイルハライドとの反応モル比の選択が重要である。具体的には、一置換テトラキスフェノール合成時は、テトラキスフェノール1当量当り、ベンゾイルハライド0.2〜0.5当量であり、好ましくは、0.25〜0.3当量である。また、二置換テトラキスフェノール合成時は、テトラキスフェノール1当量当り、ベンゾイルハライド0.4〜1.0当量であり、好ましくは、0.5〜0.6当量である。
【0042】
また、製法2における非重合性置換基の導入において、反応溶媒、フェノール性水酸基のイオン化剤、アルキル化剤、塩基性触媒及び反応温度は、製法1の重合性置換基の導入と同様である。必要に応じ、カラムクロマトグラフィー等を用いて精製する事で、結晶性の目的物を得る事も出来る。
【0043】
製法2における
非重合性置換基の脱離反応は、得られた非重合性置換テトラキス誘導体モノマーを反応溶媒に溶解し、塩基性触媒下で攪拌する事で行なわれる。反応溶媒は、非重合性置換テトラキス誘導体モノマーが溶解するものであればよく、塩基性触媒は、pH=11以上の水溶液であればよい。反応後、中和剤を用いて、pH=7以下に調整し、触媒と反応溶媒を除去すれば、目的物である非重合性置換基の脱離した部分保護テトラキスフェノール化合物が得られる。また、必要に応じ、カラムクロマトグラフィー等を用いて精製する事で、結晶性の目的物を得る事も出来る。
【0044】
製法2においては、非重合性置換基の脱離したフェノール性水酸基に、エチレンオキサイド付加、エチレンオキサイド付加、プロピレンオキサイド付加、グリシジルエーテル化等を行う事が出来るが、これらは、公知の方法で行えば良い。このようにすることにより、前記式(2)〜(4)で示されるYなる置換基(架橋構造単位)を具備する様々なバリエーションのテトラキスフェノール誘導体モノマーを作る事が出来る。
【0045】
製法2における重合性置換基の導入は、非重合性置換基の脱離した部分保護テトラキスフェノール化合物と(メタ)アクリロイルハライドを、反応溶媒中、塩基性触媒存在下にて反応させる事で行なわれ、その反応モル比は、非重合性置換基の脱離したフェノール性水酸基1当量に対して、(メタ)アクリロイルハライド1当量以上であり、好ましくは、1〜10当量である。
【0046】
製法2における重合性置換基の導入時の反応溶媒は、任意のものが用いられる。具体的には、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素などが挙げられ、単独または2種以上の混合系で用いられる。好ましくは、ケトンやハロゲン化炭化水素である。
【0047】
製法2における重合性置換基の導入時の塩基性触媒は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド等のアルカリ金属アルコラート;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の三級アミン等が挙げられ、これらのうちの1種が単独で、或いは2種以上が組み合わせて用いられる。これらの中でも、三級アミンが好ましく用いられる。使用量としては、非重合性置換基の脱離したフェノール性水酸基1当量に対して、1当量以上である。
【0048】
製法2における重合性置換基の導入時の反応温度は、−10℃〜150℃であり、好ましくは、0℃〜50℃である。反応終了後に、塩基性触媒と反応溶媒の除去を行なう事で、目的物であるテトラキスフェノール誘導体モノマーが得られる。必要に応じ、カラムクロマトグラフィー等を用いて精製する事で、結晶性の目的物を得る事も出来る。
【0049】
上記、製法1及び製法2における反応の際の圧力は、通常は常圧であるが、加圧又は減圧下で反応を行っても良く、具体的には内部圧力(ゲージ圧)が−0.02〜0.2MPaである。
【0050】
本発明における製法1及び製法2によって得られた一置換及び二置換重合性テトラキスフェノール誘導体モノマーは、重合により重合体を得る事が出来る。なお、他の重合性不飽和単量体と、任意の割合で(共)重合することも出来る。
【0051】
本発明における(共)重合は、従来公知の製造方法を用いる事ができる。具体的には、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の製造と同様に、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法などである。
【0052】
本発明における(共)重合の重合開始剤としては、通常ラジカル重合開始剤が用いられ、具体的には、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、メチルエチルケトンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシフタレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ−2−ヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエートなどの有機過酸化物、1,1’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミドなどのアゾ化合物などが挙げられるが、n−ブチルリチウムなどのアニオン重合開始剤や、チーグラー・ナッタ型触媒の配位アニオン重合開始剤などを用いる事もできる。これらの中では、ベンゾイルパーオキサイドや1,1’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が好ましく用いられ、添加量は、一置換及び二置換重合性テトラキスフェノール誘導体モノマーに対し、0.1〜10.0モル%であり、好ましくは、0.5〜2.0モル%である。
【0053】
本発明における(共)重合の反応溶媒は、特に制限はなく公知のものを広く用いる事ができる。例えばラジカル重合の場合、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジクロロエタンなどを挙げる事ができる。
【0054】
本発明においては、重合性テトラキスフェノール誘導体モノマーと他の重合性不飽和単量体を任意の割合で共重合させる事が出来る。他の重合性不飽和単量体としては、不飽和脂肪酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、N−置換マレイミド、不飽和脂肪酸またはその誘導体が挙げる事ができる。
【0055】
不飽和脂肪酸エステルとしては、具体的に例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸フルオロフェニル、(メタ)アクリル酸クロロフェニル、(メタ)アクリル酸ブロモフェニル、(メタ)アクリル酸フルオロベンジル、(メタ)アクリル酸クロロベンジル、(メタ)アクリル酸ブロモベンジル、(メタ)アクリル酸フルオロメチル、(メタ)アクリル酸フルオロエチル、(メタ)アクリル酸クロロエチル、(メタ)アクリル酸ブロモエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸エチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シアノアルキルエステル、α−フルオロ(メタ)アクリル酸エステル、α−クロロ(メタ)アクリル酸エステル、α−シアノ(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げる事ができる。
【0056】
また、多官能性のものとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ及びヘキサ(メタ)アクリレート混合物などのものも挙げる事ができる。
【0057】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−フルオロスチレン、α−クロロスチレン、フルオロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、メチルスチレン、ブチルスチレン、メトキシスチレンなどを挙げる事ができる。
【0058】
シアン化ビニル化合物としては、(メタ)アクリロニトリルをあげる事ができる。
【0059】
N−置換マレイミドとしては、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチルフェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド、N−メトキシフェニルマレイミドなどが挙げられる。
【0060】
不飽和脂肪酸またはその誘導体としては、(メタ)アクリルアミド、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸カルシウム、(メタ)アクリル酸バリウム、(メタ)アクリル酸鉛、(メタ)アクリル酸すず、(メタ)アクリル酸などを挙げる事ができ、さらに、ジシクロペンタジエン系(メタ)アクリレートなども挙げる事ができる。
【0061】
本発明における(共)重合の反応温度は、任意に設定可能であるが、例えばラジカル重合の場合、−20℃〜200℃、好ましくは0℃〜150℃、より好ましくは20℃〜120℃である。なお、密閉された反応容器内で還流を行なう事で、より(共)重合の進行を促進できる。
【0062】
本発明における(共)重合においては、必要に応じ、有機溶剤中に再沈殿、濾別、乾燥等の後処理を行なう事で、開始剤や反応溶媒等の不要物を除去する事が出来る。
【0063】
本発明によれば、得られる重合体が優れた効果を発揮する理由は、必ずしも明確ではないが、次のように推察される。すなわち、テトラキスフェノールが、屈折率、耐熱性を高める効果を持つベンゼン環を4つも構造内に持つ為である。多くのベンゼン環を、効率よく重合体のポリマー主鎖の側鎖として導入でき、更に、重合性置換基の数が制御されている事で、添加量に関わらず、ゲル化を起こす事無く高分子量のポリマーを得られる為、ベンゼン環を数多く側鎖に有する重合体が得られるのである。それ故に、屈折率、耐熱性に優れた重合体が得られるものと推測される。
【0064】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、本実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例における中間体、モノマー、重合体を含むテトラキスフェノール類の測定は、下記測定機器により行なった。
【0065】
(試験法)
1H−NMR、
13C−NMRスペクトルはJEOL社製のLNM−EX400を用い、TMSを基準物質として測定した。FT−IRスペクトルは、JASCO社製のFT−IR 460 plus spectrometerを用い測定した。GPCは、JASCO社製UV−2070検出器とRI−2031検出器、TOSOH社製TSK−gel GMH−HRカラムを用い、テトラヒドロフランを展開溶媒にして行ない、標準ポリスチレン換算にて分子量を求めた。熱重量分析は、SII社製TG/DTA6200を用い、昇温速度10℃/min、窒素雰囲気下で測定した。示差走査熱量測定は、SII社製DSC6220を用い、昇温速度10℃/min、窒素雰囲気下で測定した。重合体のフィルム作成は、MIKASA社製Spincoater1H−DTを用いて行なった。フィルム水平方向の屈折率(n
TE)と垂直方向の屈折率(n
TM)をHe−Neレーザーと半波長板を使い、Metricon社製Prism coupler PC−2010にて測定した。
【実施例1】
【0066】
300mLナスフラスコにメチルイソブチルケトン(80mL)と水(80mL)を入れ、これに水酸化ナトリウム(0.8g, 20mmol)を加え溶解させた。この中に1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(8g, 20mmol)を加え、室温で5分攪拌した。この混合溶液にアクリロイルクロリド(1.8g 20mmol)をメチルイソブチルケトンで希釈した溶液(20mL)を30分かけて滴下した。滴下終了後、反応溶液の水層と有機層を分離し、有機層を水(40mL×3)で洗った。その後、この溶液に炭酸カリウム(13.6g, 100mmol)とヨウ化メチル(14.1g, 100mmol)を加え、90℃で6時間還流を行った。K
2CO
3をろ過した後、減圧で溶媒を留去し、褐色のオイル状の粗精製物を得た。この粗精製物をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)により精製し、白色の粉末(化合物1)を得た。(収率19%)
【実施例2】
【0067】
300 mLナスフラスコにメチルイソブチルケトン(80mL)と水(80mL)を入れ、これに水酸化ナトリウム(0.8g, 20mmol)を加え溶解させた。この中に1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(8g, 20mmol)を加え、室温で5分攪拌した。そこにメタアクリロイルクロリド(2.1g 20mmol)をメチルイソブチルケトンで希釈した溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、反応溶液の水層と有機層を分離し、有機層を水(40mL×3)で洗った。その後、この溶液に炭酸カリウム(13.6g, 100mmol)とヨウ化メチル(14.1 g, 100mmol)を加え、90℃で6時間還流を行った。炭酸カリウムをろ過した後、減圧で溶媒を留去し、褐色のオイル状の粗精製物を得た。この粗精製物をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)により精製し、白色の粉末(化合物2)を得た。(収率18%)
【実施例3】
【0068】
200mLナスフラスコにメチルイソブチルケトン(50mL)と水(50mL)を入れ、これに水酸化ナトリウム(0.5g, 20mmol)を加え溶解させた。この溶液に1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(5g, 13mmol)を加え、室温で5分攪拌した。この混合溶液にベンゾイルクロリド(1.8g 13mmol)をメチルイソブチルケトンで希釈した溶液(20mL)を30分かけて滴下した。滴下終了後、反応溶液の水層と有機層を分離し、有機層を水(40mL×3)で洗った。その後、この化合物に炭酸カリウム(7.65g, 56.2mmol)とヨウ化メチル(7.92g, 56.2mmol)を加え、90℃で6時間還流を行った。炭酸カリウムをろ過した後、減圧で溶媒を留去し、褐色のオイル状の混合物を得た。メタノールからの再結晶により、白色の粉末(化合物3−A)を得た。(収率56%)
【0069】
得られた白色粉末(3g, 5.4mmol)とテトラヒドロフラン(30mL)を200 mLナスフラスコに加え、5分間攪拌した。その後、この混合溶液に5N−水酸化ナトリウム水溶液(15mL)を加え24時間攪拌した。その後、1N−塩酸水溶液(90 mL)を加え、反応溶液を酸性にした。この反応溶液をクロロホルム(60mL×3)で抽出し、溶媒を留去し粗製生物を得た。この粗製生物をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、白色の粉末(化合物3−B)を得た。(収率85%)
【0070】
得られた白色粉末(1g、2.3mmol)とジクロロエタン(20mL)及びトリエチルアミン(0.26g, 2.5mmol)を100mLナスフラスコに加え、5分間攪拌した。その後、この混合溶液にアクリロイルクロリド(0.23g, 2.5mmol)を0℃でゆっくり滴下した。滴下後、この反応溶液を室温に戻し2時間攪拌した。その後、この反応溶液を水(10mL×4)で洗浄した。この反応溶液を減圧で溶媒を留去しカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、白色の粉末(化合物3−C)を得た。(収率82%)
【実施例4】
【0071】
実施例1で得られた白色粉末(化合物1)(0.5g, 1mmol)とAIBN(1.6mg, 1mol%)とジクロロエタン(0.5mL)をシュレンク管に入れアルゴン雰囲気下で凍結脱気を行った。この反応容器を密閉し、90℃で4時間還流した。その後、反応溶液をメタノール(40mL)に注ぎ、粗精製物を得た。この粗製生物をクロロホルムとメタノールで2回再沈殿を行い、目的のポリマー(化合物4)を得た。(収率80%)
M
n= 9,900, Mw/M
n= 2.2 (GPC, eluent: THF, polystyrene standards); M
n= 84,400 Mw/M
n= 1.2 MHS a = 0.702 (light scattering method, THF, polystyrene standards); IR (KBr) 2998, 2953, 2905, 2834, 1754, 1609, 1584, 1510, 1463, 1302, 1250, 1176, 1138, 1034, 817, 766, 579cm
-1; 1H NMR (400 MHz, CDCl
3, δ, ppm):1.7-2.4(C-CH
2-C), 2.6-2.9(C-CH-C), 3.2-3.8(O-CH
3), 4.4-4.8(Ph-CH-C), 6.4-7.3(aromatic ring),
13C NMR (100MHz, CDCl
3, δ, ppm): 21.5, 30.9, 55.0. 113.6, 121.1, 125.3, 129.2, 135.8, 141.9, 148.2, 157.5
【実施例5】
【0072】
反応溶媒をジクロロエタンからテトラヒドロフランに変える以外は、実施例4と同様の操作を行い,ポリマー(化合物5)を得た。(収率75%)。
M
n = 9,900, M
w/M
n= 2.2。
【実施例6】
【0073】
実施例2で得られた白色粉末(化合物2)(0.5g,1mmol)とAIBN(1.6mg, 1mol%)とジクロロエタン(0.5mL)をシュレンク管に入れアルゴン雰囲気下で凍結脱気を行った。この反応容器を密閉し、90℃で4時間還流した。その後、反応溶液をメタノール(40 mL)に注ぎ、粗精製物を得た。この粗製生物をクロロホルムとメタノールで2回再沈殿を行い、目的のポリマー(化合物6)を得た。(収率92%)
M
n= 42,000, Mw/M
n= 9.5(GPC, eluent: THF, polystyrene standards); M
n= 76,700 Mw/M
n= 1.3 MHS a = 0.507 (light scattering method, THF, polystyrene standards); IR (KBr) 2997, 2952, 2905, 2834, 1749, 1609, 1583, 1510, 1464, 1302, 1250, 1201, 1176, 1036, 817, 766, 578, 557, 438;
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, δ, ppm): 0.9-1.5(C-CCH
3-C), 1.7-2.4(C-CH
2-C), 3.3-3.8(O-CH
3), 4.4-4.8(Ph-CH-C), 6.5-7.2(aromatic ring),
13C NMR (100MHz, CDCl
3, δ, ppm): 15.3, 18.4, 45.7. 55.0, 113.6, 120.9, 129.1, 135.8, 141.7, 148.4, 157.4.
【0074】
前記実施例1〜6により、得られた化合物は、以下のとおりの各図に示した構造式、IRスペクトル、NMRスペクトル、DSC測定結果、TGA測定結果、屈折率測定結果に示されたとおり、所期の化合物であることが確認された。
【0075】
図1は、化合物1の構造式を示す図であり、
図2は、化合物1のIRスペクトルを示す図であり、
図3は、化合物1の
1H−NMRスペクトルを示す図であり、又
図4は、化合物1の
13C−NMRスペクトルを示す図である。
【0076】
図5は、化合物2の構造式を示す図であり、
図6は、化合物2のIRスペクトルを示す図であり、
図7は、化合物2の
1H−NMRスペクトルを示す図であり、又、
図8は、化合物2の
13C−NMRスペクトルを示す図である。
【0077】
図9は、化合物3−Aの構造式を示す図であり、
図10は、化合物3−Aの
1H−NMRスペクトルを示す図であり、
図11は、化合物3−Bの構造式を示す図であり、又、
図12は、化合物3−Bの
1H−NMRスペクトルを示す図である。
【0078】
図13は、化合物4の構造式を示す図であり、
図14は、化合物4のIRスペクトルを示す図であり、
図15は、化合物4の
1H−NMRスペクトルを示す図であり、
図16は、化合物4の
13C−NMRスペクトルを示す図であり、
図17は、化合物4のDSC測定結果を示す図であり、
図18は、化合物4のTGA測定結果を示す図であり、又、
図19は、化合物4の屈折率測定結果を示す図である。
【0079】
図20は、化合物6の構造式を示す図であり、
図21は、化合物6のIRスペクトルを示す図であり、
図22は、化合物6の
1H−NMRスペクトルを示す図であり、
図23は、化合物6の
13C−NMRスペクトルを示す図であり、
図24は、化合物6のDSC測定結果を示す図であり、
図25は、化合物6のTGA測定結果を示す図であり、又、
図26は、化合物6の屈折率測定結果を示す図である。
【実施例7】
【0080】
実施例4における白色粉末(化合物1)(0.5g,1mmol)を、白色粉末(化合物1)(0.5g,1mmol)とメタクリル酸メチル(0.1g,1mmol)に変える以外は実施例4と同様の操作を行い、共重合ポリマー(化合物7)を得た。(収率84%)。
M
n= 20,300, Mw/M
n= 2.0(GPC, eluent: THF, polystyrene standards); IR (KBr) 2993, 2952, 2900, 2829, 1754, 1550, 1504, 1490, 1463, 1342, 1250, 1176, 1138, 1034, 827, 770, 561cm
-1;
1H NMR (400 MHz, CDCl
3, δ, ppm): 1.7-2.4(C-CH
2-C), 2.6-2.9(C-CH-C), 3.2-3.8(O-CH
3), 4.4-4.8(Ph-CH-C), 6.4-7.2(aromatic ring),
13C NMR (100MHz, CDCl
3, δ, ppm): 21.5, 30.9, 55.2. 57.2, 113.3, 121.5, 125.1, 129.2, 135.4, 141.9, 148.2, 157.5
【0081】
〔比較例1〕
実施例にて得られたポリマーとの物性を比較する為、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)を準備した。Mw=20,000(化合物8)
【0082】
(屈折率、複屈折、アッベ数)
実施例4、実施例6、実施例7及び比較例1で得られたポリマー(化合物4、化合物6、化合物7及び化合物8)を、それぞれ(0.2g)、ジクロロエタン(0.5mL)に溶解させ、さらに1時間攪拌を続けた。得られた溶液を、ろ過しスピンコーターを用い合成石英製の基板上に製膜した(600rpm,15secおよび1200rpm,10sec)。得られた薄膜を真空下で乾燥し、プリズムカップラー法により屈折率を測定した。平均の屈折率n
avはn
av=[(2n
TE2+n
TM2)/3]
1/2日ら求め、複屈折はn
TEとn
TMの差より求めた。測定した波長は633nm、845nm、1558nmであり、これらの波長の屈折率をCauchyの式(n
λ=n
∞+D/λ
2)にフィッティングし屈折率分散係数Dと絶対屈折率n
λを求めた。アッベ数は求めたDとn
λを用いCauchyの式より、486.1nm、589.2nm、656.3nmの屈折率を計算で求め、アッベ数の定義(ν
d=(n
d−1)/(n
F−n
C))より算出した。更に、スピンコーター(700 rpm,15 sec,1400 rpm,10sec)を用いて製膜したフィルムの複屈折を測定した。その結果を下記表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
得られたフィルムの熱重量分析(TG/DTA)、示差走査熱量測定(DSC)を行った。