【実施例】
【0027】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0028】
[実施例1〜15および比較例1〜8]
硬化性樹脂組成物を調製するために下記成分を準備した。
(A)成分:分子中に一般式2または一般式3の加水分解性シリル基を2以上有する化合物
・分子中に一般式2の加水分解性シリル基を2有して、Xがアルコキシ基であり、主鎖がオキシアルキレン骨格と(メタ)アクリル共重合骨格の混合物である化合物(カネカサイリルMA440 株式会社カネカ製)
・分子中に一般式3の加水分解性シリル基を2有して、Xがアルコキシ基であり、主鎖がオキシアルキレン骨格と(メタ)アクリル共重合骨格の混合物である化合物(カネカサイリルMA451 株式会社カネカ製)
(B)成分:ピリジン誘導体
ペンタフルオロピリジン(東京化成工業株式会社製)
3−クロロ−2,4,5,6−テトラフルオロピリジン(東京化成工業株式会社製)
3,5−ジクロロ−2,4,6−トリフルオロピリジン(東京化成工業株式会社製)
2−フルオロピリジン(東京化成工業株式会社製)
2,6−ジフルオロピリジン(東京化成工業株式会社製)
2,3,5,6−テトラフルオロピリジン(東京化成工業株式会社製)
(B’)成分:(B)成分以外のフッ素化合物
ヘキサフルオロプロペンジエチルアミン(東京化成工業株式会社製)
テトラブチルアンモニウムフルオリド(東京化成工業株式会社製)
ペンタフルオロフェノール(東京化成工業株式会社製)
(C)成分:1〜3級アミン化合物
テトラメチルグアニジン(2級アミンと3級アミンを有する化合物)(東京化成工業株式会社製)
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(3級アミンを有する化合物)(DBU サンアプロ株式会社製)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(1級アミンを有する化合物)(A−1100 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
【0029】
製造方法は、プラスチック容器中に(A)成分に(B)成分を計量し、自転・公転真空ミキサーを用いて1分間混錬した。さらに(C)成分を計量し、前記ミキサーを用いて更に1分間混錬して硬化性樹脂組成物を得た。得られた硬化性樹脂組成物は、それぞれ密閉容器に充填して23℃で24時間静置した。詳細な調製量は表1および表2に従い、数値は全て質量部で表記する。
【表1】
【表2】
【0030】
実施例1〜15および比較例1〜8に対して、外観、表面硬化性および深部硬化性について試験項目を実施した。また、初期の試験項目を測定した後、保存安定性を確認するため70℃雰囲気にて5日間放置した後の各試験項目を測定した。その結果を表3に示す。
【0031】
[外観確認]
硬化性樹脂組成物を幅10mm×長50mmのビート状にポリエチレンシート上へ塗布した時の粘性を以下の通り三段階評価を行い、「性状」として示す。外観確認における性状は、「低粘度」であることが好ましい。
低粘度:塗布しやすい程度に粘度が低い
高粘度:塗布しにくい程度の高粘度であるが塗布はできる
ゲル状:ゲル化が進行して半固体状態になっているため塗布できない
【0032】
[表面硬化性確認]
23℃×50%RH雰囲気下で、硬化性樹脂組成物をポリエチレンシート上に幅10mm×厚1mm×長50mmのビートを塗布し、爪楊枝で組成物の表面を軽く触れる。組成物を塗布してから、爪楊枝に付着せずに表面が硬化したと判断されるまでの時間を「皮張り時間(分)」として表面硬化性を評価した。24時間以上放置しても硬化しない場合は、「未硬化」と表記する。皮張り時間は、20分以内であることが好ましい。
【0033】
[深部硬化性確認]
表面硬化性確認で塗布した硬化性樹脂組成物を更に24時間放置した後、深部硬化性の硬化状態を評価した。硬化状態は以下の通り三段階評価を行い、その結果を「深部硬化状態」とする。深部硬化状態は、「硬化」の状態であることが好ましい。
硬化:硬化物が表面から深部まで均一に硬化している
ゲル化:硬化物の状態が表面よりも深部の方が硬化が不十分である
未硬化:表面及び深部が硬化していない
【0034】
[保存安定性確認]
硬化性樹脂組成物の調整後の初期特性を確認した後、保存安定性を確認するために容器を70℃雰囲気にて5日間放置する。放置後に、硬化性樹脂組成物における外観、表面硬化性、深部硬化性について再確認を行った。
【表3】
【0035】
[実施例16]
実施例15に対して充填剤として重質炭酸カルシウムを加えた組成物について、粘度、表面硬化性、引張剪断接着強さ1および引張剪断接着強さ2について測定を行った。さらに、保存安定性を確認するため70℃雰囲気にて5日間放置した後の各試験項目を測定した。その結果を表4に示す。
【0036】
製造方法は、プラスチック容器中に(A)成分と充填剤を計量し、自転・公転真空ミキサーを用いて1分間混錬した。次に(C)成分の1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7を計量して1分間混錬後、(B)成分を計量して1分間混錬した。さらに(C)成分の3−アミノプロピルトリエトキシシランを計量して前記ミキサーを用いて更に1分間混錬して硬化性樹脂組成物を得た。得られた硬化性樹脂組成物は、密閉容器に充填して23℃で24時間静置した。詳細な調製量は表4に従い、数値は全て質量部で表記する。
【0037】
[粘度測定]
コーンプレート型回転粘度計を用いて、25℃で3分後の粘度を測定した。測定結果を「粘度(Pa・s)」とする。粘度は充填剤の添加量により適宜設定されるため、特に好ましい範囲は無い。
【0038】
[引張剪断接着強さ測定]
長100mm×幅25mm×厚1mmの寸法のテストピースを使用し、接着面積が25mm×10mmになる様に実施例16を塗布して貼り合わせて固定治具で固定する。その後、25℃×50%RH雰囲気にて7日間放置する。JIS K 6850に準拠して最大の剪断強度を測定し、接着面積より「剪断接着強さ(MPa)」を計算した。テストピースとして、アルミニウムを使用した場合を「剪断接着強さ1」とし、ポリカーボネートを使用した場合を「剪断接着強さ2」とする。剪断接着強さ1に関しては3.0MPa以上、剪断接着強さ2に関しては2.0MPa以上の数値を発現していれば、接着用途でも使用することができる。
【表4】
【0039】
実施例7、比較例1および2を比較すると、(B)成分が含まれない場合や(C)成分が含まれない場合には、湿気硬化性が非常に遅く、(B)成分と(C)成分を両方添加した組成物が特異的に早い湿気硬化性を有すると共に、保存安定性を有する。また、実施例2と比較例3〜5を比較すると、比較例3〜5は(B)成分の代わりになるハロゲン化合物を添加している。比較例3においては表面硬化性が低下し、比較例4では性状が悪化し、比較例5では表面硬化性及び深部硬化性が低下している。この様に、ハロゲン化合物と(C)成分を組み合わせるだけでは、本発明の湿気硬化性および保存安定性を両立することは困難である。一般的に、充填剤を添加した湿気硬化性は湿度の浸透が遅くなるため表面硬化性および深部硬化性が低下する傾向が有るが、実施例15と実施例16では、表面硬化性の低下が若干見られるものの、充分な硬化性が確保されている。